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特許7427557充電制御装置、充電制御方法、および、充電制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】充電制御装置、充電制御方法、および、充電制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20240129BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240129BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H02J7/34 D
H02J7/00 P
H02J7/35 K
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020128618
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025664
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村井 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】松下 聡
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/208561(WO,A1)
【文献】特開2011-239662(JP,A)
【文献】特開2012-228041(JP,A)
【文献】特開2013-031281(JP,A)
【文献】特開2015-149861(JP,A)
【文献】特開2016-059189(JP,A)
【文献】特開2020-202699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
7/34-7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業所における電力の構内系統に接続された再生可能エネルギー発電機と蓄電池から前記構内系統を介して電力を受け取る複数の充電器を用いて、複数の電気自動車に対して充電を行う充電制御装置であって、
前記再生可能エネルギー発電機の出力に基づいて、電気自動車に供給可能な電力の上限を所定の制御周期ごとに消費電力上限値として設定する設定部と、
複数の前記充電器から供給する電力が前記消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする前記充電器の数を決定する決定部と、
前記決定部によって決定された数の前記充電器をオンにして、前記再生可能エネルギー発電機と前記蓄電池の出力を制御して電気自動車に対する充電を行う制御部と、
を備える充電制御装置。
【請求項2】
前記再生可能エネルギー発電機は、自然条件により出力が変動する第1の再生可能エネルギー発電機と、化石燃料以外の燃料を用いて出力を制御可能な第2の再生可能エネルギー発電機と、を含み、
前記制御部は、前記決定部によって決定されたオンにする前記充電器の数に応じて前記第2の再生可能エネルギー発電機の稼働の有無を制御する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の充電電力に対する余剰電力を前記蓄電池に充電し、
前記再生可能エネルギー発電機の発電電力の充電電力に対する不足電力を前記蓄電池から放電する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項4】
前記制御周期は、所定の管理周期に対応して設定され、
前記決定部は、前記制御周期ごとに、複数の前記充電器から供給する電力が前記消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする前記充電器の数を決定し、
前記制御部は、前記再生可能エネルギー発電機ごとに決められた前記制御周期ごとに当該再生可能エネルギー発電機の出力を制御する、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、電力系統から受け取った再生可能エネルギー発電機による電力を電気自動車に対する充電に用いる、請求項1に記載の充電制御装置。
【請求項6】
事業所における電力の構内系統に接続された再生可能エネルギー発電機と蓄電池から前記構内系統を介して電力を受け取る複数の充電器を用いて、複数の電気自動車に対して充電を行う充電制御方法であって、
前記再生可能エネルギー発電機の出力に基づいて、電気自動車に供給可能な電力の上限を所定の管理周期ごとに消費電力上限値として設定する設定ステップと、
複数の前記充電器から供給する電力が前記消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする前記充電器の数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された数の前記充電器をオンにして、前記再生可能エネルギー発電機と前記蓄電池の出力を制御して電気自動車に対する充電を行う制御ステップと、
を含む充電制御方法。
【請求項7】
事業所における電力の構内系統に接続された再生可能エネルギー発電機と蓄電池から前記構内系統を介して電力を受け取る複数の充電器を用いて、複数の電気自動車に対して充電を行う充電制御装置としてのコンピュータに、
前記再生可能エネルギー発電機の出力に基づいて、電気自動車に供給可能な電力の上限を所定の管理周期ごとに消費電力上限値として設定する設定ステップと、
複数の前記充電器から供給する電力が前記消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする前記充電器の数を決定する決定ステップと、
前記決定ステップによって決定された数の前記充電器をオンにして、前記再生可能エネルギー発電機と前記蓄電池の出力を制御して電気自動車に対する充電を行う制御ステップと、
を実行させるための充電制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、充電制御装置、充電制御方法、および、充電制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、EV(Electric Vehicle:電気自動車)が普及するにつれ、EVを通勤に用いる人も増加している。そして、EVを駐車した職場(事業所)で充電サービスを受けられる職場充電の取り組みが行われている。
【0003】
職場充電において、供給する電力を再生可能エネルギーによる電力(例えば太陽光発電による電力。以下、再エネ電力ともいう。)でまかなうことは、再生可能エネルギーの利用を促進し、CO排出量を削減したり地球温暖化防止に貢献したりすることができる、目指すべき方向である。したがって、このような再生可能エネルギーによる電力を用いてEV充電を行う技術の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-131841号公報
【文献】特開2013-158100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、再生可能エネルギーによる電力は常に充分な量が得られるとは限らない。そのため、事業所における電力の構内系統から供給する再生可能エネルギーによる電力のみで複数の電気自動車に対して充電を行う場合の充電制御には改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、事業所における電力の構内系統から供給する再生可能エネルギーによる電力のみで複数の電気自動車に対して適切な充電制御を行うことができる充電制御装置、充電制御方法、および、充電制御プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の充電制御装置は、事業所における電力の構内系統に接続された再生可能エネルギー発電機と蓄電池から前記構内系統を介して電力を受け取る複数の充電器を用いて複数の電気自動車に対して充電を行う充電制御装置であって、前記再生可能エネルギー発電機の出力に基づいて、電気自動車に供給可能な電力の上限を所定の制御周期ごとに消費電力上限値として設定する設定部と、複数の前記充電器から供給する電力が前記消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする前記充電器の数を決定する決定部と、前記決定部によって決定された数の前記充電器をオンにして、前記再生可能エネルギー発電機と前記蓄電池の出力を制御して電気自動車に対する充電を行う制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の充電制御システムの概要を示す図である。
図2図2は、実施形態のEMSの機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態のEMSによる充電制御処理の例を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態におけるEV充電電力制御の例を示すグラフである。
図5図5は、実施形態におけるEV充電電力制御の他の例を示すグラフである。
図6図6は、実施形態において電力小売事業者の再エネ電力を利用する場合の説明図である。
図7図7は、実施形態の充電制御システムの変形例の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の充電制御装置、充電制御方法、および、充電制御プログラムについて説明する。
【0010】
図1は、実施形態の充電制御システムの概要を示す図である。図1に示すように、事業所1において、電力系統2から受電設備3によって受電された電力は、構内系統4を経由して施設5に送られ、消費される。施設5とは、例えば、工場やビル、店舗等である。
【0011】
また、構内系統4には、施設5と共に設置された駐車場6に設けられた充電装置10が接続され、充電装置10に電力が供給される。充電装置10は、複数のEV11-1~11-nに充電を行うための設備である。
【0012】
また、構内系統4には、充電装置10へ供給される電力が再生可能エネルギーによる電力のみとなるように、PV(Photovoltaics:太陽光発電装置)13、蓄電池14、バイオマス発電機15が接続されている。また、構内系統4には、構内系統4からの電力潮流を計測するための電力量計12が接続されている。また、構内系統4に、コジェネレーション装置等を接続してもよい。
【0013】
充電装置10、電力量計12、PV13、蓄電池14、バイオマス発電機15などは、通信ネットワーク17を介してEMS(Energy Management System:エネルギー管理システム)16と接続されている。EMS16は、EV11の充電が再生可能エネルギーによる電力のみで行われるように制御する。EMS16は、事業所1における構内系統4に接続された再生可能エネルギー発電機(PV13、バイオマス発電機15)と蓄電池14から構内系統4を介して電力を受け取る複数の充電器21を用いて、複数のEV11(電気自動車)に対して充電を行う充電制御装置の一例である。また、PV13は、自然条件により出力が変動する第1の再生可能エネルギー発電機の一例である。また、バイオマス発電機15は、化石燃料以外の燃料を用いて出力を制御可能な第2の再生可能エネルギー発電機の一例である。
【0014】
充電装置10は、EV11-1~11-nに対して充電を行うための充電器21-1~21-nを含む。また、充電装置10は、各充電器21-1~21-nを制御するための充電制御装置20を含む。充電制御装置20は、充電器21-1~21-nのオンオフを制御するためのコンタクタ32-1~32-nを含む。以下、EV11-1~11-nをEV11という場合がある。また、充電器21-1~21-nを充電器21という場合がある。また、コンタクタ32-1~32-nをコンタクタ32という場合がある。
【0015】
充電制御装置20は、充電器21の消費電力の合計を計測するための電力量計31と、電力量計31によって計測される充電電力量から、コンタクタ32のオンオフを制御するためのコンピュータ30を含む。
【0016】
図2は、実施形態のEMS16の機能構成を示すブロック図である。EMS16は、PC(Personal Computer)等であり、処理部161と、記憶部162と、入力部163と、表示部164と、を備える。
【0017】
処理部161は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、機能部として、パルス取得部40、パルス積算部41、電力算出部42、蓄電池充放電決定部43、充電器オンオフ決定部44、バイオマス発電起動停止決定部45、出力部46を含む。
【0018】
記憶部162は、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)等であり、各種情報を記憶する。入力部163は、キーボードやマウス等の入力装置である。表示部164は、ディスプレイ等の表示装置である。EMS16は、ほかに、通信インタフェース(不図示)等も備える。
【0019】
パルス取得部40は、電力量計12、31から、電力量計12、31が計測した積算電力量があらかじめ定められた一定量増加した際に発信されるパルスを取得する。
【0020】
パルス積算部41は、パルス取得部40で取得したパルスをインクリメントして積算値を算出する。電力算出部42は、あらかじめ定められた制御周期ごとに、パルス積算部41から積算パルス数を取得し、前回取得した積算パルス数との差と、電力量計12、31のパルス定数から、当該制御周期における構内系統4からの電力潮流と、充電器21を用いたEV11の充電(以下、「EV充電」ともいう。)により消費された消費電力を算出する。
【0021】
また、電力算出部42は、PV13等の出力に基づいて、EV11に供給可能な電力の上限を所定の制御周期ごとに消費電力上限値として設定する設定部としても機能する。制御周期は、所定の管理周期に対応して設定される(詳細は後述)。
【0022】
蓄電池充放電決定部43は、電力算出部42によって算出された構内系統4からの電力潮流とEV充電による消費電力とから、蓄電池14の充放電電力を決定する。
【0023】
充電器オンオフ決定部44は、電力算出部42により算出された構内系統4からの電力潮流と、蓄電池充放電決定部43により決定された蓄電池14の充放電電力とから、充電器21-1~21-nのそれぞれのオンオフを決定する。充電器オンオフ決定部44は、複数の充電器21から供給する電力が消費電力上限値を超えない範囲で、オンにする充電器21の数を決定する決定部の一例である。
【0024】
バイオマス発電起動停止決定部45は、電力算出部42によって算出された構内系統4からの電力潮流とEV充電による消費電力とから、バイオマス発電機15の起動停止(稼働の有無)を決定する。
【0025】
出力部46は、蓄電池充放電決定部43により決定された蓄電池14の充放電電力に基づき、蓄電池14へ充放電電力指令値を出力する。また、出力部46は、充電器オンオフ決定部44により決定された充電器21のオンオフ情報に基づき、充電装置10へコンタクタ32-1~31-nのオンオフを制御する信号を出力する。また、出力部46は、バイオマス発電起動停止決定部45により決定されたバイオマス発電機15の起動停止情報に基づき、バイオマス発電機15へ起動停止信号を出力する。
【0026】
出力部46は、充電器オンオフ決定部44によって決定された数の充電器21をオンにして、バイオマス発電機15と蓄電池14の出力を制御してEV11に対する充電を行う制御部の一例である。その場合、制御部は、例えば、再生可能エネルギー発電機(PV13、バイオマス発電機15)ごとに決められた制御周期ごとに当該再生可能エネルギー発電機の出力を制御する(詳細は後述)。
【0027】
なお、充電装置10において、充電制御装置20のコンピュータ30は、充電器オンオフ決定部44の機能の一部を分担してもよい。例えば、充電器オンオフ決定部44では、充電装置10の消費電力上限値を計算し、充電制御装置20のコンピュータ30では、EV11への充電を消費電力上限値以内に抑え、かつ、コンタクタ31-1~31-nを介して充電器21-1~21-nのうちオンにする充電器21を決定してもよい。
【0028】
次に、図3を参照して、実施形態のEMS16による充電制御処理について説明する。図3は、実施形態のEMS16による充電制御処理の例を示すフローチャートである。なお、前提として、EMS16のパルス取得部40は、常時、電力量計12、31が発信するパルスを受信しており、パルス取得部40が電力量計12、31からパルスを受信するたびに、パルス積算部41は、受信したパルス数をインクリメントして積算値を算出する。
【0029】
そして、EMS16の電力算出部42は、ステップS1において、蓄電池制御周期のタイミングか否かを判定し、Yesの場合はステップS2に進み、Noの場合はステップS5に進む。つまり、蓄電池制御周期ごとにステップS2~S4の処理が実行される。
【0030】
ステップS2において、電力算出部42は、パルス積算部41がカウントした積算パルス数を取得し、1周期前に取得した積算パルス数との差と、電力量計12、31のパルス定数から、当該周期における構内系統4の潮流電力Psと、EV充電により消費された消費電力Peを算出する。蓄電池制御周期は、電力デマンド管理周期および充電装置制御周期(充電装置10の制御周期)以下とし、例えば1分である。蓄電池制御周期を電力デマンド管理周期より短くすることで、蓄電池14の充放電を電力デマンド値に応じてより的確に制御できる。
【0031】
次に、ステップS3において、蓄電池充放電決定部43は、ステップS2で算出された構内系統4の潮流電力Ps(t)(Psは順潮流を正とする)から、次の式(1)~(3)により蓄電池充放電電力を決定する。
【0032】
Pb(t)=Pb(t-1)+ΔPb(t) (1)
ΔPb(t)=Ps(t)+α(Ps(t)>0(順潮流)) (2)
ΔPb(t)=Ps(t)-α(Ps(t)<0(逆潮流)) (3)
ここで、Pb(t)>0は放電、Pb(t)<0は充電を表すものとする。また、α>0とする。
【0033】
この場合、蓄電池充放電決定部43は、順潮流の場合は蓄電池14の放電をPs(t)+αだけ増やし(充電をPs(t)+αだけ減らし)、逆潮流の場合は蓄電池14の充電をPs(t)-αだけ増やす(放電をPs(t)-αだけ減らす)。
【0034】
次に、ステップS4において、出力部46は、ステップS3で決定された蓄電池14の充放電電力に対応する制御信号を蓄電池14へ送信し、蓄電池14を制御する。
【0035】
次に、充電器オンオフ決定部44は、ステップS5において、充電装置制御周期のタイミングか否かを判定し、Yesの場合はステップS6に進み、Noの場合はステップS8に進む。つまり、充電装置制御周期ごとにステップS6、S7の処理が実行される。
【0036】
ステップS6において、充電器オンオフ決定部44は、ステップS2で算出された構内系統4からの電力潮流Ps(t)と、同じくステップS2で算出されたEV充電の消費電力Pe(t)とから、次の式(4)、(5)により充電装置10の消費電力上限値Pd(t)を決定する。
Pd(t)=Pe(t)-Ps(t)-β(Ps(t)>0(順潮流)) (4)
Pd(t)=Pe(t)-Ps(t)+β(Ps(t)<0(逆潮流)) (5)
ここで、β>0とする。
【0037】
この場合、順潮流の場合は、充電装置10の消費電力上限値Pd(t)を現在の消費電力Pe(t)から順潮流Ps(t)+β分だけ減らし、順潮流を解消する。また、逆潮流の場合は、充電装置10の消費電力上限値Pd(t)を現在の消費電力Pe(t)から逆潮流-Ps(t)+β分だけ増やし、逆潮流をできるだけ少なくしようとするものである。そして、充電器オンオフ決定部44は、充電装置10の消費電力上限値Pd(t)に基づき、充電器21-1~21-nのそれぞれのオンオフを決定する。充電器21のオンオフは、たとえば、各充電器21-1~21-nの定格電力と、各充電器21-1~21-nに設定された優先順位に基づき、充電装置10の消費電力上限値Pd(t)を超えない範囲で、最大数の充電器21をオンにするように決定する。ここで、充電装置制御周期は、蓄電池制御周期以上、電力デマンド管理周期以下とし、例えば10分である。なお、ステップS6において充電器オンオフ決定部44が行う充電器21のオンオフの決定は、充電装置10の充電制御装置20のコンピュータ30において実施してもよい。
【0038】
次に、ステップS7において、出力部46は、ステップS6で決定された充電器21-1~21-nのそれぞれのオンオフに対応する制御信号を充電装置10へ送信し、充電装置10を制御する。
【0039】
次に、バイオマス発電起動停止決定部45は、ステップS8において、電力デマンド管理周期のタイミングか否かを判定し、Yesの場合はステップS9に進み、Noの場合はステップS1に戻る。つまり、電力デマンド管理周期ごとにステップS9、S10の処理が実行される。
【0040】
ステップS9において、バイオマス発電起動停止決定部45は、次のようにバイオマス発電機15の起動停止を決定する。すなわち、バイオマス発電起動停止決定部45は、充電装置10の充電器21のうち、オンになっている充電器21の数がオン充電器数の第1の閾値より小さくなった場合、バイオマス発電機15を起動し、また、充電装置10の充電器21のうち、オンになっている充電器の数がオン充電器数の第2の閾値より大きくなった場合にバイオマス発電機15を停止する。ここで、電力デマンド管理周期は、例えば30分である。
【0041】
この場合、EV11へ充電する充電器21の数が小さくなりすぎる場合には、バイオマス発電機15によりEV充電を行い、逆にEV11へ充電する充電器21の数が多くなりすぎる場合には、バイオマス発電機15によるEV充電を停止することになる。
【0042】
そして、ステップS10において、出力部46は、ステップS9で決定されたバイオマス発電機起動停止指令値をバイオマス発電機15へ送信し、バイオマス発電機15を制御する。
【0043】
次に、図4を参照して、EV充電電力制御の例について説明する。図4は、実施形態におけるEV充電電力制御の例を示すグラフである。図4のグラフにおいて、横軸は時刻、縦軸は電力(kW)を示す。本実施形態では、電力デマンド管理周期P1の30分に対して、充電装置制御周期P2はその3分の1の10分、蓄電池14の制御周期はさらにその10分の1の1分であるとする。また、EV充電の消費電力G3は8:00の時点においてPV13による発電電力G1に満たないものとする。
【0044】
時刻8:00において、EV充電の消費電力G3はPV13による発電電力G1に満たないため、PV13の発電により構内系統4の電力量計12において逆潮流が発生する。この逆潮流電力は、蓄電池14の充放電制御により、蓄電池14に充電される。そして、この逆潮流電力により、EMS16が充電装置10の消費電力上限値G2を決定し、充電装置10は、この消費電力上限値G2をできるだけ超えないように、充電制御装置20を制御し、EV11への充電を行う。PV13の発電電力G1が増加するにしがたい、消費電力上限値G2も増加し、EV11への充電が行われていく。PV13の発電電力G1とEV充電の消費電力G3のインバランスは、蓄電池14への充電、または、蓄電池14からの放電により調整される。
【0045】
次に、図5を参照して、EV充電電力制御の他の例について説明する。図5は、実施形態におけるEV充電電力制御の他の例を示すグラフである。図5は、PV13の発電電力G1が小さい場合の例を示す。PV13の発電電力G1が小さい場合、EV充電の消費電力上限値G2が小さくなるため、EV充電制御によりオンとなる充電器21の数も少なくなる。これにより、バイオマス発電機15が起動してバイオマス発電電力Bが発生し、構内系統4における逆潮流電力が増加することにより、消費電力上限値G2が増加し、充電装置10においてオンされる充電器21の数が増加する。
【0046】
次に、図6を参照して、電力小売事業者の再エネ電力(例えば、COを排出しない水力発電所による電力)を利用する場合について説明する。図6は、実施形態において電力小売事業者の再エネ電力を利用する場合の説明図である。ここでは、電力系統から受け取ったその再エネ電力をEV11に対する充電に用いる。
【0047】
ここでは、電力小売事業者の再エネ電力(再エネ電力購入分Pr)を利用する場合に、再エネ機器(PV13、蓄電池14、バイオマス発電機15)からの充電が必要なEV充電の電力需要について説明する。電力小売事業者の再エネ電力については、事業所全体の消費電力G11の全部を電力小売事業者からの再エネ電力購入分とする場合と、一部を再エネ電力購入分とする場合がある。全部の場合はEV充電も全部が常に再エネ電力購入分となるため、一部を再エネ電力購入分とする場合のみ説明する。
【0048】
事業所全体の消費電力G11のうち一部を再エネ電力購入分Prとする場合も、EV充電の消費電力G12の全部あるいは一部が再エネ電力購入分Prによりまかなわれる。そして、領域Aに示すように、EV充電の消費電力G12が再エネ電力購入分Prを上回っている場合は、その超過分だけを事業所1内に設置した再エネ機器(PV13、蓄電池14、バイオマス発電機15)により電力供給すればよい。
【0049】
これは、上述の説明において、構内系統4の潮流電力Psとして考えていたものを、Ps-Prに置き換えて考えればよいことを意味する。すなわち、再エネ電力購入分Prだけ構内系統4の潮流電力Psに常に逆潮流向きのバイアスがかかった状態と捉えることができる。このようにして、電力小売事業者の再エネ電力を利用する場合にも、再エネ電力のみでのEV充電のための制御が可能である。
【0050】
このように、本実施形態のEMS16等によれば、所定の制御周期ごとに消費電力上限値を設定し、その消費電力上限値に基づいてオンにする充電器21の数を決定する。これにより、事業所1における電力の構内系統4から供給される再生可能エネルギーによる電力のみで複数のEV11に対して適切な充電制御を行うことができる。
【0051】
つまり、例えば、PV13やバイオマス発電機15による発電電力の充電電力に対する余剰電力は蓄電池14に充電し、不足電力を蓄電池14から放電することで、蓄電池14を有効利用した手法を実現できる。
【0052】
一方、従来技術では、例えば、風力発電、水力発電、太陽光発電、ゴミ発電、バイオマス発電機などの再生可能エネルギー発電を電力系統に接続せずに、いったん蓄電池に充電し、そこからEVへ充電する再生可能エネルギーの利用システムがある。しかし、この手法では、再生可能エネルギー発電を一度すべて蓄電池へ充電する必要があるため、大容量の蓄電池が必要となったり、また、蓄電池への充放電にともなう電力ロスが起きて効率が悪かったりするという問題があった。
【0053】
また、他の従来技術では、蓄電池を用いずに、再生可能エネルギー発電の予測値と、EVの需要期待値に基づき、複数のEVの充電時刻を調整し、EV利用者に通知する充電案内システムがある。しかし、この手法では、蓄電池を用いないために、再生可能エネルギー発電のみによってはEVへの充電を充分に行えない事態が発生しやすいという問題があった。
【0054】
本実施形態の手法によれば、それらのような問題は生じない。
【0055】
(変形例)
次に、図7を参照して、実施形態の充電制御システムの変形例について説明する。図7は、実施形態の充電制御システムの変形例の概要を示す図である。なお、上述の実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。
【0056】
図7において、領域50は、例えば、事業所1が提携する外部の近隣駐車場等である。充電器21-1~21-nは、この領域50に設置される。つまり、充電器21-1~21-nは、事業所1の構内系統4に接続されていればよく、事業所1の外部に設置されていてもよい。充電器21-1~21-nは、EV11-1~11-nに充電を行う。
【0057】
このように、実施形態の充電制御システムの変形例によれば、充電器21-1~21-nを事業所1の外部に設置することができるので、EV11への充電場所をより広範囲に決定できる。
【0058】
本実施形態のEMS16で実行される充電制御プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。また、当該充電制御プログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、当該充電制御プログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、当該充電制御プログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
【0059】
当該充電制御プログラムは、EMS16における処理部161内の各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)が上記記憶媒体から充電制御プログラムを読み出して実行することにより上記各機能部が主記憶装置上にロードされ生成されるようになっている。
【0060】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0061】
例えば、再生可能エネルギー発電は、上述の太陽光発電、バイオマス発電に限定されず、ほかに、風力発電、水力発電、地熱発電、太陽熱利用発電、雪氷熱利用発電、地中熱利用発電、空気熱発電、海洋温度差発電、海の波力発電、海の潮力発電、海流エネルギー利用発電などの他の再生可能エネルギー発電であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…事業所、2…電力系統、3…受電設備、4…構内系統、5…施設、6…駐車場、10…充電装置、11…EV、12…電力量計、13…PV、14…蓄電池、15…バイオマス発電機、16…EMS、17…通信ネットワーク、21…充電器、30…コンピュータ、31…電力量計、32…コンタクタ、40…パルス取得部、41…パルス積算部、42…電力算出部、43…蓄電池充放電決定部、44…充電器オンオフ決定部、45…バイオマス発電起動停止決定部、46…出力部、161…処理部、162…記憶部、163…入力部、164…表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7