(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】油層回収装置
(51)【国際特許分類】
C02F 1/40 20230101AFI20240129BHJP
【FI】
C02F1/40 B
(21)【出願番号】P 2020092048
(22)【出願日】2020-05-27
【審査請求日】2023-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】506332605
【氏名又は名称】基礎地盤コンサルタンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(72)【発明者】
【氏名】打木 弘一
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-057294(JP,A)
【文献】特開2002-266586(JP,A)
【文献】特開2011-122326(JP,A)
【文献】特開2019-181364(JP,A)
【文献】実開昭59-178294(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第111188592(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/24、40
B01D17/00-02
E21B1/00-49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゴ部材と、
前記カゴ部材内に収容され、液体を吸引して上方に送液する第1ポンプと、
前記第1ポンプで吸引された液体を通液する第1チューブと、
前記カゴ部材の上方に配され、下端において前記第1チューブと連通する第1容器体と、
前記第1容器体内に収容され、液体を吸引して上方に送液する第2ポンプと、
前記第2ポンプで吸引された液体を通液する第2チューブと、を少なくとも有しており、
前記第1容器体は上端が開口しており、貯留される液体には大気圧がかか
り、
前記カゴ部材の下方には、浮力調整フロートが配されることを特徴とする油層回収装置。
【請求項2】
前記第1容器体は外筒と、内筒とを有しており、
前記は外筒と前記内筒との間の第1空間と、
前記内筒内の第2空間と、は前記第1容器体の上方においてのみ連通することを特徴とする請求項1に記載の油層回収装置。
【請求項3】
前記第2ポンプが、前記第2空間に配されることを特徴とする請求項2に記載の油層回収装置。
【請求項4】
前記第1チューブの管路中に逆流防止弁が配されることを特徴とする請求項1に記載の油層回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のポンプを用いてリレー式で地上の回収タンク60まで油を汲み上げる油層回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガソリンスタンド跡地、工場跡地、或いは廃棄物投棄地等を再利用する場合において、ガソリン、燃料油及び機械油などの油類の漏洩によって敷地内外の土壌や地下水が汚染されてしまっていることが問題となってきた。
【0003】
油汚染土壌をそのまま放置すると、土壌に混入している油分が地下水とともに移動し周囲に拡散し、周辺環境に害を及ぼすことが考えられるとともに、雨水等によって土壌中の油分が離脱した場合には、地下水等に混入して周辺地域において水質を汚染する原因ともなる。
【0004】
そこで、このような油汚染土壌においては、油を速やかに回収することが望ましい。油を回収する装置として、発明者は特許文献1(特開2019-181364号公)において、圧縮ナノファイバーが効率よく油を吸着することを利用して、簡便で安価に油を回収する油層回収器を提案した。
【文献】特開2019-181364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
井戸の孔内の地下水上に形成される数cm~10数cmの高さの油層であれば、特許文献1に係る油層回収器によって効率的に油の回収を行うことができるが、孔内に形成される油層が数10cm程度の高さとなるような非常に大量の油を回収する場合には、油を吸着させる圧縮ナノファイバーの容量が足りず、特許文献1に係る油層回収器で対応することは実質的に不可能である。
【0006】
そこで、大型の高性能ポンプを用いて、井戸の孔内で地下水上に形成される油層を直接汲み上げる方法が考えられる。しかしながら、高性能ポンプは高価であること、さらに油層のみを回収することが難しく油水として組み上げることから、このような方法では油水の処分コストがかかる、という問題がある。また、高性能ポンプで油層を汲み上げた後、時間の経過(例えば、数ヶ月程度)と共に地中の油が地下水にのって移動し、再び井戸内に油層が形成されるが、地下水は季節ごとに大きく上下することから、このような時間経過毎に、同様の高性能ポンプを設置する深度を変えて、油層の汲み上げ作業を実施しなければならず、人手の面からもコストがかかる、という問題があった。
【0007】
大量の油による油層を、コストを抑制して回収するために、安価なポンプを採用することが考えられるが、そのようなポンプは揚程が低い、という問題があった。
【0008】
以上、本発明の課題は、高価な高性能ポンプを数ヶ月に一度、作業員を伴って利用することによる油層の回収コストを抑制することと、及び、揚程の低い安価なポンプを利用して、油層を回収できるように装置を構成すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記のような課題を解決するために、本発明に係る油層回収装置は、カゴ部材と、前記カゴ部材内に収容され、液体を吸引して上方に送液する第1ポンプと、前記第1ポンプで吸引された液体を通液する第1チューブと、前記カゴ部材の上方に配され、下端において前記第1チューブと連通する第1容器体と、前記第1容器体内に収容され、液体を吸引して上方に送液する第2ポンプと、前記第2ポンプで吸引された液体を通液する第2チューブと、を少なくとも有しており、前記第1容器体は上端が開口しており、貯留される液体には大気圧がかかり、前記カゴ部材の下方には、浮力調整フロートが配されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る油層回収装置は、前記第1容器体は外筒と、内筒とを有しており、前記は外筒と前記内筒との間の第1空間と、前記内筒内の第2空間と、は前記第1容器体の上方においてのみ連通することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る油層回収装置は、前記第2ポンプが、前記第2空間に配されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る油層回収装置は、前記第1チューブの管路中に逆流防止弁が配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る油層回収装置は、カゴ部材内に収容された第1ポンプで吸引され、上方へと送液された液体が貯留される第1容器体においては、液体には大気圧がかかるようになっている。本発明に係る油層回収装置では、油層の油(液体)をくみ上げる総高さのうち、所定高さ毎に一つのポンプが配されるようになっている。それぞれのポンプは、所定高さ以上の揚程を有していれば、一つ高い容器体に液体を汲み上げることができ、このような本発明に係る油層回収装置によれば、第1ポンプとして揚程が高い高価な高性能ポンプを用いる必要がなくなるとともに、装置を無人で常時稼働させることで、作業員による監視も不要で、油層の回収コストを大幅に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る油層回収装置1の模式的断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る油層回収装置1の主要部における模式的断面図である。
【
図3】第1容器体50
1と第2容器体50
2における液体の流れを説明する図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る油層回収装置1の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の第1実施形態に係る油層回収装置1の模式的断面図であり、稼働中の油層回収装置1の様子を示したものである。また、
図2は本発明の第1実施形態に係る油層回収装置1の主要部における模式的断面図である。
【0017】
図1において、Hはボーリング孔であり、本発明に係る油層回収装置1は、このボーリング孔H内に湧き出た地下水Wの上に形成される油層Oを地上に回収し、油によって汚染された土壌を改質することを想定している。
【0018】
油層Oとしては、数10cm程度の高さの規模が想定されている。このような規模の油層Oの元となった土壌汚染は、長期間にわたる産業廃棄物の不法投棄などによるところが大きい。このような数10cm程度の油層Oを、高価な高性能ポンプを使って一度で汲み上げることが考えられるが、このようにして油層Oを汲み上げた後、例えば数ヶ月経過後には地下水に乗った油により、ボーリング孔Hの上に、再び油層Oが形成されていく。従って、数ヶ月経過後に、作業員による油層Oの汲み上げ作業を再度実施しなければならない。
【0019】
一方、本発明に係る油層回収装置1では、一度現場に据え付けた後には、基本的に放置をした状態で、油層Oの汲み上げを行い、汚染土壌中の油を回収することを想定している。なお、本明細書では、装置が汲み上げる対象が、油である場合もあるし、場合によっては、地下水である場合もあるので、装置が扱う対象をまとめて「液体」と称することがある。
【0020】
本発明に係る油層回収装置1においては、油層Oにおける油を直接吸引して回収するのは、カゴ部材20に収納されている第1ポンプ301がこれを担っている。本明細書においては、第1ポンプ301などの「第1」の序数を有する構成については、サフィクスとして「1」を付することによりこれを表すことがある。
【0021】
本発明に係る油層回収装置1で用いるポンプは、この第1ポンプ301を含めて、揚程がそれほど高くない比較的安価なものを用いるようにしている。本発明は、このようなポンプを複数用いて、リレー式で地上の回収タンク60まで油を汲み上げることを特徴としている。なお、本発明において、複数用いられるポンプそれぞれを、同規格のものとすることができるが、必ずしもその必要はない。ただし、以下、本明細書では用いるポンプは同規格の共通のものとして説明する。
【0022】
本発明に係る油層回収装置1で用いるポンプは、遠心式の水中ポンプを用いることができる。第1ポンプ301の底部には、下方に突出する突部331が設けられており、これにより本体下に空間が形成されることで、第1ポンプ301の底部に設けられている不図示の開口からの液体の吸引が可能とされている。
【0023】
第1ポンプ301は電源線351から給電を受けることで、第1ポンプ301内における不図示の羽根車が回転し、前記の開口から液体が吸引され、第1ポンプ301本体の上端部に接続されている第1チューブ401からさらに上方へと、吸引した液体を送液する。
【0024】
第1ポンプ301はカゴ部材20に収納されているが、カゴ部材20は第1ポンプ301にとってメッシュ状の外囲であるために、編み目を通過できない大きさのゴミなどが第1ポンプ301により吸引されてしまい、第1ポンプ301が故障してしまうことを防止できる。
【0025】
本発明に係る油層回収装置1を運用する際においては、カゴ部材20に収納されている第1ポンプ301の開口(不図示)の位置が、油層Oの中に存在するように、カゴ部材20の上下方向の位置を調整することが肝要となる。そのために、カゴ部材20の底部には、浮力調整フロート10が設けられている。
【0026】
浮力調整フロート10は、主に容器部12から構成されており、この容器部12内に適切な量の水を封入することで浮力を調整し、カゴ部材20のボーリング孔Hでの上下の位置を調整する。容器部12には、容器部開口15が設けられており、ここから水の出し入れを行うようになっている。容器部開口15の周囲には、ねじ部13が設けられており、このねじ部13によりねじ込み式蓋体18に対して、容器部12が着脱するようになっている。一方、ねじ込み式蓋体18の上部は、カゴ部材20に固着されている。
【0027】
浮力調整フロート10の容器部12の中に適切な量の水を入れた上で、カゴ部材20側に固着されているねじ込み式蓋体18に対して、ねじ部13で容器部12を取り付けることで、カゴ部材20の下部に浮力調整フロート10を取り付けられる。浮力調整フロート10の容器部12に封入する水の量は、例えば、実験的に見いだすことができる。
【0028】
上記のような浮力調整フロート10で浮力調整されたカゴ部材20内の第1ポンプ301からは、油層O中の油が吸引され、第1チューブ401内を送液され、第1容器体501へと導かれる。第1チューブ401は、第1容器体501の底面と連通しており、第1チューブ401で送液された油は、第1容器体501の底面から第1容器体501内に流入する。
【0029】
本発明に係る油層回収装置1においては、特に第1チューブ401としてスパイラルチューブを、また、電源線351としてはスパイラル電線ケーブルを用いることが好ましい。第1チューブ401は、第1容器体501と、カゴ部材20内の第1ポンプ301とを連結するものであるが、油層Oの高さ(厚さ)の変動、或いは季節的な地下水位の上昇や下降によっては、第1容器体501とカゴ部材20との間の距離が変化する。そこで、特に第1チューブ401は、第1容器体501と、カゴ部材20との間の距離が長くなったり短じかくなったりしても、その長短を吸収することができるスパイラルチューブを用いることが、また、電源線351は同様の理由でスパイラル電線ケーブルを用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る油層回収装置1においては、第1容器体501は、外筒511と、その内側に配される内筒551とからなる二重管構造をなしている。外筒511は、筒状の本体部の下方にこの本体部から延在する外筒底部521を有しており、さらに上方においては本体部から延在する外筒天部531を有している。
【0031】
外筒底部521に対しては、第1チューブ401であるスパイラルチューブの内部空間が連通するように接続されており、第1チューブ401から送液される液体が外筒底部521から第1容器体501に流入するようになっている。
【0032】
また、平面視円形の外筒天部531においては、その略中心部に開口541が設けられており、この開口541には、第1容器体501内に配される第2ポンプ302の上端に接続されている第2チューブ402と電源線352とが挿通されるようになっている。また、このような開口541が外筒天部531に形成されているために、第1容器体501内に貯留される液体には大気圧がかかるようになっている。
【0033】
上記のような外筒511の内側の空間には内筒551が配されている。内筒551は、筒状の本体部の下方にこの本体部から延在する内筒底部561を有しており、上端部は開放されている。内筒底部561の上方には、外周側と内周側とを貫通する複数の貫通孔571が設けられている。内筒底部561には、第1ポンプ301と同様の構造を有する第2ポンプ302が配されている。
【0034】
上記のような構造の第1容器体501において、外筒511と内筒551との間の空間を第1空間A、内筒551の内側の空間を第2空間Bと定義する。内筒底部561の上方に複数の貫通孔571が設けられており、第1空間Aと第2空間Bとは第1容器体501の上方において連通している。
【0035】
第2空間Bには、第2ポンプ302が配されており、この第2ポンプ302は第2空間B内の液体を吸引し、第2ポンプ302本体の上端部に接続されている第2チューブ402を介して、第2容器体502へと送液する。
【0036】
第2容器体502も、第1容器体501と同様の二重管構造を有している。第2容器体502の第2空間B内には第3ポンプ303が配されており、第3ポンプ303で吸引された液体は、第3ポンプ303の上端部に接続されている第3チューブ403から上方の回収タンク60へと送液される。回収タンク60は、油層Oから汲み上げられた液体(主として油)を貯留しておくものである。
【0037】
本実施形態では、第1容器体501と回収タンク60との間には、容器体として、一つの第2容器体502が設けられ、油を回収タンク60へとリレー式で送液する例を示しているが、より深度の深い油層Oを回収するために、第1容器体501と回収タンク60との間により多くの容器体を設けるようにしてもよい。また、油層Oの深度が浅い油層の場合は、第2容器体502を省略して、第1容器体501から直接回収タンク60へと油を輸送するようにしてもよい。
【0038】
第1ポンプ301、第2ポンプ302及び第3ポンプ303に対する給電は地上に設けられているポンプ電源70から電源線を介して行われる。回収タンク60には液位センサ65が設けられており、回収タンク60において規定の高さまで液体が到達すると、液位センサ65がこれを検知して信号を送信する。
【0039】
ポンプ電源70は、当該信号を受信すると第1ポンプ301、第2ポンプ302及び第3ポンプ303に対する給電を停止する。これにより、回収タンク60で回収した液体が、回収タンク60から溢れることを防止できる。なお、本実施形態では、液位センサ65で検知した信号を、ポンプ電源70の停止のみに用いるようにしたが、当該信号をWWAN(Wireless Wide Area Network)などの通信回線を介して、油層回収作業の管理者に通知するように構成することも望ましい実施形態である。
【0040】
また、ポンプ電源70は、常時、各ポンプに対して給電を行うように構成する必要はなく、間欠的に各ポンプに対して給電を行うように構成することもできる。また、ポンプ電源70は、それぞれのポンプに対してタイミングをずらして給電を行うように構成することもできる。
【0041】
以上のように構成される本発明に係る油層回収装置1において、容器体における二重管構造における液体(油)の流れについて説明する。
図3は第1容器体50
1と第2容器体50
2における液体の流れを説明する図である。
図3において、第1ポンプ30
1、第2ポンプ30
2、第3ポンプ30
3のそれぞれによって流動される液体には、互いに異なるハッチングを付している。
【0042】
第1ポンプ301によって送液された液体が第1容器体501の底部から流入すると、第1容器体501の第1空間Aを満たし、貫通孔571の高さで、内筒551内の第2空間Bへと移動する。内筒551内の第2空間Bへと移動した液体は、第2ポンプ302で吸引され、第2容器体502の第1空間Aに送液される。
【0043】
ここで、例えば第2容器体502の第1空間Aにおける液体(斜線のハッチングが付された液体)には、第2容器体502の外筒天部532に開口542が設けられているために、大気圧がかかっている。従って、第2ポンプ302の性能として、少なくとも高さh以上の揚程を有するものであればよく、地下水水位Lから地上までの揚程を有する高性能なポンプを用いる必要がない。このような事情は、本発明に係る油層回収装置1におけるどの容器体とポンプにおいても共通である。
【0044】
第1容器体501や第2容器体502において、一段下方側のポンプからは、まず第1空間Aにおける液体が流入するようになっており、第1空間A内で液体が所定の高さに達すると内筒551内の第2空間Bへと移動する。一段下方側のポンプに何らかの不具合で停止することがあったとしても、当該容器体内のポンプが機能していれば、いったん第2空間Bへと移動した液体は、第1空間A側に戻ることはない。このように、本発明に係る油層回収装置1においては、二重管構造を有する各容器体は、それぞれの容器体に汲み上げられた液体(全ての液体ではないが)が、逆流して下方に戻ってしまうことを防止できる。
【0045】
以上のように、本発明に係る油層回収装置1は、カゴ部材20内に収容された第1ポンプ301で吸引され、上方へと送液された液体が貯留される第1容器体501においては、液体には大気圧がかかるようになっている。本発明に係る油層回収装置1では、油層の油(液体)をくみ上げる総高さのうち、所定高さ毎に一つのポンプが配されるようになっている。それぞれのポンプは、所定高さ以上の揚程を有していれば、一つ高い容器体に液体を汲み上げることができ、このような本発明に係る油層回収装置1によれば、第1ポンプ301として揚程が高い高価な高性能ポンプを用いる必要がなくなるとともに、装置を無人で常時稼働させることで、作業員による監視も不要で、油層の回収コストを大幅に低減することが可能となる。
【0046】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図4は本発明の第2実施形態に係る油層回収装置1の模式的断面図である。以下、第2実施形態に係る油層回収装置1が、第1実施形態に係る相違する点を主として説明する。
【0047】
先の第1実施形態において、容器体は二重管構造であったが、本第2実施形態に係る油層回収装置1では、容器体は内筒を備えない外筒のみからなるものが採用されている。先の実施形態同様、外筒は、筒状の本体部の下方にこの本体部から延在する外筒底部を有しており、さらに上方においては本体部から延在する外筒天部を有している。また、外筒天部においては、その略中心部に開口が設けられている。したがって、容器体の中の液体には、大気圧がかかるようになっている。
【0048】
第2実施形態に係る油層回収装置1では、上記のように容器体は二重管構造でない代わりに、第1チューブ401の管路中には第1逆流防止弁801が、また、第2チューブ402の管路中には第2逆流防止弁802が、また、第3チューブ403の管路中には第3逆流防止弁803が、それぞれ設けられている。これらの逆流防止弁はいずれも、チューブ内を液体が上昇して流動することは許容するが、その逆の流動は防止するようになっている。
【0049】
これらの逆流防止弁が、各チューブに設けられているために、いったんチューブ中で逆流防止弁を超えて上方に送液された液体は、逆流防止弁より下方側に流下することがない。
【0050】
以上のように構成される、第2実施形態に係る油層回収装置1においても、第1実施形態と同様の効果を享受することが可能となる。
【符号の説明】
【0051】
1・・・油層回収装置
10・・・浮力調整フロート
12・・・容器部
13・・・ねじ部
15・・・容器部開口
18・・・ねじ込み式蓋体
20・・・カゴ部材
301・・・第1ポンプ
331・・・突部
351・・・電源線
302・・・第2ポンプ
332・・・突部
352・・・電源線
303・・・第3ポンプ
401・・・第1チューブ(スパイラルチューブ)
402・・・第2チューブ
403・・・第3チューブ
501・・・第1容器体
511・・・外筒
521・・・外筒底部
531・・・外筒天部
541・・・開口
551・・・内筒
561・・・内筒底部
571・・・貫通孔
502・・・第2容器体
532・・・外筒天部
542・・・開口
60・・・回収タンク
65・・・液位センサ
70・・・ポンプ電源
801・・・第1逆流防止弁
802・・・第2逆流防止弁
803・・・第3逆流防止弁
A・・・第1空間
B・・・第2空間
H・・・ボーリング孔
O・・・油層
L・・・地下水水位
W・・・地下水