(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】多結晶シリコン製造用シードの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20240129BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
H01L21/304 611S
(21)【出願番号】P 2020078201
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】523119425
【氏名又は名称】高純度シリコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】宮田 幸和
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-155855(JP,A)
【文献】国際公開第2018/151140(WO,A1)
【文献】特開2007-118354(JP,A)
【文献】特表2009-545473(JP,A)
【文献】特開2010-194868(JP,A)
【文献】特開2018-117034(JP,A)
【文献】特開2010-083743(JP,A)
【文献】特開2014-125358(JP,A)
【文献】特開平08-187723(JP,A)
【文献】国際公開第2010/016479(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 -33/193
H01L 21/304
21/463
B28D 1/00 -7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンロッドを長軸方向に沿って平行にスライスして複数の板状部材を作製するスライス工程と、前記板状部材を長さ方向に切断して断面矩形の多結晶シリコン製造用シードを複数作製するシード形成工程と、を有する多結晶シリコン製造用シードの製造方法であって、
前記スライス工程では、前記シリコンロッドの長さ方向に間隔をあけて水平に並べた少なくとも2個の載置台上に前記シリコンロッドを横にして載置した状態で、前記シリコンロッドを切断刃によって長軸方向に縦に切断しており、
前記載置台は、前記シリコンロッドの外面の曲率より小さい曲率の凹状に形成された載置面を有していることを特徴とする多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【請求項2】
前記スライス工程では、前記載置台上に前記シリコンロッドを載置した状態で、前記切断刃により前記シリコンロッドの一側面部を切り落とした後、その切断面を上方に向けるように前記シリコンロッドを載置台上で回転させ、その後、前記切断刃により前記シリコンロッドをスライスすることを特徴とする請求項1に記載の多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【請求項3】
前記載置面の曲率は、前記シリコンロッドの外周面の曲率の0.985倍以上0.989倍以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【請求項4】
前記載置台の上端面は、前記載置面に前記シリコンロッドを載置した状態で、該シリコンロッドの中心高さ位置と同じかそれよりも低く、かつ、前記シリコンロッドの一側面部を切り落とした際の切断下端位置よりも高くなるように設定されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【請求項5】
前記スライス工程では、前記シリコンロッドを載置して横移動を抑制する位置決め台が該シリコンロッドの長さ方向に間隔をあけて少なくとも2個設けられ、前記位置決め台は、前記シリコンロッドの外周面の周方向に間隔をあけた2箇所に当接することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【請求項6】
前記位置決め台の前記シリコンロッドへの当接面は、水平方向に対して30°以上40°以下の角度で傾斜していることを特徴とする請求項5記載の多結晶シリコン製造用シードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多結晶シリコンを製造する際のシリコン芯棒となるシードをシリコンロッドから切断する多結晶シリコン製造用シードの製造方法及び切断加工治具に関する。
【背景技術】
【0002】
多結晶シリコン製造方法としてシーメンス法が知られている。シーメンス法は、還元反応容器内にシリコン析出のためのシード(芯棒)が立設され、その表面にクロロシランガス及び水素ガスによる還元反応や、熱分解反応によりシリコンが堆積される。このシリコン析出用のシードは、溶融シリコンから引上げ法により製造する方法や、多結晶又は単結晶シリコンロッド(以下、単にシリコンロッドという。)からの切出しによる方法により、長尺状に形成されたものが用いられている。
【0003】
シリコンロッドからシードを作製する場合、円柱状のシリコンロッドを台の上に横向きに設置して、その上方から回転切断刃を下降して、シリコンロッドの一端部からシリコンロッドの長さ方向に平行に切断することにより、複数枚の板状部材にスライスし、その板状部材を面と直交してさらに切断することで、断面矩形状のシードにする。
【0004】
このような長尺状のシードを製造する場合、その切断材料であるシリコンロッドが脆性材料であることから、切断時の振動等によりクラックや割れが生じないようにする必要がある。
【0005】
特許文献1では、シリコンロッドをテーブル上に支持する際に、シリコンロッドの下に敷板を設けるとともに、シリコンロッドの側面との間にマグネットや当て板を設け、さらに、一組の櫛歯状の端面部材をクッション部材を介してシリコンロッドの両端面に接触させ、これら端面部材でシリコンロッドを軸方向に押圧した状態で、その櫛歯の間に切断刃を案内しながら複数の板状部材を製作することが開示されている。板状部材はさらに細幅に切断されて断面矩形の複数のシードが製造される。
【0006】
また、特許文献2では、シリコンロッドの両端をロッド保持具により保持した状態で、シリコンロッドから板状部材を順次切り取り、シリコンロッドを連続する2つの切断の間に90°又は180°軸上で回転することで、熱処理を行うことなく細棒製造におけるシリコンロッドや細棒の破損を回避する方法が開示されている。
【0007】
特許文献3には、インゴット(シリコンロッド)をウエハに切り出す際の下に敷くインゴット支持用治具として、シリコンロッドの表面形状に沿う凹曲面を有し、凹曲面の長手方向に沿って延びる複数の空洞を内部に有するセラミックス製の中空構造体からなる治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010‐83743号公報
【文献】特開2012‐134489号公報
【文献】特開2007‐118354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2のようにシリコンロッドの両端の一部を保持具で単に固定するだけでは、固定軸から外れた部分での切断では切断時の振動等を受け易い。特許文献3では、インゴットを支持用固定治具とともに切断刃で切断する際の切断刃から受ける応力や切断刃の歪によるウエハの歪、クラック割れを抑制する治具の構成であり、ロッドと支持用治具の径方向の曲率半径を揃えている構成ではあるが、ロッド状物を長軸方向に切断する場合での利用としては、切断時の振動の影響が異なるため、固定方法の工夫などが必要である。
【0010】
一方、特許文献1の切断方法は、シリコンロッドの両端とともに側面もマグネットや当て板で支持しているため、固定方法としては比較的安定しているが、多結晶シリコンロッドがロッド長軸に対して均一な形状ではなく、部分的に長軸に対する断面の径が異なる場合があることや、長軸に対してわずかではあるが反りなどを生じている場合など、支持が十分でない場合がある。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、シリコンロッドを長軸方向に切断して多結晶シリコン製造用シードを製造する方法において、切断加工の際に、割れや欠けなどの加工不良を低減し、加工歩留りを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の多結晶シリコン製造用シードの製造方法は、シリコンロッドを長軸方向に沿って平行にスライスして複数の板状部材を作製するスライス工程と、前記板状部材を長さ方向に切断して断面矩形の多結晶シリコン製造用シードを複数作製するシード形成工程と、を有する多結晶シリコン製造用シードの製造方法であって、
前記スライス工程では、前記シリコンロッドの長さ方向に間隔をあけて水平に並べた少なくとも2個の載置台上に前記シリコンロッドを横にして載置した状態で、前記シリコンロッドを切断刃によって長軸方向に縦に切断しており、
前記載置台は、前記シリコンロッドの外面の曲率より小さい曲率の凹状に形成された載置面を有している。
【0013】
この製造方法によれば、シリコンロッドの外面の曲率より小さい曲率の凹状の載置面にシリコンロッドを載置することにより、シリコンロッドの長軸に対して垂直方向の振れを少なくすることができ、その載置台をシリコンロッドの長さ方向に間隔をあけて少なくとも2個以上設けることにより、シリコンロッドを安定して支持することができ、均一な厚さの板状部材を作製することができる。
また、シリコンロッドの側部を切断した際の切断物を凹状の載置面により保持することが可能であり、切断時の振動による破損を防止できる。
【0014】
多結晶シリコン製造用シードの製造方法において、前記スライス工程では、前記載置台上に前記シリコンロッドを載置した状態で、前記切断刃により前記シリコンロッドの一側面部を切り落とした後、その切断面を上方に向けるように前記シリコンロッドを載置台上で回転させ、その後、前記切断刃により前記シリコンロッドをスライスするとよい。
【0015】
シリコンロッドを切断する際に、切断刃が切り抜ける最後の部分でシリコンロッドに割れや小さい欠けが生じ易い。また、切断刃が切り抜ける状態に近づくに従い切断物やシリコンロッドは振動し易くなるため、欠けや割れが生じやすくなる。また、シリコンロッドの側部は、これにより生じる切断物は一面が円弧面であるため、シリコンロッドの直径によっては、シードを形成するのに十分な厚さを幅方向の全面にわたって確保することはできない。このため、シードの確保ができない場合はその部分は除去されるが、最初に一側面部を切り落とした後に、その切断面を上方に向けてスライスすることにより、切断刃が切り抜ける部分で小さい欠けが生じたとしても、その後のシード形成工程において、欠けが生じた部分を切断除去できるため、歩留まりの低下を抑制することができる。
また、このように90°回転させた状態でも、シリコンロッドの円弧面状の外周面を凹状の載置面により安定して支持することができる。
【0016】
多結晶シリコン製造用シードの製造方法において、前記載置面の曲率は、前記シリコンロッドの外周面の曲率の0.985倍以上0.989倍以下であるとよい。
【0017】
載置面の曲率がシリコンロッドの外周面の曲率の0.989倍を超えている場合は、載置面とシリコンロッドとの隙間が小さくなるため、シリコンロッドが反っている場合などはシリコンロッドを載置台に載置する際の位置決め作業が難しくなる。0.985倍未満の場合には、載置台に載置したシリコンロッドが長軸方向に対して垂直方向に振れやすくなるため、切断時の固定状態が低下するおそれがある。
【0018】
多結晶シリコン製造用シードの製造方法において、前記載置台の上端面は、前記載置面に前記シリコンロッドを載置した状態で、該シリコンロッドの中心高さ位置と同じかそれよりも低く、かつ、前記シリコンロッドの一側面部を切り落とした際の切断下端位置よりも高くなるように設定されているとよい。
【0019】
載置台の上端面がシリコンロッドの中心高さ位置と同じかそれより低いことから、載置台の凹状の載置面の上方が開放状態となっており、シリコンロッドを載置台に載置する作業が容易になる。また、シリコンロッドの側部を切断すると、切り落とされた切断物は下方に落下するが、載置台の上端面が切断下端位置よりも高い位置に設定されているので、シリコンロッドの下方で載置面が近接しており、切断物の落下距離が小さくなることで、切断時の破損を防止できる。
【0020】
多結晶シリコン製造用シードの製造方法において、前記スライス工程では、前記シリコンロッドを載置して横移動を抑制する位置決め台が該シリコンロッドの長さ方向に間隔をあけて少なくとも2個設けられ、前記位置決め台は、前記シリコンロッドの外周面の周方向に間隔をあけた2箇所に当接するとよい。
載置台とは別に位置決め台を設けることにより、載置台の載置面とシリコンロッドの曲率の各違いによるシリコンロッドの長軸方向に対する垂直方向の動きをより確実に抑制して、切断寸法精度を高めることができるとともに、切断時の欠けの発生もより低減できる。
【0021】
多結晶シリコン製造用シードの製造方法において、前記位置決め台の前記シリコンロッドへの当接面は、水平方向に対して30°以上40°以下の角度で傾斜しているとよい。位置決め台の角度が30°よりも小さいと、切断時に位置決め台上でのシリコンロッドが動きやすくなり、40°よりも角度が大きいと載置台上のシリコンロッドの高さ位置と位置決め台上でのシリコンロッドの高さ位置の調整が取りにくくなり、載置台上への安定した状態での保持の調整が難しくなる場合がある。
位置決め台の当接面をこの範囲の傾斜角度とすることにより、シリコンロッドをより安定して保持することができる。
【0022】
本発明の載置台は、多結晶シリコン製造用シードを製造する際に前記シリコンロッドを載置する載置台であって、前記シリコンロッドを載置する表面が円弧面に形成されている。
【0023】
また、本発明の位置決め台は、多結晶シリコン製造用シードを製造する際に前記シリコンロッドを載置して横移動を抑制する位置決め台であって、前記シリコンロッドの外周面の周方向に間隔をあけた2箇所に当接するように下方から上方に向けて相互に離間する方向に傾斜する当接面が設けられている。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、シリコンロッドを長軸方向に切断して多結晶シリコン製造用シードを製造する方法において、切断加工の際に、割れや欠けなどの加工不良を低減し、加工歩留りを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明に係る多結晶シリコン製造用シードの製造方法の一実施形態を説明する図であり、(a)が切断前のシリコンロッド、(b)がスライス工程における切断位置を鎖線で示したシリコンロッド、(c)がスライス工程後の板状部材をそれぞれ示す斜視図である。
【
図2】多結晶シリコン製造用シードの製造方法に用いられる製造装置を示す正面図である。
【
図3】
図2の製造装置の切断刃付近の断面図である。
【
図4】本発明に係る載置台の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の載置台にシリコンロッドを載置した状態の側面図である。
【
図6】本発明に係る位置決め台の実施形態を示す斜視図である。
【
図7】
図6の載置台にシリコンロッドを載置した状態の側面図である。
【
図8】
図2の製造装置に用いられている端面支持台の側面図である。
【
図9】シリコンロッドの切断方法の一例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る多結晶シリコン製造用シードの製造方法の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0027】
本実施形態の多結晶シリコン製造用シードの製造方法は、
図1(a)に示すような略円柱状の多結晶シリコンのシリコンロッド1を、
図1(b)の鎖線で示すように、その長手方向(長軸方向)に沿って平行にスライスして
図1(c)で示すような板状部材2を複数作製するスライス工程と、その後に、これらの板状部材2を
図1(c)の鎖線で示すように、さらに切断面方向と直交する方向に沿って平行に切断することにより、断面矩形(例えば約10mm角)の複数の多結晶シリコン製造用のシード3を作製するシード形成工程とを有する。
このうち、スライス工程においては、
図2に示す多結晶シリコン製造用シード製造装置100が用いられる。
【0028】
このシード製造装置100は、基台10上に、シリコンロッド1を支持するテーブル11と、該テーブル11上のシリコンロッド1を切断する切断刃12とが取り付けられており、シリコンロッド1をテーブル11の上に横向きに設置して、その上方から回転する切断刃12を下降して、シリコンロッド1の一端部からその長さ方向(長軸方向)に平行に切断する装置である。基台10の上にテーブル11が長さ方向に移動可能に支持され、そのテーブル11上に、水平状態のシリコンロッド1を載置する載置台30及びシリコンロッド1の左右方向の位置決めをするための位置決め台40、シリコンロッド1の両端面を支持する端面支持台51,52が設けられ、基台10に切断刃12及びその駆動機構等が支持されている。
【0029】
載置台30は、テーブル11上に、シリコンロッド1の長さ方向に間隔をあけて少なくとも2個設置される。この載置台30は、
図4及び
図5に示すように、下面31が平坦面、上面が凹状の載置面32に形成されている。その載置面32は、円弧面に形成され、その曲率(1/R1)は、載置されるシリコンロッド1の外周面1aの曲率(1/R0)より小さく、1/R0の0.985倍以上0.989倍以下に設定されている。
また、載置台30の上端面33は、載置面32にシリコンロッド1を載置した状態で、シリコンロッド1の中心1bの高さ位置と同じかそれよりも低く、かつ、
図5の鎖線で示すようにシリコンロッド1の両側面のうちの片側の一側面部1cを切り落とした際の切断下端位置1dよりも高くなるように設定されている。
【0030】
言い換えると、載置台30の高さをH1、載置面32の最も低い位置までの高さをH2とすると、シリコンロッド1をテーブル11上に水平に配置した状態で、載置面32の最も低い位置から載置面32の最も高い位置までの垂直距離(H1-H2)がシリコンロッド1の半径寸法R0と同じか、それより若干小さい寸法に設定されている。また、略円柱状のシリコンロッド1から最初に一側面部1cを切り落とした際に形成される切断面1eの切断下端位置1dの高さH3よりも高くなるように設定されている。
なお、この載置台30は例えば木材により形成される。
【0031】
具体的な寸法は必ずしも限定されるものではないが、シリコンロッドの直径サイズにより、例えば、曲率(1/R0)が0.010/mm以上0.033/mm以下、長さL0が100cm以上250cm以下のシリコンロッド1に対して、幅W1が80mm以上250mm以下、高さH1が50mm以上120mm以下、長さL1が50mm以上100mm以下、下面31から載置面(凹湾曲面)32の最も低い位置(最下点)までの高さH2が10mm以上20mm以下、載置面32の曲率(1/R1)が0.024/mm以上0.028/mm以下に設定される。
【0032】
位置決め台40は、
図7に示すように、下面41が平坦面、上面がシリコンロッド1の外周面1aの周方向に間隔をあけた2箇所に当接するように、V字状を構成して対向するように二つの傾斜面42が形成されている。これら傾斜面42は、下方から上方に向かうにしたがって漸次離間するように傾斜しており、水平方向となす傾斜角度θ1は30°以上40°以下に形成されている。両傾斜面42の下端は、水平な底面43により連結されている。
【0033】
この位置決め台40の具体的寸法は必ずしも限定されるものではないが、シリコンロッドの直径サイズにより、例えば、前述した寸法のシリコンロッド1に対して、幅W2が80mm以上250mm以下、高さH4が30mm以上70mm以下、長さL2が50mm以上100mm以下、下面41から底面43までの高さH5が10mm以上20mm以下、底面43の幅W3が15mm以上30mm以下に設定される。
なお、この位置決め台40は例えば木材により形成される。
【0034】
これら載置台30及び位置決め台40をテーブル11の上にシリコンロッド1の長さに応じて2個以上ずつ、これらの軸方向を一致させた状態でそれぞれ相互に間隔をおいて設置する。2個ずつ設置する場合は、
図2に示すように、両端部に位置決め台40、その間に載置台30となる配置が好ましい。
【0035】
そして、載置台30及び位置決め台40の上にシリコンロッド1を水平に配置する。位置決め台40には、その両傾斜面42がシリコンロッド1の外周面1aに当接する。載置台30は、その載置面32がシリコンロッド1の外周面1aの曲率(1/R0)より小さく曲率(1/R1)に設定されているので、載置面32の最も低い位置でシリコンロッド1の外周面1aが軸方向に沿う線状に接触する。この場合、シリコンロッド1は、位置決め台40の両傾斜面42には線接触状態での接触となるが、載置台30との接触では、載置面32の底部から上部に向かい、外周面1aに対して周方向の動きを抑制するような接触となる。
【0036】
なお、端面支持台51,52は、テーブル11上に間隔をあけて2個設けられており、これらの間に、シリコンロッド1を長軸方向に押圧した状態に支持する。その一方の端面支持台51は、押圧機構53が設けられており、シリコンロッド1の端面を押圧することができるようになっている。また、両端面支持台51,52(
図8には端面支持台51のみ示している)には、切断刃12を通過させるための溝55が、目的とする板状部材2の厚さに相当するピッチで複数形成されている。
また、切断刃12は、例えばダイヤモンドホイールの1枚刃によって円盤状に形成されており、基台10上に固定状態の固定台13に、上下スライド機構14、及び左右スライド機構15を介して、駆動部16とともに支持されている。この取付姿勢で、切断刃12は垂直に配置される。なお、
図3中符号17は、切断刃12の上方を覆うカバーである。
【0037】
次に、このシード製造装置100を使用してシリコンロッド1からシード3を製造する方法について説明する。このシード3を製造するには、シリコンロッド1をスライスして板状部材2を形成するスライス工程、板状部材2をさらに切断してシード3を形成するシード形成工程とを有する。以下、工程ごとに説明する。
【0038】
(スライス工程)
上述したように、テーブル11に載置台30及び位置決め台40を並べた状態で、これらの上にシリコンロッド1を横にして載置し、シリコンロッド1の両端面を端面支持台51,52により長軸方向に押圧した状態に保持する。
この状態で、切断刃12を回転させながら、テーブル11をシリコンロッド1の長軸方向に移動することにより、シリコンロッド1を一端から長軸方向に縦に切断し、シリコンロッド1の他端まで切り終わったら、テーブル11を元の位置まで戻すとともに、目的とする板状部材2の厚さに相当するピッチで切断刃12を横方向(シリコンロッド1の径方向)にスライドして、次の切断を行う。これを順次繰り返して、シリコンロッド1を板状にスライスする。このとき形成される板状部材2の厚さは例えば5mm以上15mm以下である。
【0039】
また、最初の切断で、シリコンロッド1の一側面部1cが切り落とされるが、載置面32の最も低い位置から載置面32の最も高い位置までの垂直距離(H1-H2)がシリコンロッド1の半径寸法R0と同じか、それより若干小さい寸法に設定される。つまり、載置台30の上端面33は、シリコンロッド1を載置台30に載置した状態で、シリコンロッド1の中心1bの高さ位置と同じかそれより低くなるように設定される。また、シリコンロッド1の最初の一側面部1cを切り落とした際に形成される切断面1eの最切断下端位置1dよりも載置台30の上端面33が高くなるように設定されているので、切り落とした切断物(一側面部1c)は、載置面32上に落下することになる。しかも、載置面32の曲率とシリコンロッド1の外周面の曲率との差がわずかであるので、切断物の落下距離も小さく、切断物が落下により欠損等を生じることがない。
これにより、一側面部切断による切断物からのシード採取の歩留り(取得率)が向上することが期待できる。
【0040】
載置面32の最も高い位置までの高さ(上端面33の高さ)H1は、できるだけ高い方が、切り落とされた切断物を載置面32上に保持し易いが、シリコンロッド1を載置する際の作業性を考慮すると、載置面32の最も低い位置から載置面32の最も高い位置までの垂直距離(H1-H2)は、シリコンロッド1の半径寸法R0と同じか、それより若干小さい寸法が好ましい。
最初の一側面部1cを切り落とした後は、切断刃12をシリコンロッド1の直径方向に所定寸法ずつずらしながらシリコンロッド1をスライスして、複数枚の板状部材2を作製する。
なお、シリコンロッド1を切断する際に、その下方に配置されている載置台30及び位置決め台40の一部を切断刃12で切断するようにしてもよい。
【0041】
(シード形成工程)
最後に、板状部材2を面方向と直交する方向にスライスして、複数本のシード3を形成する。このシード形成工程では、
図3に示す一枚刃の切断刃12に代えて、複数の切断刃を並列に並べたマルチカッタにより一枚の板状部材2から複数本のシード3を同時に形成することが可能である。
【0042】
(スライス工程の他の実施形態)
なお、シリコンロッド1の一側面部1cを切り落とした後、そのままの姿勢で順次スライスしてもよいが、
図9に示すように、最初の一側面部1cを切り落とした後、シリコンロッド1を90°回転させることにより、切断面1eを上方に向けた状態とした後、その切断面1eに直交する方向に切断刃12を配置してスライスしてもよい。
【0043】
シリコンロッド1を切断する際に、切断刃12が切り抜ける最後の部分(
図5の1cを切断する場合であると、切断面1eの切断下端位置1d)でシリコンロッド1又は切断物に細かい欠け(チッピング)が生じ易い。このため、この一側面部1cを切断した後に、切断刃12を径方向に送りながら順次スライスすると、各板状部材2の切断面の端部に欠けが生じるおそれがあり、その部分を除去すると、得られる板状部材2の幅が小さくなる。
【0044】
一方、このシリコンロッド1の一側面部1cは、これにより生じる切断物は切断面1e以外の面がすべて円弧面であるため、切断後のサイズによってはシード3を形成するのに十分な厚さを幅方向の全面にわたって確保することがし難にくくなる。このため、この一側面部1cの切断物からのシードの取得数が低下することにもなる。このような切断物(切断面1e以外の面がすべて円弧面となる切断物)は、シリコンロッド1の向きを変えないとすると、
図1(b)に1cと1fで示すように両側部に形成される。
【0045】
最初に一側面部1cを切り落とした後に、シリコンロッド1を90°回転させて、その切断面1eを上方に向けてスライスすることにより、切断刃12が切り抜ける部分で欠けが生じたとしても、その部分は、最初の一側面部1cに対して反対側の側面部(1f)であり、本来切断除去される部分であるから、その後のシード形成工程において、欠けが生じた部分を切断除去すればよい。これにより、シリコンロッド1の向きを変えないで同じ方向にスライスして得られる板状部材2に対して、90°向きを変えてスライスすることにより得られる板状部材は、その幅を大きく形成することができ、歩留まりを良くすることができる。
また、このように90°回転させた状態でも、シリコンロッド1の円弧面状の外周面を凹状の載置面32により安定して支持することができることから、切断時の欠け(チッピング)が生じにくくなる。また、これにより、加工時の不良も低減することから、シードの取得率も向上することが期待できる。
また、多結晶シリコンロッド表面の状態は、シリコンの析出反応による堆積物であることから、反応条件によっては必ずしもスムースとは言い難く、表面での凹凸の形成は避けられない。このため、切断時のロッド外周面への切断刃の接触時にはチッピングなども起きやすくなることから、このような状況機会を低減するという面からも、シリコンロッドの1側面部の切断の際には90°回転して向きを変えて切断を行うことがシード歩留り向上の観点からも望ましい。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の効果を確認するために確認実験を行った。
(実施例1)
直径76mm、長さ約2mのシリコンロッドから、1辺が約7mmの断面正方形のシードを切断することを前提とし、シードの取得率について、載置台の使用の有無の状況を調べた。使用した載置台は、シリコンロッドの長軸方向の両端部から、約60~80cmの位置に各1つ配置した。また、載置台の仕様は、上端面の高さ(H1)=約55mm、長さ(L1)=約80mm、幅(W1)=約100mm、下面から載置面までの高さ(H2)=約15mmとし、木材を使用した。この場合、シリコンロッドを長軸方向に沿って平行にスライスして、複数枚の板状部材を形成し、これら板状部材をさらに切断してシードを作製した。
載置台には、シリコンロッドの外周面の曲率に対して、載置面の曲率の割合が表1に示す割合(曲率比)となるものを使用した。シリコンロッドの直径は、長さ方向の中央部の直径と両端部の直径との平均値である。試料No.8は載置台を使用しなかった。
シリコンロッド1本当り、割れや欠けが許容値以内のレベルで取得できたシードの本数を確認し、取得率は、載置台を使用しないで切断した場合の取得本数を「1」として、載置台を使用した場合の取得本数をその指数で表現した。
その結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
表1からわかるように、シリコンロッドからシード切断加工を行う場合、載置台を使用することにより、載置台を使用しない場合と比べて、シードの取得率は向上することが確認された。その際、使用する載置台のシリコンロッドの外周面の曲率に対する載置面の曲率の割合は0.985より小さい場合は、シードの取得率は向上するものの、取得率は低くなる傾向が見られた。これは、曲率の割合が小さくなると板状部材の切断時に、載置台によるシリコンロッドの固定が弱くなるため、切断時の振動の抑制が小さくなることで欠けや割れが生じやすくなることが推察される。
なお、切断加工時に生じる割れや欠けのレベルが許容値を超えて発生した割合が小さければ加工歩留りは良くなり、その割合が高いと加工歩留りは悪くなるという判断をしている。前述の取得率との関係では、取得率が高ければ加工歩留まりは良くなり、取得率が低ければ加工歩留まりは悪くなる。
【0049】
(実施例2)
シリコンロッドの析出反応における製造ロットの異なる複数のシリコンロッドについて、実施例1と同様にシードを切断して、載置台の使用の有無によるシード取得率を確認した。載置台の載置面の曲率は、各シリコンロッドの外周面の曲率に対して、0.986倍~0.989倍のものを使用した。
切断に際しては、シリコンロッドの一側面部を切り落とした後、90°回転させて切断面を真上に向けた状態でスライスすることにより板状部材を形成し、各板状部材をさらに切断してシードを作製した。
結果を表2に示す。表2において、取得率平均値は、各ロットごとに求めた取得率の平均値である。ロッド側面取得率は、シリコンロッドの側面部から取得されるシードについて、載置台未使用の場合を「1」としたときの比率である。
【0050】
【0051】
表2から明らかなように、複数ロットのシリコンロッドトに対しても、また、シリコンロッドから切断される側面部に対しても、シード切断時のチッピングなどの欠けが、載置台を使用することで低減され、シードの取得率が向上することが確認された。
【0052】
(実施例3)
載置台とともに位置決め台も使用して、実施例2と同様にシリコンロッドの切断を行ったした。位置決め台としては、仕様を傾斜面が33°及び37°の二種類とを用意し、高さ(H4)=約40mm、長さ(L2)=約80mm、幅(W2)=約100mm、下面から底面までの高さ(H5)=約15mmとして材質は木材を使用した。
なお、位置決め台の配置は、実施例1、2で行った載置台の配置に対して、シリコンロッド両端部側(両端部から、約20~30cmの位置)に各1つ配置した。
結果を表3に示す。位置決め台の欄は傾斜面の角度を示している。各取得率は、実施例2の載置台未使用の場合のシード取得率の平均値およびロッド側面部からのシード取得率の平均値を「1」としたときの比率である。
【0053】
【0054】
シリコンロッドからのシード切断加工において、載置台以外に位置決め台を併用することにより、載置台のみを使用してシード切断加工を行う場合に比べて、シード取得率がさらに向上することが確認された。
【0055】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、被切断物を多結晶シリコンロッドとしたが、本発明の多結晶シリコン製造用シードの製造方法は、単結晶シリコンロッドや他のシリコンロッドの切断にも適用することができる。
また、本発明において使用する位置決め台の位置は、シリコンロッド両端部側に配置したが、載置台の間にも配置してもよい。
また、載置台、位置決め台の各配置の間隔は、シリコンロッドの固定が行いやすい適宜の位置、切断に支障なないような適宜の位置でもよい。
また、載置台や位置決め台は、一体型のものでなくても、幾つかのパーツに加工したものを組み上げて一体化したものでもよい。
また、載置台や位置決め台は、切断加工時の受台からの汚染防止として、接触部にコーティング(Si、SiO2)などを施したものでもよい。
また、本実施形態では、載置台を木材としたが、木材以外の材質、例えば、樹脂類など、切断時の振動を吸収するような材質であれば、何でもよい。
また、本実施形態では、載置台および位置決め台を切断装置のテーブル上に配置する構成としたが、載置台や位置決め台自体をテーブル上に固定するための方法として、例えば、固定治具を用いて載置台や位置決め台の動きをなくすることで、より安定した切断作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0056】
1 シリコンロッド
1a 外周面
1b 中心
1c 一側面部
1d 最切断下端位置
1e 切断面
2 板状部材
3 シード(多結晶シリコン製造用シード)
100 シード製造装置
11 テーブル
12 切断刃
30 載置台
31 下面
32 載置面
33 上端面
40 位置決め台
41 下面
42 傾斜面
43 底面