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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電磁機器
(51)【国際特許分類】
   H01F 27/245 20060101AFI20240129BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20240129BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20240129BHJP
   H01F 29/14 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01F27/245 157
H01F30/12 A
H01F30/12 C
H01F27/24 H
H01F29/14 A
H01F29/14 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020070997
(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公開番号】P2021168345
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000222037
【氏名又は名称】東北電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大日向 敬
(72)【発明者】
【氏名】有松 健司
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-335456(JP,A)
【文献】特開平09-330829(JP,A)
【文献】特開平11-312613(JP,A)
【文献】特開昭55-056608(JP,A)
【文献】特開2013-012584(JP,A)
【文献】特開2015-142095(JP,A)
【文献】特公昭47-051767(JP,B1)
【文献】特開昭53-141428(JP,A)
【文献】特開昭55-138215(JP,A)
【文献】特開昭55-143013(JP,A)
【文献】特開2002-050524(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/245
H01F 30/12
H01F 37/00
H01F 21/08
H01F 29/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基部磁心から同一方向に延びる複数の第1脚磁心を有し、主巻線が卷回された積層鋼板からなる第1鉄心と、
第2基部磁心から同一方向に延びる2本の第2脚磁心を有し、制御巻線が卷回された積層鋼板からなる第2鉄心を有し、
前記第1脚磁心の配列方向と前記第2脚磁心の配列方向とが直交した状態で、複数の前記第1脚磁心の先端と2つの前記第2脚磁心の先端とが接触し、
接触面における前記第1脚磁心の積層鋼板の積層方向と前記第2脚磁心の積層鋼板の積層方向が同じ方向に整列していることを特徴とする電磁機器。
【請求項2】
前記第2鉄心が、カットコアからなることを特徴とする、請求項1に記載の電磁機器。
【請求項3】
1個の前記第2鉄心に対して、それぞれ2本の前記第1脚磁心を備えた3個の前記第1鉄心を備え、各前記第1鉄心に卷回された前記主巻線が三相交流電源に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電磁機器。
【請求項4】
前記第1鉄心が少なくとも3本の前記第1脚磁心を備え、3本の前記第1脚磁心に前記主巻線が卷回されて三相交流電源に接続されることを特徴とする、請求項1または2に記載の電磁機器。
【請求項5】
前記制御巻線が、2本の前記第2脚磁心にそれぞれ卷回されて直列接続されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の電磁機器。
【請求項6】
複数の前記第1脚磁心の先端と2本の前記第2脚磁心の先端とが接触する前記接触面に、楔型の間隙を形成したことを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の電磁機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーの導入拡大が進みつつあり、これら再生可能エネルギーの導入拡大によって、特に配電線を中心とした電力系統において、発電出力の変動に伴う系統電圧の変動や,発電出力が電力系統の需要を上回ることで異なる電力潮流(逆潮流)を発生させ、系統電圧の上昇の要因となるなど、電力系統の電力品質低下の要因となっている。このため、電力品質を維持する、低コストで効果的な電圧調整装置が求められている。
【0003】
電圧調整装置として、機械的な接点を持たずに、制御電流の調整により主巻線のインダクタンスを連続的に制御する機能をもつ可変リアクトルを適用する方法がある。可変リアクトルの従来技術としては、例えば、本出願人が先に提案した電力用可変リアクトルがある(特許文献1参照)。
【0004】
図13は、特許文献1に開示された電力用可変リアクトル100の一例を示す斜視図である。電力用可変リアクトル100は、図13(A)に示すように、主巻線103と制御巻線104をそれぞれ卷回した一対のU形カットコアからなる鉄心101,102の両脚端面を互いに90度捩って接触させた構造になっている。図示のように、主巻線103で形成される主磁束φ1と制御巻線104で形成される制御磁束φ2が通る磁気回路が直交し、互いに一方の巻線の磁束は他方の巻線と鎖交しないという特徴を有する。主磁束φ1と制御磁束φ2は一対の鉄心101,102の接触部で共通の磁路を形成しているため、制御巻線104に直流電流または交流電流を流すことにより共通磁路の透磁率を調整でき、他方の主巻線103の磁束を制御できる。
【0005】
すなわち、図13(B)で示すカット面同志の4面の接触面Bは、主巻線103、制御巻線104の各々に電圧e1、e2を印加して発生する主磁束φ1、制御磁束φ2の全てが通る共通磁路となる。そこで、制御巻線104へ印加する電圧e2を制御すると、制御巻線104を流れる制御電流i2による制御磁束φ2が変化するため、主巻線103による主磁束φ1の磁路の磁気抵抗が変化し、主巻線103を流れる主電流i1の値が変わる。このため、電力用可変リアクトル100は、主巻線103のリアクタンスを可変にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実公平8-5534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された電力用可変リアクトル100は、軽量かつ構造が簡単であるという利点を有している。電力用可変リアクトル100には電力用として商用周波数の電流が通電するため、一般的に電磁鋼板が用いられる。電磁鋼板により鉄心101,102を形成する場合,積層鉄心とすることが必要である。このなかで,低コストで磁束密度を高くすることが可能なU形カットコアが適している。
【0008】
一対のU形カットコアを直交磁路に対応してカット面を互いに90度捩って接触させる場合、図13(B)に示すように、電磁鋼板の積層端面は互いに直交して接触するため、積層電磁鋼板の端部が接触面Bで♯状に直交して接触し、相互に絶縁されている電磁鋼板を短絡することになる。図14は、図13に示した電力用可変リアクトルに発生する渦電流を説明するための図であり、同図に示すように、磁束φの変化によって、♯状の接触部を通じて積層鉄心を渦電流Ieが流れる渦電流路が形成される。
【0009】
インダクタンスの制御の可変範囲を大にするために鉄心端面はできるだけ密着させなければならないが、この渦電流路の形成を防ぐために、従来、絶縁フィルムを介して接触させている。このため、絶縁フィルムに相当するギャップが介在することになり、磁気回路の磁気抵抗が増大し、それよる磁気特性の劣化が避けられず、制御の可変範囲が減少するという問題があった。また、絶縁フィルムによるギャップの影響を低減させるために、出来るだけ絶縁フィルムを薄くすることが必要であるが、薄くて耐久性のあるフィルムを得ることは難しい。
【0010】
さらに、両カットコアの一方は直流励磁される制御巻線が巻回され、他方は商用周波数で励磁される主巻線が巻回されるため、接触部には繰返し叩くような磁気吸引力が加わることになる。このため、電力用可変リアクトル100は、連続する振動応力に十分な耐久性のある絶縁フィルムを確保することが難しいという問題があった。
【0011】
そして、カットコアの接触部で、絶縁フィルムを叩くように加わる繰返し応力により、フィルムの一部が損傷し部分的に渦電流路が形成されると、渦電流による加熱が絶縁フィルムの劣化をさらに拡大する。絶縁フィルムの劣化の拡大により、渦電流路はさらに拡大し、絶縁フィルムの損傷が広がると接触面に物理的なギャップが形成されることになり、鉄心の過熱とともに接触面の振動の増大等により障害が益々拡大することが懸念された。
【0012】
なお、鉄心にフェライトを用いる高調波用途の場合は,このような問題は生じないが、商用周波数の電力用電磁機器にフェライトの使用は適さない。
【0013】
本発明は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、必要な巻線の数が少なく、軽量かつ構造が簡単で、大きなインピーダンス(リアクタンス)変化が可能な電磁機器を提供することをその目的とする。
【0014】
上記課題を解決するために、請求項1の技術手段は、電磁機器であって、第1基部磁心から同一方向に延びる複数の第1脚磁心を有し、主巻線が卷回された積層鋼板からなる第1鉄心と、第2基部磁心から同一方向に延びる2本の第2脚磁心を有し、制御巻線が卷回された積層鋼板からなる第2鉄心を有し、前記第1脚磁心の配列方向と前記第2脚磁心の配列方向とが直交した状態で、複数の前記第1脚磁心の先端と2つの前記第2脚磁心の先端とが接触し、接触面における前記第1脚磁心の積層鋼板の積層方向と前記第2脚磁心の積層鋼板の積層方向が同じ方向に整列していることを特徴とするものである。
【0015】
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記第2鉄心が、カットコアからなることを特徴とするものである。
【0016】
第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、1個の前記第2鉄心に対して、それぞれ2本の前記第1脚磁心を備えた3個の前記第1鉄心を備え、各前記第1鉄心に卷回された前記主巻線が三相交流電源に接続されることを特徴とするものである。
【0017】
第4の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記第1鉄心が少なくとも3本の前記第1脚磁心を備え、3本の前記第1脚磁心に前記主巻線が卷回されて三相交流電源に接続されることを特徴とするものである。
【0018】
第5の技術手段は、第1から第4のいずれか1の技術手段において、2本の前記第2脚磁心にそれぞれ卷回されて直列接続されていることを特徴とするものである。
【0019】
第6の技術手段は、第1から第5のいずれか1の技術手段において、複数の前記第1脚磁心の先端と2本の前記第2脚磁心の先端とが接触する前記接触面に、楔型の間隙を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主巻線と制御巻線各々一組のみで構成できるため、必要な巻線の数が少なく、軽量かつ構造が簡単で、大きなリアクタンス変化が可能な電磁機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図2図1に示す電磁機器の動作を説明するための図である。
図3図1に示す電磁機器の制御特性例を示す図である。
図4図1に示す電磁機器の一変形例を示す図である。
図5図1に示す電磁機器の他の変形例を示す図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図7】本発明の第3の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図8】本発明の第4の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図9】本発明の第5の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図10】本発明の第6の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図11】本発明の第7の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図12】本発明の第8の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。
図13】従来例の電力用可変リアクトルの一例を示す斜視図である。
図14図13に示した電力用可変リアクトルに発生する渦電流を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら、本発明の電磁機器に係る好適な実施形態について説明する。以下の説明において、異なる図面においても同じ符号を付した構成は同様のものであるとして、その説明を省略する場合がある。なお、本発明はこれらの実施形態での例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内及び均等の範囲内におけるすべての変更を含む。また、複数の実施形態について組み合わせが可能である限り、本発明は任意の実施形態を組み合わせたものを含む。
【0023】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図であり、図2は、図1に示す電磁機器の動作を説明するための図である。図1(A)に示すように、本実施形態の電磁機器10は、略コの字型の第1鉄心(コア)11と略U字型の第2鉄心(コア)12を有している。第1鉄心11は、第1基部磁心11aから同一方向に延びる2本の第1脚磁心11b,11cを一体に形成した略コの字型の電磁鋼板を複数枚積層した、積層鋼板からなっている。第2鉄心12は、積層鋼板からなり、第2基部磁心12aから同一方向に延びる2本の第2脚磁心12b,12cを有している。本実施形態では、第2鉄心12は、ケイ素鋼板やアモルファス合金などの金属薄帯を巻回し、巻回された金属薄帯を樹脂に含浸した後、切断して得られるカットコアが用いられる。
【0024】
第1鉄心11には、主巻線13が卷回され、第2鉄心12には制御巻線14が卷回される。なお、主巻線13が第2鉄心12に卷回され、制御巻線14が、第1鉄心11に卷回されてもよいが、本実施形態では、主巻線13が第1鉄心11の第1脚磁心11bに、制御巻線14が第2鉄心12の第2脚磁心12cに卷回されているものとする。なお、主巻線13あるいは制御巻線14は、必要に応じて第1鉄心11の第1基部磁心11aあるいは第2鉄心12の第2基部磁心12aに卷回されてもよい。さらに、主巻線13は、第1基部磁心11a、第1脚磁心11b,11cの全面に卷回されてもよく、また、制御巻線14は、第2基部磁心12a、第2脚磁心12b,12cの全面に卷回されてもよい。
【0025】
第1鉄心11と第2鉄心12は、第1鉄心11の第1脚磁心11b,11cの配列方向(図1(A)のX軸方向)と第2鉄心12の第2脚磁心12b,12cの配列方向(図1(A)のY軸方向)とが直交した状態で、第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b,12cの先端とが、図1(B)で示すように、4つの接触面Aで、絶縁フィルム等を介さずに直接接触している。そして、接触面における第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の積層方向と第2脚磁心12b,12cの積層鋼板の積層方向が同じ方向(図1(A)のX軸方向)に整列している。本実施形態では、第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の積層方向と第2脚磁心12b,12cの積層鋼板の積層方向が接触面Aにおいて同じ方向となるように、第1鉄心11を略コの字型の電磁鋼板を積層したものとし、第2鉄心12にカットコアを用いている。
【0026】
ここで、予め第1鉄心11を構成する積層鋼板の電磁鋼板の厚みと絶縁層の厚みとが、それぞれ第2鉄心12を構成する積層鋼板の電磁鋼板の厚みと絶縁層の厚みに等しくなるように形成しておくことが望ましい。そして、接触面Aで第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b,12cの先端とを接触させた際に、第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の電磁鋼板と第2脚磁心12b,12cの積層鋼板の電磁鋼板とが対向し、第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の絶縁層と第2脚磁心12b,12cの積層鋼板の絶縁層とが対向するようにする。これにより、第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b,12cの先端とを接触させた際に、接触面Aの箇所で、相互に絶縁された電磁鋼板が短絡されて電流経路が生じないようにする。
【0027】
次に、電磁機器10の動作について説明する。図2は、図1に示す電磁機器の動作を説明するための図であり、図2(A)は制御巻線14に電流を流さない場合を、また、図2(B)は制御巻線14に電流を流した場合を示している。
【0028】
主巻線13に交流電源から電圧e1を印加し、主電流i1が図2(A)の矢印方向に流れたとすると、第1鉄心11の第1脚磁心11b、第2鉄心12の第2脚磁心12b,12c、第1鉄心11の第1脚磁心11c、および、第1鉄心11の第1基部磁心11aからなる閉磁路に、主磁束φ1が発生する。主磁束φ1の一部は、制御巻線14が卷回された第2鉄心12の第2脚磁心12cを流れるが、第1鉄心11と第2鉄心12の配列関係によって、主磁束φ1は制御巻線14と鎖交することがないため、制御巻線14に誘起電圧は発生しない。
【0029】
次に、主巻線13に交流電源から電圧e1を印加し、その結果生じる主磁束φ1の瞬時値の方向が図2(B)に矢印で示す方向であるとし、また、制御巻線14に直流電源から電圧e2を印加し、流れる制御電流i2の結果生じる制御磁束φ2の方向が図2(B)に矢印で示す方向で一定とすると、接触面A2、A3では、主磁束φ1と制御磁束φ2とが同方向となり、接触面A1,A4では、主磁束φ1と制御磁束φ2とが逆方向となる。また、主磁束φ1の瞬時値の方向が逆方向になると、制御磁束φ2の方向は変わらないため、接触面A2,A3では主磁束φ1と制御磁束φ2が互いに逆方向となり、接触面A1,A4では主磁束φ1と制御磁束φ2が同方向となる。そして、この関係は、主磁束φ1の瞬時値の方向によって周期的に繰り返される。
【0030】
これにより、主磁束φ1と制御磁束φ2の方向が同方向と逆方向になる接触面A1~A4の透磁率を、制御巻線14に印加する電圧e2によって変化させることができ、主巻線13のインダクタンスを制御することができる。このことは、制御巻線14に印加する電圧を交流電圧にした場合も同様である。
【0031】
図3は、図1に示す電磁機器の制御特性例を示す図であり、実機を用いて計測したデータを、正規化して表したものである。図3では、制御巻線14へ印加する電圧e2を変化させることによって、制御電流i2を変化させた場合の主巻線13のインダクタンスの変化が示されている。図3に示すように、制御電流i2を変化させることによって、主巻線13のインダクタンスは単調減少している。
【0032】
このように、本実施形態の電磁機器10は、主巻線13のインダクタンスを変化させるために、第1鉄心11と第2鉄心12の2個の鉄心と主巻線13と制御巻線14の2個の巻線の、少ない構成部材で構成することができる。また、第1鉄心11と第2鉄心12との接触面には、磁気的な空隙が発生しないため、制御電流によるインダクタンスの変化量を大きくすることができる。
【0033】
[第1の実施形態の変形例1]
図4は、図1に示す電磁機器の一変形例を示す図である。図4に示す電磁機器10Aは、第1鉄心11に卷回した主巻線13を、第1脚磁心11bに卷回した主巻線13と第1脚磁心11cに卷回した主巻線13とに分割して卷回し、主巻線13と主巻線13とを直列接続している。また、第2鉄心12に卷回した制御巻線14は、第2脚磁心12cに卷回した制御巻線14と第2脚磁心12bに卷回した制御巻線14とに分割して卷回し、制御巻線14と制御巻線14とを直列接続している。これにより、いずれかの脚磁心に巻線を卷回した電磁機器10に比べて、電磁機器10Aは前後左右(X軸、Y軸方向)の重量バランスが良好になる。制御巻線14を分割して脚磁心に卷回する構成は、他の実施形態においても適用可能である。
【0034】
[第1の実施形態の変形例2]
図5は、図1に示す電磁機器の他の変形例を示す図である。図5に示す電磁機器10Bでは、第1鉄心11の第1脚磁心11b,11cの先端と第2鉄心12の第2脚磁心12b,12cの先端とが接触するそれぞれの接触面に、楔型の間隙Gを形成している。これにより、主磁束φ1と制御磁束φ2の共通磁路は、第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b,12cの先端との接触面と、楔形の間隙G部分との並列回路を含むことになる。そして、この並列回路によって、磁気特性が改善され、主巻線13の主電流i1は高調波成分の少ない低歪電流となる。第1鉄心11の複数の第1脚磁心の先端と第2鉄心12の第2脚磁心の先端とが接触するそれぞれの接触面に、楔型の間隙Gを形成する構成は、他の実施形態においても適用可能である。
【0035】
[第2の実施形態]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器20Aは、三相六脚構造の電磁機器であり、1個の第2鉄心12に対して、それぞれ2本の第1脚磁心を備えた3個の第1鉄心11u,11v,11wを備え、第1鉄心11u,11v,11wにそれぞれ卷回した主巻線13u,13v,13wが三相交流電源に接続されている。より具体的には、図1に示した電磁機器10における2本の第1脚磁心を有する第1鉄心11と同じ構成の3個の第1鉄心11u,11v,11wを準備し、3個の第1鉄心11u,11v,11wのそれぞれの第1脚磁心の配列方向が、第2鉄心12の第2脚磁心12b、12cの配列方向と直交した状態で、第1鉄心11u,11v,11wの6個の第1脚磁心の先端と2つの第2脚磁心12b、12cの先端とを接触させている。
【0036】
そして、6個の第1脚磁心の先端と2つの第2脚磁心12b、12cの先端との接触面における、第1脚磁心と第2脚磁心の積層鋼板の積層方向は、第1の実施形態と同様に、同じ方向に整列している。第2鉄心12については、第1の実施形態と同様に、カットコアが用いられ、制御巻線14が卷回されている。
【0037】
3個の第1鉄心11u,11v,11wに卷回したそれぞれの主巻線13u,13v,13wには、三相交流電源の電圧e1u,e1v,e1wが印加される。主巻線13u,13v,13wにそれぞれ流れる主電流i1u,i1v,i1wによって、第1鉄心11u,11v,11wと第2鉄心12によって形成される磁路には、主磁束φ1u,φ1v,φ1wが生じる。ここで、制御巻線14に制御電流i2を流すと、主磁束φ1u,φ1v,φ1wとのそれぞれの共通磁路の透磁率に影響を与える制御磁束φ2が発生し、主巻線13u,13v,13wのインダクタンスを変化させることができる。
【0038】
主巻線13u,13v,13wのインダクタンスは、第1の実施形態と同様に制御電流i2を大きくするにしたがって低下する。このように、本発明は、三相の電磁機器にも適用でき、一つの制御巻線14の電流を変化させることによって、間単に三相電磁機器のインダクタンスを変化させることができる。この点は、他の三相電磁機器の実施形態についても同様である。
【0039】
[第3の実施形態]
図7は、本発明の第3の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器20Bは、三相三脚構造の電磁機器であり、第1鉄心11Aとして、第1基部磁心11aから同一方向に延びる3本の第1脚磁心11b,11c,11dを一体に形成した電磁鋼板を複数枚積層した、積層鋼板を有している。3本の第1脚磁心11b,11c,11dの先端は、第1脚磁心11b,11c,11dの配列方向が第2鉄心12の2本の第2脚磁心12b、12cの配列方向と直交する状態で、それぞれ第2鉄心12の2本の第2脚磁心12b、12cの先端に接触している。そして、接触面において第1脚磁心11b,11c,11dの積層鋼板の積層方向と第2脚磁心12b、12cの積層鋼板の積層方向が同じ方向に整列している。第2鉄心12は、第1の実施形態の電磁機器10と同様に、カットコアが用いられ、制御巻線14が卷回されている。
【0040】
第1鉄心11Aの3本の第1脚磁心11b,11c,11dには、それぞれ主巻線13u,13v,13wが卷回され、三相交流電源に接続されている。主巻線13u,13v,13wにそれぞれ流れる主電流i1u,i1v,i1wによって、第1鉄心11Aの第1脚磁心11b,11c,11dには主磁束が発生する。ここで、制御巻線14に制御電流i2を流すと、主磁束との共通磁路の透磁率に影響を与える制御磁束φ2が発生し、主巻線13u,13v,13wのインダクタンスを変化させることができる。
【0041】
主巻線13u,13v,13wのインダクタンスは、第1の実施形態と同様に制御電流i2を大きくするにしたがって低下する。このように、本発明は、3本の第1脚磁心11b,11c,11dを有する第1鉄心11Aと、2本の第2脚磁心12b、12cを有する第2鉄心12と、4個の巻線によって、インダクタンスが可変可能な三相電磁機器を得ることができる。
【0042】
[第4の実施形態]
図8は、本発明の第4の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。図8(A)に示す本実施形態の電磁機器20Cは、三相五脚構造の電磁機器である。本実施形態の電磁機器20Cは、第3の実施形態の三相三脚構造の電磁機器20Bに比べて、第1脚磁心11b,11c,11dの両端側に、第1脚磁心11e、11fを設けた五脚構造の第1鉄心11Bを有しており、各第1脚磁心11b~11fの先端が、第2鉄心12の2本の第2脚磁心12b、12cの先端に接触している。電磁機器20Cの他の構成については、第3の実施形態の電磁機器20Bと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0043】
第8図(B)に示す電磁機器20Dは、図8(A)に示す電磁機器20Cの制御巻線14として、2本の第2脚磁心12c、12bにそれぞれ制御巻線14,14を分割して卷回し、制御巻線14,14を直列接続したものである。電磁機器20Dの他の構成は、図8(A)に示す電磁機器20Cと同様である。本実施形態の電磁機器20Dは、第1実施形態の変形例1で説明した図4に示す電磁機器10Aと同様に、前後左右(X軸、Y軸方向)の重量バランスが良好になる。
【0044】
[第5の実施形態]
図9は、本発明の第5の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器30は、略コの字型の第1鉄心11と、同じく略コの字型をした第2鉄心12’とを有している、第1鉄心11は、第1の実施形態で示した電磁機器10と同様に、第1基部磁心11aから同一方向に延びる2本の第1脚磁心11b,11cを一体に形成した略コの字型の電磁鋼板を複数枚積層した、積層鋼板からなっている。一方、第2鉄心12’は、第2脚磁心12b’、12c’を構成する積層鋼板の間に、第2脚磁心12b’、12c’を連結するための第2基部磁心12a’を構成する積層鋼板を積層した構造を有しており、第2基部磁心12a’と第2脚磁心12b’、12c’を構成する電磁鋼板は、第2脚磁心12b’、12c’の配列方向(図9のY軸方向)と同じ方向に積層されている。これにより、第2鉄心12’は、積層方向に垂直な方向である、図9のX軸方向から見た場合、略コの字形状となるように形成されている。
【0045】
第1鉄心11の第1脚磁心11b,11cの少なくともいずれか一方には、主巻線13が卷回され、第2鉄心12’の第2脚磁心12b’,12c’の少なくともいずれか一方には制御巻線14が卷回されている。第1鉄心11と第2鉄心12’とは、第1鉄心11の第1脚磁心11b,11cの配列方向(図9のX軸方向)と第2鉄心12’の第2脚磁心12b’,12c’の配列方向(図9のY軸方向)とが直交した状態で、第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b’,12c’の先端とが、4つの接触面で、絶縁フィルム等を介さずに直接接触している。そして、接触面における第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の積層方向と第2脚磁心12b’,12c’の積層鋼板の積層方向が同じ方向(図1(A)のX軸方向)に整列している。
【0046】
このように、本発明の電磁機器は、第2鉄心をカットコアでない積層鉄心として構成することも可能である。本実施形態の電磁機器30においても、接触面で第1脚磁心11b,11cの先端と第2脚磁心12b’,12c’の先端とを接触させた際に、第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の電磁鋼板と第2脚磁心12b’,12c’の積層鋼板の電磁鋼板とが対向し、第1脚磁心11b,11cの積層鋼板の絶縁層と第2脚磁心12b’,12c’の積層鋼板の絶縁層とが対向するように構成している。本実施形態の電磁機器30の他の構成と動作については、第1の実施形態の電磁機器10と同様であるので、その説明は省略する。
【0047】
[第6の実施形態]
図10は、本発明の第6の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器30Aは、三相六脚構造の電磁機器であり、図6に示した第2の実施形態の電磁機器20Aと同様に、2脚の脚磁心を有する3個の第1鉄心11u,11v,11wと2脚の脚磁心を有する第2鉄心12’を組み合わせたものである。そして、電磁機器30Aは、第2鉄心12’の構造として、第5の実施形態の電磁機器30と同様に、第2脚磁心12b’、12c’を構成する積層鋼板の間に、第2脚磁心12b’、12c’を磁気的に連結するための第2基部磁心12a’を構成する積層鋼板を積層した構造を用いている。電磁機器30Aの構成は、第2の実施形態の電磁機器20Aと同様であるので、その説明を省略する。
【0048】
[第7の実施形態]
図11は、本発明の第7の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器30Bは、三相三脚構造の電磁機器であり、図7に示した第3の実施形態の電磁機器20Bにおいて、3脚の脚磁心を有する第1鉄心11Aに組み合わされる第2鉄心12’として、カットコアではなく、第5の実施形態の電磁機器30と同様に、第2脚磁心12b’、12c’を構成する積層鋼板の間に、第2脚磁心12b’、12c’を連結するための第2基部磁心12a’を構成する積層鋼板を積層した構造を用いたものである。電磁機器30Bの構成は、第7の実施形態の電磁機器20Bと同様であるので、その説明を省略する。
【0049】
[第8の実施形態]
図12は、本発明の第8の実施形態に係る電磁機器の一構成例を示す斜視図である。本実施形態の電磁機器30Cは、三相五脚構造の電磁機器であり、図8(A)に示した第4の実施形態の電磁機器20Cにおいて、第2鉄心12’をカットコアではなく、第5の実施形態の電磁機器30と同様に、第2脚磁心12b’、12c’を構成する積層鋼板の間に、第2脚磁心12b’、12c’を連結するための第2基部磁心12a’を構成する積層鋼板を積層した構造を用いたものである。電磁機器30Cの構成は、第4の実施形態の電磁機器20Cと同様であるので、その説明を省略する。
【0050】
以上説明したように、本発明の電磁機器は、必要な巻線の数が少なく、鉄心の構造が簡単であるため、電磁機器を軽量に作製することができる。また、主磁束と制御磁束の磁路中に、ギャップが存在しないため、制御電流の変化に対して大きなリアクタンス変化を得ることができる。
【符号の説明】
【0051】
10,10A,10B,20A,20B,20C,20D,30,30A,30B,30C…電磁機器、11,11A,11B,11u,11v,11w…第1鉄心、11a…第1基部磁心、11b~11f…第1脚磁心、12,12'…第2鉄心、12a,12a'…第2基部磁心、12b,12b',12c,12c'…第2脚磁心、13,13u,13v,13w,13,13…主巻線、14,14、14…制御巻線、100…電力用可変リアクトル、101、102…鉄心、A,A1~A4,B…接触面、G…間隙。
図1
図2
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