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  • 特許-汚泥の脱水方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】汚泥の脱水方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/148 20190101AFI20240129BHJP
   B01D 21/01 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C02F11/148
B01D21/01 107A
B01D21/01 107B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020101460
(22)【出願日】2020-06-11
(65)【公開番号】P2021194574
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 歩
(72)【発明者】
【氏名】都司 雅人
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 裕一郎
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-120464(JP,A)
【文献】特開昭61-181600(JP,A)
【文献】特開昭56-013099(JP,A)
【文献】特開平06-238300(JP,A)
【文献】特開昭61-074700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
C02F 1/52- 1/56
B01D 21/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥に対して、カチオン性界面活性剤と、2価金属塩と、を添加し、その後、カチオン性高分子凝集剤を添加して脱水する方法であって、
前記カチオン性界面活性剤が、下記一般式(1)によって示されるアルキル第4級アンモニウム塩、下記一般式(2)によって示されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、および下記一般式(3)によって示されるアルキルピリジニウム塩のうちの少なくとも1つであることを特徴とする汚泥の脱水方法。
【化1】
(1)
(R ~R は、独立して炭素数1~20のアルキル基、X は、Cl 、Br 、I 、またはOH である。)
【化2】
(2)
(Rは、炭素数4~24のアルキル基、X は、Cl 、Br 、I 、またはOH である。)
【化3】
(3)
(Rは、炭素数6~20のアルキル基、X は、Cl 、Br 、I 、またはOH である。)
【請求項2】
請求項1に記載の汚泥の脱水方法であって、
前記2価金属塩が、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化第1鉄、水酸化鉄(II)、硫酸第1鉄、塩化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムのうちの少なくとも1つであることを特徴とする汚泥の脱水方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の汚泥の脱水方法であって、
前記カチオン性高分子凝集剤を添加した後、さらにアニオン性高分子凝集剤を添加することを特徴とする汚泥の脱水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥の脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水処理、屎尿処理およびその他の各種産業廃水処理等において発生する有機性汚泥は難脱水性のものが多く、このような有機性汚泥に汚泥脱水剤を添加して脱水処理して得られる脱水ケーキの含水率は高い場合が多い。含水率が高い脱水ケーキを焼却処理する際の焼却燃料の増加や最終処分量の増大等、処分費、環境負荷の点等から、得られる脱水ケーキの含水率のさらなる低減が望まれている。
【0003】
従来、有機性汚泥を凝集処理して脱水する際に用いられているカチオン性高分子凝集剤としては、例えばジメチルアミノエチルメタクリレート系、ジメチルアミノエチルアクリレート系、ポリアミジン系が用いられていたが、さらなる脱水効果の改善のために、特許文献1~3に示すような提案がなされている。
【0004】
特許文献1,2には、カチオン性界面活性剤および高分子凝集剤を添加し、脱水処理を行うことが記載されている。
【0005】
特許文献3には、有機性汚泥に酵素を添加し、さらに界面活性剤、アルカリ土類金属化合物またはアルカリ金属化合物を添加し、脱水処理を行うことが記載されている。
【0006】
このような問題に対して、従来の汚泥脱水剤はいずれも十分に満足し得るものとは言えず、例えば特許文献1,2に記載されている方法では、カチオン性界面活性剤を添加することにより脱水ケーキの含水率をある程度低減することが可能だが、高価なカチオン性界面活性剤を多量に添加する必要があるため、現実的ではない。特許文献3に記載されている方法では、高価な酵素を必要とすることに加えて、酵素自体を低温保存する必要があるため、取り扱いが難しいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開昭61-204098号公報
【文献】特開昭61-204100号公報
【文献】特開平10-080698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、難脱水性の有機性汚泥についても効率的に脱水処理して低含水率の脱水ケーキを得ることができる汚泥の脱水方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、有機性汚泥に対して、カチオン性界面活性剤と、2価金属塩と、を添加し、その後、カチオン性高分子凝集剤を添加して脱水する方法であって、前記カチオン性界面活性剤が、下記一般式(1)によって示されるアルキル第4級アンモニウム塩、下記一般式(2)によって示されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、および下記一般式(3)によって示されるアルキルピリジニウム塩のうちの少なくとも1つである、汚泥の脱水方法である。
【0010】
【化1】
(1)
(R~Rは、独立して炭素数1~20のアルキル基、Xは、Cl、Br、I、またはOHである。)
【化2】
(2)
(Rは、炭素数4~24のアルキル基、Xは、Cl、Br、I、またはOHである。)
【化3】
(3)
(Rは、炭素数6~20のアルキル基、Xは、Cl、Br、I、またはOHである。)
【0011】
前記汚泥の脱水方法において、前記2価金属塩が、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化第1鉄、水酸化鉄(II)、硫酸第1鉄、塩化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0012】
前記汚泥の脱水方法において、前記カチオン性高分子凝集剤を添加した後、さらにアニオン性高分子凝集剤を添加することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、難脱水性の有機性汚泥についても効率的に脱水処理して低含水率の脱水ケーキを得ることができる汚泥の脱水方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】参考例1における、界面活性剤の添加量(%対SS)に対する脱水ケーキの含水率(%)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本発明の実施形態に係る汚泥の脱水方法は、有機性汚泥に対して、カチオン性界面活性剤と、2価金属塩と、を添加し、その後、カチオン性高分子凝集剤を添加して脱水する方法である。
【0017】
本発明の実施形態に係る汚泥の脱水方法は、有機性汚泥に対して、カチオン性界面活性剤と、2価金属塩と、を添加し、その後、カチオン性高分子凝集剤を添加し、さらにアニオン性高分子凝集剤を添加して脱水する方法である。
【0018】
例えば、まず有機性汚泥にカチオン性界面活性剤および2価金属塩を添加した後、撹拌を行い、次いでカチオン性高分子凝集剤を添加混合することにより、有機性汚泥の凝集フロックを形成し、得られた凝集物を固液分離すればよい。また、例えば、まず有機性汚泥にカチオン性界面活性剤および2価金属塩を添加した後、撹拌を行い、次いでカチオン性高分子凝集剤を添加混合し、その後、アニオン性高分子凝集剤を添加混合することにより、有機性汚泥の凝集フロックを形成し、得られた凝集物を固液分離してもよい。なお、カチオン性界面活性剤および2価金属塩の添加順序は、どちらが先でもよい。
【0019】
本実施形態に係る汚泥脱水剤および汚泥の脱水方法によって、難脱水性の有機性汚泥についても効率的に脱水処理して低含水率の脱水ケーキを得ることができる。また、低添加量のカチオン性界面活性剤で低含水率の脱水ケーキを得ることが可能となる。
【0020】
カチオン性界面活性剤としては、下記一般式(1)によって示されるアルキル第4級アンモニウム塩、下記一般式(2)によって示されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、下記一般式(3)によって示されるアルキルピリジニウム塩、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。
【0021】
【化4】
(1)
(R~Rは、例えば、独立して直鎖または分岐の炭素数1~20のアルキル基であり、直鎖または分岐の炭素数1~18のアルキル基が好ましい。Xは、例えば、Cl、Br、I、またはOHであり、Cl、Brが好ましい。)
【0022】
【化5】
(2)
(Rは、例えば、直鎖または分岐の炭素数4~24のアルキル基であり、直鎖または分岐の炭素数6~18のアルキル基が好ましい。Xは、例えば、Cl、Br、I、またはOHであり、Cl、Brが好ましい。)
【0023】
【化6】
(3)
(Rは、例えば、直鎖または分岐の炭素数6~20のアルキル基であり、直鎖または分岐の炭素数6~15のアルキル基が好ましい。Xは、例えば、Cl、Br、I、またはOHであり、Cl、Brが好ましい。)
【0024】
これらのうち、汚泥の脱水効果が高い等の点から、上記一般式(1)によって示されるアルキル第4級アンモニウム塩、上記一般式(2)によって示されるアルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、および上記一般式(3)によって示されるアルキルピリジニウム塩のうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0025】
2価金属塩としては、マグネシウム、カルシウム、鉄、バリウム、ストロンチウム、ラジウム等の塩化物、臭化物、ヨウ化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのうち、汚泥の脱水効果が高い等の点から、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化第1鉄、水酸化鉄(II)、硫酸第1鉄、塩化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、硫酸バリウムのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0026】
カチオン性高分子凝集剤としては、ポリアミジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート系高分子凝集剤(DAM)、ジメチルアミノエチルアクリレート系高分子凝集剤(DAA)、ベンジルクロライド系高分子凝集剤(BC)、エピクロロヒドリン・ジメチルアミン縮合物、ジシアンジアミン・ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられ、汚泥の脱水効果が高い等の点から、ポリアミジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート系高分子凝集剤(DAM)、ジメチルアミノエチルアクリレート系高分子凝集剤(DAA)が好ましい。ジメチルアミノエチルメタクリレート系高分子凝集剤(DAM)は、ジメチルアミノエチルメタクリレートの単独重合体、ジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物の単独重合体、ジメチルアミノエチルメタクリレートとアクリルアミドとの共重合体、およびジメチルアミノエチルメタクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合体のうちの少なくとも1つを含む凝集剤である。ジメチルアミノエチルアクリレート系高分子凝集剤(DAA)は、ジメチルアミノエチルアクリレートの単独重合体、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物の単独重合体、ジメチルアミノエチルアクリレートとアクリルアミドとの共重合体、ジメチルアミノエチルアクリレートの四級化物とアクリルアミドとの共重合体のうちの少なくとも1つを含む凝集剤である。
【0027】
【化7】
【化8】
(xは、例えば、0~200000、yは、例えば、50~120000である。)
ジメチルアミノエチルメタクリレート系高分子凝集剤(DAM)
【0028】
【化9】
【化10】
(xは、例えば、0~200000、yは、例えば、50~120000である。)
ジメチルアミノエチルアクリレート系高分子凝集剤(DAA)
【0029】
アニオン性高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド系(アクリルアミドとアクリル酸塩との共重合物)、メタアクリル酸系等が挙げられ、コスト等の点から、ポリアクリルアミド系が好ましい。
【0030】
カチオン性高分子凝集剤の重量平均分子量は、特に制限はないが、1万~1500万の範囲であることが好ましく、10万~1000万の範囲であることがより好ましい。カチオン性高分子凝集剤の重量平均分子量が1万未満であると、汚泥が十分に凝集しない場合があり、1500万を超えると、高分子凝集剤自体が水を抱水し、十分に含水率が低下しない場合がある。
【0031】
アニオン性高分子凝集剤の重量平均分子量は、特に制限はないが、100万~4000万の範囲であることが好ましく、500万~3000万の範囲であることがより好ましい。アニオン性高分子凝集剤の重量平均分子量が100万未満であると、汚泥が十分に凝集しない場合があり、4000万を超えると、アニオン性高分子凝集剤自体が水を抱水し、十分に含水率が低下しない場合がある。
【0032】
本実施形態に係る汚泥脱水剤において、カチオン性界面活性剤の添加量は、汚泥のSS量に対して0.1~50質量%の範囲であることが好ましく、0.5~30質量%の範囲であることがより好ましい。カチオン性界面活性剤の添加量が汚泥のSS量に対して0.1質量%未満であると、脱水効果が十分に発揮されない場合があり、50質量%を超えると、カチオン性界面活性剤のコスト面で不利になる場合がある。
【0033】
本実施形態に係る汚泥脱水剤において、2価金属塩の添加量は、汚泥のSS量に対して0.5~100質量%の範囲であることが好ましく、1~50質量%の範囲であることがより好ましい。2価金属塩の添加量が汚泥のSS量に対して0.5質量%未満であると、脱水効果が十分に発揮されない場合があり、100質量%を超えると、2価金属塩自体が汚泥となるため、汚泥廃棄量が増加する場合がある。
【0034】
本実施形態に係る汚泥脱水剤において、カチオン性高分子凝集剤の添加量は、汚泥のSS量に対して0.1~10質量%の範囲であることが好ましく、0.5~5質量%の範囲であることがより好ましい。カチオン性高分子凝集剤の添加量が汚泥のSS量に対して0.1質量%未満であると、汚泥の脱水効果が得られない場合があり、10質量%を超えると、汚泥の凝集フロックが形成されない場合がある。アニオン性高分子凝集剤を添加する場合、アニオン性高分子凝集剤の添加量は、汚泥のSS量に対して0.01~2質量%の範囲であることが好ましく、0.05~1質量%の範囲であることがより好ましい。アニオン性高分子凝集剤の添加量が汚泥のSS量に対して0.01質量%未満であると、アニオン性高分子凝集剤の不足により汚泥が凝集しない場合があり、2質量%を超えると、アニオン性高分子凝集剤の過多により水に粘性が生じ、汚泥が十分に脱水されない場合がある。
【0035】
脱水の対象となる汚泥は、有機性汚泥を含み、さらに無機性汚泥を含んでもよい。有機性汚泥は、下水処理、屎尿処理およびその他の各種産業廃水処理等の有機物を含む排水の処理において発生する汚泥であり、無機性汚泥は、無機物を含む排水の処理において発生する汚泥である。
【0036】
本実施形態に係る汚泥の脱水方法において、カチオン性界面活性剤と、2価金属塩と、カチオン性高分子凝集剤と、を含む汚泥脱水剤として製剤化し、この汚泥脱水剤を汚泥に対して添加して脱水してもよい。例えば、カチオン性界面活性剤と2価金属塩とを含む製剤と、カチオン性高分子凝集剤を含む製剤と、の2剤を含む汚泥脱水剤とすればよい。また、例えば、カチオン性界面活性剤と2価金属塩とを含む製剤と、カチオン性高分子凝集剤を含む製剤と、アニオン性高分子凝集剤を含む製剤と、の3剤を含む汚泥脱水剤とすればよい。
【0037】
汚泥の脱水の際の温度は、特に制限はないが、例えば、10~40℃の範囲とすればよい。
【0038】
汚泥の脱水の際のpHは、特に制限はないが、例えば、pH3~pH10の範囲とすればよい。
【0039】
汚泥の脱水の際に、カチオン性界面活性剤、2価金属塩、カチオン性高分子凝集剤、アニオン性高分子凝集剤の他に、無機凝集剤、有機凝結剤、合成繊維等を添加してもよい。
【0040】
固液分離の方法としては、特に制限はないが、例えば、自然沈降分離、膜分離、ベルトプレス脱水機、スクリュープレス脱水機、遠心脱水機、フィルタープレス脱水機、多重円盤脱水機、真空脱水機、電気浸透脱水機等が挙げられる。
【実施例
【0041】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0042】
[汚泥性状]
本実施例および比較例において処理対象とする汚泥は生物処理により発生した余剰汚泥を含む有機性汚泥である。
【0043】
処理対象とした有機性汚泥について、下水試験法に基づいて、導電率(EC)、蒸発残留物、蒸発残留物(TS)の強熱減量(VTS)、浮遊(懸濁)物質(SS)、浮遊物質(SS)の強熱減量(VSS)を測定した。今回用いた有機性汚泥A~Dの性状を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
<参考例1、参考比較例1>
表1に示す性状の汚泥A(300mL)を容量500mLのビーカーに採り、それに界面活性剤の水溶液を所定量加え、1時間撹拌した。次に0.3質量%水溶液のポリジメチルアミノエチルメタクリレート系のカチオン性高分子凝集剤を所定量加え、よく撹拌した。最後にポリアクリルアミド系のアニオン性高分子凝集剤を加え、よく撹拌し、汚泥フロックを形成した。
【0046】
次いで、汚泥フロックを手絞りにより脱水し、脱水ケーキを形成した。その脱水ケーキを温度105℃で終夜(12時間)乾燥した後、脱水ケーキ中の水分量を計測してケーキ含水率(質量%)とした。結果を表2、図1に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
カチオン性界面活性剤を添加した参考例1-1~1-13では、カチオン性界面活性剤の添加と共に脱水性能が大きく向上した。中でも、塩化ベンザルコニウムを添加した系が最も脱水性能が良いことが確認できた。一方で、両性界面活性剤を添加した参考比較例1-1~1-4では、脱水性能の向上はほとんどなかった。また、アニオン性界面活性剤を添加した参考比較例1-5~1-7では凝集フロックが形成せず、含水率を測定することができなかった。
【0049】
以上の結果より、カチオン性の界面活性剤を添加することにより脱水性能が向上することが確認できた。
【0050】
<実施例1、比較例1>
汚泥Aの代わりに汚泥Bを用いたこと、界面活性剤とともに金属塩を添加する以外は参考例1と同様に実験を実施した。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
塩化カルシウムを添加していない比較例1-1と比べて、実施例1-1,1-2では、塩化ベンザルコニウムと塩化カルシウムを併用することにより、脱水性能が大きく向上することが確認できた。
【0053】
<実施例2、比較例2>
実施例2-1に関しては、実施例1と同様に実験を実施した。実施例2-2に関しては、金属塩として炭酸カルシウムを用いる以外は、実施例2-3に関しては、金属塩として水酸化カルシウムを用いる以外は実施例1と同様に実験を実施した。
【0054】
比較例2-1に関しては、表1に示す性状の有機性汚泥300mLを容量500mLのビーカーに採り、0.3質量%水溶液のカチオン性高分子凝集剤を所定量加え、よく撹拌した。最後にアニオン性高分子凝集剤を加え、よく撹拌し、汚泥フロックを形成した。
【0055】
次いで、汚泥フロックを手絞りにより脱水し、脱水ケーキを形成した。その脱水ケーキを温度105℃で終夜(12時間)乾燥した後、脱水ケーキ中の水分量を計測してケーキ含水率とした。結果を表4に示す。
【0056】
【表4】
【0057】
実施例2-1~2-3では、対イオンの異なるカルシウム塩を用いて実験を実施した。その結果、どのカルシウム塩を添加しても脱水性能の向上が認められたが、中でも塩化カルシウムと水酸化カルシウムの脱水性能が良好であることが確認できた。
【0058】
<実施例3、比較例3>
実施例3-1~3-8に関しては、2価金属の種類を変えた以外は実施例1と同様に実験を実施した。
【0059】
比較例3-1~3-4に関しては、界面活性剤を添加していないこと以外は実施例1と同様に実験を実施した。結果を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
実施例3-1~3-8では、2価金属の種類を変えて実験を実施した。その結果、どの2価の金属塩でも大幅に脱水性能が向上することが明らかとなった。またMgCl<CaCl<FeCl<BaClの順で脱水性能が向上することがわかった。
【0062】
<比較例4>
比較例4-1に関しては、汚泥Cを用いたこと、界面活性剤を添加していないこと以外は実施例1と同様に実験を実施した。比較例4-2に関しては、汚泥Cを用いたこと、金属塩を添加していないこと以外は実施例1と同様に実験を実施した。比較例4-3に関しては、汚泥Cを用いたこと以外は参考例1と同様に実験を実施した。結果を表6に示す。
【0063】
【表6】
【0064】
比較例4-3では、1価の金属塩であるNaClとカチオン性界面活性剤である塩化ベンザルコニウムを添加して脱水試験を行ったが、脱水性能の向上は見られず、界面活性剤単独である比較例4-2と比較すると、脱水性能は悪化してしまった。以上より、1価の金属塩を添加すると、脱水性能が悪化することが確認できた。
【0065】
<実施例5、比較例5>
実施例5-1~5-4に関しては、カチオン性界面活性剤の種類を変え、汚泥Bを用いたこと以外は実施例1と同様に実験を実施した。
【0066】
比較例5-1に関しては、汚泥Bを用いたこと以外は比較例2-1と同様に実験を実施した。結果を表7に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
実施例5-1~5-4では、カチオン性界面活性剤の種類を変えて実験を実施した。その結果、塩化ベンザルコニウムに限らず臭化セチルトリメチルアンモニウムでも金属塩併用による脱水性の構造が確認できた。
【0069】
<実施例6、比較例6>
実施例6-1~6-4に関しては、塩化ベンザルコニウムおよび塩化カルシウムの添加濃度を変え、汚泥Dを用いたこと以外は実施例1と同様に実験を実施した。
【0070】
比較例6-1に関しては、汚泥Dを用いたこと以外は比較例2-1と同様に実験を実施した。結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】
実施例6-1~6-4では、塩化ベンザルコニウムおよび塩化カルシウムの添加濃度を変えて実験を実施した。その結果、塩化ベンザルコニウムの添加量がごく少量であっても、塩化カルシウムを添加することにより脱水性能が向上することが確認できた。
【0073】
このように、実施例の汚泥の脱水方法によって、難脱水性の有機性汚泥についても効率的に脱水処理して低含水率の脱水ケーキを得ることができた。
図1