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特許7427550プロセスカートリッジおよび電子写真装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】プロセスカートリッジおよび電子写真装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 5/147 20060101AFI20240129BHJP
   G03G 5/07 20060101ALI20240129BHJP
   G03G 5/06 20060101ALI20240129BHJP
   G03G 5/047 20060101ALI20240129BHJP
   G03G 9/097 20060101ALI20240129BHJP
   G03G 9/08 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G03G5/147 502
G03G5/07 101
G03G5/06 312
G03G5/047
G03G9/097 372
G03G9/097 374
G03G9/08
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020113407
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2021021942
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2019137130
(32)【優先日】2019-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】野口 和範
(72)【発明者】
【氏名】村上 健
(72)【発明者】
【氏名】大垣 晴信
(72)【発明者】
【氏名】上倉 健太
(72)【発明者】
【氏名】清野 友蔵
(72)【発明者】
【氏名】見目 敬
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-207746(JP,A)
【文献】特開2017-203890(JP,A)
【文献】特開2017-134164(JP,A)
【文献】特開2017-138592(JP,A)
【文献】特開2017-138462(JP,A)
【文献】特開2016-200815(JP,A)
【文献】特開2019-109379(JP,A)
【文献】特開2007-72395(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/147
G03G 5/07
G03G 5/06
G03G 5/047
G03G 9/097
G03G 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーを有する現像手段と、電子写真感光体と、を有するプロセスカートリッジであって、
該プロセスカートリッジは、電子写真装置の本体に着脱可能に構成されており
該トナーが、トナー粒子を有
該トナー粒子が、その表面の少なくとも一部に多価酸金属塩を有し、
該多価酸金属塩が、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、
該電子写真感光体の表面層が、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有する
ことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項2】
前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂が、下記式(A)で示される構造を有する、請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【化1】
(式(A)中、R14は、水素原子、または、メチル基を示し、Yは、トリアリールアミン構造を有する基を示す。)
【請求項3】
前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂が、前記式(A)で示される構造として、下記式(A-1)で示される構造、または、下記式(A-2)で示される構造を有する、請求項2に記載のプロセスカートリッジ。
【化2】
(式(A-1)中、R11~R15水素原子、またはメチル基を示し、X11 および12炭素数2~5のアルキレン基または、フェニレン基を示す。)
【化3】
(式(A-2)中、R21~R25水素原子、またはメチル基を示し、 21 は、炭素数2~5のアルキレン基または、フェニレン基を示す。)
【請求項4】
前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂が、下記一般式(B-1)または(B-2)で示される構造を有する、請求項1に記載のプロセスカートリッジ。
【化4】
(一般式(B-1)中、R 101 ~R 112 において、R 101 、R 105 およびR 109 のうち少なくとも2つは、下記一般式(B-3)で表される構造を示し、残りの置換基は、水素原子、または、メチル基を示す。)
【化5】
(一般式(B-2)中、R 211 ~R 224 において、R 211 およびR 224 は、下記一般式(B-3)で表される構造を示し、残りの置換基は、水素原子、または、メチル基を示す。)
【化6】
(一般式(B-3)中、R 31 は、単結合、または、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、X 31 は、結合を有することを示し、X 31 中には、下記一般式(B-4)で表される構造が含まれる。)
【化7】
(一般式(B-4)中、R 41 は、水素原子、または、メチル基を示し、R 42 は、メチレン基を示し、Y 41 は、結合を有することを示す。)
【請求項5】
前記トナーのX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められ前記トナー粒子の表面の構成元素に対する、前記多価酸金属塩に含まれる金属元素Mの比率M1が1.0atm%以上10.0atm%以下である請求項1~のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項6】
前記トナー1gを、61.5%のショ糖水溶液31gと、非イオン性界面活性剤および陰イオン界面活性剤からなる10%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6gと、からなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回振とうする処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とし、
前記トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められ前記トナー粒子の表面の構成元素に対する、前記多価酸金属塩に含まれる金属元素Mの比率をM2(atm%)としたとき、
前記M1および前記M2がともに1.0atm%以上10.0atm%以下であり、
前記M1およびM2が以下の関係式(ME-1)を満たす
0.90≦M2/M1 (ME-1)
請求項5に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項7】
前記電子写真感光体の表面層における前記アクリル樹脂またはメタクリル樹脂の含有量が、前記電子写真感光体の表面層に対して30質量%以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項8】
前記電子写真感光体が、電荷輸送層を有し、
前記表面層が、該電荷輸送層上に形成されており、
前記表面層の膜厚が3μm以下であり
電荷輸送層の膜厚が17μm以下である
請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項9】
前記電子写真感光体の表面Raが、0.010μm以上0.045μm以下であり
前記電子写真感光体の表面のSmが、0.005mm以上0.060mm以下であ
請求項1~8のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項10】
前記トナー粒子が、結着樹脂を含有するトナー母粒子、および、該トナー母粒子の表面有機ケイ素重合体を含む請求項1~9のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項11】
前記トナー粒子が結着樹脂を含有するトナー母粒子、および、該トナー母粒子の表面凸部を有し、
該凸部が、有機ケイ素重合体を含む、
請求項1~10のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項12】
前記凸部の凸高さHが30nm以上300nm以下である請求項11に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項13】
前記電子写真感光体の表面のRaと、前記凸部の凸高さH以下の関係式(TR-1)を満たす、請求項11または12に記載のプロセスカートリッジ。
高さH×0.1<電子写真感光体表面のRa<凸高さH (TR-1)
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載のプロセスカートリッジを有する電子写真装置。
【請求項15】
トナーを有する現像手段と、電子写真感光体と、を有する電子写真装置であって、
該トナーが、トナー粒子を有し、
該トナー粒子が、その表面の少なくとも一部に多価酸金属塩を有し、
該多価酸金属塩が、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、
該電子写真感光体の表面層が、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有する、
ことを特徴とする電子写真装置。
【請求項16】
前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂が、下記式(A)で示される構造を有する、請求項15に記載の電子写真装置。
(式(A)中、R 14 は、水素原子、または、メチル基を示し、Yは、トリアリールアミン構造を有する基を示す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真プロセスにおいて、近年、電子写真装置の小型化、印刷可能枚数の増加が望まれている。これに対応して、トナー消費量の更なる低減が要求されている。トナー消費量を低減するために、トナーが非画像部に現像してしまうカブリの低減が要求されている。
【0003】
特許文献1にはリン酸系陰イオンとジルコニウムイオンから構成される無機微粒子をトナー表面に付着させることで、現像性・耐久性を改良したトナーが開示されている。
特許文献2には電子写真感光体の表面にラジカル重合性の化合物を用い、耐摩耗性(機械的耐久性)を向上させ、耐久後のカブリを抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-209207号公報
【文献】特開2000-66425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によると、特許文献1~2に記載のプロセスカートリッジでは、画像上、目視で確認されるカブリという点では良化していたが、トナー消費量低減という点で、より一層のカブリの低減が求められていた。
【0006】
したがって、本発明の目的は、トナー消費量を低減するために、カブリを低減したプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明にかかるプロセスカートリッジおよび電子写真装置は、トナーを有する現像手段と、電子写真感光体とを有し、
該トナーが、トナー粒子を有、前記トナー粒子が、その表面の少なくとも一部に多価酸金属塩を有し、
該多価酸金属塩が、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含み、
該電子写真感光体の表面層が、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有する、ことを特徴とするプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トナー消費量を低減するために、カブリを低減したプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
図2】電子写真感光体の表面層の表面を粗面化処理するために使用する研磨装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
上記課題を解決するために、トナー粒子の表面の一部に、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む多価酸金属塩を有しているトナーと、表面層がアクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有している電子写真感光体の組み合わせを用いることが本発明の特徴である。
【0011】
係る特徴を満足するトナーと電子写真感光体を組み合わせることでカブリが低減するメカニズムについては、本発明者らは以下の様に推察している。
【0012】
電子写真プロセスにおいて、画像形成は、電子写真感光体上にトナー像を形成し、中間転写体や紙上に転写される方法が一般的である。
トナー粒子の表面の一部に、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む多価酸金属塩を有しているトナーは、多価酸金属塩の分極によって負に帯電しやすく、帯電性に優れている。また、多価酸金属塩が適度な抵抗値を有することで、電荷が移動しやすい。
【0013】
一方で、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有している電子写真感光体は、表面の一部に、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む多価酸金属塩を有しているトナーと比較して、正に帯電しやすい。
そのため、電子写真感光体上にトナー像を形成した際に電子写真感光体からトナーへと負電荷が供給されることで、トナーの帯電均一性が向上し、カブリが低減されていると推測している。
【0014】
[トナー]
本発明におけるトナーは、トナー粒子を有するトナーであって、前記トナー粒子の表面の一部に、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含む多価酸金属塩を有していることを特徴とする。
【0015】
多価酸金属塩は、多価酸と金属元素の組み合わせにより構成される。
該多価酸は、2価以上の酸であればどのようなものでも構わない。具体例としては、以下のものがあげられる。
リン酸、炭酸、硫酸などの無機酸;ジカルボン酸、トリカルボン酸などの有機酸。
有機酸の具体例としては、以下のものがあげられる。
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などのジカルボン酸。
クエン酸、アコニット酸、トリメリット酸などのトリカルボン酸。
【0016】
そのなかでも、多価酸が、無機酸である炭酸、硫酸、およびリン酸からなる群より選ばれた少なくとも一つを含有することが、金属元素と多価酸が強固に反応し、多価酸金属塩が吸湿しにくいことから好ましい。より好ましくは、多価酸が、リン酸を含有することである。
【0017】
多価酸金属塩は、第3族から第13族に含まれる金属元素からなる群より選択される少なくとも1種の金属元素を含むことが好ましい。第3族から第13族に含まれる金属元素と多価酸によって構成される塩は、吸湿性が低いため、高湿環境においても安定してカブリを低減する効果を得ることができる。
【0018】
本発明に用いられる金属元素の具体例としては、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム、ハフニウム、鉄、銅、銀などが挙げられる。中でも、3価以上の価数を持ちうる金属が好ましい。より具体的にはチタン、ジルコニウム、アルミニウムがより好ましく、チタンがさらに好ましい。
【0019】
上記金属および上記多価酸を組み合わせた多価酸金属塩の具体例としては、リン酸チタン化合物、リン酸ジルコニウム化合物、リン酸アルミニウム化合物、リン酸銅化合物等のリン酸金属塩、硫酸チタン化合物、硫酸ジルコニウム化合物、硫酸アルミニウム化合物等の硫酸金属塩、炭酸チタン化合物、炭酸ジルコニウム化合物、炭酸アルミニウム化合物等の炭酸金属塩、シュウ酸チタン化合物等のシュウ酸金属塩等が挙げられる。中でもリン酸イオンが金属間を架橋することで強度が高く、分子内にイオン結合を有することで帯電立ち上がり性にも優れていることからリン酸金属塩が好ましく、リン酸チタン化合物であることがさらに好ましい。
【0020】
上記多価酸金属塩を得るための方法には特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。中でも、水系媒体中で、金属源となる金属化合物と多価酸イオンを反応させて多価酸金属塩を得る方法が好ましい。
【0021】
上記方法によって多価酸金属塩を得る場合の金属源としては、多価酸イオンとの反応によって多価酸金属塩を与える金属化合物であれば、特段の制限なく従来公知の金属化合物を用いることができる。
【0022】
具体的には、チタンラクテート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンラクテートアンモニウム塩、チタントリエタノールアミネート、ジルコニウムラクテート、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩、アルミニウムラクテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、銅ラクテート等の金属キレート、チタンテトライソプロポキシド、チタンエトキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムトリスイソプロポキシド等の金属アルコキシド等が挙げられる。中でも、反応を制御しやすく、多価酸イオンと定量的に反応することから、金属キレートが好ましい。また、水系媒体への溶解性の観点からチタンラクテートやジルコニウムラクテート等の乳酸キレートがさらに好ましい。
【0023】
上記方法によって多価酸金属塩を得る場合の多価酸イオンとしては、上述した多価酸のイオンを用いることができる。水系媒体に加える場合の形態としては、多価酸そのものを加えてもよく、水溶性の多価酸金属塩を水系媒体に加えて、水系媒体中で解離させてもよい。
【0024】
多価酸金属塩の個数平均粒径は、1nm以上400nm以下であることが好ましく、1nm以上200nm以下であることがより好ましく、1nm以上60nm以下であることがさらに好ましい。
【0025】
多価酸金属塩の個数平均粒径を上記範囲にすることで、多価酸金属塩がトナーから感光体表面や他の部材へ移行することによる部材汚染を抑制することができる。このことにより、トナー表面の負帯電性と感光体表面の正帯電性が維持されやすくなる。そのため、カブリを低減する効果をより得やすくなる。
【0026】
多価酸金属塩の個数平均粒径を上記範囲に調整する手法は、該微粒子の原料である多価酸と金属元素を含む化合物の添加量や、それらが反応するときのpH、反応時の温度などが挙げられる。
【0027】
トナー母粒子の分散液中で、多価酸と金属元素を含む化合物とを反応させ、得られた反応物をトナー母粒子表面に付着させてトナー粒子を得る場合、下記式(T-1)で示される有機ケイ素化合物を併用することが好ましい。
【0028】
該有機ケイ素化合物を併用することで、得られた反応物がより強固にトナー母粒子に固着し、かつ、表面が疎水化され、環境安定性がさらに向上する。
【0029】
具体的には、まず、下記式(T-1)で示される有機ケイ素化合物を事前に加水分解するか、トナー母粒子の分散液中で加水分解する。
その後、得られた有機ケイ素化合物の加水分解物を縮合させ、縮合物とする。
【0030】
該縮合物はトナー母粒子表面に移行する。該縮合物は粘性があるため、多価酸と金属元素を含む化合物との反応物を、トナー母粒子の表面に密着させ、該反応物をより強固にトナー母粒子に固着することができる。
【0031】
また、該反応物の表面にも該縮合物は移行し、該反応物を疎水化し、環境安定性をさらに向上させることができる。
a(n)-Si-Rb(4-n) (T-1)
式(T-1)中、Rは、ハロゲン原子、ヒドロキシ基またはアルコキシ基を示し、Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アシル基またはメタクリロキシアルキル基を示す。nは2~4の整数を示す。ただし、RおよびRが複数存在する場合、複数のR、複数のRの置換基は、それぞれ、同一でも異なってもよい。
【0032】
式(T-1)で示される有機ケイ素化合物としては、特段の制限なく、公知の有機ケイ素化合物を用いることができる。具体的には、以下の、シラン化合物が挙げられる。
【0033】
二官能シラン化合物として、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが挙げられる。
【0034】
三官能シラン化合物として、以下のものが挙げられる。
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルジエトキシメトキシシラン、メチルエトキシジメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシランなどの置換基としてアルキル基を有する三官能シラン化合物;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシランなどの置換基としてアルケニル基を有する三官能シラン化合物;
フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの置換基としてアリール基を有する三官能シラン化合物;
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルジエトキシメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルエトキシジメトキシシランなどの置換基としてメタクリロキシアルキル基を有する三官能シラン化合物など。
【0035】
四官能シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランなどが挙げられる。
【0036】
トナー粒子中の、式(T-1)で示される有機ケイ素化合物からなる群より選択される少なくとも1つの有機ケイ素化合物の縮合物の含有量は、0.1質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上15.0質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
該トナー母粒子の製造方法は、特に限定されることはなく、公知の懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法、および粉砕法などを用いることができる。
【0038】
トナー母粒子の表面に、多価酸と金属元素を含む化合物との反応物を存在させる場合、水系媒体中でトナー母粒子を製造した場合は、そのまま、トナー母粒子の分散液として用いてもよい。また、洗浄やろ過、乾燥を行った後、水系媒体中に再分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。
【0039】
一方、乾式でトナー母粒子を製造した場合は、公知の方法によって水系媒体に分散させて、トナー母粒子の分散液としてもよい。トナー母粒子を水系媒体中に分散させるために、水系媒体が分散安定剤を含有していることが好ましい。
【0040】
以下、懸濁重合法を用いた、トナー母粒子の製造例を具体的に述べる。
まず、結着樹脂を生成しうる重合性単量体、および必要に応じて各種添加物を混合し、分散機を用いて、該材料を溶解または分散させた重合性単量体組成物を調製する。
各種添加物として、着色剤、ワックス、荷電制御剤、重合開始剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、または超音波分散機が挙げられる。
【0041】
次いで、重合性単量体組成物を、難水溶性の無機微粒子を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機または超音波分散機などの高速分散機を用いて、重合性単量体組成物の液滴を調製する(造粒工程)。
【0042】
その後、該液滴中の重合性単量体を重合してトナー母粒子を得る(重合工程)。
重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に混合してもよく、水系媒体中に液滴を形成させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。
また、液滴の造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。
重合性単量体を重合して樹脂粒子を得たあと、必要に応じて脱溶剤処理を行い、トナー母粒子の分散液を得るとよい。
【0043】
該結着樹脂としては、以下の樹脂または重合体が例示できる。
ビニル系樹脂;ポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;フラン樹脂;エポキシ樹脂;キシレン樹脂;シリコーン樹脂。
【0044】
これらの中でも、ビニル系樹脂が好ましい。なお、ビニル系樹脂としては、下記単量体の重合体またはそれらの共重合体が挙げられる。
スチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸2-エチルヘキシルなどの不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸;マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸;マレイン酸無水物などの不飽和ジカルボン酸無水物;アクリロニトリルなどのニトリル系ビニル単量体;塩化ビニルなどのハロゲン含有ビニル単量体;ニトロスチレンなどのニトロ系ビニル単量体。
中でも、スチレン系単量体と不飽和カルボン酸エステルを単量体として用いた共重合体が好ましい。
【0045】
着色剤として、以下に挙げるブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料などが用いられる。
【0046】
ブラック顔料としては、カーボンブラックなどが挙げられる。
イエロー顔料としては、モノアゾ化合物;ジスアゾ化合物;縮合アゾ化合物;イソインドリノン化合物;イソインドリン化合物;ベンズイミダゾロン化合物;アントラキノン化合物;アゾ金属錯体;メチン化合物;アリルアミド化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー74、93、95、109、111、128、155、174、180、185などが挙げられる。
【0047】
マゼンタ顔料としては、モノアゾ化合物;縮合アゾ化合物;ジケトピロロピロール化合物;アントラキノン化合物;キナクリドン化合物;塩基染料レーキ化合物;ナフトール化合物:ベンズイミダゾロン化合物;チオインジゴ化合物;ペリレン化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19などが挙げられる。
【0048】
シアン顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体;アントラキノン化合物;塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
【0049】
また、顔料とともに、着色剤として従来知られている種々の染料を併用してもよい。
着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、1.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0050】
トナーは、磁性体を含有させて磁性トナーとすることも可能である。この場合、磁性体は着色剤の役割を兼ねることもできる。
【0051】
磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライトなどに代表される酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルなどに代表される金属またはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムなどの金属との合金およびその混合物などが挙げられる。
【0052】
ワックスを以下に例示する。
ベヘン酸ベヘニル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸パルミチルなどの1価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、1価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;セバシン酸ジベヘニル、ヘキサンジオールジベヘネートなどの2価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、2価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;グリセリントリベヘネートなどの3価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、3価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ペンタエリスリトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラパルミテートなどの4価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、4価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサパルミテートなどの6価のアルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、6価のカルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;ポリグリセリンベヘネートなどの多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸エステル、または、多価カルボン酸と脂肪族モノアルコールのエステル;カルナバワックス、ライスワックスなどの天然エステルワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタムなどの石油系ワックスおよびその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックスおよびその誘導体;ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックスおよびその誘導体;高級脂肪族アルコール;ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸;酸アミドワックスが挙げられる。
【0053】
ワックスの含有量は、結着樹脂100質量部に対して、0.5質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
【0054】
トナーは、特性または効果を損なわない程度に、トナー粒子に各種有機または無機微粒子を外添してもよい。有機または無機微粒子としては、例えば、以下のようなものが用いられる。
流動性付与剤:シリカ、アルミナ、酸化チタン、カーボンブラックおよびフッ化カーボン。
研磨剤:金属酸化物(例えば、チタン酸ストロンチウム、酸化セリウム、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化クロム)、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、炭化物(例えば、炭化ケイ素)、金属塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム)。
滑剤:フッ素系樹脂微粒子(例えば、フッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン)、脂肪酸金属塩(例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
荷電制御性粒子:金属酸化物(例えば、酸化錫、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、アルミナ)、カーボンブラック。
【0055】
有機または無機微粒子は疎水化処理されていてもよい。有機または無機微粒子を疎水化処理するための処理剤としては、未変性のシリコーンワニス、各種変性シリコーンワニス、未変性のシリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル、シラン化合物、シランカップリング剤、その他有機ケイ素化合物、有機チタン化合物が挙げられる。これらの処理剤は単独でまたは併用して用いてもよい。
【0056】
<トナー粒子の断面の構造>
以下に、透過型電子顕微鏡で本発明のトナーを構成するトナー粒子の断面を観察した場合の好ましい形態について説明する。
【0057】
トナー粒子の透過型電子顕微鏡で観察される断面と、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて解析することで得られる前記トナー粒子の断面の構成元素のEDXマッピング像とを比較することで、有機ケイ素重合体がトナー母粒子の表面に相当する位置に凸部を形成していることが確認できる。本発明のトナーを構成するトナー粒子は、前記凸部の高さを凸高さHとするとき、前記凸高さHが、30nm以上300nm以下であることが好ましい。
凸高さHの算出方法は後述する。
【0058】
本発明のトナーは、前記多価酸金属塩に含まれる金属元素を金属元素Mとし、前記トナー粒子のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められ前記トナー粒子の表面の構成元素に対する、前記金属元素Mの比率をM1(atm%)としたときに、M1が1.0atm%以上10.0atm%以下であることが好ましい。
【0059】
また、前記トナー1gを、61.5%のショ糖水溶液31gと、非イオン性界面活性剤および陰イオン界面活性剤からなる10%の精密測定器洗浄用中性洗剤水溶液6gと、からなる混合水溶液に分散させ、シェーカーを用いて1分間に300回振とうする処理(a)を施して得たトナーをトナー(a)とする。前記トナー(a)のX線光電子分光分析によって得られたスペクトルから求められ前記トナー粒子の表面の構成元素に対する、前記金属元素Mの比率をM2(atm%)としたとき、前記M1および前記M2がともに1.0atm%以上10.0atm%以下であり、前記M1およびM2が以下の関係式(ME-1)を満たすことが好ましい。
0.90≦M2/M1 (ME-1)
【0060】
上記処理(a)では、トナー粒子の表面に弱く付着している多価酸金属塩を取り除くことができる。具体的には、トナー母粒子に対し、乾式法で付着させた多価酸金属塩は上記処理(a)によって取り除かれやすい。したがって、上記処理(a)によってトナー粒子の表面に存在する多価酸金属塩や有機ケイ素重合体の固着状態を評価することが可能であり、上記処理(a)による各パラメータの変化が小さいほど、多価酸金属塩がトナー母粒子に強く固着していることを示す。
【0061】
上記M1およびM2は処理(a)の前後における、多価酸金属塩によるトナー粒子の表面の被覆状態を表す。そして、多価酸金属塩によるトナー粒子の表面の被覆状態はトナーの帯電性および電荷の移動性に寄与する。
【0062】
上記M1およびM2がともに、1.0atm%以上10.0atm%以下の範囲であると、トナーの負帯電性および電荷の移動性が良好になるため、電子写真感光体からトナーへの電荷移動がよりスムーズになり、カブリの低減の効果を得やすい。
【0063】
上記M1およびM2は1.0atm%以上7.0atm%以下であるとより好ましく、1.5atm%以上5.0atm%以下であるとさらに好ましい。
【0064】
上記式(ME-1)は、上記処理(a)において多価酸金属塩がトナー粒子の表面から剥離せず、残存している比率を意味している。M2/M1が0.90以上となる場合、トナー粒子の表面に多価酸金属塩が強く固着しているため、トナーから感光体表面への多価酸金属塩の移行が抑制される。よって、トナー粒子の表面の負帯電性および感光体表面の正帯電性が維持されやすく、長期にわたる使用時にも安定してカブリを低減することが可能な、耐久性に優れたトナーを得ることができる。
また、M2/M1が0.95以上であることがさらに好ましい。
【0065】
<有機ケイ素重合体を含む凸部の形成方法>
トナー粒子の有機ケイ素重合体を含む凸部の形成方法には特段の制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、トナー母粒子が分散した水系媒体中で上記有機ケイ素化合物の項に示した化合物を縮合し、上記トナー母粒子上に凸部を形成する方法や、乾式あるいは湿式でトナー母粒子上に有機ケイ素重合体を含む凸部を機械的な外力によって付着させる方法が挙げられる。
【0066】
中でも、トナー母粒子と凸部を強固に固着させることが可能であることから、トナー母粒子が分散した水系媒体中で上記有機ケイ素化合物の項に示した化合物を縮合し、上記トナー母粒子上に凸部を形成する方法が好ましい。
以下に、上記方法について説明する。
【0067】
上記方法によってトナー母粒子上に凸部を形成する場合、トナー母粒子を水系媒体に分散し、トナー母粒子分散液を得る工程(工程1)、および有機ケイ素化合物(あるいはその加水分解物)を上記トナー母粒子分散液に混合し、有機ケイ素化合物を上記トナー母粒子分散液中で縮合反応させることで上記トナー母粒子上に有機ケイ素重合体を含む凸部を形成する工程(工程2)を含むことが好ましい。
【0068】
上記工程1において、トナー母粒子分散液を得る方法としては、水系媒体中で製造したトナー母粒子の分散液をそのまま用いる方法、および、乾燥したトナー母粒子を水系媒体に投入し、機械的に分散させる方法等が挙げられる。乾燥したトナー母粒子を水系媒体に分散させる場合、分散助剤を用いてもよい。
【0069】
上記分散助剤としては、公知の分散安定剤や界面活性剤などを用いることができる。具体的には、分散安定剤として以下の、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタ珪酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等の無機分散安定剤、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプン等の有機分散安定剤が挙げられる。また、界面活性剤として以下のアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。中でも、無機分散安定剤を含むことが好ましく、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム等のリン酸塩を含む分散安定剤を含むことがより好ましい。
【0070】
上記工程2において、有機ケイ素化合物はそのままトナー母粒子分散液に加えてもよく、加水分解後にトナー母粒子分散液に加えてもよい。中でも、上記縮合反応が制御しやすく、トナー母粒子分散液中に残留する有機ケイ素化合物量を減らせることから、加水分解後に加えることが好ましい。上記加水分解は公知の酸および塩基を用いてpHを調整した水系媒体中で行うことが好ましい。有機ケイ素化合物の加水分解にはpH依存性があることが知られており、上記加水分解を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが2.0以上6.0以下であることが好ましい。
【0071】
pHを調整するための酸としては、具体的には以下の、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、次亜ヨウ素酸、亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸等の無機酸、酢酸、クエン酸、ギ酸、グルコン酸、乳酸、シュウ酸、酒石酸等の有機酸が挙げられる。
【0072】
pHを調整するための塩基としては、具体的には以下の、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属の水酸化物およびそれらの水溶液、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩およびそれらの水溶液、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどのアルカリ金属の硫酸塩およびそれらの水溶液、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのアルカリ金属のリン酸塩およびそれらの水溶液、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物およびそれらの水溶液、アンモニア、トリエチルアミン等のアミン類等が挙げられる。
【0073】
上記工程2における上記縮合反応はトナー母粒子分散液のpHを調整することで制御することが好ましい。有機ケイ素化合物の縮合反応はpH依存性があることが知られており、上記縮合反応を行う場合のpHは、有機ケイ素化合物の種類によって適宜変更することが好ましい。例えば、有機ケイ素化合物としてメチルトリエトキシシランを用いる場合、上記水系媒体のpHが6.0以上12.0以下であることが好ましい。上記pHを調整することで、本発明の凸部の凸高さHや凸幅Wを制御することが可能であり、本発明の効果をより得やすくなる。pHを調整するための酸および塩基としては、上記加水分解の項で例示した酸および塩基を用いることができる。
【0074】
以下に、各物性値の測定方法を記載する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)、個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
【0075】
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター(株)製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター(株)製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が1.0%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(商品名)(ベックマン・コールター(株)製)が使用できる。
【0076】
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOMME)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50,000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(商品名)(ベックマン・コールター(株)製)を用いて得られた値を設定する。
「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1,600μAに、ゲインを2に、電解水溶液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
【0077】
具体的な測定法は以下のとおりである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液200.0mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーチューブのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液30.0mLを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10%水溶液、和光純薬工業(株)製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵した電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetra150」(商品名)(日科機バイオス(株)製)を準備する。超音波分散器の水槽内に3.3Lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを2.0mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナー粒子を分散した前記(5)の電解水溶液を滴下し、測定濃度が5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50,000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行ない、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)であり、前記専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
【0078】
[電子写真感光体]
本発明の電子写真感光体は、表面層にアクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有することを特徴とする。
本発明の電子写真感光体を製造する方法としては、後述する各層の塗布液を調製し、所望の層の順番に塗布して、乾燥させる方法が挙げられる。このとき、塗布液の塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、インクジェット塗布、ロール塗布、ダイ塗布、ブレード塗布、カーテン塗布、ワイヤーバー塗布、リング塗布などが挙げられる。これらの中でも、効率性および生産性の観点から、浸漬塗布が好ましい。
以下、支持体および各層について説明する。
【0079】
<支持体>
本発明において、電子写真感光体は、支持体を有する。本発明において、支持体は導電性を有する導電性支持体であることが好ましい。また、支持体の形状としては、円筒状、ベルト状、シート状などが挙げられる。中でも、円筒状支持体であることが好ましい。また、支持体の表面に、陽極酸化などの電気化学的な処理や、ブラスト処理、切削処理などを施してもよい。
支持体の材質としては、金属、樹脂、ガラスなどが好ましい。
金属としては、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、金、ステンレスや、これらの合金などが挙げられる。中でも、アルミニウムを用いたアルミニウム製支持体であることが好ましい。
また、樹脂やガラスには、導電性材料を混合または被覆するなどの処理によって、導電性を付与してもよい。
【0080】
<導電層>
本発明において、支持体の上に、導電層を設けてもよい。導電層を設けることで、支持体表面の傷や凹凸を隠蔽することや、支持体表面における光の反射を制御することができる。
導電層は、導電性粒子と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0081】
導電性粒子の材質としては、金属酸化物、金属、カーボンブラックなどが挙げられる。
金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ビスマスなどが挙げられる。金属としては、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などが挙げられる。
これらの中でも、導電性粒子として、金属酸化物を用いることが好ましく、特に、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリン、アルミニウム、ニオブなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
導電性粒子は、芯材粒子と、その粒子を被覆する被覆層とを有する積層構成としてもよい。芯材粒子としては、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛などが挙げられる。被覆層としては、酸化スズ、酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。
導電性粒子として金属酸化物を用いる場合、その体積平均粒子径が、1nm以上500nm以下であることが好ましく、3nm以上400nm以下であることがより好ましい。
【0082】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などが挙げられる。
【0083】
導電層は、シリコーンオイル、樹脂粒子、酸化チタンなどの隠蔽剤などを更に含有してもよい。
【0084】
導電層の平均膜厚は、1μm以上50μm以下であることが好ましく、3μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0085】
導電層は、上述の各材料および溶剤を含有する導電層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。導電層用塗布液中で導電性粒子を分散させるための分散方法としては、ペイントシェーカー、サンドミル、ボールミル、液衝突型高速分散機を用いた方法が挙げられる。
【0086】
<下引き層>
本発明において、支持体または導電層の上に、下引き層を設けてもよい。下引き層を設けることで、層間の接着機能が高まり、電荷注入阻止機能を付与することができる。
【0087】
下引き層は、樹脂を含有することが好ましい。また、重合性官能基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として下引き層を形成してもよい。
【0088】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルフェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエチレンオキシド樹脂、ポリプロピレンオキシド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミド酸樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、セルロース樹脂などが挙げられる。
【0089】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、メチロール基、アルキル化メチロール基、エポキシ基、金属アルコキシド基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基、チオール基、カルボン酸無水物基、炭素-炭素二重結合基などが挙げられる。
【0090】
下引き層は、電気特性を高める目的で、電子輸送物質、金属酸化物、金属、導電性高分子などを更に含有してもよい。これらの中でも、電子輸送物質、金属酸化物を用いることが好ましい。
電子輸送物質としては、キノン化合物、イミド化合物、ベンズイミダゾール化合物、シクロペンタジエニリデン化合物、フルオレノン化合物、キサントン化合物、ベンゾフェノン化合物、シアノビニル化合物、ハロゲン化アリール化合物、シロール化合物、含ホウ素化合物などが挙げられる。電子輸送物質として、重合性官能基を有する電子輸送物質を用い、上述の重合性官能基を有するモノマーと共重合させることで、硬化膜として下引き層を形成してもよい。
金属酸化物としては、酸化インジウムスズ、酸化スズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などが挙げられる。金属としては、金、銀、アルミなどが挙げられる。
金属酸化物の表面をシランカップリング剤などで処理したり、金属酸化物にリン、アルミニウム、ニオブなど元素やその酸化物をドーピングしたりしてもよい。
また、下引き層は、添加剤を更に含有してもよい。
【0091】
下引き層の平均膜厚は、0.1μm以上50μm以下であることが好ましく、0.2μm以上40μm以下であることがより好ましく、0.3μm以上30μm以下であることが特に好ましい。
【0092】
下引き層は、上述の各材料および溶剤を含有する下引き層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0093】
<感光層>
電子写真感光体の感光層は、主に、(1)積層型感光層と、(2)単層型感光層とに分類される。(1)積層型感光層は、電荷発生物質を含有する電荷発生層と、電荷輸送物質を含有する電荷輸送層と、を有する。(2)単層型感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質を共に含有する感光層を有する。
【0094】
(1)積層型感光層
積層型感光層は、電荷発生層と、電荷輸送層と、を有する。
【0095】
(1-1)電荷発生層
電荷発生層は、電荷発生物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0096】
電荷発生物質としては、アゾ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、インジゴ顔料、フタロシアニン顔料などが挙げられる。これらの中でも、アゾ顔料、フタロシアニン顔料が好ましい。フタロシアニン顔料の中でも、オキシチタニウムフタロシアニン顔料、クロロガリウムフタロシアニン顔料、ヒドロキシガリウムフタロシアニン顔料が好ましい。
電荷発生層中の電荷発生物質の含有量は、電荷発生層の全質量に対して、40質量%以上85質量%以下であることが好ましく、60質量%以上80質量%以下であることがより好ましい。
【0097】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリビニルブチラール樹脂がより好ましい。
【0098】
また、電荷発生層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を更に含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、などが挙げられる。
【0099】
電荷発生層の平均膜厚は、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.15μm以上0.4μm以下であることがより好ましい。
【0100】
電荷発生層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷発生層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、スルホキシド系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などが挙げられる。
【0101】
(1-2)電荷輸送層
電荷輸送層は、電荷輸送物質と、樹脂と、を含有することが好ましい。
【0102】
電荷輸送物質としては、例えば、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
電荷輸送層中の電荷輸送物質の含有量は、電荷輸送層の全質量に対して、25質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。
【0103】
樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂などが挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹脂としては、特にポリアリレート樹脂が好ましい。
電荷輸送物質と樹脂との含有量比(質量比)は、4:10~20:10が好ましく、5:10~12:10がより好ましい。
【0104】
また、電荷輸送層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0105】
電荷輸送層の平均膜厚は、5μm以上50μm以下であることが好ましく、8μm以上40μm以下であることがより好ましく、10μm以上17μm以下であることが特に好ましい。
【0106】
電荷輸送層は、上述の各材料および溶剤を含有する電荷輸送層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、エーテル系溶剤または芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
【0107】
(2)単層型感光層
単層型感光層は、電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂および溶剤を含有する感光層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥させることで形成することができる。電荷発生物質、電荷輸送物質、樹脂としては、上記「(1)積層型感光層」における材料の例示と同様である。
【0108】
<表面層>
本発明において、表面層はアクリル樹脂またはメタクリル樹脂を含有していることを特徴とする。
アクリル樹脂またはメタクリル樹脂の含有量が電子写真感光体の表面層に対して30質量%以上含有していることが好ましい。
【0109】
表面層のアクリル樹脂またはメタクリル樹脂は硬化膜であっても、粒子状であってもよいが、アクリル基またはメタクリル基を有するモノマーを含有する組成物を重合することで硬化膜として形成することが好ましい。その際の反応としては、熱重合反応、光重合反応、放射線重合反応などが挙げられる。
【0110】
重合性官能基を有するモノマーが有する重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基などが挙げられる。重合性官能基を有するモノマーとして、電荷輸送能を有する材料を用いてもよい。
【0111】
前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂は、下記式(A)で示される構造を有していることが好ましい。
【化1】
(R14は、水素原子、またはメチル基を示し、Yはトリアリールアミン構造を有する基を示す。)
【0112】
トリアリールアミン構造をアクリル樹脂またはメタクリル樹脂の側鎖に有することで、共役が広がり多価酸金属塩を表面に有するトナーへの電荷授受が効率的に行われるようになっていると推測している。
【0113】
さらに、前記アクリル樹脂または前記メタクリル樹脂は、前記式(A)で示される構造として、下記式(A-1)で示される構造、または、下記式(A-2)で示される構造を有することが好ましい。
【化2】
(式(A-1)中、R11~R15水素原子、またはメチル基を示し、11 および12炭素数2~5のアルキレン基または、フェニレン基を示す。)
【化3】
(式(A-2)中、R21~R25水素原子、またはメチル基を示し、21炭素数2~5のアルキレン基またはフェニレン基を示す。)
【0114】
式(A)で示される構造を有する樹脂を形成するための重合性官能基を有するモノマーの例としては以下の化合物が挙げられる。
【0115】
(式(A-1)で示される化合物の例)
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0116】
(式(A-2)で示される化合物の例)
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0117】
表面層中の式(A-1)および式(A-2)の構造単位の合計の割合が30質量%以上であると本発明の効果がより高く得られるので好ましい。また、式(A-1)の構造単位に対する式(A-2)の構造単位の割合は20質量%以上70質量%以下であることが適度な架橋密度と電子輸送構造の配置のためにより好ましい。
【0118】
表面層は、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、レベリング剤、滑り性付与剤、耐摩耗性向上剤、などの添加剤を含有してもよい。具体的には、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、硫黄化合物、リン化合物、ベンゾフェノン化合物、シロキサン変性樹脂、シリコーンオイル、フッ素樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリエチレン樹脂粒子、シリカ粒子、アルミナ粒子、窒化ホウ素粒子などが挙げられる。
【0119】
表面層のアクリル樹脂またはメタクリル樹脂は、下記一般式(B-1)または(B-2)で示される構造を有していることがより好ましい。
【化18】
(一般式(B-1)中、R101~R112において、R101、R105およびR109のうち少なくとも2つは下記一般式(B-3)で表される構造を示し、残りの置換基は水素原子、または、メチル基を示す。)
【化19】
(一般式(B-2)中、R211~R224において、R211、R224下記一般式(B-3)で表される構造を示し、残りの置換基は水素原子またはメチル基を示す。)
【化20】
(一般式(B-3)中、R31単結合、または、置換基を有していてもよいメチレン基を示し、31結合を有することを示し、X31中には、下記一般式(B-4)で表される構造まれる。)
【化21】
(一般式(B-4)中、R41水素原子またはメチル基を示し、R42メチレン基を示し、41結合を有することを示す。)
【0120】
式(B-1)、または(B-2)で示される構造を有する樹脂を形成するための重合性官能基を有するモノマーの例としては以下の化合物が挙げられる。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
中でも式(B-1-1)で示される構造を有することが好ましい。
【0121】
表面層は、上述の各材料および溶剤を含有する表面層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0122】
表面層は、導電性粒子および/または電荷輸送物質と、樹脂とを含有してもよい。
導電性粒子としては、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物の粒子が挙げられる。
電荷輸送物質としては、多環芳香族化合物、複素環化合物、ヒドラゾン化合物、スチリル化合物、エナミン化合物、ベンジジン化合物、トリアリールアミン化合物や、これらの物質から誘導される基を有する樹脂などが挙げられる。これらの中でも、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物が好ましい。
樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0123】
表面層は、上述の各材料および溶剤を含有する表面層用塗布液を調製し、この塗膜を形成し、乾燥および/または硬化させることで形成することができる。塗布液に用いる溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、スルホキシド系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0124】
表面層の平均膜厚は、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上3μm以下であることが好ましい。
【0125】
電子写真感光体の表面Ra0.010μm以上0.045μm以下であり、電子写真感光体の表面のSm0.005mm以上0.060mm以下であることが好ましい。
ここでRaは周方向に掃引して測定した算術平均粗さ、Smは周方向に掃引して測定した平均間隔である。さらに、電子写真感光体の表面Ra0.010μm以上0.030μm以下、電子写真感光体の表面のSmが0.005mm以上0.060mm以下であることがより好ましい。表面層が前記範囲内の粗さを有することで、接触面積が増加し、表面に多価酸金属塩を有するトナーへの電荷授受の効率が向上する。
【0126】
電子写真感光体の表面層の粗さは上記範囲を満たせば高い効果が得られるが、電子写真感光体の表面層が周面の母線方向に溝形状を有することがより好ましい。表面層の粗面化手段の一例として、研磨シートを用いた研磨が挙げられる。研磨シートとは、シート基材上に研磨砥粒が結着樹脂中に分散された層を設けてなるシート状の研磨部材のことである。研磨シートと表面層表面に押し当て、シートを送ることで表面層の粗面化を、溝形状を有するように施すことができる。詳しい粗面化方法については後述する。
【0127】
前記電子写真感光体の表面のRaと、前記凸部の凸高さ以下の関係式(TR-1)を満たすことが好ましい。
高さH×0.1<電子写真感光体表面のRa<凸高さH(TR-1)
【0128】
[プロセスカートリッジ、電子写真装置]
本発明のプロセスカートリッジは、これまで述べてきたトナーを含む現像手段と、電子写真感光体とを有し電子写真装置本体に着脱可能に構成されていることを特徴とする。
また、本発明の電子写真装置は、これまで述べてきたトナーと、該トナーを搬送する現像剤担持体と、電子写真感光体を有することを特徴とする。
【0129】
図1に、電子写真感光体を備えたプロセスカートリッジを有する電子写真装置の概略構成の一例を示す。
1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1の表面は、帯電手段3により、正または負の所定電位に帯電される。尚、図においては、ローラ型帯電部材によるローラ帯電方式を示しているが、コロナ帯電方式、近接帯電方式、注入帯電方式などの帯電方式を採用してもよい。帯電された電子写真感光体1の表面には、露光手段(不図示)から露光光4が照射され、目的の画像情報に対応した静電潜像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5内に収容されたトナーで現像され、電子写真感光体1の表面にはトナー像が形成される。電子写真感光体1の表面に形成されたトナー像は、転写手段6により、転写材7に転写される。トナー像が転写された転写材7は、定着手段8へ搬送され、トナー像の定着処理を受け、電子写真装置の外へプリントアウトされる。電子写真装置は、転写後の電子写真感光体1の表面に残ったトナーなどの付着物を除去するための、クリーニング手段9を有していてもよい。また、クリーニング手段を別途設けず、上記付着物を現像手段などで除去する、所謂、クリーナーレスシステムを用いてもよい。電子写真装置は、電子写真感光体1の表面を、前露光手段(不図示)からの前露光光10により除電処理する除電機構を有していてもよい。また、本発明のプロセスカートリッジを電子写真装置本体に着脱するために、レールなどの案内手段12を設けてもよい。
【0130】
本発明の電子写真感光体は、レーザービームプリンター、LEDプリンター、複写機などに用いることができる。
【実施例
【0131】
本発明を以下に示す実施例により具体的に説明する。しかし、これは本発明をなんら限定するものではない。以下にトナーおよびトナーの製造方法について記載する。実施例中および比較例中の「部」および「%」は特に断りがない場合、全て質量基準である。
【0132】
<トナー母粒子分散液の製造例>
(水系媒体の調製)
イオン交換水390.0部を入れた反応容器に、リン酸ナトリウム(12水和物)11.2部を投入しリン酸ナトリウム水溶液を調製し、窒素パージしながら65℃で1.0時間保温した。リン酸ナトリウム水溶液を撹拌装置(商品名:T.K.ホモミクサー。特殊機化工業株式会社製)を用いて、12,000rpmにて撹拌した。撹拌を維持しながら、イオン交換水10.0部に7.4部の塩化カルシウム(2水和物)を溶解した塩化カルシウム水溶液を反応容器に一括投入し、分散安定剤を含む水系媒体を調製した。さらに、反応容器内の水系媒体に1.0mol/Lの塩酸を投入し、pHを6.0に調整し、水系媒体を調製した。
【0133】
(重合性単量体組成物の調製)
・スチレン 60.0部
・C.I.ピグメントブルー15:3 6.3部
上記材料をアトライタ(日本コークス工業株式会社製)に投入し、さらに直径1.7mmのジルコニア粒子を用いて、220rpmで5.0時間分散させて、顔料が分散された着色剤分散液を調製した。
次いで、該着色剤分散液に下記材料を加えた。
・スチレン 10.0部
・アクリル酸n-ブチル 30.0部
・ポリエステル樹脂 5.0部
(テレフタル酸と、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物との縮重合物、重量平均分子量Mw=10,000、酸価:8.2mgKOH/g)
・HNP9(パラフィンワックス、融点:76℃、日本精蝋社製) 6.0部
上記材料を65℃に保温し、攪拌装置を用いて、500rpmにて均一に溶解、分散し、重合性単量体組成物を調製した。
【0134】
(造粒工程)
水系媒体の温度を70℃、撹拌装置の回転数を12,000rpmに保ちながら、水系媒体中に重合性単量体組成物を投入し、重合開始剤であるt-ブチルパーオキシピバレート8.0部を添加した。そのまま撹拌装置にて12,000rpmを維持しつつ10分間造粒した。
【0135】
(重合工程)
撹拌装置からプロペラ撹拌翼を備えた撹拌機に変更し、200rpmで撹拌しながら70℃を保持して5.0時間重合を行い、さらに85℃に昇温して2.0時間加熱することで重合反応を行った。さらに、98℃に昇温して3.0時間加熱することで残留モノマーを除去し、イオン交換水を加えて分散液中のトナー母粒子濃度が30.0%になるように調整し、トナー母粒子が分散したトナー母粒子分散液を得た。
トナー母粒子の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。
【0136】
<有機ケイ素化合物液の製造例>
・イオン交換水 70.0部
・メチルトリエトキシシラン 30.0部
上記材料を200mLのビーカーに秤量し、10%塩酸でpHを3.5に調整した。その後、ウォーターバスで60℃に加熱しながら1.0時間撹拌し、有機ケイ素化合物液を作製した。
【0137】
<多価酸金属塩微粒子の製造例>
・イオン交換水 100.0部
・リン酸ナトリウム(12水和物) 8.5部
上記材料を混合したのち、室温で、攪拌装置(商品名:T.K.ホモミクサー。特殊機化工業株式会社製)を用いて、10,000rpmにて撹拌しながら、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(商品名:ZC-300、マツモトファインケミカル株式会社)60.0部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として7.2部相当)を添加した。反応液に1.0mol/Lの塩酸を加えpHを7.0に調整した。反応液の温度を25℃に調整し、撹拌を維持しながら1時間反応を行った。
その後、遠心分離で固形分を取り出した。続いて、イオン交換水に再度分散、遠心分離で固形分を取り出すという工程を3回繰り返し、ナトリウムなどのイオンを除去した。再度、イオン交換水に分散させ、スプレードライで乾燥し、個数平均粒径が124nmのリン酸ジルコニウム化合物微粒子を得た。
【0138】
<トナー粒子の製造例>
<トナー粒子1>
(凸形成工程)
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合し混合液を得た。
・トナー母粒子分散液 500.0部
・有機ケイ素化合物液 35.0部
次に、1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、混合液の温度を50℃にした後に、プロペラ撹拌翼を用いて混合しながら、1.0時間保持した。
【0139】
(多価酸金属塩付着工程)
・チタンラクテート44%水溶液(商品名:TC-310:マツモトファインケミカル社製) 3.2部(チタンラクテートとして1.4部相当)
・有機ケイ素化合物液 10.0部
続いて、上記材料を秤量し、反応容器内に混合した後に、1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、4.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子1を得た。トナー粒子1の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子1を透過型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分光法により解析(TEM-EDX)観察したところ、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体を含む凸部が観察され、凸部の表面にはチタンが存在することが確認された。凸高さHは60nmであった。また、トナー粒子1を飛行時間型二次イオン質量分析法により分析(TOF-SIMS分析)することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。
なお、前記リン酸チタン化合物は、チタンラクテートと、水系媒体由来のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウムに由来するリン酸イオンとの反応物である。
【0140】
<トナー粒子2>
(多価酸金属塩付着工程)
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合し混合液を得た。
・トナー母粒子分散液 500.0部
・チタンラクテート44%水溶液(商品名:TC-310:マツモトファインケミカル社製) 3.2部(チタンラクテートとして1.4部相当)
・有機ケイ素化合物液 10.0部
次に、1.0mol/LのNaOH水溶液を用いて、得られた混合液のpHを9.5に調整し、5.0時間保持した。温度を25℃に下げたのち、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子2を得た。トナー粒子2の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子2をTEM-EDX観察したところ、トナー粒子表面に有機ケイ素重合体は存在するが、凸部は形成されていなかった。また、トナー粒子の表面にはチタンが存在することが確認された。さらに、トナー粒子2をTOF-SIMS分析することでリン酸チタン由来のイオンが検出された。
なお、前記リン酸チタン化合物は、チタンラクテートと、水系媒体由来のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウムに由来するリン酸イオンとの反応物である。
【0141】
<トナー粒子3>
トナー粒子2の製造例において、チタンラクテート44%水溶液(商品名:TC-310:マツモトファインケミカル社製)3.2部に替えて、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩(商品名:ZC-300、マツモトファインケミカル株式会社)11.7部(ジルコニウムラクテートアンモニウム塩として1.4部相当)を添加した以外はトナー粒子2の製造例と同様にしてトナー粒子3を得た。トナー粒子3の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子3をTEM-EDX観察したところ、トナー粒子の表面に有機ケイ素重合体は存在するが、凸部は形成されていなかった。また、トナー粒子の表面にはジルコニウムが存在することが確認された。さらに、トナー粒子3をTOF-SIMS分析することでリン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。なお、前記リン酸ジルコニウム化合物は、ジルコニウムラクテートアンモニウム塩と、水系媒体由来のリン酸ナトリウム、またはリン酸カルシウムに由来するリン酸イオンとの反応物である。
【0142】
<トナー粒子4>
反応容器内に下記サンプルを秤量し、プロペラ撹拌翼を用いて混合した。
・トナー母粒子分散液 500.0部
次に、温度を25℃に保持しながら、1.0mol/Lの塩酸でpHを1.5に調整して1.0時間撹拌後、イオン交換水で洗浄しながら、ろ過した。得られた粉体を恒温槽で乾燥した後、風力式分級機で分級することにより、トナー粒子4を得た。
【0143】
<トナー粒子5>
トナー粒子2の製造例において、チタンラクテート44%水溶液(商品名:TC-310:マツモトファインケミカル社製)を添加しない以外はトナー粒子2の製造例と同様にして、トナー粒子5を得た。トナー粒子5の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー粒子5をTEM-EDX観察したところ、トナー粒子の表面に有機ケイ素重合体は存在するが、凸部は形成されていなかった。また、トナー粒子の表面には金属元素は存在しなかった。さらに、トナー粒子5をTOF-SIMS分析したところ、多価酸金属塩由来のイオンは検出されなかった。
【0144】
<トナーの製造方法>
<トナー1、2、3、5>
トナー粒子1、2、3、5をトナー1、2、3、5として用いた。
【0145】
<トナー4>
・トナー粒子4 100.0部
・疎水性シリカ微粒子(ヘキサメチルジシラザン処理:個数平均粒径12nm)1.0部
・多価酸金属塩微粒子 2.0部
上記材料をSUPERMIXER PICCOLO SMP-2(株式会社カワタ製)に投入して、3,000rpmで20分間混合を行った。その後、目開き150μmのメッシュで篩い、トナー4を得た。トナー4の個数平均粒径(D1)は6.2μm、重量平均粒径(D4)は6.9μmであった。トナー4をTEM-EDX観察したところ、トナー粒子の表面に有機ケイ素重合体は存在しなかった。また、トナー粒子の表面にはジルコニウムが存在することが確認された。トナー4をTOF-SIMS分析したところ、リン酸ジルコニウム由来のイオンが検出された。
【0146】
<凸高さHの算出方法>
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、トナー粒子の断面を以下の方法により観察する。
まず、常温硬化性のエポキシ樹脂中にトナー粒子を充分分散させた後、40℃の雰囲気下で2日間硬化させる。
得られた硬化物からダイヤモンド刃を備えたミクロトーム(商品名:EM UC7:Leica社製)を用い、厚さ50nmの薄片状のサンプルを切り出す。
このサンプルを、TEM(商品名:JEM2800型、日本電子社製)を用いて加速電圧200V、電子線プローブサイズ1mmの条件で50万倍の倍率に拡大し、トナー粒子の断面を観察する。この際、トナー粒子の断面としては、後述するトナー粒子の個数平均粒径(D1)の測定法に従い、同トナーを測定した際の個数平均粒径(D1)の0.9倍~1.1倍の最大径を有するものを選択する。続いて、得られたトナー粒子の断面の構成元素を、エネルギー分散型X線分光法(EDX)を利用して解析し、EDXマッピング像(256×256ピクセル(2.2nm/ピクセル)、積算回数200回)を作成する。
作成したEDXマッピング像において、トナー母粒子の表面にケイ素元素に由来するシグナルが観察される場合、上記シグナルを有機ケイ素重合体の像とする。また、トナー母粒子の表面に連続的に有機ケイ素重合体の像が観察される場合、有機ケイ素重合体の像の端点同士を結んだ線分を基線とする。なお、ケイ素に由来するシグナルの強度がバックグラウンドのケイ素強度と同等になった部分を有機ケイ素重合体の像の端点とする。
各基線について、基線から有機ケイ素重合体の像表面までの垂線のうち最大長を取る垂線を探し、その最大長を凸高さとする。上記方法に従って、20個のトナー粒子の断面を解析し、得られた凸高さの平均値を凸高さH(nm)とする。
【0147】
<X線光電子分光法を用いた金属元素Mの比率M1およびM2の算出方法>
・処理(a)
イオン交換水100mLにスクロース(キシダ化学(株)製)160gを加え、湯せんをしながら溶解させ、61.5%のショ糖水溶液を調製する。遠心分離用チューブに上記ショ糖濃厚液を31.0gと、コンタミノンN(商品名)(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業(株)製)を6g入れ分散液を作製する。この分散液にトナー1.0gを添加し、スパチュラなどでトナーのかたまりをほぐす。遠心分離用チューブをシェーカーにて300spm(strokes per min)、20分で振とうする。振とう後、溶液をスイングローター用ガラスチューブ(50mL)に入れ替えて、遠心分離機にて3500rpm、30分の条件で分離する。トナーと水溶液が十分に分離されていることを目視で確認し、最上層に分離したトナーをスパチュラ等で採取する。採取したトナーを減圧濾過器で濾過した後、乾燥機で1時間以上乾燥させる。乾燥品をスパチュラで解砕してトナー(a)を得る。
【0148】
本発明のトナー、上記トナー(a)について、X線光電子分光法を用いて、以下の通りに測定を行い、上記M1およびM2を算出する。
金属元素Mの比率M1およびM2の比率は、トナーを以下の条件で測定し、算出する。
・測定装置:X線光電子分光装置:(商品名:Quantum2000(アルバック・ファイ株式会社製))
・X線源:モノクロAl Kα
・Xray Setting:100μmφ(25W(15KV))
・光電子取りだし角:45度
・中和条件:中和銃とイオン銃の併用
・分析領域:300×200μm
・Pass Energy:58.70eV
・ステップサイズ:0.1.25eV
・解析ソフト:Maltipak(PHI社)
ここで、例えばTi原子の定量値の算出には、Ti 2p(B.E.452~468eV)のピークを使用する。ここで得られたTi元素の定量値をM1(atm%)とする。
上記方法を用いて、本発明のトナーおよび上記トナー(a)を測定し、各トナーの金属元素Mの比率をそれぞれ、M1(atm%)およびM2(atm%)とする。
【0149】
<多価酸金属塩の検出方法>
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)を用いて、トナー粒子の表面の多価酸金属塩を以下の方法により検出する。
トナーサンプルをTOF-SIMS(商品名:TRIFTIV、アルバック・ファイ社製)を用いて以下の条件で分析する。
・一次イオン種: 金イオン (Au
・一次イオン電流値: 2pA
・分析面積: 300×300μm
・画素数: 256×256pixel
・分析時間: 3min
・繰り返し周波数: 8.2kHz
・帯電中和: ON
・二次イオン極性: Positive
・二次イオン質量範囲: m/z 0.5~1850
・試料基板:インジウム
上記条件で分析を行い、金属イオンと多価酸イオンとを含む二次イオン(例えばリン酸チタンの場合はTiPO(m/z 127)、TiP(m/z 207)等)に由来するピークが検出される場合、トナー粒子の表面に多価酸金属塩が存在するものとする。
【0150】
トナー1~5の物性を表1に示す。
【表1】
【0151】
<電子写真感光体の製造>
(電子写真感光体の製造例1)
直径24mm、長さ257.5mmのアルミニウムシリンダー(JIS-A3003、アルミニウム合金)を支持体(導電性支持体)とした。
【0152】
(導電層の形成)
次に、以下の材料を用意した。
(金属酸化物粒子1)
金属酸化物粒子1として、以下の製造方法によって製造した、ニオブをドープした酸化チタンで被覆されている酸化チタンを使用した。
芯材の二酸化チタンは公知の硫酸法で製造することができる。即ち、硫酸チタン、硫酸チタニルなどを含む溶液を加熱して加水分解させメタチタン酸スラリーを作製し、該メタチタン酸スラリーを脱水焼成して得られる。
芯材粒子として、平均一次粒径が200nmのアナターゼ型酸化チタン粒子を使用した。チタンをTiO換算で33.7g、ニオブをNb換算で2.9g含有するチタンニオブ硫酸溶液を調製した。芯材粒子100gを純水に分散して1Lの懸濁液とし、60℃に加温した。チタンニオブ硫酸溶液と10mol/L水酸化ナトリウムとを懸濁液のpHが2~3になるように3時間かけて滴下した。全量滴下後、pHを中性付近に調整し、凝集剤を添加して固形分を沈降させた。上澄みを除去し、ろ過および洗浄し、110℃で乾燥し、凝集剤由来の有機物をC換算で0.1wt%含有する中間体を得た。この中間体を窒素ガス中750℃で1時間焼成を行って、450℃まで温度を下げた後、酸素ガス中で1時間焼成し、金属酸化物粒子1を作製した。
【0153】
[導電層用塗布液の調製]
(導電層用塗布液1)
結着材料としてのフェノール樹脂(フェノール樹脂のモノマー/オリゴマー)(商品名:プライオーフェンJ-325、DIC製、樹脂固形分:60%、硬化後の密度:1.3g/cm)80部を、溶剤としての1-メトキシ-2-プロパノール60部に溶解させて溶液を得た。
この溶液に金属酸化物粒子1を160部加え、これを分散媒体として平均粒径1.0mmのガラスビーズ200部を用いた縦型サンドミルに入れ、分散液温度23±3℃、回転数1500rpm(周速5.5m/s)の条件で2時間分散処理を行い、分散液を得た。この分散液からメッシュでガラスビーズを取り除いた。ガラスビーズを取り除いた後の分散液を、PTFE濾紙(商品名:PF060、アドバンテック東洋製)を用いて加圧ろ過した。加圧ろ過後の分散液に、レベリング剤としてシリコーンオイル(商品名:SH28 PAINT ADDITIVE、東レ・ダウコーニング製)0.015部、および、表面粗さ付与材としてシリコーン樹脂粒子(商品名:トスパール120、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ(株)製、平均粒径2μm)15部を添加して攪拌することによって、導電層用塗布液1を調製した。
この導電層用塗布液を支持体上に浸漬塗布し、これを30分間150℃で加熱することによって、膜厚が25.0μmの導電層を形成した。
【0154】
(下引き層の形成)
以下の材料を用意した。
下記式(ET-1)で示される電子輸送物質4部
ブロックイソシアネート(商品名:デュラネートSBN-70D、旭化成ケミカルズ(株)製)5.5部
ポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックKS-5Z、積水化学工業(株)製)0.3部
触媒としてのヘキサン酸亜鉛(II)(三津和化学薬品(株)製)0.05部
これらを、テトラヒドロフラン50部と1-メトキシ-2-プロパノール50部の混合溶媒に溶解して下引き層用塗布液を調製した。この下引き層用塗布液を導電層上に浸漬塗布し、これを30分間170℃で加熱することによって、膜厚が0.7μmの下引き層を形成した。
【化26】
【0155】
(電荷発生層の形成)
次に、CuKα特性X線回折より得られるチャートにおいて、7.5°および28.4°の位置にピークを有する結晶形のヒドロキシガリウムフタロシアニン10部とポリビニルブチラール樹脂(商品名:エスレックBX-1、積水化学工業社製)5部を用意した。これらをシクロヘキサノン200部に添加し、直径0.9mmのガラスビーズを用いたサンドミル装置で6時間分散し、これにシクロヘキサノン150部と酢酸エチル350部をさらに加えて希釈して電荷発生層用塗布液を得た。得られた塗布液を下引き層上に浸漬塗布し、95℃で10分間乾燥することにより、膜厚が0.20μmの電荷発生層を形成した。なお、X線回折の測定は、次の条件で行ったものである。
【0156】
[粉末X線回折測定]
使用測定機:理学電気(株)製、X線回折装置RINT-TTRII
X線管球:Cu
管電圧:50KV
管電流:300mA
スキャン方法:2θ/θスキャン
スキャン速度:4.0°/min
サンプリング間隔:0.02°
スタート角度(2θ):5.0°
ストップ角度(2θ):40.0°
アタッチメント:標準試料ホルダー
フィルター:不使用
インシデントモノクロ:使用
カウンターモノクロメーター:不使用
発散スリット:開放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
平板モノクロメーター:使用
カウンター:シンチレーションカウンター
【0157】
(電荷輸送層の形成)
次に、以下の材料を用意した。
下記式(C-1)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))6部
下記式(C-2)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))3部
下記式(C-3)で示される化合物(電荷輸送物質(正孔輸送性化合物))1部
ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部
(C-4)で示される共重合ユニットを有するポリカーボネート樹脂0.02部(Mw=23,000)
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
(式(C-4)中、a:bは[ ]内の構造のモル比率を示す。cは( )内の構造の繰り返し数の平均値を示し、c=20である。)
これらをo-キシレン25部/安息香酸メチル15部/ジメトキシメタン35部の混合溶剤に溶解させることによって電荷輸送層用塗布液を調製した。この電荷輸送層用塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成した。
【0158】
(表面層の形成)
以下に示す材料を用意した。
・下記式(A-1-2)で示される化合物10部
・下記式(A-2-5)で示される化合物10部
・1-プロパノール50部
・1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(商品名:ゼオローラH、日本ゼオン(株)製)25部
【化31】
【化32】
これらを混合し、撹拌した。その後ポリフロンフィルター(商品名:PF-020、アドバンテック東洋(株)製)でこの溶液を濾過することによって、表面層用塗布液を調製した。
この表面層用塗布液を電荷輸送層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、得られた塗膜を6分間50℃で乾燥させた。その後、窒素雰囲気下にて、支持体(被照射体)を200rpmの速度で回転させながら、加速電圧70kV、ビーム電流5.0mAの条件で1.6秒間電子線を塗膜に照射した。なお、このときの電子線の吸収線量を測定したところ、15kGyであった。その後、窒素雰囲気下にて、塗膜の温度が25℃から117℃になるまで30秒かけて昇温させ、塗膜の加熱を行った。電子線照射から、その後の加熱処理までの酸素濃度は15ppm以下であった。次に、大気中において、塗膜の温度が25℃になるまで自然冷却し、塗膜の温度が105℃になる条件で30分間加熱処理を行い、膜厚3μmの表面層を形成した。
【0159】
表面層を形成した後、電子写真感光体の表面を、図2に示す研磨装置を用いて研磨し、粗面化処理を行った。
図2において、研磨シート18は巻き取り機構(不図示)で矢印方向に巻き取られる。電子写真感光体19は矢印方向に回転し、バックアップローラ20は矢印方向に回転する。
研磨シート18として理研コランダム社製の研磨シート(商品名:GC♯3000、基層シート厚:75μm)を用いた。また、バックアップローラ20としては硬度20°のウレタンローラ(外径:50mm)を用いた。研磨条件としては、侵入量を2.5mm、シート送り量を400mm/sとし、研磨シートの送り方向と電子写真感光体の回転方向を同一として、15秒間電子写真感光体の表面を研磨した。
このようにして、支持体、下引き層、電荷発生層、電荷輸送層および表面層をこの順に有する円筒状(ドラム状)の実施例1の電子写真感光体1を製造した。
【0160】
[電子写真感光体の評価]
<電子写真感光体表面層の粗さの測定>
研磨した後の電子写真感光体の表面層の表面粗さは、表面粗さ測定機(商品名:SE700,SMB-9、(株)小坂研究所製)を用いて、下記の条件で測定した。測定はJIS B 0601-2001規格で、周方向に掃引して測定した十点平均面粗さ(Ra)、周方向に掃引して測定した平均間隔(Sm)について行った。
電子写真感光体の長手方向に、塗布上端から30、70、150、210mmの位置において測定した、また、120°手前に回転させた後、同様にして塗布上端から30、70、150、210mmの位置において測定した。さらに、120°手前に回転させた後、同様にして測定し、計12点の測定の平均値よりRzjisおよびRSmを求めた。測定条件は、測定長さ:2.5mm、カットオフ値:0.8mm、送り速さ:0.1mm/s、フィルタ特性:2CR、レベリング:直線(全域)とした。
得られた評価結果を表2に示す。
【0161】
<電荷輸送層および表面層の膜厚測定>
電荷輸送層の膜厚はフィッシャー製膜厚測定機フィッシャーMMS渦電流法プローブEAW3.3で測定した。
表面層の膜厚は、干渉膜厚計(商品名:MCPD-3700、大塚電子(株)製)を用いて測定した。
【0162】
(電子写真感光体の製造例2)
電子写真感光体1の製造において、表面層の形成に用いる化合物を、前記式(A-1-2)で示される化合物8.2部、前記式(A-2-5)で示される化合物1.8部、および電荷輸送機能を有さない前記式(B-1-1)で示される化合物12部に変更し、表面粗さを表2のように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体2を製造した。
【0163】
(電子写真感光体の製造例3)
電子写真感光体1の製造において、表面層の形成に用いる化合物を、前記式(A-2-8)で示される化合物10部、および下記式(D-1)で示される化合物2部、下記式(D-2)で示される化合物7部に変更し、表面粗さを表2のように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体3を製造した。
【化33】
【化34】
【0164】
(電子写真感光体の製造例4)
電子写真感光体1の製造において、表面層の形成に用いる化合物を、下記式(D-3)で示される化合物10部、および酸化スズ粒子(体積平均粒子径:20nm)150質量部に変更し、表面粗さを表2のように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体4を製造した。
【化35】
【0165】
(電子写真感光体の製造例5)
電子写真感光体2の製造において、表面粗さを表2のように変更した以外は、電子写真感光体の製造例2と同様にして電子写真感光体5を製造した。
【0166】
(電子写真感光体の製造例6)
電子写真感光体2の製造において、表面層の膜厚を6μm、表面粗さを表2のように変更した以外は、電子写真感光体の製造例2と同様にして電子写真感光体6を製造した。
【0167】
(電子写真感光体の製造例7)
電子写真感光体4の製造において、表面層の形成に用いる化合物を、式(D-3)で示される化合物4部、および式(C-2)で示される化合物10質量部に変更し、表面粗さを表2のように変更した。それ以外は、電子写真感光体1と同様にして電子写真感光体7を製造した。
【0168】
(電子写真感光体の製造例8)
電子写真感光体の製造において、電荷輸送層および表面層として、式(C-1)で示される化合物6部、式(C-2)で示される化合物3部、式(C-3)で示される化合物1部、ポリカーボネート(商品名:ユーピロンZ400、三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製)10部をo-キシレン25部/安息香酸メチル15部/ジメトキシメタン35部の混合溶剤に溶解させることによって塗布液を調製した。この塗布液を電荷発生層上に浸漬塗布して塗膜を形成し、塗膜を30分間120℃で乾燥させることによって、膜厚が16μmの電荷輸送層を形成し、電子写真感光体8を製造した。
【0169】
電子写真感光体1~8の製造例を表2に示す。
【表2】
【0170】
[実施例1~10、比較例1~3]
上記トナー1~5および電子写真感光体1~8を用いて、表3に示す組み合わせにて画像カブリの評価を行った。
以下に、本発明の評価方法および評価基準について説明する。
画像形成装置としては市販のレーザープリンターであるLBP-712Ci(キヤノン製)のプロセススピードを200mm/secとした改造機および市販のプロセスカートリッジを用いた。カートリッジ内部からは製品トナーを抜き取り、エアブローによって清掃した後、本発明のトナーを165g充填し、電子写真感光体を本発明の電子写真感光体に交換した。
なお、イエロー、マゼンタ、ブラックの各ステーションにはそれぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたイエロー、マゼンタおよびブラックカートリッジを挿入して評価を行った。
【0171】
<画像カブリの評価>
グロス紙モード(1/3速)で、LetterサイズのHP Brochure Paper 200g,Glossy(坪量200g/cm2)を用い、中心位置に75mm×75mmの紙(ポスト・イット スリーエムジャパン(株))を貼り付けて、0%印字比率のベタ白画像をプリントアウトした。
プリントアウト画像から貼り付けた紙を取り除き、「REFLECTMETER MODEL TC-6DS」(商品名)(東京電色社製)を用い、測定した。印字プリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙(貼り付けた紙を取り除いた部位)の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出し、画像カブリの評価とした。フィルターは、アンバーフィルターを用いた。
【0172】
評価結果を表3に示す。
【表3】
【符号の説明】
【0173】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電手段
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 転写材
8 定着手段
9 クリーニング手段
10 前露光光
11 プロセスカートリッジ
12 案内手段
図1
図2