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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】クラッチレリーズ装置
(51)【国際特許分類】
   F16D 23/12 20060101AFI20240129BHJP
   F16D 25/08 20060101ALI20240129BHJP
   F16D 13/75 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16D23/12 K
F16D25/08 B
F16D13/75 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020062676
(22)【出願日】2020-03-31
(65)【公開番号】P2021162065
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000149033
【氏名又は名称】株式会社エクセディ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】江口 康彦
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一樹
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-170652(JP,A)
【文献】特開昭63-270926(JP,A)
【文献】国際公開第2017/046123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 11/00-39/00
48/00-48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レリーズレバーを有するクラッチ装置をレリーズ操作するためのレリーズ装置であって、
軸方向の第1側且つ周方向を向く第1斜面を有し、前記レリーズレバーを軸方向の第2側に押圧し、軸方向移動可能且つ回転不能に配置される第1ピストンと、
軸方向の第2側且つ周方向を向き前記第1斜面と当接する第2斜面を有し、軸方向において前記第1ピストンの第1側で回転可能に配置される中間部材と、
軸方向において前記中間部材の第1側で軸方向移動可能且つ回転不能に配置される第2ピストンと、
前記第2ピストンが軸方向の第2側に移動することによって前記中間部材と前記第2ピストンとを係合させる係合機構と、
を備える、クラッチレリーズ装置。
【請求項2】
前記係合機構は、
第2ピストンに配置された係合部と、
前記係合部と係合可能であり、前記中間部材に配置された、被係合部と、
を有する、
請求項1に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項3】
前記係合部と、前記被係合部とは、
セレーションである、
請求項2に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項4】
前記係合機構は、
第2ピストンに配置された第1摩擦材と、
前記第1摩擦材と係合可能であり、前記中間部材に配置された、第2摩擦材と、
を有する、
請求項1に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項5】
シリンダと、
前記中間部材に配置された被係止部と、前記シリンダに配置された係止部と、を有し、前記中間部材と前記第2ピストンとの係合を解除する係合解除機構と、
をさらに備える、
請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項6】
前記中間部材を周方向第2側且つ径方向内側に付勢し、前記第2ピストンを周方向第1側且つ径方向外側に付勢する付勢部材、
をさらに備える、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項7】
前記付勢部材は、引張コイルスプリング、コイルスプリング、ゼンマイバネ、及び、トーションスプリングからなる群から選択されるいずれか一つである、
請求項6に記載のクラッチレリーズ装置。
【請求項8】
シリンダと前記第2ピストンとによって画定されるエア室をさらに備える、
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載のクラッチレリーズ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチレリーズ装置、特に、エンジンとトランスミッションとの間に配置されたクラッチ装置をレリーズ操作するためのクラッチレリーズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用のクラッチ装置において動力伝達状態を解除する操作(以下、レリーズ操作という)をするために、クラッチレリーズ装置が設けられている。レリーズ装置は、たとえばクラッチペダルの操作により油圧を介してスレーブシリンダを作動させ、これによってレリーズ軸受が軸方向に移動する。このレリーズ軸受の移動によって、クラッチ装置を構成するレリーズレバーが押圧され、プレッシャプレートによるクラッチディスクへの押圧力が解除される。すなわち、クラッチ装置における動力伝達状態が解除される。ここで、レリーズレバーはたとえば、ダイヤフラムスプリングである。
【0003】
また、レリーズ装置を大型化することなくレリーズ操作時における踏力を軽減するために、Concentric Pneumatic Clutch Actuator(CPCA)式のレリーズ装置が用いられている。CPCA式のレリーズ装置は、トランスミッションの入力軸と同軸で設けられたシリンダ及びピストンを有している。そして、シリンダに空圧を供給することでピストンが作動し、軸方向に移動する。
【0004】
ここで、クラッチディスクの摩擦部材の摩耗が進むと、ダイヤフラムスプリングの周縁部分がクラッチディスク側に近づく。同時に、ダイヤフラムスプリングの中心近傍がクラッチディスクから離れる側に移動する。これによりクラッチレリーズ装置は、レリーズに必要な操作量に加えクラッチディスクの摩耗によるダイヤフラムスプリングの移動量分の操作量が必要になる。そのため、軸方向寸法を抑える摩耗追従の技術が求められている。
【0005】
そこで、例えば特許文献1(独国特許出願公開第102017205925号明細書)及び特許文献(国際公開第2018/077464号)は、ピストンの位置を摩擦部材が摩耗していない状態(以下、初期状態ともいう)での位置に戻すことにより、摩耗追従させる技術を提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】独国特許出願公開第102017205925号明細書
【文献】国際公開第2018/077464号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2の方法では、ピストンを、初期状態での位置まで軸方向に移動する必要がある。つまり、レリーズ操作のために必要なスペース(以下、搭載軸方向スペースともいう)が長くなる。
【0008】
本発明の課題は、レリーズ操作のためのスペースを短縮できるクラッチレリーズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明の一側面に係るクラッチレリーズ装置は、レリーズレバーを有するクラッチ装置をレリーズ操作するためのクラッチレリーズ装置である。クラッチレリーズ装置は、第1ピストンと、中間部材と、第2ピストンと、係合機構と、を備える。第1ピストンは、軸方向の第1側且つ周方向を向く第1斜面を有する。第1ピストンは、レリーズレバーを軸方向の第2側に押圧する。第1ピストンは、軸方向移動可能且つ回転不能に配置される。中間部材は、軸方向の第2側且つ周方向を向き第1斜面と当接する第2斜面を有する。中間部材は、軸方向において第1ピストンの第1側で回転可能に配置される。第2ピストンは、軸方向において中間部材の第1側で軸方向移動可能且つ回転不能に配置される。係合機構は、第2ピストンが軸方向の第2側に移動することによって中間部材と第2ピストンとを係合させる。
【0010】
第1ピストンは、第1斜面を有し、中間部材は、第2斜面を有する。そのため、第1ピストンが中間部材を押すと、第1斜面と第2斜面とが相対的に滑り、中間部材は、周方向に回転することができる。中間部材が回転すると、第1ピストンが軸方向第1側に移動する。つまり、第1ピストンと中間部材とが軸方向に互いに近づく。これにより、クラッチレリーズ装置の軸方向の長さが短くなる。その結果、搭載軸方向スペースが短縮される。
【0011】
クラッチレリーズ装置はさらに、係合機構を備える。第2ピストンが軸方向第2側に移動すると、係合機構は、中間部材と第2ピストンとを係合させる。これにより、中間部材は回転不可となる。中間部材が回転不可となるため、第1ピストンの軸方向の移動が不可となる。このため、第2ピストンの推力を第1ピストンに伝達することができる。そのため、搭載軸方向スペースを短縮しても、レリーズ機能を作動させることができる。
【0012】
(2)係合機構は、係合部と、被係合部と、を有してもよい。係合部は、第2ピストンに配置されている。被係合部は、係合部と係合可能であり、中間部材に配置されている。
【0013】
(3)好ましくは、係合部、及び、被係合部は、セレーションである。これにより、係合機構の効果をより高めることができる。
【0014】
(4)係合機構は、第1摩擦材と、第2摩擦材と、を有してもよい。第1摩擦材は、第2ピストンに配置されている。第2摩擦材は、第1摩擦材と係合可能である。第2摩擦材は、中間部材に配置されている。
【0015】
(5)好ましくは、クラッチレリーズ装置は、シリンダと、係合解除機構と、をさらに備える。係合解除機構は、被係止部と、係止部と、を有する。被係止部は、中間部材に配置されている。係止部は、シリンダに配置されている。クラッチレリーズ装置が作動していない状態では、被係止部は、係止部に当接して、中間部材3がそれ以上軸方向第1側に移動しないよう、中間部材3を支持する。そのため、係合部と被係合部との間に隙間が生じ、中間部材3を、周方向に回転可能に維持することができる。
【0016】
(6)好ましくは、クラッチレリーズ装置は、付勢部材、をさらに備える。付勢部材は、中間部材を周方向第2側且つ径方向内側に付勢し、第2ピストンを周方向第1側且つ径方向外側に付勢する。ここでは、クラッチレリーズ装置が作動して中間部材3の周方向の回転が係合された時に、第1カム面と第2カム面とが軸方向に互いに押し合う。そのため、カム機構を係合することができる。
【0017】
(7)好ましくは、(6)の付勢部材は、引張コイルスプリング、コイルスプリング、ゼンマイバネ、及び、トーションスプリングからなる群から選択されるいずれか一つである。
【0018】
(8)クラッチレリーズ装置は、エア室をさらに備えてもよい。エア室は、シリンダと第2ピストンとによって画定される。
【発明の効果】
【0019】
以上のような本発明では、クラッチレリーズ装置において、レリーズ操作のためにピストンが移動するために必要なスペースを短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のクラッチレリーズ装置の断面構成図。
図2図1とは異なる部分でのクラッチレリーズ装置の断面図のうち、係合機構付近を拡大した図。
図3】本発明のクラッチレリーズ装置の径方向に平行な面における横断面図。
図4】クラッチディスクの摩擦部材が摩耗した状態での第1ピストンの位置を示す図。
図5】クラッチレリーズ装置が作動した時の係合機構付近を拡大した図。
図6図1とは異なる実施形態によるクラッチレリーズ装置の断面図のうち、係合機構付近を拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[全体構成]
図1は、本発明の一実施形態によるクラッチレリーズ装置100の断面図である。クラッチレリーズ装置100は、クラッチレバーを有するクラッチ装置をレリーズ操作するためのレリーズ装置である。
【0022】
図1の断面図において、O-O線が回転軸線である。なお、以下の説明において、「軸方向」とは回転軸Oが延びる方向を示し、図1の下側を「軸方向第1側」、図1の上側を「軸方向第2側」とする。また、「径方向」とは、回転軸Oを中心とした円の半径方向を意味する。「周方向」とは、回転軸Oを中心とした円の周方向を意味する。また、図3の反時計回りの方向を「周方向第1側」、時計回りの方向を「周方向第2側」とする。
【0023】
図1において、第2側にクラッチ装置が配置され、第1側にトランスミッションが配置されている。このクラッチレリーズ装置100は、エンジンとトランスミッションとの間に配置されたクラッチ装置をレリーズ操作するための装置である。すなわち、このクラッチレリーズ装置100によって、クラッチ装置を構成するレリーズレバーの押圧力が解除され、これにより、クラッチ装置における動力伝達状態が解除される。ここで、レリーズレバーは、ダイヤフラムスプリング101である。
【0024】
クラッチレリーズ装置100は、第1ピストン2と、中間部材3と、第2ピストン4と、係合機構5と、を備える。クラッチレリーズ装置100はさらに、シリンダ6と、係合解除機構7と、第1付勢部材9と、第2付勢部材10と、エア室Cと、を備える。
【0025】
[シリンダ6]
シリンダ6は、内周円筒部61と、シリンダケース62と、を有している。
【0026】
内周円筒部61は、径方向においてトランスミッションの入力軸(図示せず)の外側に、入力軸と同軸で配置されている。
【0027】
シリンダケース62は、円板部62aと、円板部62aの外周端部から軸方向第2側に延びる外周円筒部62bと、を有している。
【0028】
外周円筒部62bは、内周円筒部61とほぼ平行に延びている。円板部62aには、エア室Cに空気を供給するためのエア供給口(図示せず)が配置されている。
【0029】
外周円筒部62bは、軸方向第2側端部に、係止部71を有する。
【0030】
[第1ピストン2]
図1及び図2を参照して、第1ピストン2は、シリンダ6の内周円筒部61と外周円筒部62bとの間に、入力軸と同軸で配置されている。第1ピストン2は、軸方向に移動可能である。第1ピストン2は、廻り止め(図示せず)により、周方向に回転不能に係止されている。
【0031】
第1ピストン2は、円筒状に形成される。第1ピストン2は、第1摺動部21と、軸受支持部22と、複数の傾斜部23と、を有している。傾斜部23は、第1斜面23aを含む。
【0032】
第1摺動部21は、第1ピストン2の軸方向第1側の端部である。
【0033】
軸受支持部22は、第1ピストン2の軸方向第2側の端部である。軸受支持部22の内周部には、軸受収容部が形成されている。
【0034】
軸受収容部には、レリーズベアリング22aの外輪がはめ込まれている。第1ピストン2の軸受収容部は、レリーズベアリング22aの全体を支持する。レリーズベアリング22aを介して、第1ピストン2は、ダイヤフラムスプリング101を軸方向第2側に押圧する。
【0035】
傾斜部23は、第1摺動部21と、軸受支持部22と、の軸方向の間の部分から、径方向外側に突出した部分である。複数の傾斜部23は、第1ピストン2の外周部に、周方向に間隔を空けて並んで配置されている。傾斜部23は、軸方向第1側の端面に、第1斜面23aを含む。第1斜面23aは、軸方向1側を向きつつ、周方向第1側を向く。
【0036】
[中間部材3]
中間部材3は、シリンダ6の外周円筒部62bと第1ピストン2との間に、入力軸と同軸で配置されている。中間部材3は、軸方向において、第1ピストン2に対して第1側に配置されている。
【0037】
中間部材3は、シリンダ6の外周円筒部62bに沿って軸方向に移動可能である。中間部材3は、クラッチレリーズ装置100が作動していない状態では、周方向に回転可能である。
【0038】
中間部材3は、本体部31と、移動部32と、被係止部72と、を有する。
【0039】
本体部31は、円環状である。本体部31は、シリンダ6の外周円筒部62bと第1ピストン2との間に配置されている。
【0040】
本体部31は、第2斜面31aを有する。
【0041】
第2斜面31aは、第1ピストン2の第1斜面23aと当接する。第2斜面31aは、被係合部52よりも軸方向第2側に配置される。第2斜面31aは、軸方向の第2側を向きつつ、周方向の第2側を向く。
【0042】
移動部32は、円環状である。移動部32は、本体部31の軸方向第1側の端部から径方向外側に延び、さらに、そこから径方向第1側に延びる。移動部32は、シリンダ6の外周円筒部62bに対して径方向内側に配置される。移動部32は、シリンダ6の外周円筒部62bに沿って移動可能である。被係合部52は、移動部32の軸方向第1側に配置される。
【0043】
被係止部72は、本体部31の軸方向第2側の端部から径方向外側に延び、さらにそこから軸方向第2側に延び、さらにそこから径方向外側に延びる。被係止部72は、シリンダ6の係止部71と、軸方向において当接可能である。
【0044】
[第2ピストン4]
第2ピストン4は、シリンダ6の内周円筒部61と外周円筒部62bとの間に、入力軸と同軸で配置されている。第2ピストン4は、中間部材3に対して軸方向第1側に配置されている。第2ピストン4は、廻り止め(図示せず)により、周方向に回転不能に係止されている。
【0045】
第2ピストン4は、シリンダ6の内周円筒部61に沿って軸方向に移動可能である。具体的には、第2ピストン4は、内周円筒部61の外周面に沿って移動可能である。内周円筒部61は、シリンダ6の摺動面である。
【0046】
第2ピストン4は、第2摺動部41と、エア室画定部42と、円筒部43と、を有している。
【0047】
第2摺動部41は、円筒状である。第2摺動部41は、シリンダ6の内周円筒部61の外周面に沿って移動可能である。エア室画定部42は、第2摺動部41の第1側端部から径方向外側に延びている。
【0048】
円筒部43は、円筒状である。円筒部43は、エア室画定部42の径方向外側の端部から軸方向第2側に延びている。円筒部43は、外周円筒部62bに沿って移動可能である。第1ピストン2の第1摺動部21は、円筒部43の内周面に沿って摺動する。
【0049】
円筒部43は、外周面から周方向外側に突出する外周突起部43aを有する。円筒部43の外周突起部43aの軸方向第2側の端部には、係合部51が配置されている。係合部51は、周方向に並んだ複数の突条部を含むセレーションである。
【0050】
[係合機構5]
係合機構5は、第2ピストン4の係合部51と、中間部材3の被係合部52と、によって構成される。
【0051】
係合部51は、周方向に並んだ複数の突条部を含むセレーションである。被係合部52は、周方向に並んだ複数の溝部を含むセレーションである。被係合部52は、係合部51に対向する。被係合部52は、係合部51に係合可能である。詳細には、係合部51の複数の突条部と、被係合部52の複数の溝とは、互いに係合可能である。
【0052】
係合部51は、第2ピストン4が軸方向の第2側に移動することによって、中間部材3と第2ピストン4とを係合させる。
【0053】
[係合解除機構7]
係合解除機構7は、シリンダ6の外周円筒部62bの係止部71と、中間部材3の被係止部72と、によって構成される。被係止部72は、中間部材3を支持して係合部51と前記被係合部52との間に隙間を空ける。
【0054】
係合解除機構7では、軸方向において、係止部71の軸方向第2側の端面が、被係止部72の軸方向第1側の端面に当接して、中間部材3がそれ以上軸方向第1側に移動しないように、中間部材3の軸方向の動きを制限する。
【0055】
[第1付勢部材9]
図3に示すように、第2ピストン4と中間部材3との間に、第1付勢部材9が配置される。第1付勢部材9は、中間部材3を周方向第2側に付勢しつつ、径方向内側に付勢する。第1付勢部材9はさらに、第2ピストン4を周方向第1側に付勢しつつ、径方向外側に付勢する。つまり、第1付勢部材9は、図3の中実矢印の方向に、各部材を付勢する。これにより、第2ピストン4と中間部材3とは、常に軸方向に離間しようとしている状態である。第1付勢部材9は、引張コイルスプリングである。
【0056】
[第2付勢部材10]
図1を参照して、第2ピストン4と第1ピストン2との間に、第2付勢部材10が配置される。第2付勢部材10は、クラッチ装置をレリーズする方向に第1ピストン2を付勢する。これにより、第1ピストン2とダイヤフラムスプリング101とは、常に接触した状態である。また、第2付勢部材10は、第2ピストン4と第1ピストン2とを常に軸方向に離間しようとしている状態である。第2付勢部材10は、コイルスプリングである。
【0057】
[エア室C]
エア室Cは、シリンダ6と第2ピストン4とによって画定される。詳細には、シリンダ6の内周円筒部61、円板部62a、外周円筒部62b、及び第2ピストン4のエア室画定部42によって、エア室Cが形成されている。
【0058】
[動作]
クラッチディスクの摩擦部材の摩耗がない初期状態では、図1のように、第2ピストン4と第1ピストン2とは、軸方向に最大限に離間している。
【0059】
図4を参照して、クラッチディスクの摩擦部材の摩耗が進むと、ダイヤフラムスプリング101の周縁部分が軸方向第2側(クラッチディスク側)に移動する。同時に、ダイヤフラムスプリング101の中心近傍が軸方向第1側に移動する。ダイヤフラムスプリング101が第1ピストン2を押圧する。
【0060】
ここで、図5に示すとおり、クラッチレリーズ装置100において、第1ピストン2は、第1斜面23aを有し、中間部材3は、第2斜面31aを有する。そのため、ダイヤフラムスプリング101に押された第1ピストン2が中間部材3を押すと、第1斜面23aと第2斜面31aとが相対的に滑り、中間部材3は周方向に回転する。中間部材3が回転すると、図5の矢印のように、第1ピストン2が軸方向第1側に移動する。つまり、第1ピストン2と中間部材3とが軸方向に互いに近づく。これにより、クラッチレリーズ装置100の軸方向の長さが短くなる。その結果、搭載軸方向スペースが短縮される。
【0061】
なお、図1に示すとおり、クラッチレリーズ装置100は、係合解除機構7を備える。係合解除機構7の被係止部72は、係止部71に当接して、中間部材3がそれ以上軸方向第1側に移動しないよう、中間部材3を支持する。そのため、クラッチレリーズ装置100が作動していない状態では、係合部51と被係合部52との間に隙間が生じ、中間部材3は、周方向に回転可能に支持されている。
【0062】
クラッチペダルを踏む、又は、電子制御装置より、クラッチオフの指令が出ると、空気が取り込まれる。取り込まれた空気は、エア室Cに供給される。
【0063】
エア室Cに空気が供給されると、第2ピストン4は、軸方向第2側に押し出される。
【0064】
ここで、クラッチレリーズ装置100はさらに、係合機構5を備える。第2ピストン4が軸方向第2側に移動すると、係合機構5は、中間部材3と第2ピストン4とを係合させる。これにより、中間部材3は回転不可となる。中間部材3が回転不可となるため、第1ピストン2の軸方向の移動が不可となる。このため、第2ピストン4の推力を第1ピストン2に伝達することができる。これにより、第1ピストン2がダイヤフラムスプリング101の中心部を押圧し、プレッシャプレートの押圧力を解除する。これにより、クラッチディスクがフライホイールから離れ、エンジンからトランスミッションに対する動力の伝達が断たれる。以上のとおり、クラッチレリーズ装置100では、搭載軸方向スペースを短縮しても、レリーズ機能を作動させることができる。
【0065】
なお、クラッチ装置に対するレリーズ操作(たとえば、クラッチペダルの踏み操作)がなされていない状態では、ダイヤフラムスプリング101の押圧力によってクラッチディスクがプレッシャプレートとフライホイールとの間に挟持されている。したがって、クラッチ装置は、クラッチオンの状態であり、エンジンからの動力は、トランスミッションに伝達される。
【0066】
レリーズ操作がなされていない状態ではさらに、第1ピストン2は、第2付勢部材10の付勢力によってダイヤフラムスプリング101に押圧されている。ここでは、第1ピストン2とダイヤフラムスプリング101との間には隙間は生じていない。
【0067】
一方、クラッチペダルを戻すと、エア室Cの空気が排気される。エア室Cから空気が排気されると、第2ピストン4は、ダイヤフラムスプリング101の押圧力により軸方向第1側に戻る。このとき、係合解除機構7の被係止部72が、係止部71に当接して、中間部材3がそれ以上軸方向第1側に移動しないよう、中間部材3を支持する。そのため、係合部51と被係合部52との間に隙間が生じ、中間部材3は、再び周方向に回転可能に支持される。そのため、中間部材3は、第1ピストン2に対して周方向に自由に動くことができ、第1ピストン2が軸方向に移動可能になる。ここでは、第2ピストン4の推力は、第2ピストン4に伝達されない。これにより、クラッチディスクがフライホイールを押圧し、エンジンからトランスミッションに対する動力が伝達される。
【0068】
以上の動作において、第1ピストン2が移動することにより摩耗追従する。これにより、搭載軸方向スペースを短縮することができる。
【0069】
さらに、摩耗追従することにより、エア室C内の無効容量を最小かつ一定に保つことができる。その結果、レスポンスが向上する。
【0070】
[他の実施形態]
本発明は、以上のような実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱することなく種々の変形又は修正が可能である。
【0071】
変形例1
上記実施形態では、係合機構5は、セレーションであったが、特にこれに限定されない。例えば、図6に示すように、係合機構500は、摩擦材を有してもよい。この場合、第1摩擦材501は、第2ピストン4に配置される。第2摩擦材502は、第1摩擦材501と係合可能であり、中間部材3に配置される。
【0072】
変形例2
上記実施形態では、係合解除機構7の係止部71と被係止部72とを、シリンダ6と中間部材3とにそれぞれ配置したが、特にこれに限定されない。例えば、係止部71を第1ピストン2に配置して、中間部材3が第1ピストン2に対して、一定の距離以上離間しないようにしてもよい。
【0073】
変形例3
上記実施形態では、ダイヤフラムスプリング式のクラッチ装置を対象としていたが、特にこれに限定されない。クラッチ装置は、コイルスプリング等のクラッチ装置であってもよい。
【0074】
変形例4
上記実施形態では、第1付勢部材9は、引張コイルスプリングであったが、特にこれに限定されない。第1付勢部材9は、その他の付勢部材であってもよい。その他の付勢部材とはたとえば、その他のコイルスプリング、ゼンマイバネ、トーションスプリングである。
【符号の説明】
【0075】
2 第1ピストン
3 中間部材
4 第2ピストン
5、500 係合機構
6 シリンダ
7 係合解除機構
9 第1付勢部材
10 第2付勢部材
100 クラッチレリーズ装置
101 ダイヤフラムスプリング(レリーズレバーの一例)
C エア室
図1
図2
図3
図4
図5
図6