(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】真空排気系の洗浄装置
(51)【国際特許分類】
F04B 37/16 20060101AFI20240129BHJP
F04D 19/04 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F04B37/16 C
F04D19/04 G
(21)【出願番号】P 2020131523
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】508275939
【氏名又は名称】エドワーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【氏名又は名称】松下 亮
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】樺澤 剛志
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-113455(JP,A)
【文献】特開平10-317147(JP,A)
【文献】特開平05-039576(JP,A)
【文献】国際公開第2020/145150(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0252969(US,A1)
【文献】特開2017-025793(JP,A)
【文献】特開2005-120955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04D 19/04
B01D 8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇華成分を含むガスを冷却して堆積物を発生させることが可能な冷却トラップと、
前記冷却トラップの上流に配設された少なくとも1つの第1真空ポンプと、
前記第1真空ポンプと前記冷却トラップを繋ぐ少なくとも1つの第1排気経路と、
前記冷却トラップの下流に配設された少なくとも1つの第2真空ポンプと、
前記第2真空ポンプと前記冷却トラップを繋ぐ少なくとも1つの第2排気経路と
を備えた前記ガスを排気する真空排気系の洗浄装置であって、
少なくとも、前記第1真空ポンプ又は前記第1排気経路の一部を、
前記昇華成分の昇華温度以上に加熱するとともに、
前記冷却トラップを、前記昇華成分の昇華温度以下に冷却
し、
前記冷却トラップは、
吸気口と排気口を備えたケーシングと、
前記ケーシング内に配設された少なくとも1つの板状部と、
前記板状部を冷却する冷却機構と、
前記ケーシング内に設置された回転軸と、
前記回転軸に固定された少なくとも1つの掻出部とを備え、
前記掻出部が前記板状部の板面に沿って回転可能に構成されたこと
を特徴とする真空排気系の洗浄装置。
【請求項2】
前記第1排気経路に配設された少なくとも1つの切替弁と、
前記切替弁と前記第2排気経路を繋ぐ少なくとも1つの第3排気経路を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載の真空排気系の洗浄装置。
【請求項3】
前記冷却トラップは、
少なくとも1つの開口部が設けられた前記板状部を、
前記開口部の位相を変えて複数積層して構成されていること
を特徴とする請求項
1に記載の真空排気系の洗浄装置。
【請求項4】
前記第2排気経路に配設された分岐経路と、
前記分岐経路に配設された開閉弁と、
前記開閉弁の下流に配設された堆積物回収容器と
を備えたことを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の真空排気系の洗浄装置。
【請求項5】
前記冷却トラップの前記ケーシングに設けられた堆積物排出口と、
前記堆積物排出口の下流に配設された開閉弁と、
前記開閉弁の下流に配設された堆積物回収容器と
を備えたことを特徴とする請求項
3に記載の真空排気系の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばターボ分子ポンプ等を用いた真空排気系の洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、真空ポンプの一種としてターボ分子ポンプが知られている。このターボ分子ポンプにおいては、ポンプ本体内のモータへの通電により回転翼を回転させ、ポンプ本体に吸い込んだガス(プロセスガス)の気体分子を弾き飛ばすことによりガスを排気するようになっている。また、このようなターボ分子ポンプには、ポンプ内の温度を適切に管理するために、ヒータや冷却管を備えたタイプのものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のターボ分子ポンプのような真空ポンプにおいては、移送されるガス内の物質が析出する場合がある。例えば、半導体製造装置のエッチングプロセスに使用されるガスが、ポンプ本体に吸い込んだガス(プロセス)を圧縮し、徐々に圧力を上げる過程で、排気流路の温度が昇華温度を下回る条件により、真空ポンプや配管内部に副反応生成物を析出させ、排気流路を閉塞してしまうことがある。また、ポンプの吸気口から吸引したガスをポンプ内部で圧縮する過程で、吸引したガスが気体から固体へ相変化する圧力を超え、ポンプ内部で固体に相変化することがある。その結果、ポンプ内部に副反応生成物である固体が堆積し、この堆積物によって不具合が生じる場合がある。そして、析出した副反応生成物の除去のために真空ポンプや配管を清掃する必要がある。また、状況によっては、真空ポンプや配管の修理や、新品への交換を行う必要もある。そして、これらのオーバーホールの作業のために、半導体製造装置を一時停止させてしまう場合があった。さらに、オーバーホールの期間が、状況によっては数週間以上に及ぶ場合もあった。
【0005】
また、従来の真空ポンプにおいては、副反応生成物が内部に付着するのを防止するため、通常動作としての排気動作中に、ヒータによって内部の排気経路の温度を上げる機能を備えたものがある(特許文献1)。特許文献1に開示された発明では、ポンプの排気流路のうち、下流側を加熱し、吸入したガスの昇華圧力を上げ、気相領域とすることで、ポンプ内部に副反応生成物が堆積し、排気流路が閉塞されるのを防いでいる。このような加熱の際には、真空ポンプの構成部品に熱による膨張や変形などが生じ、部品同士が接触するのを回避するため、その上昇温度(加熱の目標温度)に制限を設けて、温度が設定値以上に上昇しないよう温度管理が行われる。
を行う必要があった。
【0006】
また、本出願人は、真空ポンプが半導体製造等のプロセスに使用されていない待機状態において、真空ポンプのガス流路を加熱し、堆積物をガス化し除去する機能(「クリーニング機能」や「クリーニングモード」などともいう)を備えた真空ポンプを提案している(特願2019-165839号)。このような真空ポンプによれば、真空ポンプの待機時間に堆積物を除去できるため、プロセス中にガス流路を常に高温に保つ必要は無い。そのため、真空ポンプにおける許容流量を拡大することが可能となる。
【0007】
そして、このタイプの真空ポンプや、真空ポンプを組み込んだ排気システムの一層の改良を考えるとすれば、クリーニング時の加熱されたガスが、更に下流(下段)に配置された真空ポンプや配管などの機器を流れる際に、ガスの温度が低下し、下流側の機器の内部に堆積物が再付着するようなことも想定できないわけではない。
【0008】
本発明の目的とするところは、真空ポンプの下流で堆積物が再付着するのを防止することが可能な真空排気系の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記目的を達成するために本発明は、昇華成分を含むガスを冷却して堆積物を発生させることが可能な冷却トラップと、
前記冷却トラップの上流に配設された少なくとも1つの第1真空ポンプと、
前記第1真空ポンプと前記冷却トラップを繋ぐ少なくとも1つの第1排気経路と、
前記冷却トラップの下流に配設された少なくとも1つの第2真空ポンプと、
前記第2真空ポンプと前記冷却トラップを繋ぐ少なくとも1つの第2排気経路と
を備えた前記ガスを排気する真空排気系の洗浄装置であって、
少なくとも、前記第1真空ポンプ又は前記第1排気経路の一部を、
前記昇華成分の昇華温度以上に加熱するとともに、
前記冷却トラップを、前記昇華成分の昇華温度以下に冷却し、
前記冷却トラップは、
吸気口と排気口を備えたケーシングと、
前記ケーシング内に配設された少なくとも1つの板状部と、
前記板状部を冷却する冷却機構と、
前記ケーシング内に設置された回転軸と、
前記回転軸に固定された少なくとも1つの掻出部とを備え、
前記掻出部が前記板状部の板面に沿って回転可能に構成されたこと
を特徴とする真空排気系の洗浄装置にある。
(2)また、上記目的を達成するために他の本発明は、前記第1排気経路に配設された少なくとも1つの切替弁と、
前記切替弁と前記第2排気経路を繋ぐ少なくとも1つの第3排気経路を備えたこと
を特徴とする(1)に記載の真空排気系の洗浄装置にある。
(3)また、上記目的を達成するために他の本発明は、前記冷却トラップは、
少なくとも1つの開口部が設けられた前記板状部を、
前記開口部の位相を変えて複数積層して構成されていること
を特徴とする(1)に記載の真空排気系の洗浄装置にある。
(4)また、上記目的を達成するために他の本発明は、前記第2排気経路に配設された分岐経路と、
前記分岐経路に配設された開閉弁と、
前記開閉弁の下流に配設された堆積物回収容器と
を備えたことを特徴とする(1)~(3)のいずれかに記載の真空排気系の洗浄装置にある。
(5)また、上記目的を達成するために他の本発明は、前記冷却トラップの前記ケーシングに設けられた堆積物排出口と、
前記堆積物排出口の下流に配設された開閉弁と、
前記開閉弁の下流に配設された堆積物回収容器と
を備えたことを特徴とする(3)に記載の真空排気系の洗浄装置にある。
【発明の効果】
【0010】
上記発明によれば、真空ポンプの下流で堆積物が再付着するのを防止することが可能な真空排気系の洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る真空排気系の洗浄装置を概略的に示すブロック図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る第1真空ポンプ(ターボ分子ポンプ)の縦断面図である。
【
図4】電流指令値が検出値より大きい場合の制御を示すタイムチャートである。
【
図5】電流指令値が検出値より小さい場合の制御を示すタイムチャートである。
【
図7】冷却トラップの一部を拡大して示す縦断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係る真空排気系の洗浄装置を概略的に示すブロック図である。
【
図11】本発明の第3実施形態に係る真空排気系の洗浄装置を概略的に示すブロック図である。
【
図12】本発明の第4実施形態に係る真空排気系の洗浄装置を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の各実施形態に係る真空排気系の洗浄装置について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る洗浄装置10の構成をブロック図により概略的に示している。この洗浄装置10は、主に、第1真空ポンプ11、切替弁12、冷却トラップ13、開閉弁14、堆積物回収容器15、及び、第2真空ポンプ16の各機器を備えている。
【0013】
また、これらの機器11~16は、各種の配管を介して接続されている。第1真空ポンプ11と冷却トラップ13は、第1排気経路としての第1配管21を介して接続されており、第1配管21の途中には、切替弁12が配置されている。冷却トラップ13と第2真空ポンプ16は、第2排気経路としての第2配管22を介して接続されている。ここで、各種の配管は、複数の配管部品を組み合わせて構成されているが、配管部品としては一般的な種々のものを採用できるため、ここでは配管部品についての詳細な説明は省略する。
【0014】
前述の切替弁12は3方弁の構造を有するものとなっており、切替弁12と第2配管22は、第3排気経路としての第3配管23を介して接続されている。また、第2配管22は、分岐経路としての分岐管24を介して堆積物回収容器15に接続されており、分岐管24の途中には、開閉弁14が配置されている。ここで、
図1中に符号25で示すのは、第1真空ポンプ11の吸気側に接続された第4配管である。
【0015】
前述の第1真空ポンプ11としては、
図2に示すようなターボ分子ポンプ100が採用されている。また、冷却トラップ13としては、
図6~8に示すような積層型のものが用いられている。これらのターボ分子ポンプ100や冷却トラップ13の具体的な構成については後述する。
【0016】
さらに、堆積物回収容器15は、冷却トラップ13で発生した堆積物を収容することが可能なものとなっている。また、第2真空ポンプ16としては、各種の一般的なタイプの真空ポンプを採用することが可能であるが、ここではドライポンプが用いられている。
【0017】
次に、第1真空ポンプ11として用いられているターボ分子ポンプ100について説明する。
図2は、ターボ分子ポンプ100を示している。このターボ分子ポンプ100は、例えば、半導体製造装置等のような排気対象機器の真空チャンバ(図示略)に、
図1に示す前述の第4配管25を介して接続されるようになっている。
【0018】
このターボ分子ポンプ100の縦断面図を
図2に示す。
図2において、ターボ分子ポンプ100は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。そして、外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードである複数の回転翼102(102a、102b、102c・・・)を周部に放射状かつ多段に形成した回転体103が備えられている。この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。
【0019】
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石がX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104の近接に、かつ上側径方向電磁石104のそれぞれに対応されて4個の上側径方向センサ107が備えられている。上側径方向センサ107は、例えば伝導巻線を有するインダクタンスセンサや渦電流センサなどが用いられ、ロータ軸113の位置に応じて変化するこの伝導巻線のインダクタンスの変化に基づいてロータ軸113の位置を検出する。この上側径方向センサ107はロータ軸113、すなわちそれに固定された回転体103の径方向変位を検出し、図示せぬ制御装置に送るように構成されている。
【0020】
この制御装置においては、例えばPID調節機能を有する補償回路が、上側径方向センサ107によって検出された位置信号に基づいて、上側径方向電磁石104の励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150(後述する)が、この励磁制御指令信号に基づいて、上側径方向電磁石104を励磁制御することで、ロータ軸113の上側の径方向位置が調整される。
【0021】
そして、このロータ軸113は、高透磁率材(鉄、ステンレスなど)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
【0022】
さらに、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向位置信号が制御装置に送られるように構成されている。
【0023】
そして、制御装置において、例えばPID調節機能を有する補償回路が、軸方向センサ109によって検出された軸方向位置信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bのそれぞれの励磁制御指令信号を生成し、アンプ回路150が、これらの励磁制御指令信号に基づいて、軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bをそれぞれ励磁制御することで、軸方向電磁石106Aが磁力により金属ディスク111を上方に吸引し、軸方向電磁石106Bが金属ディスク111を下方に吸引し、ロータ軸113の軸方向位置が調整される。
【0024】
このように、制御装置は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。なお、これら上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150については、後述する。
【0025】
一方、モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置によって制御されている。また、モータ121には図示しない例えばホール素子、レゾルバ、エンコーダなどの回転速度センサが組み込まれており、この回転速度センサの検出信号によりロータ軸113の回転速度が検出されるようになっている。
【0026】
さらに、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。制御装置では、この位相センサと回転速度センサの検出信号を共に用いて磁極の位置を検出するようになっている。
【0027】
回転翼102(102a、102b、102c・・・)とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123a、123b、123c・・・が配設されている。回転翼102(102a、102b、102c・・・)は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。
【0028】
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。そして、固定翼123の外周端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125(125a、125b、125c・・・)の間に嵌挿された状態で支持されている。
【0029】
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設されている。ベース部129には排気口133が形成され、外部に連通されている。ベース部129に移送されてきた排気ガスは、排気口133へと送られる。
【0030】
さらに、ターボ分子ポンプ100の用途によって、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間には、ネジ付きスペーサ131が配設される。ネジ付きスペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。回転体103の回転翼102(102a、102b、102c・・・)に続く最下部には円筒部102dが垂下されている。この円筒部102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付きスペーサ131の内周面に向かって張り出されており、このネジ付きスペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。回転翼102および固定翼123によってネジ溝131aに移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつベース部129へと送られる。
【0031】
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
【0032】
かかる構成において、回転翼102がロータ軸113と共にモータ121により回転駆動されると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバから排気ガスが吸気される。吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
【0033】
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触する際に生ずる摩擦熱などを外部へと伝達する。
【0034】
なお、上記では、ネジ付きスペーサ131は回転体103の円筒部102dの外周に配設し、ネジ付きスペーサ131の内周面にネジ溝131aが刻設されているとして説明した。しかしながら、これとは逆に円筒部102dの外周面にネジ溝が刻設され、その周囲に円筒状の内周面を有するスペーサが配置される場合もある。
【0035】
また、ターボ分子ポンプ100の用途によっては、吸気口101から吸引されたガスが上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107、モータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、軸方向電磁石106A、106B、軸方向センサ109などで構成される電装部に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、このステータコラム122内はパージガスにて所定圧に保たれる場合もある。
【0036】
この場合には、ベース部129には図示しない配管が配設され、この配管を通じてパージガスが導入される。導入されたパージガスは、保護ベアリング120とロータ軸113間、モータ121のロータとステータ間、ステータコラム122と回転翼102の内周側円筒部の間の隙間を通じて排気口133へ送出される。
【0037】
ここに、ターボ分子ポンプ100は、機種の特定と、個々に調整された固有のパラメータ(例えば、機種に対応する諸特性)に基づいた制御を要する。この制御パラメータを格納するために、上記ターボ分子ポンプ100は、その本体内に電子回路部141を備えている。電子回路部141は、EEP-ROM等の半導体メモリ及びそのアクセスのための半導体素子等の電子部品、それらの実装用の基板143等から構成される。この電子回路部141は、ターボ分子ポンプ100の下部を構成するベース部129の例えば中央付近の図示しない回転速度センサの下部に収容され、気密性の底蓋145によって閉じられている。
【0038】
ところで、半導体の製造工程では、チャンバに導入されるプロセスガスの中には、その圧力が所定値よりも高くなり、或いは、その温度が所定値よりも低くなると、固体となる性質を有するものがある。ターボ分子ポンプ100内部では、排気ガスの圧力は、吸気口101で最も低く排気口133で最も高い。プロセスガスが吸気口101から排気口133へ移送される途中で、その圧力が所定値よりも高くなったり、その温度が所定値よりも低くなったりすると、プロセスガスは、固体状となり、ターボ分子ポンプ100内部に付着して堆積する。
【0039】
例えば、Alエッチング装置にプロセスガスとしてSiCl4が使用された場合、低真空(760[torr]~10-2[torr])かつ、低温(約20[℃])のとき、固体生成物(例えばAlCl3)が析出し、ターボ分子ポンプ100内部に付着堆積することが蒸気圧曲線からわかる。これにより、ターボ分子ポンプ100内部にプロセスガスの析出物が堆積すると、この堆積物がポンプ流路を狭め、ターボ分子ポンプ100の性能を低下させる原因となる。そして、前述した生成物は、排気口付近やネジ付きスペーサ131付近の圧力が高い部分で凝固、付着し易い状況にあった。
【0040】
そのため、この問題を解決するために、従来はベース部129等の外周に図示しないヒータや環状の水冷管149を巻着させ、かつ例えばベース部129に図示しない温度センサ(例えばサーミスタ)を埋め込み、この温度センサの信号に基づいてベース部129の温度を一定の高い温度(設定温度)に保つようにヒータの加熱や水冷管149による冷却の制御(以下TMSという。TMS;Temperature Management System)が行われている。
【0041】
次に、このように構成されるターボ分子ポンプ100に関して、その上側径方向電磁石104、下側径方向電磁石105及び軸方向電磁石106A、106Bを励磁制御するアンプ回路150について説明する。このアンプ回路の回路図を
図3に示す。
【0042】
図3において、上側径方向電磁石104等を構成する電磁石巻線151は、その一端がトランジスタ161を介して電源171の正極171aに接続されており、また、その他端が電流検出回路181及びトランジスタ162を介して電源171の負極171bに接続されている。そして、トランジスタ161、162は、いわゆるパワーMOSFETとなっており、そのソース-ドレイン間にダイオードが接続された構造を有している。
【0043】
このとき、トランジスタ161は、そのダイオードのカソード端子161aが正極171aに接続されるとともに、アノード端子161bが電磁石巻線151の一端と接続されるようになっている。また、トランジスタ162は、そのダイオードのカソード端子162aが電流検出回路181に接続されるとともに、アノード端子162bが負極171bと接続されるようになっている。
【0044】
一方、電流回生用のダイオード165は、そのカソード端子165aが電磁石巻線151の一端に接続されるとともに、そのアノード端子165bが負極171bに接続されるようになっている。また、これと同様に、電流回生用のダイオード166は、そのカソード端子166aが正極171aに接続されるとともに、そのアノード端子166bが電流検出回路181を介して電磁石巻線151の他端に接続されるようになっている。そして、電流検出回路181は、例えばホールセンサ式電流センサや電気抵抗素子で構成されている。
【0045】
以上のように構成されるアンプ回路150は、一つの電磁石に対応されるものである。そのため、磁気軸受が5軸制御で、電磁石104、105、106A、106Bが合計10個ある場合には、電磁石のそれぞれについて同様のアンプ回路150が構成され、電源171に対して10個のアンプ回路150が並列に接続されるようになっている。
【0046】
さらに、アンプ制御回路191は、例えば、制御装置の図示しないディジタル・シグナル・プロセッサ部(以下、DSP部という)によって構成され、このアンプ制御回路191は、トランジスタ161、162のon/offを切り替えるようになっている。
【0047】
アンプ制御回路191は、電流検出回路181が検出した電流値(この電流値を反映した信号を電流検出信号191cという)と所定の電流指令値とを比較するようになっている。そして、この比較結果に基づき、PWM制御による1周期である制御サイクルTs内に発生させるパルス幅の大きさ(パルス幅時間Tp1、Tp2)を決めるようになっている。その結果、このパルス幅を有するゲート駆動信号191a、191bを、アンプ制御回路191からトランジスタ161、162のゲート端子に出力するようになっている。
【0048】
なお、回転体103の回転速度の加速運転中に共振点を通過する際や定速運転中に外乱が発生した際等に、高速かつ強い力での回転体103の位置制御をする必要がある。そのため、電磁石巻線151に流れる電流の急激な増加(あるいは減少)ができるように、電源171としては、例えば50V程度の高電圧が使用されるようになっている。また、電源171の正極171aと負極171bとの間には、電源171の安定化のために、通常コンデンサが接続されている(図示略)。
【0049】
かかる構成において、トランジスタ161、162の両方をonにすると、電磁石巻線151に流れる電流(以下、電磁石電流iLという)が増加し、両方をoffにすると、電磁石電流iLが減少する。
【0050】
また、トランジスタ161、162の一方をonにし他方をoffにすると、いわゆるフライホイール電流が保持される。そして、このようにアンプ回路150にフライホイール電流を流すことで、アンプ回路150におけるヒステリシス損を減少させ、回路全体としての消費電力を低く抑えることができる。また、このようにトランジスタ161、162を制御することにより、ターボ分子ポンプ100に生じる高調波等の高周波ノイズを低減することができる。さらに、このフライホイール電流を電流検出回路181で測定することで電磁石巻線151を流れる電磁石電流iLが検出可能となる。
【0051】
すなわち、検出した電流値が電流指令値より小さい場合には、
図4に示すように制御サイクルTs(例えば100μs)中で1回だけ、パルス幅時間Tp1に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をonにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、正極171aから負極171bへ、トランジスタ161、162を介して流し得る電流値iLmax(図示せず)に向かって増加する。
【0052】
一方、検出した電流値が電流指令値より大きい場合には、
図5に示すように制御サイクルTs中で1回だけパルス幅時間Tp2に相当する時間分だけトランジスタ161、162の両方をoffにする。そのため、この期間中の電磁石電流iLは、負極171bから正極171aへ、ダイオード165、166を介して回生し得る電流値iLmin(図示せず)に向かって減少する。
【0053】
そして、いずれの場合にも、パルス幅時間Tp1、Tp2の経過後は、トランジスタ161、162のどちらか1個をonにする。そのため、この期間中は、アンプ回路150にフライホイール電流が保持される。
【0054】
このような基本構成を有するターボ分子ポンプ100は、
図2中の上側(吸気口101の側)が対象機器の側に繋がる吸気部となっており、下側(排気口133が図中の左側に突出するようベース部129に設けられた側)側が、冷却トラップ13や第2真空ポンプ16(粗引きする補助ポンプ(バックポンプ))等に繋がる排気部となっている。そして、ターボ分子ポンプ100は、
図2に示すような鉛直方向の垂直姿勢のほか、倒立姿勢や水平姿勢、傾斜姿勢でも用いることが可能となっている。
【0055】
また、ターボ分子ポンプ100においては、前述の外筒127とベース部129とが組み合わさって1つのケース(以下では両方を合わせて「本体ケーシング」などと称する場合がある)を構成している。また、ターボ分子ポンプ100は、箱状の電装ケース(図示略)と電気的(及び構造的)に接続されており、電装ケースには前述の制御装置が組み込まれている。
【0056】
ターボ分子ポンプ100の本体ケーシング(外筒127とベース部129の組み合わせ)の内部の構成は、モータ121によりロータ軸113等を回転させる回転機構部と、回転機構部より回転駆動される排気機構部に分けることができる。また、排気機構部は、回転翼102や固定翼123等により構成されるターボ分子ポンプ機構部と、円筒部102dやネジ付きスペーサ131等により構成されるネジ溝ポンプ機構部に分けて考えることができる。
【0057】
また、前述のパージガス(保護ガス)は、軸受部分や回転翼102等の保護のために使用され、排気ガス(プロセスガス)に因る腐食の防止や、回転翼102の冷却等を行う。このパージガスの供給は、一般的な手法により行うことが可能である。
【0058】
例えば、図示は省略するが、ベース部129の所定の部位(排気口133に対してほぼ180度離れた位置など)に、径方向に直線状に延びるパージガス流路を設ける。そして、このパージガス流路(より具体的にはガスの入り口となるパージポート)に対し、ベース部129の外側からパージガスボンベ(N2ガスボンベなど)や、流量調節器(弁装置)などを介してパージガスを供給する。
【0059】
前述の保護ベアリング120は、「タッチダウン(T/D)軸受」、「バックアップ軸受」などとも呼ばれる。これらの保護ベアリング120により、例えば万が一電気系統のトラブルや大気突入等のトラブルが生じた場合であっても、ロータ軸113の位置や姿勢を大きく変化させず、回転翼102やその周辺部が損傷しないようになっている。
【0060】
なお、ターボ分子ポンプ100の構造を示す各図(
図2など)では、部品の断面を示すハッチングの記載は、図面が煩雑になるのを避けるため省略している。
【0061】
次に、前述した洗浄装置10におけるガスの経路や、ガスの状態の変化について説明する。なお、第1真空ポンプ11であるターボ分子ポンプ100について、以下では主に「第1真空ポンプ」の用語を用いて、洗浄装置10の説明を行う。
【0062】
第1真空ポンプ11(ターボ分子ポンプ100)の排気口133(
図2)へ送出されたガス(以下では「排出ガス」と称する)は、
図1に示す第1配管21に流入する。第1配管21に流入した排出ガスは、切替弁12の状態に応じて、冷却トラップ13の側、又は、第3配管23の側へ導かれる。
【0063】
排出ガスが冷却トラップ13の側に導かれる場合、排出ガスは、クリーニングのための加熱が行われた状態とされている。つまり、本実施形態では、第1真空ポンプ11のガス流路を加熱し、堆積物をガス化し除去する機能(「クリーニング機能」や「クリーニングモード」などともいう)が採用されている。このようなクリーニング機能としては、本出願人による特願2019-165839号で提案されている加熱式のものと同様なものを採用できる。
【0064】
上述のクリーニング機能を、より具体的に本実施形態に当て嵌めれば、クリーニングを行うにあたり、排出ガスをクリーニングに必要な温度(昇華温度)以上に加熱するためには、ヒータを設けることが可能である。ヒータの配置としては、本実施形態の第1真空ポンプ11(ターボ分子ポンプ100)においては、
図2に示すネジ付きスペーサ131の内部や外周部などを挙げることができる。このネジ付きスペーサ131は、前述したネジ溝ポンプ機構部の一部であり、ドラッグポンプ部を構成するものであるということができる。
【0065】
また、ヒータを設置する部品としては、ネジ付きスペーサ131以外にも、ベース部129の内部や外周部などを挙げることができる。さらに、ベース部129とネジ付きスペーサ131の両方にヒータを配置することも可能である。そして、ヒータは、クリーニング機能に専用のものであってもよく、前述したTMSのヒータをクリーニング機能に兼用したものであってもよい。
【0066】
さらに、ヒータとしては、例えば、カートリッジヒータ、シースヒータ、電磁誘導ヒータ(IHヒータ)などのように、一般的な種々のものを、その特性に応じて採用することが可能である。また、構造上、立体的に突出する量を抑えた面状ヒータなども採用が可能である。
【0067】
なお、ヒータによる加熱対象となる箇所は、第1真空ポンプ11に限られず、例えば、第1真空ポンプ11と冷却トラップ13とを繋ぐ第1配管21におけるいずれかの部位であってもよい。第1配管21におけるいずれかの部位としては、例えば、第1真空ポンプ11の直後の部位や、第1真空ポンプ11と切替弁12の間の部位、切替弁12と冷却トラップ13との間の部位などを例示できる。さらに、ヒータの設置個所は、第1配管21の内部及び外部のいずれか、或いは両方であってもよい。
【0068】
このようなヒータの加熱は、第1真空ポンプ11や第1配管21のガス流路中に堆積物が生じるのを防いだり、生じた堆積物を気化させたりするクリーニングのために行われるものである。そして、クリーニングの際に加熱されたガスは、第1真空ポンプ11から、第1配管21を経て冷却トラップ13に至り、冷却トラップ13において冷却される。
【0069】
冷却トラップ13においては、ガスの冷却により積極的に固体の析出が行われ、ガス中に含まれる成分(昇華成分)による堆積物が発生する。ここでは、洗浄装置10の全体的な構成や機能について説明し、冷却トラップ13の具体的な構成や、冷却トラップ13により堆積物を発生させる作用についての詳細は後述する。
【0070】
冷却トラップ13で発生した堆積物は、冷却トラップ13から第2配管22へ放出され、第2配管22と分岐管24の合流する部位26を通って、分岐管24の側へ落とされる。この際、分岐管24の途中の部位に設置された開閉弁14は、冷却トラップ13と堆積物回収容器15との間を開放状態としている。そして、冷却トラップ13から放出された堆積物は、分岐管24を通って堆積物回収容器15に落下し、堆積物回収容器15により回収される。
【0071】
上述の第2配管22は、冷却トラップ13と第2真空ポンプ16とを繋いでいる。また、第2真空ポンプ16は、運転状態とされており、第1真空ポンプ11によるガスの排気を補助している。そして、冷却トラップ13で堆積物を発生させたガスのほとんどは、第2真空ポンプ16の運転によって第2配管22の側へ流れ、第2真空ポンプ16により排気される。
【0072】
一方、クリーニングが行われない際(例えば半導体製造等のプロセス時など)には、第1配管21と第3配管23とが合流する部位に設置された切替弁12により、ガスの経路が切り替えられる。第2真空ポンプ16は上述のように運転状態とされ、第1真空ポンプ11によるガスの排気を補助している。そして、第1真空ポンプ11の排出ガスは、第3配管23へ導かれ、更に第3配管23と第2配管22の合流する部位27から第2配管22へ流入し、第2真空ポンプ16により排気される。
【0073】
次に、冷却トラップ13の具体的な構成や、冷却トラップ13により堆積物を発生させる作用の詳細について説明する。冷却トラップ13は、
図6に縦断して示すように、ケーシング201、吸気口202、排気口203、冷却機構部204、及び、モータ205等を備えている。ここで、冷却トラップ13の構造を示す各図(
図6~8など)では、部品の断面を示すハッチングの記載は、図面が煩雑になるのを避けるため省略している。
【0074】
これらのうちケーシング201は、円筒状のケーシング本体211と、円盤状の蓋部212とを組み合わせて構成されている。これらのうち、ケーシング本体211には天板部213が一体に形成されており、ケーシング本体211における軸方向の一端部(図中の上部)は、天板部213により閉じられている。
【0075】
蓋部212は、ケーシング本体211とは別体の部品であり、図示しない固定具(六角穴付きボルトなど)により、ケーシング本体211に連結されている。そして、蓋部212は、ケーシング本体211における軸方向の他端部(図中の下部)を、気密的に塞いでいる。
【0076】
ケーシング本体211の天板部213には、吸気孔214が形成されており、この吸気孔214は天板部213を厚さ方向に貫通している。吸気孔214が設けられた部位には、天板部213の外側から円管状の吸気側配管215が接合されており、この吸気側配管215によって前述の吸気口202が形成されている。そして、吸気口202は、ケーシング201の軸心(図中に一点鎖線で示す)Bから径方向に離れた位置に形成されるとともに、ケーシング201の軸心Bとほぼ平行に延びている。
【0077】
蓋部212には、排気孔217が形成されており、この排気孔217は蓋部212を厚さ方向に貫通している。排気孔217が設けられた部位には、蓋部212の外側から円管状の排気側配管218が接合されており、この排気側配管218によって前述の排気口203が形成されている。そして、排気孔217と排気口203とにより堆積物排出口(符号省略)が形成されている。ここで、排気孔217のみを堆積物排出口として考えることも可能である。
【0078】
排気口203は、ケーシング201の軸心Bから径方向に離れた位置に形成されており、ケーシング201の軸心Bとほぼ平行に延びている。さらに、排気口203は、ケーシング201の軸方向に関しては、吸気口202と逆向きに延びており、ケーシング201の周方向に関しては、吸気口202に対して位相が180度異なるよう配置されている。
【0079】
前述の冷却機構部204は、回転軸(冷却トラップ13のロータ軸)221、掻出部222、円板状部品223、及び、軸受部224、225等を備えており、ケーシング201内に収容されている。
【0080】
前述のモータ205は、ケーシング201の蓋部212に外側から固定されており、図示を省略した出力軸を、冷却機構部204の回転軸221に差し込んでいる。そして、モータ205の出力軸(図示略)は、回転軸221に同軸的に連結されている。ここで、モータ205としては、一般的な種々のものを採用することが可能である。
【0081】
冷却機構部204の回転軸221は、段付きの円柱状部品であり、その軸心(符号省略)をケーシング201の軸心Bにほぼ一致させている。そして、回転軸221における軸方向の一端(図中の上部)は、吸気側の軸受部224を介してケーシング本体211により回転自在に支持されており、回転軸221における軸方向の他端(図中の下部)は、排気側の軸受部225を介して蓋部212により回転自在に支持されている。
【0082】
掻出部(「スクレイパ」などと称することも可能である)222は、断面が矩形の棒状体であり、回転軸221に一体加工(或いは別体の組付けでもよい)により形成されている。さらに、掻出部222は、回転軸221の径方向に逆向きで突出する2つを1組として、多段(ここでは7段)に亘って形成されている。そして、
図6に示す例では、7組(合計14個)の掻出部222が、回転軸221の軸方向に沿って、互いにほぼ等間隔で形成されている。
【0083】
つまり、各組の掻出部222は、
図6及び
図7に示すように、180度位相を異ならせ、同一直線上に位置するよう形成されている。さらに、各組の掻出部222は、回転軸221の軸心(ここではケーシング201の軸心Bに一致)を中心として、ほぼ線対称に延びている。
【0084】
また、7組の掻出部222は、回転軸221の周方向に関しては互いに同じ位相(同位相)で配置され、回転軸221の軸方向に関しては、軸方向に沿ってほぼ均等に並んだ位置関係を有している。そして、モータ205が駆動され、モータ205により回転軸221が所定方向に回転させられると、掻出部222は、回転軸221を中心として、回転軸221と一体に回転変位する。
【0085】
ここで、モータ205及び回転軸221の回転方向は、
図8中の時計回り方向、及び、反時計回り方向のうちのいずれであってもよい。また、モータ205は、状況に応じ、通常の回転方向に対して逆方向に回転制御されるものであってもよい。
【0086】
また、掻出部222を回転軸221とは別体で形成し、回転軸221に組み付ける場合は、例えば、筒状の部品(図示略)の外周面に掻出部222を形成し、この筒状の部品に、回転軸221を差し込んで固定することが考えられる。また、筒状の部品に一部の掻出部222(例えば1~3組程度)のみを形成し、複数の筒状の部品を回転軸221に固定することなども考えられる。
【0087】
前述の円板状部品223は、ケーシング201内において、多段(ここでは6段)に積層されている。各円板状部品223は、
図6や
図8に示すように真円の円板状に加工されており、外周部を肉厚なスペーサ231として、ケーシング201の軸方向に重ねられている。各円板状部品223の間には、スペーサ231によって所定の大きさの隙間が確保され、複数の堆積物移送空間232(
図7)が形成されている。
【0088】
さらに、ケーシング本体211の天板部213と、天板部213に向かい合った円板状部品223(
図6及び
図7中の最上段のもの)との間には、堆積物移送空間232が形成されている。また、拡大した図示は省略するが、蓋部212と、蓋部212に向かい合った円板状部品223(
図6中の最下段)との間にも、堆積物移送空間232が形成されている。そして、6枚の円板状部品223が、ケーシング本体211の天板部213と、蓋部212とにより挟まれた状態で、ケーシング201内に固定されている。
【0089】
各円板状部品223の、スペーサ231よりも内側(「径方向の内側」や「内周側」などともいう)の部位は、真円状の冷却部233となっている。この冷却部233は、スペーサ231よりも薄いほぼ一定の厚みを有している。
【0090】
冷却部233には、堆積物を移送するための開口部としての移送穴234が、真円状に形成されている。この移送穴234は、1枚の円板状部品223に1つずつ設けられている。移送穴234は、冷却部233の外周縁部(最外周部)に配置され、スペーサ231の、極僅かに手前の部位(内周側の部位)に位置している。そして、前述した掻出部222と移送穴234のとの位置関係は、
図8に示すように、掻出部222が移送穴234の中心部を通過する位置にある状況では、掻出部222の先端が、移送穴234の最外周部に到達して、移送穴234の最外周部にほぼ重なるようになっている。
【0091】
また、6枚の円板状部品223に設けられた各移送穴234は、冷却部233の周方向に係る位相が、交互に180度異なるように配置されている。つまり、吸気孔214から数えて1枚目(吸気孔214に最も近い部位)、3枚目、及び、5枚目の円板状部品223では、移送穴234は、同位相で配置されている。
図6では、これらの移送穴234は、回転軸221の右側において、同一直線状に並ぶように位置している。
【0092】
これに対して、吸気孔214から数えて2枚目、4枚目、及び、6枚目の円板状部品223では、移送穴234は、回転軸221を挟んで逆側(
図6における回転軸221の左側)に、同一直線状に並ぶように位置している。
【0093】
ここで、
図8は、
図6における吸気孔214から1枚目と2枚目の円板状部品223の間の部位で、A-A線に沿って径方向に切断した状態を示している。そして、
図8において実線で示す移送穴234(図中の左側に示す移送穴234)は、吸気孔214から2枚目の円板状部品223に形成されたものであり、破線(隠れ線)で示す移送穴234(図中の右側に示す移送穴234)は、3枚目の円板状部品223に形成されたものである。
【0094】
冷却部233の板面と、掻出部222との間隔は、回転軸221が回転し、掻出部222が冷却部233の板面に対して変位する際に、掻出部222が冷却部233の板面に過剰な圧力を生じながら接触して掻出部222の変位が妨げられることのないよう、決められている。
【0095】
ここで、
図6や
図7では、冷却部233の板面と掻出部222との間の隙間の大きさは、両部材(掻出部222と冷却部233)の存在が把握し易くなるよう、大きく強調して示されている。また、冷却部233の板面に対して掻出部222を、掻出部222が円滑に変位できる程度の圧力で接触させることも可能である。さらに、掻出部222の材質としては、薄板の金属、或いは、十分な硬度と柔軟性を有する合成樹脂などを採用することが可能である。
【0096】
また、
図6に符号236で示すのは、蓋部212に内蔵された冷却管である。この冷却管236は、真円状の断面を有する円管であり、蓋部212内において、周方向に沿って配置されている。この冷却管236には、冷却液(例えば冷却水)が流されるようになっており、冷却液の温度が、冷却管236や蓋部212、及び、各円板状部品223に伝わり、冷却部233の温度が一定程度に保たれる。
【0097】
つまり、冷却管236、蓋部212、及び、各円板状部品223のスペーサ231は、互いに熱伝達が効率的に行われるように接した状態で、冷却トラップ13に組付けられている。そして、冷却管236の熱は、蓋部212、及び、スペーサ231を介して、各円板状部品223の冷却部233に伝達や伝導がされるようになっている。
【0098】
図6には、冷却トラップ13内を流れるガスの経路を、複数の矢印C(太線)により概略的に示している。冷却トラップ13内には、前述した第1真空ポンプ11から排出されたガス(以下では「排出ガス」と称する)が、吸気側配管215を介して、吸気孔214へ導入される。そして、排出ガスは、吸気孔214に空間的に繋がった堆積物移送空間232に導入される。
【0099】
排出ガスは、冷却部233の板面に接しながら、堆積物移送空間232内に広がる。さらに、排出ガスは、回転軸221が存在する部位を越えて、回転軸221を基準とした反対側の部位にも達する。そして、排出ガスは、次段の冷却部233に形成された移送穴234を通って、更に次段の堆積物移送空間232に進入する。
【0100】
このようにして、排出ガスは、堆積物移送空間232内で流動し、順次移送穴234を通って、次段の堆積物移送空間232内に広がる。そして、蓋部212の排気孔217に達した排出ガスは、排気口203を通って、冷却トラップ13の外部に導出される。
【0101】
また、冷却トラップ13内においては、排出ガスが冷却部233に接し、排出ガスと冷却部233との間で熱交換が行われる。そして、排出ガスの温度が冷却部233により下げられ、排出ガス中の成分が固化して堆積物が発生する。発生した堆積物に対しては、回転変位する掻出部222が衝突し、堆積物が円板状部品223から強制的に剥がされる。さらに、堆積物は、円板状部品223により破砕され、塊状や粉状となる。
【0102】
図9は、冷却トラップ13の機能を片対数グラフにより示している。
図9のグラフにおける横軸は温度[℃]を示しており、縦軸は圧力[Torr]を示している。
図9中の符号Fは、排気ガス中の成分に係る昇華曲線を示している。昇華曲線Fの上側は、排気ガス中の成分が「SOLID」(固体)となる領域であり、昇華曲線Fの下側は、排気ガス中の成分が「GAS」(気体)となる領域である。
【0103】
さらに、
図9中の符号P1はプロセス条件を示している。このプロセス条件は、第1真空ポンプ11(ターボ分子ポンプ100)の排気対象機器(図示略)において、プロセスガスを用いた所定の処理が行われている場合の環境条件(プロセス条件)を意味している。ここでは、プロセス条件に係る温度は100[℃]となっており、圧力は1[Torr]となっている。そして、この点P1は、「SOLID」(固体)の領域に位置しており、プロセス条件では、プロセスガス中の成分による堆積物が発生する。
【0104】
続いて、
図9中の符号P2はクリーニング条件を示している。このクリーニング条件は、発生した堆積物に対するクリーニングの条件を意味している。ここでは、クリーニング条件に係る温度は130[℃]となっており、圧力は0.1[Torr]となっている。そして、この点P2は、「GAS」(気体)の領域に位置しており、クリーニング条件では、堆積物が気化される。
【0105】
続いて、
図9中の符号P3はトラップ条件を示している。このトラップ条件は、冷却トラップ13において堆積物を発生させる条件を意味している。ここでは、トラップ条件に係る温度は70[℃]となっており、圧力はクリーニング条件と同じく0.1[Torr]となっている。そして、この点P3は、「SOLID」(固体)の領域に位置しており、ガス(排出ガス)をトラップ条件の環境におくことにより堆積物が発生する。
【0106】
冷却トラップ13による排出ガスの冷却(P3)は、クリーニング(P2)の後に行われる。そして、
図9の例では、クリーニング(P2)の後に、排出ガスの温度が冷却トラップ13により下げられ、冷却トラップ13において積極的に、排出ガス中の堆積物となり得る成分(「昇華成分」或いは「堆積成分」などともいう)の固体化が行われる。このため、第1真空ポンプ11から第2真空ポンプ16へ流れる排出ガスは、昇華成分が除去されたものとなり、第1真空ポンプ11Aから第2真空ポンプ16までの間のガス経路や、第2真空ポンプ16等におけるガスの流路に堆積物が付着するのを防止することが可能となる。
【0107】
ここで、
図9のクリーニング条件P2やトラップ条件P3の温度や圧力はあくまでも一例であり、昇華曲線Fやプロセス条件P1に合わせて種々に変更することが可能である。ただし、クリーニング条件P2が「GAS」(気体)の領域に位置し、トラップ条件P3が「SOLID」(固体)の領域に位置するよう、クリーニング条件P2やトラップ条件P3を設定する必要がある。
【0108】
以上説明したような真空排気系の洗浄装置10によれば、冷却トラップ13を備え、この冷却トラップ13を、ガスの昇華成分の昇華温度以下に冷却していることから、第1真空ポンプ11から排出されたガスに対して、冷却トラップ13により積極的に堆積物を発生させるようにすることができる。そして、上述のように、冷却トラップ13の下流側の配管や第2真空ポンプ16等に堆積物が付着するのを防止することが可能となる。
【0109】
さらに、切替弁12と第3配管23とを備えていることから、例えば半導体製造等のプロセス時には、排出ガスを第3配管23側へ流し、冷却トラップ13をバイパスさせて、第2真空ポンプ16の側へ導くことができる。このため、冷却トラップ13等が、ガスの流動にあたり抵抗(「流動抵抗」や「排気抵抗」などともいう)となるのを防止できる。
【0110】
また、冷却トラップ13は、ケーシング201内に円板状部品223と、冷却管236とを備えていることから、円板状部品223を良好に冷却することができ、冷却トラップ13において効率よく堆積物を発生させることが可能である。
【0111】
さらに、冷却トラップ13は、移送穴234が設けられた円板状部品223を、移送穴234の位相を変えて複数積層して構成されていることから、円板状部品223に発生した堆積物を、移送穴234を介して次段へ送り込む(送り出す)ことができる。
【0112】
また、冷却トラップ13は、ケーシング201内に設置された回転軸221と、回転軸221に固定された掻出部222とを備え、掻出部222が、円板状部品223の板面に沿って回転可能に構成されていることから、円板状部品223に発生した堆積物を、掻出部222により掻き出すことができる。また、堆積物を、掻出部222により移送穴234を介して次段へ送り込むことができる。
【0113】
さらに、第2配管22の配設された分岐管24と、分岐管24に配設された開閉弁14と、開閉弁14の下流に配設された堆積物回収容器15とを備えていることから、冷却トラップ13で発生した堆積物を、分岐管24と開閉弁14とを介して、堆積物回収容器15へ送り込むことができる。
【0114】
また、冷却トラップ13のケーシング201に設けられた排気孔217や排気口203と、排気孔217や排気口203の下流に配設された開閉弁14と、開閉弁14の下流に配設された堆積物回収容器15とを備えていることから、ケーシング201内で発生した堆積物を、排気孔217や排気口203、及び、開閉弁14を介して、堆積物回収容器15へ送り込むことができる。
【0115】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、種々に変形することが可能なものである。例えば、切替弁12や第3配管23を備えず、第1真空ポンプ11の排出ガスを第3配管23にバイパスさせないようにすることも可能である。ただし、このようにした場合は、前述したように、例えば半導体製造等のプロセス時に、冷却トラップ13が排気抵抗となる。このため、切替弁12や第3配管23を備えたほうが、備えなかった場合に比べて、効率の良い排気を行うことができる。
【0116】
さらに、冷却トラップ13において、掻出部222の回転数を変化させて高めたり、掻出部222を正逆回転させたりし、堆積物の撹拌や粉砕を行うことで、堆積物を排気口203の側へ移送し易くすることが考えられる。
【0117】
また、個々の掻出部222の形状は、棒状に限らず、例えば板状や、多角形(5角形や6角形、8角形など)の断面を有する形状などのように、種々に変形することが可能である。
【0118】
さらに、掻出部222を1段につき2つ形成しているが、これに限定されず、1段につき1つ、或いは、3つ以上などとすることも可能である。この場合は、回転時における全体のバランスを考慮して、各組や全体における掻出部222の配置を決めることが望ましい。
【0119】
なお、上述の冷却トラップ13においては、掻出部222の数を1段につき2つと少なく抑えていることから、各堆積物移送空間232を流れる排出ガスに対して、掻出部222が過度な排気抵抗となるようなことを防止できる。
【0120】
また、移送穴234の数を、1枚の円板状部品223につき1個としているが、これに限定されず、移送穴234の数を2個以上としてもよい。また、移送穴234の開口面積を、可能な限り大きく設定してもよい。そして、移送穴234の開口面積を大きくすることにより、次段への堆積物の送り込みを効率よく行うことが可能となる。
【0121】
ただし、移送穴234の開口面積を増やすことにより、円板状部品223における冷却部233の冷却可能な面積(冷却面積)が減ることになる。このため、移送穴234の数や開口面積(移送穴234が複数の場合は合計の開口面積)は、排出ガスが円板状部品223の板面に触れている時間を十分に長く確保でき、良好な冷却が行える程度に留めることが望ましい。
【0122】
また、上述の第1実施形態では、冷却トラップ13は、上方から排出ガスが導入されて、堆積物が下方から排出されるようになっているが、これに限定されるものではない。例えば、図示は省略するが、冷却トラップに、水平方向から排出ガスを受け入れるような構造を採用してもよい。
【0123】
また、図示は省略するが、冷却トラップに、例えば水平軸周りに回転する回転体にネジ溝を形成し、このネジ溝により堆積物を押し出すような構造を採用すれば、堆積物を水平方向に移送して排出するといったことも可能となる。ただし、上述したように、堆積物を上方から下方へ移送することにより、堆積物の自重を利用した移送を容易に行うことができ、冷却トラップの構造を簡素なものとすることが可能である。
【0124】
さらに、本発明は、後述するような各種の実施形態を採用することが可能である。なお、以下では、第1実施形態と同様な構成については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0125】
例えば、
図10は、本発明の第2実施形態に係る真空排気系の洗浄装置240を概略的に示している。この第2実施形態の洗浄装置240は、第1実施形態のような真空排気系を、ほぼ並列に2系統備えたタイプのものとなっている。
【0126】
図10に示すように、一方(図中の左側)の真空排気系(以下では「第1排気系」と称する)241には、第1真空ポンプ11Aと第2真空ポンプ16Aが備えられている。また、他方(図中の右側)の真空排気系(以下では「第2排気系」と称する)242には、第1真空ポンプ11Bと第2真空ポンプ16Bが備えられている。
【0127】
これらのうち、一方の真空排気系である第1排気系241においては、前述の第1実施形態に係る洗浄装置10(
図1)と同様に、第1真空ポンプ11A、切替弁12A、冷却トラップ13、開閉弁14、堆積物回収容器15、及び、第2真空ポンプ16Aの各機器が備えられている。
【0128】
第1真空ポンプ11Aと冷却トラップ13は、第1配管21Aを介して接続されており、第1配管21Aの途中には、切替弁12Aが配置されている。冷却トラップ13と第2真空ポンプ16Aは、第2配管22Aを介して接続されている。また、第2配管22Aは、分岐管24を介して堆積物回収容器15に接続されており、分岐管24の途中には、開閉弁14が配置されている。さらに、切替弁12Aと第2配管22Aは、第3配管23Aを介して接続されている。
【0129】
これらの各機器としては、第1実施形態に係る洗浄装置10(
図1)における第1真空ポンプ11、切替弁12、冷却トラップ13、開閉弁14、堆積物回収容器15、及び、第2真空ポンプ16と同様のものを採用できる。そして、第1真空ポンプ11Aとして、第1実施形態と同様のターボ分子ポンプ100を用いることが可能である。
【0130】
さらに、第1配管21A、第2配管22A、第3配管23A、分岐管24としても、第1実施形態に係る洗浄装置10(
図1)における第1配管21、第2配管22、第3配管23、分岐管24と同様のものを採用できる。また、第1真空ポンプ11Aの吸気側には第4配管25が接続されており、この第4配管25としても、第1実施形態と同様のものを採用できる。
【0131】
さらに、このような第1排気系241においても、前述の第1実施形態と同様にクリーニング機能が備えられており、第1真空ポンプ11A(或いは第1配管21Aのいずれかの部位)におけるガスの加熱によって、堆積物を気化できるようになっている。そして、加熱されたガスは、冷却トラップ13において冷却され、発生した堆積物が、第1実施形態と同様に、堆積物回収容器15に回収される。
【0132】
したがって、前述の第1実施形態と同様に、第1真空ポンプ11Aから第2真空ポンプ16へ流れる排出ガスから、堆積物となり得る昇華成分を除去することができる。そして、第1真空ポンプ11Aから第2真空ポンプ16までの間のガス経路や、第2真空ポンプ16等におけるガスの流路に堆積物が付着するのを防止することが可能となる。
【0133】
続いて、このような第1排気系241における第1配管21Aには、第2排気系242の第1配管21Bが接続されている。この第2排気系242には、前述した第1真空ポンプ11Bと第2真空ポンプ16Bが備えられている。さらに、第1真空ポンプ11Bは、第1配管21Bを介して、前述した冷却トラップ13と接続されている。
【0134】
第1配管21Bの途中には、切替弁12Bが配置されている。この点は第1排気系241と同様であるが、第2排気系242においては、冷却トラップ13の下流側に第2真空ポンプ16Bを繋げない構成が採用されている。さらに、第2排気系242においては、切替弁12Bに繋がった第3配管23Bが、第2真空ポンプ16Bまで延び、第2真空ポンプ16Bに達している。
【0135】
この第2排気系242においても、前述の第1排気系241と同様にクリーニング機能が備えられており、ガスの加熱によって堆積物を気化できるようになっている。そして、加熱されたガスは、切替弁12Bを通って第1配管21B内を流れ、第1排気系241における第1配管21Aに流入する。
【0136】
第1配管21Aに流入したガス(排出ガス)は冷却トラップ13において冷却され、発生した堆積物が、堆積物回収容器15に回収される。そして、堆積物となり得る昇華成分が除去された排出ガスは、第1排気系241の第2真空ポンプ16Aによる排気作用により、第2真空ポンプ16Aに向かって流れ、第2真空ポンプ16Aから送出される。
【0137】
このような第2実施形態の洗浄装置240によれば、第1実施形態と同様な発明の作用効果を奏するのに加え、複数の排気系(ここでは第1排気系241と第2排気系242)を備えることが可能になる。さらに、複数の排気系で、冷却トラップ13や堆積物回収容器15等を兼用できる。このため、複数(ここでは2つ)の排気系において、冷却トラップ13等の個数を抑制でき、排出ガスの洗浄構造を簡素化することが可能となる。
【0138】
次に、
図11に基づき、本発明の第3実施形態に係る真空排気系の洗浄装置250について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0139】
この第3実施形態に係る洗浄装置250は、2つの排気系(第1排気系241と第2排気系242)を備えている点で、第2実施形態に係る洗浄装置240と共通している。しかし、第3実施形態に係る洗浄装置250においては、第1排気系241の第2配管22が、第3配管23Aと合流する部位257において、第2排気系242の側に分岐しており、第2排気系242における第3配管23Bに向けて延長されている。
【0140】
つまり、第2実施形態に係る洗浄装置240においては、第2真空ポンプ16A、16Bのうち、冷却トラップ13の下流側に繋がっていたのは、第1排気系241の第2真空ポンプ16Aのみであった。これに対し、第3実施形態に係る洗浄装置250では、第2排気系242の第2真空ポンプ16Bも、第1排気系241における第2配管22からの延長部22Bや、第3配管23Bを介して、冷却トラップ13の下流側に繋がっている。
【0141】
このような第3実施形態の洗浄装置250によれば、第1実施形態と同様な発明の作用効果を奏するのに加え、第2排気系242の第2真空ポンプ16Bも、冷却トラップ13により冷却されたガスの排気に利用でき、洗浄装置250の総合的な排気能力を向上することが可能となる。
【0142】
ここで、第3実施形態の洗浄装置250においては、第2排気系242の第3配管23Bについて、延長部22Bとの合流部258から下流側(第2真空ポンプ16Bに繋がる側)の部位を、延長部22Bと併せて、第2排気系242における第2配管として分類することも可能である。また、第3実施形態の洗浄装置250については、第1排気系241と第2排気系242で、第2配管を一部共用していると考えることも可能である。
【0143】
次に、
図12に基づき、本発明の第4実施形態に係る真空排気系の洗浄装置260について説明する。なお、前述の各実施形態と同様の構成については同一符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0144】
この第4実施形態に係る洗浄装置260は、2つの排気系(第1排気系241と第2排気系242)を備えている点で、第2実施形態に係る洗浄装置240や、第3実施形態に係る洗浄装置250と共通している。しかし、第4実施形態に係る洗浄装置260においては、第1排気系241と第2排気系242とで、1つの第2真空ポンプ16Cが共用されている。
【0145】
さらに、第4実施形態に係る洗浄装置260においては、第1排気系241の第3配管23Aと、第2排気系242の第3配管23Bとが途中で合流し、1本の共用配管261が、第2真空ポンプ16Cに繋がっている。また、第1排気系241の第2配管22Aが、共用配管261に合流しており、第1排気系241及び第2排気系242の排出ガスは、いずれも、冷却トラップ13を通り、第2真空ポンプ16Cにより排気される。
【0146】
このような第4実施形態の洗浄装置250によれば、第1実施形態と同様な発明の作用効果を奏するのに加え、複数(ここでは2つ)の排気系において、第2真空ポンプ(16C)等の個数を抑制でき、排出ガスの洗浄構造を簡素化することが可能となる。
【0147】
ここで、第4実施形態に係る洗浄装置260においては、第1排気系241と第2排気系242とで、1つの第2真空ポンプ16Cを共用することから、第2真空ポンプ16Cとしては、第1実施形態~第3実施形態で用いた各種の第2真空ポンプ16、16A、16Bよりも大型のもの(大流量のものなど)を用いることが望ましいと考えられる。
【0148】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明は各実施形態に限定されるものではなく、種々に変形することが可能である。例えば、第1真空ポンプ11(11A、11B)と冷却トラップ13の接続は第1配管21(21A、21B)を介して行っているが、これに限らず、例えば、第1真空ポンプ11(11A、11B)の排気口133(
図2)に冷却トラップ13を直接の接続することも可能である。
【0149】
この場合は、第1真空ポンプ11(11A、11B)の排気口133(
図2)を、冷却トラップ13の吸気側配管215に接続することや、冷却トラップ13の吸気孔214に接続することなどが考えられる。
【0150】
また、冷却トラップ13における円板状部品223の冷却のために、冷却管236を用いているが、これに限定されず、一般的な種々の冷却手段により冷却を行うことが可能である。例えば、冷却手段としてペルチェ素子(図示略)を用い、ペルチェ素子への通電制御を行って、冷却トラップ13における温度管理を行うことも可能である。
【0151】
さらに、各洗浄装置10、240、250、260における弁装置は、切替弁12、12A、12Bや開閉弁14に限らず、必要な機能を有する弁装置を適宜追加することが可能である。
【符号の説明】
【0152】
10、240、250、260 洗浄装置
11、11A、11B 第1真空ポンプ
12、12A、12B 切替弁
13 冷却トラップ
14 開閉弁
15 堆積物回収容器
16、16A、16B 第2真空ポンプ
21、21A、21B 第1配管(第1排気経路)
22、22A、22B 第2配管(第2排気経路)
23、23A、23B 第3配管(第3排気経路)
24 分岐管(分岐経路)
100 ターボ分子ポンプ(第1真空ポンプ)
201 ケーシング
202 吸気口
203 排気口(堆積物排出口)
204 冷却機構部(冷却機構)
217 排気孔(堆積物排出口)
221 回転軸
222 掻出部
223 円板状部品(板状部)
234 移送穴(開口部)