(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラム
(51)【国際特許分類】
G07D 7/00 20160101AFI20240129BHJP
【FI】
G07D7/00 Z
(21)【出願番号】P 2020058614
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-01-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】糟谷 友彦
(72)【発明者】
【氏名】藤田 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】森口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】松本 卓也
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/036748(WO,A1)
【文献】特開2016-189177(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/00 - 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の機能を実行可能な貨幣識別装置であって、
前記貨幣識別装置を制御する制御部と、
前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部と、
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路と、を備え、
前記制御部は、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得し、取得した前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択し、選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信
し、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記対象判定処理を実行し、
前記対象判定処理は、第1の処理ステップ及び第2の処理ステップを含む複数の処理ステップにより構成され、
前記第1の処理ステップは、前記制御部及び前記再構成可能回路の少なくとも一方により実行され、
前記第2の処理ステップは、前記再構成可能回路により実行され、
前記第2の処理ステップの演算量は、前記第1の処理ステップの演算量よりも大きい
ことを特徴とする貨幣識別装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の処理ステップにより前記機能情報を取得する
ことを特徴とする請求項
1記載の貨幣識別装置。
【請求項3】
前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置が設置される国情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置が設置された国情報を取得し、取得した前記国情報に基づいて、前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
1又は2記載の貨幣識別装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置が設置される位置情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置が設置された位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づいて、前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
1又は2記載の貨幣識別装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置の属性情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置の前記属性情報を取得し、取得した前記属性情報に基づいて前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
1又は2記載の貨幣識別装置。
【請求項6】
複数の機能を実行可能な貨幣識別装置であって、
前記貨幣識別装置を制御する制御部と、
前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部と、
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路と、を備え、
前記制御部は、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得し、取得した前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択し、選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信し、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記対象判定処理を実行し、
前記記憶部は、判定処理に応じた基準情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記制御部は、前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象判定処理に応じた基準情報と前記対象判定処理に応じた前記回路情報とを選択する
ことを特徴とす
る貨幣識別装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置から、前記機能情報として、対象貨幣の金種情報を取得し、取得した前記金種情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
6記載の貨幣識別装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記対象判定処理を示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
6記載の貨幣識別装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記機能情報として、判定した対象貨幣の金種情報を取得し、取得した前記金種情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択する
ことを特徴とする請求項
6記載の貨幣識別装置。
【請求項10】
前記対象判定処理は、対象貨幣の金種を判定する金種判定処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記金種判定処理を実行する
ことを特徴とする請求項
1~9のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項11】
前記対象判定処理は、対象貨幣が損傷したものか否かを判定する正損判定処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記正損判定処理を実行する
ことを特徴とする請求項
1~10のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項12】
前記対象判定処理は、対象貨幣が真正なものかであるか否かを判定する真偽判定処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記真偽判定処理を実行する
ことを特徴とする請求項
1~11のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項13】
前記対象判定処理は、対象貨幣の記番号を認識する記番号認識処理を含み、
前記再構成可能回路は、前記記番号認識処理を実行する
ことを特徴とする請求項
1~12のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項14】
前記再構成可能回路は、前記制御部によって新たな回路情報が送信された場合、それ以前に前記制御部によって送信された回路情報を前記新たな回路情報に更新し、更新される前の前記回路情報に基づき再構成した回路ブロックを更新後の前記新たな回路情報に基づき他の回路ブロックへ再構成する
ことを特徴とする請求項1~
13のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項15】
前記制御部は、前記再構成可能回路が第1の回路情報に基づき再構成した第1の回路ブロックで第1の処理を実行中に、第2の回路情報を前記再構成可能回路に送信する
ことを特徴とする請求項1~
14のいずれかに記載の貨幣識別装置。
【請求項16】
請求項1~
15のいずれかに記載の貨幣識別装置を備えることを特徴とする貨幣処理装置。
【請求項17】
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別方法であって、
実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得するステップと、
取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択するステップと、
選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信するステップと、
を含
み、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路が前記対象判定処理を実行するステップを更に含み、
前記対象判定処理は、第1の処理ステップ及び第2の処理ステップを含む複数の処理ステップにより構成され、
前記第1の処理ステップは、前記貨幣識別装置を制御する制御部及び前記再構成可能回路の少なくとも一方により実行され、
前記第2の処理ステップは、前記再構成可能回路により実行され、
前記第2の処理ステップの演算量は、前記第1の処理ステップの演算量よりも大きい
ことを特徴とする貨幣識別方法。
【請求項18】
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別方法であって、
実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得するステップと、
取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択するステップと、
選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信するステップと、
を含み、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路が前記対象判定処理を実行するステップを更に含み、
前記記憶部は、判定処理に応じた基準情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記回路情報を選択するステップにおいて、前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象判定処理に応じた基準情報と前記対象判定処理に応じた前記回路情報とを選択する
ことを特徴とする貨幣識別方法。
【請求項19】
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別プログラムであって、
実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得する処理と、
取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択する処理と、
選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信する処理と、
を貨幣識別装置に実行させる
ものであり、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路によって前記対象判定処理を実行する処理を前記貨幣識別装置に更に実行させるものであり、
前記対象判定処理は、第1の処理ステップ及び第2の処理ステップを含む複数の処理ステップにより構成され、
前記第1の処理ステップは、前記貨幣識別装置を制御する制御部及び前記再構成可能回路の少なくとも一方により実行され、
前記第2の処理ステップは、前記再構成可能回路により実行され、
前記第2の処理ステップの演算量は、前記第1の処理ステップの演算量よりも大きい
ことを特徴とする貨幣識別プログラム。
【請求項20】
回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別プログラムであって、
実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得する処理と、
取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択する処理と、
選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信する処理と、
を貨幣識別装置に実行させるものであり、
前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、
前記再構成可能回路によって前記対象判定処理を実行する処理を前記貨幣識別装置に更に実行させるものであり、
前記記憶部は、判定処理に応じた基準情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、
前記回路情報を選択する処理において、前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象判定処理に応じた基準情報と前記対象判定処理に応じた前記回路情報とを選択する
ことを特徴とする貨幣識別プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
紙葉類や硬貨といった貨幣を処理する貨幣処理装置では、貨幣識別装置に搭載された異なる複数の種類のセンサを用いて、貨幣の特徴を取得する。そして、取得した貨幣の特徴に基づき、貨幣の種類(金種)や真偽、正損等を識別(判定)することが一般的に行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、識別する特徴量が多い場合であっても、紙葉類の種類や真偽、正損等を効率的に識別するために、正損の識別処理と真偽の識別処理とを並行処理する紙葉類識別装置が開示されている。また、金種識別部、正損識別部及び真偽識別部を備える識別部を構成する制御手段として複数のCPUと複数のFPGAを用い、各識別処理の制御をこれらの制御手段により分担して行う態様が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
貨幣識別装置に求められる機能(回路)は増加する一方であるが、限られたスペースやコスト、消費電力の中でそれらの機能を実現する必要がある。また、貨幣識別装置は、1つの機種にて様々な国の貨幣を識別可能とすることが求められる場合があるが、その場合も実現すべき機能は非常に多くなってしまう。更に、貨幣識別装置を搭載する搭載機の機種や貨幣識別装置の仕向先によっては、貨幣識別装置のFPGAにおいて、識別以外の処理をする場合もある。
【0006】
このように従来、貨幣識別装置に用いられるFPGA等の再構成可能回路には、必要な機能全てを実行するために非常に規模の大きい回路を構成する必要があった。
【0007】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、再構成可能回路の回路規模を抑制しつつ、多様な機能を実現可能な貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、複数の機能を実行可能な貨幣識別装置であって、前記貨幣識別装置は、前記貨幣識別装置を制御する制御部と、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部と、回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路と、を備え、前記制御部は、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得し、取得した前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択し、選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記対象機能は、前記貨幣識別装置において実行する対象判定処理を含み、前記再構成可能回路は、前記対象判定処理を実行することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記対象判定処理は、第1の処理ステップ及び第2の処理ステップを含む複数の処理ステップにより構成され、前記第1の処理ステップは、前記制御部及び前記再構成可能回路の少なくとも一方により実行され、前記第2の処理ステップは、前記再構成可能回路により実行され、前記第2の処理ステップの演算量は、前記第1の処理ステップの演算量よりも大きいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記第1の処理ステップにより前記機能情報を取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記対象判定処理は、対象貨幣の金種を判定する金種判定処理を含み、前記再構成可能回路は、前記金種判定処理を実行することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、上記発明において、前記対象判定処理は、対象貨幣が損傷したものか否かを判定する正損判定処理を含み、前記再構成可能回路は、前記正損判定処理を実行することを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記対象判定処理は、対象貨幣が真正なものかであるか否かを判定する真偽判定処理を含み、前記再構成可能回路は、前記真偽判定処理を実行することを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記発明において、前記対象判定処理は、対象貨幣の記番号を認識する記番号認識処理を含み、前記再構成可能回路は、前記記番号認識処理を実行することを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、判定処理に応じた基準情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、前記制御部は、前記機能情報に基づいて前記記憶部から前記対象判定処理に応じた基準情報と前記対象判定処理に応じた前記回路情報とを選択することを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置から、前記機能情報として、対象貨幣の金種情報を取得し、取得した前記金種情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記対象判定処理を示す情報を取得し、取得した前記情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記機能情報として、判定した対象貨幣の金種情報を取得し、取得した前記金種情報に基づいて、前記記憶部から前記対象判定処理に応じた前記基準情報及び前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置が設置される国情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置が設置された国情報を取得し、取得した前記国情報に基づいて、前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0021】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置が設置される位置情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置が設置された位置情報を取得し、取得した前記位置情報に基づいて、前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0022】
また、本発明は、上記発明において、前記記憶部は、前記貨幣識別装置が搭載される貨幣処理装置の属性情報を前記回路情報と対応付けて記憶し、前記制御部は、前記貨幣処理装置から、前記機能情報として、前記貨幣処理装置の前記属性情報を取得し、取得した前記属性情報に基づいて前記記憶部から前記対象機能に応じた前記回路情報を選択することを特徴とする。
【0023】
また、本発明は、上記発明において、前記再構成可能回路は、前記制御部によって新たな回路情報が送信された場合、それ以前に前記制御部によって送信された回路情報を前記新たな回路情報に更新し、更新される前の前記回路情報に基づき再構成した回路ブロックを更新後の前記新たな回路情報に基づき他の回路ブロックへ再構成することを特徴とする。
【0024】
また、本発明は、上記発明において、前記制御部は、前記再構成可能回路が第1の回路情報に基づき再構成した第1の回路ブロックで第1の処理を実行中に、第2の回路情報を前記再構成可能回路に送信することを特徴とする。
【0025】
また、本発明は、貨幣処理装置であって、前記貨幣処理装置は、前記貨幣識別装置を備えることを特徴とする。
【0026】
また、本発明は、回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別方法であって、前記貨幣識別方法は、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得するステップと、取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択するステップと、選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信するステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
また、本発明は、回路情報に基づいて回路を再構成可能な再構成可能回路を備えた貨幣識別装置を用いて、複数の機能を実行可能な貨幣識別プログラムであって、前記貨幣識別プログラムは、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得する処理と、取得した前記機能情報に基づいて、前記複数の機能に応じた回路情報を記憶する記憶部から前記対象機能に応じた回路情報を選択する処理と、選択した前記回路情報を前記再構成可能回路に送信する処理と、を貨幣識別装置に実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムによれば、再構成可能回路の回路規模を抑制しつつ、多様な機能を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態1に係る紙幣処理装置の構成を示した断面模式図である。
【
図2】実施形態1に係る紙幣処理装置の構成を説明するブロック図である。
【
図3】実施形態1に係る紙幣識別装置の構成を説明するブロック図である。
【
図4】実施形態1に係る紙幣識別装置の不揮発性メモリに設けられたテンプレート格納領域を説明するブロック図である。
【
図5】実施形態1に係る紙幣処理装置で行われる処理、主にFPGAの再構成に係る処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態2に係る紙幣処理装置で行われる処理、主にFPGAの再構成に係る処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態3に係る紙幣識別装置のFPGAを説明するブロック図である。
【
図8】実施形態3に係る紙幣識別装置における3つの判定処理A、B及びCのタイミングチャートの一例である。
【
図9】実施形態3に係る紙幣識別装置における3つの判定処理A、B及びCのタイミングチャートの他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明に係る貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムの好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
なお、本明細書において、「貨幣」とは、硬貨と、紙幣等の紙葉類とを包含するものを意味する。また、本発明の対象となる紙葉類としては、紙幣(銀行券)、小切手、商品券、手形、帳票、有価証券、カード状媒体等の様々な紙葉類が適用可能である。以下においては、紙幣を対象とする紙幣識別装置、紙幣処理装置、紙幣識別方法及び紙幣識別プログラムを一例として本発明について説明する。なお、貨幣識別プログラム(紙幣識別プログラム)は、貨幣識別装置(紙幣識別装置)に予め導入されてもよいし、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、又は、ネットワークを介して、操作者に提供されてもよい。
【0032】
(実施形態1)
<紙幣処理装置の構成>
まず、
図1及び2を用いて、本実施形態に係る紙幣処理装置の構成について説明する。
図1及び2に示すように、本実施形態に係る紙幣処理装置1は、各種情報の入力を受け付ける操作部及び各種情報を画面上に表示する表示部の機能を有する操作表示部10(
図1では図示省略)と、操作者が載置した紙幣BNを、一番下にあるものから順次、1枚ずつ紙幣処理装置1内に繰り出す取込部20と、紙幣BNを搬送路31に沿って1枚ずつ搬送する搬送部30と、紙幣BNから判定処理用のデータをそれぞれ採取する複数のセンサを備え、搬送路31を搬送される紙幣BNの判定処理を行う紙幣識別装置(紙幣識別部)100と、紙幣識別装置100で識別された正常な紙幣BNを金種毎に集積する集積部40(40a~40d)と、識別できなかった紙幣等の所定条件を満たさない異常な紙幣BNであるリジェクト紙幣を集積するリジェクト部50と、これらを制御する制御部60と、を有している。搬送部30は、搬送路31の他に、複数のローラ等の搬送手段(図示省略)と、搬送手段を駆動する、モータ等の駆動装置(図示省略)とを有している。紙幣処理装置1で実行される各処理は、制御部60がこれら各部を制御することによって実現される。紙幣識別装置100をこのような紙幣処理装置1に内蔵して利用することにより、取込部20に載置された複数の紙幣BNを連続して処理し、偽券、損券又は真偽不確定券と判定された紙幣をリジェクト部50に返却し、分別することができる。
【0033】
<紙幣識別装置の構成>
次に、
図3及び4を用いて、紙幣識別装置100の構成について説明する。
図3に示すように、紙幣識別装置100は、紙幣から判定処理用のデータ(情報)を採取する各種センサ(図示省略)と、制御部(演算処理部)の一例としてのCPU(Central Processing Unit)110と、記憶部の一例としての不揮発性メモリ120と、再構成可能回路の一例としてのFPGA(Field Programmable Gate Array)130とを備えている。
【0034】
紙幣識別装置100は、複数の機能を実行可能であり、紙幣識別装置100が実行可能な機能は、判定処理と、判定処理以外の機能とに大別される。
【0035】
紙幣識別装置100が実行可能な判定処理としては、処理対象となる対象紙幣の金種(種類)を判定する金種判定処理、対象紙幣が損傷したものか否かを判定する正損判定処理、対象紙幣が真正なものかであるか否かを判定する真偽判定処理、及び対象紙幣の記番号を認識する記番号認識処理が好適である。他に実行可能な判定処理としては、例えば、紙幣の向きの判定、紙幣の表裏の判定、紙幣の外形情報や通過位置情報の取得等が挙げられる。
【0036】
紙幣識別装置100が実行可能な判定処理以外の機能としては、例えば、後述する光学ラインセンサによって得られた光学データに基づく対象紙幣の画像を紙幣処理装置1へ送信する前に回転補正する処理等が挙げられる。
【0037】
なお、本明細書では、実行可能な複数の機能及び複数の判定処理のうち、起動時に紙幣識別装置100が実際に実行する機能をそれぞれ「対象機能」及び「対象判定処理」と言う。
【0038】
紙幣識別装置100は、実行可能な複数の機能(例えば対象判定処理)を実際に全て実行してもよいが、本実施形態は、紙幣識別装置100が実行可能な複数の機能(例えば対象判定処理)のうちの一部のみを実際に実行する場合に好適である。
【0039】
紙幣識別装置100が備える各種センサとして、例えば、赤外光、可視光等の複数種類の光を照射して紙幣の光学データ(光学特性)を取得する光学ラインセンサと、紙幣の磁気データ(磁性)を取得する磁気ラインセンサと、紙幣の厚みデータを取得する厚み検知ラインセンサと、紫外線を照射して紙幣の蛍光データを取得する蛍光センサとを有している。
【0040】
紙幣識別装置100は、各種センサで取得されたデータに基づいて対象機能、好ましくは対象判定処理を行う。例えば、光学ラインセンサで取得された光学データに基づいて紙幣の光学画像が生成され、対象判定処理に利用される。また、磁気ラインセンサで取得された磁気データに基づいて紙幣の磁気情報が検出され、対象判定処理に利用される。また、厚み検知ラインセンサで取得された厚みデータに基づいて紙幣の厚みが検出され、対象判定処理やテープ検知、2枚重ね搬送検知等に利用される。また、蛍光センサで取得された蛍光データに基づいて紙幣の蛍光発光の有無が検出され、対象判定処理に利用される。
【0041】
CPU110は、紙幣識別装置100の各部を制御するものであり、CPU110の動作に必要なプログラム(ソフトウェアプログラム)やデータは不揮発性メモリ120に記憶される。
【0042】
不揮発性メモリ120は、CPU110用のソフトウェアプログラムであるプログラム121と、FPGA130の再構成用の回路情報であるFPGA回路情報122とを記憶している。
【0043】
FPGA回路情報122は、FPGA130の回路全体に係る回路情報であり、再構成可能な回路領域を複数のパーティションに分割するための情報を含んでいる。これにより、FPGA130は、パーティション毎に回路を再構成可能となる。
【0044】
また、不揮発性メモリ120にはテンプレート格納領域123が設けられており、
図4に示すように、テンプレート格納領域123には、判定処理に用いられる基準情報(以下、テンプレートと言う)140が各判定処理用にそれぞれ予め準備されて記憶されている。
図4中、判定Aテンプレート、判定Bテンプレート及び判定Cテンプレートは、それぞれ、判定処理A、B及びC(ただし、判定処理A、B及びCは任意の判定処理)で使用されるテンプレートを表している。
【0045】
各テンプレート140は、当該判定処理用のテーブル141と当該判定処理用の回路情報142とを含んでおり、不揮発性メモリ120は、各判定処理用のテンプレート140(各判定処理用のテーブル141)と回路情報142とを互いに対応付けて記憶している。
図4中、判定Aテーブル、判定Bテーブル及び判定Cテーブルは、それぞれ、判定処理A、B及びCで使用されるテーブルを表しており、判定A回路情報、判定B回路情報及び判定C回路情報は、それぞれ、判定処理A、B及びCで使用される回路情報を表している。
【0046】
テーブル141は、当該判定処理にて参照されるデータやパラメータ(しきい値等)を含んでおり、CPU110及び/又はFPGA130によって利用される。これらのテーブル141は、各々、CPU110用のテーブルとFPGA130用のテーブルとを含んでいてもよいし、CPU110とFPGA130に共用されるテーブルを含んでいてもよいし、CPU110用のテーブルを含まずにFPGA130用のテーブルのみを含んでいてもよい。
【0047】
回路情報142は、紙幣識別装置100が実行し得る機能ごとに予め準備されたものであり、当該機能の少なくとも一部の処理を実行するためのものである。
【0048】
FPGA130は、回路情報142に基づいて回路を再構成可能なハードウェアであり、紙幣識別装置100に電源が供給されるとその都度、コンフィグレーション(再構成)専用のインターフェースに送信された回路情報142に基づいて回路を再構成する。
【0049】
FPGA130がどの回路情報142を使用するかは、CPU110によって制御される。より詳細には、CPU110は、紙幣処理装置1(紙幣処理装置1本体の制御部)から、対象機能に関する情報である機能情報を取得し、CPU110は、取得した機能情報に基づいて複数の機能のなかから1以上の対象機能を特定する。
【0050】
また、CPU110は、取得した機能情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象機能に応じた回路情報142を選択する。すなわち、CPU110は、機能情報から対象機能を特定し、特定した対象機能からそれに対応する回路情報142を特定する。これにより、実行可能な複数の機能に対応する回路情報142の中から対象機能に対応する回路情報142のみを選択してFPGA130に送信し、送信された回路情報142のみに基づいてFPGA130の回路を再構成することが可能であるため、FPGA130の回路規模を抑制しつつ、多様な機能を実現することができる。
【0051】
対象機能が対象判定処理を含む場合は、CPU110は、取得した機能情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象判定処理に応じたテンプレート140(テーブル141)と対象判定処理に応じた回路情報142とを選択する。すなわち、CPU110は、機能情報から対象判定処理を特定し、特定した対象判定処理からそれに対応するテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を特定する。対象判定処理に応じてテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を選択する態様によれば、紙幣識別装置100を容易に実現することが可能である。
【0052】
そして、CPU110は、選択した回路情報142をFPGA130に構成(設定)させる。これにより、FPGA130が使用する回路情報142が決定される。より詳細には、CPU110は、機能情報に基づき選択した回路情報142を不揮発性メモリ120からFPGA130のコンフィグレーション専用のインターフェースに送信する。
【0053】
その後、CPU110によって送信された回路情報142に基づいてFPGA130が自律的に回路を再構成する。この結果、回路情報142に応じた論理回路(回路ブロック131)が再構成される。以上が、CPU110が、選択した回路情報142をFPGA130に構成(設定)させる処理である。
【0054】
対象機能が複数の場合は、CPU110は、取得した機能情報に基づいて不揮発性メモリ120から複数の対象機能に応じた複数の回路情報142を選択し、選択した複数の回路情報142をFPGA130に送信する。そして、
図3に示すように、FPGA130が複数の回路情報142に対応する複数の回路ブロック131を再構成する。各回路ブロック131は、他の回路ブロック131から独立して動作可能な論理回路であり、それぞれ対応するパーティション内に設けられている。
図3中、判定A回路ブロック、判定B回路ブロック及び判定C回路ブロックは、それぞれ、判定A回路情報、判定B回路情報及び判定C回路情報に基づいて再構成された回路ブロック131を表している。
【0055】
ここで、再構成された論理回路(回路ブロック131)によって実行される機能は、特に限定されないが、対象判定処理が好ましい。すなわち、FPGA130は、対象判定処理を実行することが好ましい。これにより、FPGA130の回路規模を抑制しつつ、多様な判定処理を実現することができる。
【0056】
また、対象判定処理は、第1の処理ステップ及び第2の処理ステップを含む複数の処理ステップにより構成され、第1の処理ステップは、CPU110及びFPGA130の少なくとも一方により実行され、第2の処理ステップは、FPGA130により実行され、第2の処理ステップの演算量は、第1の処理ステップの演算量よりも大きいことが好ましい。これにより、判定処理の演算量の大きい処理ステップに係る論理回路(回路ブロック131)を、必要なときのみFPGA130に再構成することができるため、FPGA130の回路規模を効果的に抑制することができる。
【0057】
また、CPU110は、第1の処理ステップにより機能情報を取得することが好ましい。すなわち、演算量の小さい処理はCPU110で行うことが好ましく、そのような処理としては機能情報の取得処理が好適である。
【0058】
なお、第2の処理ステップは、第1及び第2の処理ステップが同一の動作環境にて実行された場合に、第1の処理ステップよりも処理時間が長いものであってもよい。
【0059】
FPGA130によって実行される対象判定処理としては、金種判定処理、正損判定処理、真偽判定処理及び記番号認識処理が好適である。すなわち、対象判定処理は、金種判定処理を含み、FPGA130は、金種判定処理を実行することが好ましく、対象判定処理は、正損判定処理を含み、FPGA130は、正損判定処理を実行することが好ましく、対象判定処理は、真偽判定処理を含み、FPGA130は、真偽判定処理を実行することが好ましく、対象判定処理は、記番号認識処理を含み、FPGA130は、記番号認識処理を実行することが好ましい。いずれの場合も、対象判定処理の少なくとも一部に係る処理がFPGA130(再構成された論理回路)によって実行されればよい。すなわち、対象判定処理の全てに係る処理がFPGA130によって実行されてもよいし、対象判定処理の一部に係る処理がFPGA130によって実行され、その対象判定処理の残りの部分に係る処理がCPU110によって実行されてもよい。
【0060】
ここで、紙幣処理装置1(紙幣処理装置1本体の制御部)から取得する機能情報の好適な具体例について説明する。
【0061】
例えば、対象紙幣の金種情報を取得し、対象紙幣の金種に応じて対象判定処理を選択してもよい。すなわち、CPU110は、機能情報として、紙幣処理装置1から、対象紙幣の金種情報を取得し、取得した金種情報に基づいて、不揮発性メモリ120から対象判定処理に応じたテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を選択してもよい。より詳細には、対象紙幣の金種やその組合せと、それに対応する対象判定処理の種類とを対応付けて不揮発性メモリ120に記憶させておき、CPU110が、当該対応関係に基づいて金種情報から対象判定処理を特定し、特定した対象判定処理に基づいてテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を特定してもよい。この場合、対象判定処理は、金種情報から間接的に特定されることになる。
【0062】
なお、金種情報としては、例えば、対象紙幣の金種を示す情報が挙げられる。
【0063】
また、紙幣処理装置1が指示する判定処理を対象判定処理として選択してもよい。すなわち、CPU110は、機能情報として、紙幣処理装置1から、対象判定処理を示す情報を取得し、取得したその情報に基づいて、不揮発性メモリ120から対象判定処理に応じたテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を選択してもよい。この場合、対象判定処理は、対象判定処理を示す情報から直接的に特定されることになる。
【0064】
また、紙幣処理装置1が設置された国に応じて対象機能を選択してもよい。すなわち、CPU110は、機能情報として、紙幣処理装置1から、紙幣処理装置1が設置された国情報を取得し、取得した国情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象機能に応じた回路情報142を選択してもよい。この場合は、不揮発性メモリ120に、紙幣処理装置1が設置される国情報を回路情報142と対応付けて記憶させておく。より詳細には、紙幣処理装置1が設置される可能性がある各国と、それに対応する対象機能(対象判定処理)の種類とを対応付けて不揮発性メモリ120に記憶させておき、CPU110が、当該対応関係に基づいて国情報から対象機能(対象判定処理)を特定し、特定した対象機能(対象判定処理)に基づいて回路情報142(並びにテンプレート140及びテーブル141)を特定してもよい。この場合、対象機能は、国情報から間接的に特定されることになる。
【0065】
なお、国情報としては、例えば、紙幣処理装置1が設置された国を示す情報が挙げられる。また、ここで、国は、地域であってもよい。
【0066】
また、紙幣処理装置1が設置された場所に応じて対象機能を選択してもよい。すなわち、CPU110は、機能情報として、紙幣処理装置1から、紙幣処理装置1が設置された位置情報を取得し、取得した位置情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象機能に応じた回路情報142を選択してもよい。この場合は、不揮発性メモリ120に、紙幣処理装置1が設置される位置情報を回路情報142と対応付けて記憶させておく。より詳細には、紙幣処理装置1が設置される可能性がある各場所(エリア)と、それに対応する対象機能(対象判定処理)の種類とを対応付けて不揮発性メモリ120に記憶させておき、CPU110が、当該対応関係に基づいて位置情報から対象機能(対象判定処理)を特定し、特定した対象機能(対象判定処理)に基づいて回路情報142(並びにテンプレート140及びテーブル141)を特定してもよい。この場合、対象機能は、位置情報から間接的に特定されることになる。
【0067】
なお、位置情報としては、例えば、GPS(全地球測位システム)等の衛星測位システムにより特定された現在位置の情報(例えば、緯度及び経度)が挙げられる。
【0068】
また、紙幣処理装置1の属性に応じて対象機能を選択してもよい。すなわち、CPU110は、機能情報として、紙幣処理装置1から、紙幣処理装置1の属性情報を取得し、取得した属性情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象機能に応じた回路情報142を選択してもよい。この場合は、不揮発性メモリ120に、紙幣処理装置1の属性情報を回路情報142と対応付けて記憶させておく。より詳細には、紙幣処理装置1の各属性と、それに対応する対象機能(対象判定処理)の種類とを対応付けて不揮発性メモリ120に記憶させておき、CPU110が、当該対応関係に基づいて属性情報から対象機能(対象判定処理)を特定し、特定した対象機能(対象判定処理)に基づいて回路情報142(並びにテンプレート140及びテーブル141)を特定してもよい。この場合、対象機能は、属性置報から間接的に特定されることになる。
【0069】
なお、属性情報としては、例えば、紙幣処理装置1の仕様や仕向先を示す情報が挙げられる。これにより、紙幣処理装置1の仕様や仕向先に応じて必要な機能(特に正損判定処理、真偽判定処理、記番号認識処理等)に係る回路情報142を選択することができる。なお、ここでいう仕様とは、必要な機能(キャプチャが必要、記番号認識が必要等)を示す。
【0070】
上述したように、機能情報は、対象機能(対象判定処理)を特定可能な情報であればよく、対象機能を直接的に特定する情報であってもよいし、対象機能を間接的に特定する情報であってもよい。機能情報は、各対象機能を対応する情報であってもよい。
【0071】
<紙幣識別の手順>
次に、
図5を用いて、紙幣識別装置100で行われる処理、主にFPGA130の再構成に係る処理の手順について説明する。
【0072】
まず、紙幣処理装置1に電源が投入されると(ステップS11)、CPU110が、プログラム121を不揮発性メモリ120からロードするとともに、FPGA回路情報122を不揮発性メモリ120からFPGA130に送信する(ステップS12)。この結果、FPGA回路情報122に基づいてFPGA130が自律的に再構成可能な回路領域を複数のパーティションに分割する。
【0073】
次に、CPU110が、紙幣処理装置1から機能情報を取得する(ステップS13)。この結果、対象機能(対象判定処理)が特定される。
【0074】
次に、CPU110が、ステップS13で取得した機能情報に基づき、対象機能に応じた回路情報142を選択する(ステップS14)。このとき、対象機能が対象判定処理を含む場合は、CPU110は、対象判定処理に応じたテンプレート140(テーブル141)も選択する。
【0075】
次に、CPU110が、ステップS14で選択した回路情報142を不揮発性メモリ120からFPGA130に送信する(ステップS15)。この結果、回路情報142に基づいてFPGA130が自律的に回路を再構成し(ステップS16)、回路情報142に応じた論理回路(回路ブロック131)が再構成される。
【0076】
そして、機能実行の要求があった場合(紙幣読み取り時)に、FPGA130が、再構成した論理回路(回路ブロック131)にて対象機能を実行する。対象機能が対象判定処理を含む場合、FPGA130は、ステップS14で選択されたテンプレート140(テーブル141)を用いて当該対象判定処理を実行する。なお、対象機能(対象判定処理)の一部は、CPU110によって実行されてもよく、対象判定処理の一部がCPU110によって実行される場合、CPU110は、ステップS14で選択されたテンプレート140(テーブル141)を用いて当該対象判定処理の一部を実行する。
【0077】
(実施形態2)
本実施形態は、機能情報を紙幣識別装置100自身で生成し、取得することを除いて、実施形態1と実質的に同じであるので、重複する内容については説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、CPU110は、機能情報として、判定した対象貨幣の金種情報を取得する。すなわち、紙幣識別装置100による対象紙幣の金種判定処理の結果として得られる金種情報を、機能情報として用いる。より詳細には、対象紙幣の金種やその組合せと、それに対応する対象判定処理の種類とを対応付けて不揮発性メモリ120に記憶させておき、CPU110が、当該対応関係に基づいて、対象紙幣の金種判定処理の結果得られた金種情報から対象判定処理を特定し、特定した対象判定処理に基づいてテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142を特定する。この場合、対象判定処理は、金種情報から間接的に特定されることになる。
【0079】
なお、金種情報としては、実施形態1と同様に、例えば、対象紙幣の金種を示す情報が挙げられる。
【0080】
次に、
図6を用いて、本実施形態において紙幣識別装置100で行われる処理、主にFPGA130の再構成に係る処理の手順について説明する。
【0081】
まず、紙幣処理装置1に電源が投入されると(ステップS21)、CPU110が、プログラム121を不揮発性メモリ120からロードするとともに、FPGA回路情報122を不揮発性メモリ120からFPGA130に送信する(ステップS22)。この結果、FPGA回路情報122に基づいてFPGA130が自律的に再構成可能な回路領域を複数のパーティションに分割する。
【0082】
次に、CPU110が、金種判定処理に係るプログラムを不揮発性メモリ120からロードするとともに、金種判定処理に係る回路情報142を不揮発性メモリ120からFPGA130に送信する(ステップS23)。この結果、金種判定処理に係る回路情報142に基づいてFPGA130が自律的に回路を再構成し、金種判定処理に係る回路情報142に応じた論理回路(回路ブロック131)が再構成される。
【0083】
次に、CPU110及びFPGA130が、金種判定処理に係るテンプレート140(テーブル141)を用いて対象紙幣の金種判定処理を実行する(ステップS24)。
【0084】
ステップS23及びS24では、CPU110が、あらゆる国に関する全金種の金種判定用のテンプレート140(テーブル141)及び回路情報142をロードし、対象紙幣がどの金種であるのか判定する。
【0085】
そして、CPU110が、対象紙幣の金種の判定結果を金種情報として取得する(ステップS25)。
【0086】
次に、CPU110が、ステップS25で取得した金種情報に基づき、金種判定処理以外の対象機能に応じた回路情報142を選択する(ステップS26)。このとき、通常では、回路情報142のみでなく、当該回路情報142に対応付けられたテンプレート140も選択する。
【0087】
その後、実施形態1と同様に、ステップS26で選択した回路情報142をFPGA130に送信し(ステップS27)、回路情報142に基づいて回路を再構成し(ステップS28)、機能実行の要求があった場合(紙幣読み取り時)、再構成した論理回路(回路ブロック131)にて対象機能を実行する。ただし、本実施形態では、金種判定処理を除く対象機能(金種判定処理以外の対象判定処理でもよい)を実行する。
【0088】
(実施形態3)
本実施形態は、FPGA130が動的再構成を行うことを除いて、実施形態1又は2と実質的に同じであるので、重複する内容については説明を省略する。
【0089】
本実施形態では、FPGA130は、CPU110によって新たな回路情報142が送信された場合、それ以前にCPU110によって送信された回路情報142を新たな回路情報142に更新し、更新される前の回路情報142に基づき再構成した回路ブロック131を更新後の新たな回路情報142に基づき他の回路ブロック131へ再構成する。なお、これら新旧(更新前後)の回路情報142は、通常、同一パーティションに関する回路情報であり、新旧の回路情報142に基づく2つの回路ブロック131は、同一パーティション内に再構成される。
【0090】
また、本実施形態では、CPU110は、FPGA130が第1の回路情報に基づき再構成した第1の回路ブロックで第1の処理を実行中に、第2の回路情報をFPGA130に送信する。この結果、FPGA130は、第1の回路ブロックで第1の処理を実行中に、第2の回路情報に基づいて第2の回路ブロックを再構成することができる。すなわち、1以上の回路ブロックにて処理を実行中に他の回路ブロックを更に他の回路ブロックに切り替えることが可能であるため、FPGA130の回路規模をより効果的に小さくすることができる。
【0091】
なお、第2の回路情報に基づき再構成された第2の回路ブロックによる第2の処理を実行するタイミングは、第1の処理と第2の処理に依存性が無く、互いに独立していれば特に限定されず、第2の処理は、第1の処理中に実行してもよいし、第1の処理終了後に実行してもよい。他方、第1の処理結果に基づいて第2の処理を実行する必要がある場合は、第2の処理は、第1の処理終了後に実行する必要がある。
【0092】
第1及び第2の処理としては、特に限定されないが、判定処理であることが好ましく、本実施形態は、再構成に要する時間(通常、数m秒以下)が、判定処理よりも短い場合に好適である。
【0093】
より具体的には、例えば、
図7に示すように、FPGA130は、判定A回路情報又は判定C回路情報に基づいて再構成された回路ブロックである判定A/C回路ブロック131A/Cと、判定B回路情報に基づいて再構成された回路ブロックである判定B回路ブロック131Bとを備えている。
【0094】
そして、例えば、判定処理A、B及びCがこの順に実行される場合は、
図8に示すように、FPGA130は、まず、判定A回路情報に基づいて再構成された判定A/C回路ブロック131A/Cにて判定処理Aを実行し、判定処理Aの終了後、判定B回路情報に基づいて再構成された判定B回路ブロック131Bにて判定処理Bを実行しつつ、CPU110から送信された判定C回路情報に基づいて判定A/C回路ブロック131A/Cを再構成する。そして、判定A/C回路ブロック131A/Cの再構成完了後、かつ判定処理Bの終了後、判定C回路情報に基づいて再構成された判定A/C回路ブロック131A/Cにて判定処理Cを実行する。
【0095】
他方、例えば、判定処理Aより後に実行される判定処理B及びCが互いに独立して実行される場合は、
図9に示すように、FPGA130は、まず、判定A回路情報に基づいて再構成された判定A/C回路ブロック131A/Cにて判定処理Aを実行し、判定処理Aの終了後、判定B回路情報に基づいて再構成された判定B回路ブロック131Bにて判定処理Bを実行しつつ、CPU110から送信された判定C回路情報に基づいて判定A/C回路ブロック131A/Cを再構成する。そして、判定A/C回路ブロック131A/Cの再構成完了後、判定C回路情報に基づいて再構成された判定A/C回路ブロック131A/Cにて判定処理Cを実行する。判定処理Cは、判定処理Bの終了前から開始されてもよいし、判定処理Bの終了後から開始されてもよい。
【0096】
なお、
図7~9で示した例では、判定B回路情報、判定B回路ブロック131B及び判定処理Bがそれぞれ第1の回路情報、第1の回路ブロック及び第1の処理に相当し、判定C回路情報、判定A/C回路ブロック131A/C及び判定処理Cがそれぞれ第2の回路情報、第2の回路ブロック及び第2の処理に相当する。
【0097】
以上説明したように、上記実施形態では、実行する対象機能に関する情報である機能情報を取得し、取得した機能情報に基づいて不揮発性メモリ120から対象機能に応じた回路情報を選択し、選択した回路情報をFPGA130に送信することから、実行可能な複数の機能に対応する回路情報の中から対象機能に対応する回路情報のみを選択してFPGA130に送信することが可能である。また、選択する回路情報を変更すれば、対象機能を変更することが可能である。したがって、FPGA130の回路規模を抑制しつつ、多様な機能を実現することができる。また、FPGA130のコスト及び消費電力を低減することが可能である。
【0098】
なお、上記実施形態では、再構成可能回路としてFPGAを用いる場合について説明したが、再構成可能回路としてPLD(Programmable Logic Device)等の他のプログラマブルなデバイスを用いてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、本発明に係る貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムがそれぞれ紙幣識別装置、紙幣処理装置、紙幣識別方法及び紙幣識別プログラムである場合について説明したが、本発明に係る貨幣識別装置、貨幣処理装置、貨幣識別方法及び貨幣識別プログラムは、それぞれ、紙葉類識別装置、紙葉類処理装置、紙葉類識別方法及び紙葉類識別プログラムであってもよいし、硬貨識別装置、硬貨処理装置、硬貨識別方法及び硬貨識別プログラムであってもよい。
【0100】
以上、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。また、各実施形態の構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜組み合わされてもよいし、変更されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0101】
以上のように、本発明は、再構成可能回路の回路規模を抑制しつつ、再構成可能回路にて多様な機能を実現するのに有用な技術である。
【符号の説明】
【0102】
1:紙幣処理装置(貨幣処理装置)
10:操作表示部
20:取込部
30:搬送部
31:搬送路
40、40a~40d:集積部
50:リジェクト部
60:制御部
100:紙幣識別装置(貨幣識別装置)
110:CPU
120:不揮発性メモリ
121:プログラム
122:FPGA回路情報
123:テンプレート格納領域
130:FPGA
131、131A/C、131B:回路ブロック
140:基準情報(テンプレート)
141:判定処理用のテーブル
142:判定処理用の回路情報
BN:紙幣