(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】光学装置、車載システム、および移動装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240129BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240129BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240129BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/10 104Z
G02B26/10 F
G01S17/931
(21)【出願番号】P 2020052028
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110412
【氏名又は名称】藤元 亮輔
(74)【代理人】
【識別番号】100104628
【氏名又は名称】水本 敦也
(74)【代理人】
【識別番号】100121614
【氏名又は名称】平山 倫也
(72)【発明者】
【氏名】川上 智朗
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179650(WO,A1)
【文献】特開平09-021875(JP,A)
【文献】特開2006-105774(JP,A)
【文献】特開2000-162243(JP,A)
【文献】特開2001-202651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、前記物体からの反射光を偏向する偏向部と、
前記光源部からの前記照明光の一部を前記偏向部に導光し、他の一部を第1受光素子に導光すると共に、前記偏向部からの前記反射光を第2受光素子に導光する導光部と、
前記導光部と前記第
1受光素子との間に設けられ、前記照明光の主光線に対して傾いた光学面を含む
減光素子とを有
し、
前記導光部は、前記照明光及び前記反射光の少なくとも一方を導光する複数の光学面を含み、
前記複数の光学面は、互いに非平行であり、かつ前記照明光及び前記反射光の主光線に対して傾いていることを特徴とする光学装置。
【請求項2】
前記導光部と前記第
1受光素子との間に設けられ、前記照明光の主光線に対して偏心した光学面を含む光学素子とを有することを特徴とする
請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記
減光素子により反射された前記照明光を拡散させる拡散部を更に有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記
減光素子により反射された前記照明光を吸収する吸収部を更に有することを特徴とする請求項1乃至
3の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項5】
前記第1および第2受光素子は、互いに異なる種類の受光素子であることを特徴とする請求項1乃
4の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項6】
前記偏向部からの前記照明光を前記物体に導光すると共に、前記物体からの前記反射光を前記偏向部に導光する光学系を有することを特徴とする請求項1乃至
5の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項7】
前記光学系は、変倍光学系であることを特徴とする請求項
6に記載の光学装置。
【請求項8】
前記光学系は、全系で屈折力を持たないことを特徴とする請求項
6又は
7に記載の光学装置。
【請求項9】
前記偏向部の偏向面において、前記照明光の主光線の入射点と前記光学系の光軸とは互いに離間していることを特徴とする請求項
6乃至
8の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項10】
前記第1受光素子の受光面は、前記照明光の主光線に対して傾いていることを特徴とする請求項1乃至
9の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項11】
光源部からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、前記物体からの反射光を偏向する偏向部と、
前記光源部からの前記照明光の一部を前記偏向部に導光し、他の一部を第1受光素子に導光すると共に、前記偏向部からの前記反射光を第2受光素子に導光する導光部とを有し、
前記第1受光素子の受光面は、前記照明光の主光線に対して傾いて
おり、
前記導光部は、前記照明光及び前記反射光の少なくとも一方を導光する複数の光学面を含み、
前記複数の光学面は、互いに非平行であり、かつ前記照明光及び前記反射光の主光線に対して傾いていることを特徴とする光学装置。
【請求項12】
前記複数の光学面は、前記照明光が入射する第1面と、前記照明光の一部を通過させ、前記照明光の他の一部を反射し、前記偏向部からの前記反射光を反射する第2面と、前記照明光の他の一部を前記第1受光素子に導光する第3面とを含むことを特徴とする請求項1乃至11の何れか一項に記載の光学装置。
【請求項13】
請求項1乃至
12の何れか一項に記載の光学装置を備え、該光学装置によって得られた前記物体の距離情報に基づいて車両と前記物体との衝突可能性を判定することを特徴とする車載システム。
【請求項14】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両に制動力を発生させる制御信号を出力する制御装置を備えることを特徴とする請求項
13に記載の車載システム。
【請求項15】
前記車両と前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記車両の運転者に対して警告を行う警告装置を備えることを特徴とする請求項
13又は
14に記載の車載システム。
【請求項16】
前記車両と前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知装置を備えることを特徴とする請求項
13乃至
15の何れか一項に記載の車載システム。
【請求項17】
請求項1乃至
12の何れか一項に記載の光学装置を備え、該光学装置を保持して移動可能であることを特徴とする移動装置。
【請求項18】
前記光学装置によって得られた前記物体の距離情報に基づいて前記物体との衝突可能性を判定する判定部を有することを特徴とする請求項
17に記載の移動装置。
【請求項19】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、移動を制御する制御信号を出力する制御部を備えることを特徴とする請求項
18に記載の移動装置。
【請求項20】
前記物体との衝突可能性が有ると判定された場合に、前記移動装置の運転者に対して警告を行う警告部を備えることを特徴とする請求項
18又は
19に記載の移動装置。
【請求項21】
前記物体との衝突に関する情報を外部に通知する通知部を備えることを特徴とする請求項
17乃至
20の何れか一項に記載の移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明した対象物からの反射光を受光することで、対象物を検出する光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物までの距離を計測する方法として、照明した対象物からの反射光を受光するまでの時間や反射光の位相から距離を算出するLiDAR(Light Detection and Ranging)が知られている。特許文献1には、対象物からの反射光を受光素子で受光した際の偏向部(駆動ミラー)の角度と受光素子から得られる信号に基づいて対象物の位置と距離を計測する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDARを用いた装置では、測距に用いられる光学系や受光素子の他に、照明タイミングの検出や、出射光量の計測などに用いられる光学系や受光素子が使用される場合がある。この場合、測距に不要な光が装置内部で発生し、受光素子の信号を飽和させるおそれがある。特に、近距離に対象物がある場合、不要光による信号飽和がリセットされる前に対象物からの反射光が受光されるため、不要光か対象物からの反射光かを区別することが難しい。その結果、対象物までの距離を正確に計測できなくなる。
【0005】
本発明は、受光素子による不要光の受光を抑制することができる光学装置、車載システム、および移動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面としての光学装置は、光源部からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、物体からの反射光を偏向する偏向部と、光源部からの照明光の一部を偏向部に導光し、他の一部を第1受光素子に導光すると共に、偏向部からの反射光を第2受光素子に導光する導光部と、導光部と第1受光素子との間に設けられ、照明光の主光線に対して傾いた光学面を含む減光素子とを有し、導光部は、照明光及び反射光の少なくとも一方を導光する複数の光学面を含み、複数の光学面は、互いに非平行であり、かつ照明光及び反射光の主光線に対して傾いていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の他の側面としての光学装置は、光源部からの照明光を偏向して物体を走査すると共に、物体からの反射光を偏向する偏向部と、光源部からの照明光の一部を偏向部に導光し、他の一部を第1受光素子に導光すると共に、偏向部からの反射光を第2受光素子に導光する導光部とを有し、第1受光素子の受光面は、照明光の主光線に対して傾いており、導光部は、照明光及び反射光の少なくとも一方を導光する複数の光学面を含み、複数の光学面は、互いに非平行であり、かつ照明光及び反射光の主光線に対して傾いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、受光素子による不要光の受光を抑制することができる光学装置、車載システム、および移動装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】実施例1の第2検出部からの不要光が第1検出部に向かう光路と第1検出部から遠ざける光路とを示す図である。
【
図6】変倍光学系と駆動ミラーとの関係を示す図である。
【
図8】実施例2の第2検出部からの不要光が第1検出部に向かう光路と第1検出部から遠ざける光路とを示す図である。
【
図9】本実施形態に係る車載システムの構成図である。
【
図10】本実施形態に係る車両(移動装置)の模式図である。
【
図11】本実施形態に係る車載システムの動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
LiDARを用いた測距装置は、対象物(物体)を照明する照明系と対象物からの反射光や散乱光を受光する受光系とから構成される。LiDARでは、照明系と受光系の光軸の一部が互いに一致する同軸系と、各光軸が互いに一致しない非同軸系がある。本実施形態に係る測距装置は、同軸系のLiDARに好適なものである。
【実施例1】
【0013】
図1は、本実施例の測距装置(光学装置)1の概要図である。測距装置1は、光源部10、分岐部(導光部)20、駆動ミラー(偏向部)30、第1検出部40、第2検出部50、および制御部100を有する。
【0014】
光源部10は、光源11、および光源11からの発散光を略平行光にするコリメータ12を備える。
【0015】
駆動ミラー30は、ミラー中心を通り、Y軸に平行な軸、およびY軸に垂直な一点鎖線で示されるMx軸を中心に回転駆動する二次元走査駆動ミラーである。駆動ミラー30は、光源部10からの照明光を偏向して対象物(物体)を走査すると共に、対象物からの反射光を偏向して分岐部20に導光する。
【0016】
分岐部20は、光源部10からの照明光の一部を駆動ミラー30に導光すると共に、照明光の他の一部を第2検出部50に導光する。また、分岐部20は、駆動ミラー30からの反射光を第1検出部40に導光する。
【0017】
分岐部20は、平板形状の光学素子からなる。分岐部20の駆動ミラー30の側の面Aには、
図2に示されるように、光源部10からの照明光の一部(大半)を通過させ、他の一部を反射する領域21と、駆動ミラー30からの反射光を反射する領域22とが設けられている。光源部10側から見た場合、領域21は駆動ミラー30の有効径より小さく、領域21を通過した照明光は駆動ミラー30の有効径内に収まる。また、領域22は、駆動ミラー30で反射された、対象物からの反射光、又は散乱光を十分反射できる有効径を有する。
【0018】
なお、本実施例では、分岐部20は、平板形状の光学素子からなるが、本発明はこれに限定されない。分岐部20は、互いに非平行な複数の光学面を含む多面体形状の光学素子(プリズム)より構成されていてもよいし、平板形状の光学素子、および多面体形状の光学素子より構成されていてもよい。
【0019】
第1検出部40は、結像レンズ41、受光素子(第2受光素子)42、および不図示のバンドパスフィルターを有する。受光素子42は、駆動ミラー30、および分岐部20を介して、対象物から反射、又は散乱された光を受光する。
【0020】
第2検出部50は、結像レンズ51、受光素子(第1受光素子)52、および減光フィルター(減光素子)53を有する。分岐部20で反射された照明光は、減光フィルター53で減光され、結像レンズ51を通って受光素子52で受光される。第2検出部50は、対象物からの反射光の検出とは異なる役割を有し、例えば照明タイミングの検出や照明光量の計測等に利用される。受光素子52は、本実施例では受光素子42と種類が異なる。例えば、一方をアバランシェフォトダイオード(APD)を用いたセンサとし、他方をそれ以外の一般的なフォトダイオードを用いたセンサとしてもよい。また、一方をCMOSセンサとし、他方をCCDセンサとしてもよい。減光フィルター53は、平板形状であり、分岐部20と受光素子52との間に設けられ、点線で表される分岐部20で反射された光源部10からの照明光の主光線に対して傾いている(非垂直である)。ここで、照明光の主光線に対して傾いているとは、照明光の主光線に対して傾いた光学面を含んでいるということである。言い換えると、光学面における照明光の主光線の入射点での法線が該主光線に対して非平行であるということである。
【0021】
制御部100は、光源部10の発光パラメータと、駆動ミラー30の駆動と、第1および第2検出部40,50の受光パラメータとを制御する。
【0022】
図3は、本実施例の光路を示す図である。
図3(a)は、光源部10からの照明光の一部が、分岐部20の領域21を通過し、駆動ミラー30で走査されながら反射し、対象物OBJを照明する様子を表している。
図3(b)は、光源部10からの照明光の他の一部が、分岐部20の領域21で反射され、第2検出部50に集光される様子を表している。
図3(c)は、対象物OBJからの反射光、又は散乱光が、駆動ミラー30で反射され、分岐部20の領域22で反射され、第1検出部40に集光される様子を表している。このような構成により、光学素子を追加することなく、測距とは異なる目的で使用される光学系を小型に構成することができる。
【0023】
ここで、
図3(b)における光路では、減光フィルター53からの反射光、又は散乱光(以下、不要光)は、受光素子42で受光されやすい。仮に、減光フィルター53が
図4(a)に示されるように分岐部20で反射された照明光の主光線に対して略垂直であると、不要光は分岐部20の領域21を通過して受光素子42で受光される。不要光は、光源出力を1としたとき、10
-8以下に抑えることが望ましい。分岐部20の領域21の反射率を5%、減光フィルター53の反射率を5%とした場合、不要光は2.5×10
-3程度となり、不要光として許容できる10
-8に対してはるかに大きい。
【0024】
本実施例では、減光フィルター53が
図4(b)に示されるように分岐部20で反射された照明光の主光線に対して傾いていることで、不要光の大半は分岐部20の領域21を通過せず、別の場所に向かう。そのため、不要光の大半を第1検出部40から遠ざけることができる。例えば、結像レンズ41の焦点距離をf(mm)、受光素子42のサイズをφd(mm)、不要光の分岐部20で反射された照明光の主光線に対する傾斜角をθ(度)とした場合、θ>tan(d/2f)であればよい。この場合、不要光は受光素子42から遠ざかる(受光素子42で受光されない)。具体的には、結像レンズ41の焦点距離が20mmで、受光素子42のサイズが500μmである場合、傾斜角θは0.72度より大きければよい。
【0025】
なお、減光フィルター53で発生する不要光が鏡筒等に当たり、鏡筒等から強い戻り光が発生することを抑制するために、減光フィルター53で反射された不要光の反射光路上に不要光を拡散させる拡散部や不要光を吸収する吸収部を設けることが望ましい。
【0026】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、測距とは異なる目的で使用される光学系を有しながら、良好に測距可能である。
【0027】
なお、本実施例では、減光フィルター53を傾けることで、減光フィルター53で発生する不要光が受光素子42で受光されることを抑制しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、分岐部20と受光素子52との間に拡散素子やバンドパスフィルター等の他の光学素子が設けられている場合、設けられている光学素子を傾けてもよい。また、結像レンズ51を傾けてもよい。
【0028】
また、本実施例では、分岐部20と受光素子52との間に設けられた光学素子で発生する不要光が受光素子42で受光されることを抑制するために、本実施例では光学素子を傾けているが、本発明はこれに限定されない。光学素子を分岐部20で反射された照明光の主光線に対して偏心させてもよい。言い換えると、光学素子に含まれる光学面における面頂点と照明光の主光線の入射点とを互いに離間させてもよい。これにより、本発明と同様の効果を得ることができる。例えば、結像レンズ51を偏心させてもよい。
【0029】
また、受光素子52を照明光の主光線に対して傾けた構成、言い換えると受光素子52の受光面における照明光の主光線の入射点での法線を該主光線に対して非平行とした構成を採ってもよい。これにより、受光素子52の受光面において正反射した不要光が受光素子42で受光されることを抑制することができる。さらに、光学素子の傾斜、光学素子の偏心、および受光素子52の傾斜の三つの手段のうち二つ以上を組み合わせてもよい。
【実施例2】
【0030】
図5は、本実施例の測距装置1の概要図である。本実施例の測距装置1は、分岐部20が平板ではなく、複数の面を有する多面体プリズムである点、および駆動ミラー30の光射出側に配置された変倍光学系60を有する点で実施例1の測距装置1と異なる。変倍光学系60は、全系で屈折力を持たず、駆動ミラー30からの照明光を対象物OBJに導光すると共に、対象物OBJからの反射光を駆動ミラー30に導光する光学系である。その他の構成については実施例1と同一であるため、詳細な説明は省略する。
【0031】
図6は、変倍光学系60と駆動ミラー30との関係を示す図であり、
図5の構成のうち、駆動ミラー30より光射出側の構成をYZ平面で示している。Fa,Fb,Fcはそれぞれ、駆動ミラー30がMx軸に対して振れたときの、最軸外画角の照明光路、駆動ミラー30の振れ角が0である場合の照明光路、および照明光路Faとは反対側の最軸外画角の照明光路を表している。なお、照明光路Fcは、対象物OBJまでの距離の計測で用いる最軸外画角の照明光路であり、駆動ミラー30が最大に振れるときの照明光路ではない。駆動ミラー30が傾いて反射する範囲において、照明光路Fa,Fb,Fcでは、変倍光学系60の光軸に対して片側だけ使用しており、照明光が変倍光学系60の光学素子に対して垂直に入射しないようにしている。これにより、光学素子面で発生する僅かな反射光が受光素子42の受光面に届かなくなるので、迷光は発生しない。
【0032】
また、Fgは、駆動ミラー30がMx軸に対する振れ角が最も大きい場合の照明光路を表している。照明光路Fgが変倍光学系60の光学素子に対して垂直に入射する場合、光学素子からの僅かな反射光が、照明光路Fgと同じ光路を通って、分岐部20で反射され、第1検出部40で迷光として検出される。照明光路Fcと照明光路Fgの間の画角は、迷光が発生しない画角分の余裕分である。例えば、製造誤差分でずれる分をその余裕分として持たせている。
【0033】
図6では、変倍光学系60の光軸と駆動ミラー30の交点AXPが駆動ミラー30の中心32に対してずれている様子を表している。すなわち、変倍光学系60の光軸は、駆動ミラー30の中心位置に対して偏心している(駆動ミラー30を、駆動ミラー30の偏向面において、照明光の主光線の入射点と変倍光学系60の光軸とが互いに離間するように配置している)。これにより、照明光路Fgからの迷光も偏心させることができる。したがって、照明光路Fgよりさらに外側の画角まで迷光が発生しない領域を増やすことができるので、照明光路Fcよりさらに照明光路Fg側の方向まで対象物OBJまでの距離の計測に使用できる。また、照明光路Fbを照明光路Fg側に振り分けると、照明光路Faを変倍光学系60の光軸中心側に振ることができるので、変倍光学系60の有効径を小さくし、測距装置1全体を小型化することもできる。したがって、駆動ミラー30上において、駆動ミラー30の中心32と変倍光学系60の光軸は一致させないほうが望ましい。
【0034】
分岐部20は、本実施例では
図5に示されるように、多角形状の光学素子からなる。分岐部20の駆動ミラー30の側の面Aには、実施例1の分岐部20と同様に、光源部10からの照明光の一部(大半)を通過させ、他の一部を反射する領域21と、駆動ミラー30からの反射光を反射する領域22とが設けられている。
【0035】
図7は、本実施例の光路を示す図である。
図7(a)は、光源部10からの照明光の一部が、分岐部20に入射して屈折し、分岐部20の領域21を通過し、駆動ミラー30で走査されながら反射し、対象物OBJを照明する様子を表している。
図7(b)は、光源部10からの照明光の他の一部が、分岐部20に入射して屈折し、分岐部20の領域21で反射され、分岐部20内で反射と屈折により向きを変えながら第2検出部50に集光される様子を表している。
図7(c)は、対象物OBJからの反射光、又は散乱光が、駆動ミラー30で反射され、分岐部20の領域22で反射され、第1検出部40に集光される様子を表している。このような構成により、本実施例の分岐部20を通過した光束は、XZ平面上において光束径が縮小、又は拡大する一方で、発散角が拡大、又は縮小する。
【0036】
ここで、
図7(b)における光路では、減光フィルター53からの反射光、又は散乱光(以下、不要光)は、受光素子42で受光されやすい。仮に、減光フィルター53が
図8(a)に示されるように分岐部20で反射された照明光の主光線に対して略垂直であると、不要光は分岐部20の領域21を通過して受光素子42で受光される。
【0037】
本実施例では、減光フィルター53が
図8(b)に示されるように分岐部20で反射された照明光の主光線に対して傾いていることで、不要光の大半は領域21を通過せず、別の場所に向かう。そのため、不要光の大半を第1検出部40から遠ざけることができる。
【0038】
以上説明したように、本実施例の構成によれば、測距とは異なる目的で使用される光学系を有しながら、良好に測距可能である。
[車載システム]
図9は、本実施形態に係る測距装置1、およびそれを備える車載システム(運転支援装置)1000の構成図である。車載システム1000は、自動車(車両)等の移動可能な移動体(移動装置)により保持され、測距装置1により取得した車両の周囲の障害物や歩行者などの対象物の距離情報に基づいて、車両の運転(操縦)を支援するための装置である。
図10は、車載システム1000を含む車両500の模式図である。
図10においては、測距装置1の測距範囲(検出範囲)を車両500の前方に設定した場合を示しているが、測距範囲を車両500の後方や側方などに設定してもよい。
【0039】
図9に示すように、車載システム1000は、測距装置1と、車両情報取得装置200と、制御装置(ECU:エレクトロニックコントロールユニット)300と、警告装置(警告部)400とを備える。車載システム1000において、測距装置1が備える制御部100は、距離取得部(取得部)及び衝突判定部(判定部)としての機能を有する。ただし、必要に応じて、車載システム1000において制御部100とは別体の距離取得部や衝突判定部を設けてもよく、夫々を測距装置1の外部(例えば車両500の内部)に設けてもよい。あるいは、制御装置300を制御部100として用いてもよい。
【0040】
図11は、本実施形態に係る車載システム1000の動作例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに沿って車載システム1000の動作を説明する。
【0041】
まず、ステップS1では、測距装置1の光源部10により車両の周囲の対象物を照明し、対象物からの反射光を受光することで受光素子42が出力する信号に基づいて、制御部100により対象物OBJの距離情報を取得する。また、ステップS2では、車両情報取得装置200により車両の車速、ヨーレート、舵角などを含む車両情報の取得を行う。そして、ステップS3では、制御部100によって、ステップS1で取得された距離情報やステップS2で取得された車両情報を用いて、対象物OBJまでの距離が予め設定された設定距離の範囲内に含まれるか否かの判定を行う。
【0042】
これにより、車両の周囲の設定距離内に対象物が存在するか否かを判定し、車両と対象物との衝突可能性を判定することができる。なお、ステップS1及びS2は、上記の順番とは逆の順番で行われてもよいし、互いに並列して処理を行われてもよい。制御部100は、設定距離内に対象物が存在する場合は「衝突可能性あり」と判定し(ステップS4)、設定距離内に対象物が存在しない場合は「衝突可能性なし」と判定する(ステップS5)。
【0043】
次に、制御部100は、「衝突可能性あり」と判定した場合、その判定結果を制御装置300や警告装置400に対して通知(送信)する。このとき、制御装置300は制御部100での判定結果に基づいて車両を制御し(ステップS6)、警告装置400は制御部100での判定結果に基づいて車両のユーザ(運転者)への警告を行う(ステップS7)。なお、判定結果の通知は、制御装置300及び警告装置400の少なくとも一方に対して行えばよい。
【0044】
制御装置300は、車両の駆動部(エンジンやモータなど)に対して制御信号を出力することで、車両の移動を制御することができる。例えば、車両においてブレーキをかける、アクセルを戻す、ハンドルを切る、各輪に制動力を発生させる制御信号を生成してエンジンやモータの出力を抑制するなどの制御を行う。また、警告装置400は、運転者に対して、例えば警告音を発する、カーナビゲーションシステムなどの画面に警告情報を表示する、シートベルトやステアリングに振動を与えるなどの警告を行う。
【0045】
以上、本実施形態に係る車載システム1000によれば、上記の処理により対象物の検出及び測距を行うことができ、車両と対象物との衝突を回避することが可能になる。特に、上述した各実施例に係る測距装置1を車載システム1000に適用することで、高い測距精度を実現することができるため、対象物の検出及び衝突判定を高精度に行うことが可能になる。
【0046】
なお、本実施形態では、車載システム1000を運転支援(衝突被害軽減)に適用したが、これに限らず、車載システム1000をクルーズコントロール(全車速追従機能付を含む)や自動運転などに適用してもよい。また、車載システム1000は、自動車等の車両に限らず、例えば船舶や航空機、産業用ロボットなどの移動体に適用することができる。また、移動体に限らず、高度道路交通システム(ITS)や監視システム等の物体認識を利用する種々の機器に適用することができる。
【0047】
また、車載システム1000や移動装置は万が一、移動装置が障害物に衝突した場合に、その旨を車載システムの製造元(メーカー)や移動装置の販売元(ディーラー)などに通知するための通知装置(通知部)を備えていてもよい。例えば、通知装置としては、移動装置と障害物との衝突に関する情報(衝突情報)を予め設定された外部の通知先に対して電子メールなどによって送信するもの採用することができる。
【0048】
このように、通知装置によって衝突情報を自動通知する構成を採ることにより、衝突が生じた後に点検や修理などの対応を速やかに行うことができる。なお、衝突情報の通知先は、保険会社、医療機関、警察などや、ユーザーが設定した任意のものであってもよい。また、衝突情報に限らず、各部の故障情報や消耗品の消耗情報を通知先に通知するように通知装置を構成してもよい。衝突の有無の検知については、上述した受光部からの出力に基づいて取得された距離情報を用いて行ってもよいし、他の検知部(センサ)によって行ってもよい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 測距装置(光学装置)
10 光源部
20 分岐部(導光部)
30 駆動ミラー(偏向部)
42 受光素子(第2受光素子)
52 受光素子(第1受光素子)
53 減光素子(光学素子)
OBJ 対象物(物体)