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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】復水器真空調整装置
(51)【国際特許分類】
   F01K 9/00 20060101AFI20240129BHJP
   F28B 9/10 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F01K9/00 B
F28B9/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020138023
(22)【出願日】2020-08-18
(65)【公開番号】P2022034292
(43)【公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】根本 晃
(72)【発明者】
【氏名】津田 将太
(72)【発明者】
【氏名】太原 俊男
(72)【発明者】
【氏名】木村 賢一
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-248372(JP,A)
【文献】特開2006-349314(JP,A)
【文献】特開2007-056739(JP,A)
【文献】特開平04-287805(JP,A)
【文献】特表2020-516808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01K 9/00
F28B 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱管を有し、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させて復水を生成して復水管に供給する復水器と、ガス抽出系を介して前記復水器の内部の不凝縮ガスを主体とする排出ガスを排出する真空装置と、からなるシステムにおいて、前記復水器について、その復水器真空度を調整する復水器真空調整装置であって、
前記排出ガスを受け入れて、前記排出ガスより酸素ガスの濃度の低い低酸素濃度ガスを生成する低酸素濃度ガス供給装置と、
還流ライン入口弁を有し、前記真空装置と前記低酸素濃度ガス供給装置とを接続する還流取り出しラインと、
前記低酸素濃度ガス供給装置と前記復水器とを接続し、前記低酸素濃度ガスを前記復水器に導く還流戻りラインと、
を備え
前記低酸素濃度ガス供給装置は、前記排出ガス中の酸素を分離、除去して高濃度の窒素ガスを前記低酸素濃度ガスとして供給する装置を有することを特徴とする復水器真空調整装置。
【請求項2】
前記復水器内の圧力を測定し復水器圧力信号を出力する復水器圧力計と、
前記復水器圧力計からの信号に基づいて、前記復水器真空度が前記真空装置により維持されている通常モードから、前記低酸素濃度ガス供給装置により前記低酸素濃度ガスが前記復水器に供給される還流モードへの移行を指令し、かつ前記還流モードにおける状態を制御する制御装置と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の復水器真空調整装置。
【請求項3】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記復水器圧力信号を受けて、前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を出力することを特徴とする請求項2に記載の復水器真空調整装置。
【請求項4】
前記復水管に設けられて前記復水中の溶存酸素濃度を測定し溶存酸素濃度信号を出力する溶存酸素濃度計をさらに備え、
前記制御装置は、前記復水器圧力計からの信号とともに前記溶存酸素濃度信号に基づくことを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項5】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁をさらに備え、
前記制御装置は、前記溶存酸素濃度信号を受けて、前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を出力することを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項6】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁と、
前記還流戻りラインから分岐して前記ガス抽出系に合流する還流戻りバイパス配管と、
前記還流戻りバイパス配管に設けられたバイパス流量調節弁と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記復水器圧力信号を受けて前記バイパス流量調節弁の開度指令信号を、また、前記溶存酸素濃度信号を受けて前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を、それぞれ出力する、
ことを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項7】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁と、
前記真空装置の入り口に設けられた真空装置入口調節弁と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記復水器圧力信号を受けて前記真空装置入口調節弁の開度指令信号を、また、前記溶存酸素濃度信号を受けて前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を、それぞれ出力する、
ことを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項8】
前記低酸素濃度ガス供給装置は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置を有することを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項9】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁と、
前記不活性ガス供給装置の出口と前記還流戻りラインの前記還流ガス流量調節弁の上流側とを接続する不活性ガス供給配管と、
前記不活性ガス供給配管に設けられた不活性ガス供給調節弁と、
をさらに備え、
前記制御装置は、前記復水器圧力信号を受けて前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を、また、前記溶存酸素濃度信号を受けて前記不活性ガス供給調節弁の開度指令信号を、
それぞれ出力する、
ことを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項10】
前記還流戻りラインに設けられた還流ガス流量調節弁と、
前記不活性ガス供給装置の出口と前記還流戻りラインの前記還流ガス流量調節弁の上流側とを接続する不活性ガス供給配管と、
前記不活性ガス供給配管に設けられた不活性ガス供給調節弁と、
をさらに備え、
前記還流戻りラインは、前記還流取り出しラインに直接接続し、
前記制御装置は、前記復水器圧力信号を受けて前記還流ガス流量調節弁の開度指令信号を、また、前記溶存酸素濃度信号を受けて前記不活性ガス供給調節弁の開度指令信号を、
それぞれ出力する、
ことを特徴とする請求項に記載の復水器真空調整装置。
【請求項11】
前記還流取り出しラインの途中に接続され、接続端と反対側の端部は外部に開放されている外気導入管と、
前記外気導入管に設けられた真空破壊弁と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の復水器真空調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、復水器真空調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図13は、復水器、および復水器の真空度維持に係るガス抽出系統および真空装置の、従来の系統構成を示す系統図である。
【0003】
復水器10は、接続胴11により蒸気タービン(図示せず)に接続された冷却部胴部12およびホットウェル13からなる容器と、これに収納された複数の伝熱管14と、冷却部胴部12に取り付けられて各伝熱管14と連通する入口水室15および出口水室16を有する。接続胴11には、復水器10の空間内と外部を接続する排出部17が設けられている。復水器10の外部には、真空装置40が設けられており、ガス抽出系統30が、排出部17と真空装置40とを接続している。
【0004】
復水器10においては、冷却水が、入口水室15から各伝熱管14内に流入し、蒸気タービンから排気されるタービン排気蒸気を冷却する。冷却されたタービン排気蒸気は、凝縮水となってホットウェル13に落下して集められ、復水として、図示しないボイラあるいは蒸気発生器等(以下、ボイラ等という)に供給される。また、タービン排気蒸気と熱交換し温度が上昇した冷却水は、出口水室16を経由して流出する。
【0005】
タービン排気蒸気には、ボイラ等で発生しタービンで仕事をした蒸気のほか、系統の途中で大気からインリークした空気や、薬品を含む復水中の分解物質が、ガスとして含まれる。主なガスは、酸素、窒素、アンモニア、水素等であり、これらのガスは不凝縮ガスとして復水器10の伝熱管14の表面付近に滞留して伝熱性能の低下を引き起こす。また、特に酸素は、機器の腐食を引き起こす原因となる。
【0006】
そのため、復水器10では、伝熱管14の管束に滞留する不凝縮ガスを主体とする排出ガスを、排出部17からガス抽出系統30を介して真空装置40に抽出する。
【0007】
排出部17の復水器10内の端部は、伝熱管14の管束が配されている空間内に開放されている。
【0008】
真空装置40は、一般にエゼクタ42、真空ポンプ43、セパレータタンク44などの機器と、配管、エゼクタ入口弁41、三方弁45および排気管46に設けられた逆止弁47などの弁類で構成されている。
【0009】
復水器10からガス抽出系統30を介して移行してきた不凝縮ガスを主体とする排出ガスは、エゼクタ42を介して真空ポンプ43により吸引される。真空ポンプ43での封水も加わった排出ガスは、セパレータタンク44において気液分離され、排出ガスは、排気管46から系外に排出される。排出ガスの一部は、三方弁45から流入する外気とともにエゼクタ42側に移行し、エゼクタ42の駆動側のガスとして作用する。
【0010】
蒸気タービンを用いた発電プラントの発電効率は、復水器10の真空度が高いほど、すなわち、復水器内の圧力が低いほど、向上するため、通常はこのガス抽出系統30を使い、不凝縮ガスを滞留させない状態が維持されている。
【0011】
復水器10の冷却能力は、通常、真夏における冷却水温度等の、冷却上最も厳しい条件に基づいて設計される。ここで、復水器10に使用する冷却水は、海水あるいは、冷却塔で大気に冷やされた淡水等が、用いられており、特に冬場では海水温度や気温の低下によって、復水器10の真空度が計画値よりも高くなる。
【0012】
このような状態において、復水器10の真空度が許容真空度を超えて、蒸気タービン出口での排気蒸気の圧力が低下しすぎると、タービンブレードの損傷をもたらすドレンアタック現象が発生する等、蒸気タービンの安定運転を困難にする可能性がある。したがって、このような状況においては、復水器10の真空度を下げる運用が求められる。
【0013】
復水器真空度が許容真空度を超える場合には、たとえば、ガス抽出系統30の途中に設けられた真空調節弁31を開き、ガス抽出系統30に大気を導入する方法がとられる。真空調節弁31を開くと、外気が真空装置40に流れて復水器10からの不凝縮ガスの抽出を阻害するとともに、外気がガス抽出系統30および排出部17を逆流して復水器10に流入する。この結果、復水器10の伝熱管14の管束の周囲に不凝縮ガス溜まり14aを形成する。不凝縮ガス溜まり14aは、タービン排気蒸気と伝熱管との伝熱現象を阻害し、凝縮性能を低下させ、結果として復水器10の真空度を低下させる。
【0014】
このようにして、タービンの許容真空度を下回る、すなわち許容圧力を上回るまで、復水器10の伝熱管14の管束に十分な不凝縮ガス溜まり14aが形成されるに至る。この段階で、真空調節弁31をある程度まで絞り込み、外気導入を減少させ、復水器10側には外気は流れないものの、タービン側から復水器10に流入する不凝縮ガス量と、ガス抽出系統を介して真空装置40側に抽出される不凝縮ガス量とがバランスするように調整される。すなわち、不凝縮ガス溜まり14aの大きさを、望ましい真空度に対応する大きさに維持できる状態に調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特許第3625609号公報
【文献】特許第5374270号公報
【文献】特開2003-41905号公報
【文献】特開2003-293707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
前述のような、ガス抽出系統30の途中に設けられた真空調節弁31を開いて復水器10の真空度を調節する方法においては、次のような問題がある。
【0017】
管束の周囲に形成された不凝縮ガス溜まり14aのガス成分は、酸素と窒素とで構成される大気と、タービン排気に含まれる酸素と窒素、水素等である。これらガス成分は、タービン排気蒸気が伝熱管14の管束で凝縮した凝縮水と接触し、一部は凝縮水に溶け込む。この凝縮水に溶存するガスのうち、特に酸素は、復水管22を経由して、ボイラ等および系統中に供給される復水とともに供給されると、配管や熱交換器などの機器に対して腐食生成物を生じるなどの悪影響を及ぼす。すなわち、復水中の溶存酸素濃度には、上限値があり、また運転上それを超えないようにすべき管理値がある。このため、復水管22には、溶存酸素濃度計22aが設けられており、復水中の溶存酸素濃度が監視される。
【0018】
予め溶存酸素濃度を超えることが見込まれる場合、たとえば、凝縮水がホットウェル13に落下する前に脱気装置(図示せず)を設けるなどして、一旦溶け込んだ酸素を脱気して溶存酸素濃度を低減するなどの対策が必要である。この場合、脱気装置を取り付けるための空間を確保するため、復水器10を大きくする必要があり、さらに脱気を行うために消費する蒸気エネルギーのロスが発生する。
【0019】
これらの問題を解決する手段として、不活性ガスボンベから不活性ガスを抽気管、排気蒸気移送管、排気復水タンクのいずれかに供給する系統を設ける技術も知られている。この技術によれば、不活性ガスを供給することにより復水器の真空度を低下させることが可能となるが、供給する不活性ガスが最終的には大気に放出されるため、大量の不活性ガスを必要とし、特に大型のプラントにおいては現実に適用することは難しい。
【0020】
また、エゼクタの能力を低減することにより復水器の真空度を低下させる技術が提案されているが、復水器に滞留する不凝縮ガスによる給水の溶存酸素濃度上昇に対する技術については開示されていない。また、復水器の停止中における復水の溶存酸素濃度の上昇を防止する技術も提案されているが、運転中の酸素濃度上昇に対する技術については開示されていない。
【0021】
上述したタービンプラントの復水器10およびガス抽出系統30の構成においては、復水器10の真空調整のために大気を導入し、復水器10の管束の周囲に大気による不凝縮ガス溜まり14aを形成することにより復水器10の性能を低下させるので、管束を落下する凝縮水に酸素が溶解し、要求される復水の酸素濃度を超える可能性があった。また、復水を脱気するための装置が必要で、さらに脱気蒸気のためのエネルギーロスが発生するところにも課題があった。
【0022】
そこで、本発明の実施形態は、復水中の酸素濃度を上昇させることなく、復水器の真空調整を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上述の目的を達成するため、本発明の実施形態に係る復水器真空調整装置は、複数の伝
熱管を有し、蒸気タービンの排気蒸気を凝縮させて復水を生成して復水管に供給する復水
器と、ガス抽出系を介して前記復水器の内部の不凝縮ガスを主体とする排出ガスを排出す
る真空装置と、からなるシステムにおいて、前記復水器について、その復水器真空度を調
整する復水器真空調整装置であって、前記排出ガスを受け入れて、前記排出ガスより酸素
ガスの濃度の低い低酸素濃度ガスを生成する低酸素濃度ガス供給装置と、還流ライン入口
弁を有し、前記真空装置と低酸素濃度ガス供給装置とを接続する前記還流取り出しライン
と、前記低酸素濃度ガス供給装置と前記復水器とを接続し、前記低酸素濃度ガスを前記復
水器に導く還流戻りラインと、を備え、前記低酸素濃度ガス供給装置は、前記排出ガス中の酸素を分離、除去して高濃度の窒素ガスを前記低酸素濃度ガスとして供給する装置を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第1の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図2】第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における低酸素濃度ガス供給装置の構成例を示す系統図である。
図3】第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における低酸素濃度ガス供給装置の変形例の構成を示す系統図である。
図4】第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】第2の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図6】第3の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図7】第3の実施形態に係る復水器真空調整装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図8】第4の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図9】第4の実施形態に係る復水器真空調整装置における制御装置の構成を示すブロック図である。
図10】第5の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図11】第6の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図12】第7の実施形態に係る復水器真空調整装置の構成を示す系統図である。
図13】復水器、および復水器の真空度維持に係るガス抽出系統および真空装置の、従来の系統構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る復水器真空調整装置について説明する。ここで、互いに同一または類似の部分には、共通の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0026】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る復水器真空調整装置100の構成を示す系統図である。
【0027】
本実施形態においては、復水器10の真空度の調整のための装置として、従来の真空調節弁31(図13)に代えて、復水器真空調整装置100が設けられている。
【0028】
ここで、復水器10、真空調節弁31(図13)を除くガス抽出系統30、および真空装置40は、図13を引用しながら説明した従来の構成と同様である。したがって、これらについての重複した説明は省略する。
【0029】
本実施形態に係る復水器真空調整装置100は、還流取り出しライン110、低酸素濃度ガス供給装置120、還流戻りライン130、および制御装置140を有する。
【0030】
還流取り出しライン110は、真空装置40の排気管46の逆止弁47の上流側から分岐するように、真空装置40に一方が接続され他方が低酸素濃度ガス供給装置120に接続された還流取り出し配管111と、還流取り出し配管111に設けられた還流ライン入口弁112を有する。還流取り出しライン110は、真空装置40からの排出ガスを低酸素濃度ガス供給装置120に導く。
【0031】
低酸素濃度ガス供給装置120は、還流取り出しライン110により導かれた真空装置40からの排出ガスを受け入れて、酸素濃度が低く不活性ガスを主体とするガス(以下、低酸素濃度ガス)を生成する。具体的には、排出ガス中の水分等および酸素ガスを分離、除去して、窒素ガスの濃度の高いガスを生成する。
【0032】
低酸素濃度ガス供給装置120における窒素ガスと酸素ガスとの分離は、たとえば、分離フィルターを用いた方法、窒素ガスと酸素ガスの沸点の違いを利用した精製法、あるいは、圧力変動吸着法(PSA法)などを用いることができる。後に、図2および図3を引用しながら低酸素濃度ガス供給装置120、120aの例を説明する。
【0033】
還流戻りライン130は、低酸素濃度ガス供給装置120の出口と復水器10とを接続する還流戻り配管131と、還流戻り配管131に設けられた還流ガス流量調節弁135を有する。還流戻り配管131は、シール性を有しながら復水器10のたとえば接続胴11を貫通し、端部が復水器10の器内の空間に開放されている。
【0034】
制御装置140は、復水器10の器内圧力を検出する復水器圧力計11aの出力である復水器圧力信号を受け入れて、還流ライン入口弁112および還流ガス流量調節弁135に開度指令信号を発し、復水器圧力を制御する。また、制御装置140は、併せて、復水管22に設けられた溶存酸素濃度計22aにより、溶存酸素量を監視する。制御装置140の詳細は、後に、図4を引用しながら説明する。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における低酸素濃度ガス供給装置120の構成例を示す系統図である。
【0036】
この例における低酸素濃度ガス供給装置120は、圧縮機121、除去フィルター122、分離フィルター124、逆止弁125、貯留容器126を有する。
【0037】
圧縮機121は、還流取り出しライン110からの排出ガスを、圧縮し、低酸素濃度ガス供給装置120内の下流側に送る。
【0038】
除去フィルター122は、圧縮機121により圧縮された排出ガスを受け入れて、不純物を除去する。ここで、不純物とは、窒素ガスおよび酸素ガス以外のものを指すものとする。すなわち、除去フィルター122は、水分を分離し、空気中の微細な固形分を除去するとともに、窒素ガスおよび酸素ガス以外の二酸化炭素その他のガス成分を除去する。分離された水分は、除去フィルター122の下部に接続されたドレン管123から排出される。
【0039】
分離フィルター124は、除去フィルター122にて水分、不純物等を除去されたガスを、分離フィルター入口弁124aを介して受け入れて、酸素と窒素とを分離する。すなわち、分離フィルター124は、中空糸膜フィルター(HFF)を内蔵し、HFFにガスを透過させることにより、透過速度の違いによって、透過速度の速い酸素と透過速度の遅い窒素とが分離される。なお、両者を分離して再び混合することのないようにするために、透過速度の速い酸素を、分離フィルター124の出口側で第1弁124bを経由して放出し、その後、第1弁124bを閉止し、第2弁124cを経由して窒素ガスを移送する。分離された高濃度の窒素ガスは、第2弁124cの出口側に設けられた逆止弁125を経由して貯留容器126に貯留される。
【0040】
貯留容器126は、還流戻りライン130により復水器10の器内に接続され、還流戻りライン130に設けられた還流ガス流量調節弁135を介して、高濃度の窒素ガスが低酸素濃度ガスとして復水器10の器内に還流される。
【0041】
このように、低酸素濃度ガスは、貯留容器126に貯留されることから、還流戻りライン130により連続的に復水器10の器内に供給される。
【0042】
一方、上述のように、酸素と窒素との分離は、時間差をもって行う必要がある。このため、低酸素濃度ガス供給装置120内の逆止弁125の上流側の特に分離フィルター入口弁124a以降の部分は、連続的な運転ではなく、分離フィルター入口弁124aの開閉によって間欠的、バッチ的にガスを受け入れて、第1弁124bおよび第2弁124cの開閉により窒素ガスと窒素ガスの分離を行う。
【0043】
次に低酸素濃度ガス供給装置120とは原理の異なる変形例を説明する。
【0044】
図3は、第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における低酸素濃度ガス供給装置120aの変形例の構成を示す系統図である。
【0045】
変形例としての低酸素濃度ガス供給装置120aは、圧縮機121、除去フィルター122、冷却器128、および精留塔129を有する。
【0046】
圧縮機121および除去フィルター122までは、低酸素濃度ガス供給装置120と同様であり、その下流側の構成が異なる。
【0047】
冷却器128は、除去フィルター122にて水分、不純物等を除去された高圧の排出ガスを受け入れて、冷却する。冷却媒体としてはたとえばLNG等を用いることができる。LNGの沸点は、マイナス162℃であり、この結果、冷却器128に流入した高圧の排出ガスは、液化ガスとなる。
【0048】
精留塔129は、冷却器128で冷却された液化ガスを受け入れて、酸素と窒素の沸点の違い(大気圧において、酸素はマイナス183℃、窒素はマイナス195.8℃)を利用して、両者を互いに分離させる。
【0049】
分離後、液状のままの酸素は、ドレン弁129aから排出され、ガス状の窒素は、高濃度窒素ガスとして精留塔129の上部から流出する。このようにして、還流戻りライン130に設けられた還流ガス流量調節弁135を介して、高濃度窒素ガスが低酸素濃度ガスとして復水器10の器内に還流される。
【0050】
図4は、第1の実施形態に係る復水器真空調整装置における制御装置140の構成を示すブロック図である。
【0051】
制御装置140は、第1減算器141a、第1比較器142a、制御演算器143、第2減算器141b、および第2比較器142bを有する。
【0052】
第1減算器141aは、復水器圧力計11aからの復水器圧力信号から所定の復水器圧力設定値を減じて、圧力偏差δpを算出する。復水器圧力設定値は、維持すべき復水器10の真空度(復水器の圧力と大気圧との差)に基づいた維持すべき復水器10の圧力値を用いる。
【0053】
第1比較器142aは、圧力偏差δpと判定値を比較して、モード切り替えの要否を判断するとともに、モード切り替え要と判断した場合は、通常モードから還流モードへのモード切り替えに必要な出力をする。
【0054】
ここで、通常モードとは、還流ライン入口弁112が閉状態で、復水器真空調整装置100を停止状態で真空装置40の排気管46から不凝縮ガスを排出している状態、すなわち、真空装置40により復水器10の真空度が許容値内で維持されている状態である。
【0055】
また、還流モードとは、還流ライン入口弁112が開状態で、復水器真空調整装置100により復水器10に低酸素濃度ガスが供給されている状態である。
【0056】
いま、復水器圧力が、維持すべき復水器10の圧力値である復水器圧力設定値を下回ると圧力偏差δpは負の値となる。したがって、圧力偏差δpが負の値となったらモード切り替え要と判断することになる。あるいは、この状態になる前に、たとえば復水器圧力値が復水器圧力設定値よりε1だけ高い値と復水器圧力設定値との間の領域になったら切り替えるとしてもよい。この場合は、圧力偏差δpがε1より小さくなったらモード切り替え要と判断することになる。
【0057】
第1比較器142aは、モード切り替え要と判断した場合は、還流ライン入口弁112に開指令信号を発するとともに、制御演算器143に制御開始の指令信号を発する。
【0058】
制御演算器143は、圧力偏差δpを入力として受け入れて、還流ガス流量調節弁135の開度指令を演算する。制御量である復水器圧力は、整定状態において復水器圧力設定値からの偏差がゼロとなる必要があるので、制御演算器143は、積分要素を有する。また、特別に瞬間的な応答性を要しないため、微分器あるいは不完全微分器は必要としない。したがって、(P+I)要素、すなわち(比例+積分)要素を有する構成とする。
【0059】
なお、通常モードにおいても復水器圧力計11aからのフィードバック信号を制御演算器143が受けていると、偏差信号が入力され続け積分器が飽和して、制御開始時に還流ガス流量調節弁135に誤って全開信号を出力してしまうことになる。このため、制御演算器143は、通常モードにおいては、復水器圧力計11aからのフィードバック信号を受けずにリセット状態とする。あるいは、制御演算器143は、通常モードにおいては、復水器圧力計11aからのフィードバック信号を受けつつ、それに追従し、制御開始とともにバンプレスに切り替えることでもよい。この場合は、速い応答性を得ることができる。
【0060】
第2減算器141bは、溶存酸素濃度計22aからの溶存酸素濃度信号から所定の溶存酸素濃度設定値を減じて、溶存酸素濃度偏差δdを算出する。ここで、溶存酸素濃度設定値は、その値以下に維持すべき復水中の溶存酸素濃度であり、たとえば7ppbである。
【0061】
第2比較器142bは、溶存酸素濃度偏差δdと判定値を比較して、警報出力の要否を判断し、警報出力要と判断した場合は、たとえば、発電所の制御盤(図示せず)に警報信号を出力する。判定値は、たとえば、ゼロ、あるいは、その前段階に警報を発する場合は、マイナスで絶対値が所定の値の場合であってもよい。
【0062】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0063】
復水器10の器内圧力が、所定の圧力値より低くなった場合、あるいは前述のように所定の圧力値(ε1だけ高い値)より低くなりそうな場合に、復水器真空調整装置100の制御装置140は、還流ライン入口弁112の全開信号、および制御演算器143が還流ガス流量調節弁135の開度指令信号を出力する状態である還流モードへの切り替え指令を出力する。
【0064】
この結果、復水器10から真空装置40を介して排出されていた不凝縮ガスを主成分とする排出ガスの一部は、還流取り出しライン110を経由して低酸素濃度ガス供給装置120に流入する。低酸素濃度ガス供給装置120は、排出ガスを受け入れて、低酸素濃度ガスを生成し、還流戻りライン130を介して復水器10の器内に供給する。復水器10の器内圧力は、所定の圧力(復水器圧力設定値)となるように、制御装置140により指令される還流ガス流量調節弁135により調節され、制御される。
【0065】
また、復水器真空調整装置100によって低酸素濃度ガスが復水器に供給されることにより、不凝縮ガス溜まり14aを形成する不凝縮ガスは、従来に比べて窒素ガスの割合が増加し、酸素の濃度が低い状態となる。また、復水中の溶存酸素濃度が許容範囲を逸脱すれば、警報が発せられ運転員の注意が喚起され、必要な対応をとることができる。
【0066】
この結果、従来のように、不凝縮ガス溜まりを形成することにより真空度の調整を行うが、従来に比べて定常的に窒素ガスの割合が増加した不凝縮ガスにより不凝縮ガス溜まり14aが形成される。この結果、復水中の酸素濃度が上昇することなく、復水中の酸素濃度の上昇を抑制することができる。
【0067】
以上のように、本実施形態は、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を上昇させることなく、かつ復水器10を大きくすることなしに、復水器10の真空調整が可能となる。
【0068】
[第2の実施形態]
図5は、第2の実施形態に係る復水器真空調整装置100aの構成を示す系統図である。
【0069】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。復水器真空調整装置100aにおける還流取り出しライン110は、その還流取り出し配管111の途中に接続し接続端と反対側の端部は外部に開放されている外気導入管115と、外気導入管115に設けられた真空破壊弁116をさらに有する。
【0070】
本実施形態は、復水器真空調整装置100aの低酸素濃度ガス供給装置120を復水器の真空破壊時にも活用しようとするものである。
【0071】
すなわち、この真空破壊モードは、真空装置40が停止状態、エゼクタ入口弁41および還流ライン入口弁112が閉状態であるとともに、低酸素濃度ガス供給装置120が運転状態、還流戻りライン130の還流ガス流量調節弁135が開状態で、低酸素濃度ガスを復水器10に供給する状態のモードである。この際の低酸素濃度ガス供給装置120へのガスの供給は、真空破壊弁116を介して外部から供給される外気により賄われる。
【0072】
このため、制御装置140aは、復水器真空調整装置100aによる還流モード以外に、上述の真空破壊モードへ移行するロジックを有する。
【0073】
図示しないタービン設備の停止過程において、復水器10の真空破壊、すなわち、復水器10の内圧を負圧から大気圧に復帰する操作が行われる。
【0074】
従来は、外気を直接に復水器に導入することにより、真空破壊を行っていた。このような方式では、復水器10への大量の空気の流入に伴って大量の酸素が流入することから、復水中へ酸素が移行することにより復水中の溶存酸素濃度が上昇する。
【0075】
一方、本実施形態における復水器真空調整装置100aによれば、復水器10の真空破壊が、低酸素濃度ガスによって行われることから、復水の水質の低下を抑制することができる。
【0076】
[第3の実施形態]
図6は、第3の実施形態に係る復水器真空調整装置100bの構成を示す系統図である。
【0077】
本実施形態は、第1の実施形態の変形であり、従来のシステムでガス抽出系統30の途中に備えられていた、ガス抽出系統30に大気を導入する真空調節弁31を有し、復水中の溶存酸素濃度が許容値以内である間は、従来と同様の方法で真空度の調整を行う方式である。これに伴い、制御装置140bが、第1の実施形態における制御装置140とは異なる構成を有している。
【0078】
図7は、第3の実施形態に係る復水器真空調整装置100bにおける制御装置140bの構成を示すブロック図である。
【0079】
制御装置140bは、第1減算器141a、第1比較器142a、第1制御演算器143a、第2減算器141b、第2比較器142b、および第2制御演算器143bを有する。第1制御演算器143aおよび第2制御演算器143bは、第1の実施形態の制御演算器143と同様に、たとえば(P+I)要素を有する演算器である。
【0080】
第1減算器141aは、復水器圧力計11aからの圧力信号から復水器圧力設定値を減じ、その差である圧力偏差δpを算出する。
【0081】
第1比較器142aは、圧力偏差δpを受け入れて真空調整の要否を判定する。第1比較器142aの判定方法は、第1の実施形態と同様である。第1比較器142aは、真空調整要と判定した場合は、第1制御演算器143aに制御開始指令を出力する。
【0082】
第1制御演算器143aは、圧力偏差δpを受け入れて、真空調節弁31への開度指令を演算して、真空調節弁31に出力する。
【0083】
第2減算器141bは、溶存酸素濃度計22aからの酸素濃度信号から所定の溶存酸素濃度設定値を減じ、その差である溶存酸素濃度偏差δdを算出する。
【0084】
第2比較器142bは、溶存酸素濃度偏差δdを受け入れて、復水中の溶存酸素濃度の低減対策が必要か否かを判定する。いま、溶存酸素濃度計22aの出力が、それ以内に抑えるべきとする溶存酸素濃度設定値を上回ると、溶存酸素濃度偏差δdは正の値となる。したがって、溶存酸素濃度偏差δdが正の値となったら第2比較器142bは、モード切り替えの指令を出力する。あるいは、溶存酸素濃度偏差δdが正の値になる前に、たとえば溶存酸素濃度偏差δdがマイナスε2から0の間の領域になったら切り替えるとしてもよい。
【0085】
具体的には、第2比較器142bは、復水中の溶存酸素濃度の低減対策が必要と判定したら、還流ライン入口弁112への開指令、真空調節弁31の閉指令、第1制御演算器143aの制御開始指令の解除、および、第2制御演算器143bへの制御開始指令、の各信号の出力、すなわち、還流モードへのモード切り替えの指令を出力する。
【0086】
第2制御演算器143bは、第1減算器141aからの圧力偏差δpを受け入れて、還流ガス流量調節弁135の開度指令を算出する。
【0087】
次に、本実施形態に係る復水器真空調整装置100bの制御装置140bの作用を説明する。
【0088】
復水器10の器内圧力が、所定の圧力値より低くなった場合には、第1減算器141aの出力が負となり、第1比較器142aは、真空調整要と判定して、真空調節弁31に開信号を出力する。
【0089】
一方、真空調節弁31が開くことにより、復水器10に空気が導入され、復水器10の真空度が、過真空状態から回復するが、復水中の酸素濃度が上昇する。
【0090】
復水中の酸素濃度が上昇することにより、第2減算器141bの出力が上昇し、第2比較器142bが、酸素濃度低減要と判定した場合には、第2比較器142bは、還流モードへの切り替えのための指令を出力する。
【0091】
この結果、復水器10から真空装置40を介して排出されていた不凝縮ガスを主成分とする排出ガスの一部は、還流取り出しライン110を経由して低酸素濃度ガス供給装置120に流入する。低酸素濃度ガス供給装置120は、排出ガスを受け入れて、低酸素濃度ガスを生成し、還流戻りライン130を介して復水器10の器内に供給する。低酸素濃度ガスの流量は、還流ガス流量調節弁135により調節され、制御装置140bにより、溶存酸素濃度計22aの出力が、溶存酸素濃度設定値となるように制御される。
【0092】
この結果、不凝縮ガス溜まり14aは、窒素ガスの割合が増加し、逆に酸素の濃度が低い状態となる。
【0093】
以上のように、本実施形態は、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を上昇させることなく、かつ復水器10を大きくすることなしに、復水器10の真空調整が可能となる。
【0094】
[第4の実施形態]
図8は、第4の実施形態に係る復水器真空調整装置100cの構成を示す系統図である。
【0095】
本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態における復水器真空調整装置100cの還流戻りライン130は、還流戻りバイパス配管132、および還流戻りバイパス配管132に設けられたバイパス流量調節弁136をさらに有する。また、復水管22に設けられた溶存酸素濃度計22aの出力信号が、制御装置140cに用いられている。その他の点では、第1の実施形態と同様である。
【0096】
還流戻りバイパス配管132は、還流戻り配管131の還流ガス流量調節弁135の上流側で分岐し、ガス抽出系統30に合流する。
【0097】
図9は、第4の実施形態に係る復水器真空調整装置100cにおける制御装置140cの構成を示すブロック図である。
【0098】
復水器真空調整装置100cの制御装置140cは、バイパス流量調節弁136の開度指令信号を算出する第1の系列としての第1減算器141aおよび第1制御演算器143aと、還流ガス流量調節弁135の開度指令信号を算出する第2の系列としての第2減算器141bおよび第2制御演算器143bと、モード切り替えの要否を判定する比較器142とを有する。第1制御演算器143aおよび第2制御演算器143bは、第1の実施形態の制御演算器143と同様に、たとえば(P+I)要素を有する演算器である。
【0099】
まず、第1の系列を説明する。第1減算器141aは、復水器圧力計11aからの復水器圧力信号と復水器圧力設定値を受け入れて、復水器圧力信号の値から復水器圧力設定値を減じた圧力偏差δpを算出する。第1制御演算器143aは、圧力偏差δpを受け入れて制御演算を行い、バイパス流量調節弁136に開度指令を出力する。
【0100】
次に、第2の系列を説明する。第2減算器141bは、溶存酸素濃度計22aからの酸素濃度信号と溶存酸素濃度設定値を受け入れて、酸素濃度信号の値から溶存酸素濃度設定値を減じた溶存酸素濃度偏差δdを算出する。第2制御演算器143bは、溶存酸素濃度偏差δdを受け入れて制御演算を行い、還流ガス流量調節弁135に開度指令を出力する。
【0101】
ここで、第1制御演算器143aの制御定数と第2制御演算器143bの制御定数は、安定性を確保するように設定される。ここで、制御定数とは、たとえば、ゲイン、積分の時定数などである。制御上の外乱は、比較的、時間変化速度の小さい復水器10の冷却水の温度変化等であるため応答性は要求されない。したがって、安定性が重要であり、特に、第1の系列の制御と第2の系列の制御との相互干渉が生じないように制御定数が設定される。すなわち、第1の系列の圧力制御のフィードバック信号源である復水器圧力計11aの応答は、第2の系列のフィードバック信号源である溶存酸素濃度計22aの応答に比べて速い。したがって、制御系も、第1系列の圧力制御の応答性を、第2系列の酸素濃度制御の応答性よりも早めるように制御定数の値が設定される。
【0102】
比較器142は、第1の実施形態と同様の機能を有する。圧力偏差δpを受け入れて、モード切り替えの要否を判定する。比較器142は、モード切り替え要と判定した場合は、還流ライン入口弁112に開指令を出力するとともに、第1制御演算器143aおよび第2制御演算器143bのそれぞれに制御開始指令を出力する。
【0103】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0104】
復水器10の器内圧力が、所定の圧力値より低くなりそうな状態になった場合に、復水器真空調整装置100cの制御装置140cは、還流ライン入口弁112の全開信号、および第1制御演算器143aによるバイパス流量調節弁136の開度および第2制御演算器143bによる還流ガス流量調節弁135の開度をそれぞれ制御する還流モードへの切り替えを行う。
【0105】
この結果、復水器10から真空装置40を介して排出されていた不凝縮ガスを主成分とする排出ガスの一部が還流取り出しライン110を経由して低酸素濃度ガス供給装置120に流入し低酸素濃度ガスが生成される。低酸素濃度ガスは、還流戻りライン130の還流戻り配管131の還流ガス流量調節弁135を経由してガス抽出系統30へ、また還流戻りバイパス配管132のバイパス流量調節弁136を経由して復水器10へ供給される。
【0106】
還流ガス流量調節弁135を経由してガス抽出系統30へ供給される低酸素濃度ガスの流量により、溶存酸素濃度計22aによる酸素濃度が制御されるとともに、バイパス流量調節弁136を経由して復水器10へ供給される低酸素濃度ガスの流量により、復水器圧力計11aによる復水器圧力が制御される。
【0107】
このように、互いに独立した2つの手段により溶存酸素濃度計22aによる酸素濃度および復水器圧力計11aによる復水器圧力が制御される。
【0108】
以上のように、本実施形態は、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を所定の値に維持しながら、復水器10の真空調整が可能となる。
【0109】
[第5の実施形態]
図10は、第5の実施形態に係る復水器真空調整装置100dの構成を示す系統図である。
【0110】
本実施形態は、第1の実施形態および第4の実施形態の変形である。
【0111】
本実施形態に係る復水器真空調整装置100dの構成は、第1の実施形態と同様に、還流戻りライン130に還流ガス流量調節弁135が設けられているが、さらに、真空装置40の入り口に真空装置入口調節弁138が設けられている。
【0112】
復水器真空調整装置100dの制御装置140dは、基本的に第4の実施形態における制御装置140cと同様に2つの系列を有する。
【0113】
制御装置140dの第1の系列は、復水器圧力計11aからの復水器圧力信号を受けて真空装置入口調節弁138の開度指令信号を出力する。また、制御装置140dの第2の系列は、溶存酸素濃度計22aからの溶存酸素濃度信号を受けて還流ガス流量調節弁135の開度指令信号を出力する。
【0114】
このように、互いに独立した2つの手段により溶存酸素濃度計22aによる酸素濃度および復水器圧力計11aによる復水器圧力が制御され、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を所定の値に維持しながら、復水器10の真空調整が可能となる。
【0115】
[第6の実施形態]
図11は、第6の実施形態に係る復水器真空調整装置100eの構成を示す系統図である。
【0116】
本実施形態に係る復水器真空調整装置100eにおいては、低酸素濃度ガス供給装置120が、第1の実施形態と同様に、ガス中の酸素ガスを除去して窒素ガスの濃度の高い低酸素濃度ガスを生成する装置に加えて、不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置150を有する。
【0117】
不活性ガス供給装置150は、たとえば、窒素ガスやアルゴンガス等の不活性ガスを供給するガスボンベ群でもよい。
【0118】
不活性ガス供給装置150は、還流戻り配管131の還流ガス流量調節弁135の下流側と接続する不活性ガス供給配管151と、不活性ガス供給配管151に設けられた不活性ガス供給調節弁152を有する。
【0119】
復水器真空調整装置100eの制御装置140eは、基本的に第4の実施形態における制御装置140cと同様に2つの系列を有する。
【0120】
制御装置140eの第1の系列は、復水器圧力計11aからの復水器圧力信号を受けて還流ガス流量調節弁135の開度指令信号を出力する。また、制御装置140eの第2の系列は、溶存酸素濃度計22aからの溶存酸素濃度信号を受けて不活性ガス供給調節弁152の開度指令信号を出力する。
【0121】
このように、互いに独立した2つの手段により溶存酸素濃度計22aによる酸素濃度および復水器圧力計11aによる復水器圧力が制御され、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を所定の値に維持しながら、復水器10の真空調整が可能となる。
【0122】
[第7の実施形態]
図12は、第7の実施形態に係る復水器真空調整装置100fの構成を示す系統図である。
【0123】
復水器真空調整装置100fにおいては、低酸素濃度ガス供給装置120は、不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置150のみを有する。また、還流戻りライン130は、還流取り出しライン110に直接接続している。
【0124】
不活性ガス供給装置150は、第6の実施形態における不活性ガス供給装置150と同様である。
【0125】
不活性ガス供給装置150からの不活性ガス供給配管151は、還流戻りライン130の還流戻り配管131と、還流戻り配管131に設けられた還流ガス流量調節弁135の上流側で接続している。不活性ガス供給配管151には、不活性ガス供給調節弁152が設けられている。
【0126】
復水器真空調整装置100fの制御装置140fは、基本的に第4の実施形態における制御装置140cと同様に2つの系列を有する。
【0127】
制御装置140fの第1の系列は、復水器圧力計11aからの復水器圧力信号を受けて還流ガス流量調節弁135の開度指令信号を出力する。また、制御装置140fの第2の系列は、溶存酸素濃度計22aからの溶存酸素濃度信号を受けて不活性ガス供給調節弁152の開度指令信号を出力する。
【0128】
このように、互いに独立した2つの手段により溶存酸素濃度計22aによる酸素濃度および復水器圧力計11aによる復水器圧力が制御され、復水器10の真空調整運転を行うにあたり、復水中の酸素濃度を所定の値に維持しながら、復水器10の真空調整が可能となる。
【0129】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
【0130】
たとえば、各実施形態においては、制御装置が、還流モードへの切り替えを行う場合を例にとって示したが、これに限定されない。各調節弁の開度指令を出力するフィードバック制御の部分を除き、還流モードへの切り替え、すなわち、弁開閉モードの変更、低酸素濃度ガス供給装置の起動等については、手動で行う場合であってもよい。
【0131】
また、実施形態では、還流ガスを取り入れて低酸素濃度ガスを供給する装置として低酸素濃度ガス供給装置120、120aの2つを例にとって示したが、これに限定されない。還流ガスを取り入れて低酸素濃度ガスを供給可能であれば、これら以外の方式の装置であってもよい。また、真空装置40として、空気エゼクタの場合を例にとって示しているが、蒸気エゼクタあるいは他の方式の場合であってもよい。
【0132】
また、実施形態は、互いに組み合わせてもよい。たとえば、第2の実施形態の特徴である真空破壊用の部分を、第3ないし第7の実施形態のそれぞれと組み合わせてもよい。
【0133】
また、実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。
【0134】
実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0135】
10…復水器、11…接続胴、11a…復水器圧力計、12…冷却部胴部、13…ホットウェル、14…伝熱管、14a…不凝縮ガス溜まり、15…入口水室、16…出口水室、17…排出部、21…復水出口室、22…復水管、22a…溶存酸素濃度計、30…ガス抽出系統、31:真空調節弁、40…真空装置、41…エゼクタ入口弁、42…エゼクタ、43…真空ポンプ、44…セパレータタンク、45…三方弁、46…排気管、47…逆止弁、100、100b、100c、100d、100e、100f…復水器真空調整装置、110…還流取り出しライン、111…還流取り出し配管、112…還流ライン入口弁、115…外気導入管、116…真空破壊弁、120、120a…低酸素濃度ガス供給装置、121…圧縮機、122…除去フィルター、123…ドレン管、124…分離フィルター、124a…分離フィルター入口弁、124c…第1弁、124c…第2弁、125…逆止弁、126…貯留容器、128…冷却器、129…精留塔、129a…ドレン弁、130…還流戻りライン、131…還流戻り配管、132…還流戻りバイパス配管、133…供給管、135…還流ガス流量調節弁、136…バイパス流量調節弁、137…低酸素濃度ガス供給調節弁、138…真空装置入口調節弁、140、140b、140c、140d、140e、140f…制御装置、141…減算器、141a…第1減算器、141b…第2減算器、142…比較器、142a…第1比較器、142b…第2比較器、143…制御演算器、143a…第1制御演算器、143b…第2制御演算器、144…ORロジック、150…不活性ガス供給装置、151…不活性ガス供給配管、152…不活性ガス供給調節弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13