(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】撮像モジュール
(51)【国際特許分類】
H04N 23/57 20230101AFI20240129BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240129BHJP
A61B 1/04 20060101ALI20240129BHJP
G02B 23/26 20060101ALI20240129BHJP
G03B 17/02 20210101ALI20240129BHJP
H04N 23/50 20230101ALI20240129BHJP
【FI】
H04N23/57
H04N7/18 M
A61B1/04 530
G02B23/26 D
G03B17/02
H04N23/50
(21)【出願番号】P 2020107466
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2022-12-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】大瀬 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大石 亘
(72)【発明者】
【氏名】沼澤 吉延
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-068058(JP,A)
【文献】特開2019-047299(JP,A)
【文献】特開2006-141726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 23/57
H04N 7/18
A61B 1/04
G02B 23/26
G03B 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面と、前記受光面とは反対側に位置する電極面と、前記電極面上に形成された複数の撮像素子電極とを有する撮像素子と、
第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、前記電極面に対向する第1端面とを有する基板と、
前記基板上の配線を介して前記撮像素子電極と電気的に接続される導体を有するケーブル部と、
前記第1面および前記第2面を少なくとも覆う封止樹脂と、
前記封止樹脂のうち、前記第1面上に位置する部分または前記第2面上に位置する部分に付着した識別樹脂と、を備える、撮像モジュール。
【請求項2】
前記識別樹脂は紫外線硬化型樹脂である、請求項1に記載の撮像モジュール。
【請求項3】
前記基板の厚さ方向から見て、前記識別樹脂の面積は1.7mm
2以下である、請求項1または2に記載の撮像モジュール。
【請求項4】
前記ケーブル部が同軸ケーブルを含んでいる、請求項1から3のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ケース(先端カバー)と、ケース内に取り付けられる撮像素子を有する撮像モジュールと、を備えた内視鏡が開示されている。撮像素子は、ケーブルを介して画像処理装置等に接続され、画像データを送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような内視鏡においては、画像の上下を整合させるために、撮像素子の上下をケースの上下に対して一致させることが求められる。ここで、近年では撮像素子の小型化が進んでおり、撮像素子の形状を目視することで、当該撮像素子の上下を識別することが難しい場合がある。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、撮像素子の上下を容易に識別することが可能な撮像モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る撮像モジュールは、受光面と、前記受光面とは反対側に位置する電極面と、前記電極面上に形成された複数の撮像素子電極とを有する撮像素子と、第1面と、前記第1面とは反対側に位置する第2面と、前記電極面に対向する第1端面とを有する基板と、前記基板上の配線を介して前記撮像素子電極と電気的に接続される導体を有するケーブル部と、前記第1面および前記第2面を少なくとも覆う封止樹脂と、前記封止樹脂のうち、前記第1面上に位置する部分または前記第2面上に位置する部分に付着した識別樹脂と、を備える。
【0007】
上記態様によれば、識別樹脂を目視することで、撮像素子の上下を容易に認識することが可能となる。したがって、内視鏡の製造効率を向上させるとともに、撮像素子が内視鏡内において誤った向きで取り付けられてしまうことを抑制できる。
【0008】
ここで、前記識別樹脂は紫外線硬化型樹脂であってもよい。
【0009】
また、前記基板の厚さ方向から見て、前記識別樹脂の面積は1.7mm2以下であってもよい。
【0010】
また、前記ケーブル部が同軸ケーブルを含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の上記態様によれば、撮像素子の上下を容易に識別することが可能な撮像モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態の撮像モジュールおよび内視鏡について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、内視鏡1は、撮像モジュール2と、シース3と、ケース10と、を備える。
図2に示すように、撮像モジュール2は、基板20と、ケーブル部30と、撮像素子40と、レンズユニット50と、を備える。
【0014】
(方向定義)
本実施形態では、XYZ直交座標系を設定して各構成の位置関係を説明する。内視鏡1の長手方向をX軸により表す。長手方向において、ケーブル部30から見たレンズユニット50側を+X側あるいは前側といい、その反対側を-X側あるいは後側という。基板20の厚さ方向を上下方向といい、Z軸により表す。上下方向は長手方向に直交している。上下方向における一方側(+Z側)を上側といい、他方側(-Z側)を下側という。長手方向および上下方向の双方に直交する方向を左右方向といい、Y軸により表す。Y軸における一方側(+Y側)を右側といい、他方側(-Y側)を左側という。
【0015】
ケース10は、内視鏡1の前側の端部に配置されている。ケース10内に、撮像モジュール2の一部(少なくとも、レンズユニット50)が収容される。ケース10は、チャネル11と、カメラ収容部12と、2つの投光孔14と、を有している。チャネル11、カメラ収容部12、および投光孔14は、ケース10の前端面10aに開口している。チャネル11およびカメラ収容部12は、上下方向に並べて配置されている。2つの投光孔14は、左右方向においてカメラ収容部12を間に挟むように配置されている。
【0016】
チャネル11内に処置具を収容することで、内視鏡1をカテーテルとして用いることができる。処置具としては、例えば、各種鉗子、スネア、ガイドワイヤ、ステント、レーザ処置具、高周波処置具等が挙げられる。カメラ収容部12には撮像モジュール2のレンズユニット50が収容される。投光孔14の内部には透明樹脂7が充填されている。透明樹脂7の後側には光源(例えばLED)が配置されており、透明樹脂7を通じて、光がケース10の前方へと照射される。なお、
図2では透明樹脂7等を省略して表示している。
【0017】
撮像素子40は、光を検出して、画像を表す電気信号(画像データ)を生成できる素子である。このような素子として、受光部に半導体素子を含む固体撮像素子(CMOS、CCD等)が小型であり、好ましい。撮像素子40の他の例としては、受光部に有機光学材料を含む有機撮像素子、受光部に電子管を含む撮像管等が挙げられる。
【0018】
レンズユニット50は、筒状のレンズ筐体と、レンズ筐体の内部に収納されたレンズと、を有する。レンズユニット50は、レンズ筐体内のレンズの光軸と撮像素子40の受光光軸とが一致するように、撮像素子40の前端面に固定されている。撮像素子40は、レンズユニット50を通過した光を受光して撮像する。
【0019】
図3に示すように、基板20は、上側を向く第1面21と、下側を向く第2面22と、前側を向く第1端面23と、左右方向を向く一対の側面24と、を有している。
図4に示すように、第1面21および第2面22にはそれぞれ配線21a、22aが形成されている。第1面21に形成された配線21a(上側配線)の一部および第2面22に形成された配線22a(下側配線)は、基板20を貫通する貫通配線25により電気的に接続されている。第1端面23に、撮像素子40が固定されている。なお、貫通配線25は必須ではなく、第1面21および第2面22の一方のみに配線が形成されていてもよい。
【0020】
図4に示すように、撮像素子40は、受光面41と、受光面41とは反対側に位置する電極面43と、電極面43に設けられた複数の撮像素子電極42と、を備える。受光面41は前側を向いており、レンズユニット50を通過した光を受光する。電極面43は後側を向いており、基板20の第1端面23と前後方向において対向する。撮像素子電極42は、電極面43における基板20の上側および下側にそれぞれ配置されている。はんだ26により、複数の撮像素子電極42と配線21a、21bとがそれぞれ電気的に接続されている。
【0021】
ケーブル部30は基板20から後側に延びている。ケーブル部30の後端は、画像処理装置等に接続されている。
図5に示すように、ケーブル部30は、第1同軸ケーブル30Aと、第2同軸ケーブル30Bと、シールド導体30Cと、ケーブル外被30Dと、を有している。第1同軸ケーブル30Aおよび第2同軸ケーブル30Bは、左右方向に並べて配置されている。シールド導体30Cは、2つの同軸ケーブル30A、30Bを取り囲むように配置されている。ケーブル外被30Dは、2つの同軸ケーブル30A、30Bおよびシールド導体30Cを収容している。
【0022】
第1同軸ケーブル30Aおよび第2同軸ケーブル30Bの構造は互いに同じである。具体的に、同軸ケーブル30A、30Bはそれぞれ、中心導体31と、内部絶縁体32と、外部導体33と、外部絶縁体34と、を有している。中心導体31は各同軸ケーブル30A、30Bの中心部に位置している。内部絶縁体32は、筒状であり、中心導体31を囲っている。外部導体33は、内部絶縁体32を取り囲むように配置されている。外部絶縁体34は、筒状であり、外部導体33を囲っている。
【0023】
図4に示すように、中心導体31は、配線21aを介して、基板20の上側に位置する撮像素子電極42に電気的に接続されている。外部導体33は、配線21a、貫通配線25、および配線22aを介して、基板20の下側に位置する撮像素子電極42に電気的に接続されている。例えば中心導体31は、撮像素子40から画像処理装置等への信号の送信、あるいは画像処理装置等から撮像素子40への信号の送信に用いられる。例えば外部導体33は、撮像素子40への電力の供給に用いられる。なお、同軸ケーブル30A、30Bの構成は上記に限定されず、適宜変更可能である。
【0024】
図3に示すように、基板20上には、封止樹脂R1が設けられている。封止樹脂R1は、基板20上の配線や、中心導体31および外部導体33と基板20上の配線との接続部(はんだ部)等を封止するために用いられる。封止樹脂R1としては、絶縁性を有し、流動性を有する状態で基板20上に塗布した後で硬化させることが可能な任意の材質を採用できる。例えば、封止樹脂R1は、紫外線硬化型樹脂であってもよいし、熱硬化型樹脂であってもよい。熱硬化型樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂が挙げられる。封止樹脂R1は、基板20の第1面21および第2面22を覆っている。なお、封止樹脂R1は基板20の側面24を覆っていてもよい。
【0025】
ここで、本実施形態におけるケース10は、上下方向において非対称な形状となっている。そして、撮像素子40の上下の向きを、ケース10の上下の向きに一致させなければ、撮像素子40が取得した画像データの上下の向きに不整合が生じる。ケース10の大きさは、形状を目視することで上下の向きを認識可能な程度である。また、ケース10の外表面に、上下を示す目印等を設けることも可能である。一方で、撮像モジュール2の大きさは非常に小さく、レンズユニット50、撮像素子40、および基板20の長手方向の寸法を合わせても、例えば約2mm程度とされる場合がある。このような極めて小さい撮像モジュール2において、形状を目視することで、撮像素子40の上下の向きを認識することは困難である。
【0026】
そこで本実施形態では、封止樹脂R1のうち、第1面21上に位置する部分に、識別樹脂R2が付着している。このため、内視鏡1を組み立てる作業者は、識別樹脂R2を目視することで、識別樹脂R2が付着した側が上側(第1面21側)であることを容易に認識することができる。識別樹脂R2としては、封止樹脂R1と見分けがつくのであれば、任意の材質を採用可能である。例えば封止樹脂R1および識別樹脂R2のうち、一方が白色であり、他方が黒色であってもよい。また、封止樹脂R1に液状の識別樹脂R2を塗布した後で、識別樹脂R2を硬化させる際の作業のしやすさを考慮すると、識別樹脂R2としては紫外線硬化型樹脂が好適である。
【0027】
本実施形態の識別樹脂R2は、上下方向(基板20の厚さ方向)から見て、略円形となっている。ただし、識別樹脂R2の形状は円形に限らず、楕円形等の非円形状であってもよい。本願発明者らが検討したところ、上下方向から見た識別樹脂R2の面積は0.03mm2以上1.7mm2以下であることが好ましい。識別樹脂R2の面積を0.03mm2以上とすることで、識別樹脂R2をより確実に視認することができる。また、識別樹脂R2の面積を1.7mm2以下とすることで、例えば封止樹脂R1のうち第1面21上に位置する部分に塗布した硬化前の識別樹脂R2が、基板20の側面24等をつたって、下側に回り込んでしまうことを抑制できる。
【0028】
なお、
図2等では、識別樹脂R2が基板20の上側の封止樹脂R1に付着しているが、識別樹脂R2は基板20の下側(第2面22側)の封止樹脂R1に付着していてもよい。この場合、内視鏡1を組み立てる作業者は、識別樹脂R2を目視することで、識別樹脂R2が付着した側が下側であることを容易に認識することができる。
【0029】
以上説明したように、本実施形態の撮像モジュール2は、受光面41と、受光面41とは反対側に位置する電極面43と、電極面43上に形成された複数の撮像素子電極42とを有する撮像素子40と、第1面21と、第1面21とは反対側に位置する第2面22と、電極面43に対向する第1端面23とを有する基板20と、基板20上の配線21a、22aを介して撮像素子電極42と電気的に接続される導体(中心導体31または外部導体33)を有するケーブル部30と、第1面21および第2面22を少なくとも覆う封止樹脂R1と、封止樹脂R1のうち、第1面21上に位置する部分または第2面22上に位置する部分に付着した識別樹脂R2と、を備える。このような構成により、識別樹脂R2を目視することで、撮像素子40の上下を容易に認識することが可能となる。したがって、内視鏡1の製造効率を向上させるとともに、撮像素子40がケース10に対して誤った向きで取り付けられてしまうことを抑制できる。
【0030】
また、識別樹脂R2は紫外線硬化型樹脂であってもよい。この場合、封止樹脂R1に識別樹脂R2を塗布した後で、識別樹脂R2を硬化させる際の作業が容易となる。したがって、内視鏡1の製造効率をより向上させることが可能となる。
【0031】
また、基板20の厚さ方向から見たときの識別樹脂R2の面積を0.1mm2以上0.5mm2の範囲内としてもよい。この場合、識別樹脂R2をより確実に視認可能としつつ、硬化前の識別樹脂R2が封止樹脂R1の意図しない部位に付着してしまうことをより抑制できる。
【0032】
また、ケーブル部30は同軸ケーブル30A、30Bを含んでいてもよい。
【0033】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば、前記実施形態のケーブル部30は2本の同軸ケーブル30A、30Bを含んでいるが、同軸ケーブルの数は適宜変更可能である。すなわち、ケーブル部30が有する同軸ケーブルは1本だけであってもよいし、3本以上であってもよい。あるいは、ケーブル部30は同軸ケーブルを含んでいなくてもよい。
また、基板20上に、コンデンサなどの電子部品が実装されていてもよい。
また、識別樹脂R2が視認可能であれば、識別樹脂R2の面積が0.03mm2未満であってもよい。また、識別樹脂R2が下側に回り込まない条件であれば、識別樹脂R2の面積が1.7mm2より大きくてもよい。
【0035】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
2…撮像モジュール 20…基板 21…第1面 22…第2面 21a、22a…配線 23…第1端面 30…ケーブル部 30A、30B…同軸ケーブル 40…撮像素子 42…撮像素子電極 43…電極面 R1…封止樹脂 R2…識別樹脂