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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】金属コーティングの方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   C23C 4/08 20160101AFI20240129BHJP
   C23C 4/123 20160101ALI20240129BHJP
   C23C 4/134 20160101ALI20240129BHJP
   C23C 4/18 20060101ALI20240129BHJP
   C23C 24/08 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C23C4/08
C23C4/123
C23C4/134
C23C4/18
C23C24/08 B
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020148725
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2021042471
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-02
(31)【優先権主張番号】19196156
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19200051
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516381459
【氏名又は名称】シュトゥルム マシーネン ウント アラゲンバウ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Sturm Maschinen- & Anlagenbau GmbH
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 10, 94330 Salching, Deutschland
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(72)【発明者】
【氏名】カルロス マーティイン
(72)【発明者】
【氏名】ローラント バイエル
【合議体】
【審判長】池渕 立
【審判官】土屋 知久
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-202939(JP,A)
【文献】特開2008-274352(JP,A)
【文献】特開2009-285664(JP,A)
【文献】特開昭49-90641(JP,A)
【文献】特開昭57-58987(JP,A)
【文献】特開平2-138455(JP,A)
【文献】特表2014-511432(JP,A)
【文献】国際公開第2019/030839(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C4/00-4/18
C23C24/00-24/10
B22F3/105
B22F3/16
B22F7/00-7/08
B23K26/342
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク形の工作物(5)の少なくとも1つの表面(6)を金属コーティングする方法であって、
コーティング前に、コーティングされるべき前記表面(6)の凹凸のある表面構造が、測定装置(42)によって検出され、
前記表面(6)に対して移動される少なくとも1つの堆積装置(25)によってコーティングが行われて、コーティング材料が塗布され、
前記堆積装置(25)が、検出された前記表面構造に基づいて制御装置によって制御され、より多い材料が凹領域に局所的に塗布され、かつ、より少ない材料が凸領域に局所的に塗布される、方法。
【請求項2】
前記コーティングが、レーザ堆積溶接として行われること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記レーザ堆積溶接中、金属粉末が、前記堆積装置(25)によって、コーティングされるべき前記表面(6)に堆積され、
レーザによって、塗布された前記金属粉末が局所的に溶融され、コーティング(7)が形成されること、
を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング中、塗布される金属粉末の量および/または前記レーザの出力が、前記制御装置によって制御されること、
を特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工作物(5)の少なくとも1つの表面(6)を金属コーティングする方法であって、
コーティング前に、コーティングされるべき前記表面(6)の凹凸のある表面構造が、測定装置(42)によって検出され、
前記表面(6)に対して移動される少なくとも1つの堆積装置(25)によってコーティングが行われて、コーティング材料が塗布され、
前記少なくとも1つの堆積装置(25)が、検出された前記表面構造に基づいて制御装置によって制御され、より多い材料が凹領域に局所的に塗布され、かつ、より少ない材料が凸領域に局所的に塗布され、
前記少なくとも1つの堆積装置が少なくとも2つの堆積装置(25)を含み、前記少なくとも2つの堆積装置(25)が、前記工作物(5)上にコーティング(7)を同時に堆積させる、方法。
【請求項6】
前記工作物(5)が、ディスク形または平面であり、
前記コーティング(7)が、2つの相反する面(6)上に行われること、
を特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
工作物(5)の少なくとも1つの表面(6)を金属コーティングする方法であって、
コーティング前に、コーティングされるべき前記表面(6)の凹凸のある表面構造が、測定装置(42)によって検出され、
前記表面(6)に対して移動される少なくとも1つの堆積装置(25)によってコーティングが行われて、コーティング材料が塗布され、
前記少なくとも1つの堆積装置(25)が、検出された前記表面構造に基づいて制御装置によって制御され、より多い材料が凹領域に局所的に塗布され、かつ、より少ない材料が凸領域に局所的に塗布され、
前記工作物(5)が、ディスク形または平面であり、
コーティング(7)が、2つの相反する面(6)上に行われ、
前記少なくとも1つの堆積装置が少なくとも2つの堆積装置(25)を含み、前記少なくとも2つの堆積装置(25)が、互いに直接対向しており、前記コーティング(7)が、前記2つの相反する面(6)に対する垂線方向に沿って前記コーティング材料を溶射して前記工作物の両面上で同時に行われる、方法。
【請求項8】
前記コーティング中、コーティングされるべき前記表面(6)が、重力に概ね平行に向けられること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング後、コーティング面(6)が、アウトプット測定装置(52)によって測定され、表面構造が検出されること、
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング面の材料を除去して寸法的に正確な前記コーティング面を実現する後処理が行われ、材料除去工具が、前記アウトプット測定装置(52)で検出された前記表面構造に応じて、前記工作物(5)に対して移動されること、
を特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記後処理が、研削、ホーニング加工、ラップ加工および/または研磨を含むこと、
を特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ディスク形の工作物(5)の少なくとも1つの表面(6)を金属コーティングするシステムであって、
コーティングされるべき前記表面(6)の凹凸を含む表面構造を検出する測定装置(42)と、
コーティング中に前記工作物(5)の前記表面(6)に対して移動され得る、コーティングを堆積させる少なくとも1つの堆積装置(25)と、
前記検出された表面構造に基づいて、より多くの材料が凹領域に局所的に塗布され、かつ、より少ない材料が凸領域に局所的に塗布されるように前記堆積装置(25)を制御する制御装置と、
を備える、システム。
【請求項13】
コーティング面(6)の表面構造を検出することができるアウトプット測定装置(52)が設けられること、
を特徴とする請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
少なくとも1つの材料除去処理デバイス(66)を備える後処理ステーション(64)が配置され、前記少なくとも1つの材料除去処理デバイスは前記コーティング面の材料を除去して寸法的に正確な前記コーティング面を実現すること、
を特徴とする請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の、工作物の少なくとも1つの表面を金属コーティングする方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、請求項13に記載の、工作物の少なくとも1つの表面を金属コーティングするシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
工作物表面に金属コーティングを施すコーティング・デバイスを用いる工作物の金属コーティングのシステムおよび方法は、長く知られている。この類のコーティング・デバイスは、エンジン・ブロックのシリンダ・ボアのコーティングに用いられ、例えばプラズマ溶射法、溶射法または他の金属コーティング法が用いられる。
【0004】
本出願人のEP3048181B1から、工作物の金属コーティングの方法およびシステムが知られており、コーティングされるべきシリンダ・ボアを含むエンジン・ブロックは、装填ステーションと処理ステーションとの間で工作物を旋回させることができる回転テーブル上に配置される。このプロセスでは、エンジン・ブロックは、装填ステーションで受けられ、シリンダ・ボアは、コーティングの前に、測定装置を用いて測定される。そうすることで、表面構造が記録され得る。次いで、エンジン・ブロックは、コーティング位置まで旋回され、プラズマ溶射により金属コーティングが円筒形ボア表面に施される。このエンジン・ブロックがコーティング位置まで旋回されると、同時に、コーティングが終わったエンジン・ブロックが装填位置へと旋回して戻される。このプロセスでは、コーティング済みエンジン・ブロックは、装填ステーションから降ろされる前に同じ測定装置を用いて測定される。コーティング前と後の表面構造を比較することによって、層厚および層厚の輪郭を正確に決定することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、所望の表面輪郭を有するコーティングを特に高効率で施すことができる、工作物の金属コーティングの方法およびシステムを提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、請求項1の特徴を有する方法および請求項13の特徴を有するシステムの両方によって解決される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項で示される。
【0007】
工作物の少なくとも1つの表面を金属コーティングする本発明による方法では、コーティング前に、コーティングされるべき表面の凹凸のある表面構造が測定装置によって検出され、プロセス中にその表面に対して移動されてコーティング材料を塗布する少なくとも1つの堆積装置によってコーティングが行われ、および、堆積装置が、検出された表面構造に基づいて制御装置によって制御され、より多い材料が凹領域に塗布され、より少ない材料が凸領域に塗布されることが提供される。
【0008】
本発明は、コーティングされるべき工作物が、鋳造、パンチング、鍛造および特に材料を除去する機械加工を含むことがある前処理のタイプに応じて、凹凸を含む巨視的に粗い表面構造を有することがある、という知識に基づいている。高コーティング精度でコーティングを施すとき、この種の粗い表面構造は、実質的に、コーティング面の表面構造に依然として存在する、またはより顕著に発達することがある。これに対抗するために、本発明によれば、コーティングの堆積を、表面構造について検出された値に応じて制御装置によって制御する。このプロセスでは、コーティング中、より多くの材料が、工作物の表面構造に凹部がある領域に局所的に塗布され、より少ない材料が、より高いまたは突出した構造がある領域に局所的に塗布され得るように、制御が行われる。その結果、工作物のコーティングされるべき表面の表面寸法の比較的大きな変動でも概ね均一にすることができ、コーティング面の所望に定義された表面輪郭を設定することができる。
【0009】
本発明による方法によって、コーティングされるべき表面があまり正確に前処理される必要のない工作物を処理することができる。さらに、材料の差異のある堆積により、コーティング材料の消費量およびコーティングに伴う手間を低減させることができる。
【0010】
さらに、コーティング面の可能性のある後処理に必要な労力を低減させることができる。これはすべて、製造の労力を減らし、費用を削減する。
【0011】
基本的に、コーティング面のほとんどすべての表面輪郭を、この方法を用いて設定することができる。本発明の方法の一変形形態によれば、実質的に平らな表面がコーティング中に形成されることが特に好ましい。これは、特にブレーキ・ディスクのコーティング中に望まれ、それによって、これらのディスクは高い同心性およびスタート直後から動作中の高い制動力を確実にすることができる。
【0012】
コーティングは、例えばプラズマ溶射法、溶射法などの金属コーティングを施す一般的なコーティング方法を用いて行うことができる。コーティングをレーザ堆積溶接によって行うことが特に好ましい。その結果、特に堅牢で安定したコーティングを作り出すことができる。
【0013】
本発明の一展開によれば、レーザ堆積溶接中、金属粉末が、堆積装置によって、コーティングされるべき表面に堆積されること、およびレーザによって、塗布された金属粉末が局所的に溶融され、コーティングが形成されることが特に有利である。このプロセスでは、金属粉末は、1つまたは複数の堆積ノズルによって工作物上のコーティングされるべきポイントに塗布され得る。同時に、塗布された金属粉末は、このポイントに標的が定められたレーザにより溶融され、こうしてコーティングが形成され得る。測定用レーザが表面構造の測定に使用される場合、コーティング装置のレーザは、測定用レーザがコーティングされるべき表面の上を移動した経路も正確に追従することができる。
【0014】
ここでは、コーティング中、塗布される金属粉末の量および/またはレーザの出力が制御装置によって制御されることが特に好ましい。その結果、金属粉末の消費量およびレーザのエネルギー消費量も特に効率的に設定することができる。
【0015】
本発明の一展開によれば、特に高いコーティング性能は、工作物上にコーティングを同時に堆積させる少なくとも2つの堆積装置によって達成される。こうして、堆積装置の数により、処理時間を減少させることができる。
【0016】
ここでは、工作物はディスク形または平面であり、コーティングは、2つの相反する面上に行われることが特に好ましい。これは、剪断力、特に工作物の熱応力をも相殺することができる。
【0017】
堆積装置が互いに直接対向すること、およびコーティングが両面に同時に行われることによって、特に良好な相殺が達成され得る。
【0018】
基本的に、工作物は、コーティング中、任意のやり方で配置することができ、特にはコーティングされるべき表面は、水平に配置することができる。本発明による方法の特に有利な構成は、コーティング中、コーティングされるべき表面が重力に概ね平行に向けられることにある。特にレーザの同時の動作により金属粉末が堆積されるとき、この類の工作物配置は、溶融しなかった金属粉末がコーティングされるべき表面から下方に速やかに放出され、表面の水平配置と比較すると、コーティングされるべき表面に金属粉末がない、または望ましくないやり方で積もる金属粉末がわずかであるという効果を有する。
【0019】
本発明による方法の他の変形形態によれば、コーティング後、コーティング面は、アウトプット測定装置によって測定され、表面構造が検出されることが提供される。ここで、アウトプット測定装置は、インプット測定向けのものと同じ測定装置でよく、または別個の測定装置であってもよい。特に、表面構造は、インプット測定中もアウトプット測定中も、測定用レーザによって測定され得る。制御装置において、未コーティング面の表面構造とコーティング面の表面構造が比較され得る。その結果、層厚を確実に決定することができる。コーティング中に発生する可能性のある欠陥またはずれを決定することもできる。制御装置により、コーティング・パラメータの変更または堆積装置を備えるコーティング・デバイスの保守は、これらの測定値および比較値に基づいて決定する、または開始することができる。
【0020】
特に寸法的に正確なコーティング面を実現するために、本発明の一展開によれば、コーティング面の材料を除去する後処理が行われ、材料除去工具が、アウトプット測定装置で検出された表面構造に応じて、工作物に対して移動されることが提供される。制御装置によって、特に材料除去工具は、所望の最終の厚さが実現され、コーティング面上のあらゆる可能性のある残留する望ましくない段差が除去されるように、コーティング面の測定された表面構造に基づいて調整され得る。
【0021】
ここでは、後処理は、研削、ホーニング加工、ラップ加工および/または研磨を含むことが特に適切である。他の機械加工プロセス、例えばレーザによる材料除去も、原理上は同様に使用することができる。
【0022】
さらに、本発明は、工作物の少なくとも1つの表面を金属コーティングするシステムであって、コーティングされるべき表面の凹凸を含む表面構造を検出する測定装置と、コーティング中に工作物の表面に対して移動され得る、コーティングを堆積させる少なくとも1つの堆積装置と、検出された表面構造に基づいて堆積装置を制御するように構成される制御装置であって、より多くの材料が凹領域に塗布され、より少ない材料が凸領域に塗布される、制御装置とを含む、システムを備える。
【0023】
このシステムを使用して、上述の方法を特に行うことができる。それによって、既に記載の利点を達成することができる。
【0024】
このプロセスにおいて、堆積装置は、特にレーザ堆積溶接を行うように設計される。
【0025】
有利には、コーティング面の表面構造を検出することができるアウトプット測定装置が設けられる。アウトプット測定装置は、特にインプット測定装置とは別に配置される。塗布された層の厚さは、例えば、インプット測定のための測定装置とアウトプット測定装置の両方に接続された制御装置によって決定され得る。
【0026】
本発明によるシステムの他の好ましい実施形態は、少なくとも1つの材料除去処理デバイスを備える後処理ステーションが配置されることにある。ここでは、材料除去処理デバイスは、特に研削デバイスとすることができる。
【0027】
図面に概略的に示される好ましい実施形態をもとに、以下に本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明によるシステムの概略図である。
図2】本発明による工作物のコーティングの概略図である。
図3図1によるシステムに基づいた、本発明による他のシステムの斜視図である。
図4】測定の配置の概略図である。
図5】本発明によるコーティングの結果の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、本発明によるシステム10の第1の実施形態が示されている。前記システムは、モジュール群30を形成する互いに隣り合った並列配置の4つのコーティング・モジュール20を備える。モジュール群30の上流には、インプット測定ステーション40が配置され、そのステーション40へ工作物(ここでは図示せず)が主搬送装置60により搬送される。本実施形態では多軸ロボットのように構成されるハンドリング装置32によって、工作物は、主搬送装置60から持ち上げられ、箱形のインプット測定ステーション40に供給される。
【0030】
工作物、特にコーティングされるべき表面は、インプット測定ステーション40の測定装置42を用いて測定される。このプロセスでは、特にコーティングされるべき表面の表面構造が検出され、特に表面の凹凸が検出され測定され得る。
【0031】
次いで、測定された工作物は、インプット測定ステーション40からハンドリング装置32を介して、またはインプット測定ステーション40から直接、4つのコーティング・モジュール20に沿って延びる直線搬送装置36へ移送され得る。直線コンベアとして構成された搬送装置36上には、各コーティング・モジュール20の上流に供給装置38が配置され、工作物を選択されたコーティング・モジュール20の箱形ハウジング21の入口開口24に導入する。
【0032】
コーティング・モジュール20同士は、同じまたは実質的に同じに構成され、輸送フレーム22を備える。この輸送フレーム22により、コーティング・モジュール20を屋内クレーンまたはフォークリフト・トラックを用いて動かし、再配置することができる。それによって、例えば生産能力変更の場合、追加のコーティング・モジュール20を追加もしくは除去する、または、修理もしくは保守のために、すでにあるコーティング・モジュール20を新しいコーティング・モジュール20に取り替えることが可能になる。
【0033】
図2に関連して以下により詳細に説明するように、コーティング・モジュール20では、工作物の少なくとも1つの表面に金属コーティングが施される。コーティング後、工作物は、入口開口24を通って搬送装置36へ案内されて戻される。これは、供給装置38によって行われてもよい。搬送装置36によって、コーティング済みの工作物は、共通のアウトプット測定ステーション50へと輸送され、そこで工作物のコーティング面が測定される。アウトプット測定ステーション50でのアウトプット測定装置52によるこの最終測定後、工作物は、主搬送装置60に戻され、主搬送装置60によってさらなる処理へ搬送され得る。工作物はまた、図1には示されないが、インプット測定ステーション40と同じやり方で、ハンドリング装置32によって搬送装置36からアウトプット測定ステーション50へ、さらにまた主搬送装置60へ移送されてもよい。
【0034】
指定の工作物についてのインプット測定ステーション40で決定された測定値は、中央制御装置へ送信される。測定された工作物がモジュール群30の指定のコーティング・モジュール20へと対応する供給装置38により案内されるように、搬送装置36は、制御装置によってさらに制御される。それと同時に、工作物がインプット測定値に応じてコーティングされ得るように、制御装置によって、指定の工作物の測定値が、選択または指定されたコーティング・モジュール20へ転送される。コーティング後、工作物は、箱形のアウトプット測定ステーション50で測定され、決定された測定値は、同様に、中央制御装置および指定の工作物についてのデータ・セットへと転送される。正しいコーティングが行われたかどうかを決定するために、制御装置において、インプット測定値およびアウトプット測定値ならびにコーティング・パラメータの比較が行われ得る。必要に応じて、コーティング中に制御装置によってコーティング・モジュール20の動作パラメータが再調整されてもよい。
【0035】
図2によれば、コーティングされるべき工作物5として、ディスク形要素、特にコーティングされるべき1つまたは2つの表面6を有するブレーキ・ディスクが用意され得る。金属コーティングは、プラズマ・コーティングまたはレーザ堆積溶接により、1つのコーティング・ノズル26をそれぞれ備える2つの堆積装置25によって施され得る。コーティング・ノズル26は、キャリア27上に配置される。プラズマ溶射では、金属粒子がアークで溶融され、高速で表面6に塗布される。堆積溶接では、コーティング材料、特に金属粉末が最初に塗布されてからレーザによって局所的に溶融される。このプロセスにおいて、コーティングは、多段階で多層に行われ得る。所望の特性、特に付着力、耐摩耗性および/または耐食性に関する特性を達成するために、特に複数の層はまた、様々な層厚、様々な材料および様々な方法で塗布され得る。
【0036】
原理上は、コーティングされるべき表面6に沿ってキャリア27によって動かされるコーティング・ノズル26を用いてコーティングを行うことができる。プラズマ溶射および/またはレーザ堆積溶接に加えて、他の熱金属コーティング方法を代替としてまたは互いに組み合わせて使用することもできる。図2に示されるように、コーティングは、互いに直接対向して配置された2つのコーティング装置25によって同時にディスク形工作物5の2つの表面6上に堆積されることが好ましい。
【0037】
図3には、それぞれ4つのコーティング・モジュール20からなる全部で3つのモジュール群30を備える、本発明によるシステム10の一展開が示されている。ここでは、個々のモジュール群30は、図1の実施形態に従って構成されており、インプット測定ステーション40およびアウトプット測定ステーション50は、各モジュール群30に割り当てられている。全部で3つのモジュール群30は、直線主搬送装置60に沿って配置され、したがって、この並列配置では、工作物は、個々のモジュール群30内および個々の処理モジュール20内で並行して処理され得る。コーティングが終わった工作物は、それぞれのアウトプット測定ステーション50を通過後、主搬送装置60へと案内されて戻され、主搬送装置60によって後処理ステーション64に送りこまれる。
【0038】
図3により示される実施形態では、後処理ステーション64は、並列に配置された、特に研削デバイスである全部で4つの後処理デバイス66を備える。最終工程として、研削デバイスにより、工作物の少なくとも1つのコーティング面が処理され研削され得る。効率的な後処理を確実にするために、各工作物についての検出された測定値が、工作物の処理のために制御装置によって選ばれた後処理ステーション64内の指定の研削デバイスへと転送され得る。こうして、工作物のコーティング面の検出された最終高さに応じて、例えば、それぞれの研削デバイス内で工作物の方に向けた研削工具の前進が効率的に実行され得る。
【0039】
特に図3による実施形態から、要求される可能性のある生産能力のより大きな増加のときでも、個々のコーティング・モジュール20だけでなく、複数のコーティング・モジュール20ならびに関連のインプット測定ステーション40およびアウトプット測定ステーション50をそれぞれ備えるモジュール群30全体も、システム全体に容易に加えることができることが分かる。
【0040】
図4は、コーティング前の工作物5の測定のときの、2つの測定センサ44を備える測定装置42を示している。この図では、工作物5は、コーティングされるべき2つの相反する面6を含む、概略的に示されるブレーキ・ディスクである。測定装置42のキャリア上にそれぞれ配置され得る対向するセンサ44は、測定用レーザを含む共焦点センサまたは三角測量センサとして構成することができる。表面構造6を検出するためのセンサ44は、コーティングの堆積のために、堆積装置25が後で動くことになる経路の上を正確に動くことが好ましい。
【0041】
測定の質をさらに向上させるために、工作物5の表面6の径方向領域をカバーするライン・スキャン・カメラを配置することができる。この測定装置の配置は、インプット測定ステーション40とアウトプット測定ステーション50の両方に提供することができる。
【0042】
図5は、コーティング後の工作物5の一部を非常に概略的に示している。コーティングされるべき工作物5の表面6は、図5に誇張して示されている凹凸を有する表面輪郭を有する。参照符号3は、前記コーティングが、従来の方法に従って均一に堆積された場合のコーティングの概略的な表面輪郭を示している。これにより、コーティングされるべき表面6の凹凸がコーティング面の表面輪郭3においても見えることにもなる。
【0043】
本発明による方法によって、実質的に平らな表面8を有するコーティング7になるように、コーティングされるべき表面6の凹領域により多くの材料を塗布することができ、凸領域により少ない材料を塗布することができる。
【0044】
こうして、本発明による方法およびシステムを用いて、高品質のコーティングを特に経済的なやり方で堆積させることができる。
図1
図2
図3
図4
図5