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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 23/24 20060101AFI20240129BHJP
   B63H 21/17 20060101ALI20240129BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20240129BHJP
   B63J 99/00 20090101ALI20240129BHJP
   B63J 3/02 20060101ALI20240129BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240129BHJP
   B63J 2/12 20060101ALI20240129BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B63H23/24
B63H21/17
B63H21/21
B63J99/00 A
B63J3/02 A
B63H21/38 A
B63J2/12 Z
H05K7/20 M
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020187258
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076725
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-02-20
(73)【特許権者】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】菊谷 和正
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼松 恭平
(72)【発明者】
【氏名】藤森 達也
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-142368(JP,A)
【文献】特開2009-27776(JP,A)
【文献】中国実用新案第205304009(CN,U)
【文献】特表2014-509569(JP,A)
【文献】特開2017-19173(JP,A)
【文献】特開2011-163231(JP,A)
【文献】特開2010-228558(JP,A)
【文献】国際公開第2020/123351(WO,A1)
【文献】特開2020-145791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 23/24
B63H 21/17
B63H 21/21
B63J 99/00
B63J 3/02
B63H 21/38
B63J 2/12
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置に駆動力を供給する電動モータを備える船舶であって、
前記船舶に備えられる複数の電気機器それぞれに接続された配線を中継する中継機器を収容する中継ボックスと、
前記電動モータの回転を制御するインバータユニットと、
前記インバータユニットを冷却する冷却装置と、を備え、
前記インバータユニットは、前記中継機器とともに前記中継ボックスに収容されており、
前記冷却装置は、前記中継ボックスの筐体の外面に取り付けられる取付面が形成された第1熱交換器であり、
前記インバータユニットは、前記筐体の内部において前記外面に隣接する位置に配置され、前記取付面に固定されており、
前記冷却装置は、内部に冷却媒体が流通可能な流路を有し、
前記冷却装置に前記冷却媒体を循環させる冷媒流路と、
前記冷媒流路に設けられ、前記冷却媒体を前記冷却装置に送り出す第1ポンプと、
前記冷媒流路に設けられ、前記冷媒流路を通る前記冷却媒体を冷却する第2熱交換器と、
水面から冷却水を汲み上げて前記第2熱交換器に供給する第2ポンプと、を更に備える、
船舶。
【請求項2】
前記筐体の前記外面に前記インバータユニットに対応するサイズの開口が形成されており、
前記インバータユニットは、前記開口を通じて前記取付面に固定されている、請求項1に記載の船舶。
【請求項3】
記インバータユニットおよび前記冷却装置は、前記中継ボックスにおいて前記第2熱交換器側の位置に配置されている、請求項1又は2に記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、搭載されている操船装置や電動ポンプ、航行灯などの電気機器に電力を供給するため、充放電が可能なバッテリー(二次電池)を備えている。また、近年、内燃機関による駆動力のみならず、電動モータの駆動力をプロペラなどの推進装置に伝達して船舶を推進させる電気推進システムが提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、船舶には、メインコントローラからの制御信号に応じて、前記電動モータの回転速度をインバータ制御するインバータユニットが設けられている。前記インバータユニットは、電動モータの負荷が大きくなると発熱し、また、防水構造を有していないため、従来、防水及び冷却のため、前記インバータユニットは、単独で防水性を有する保護ケースに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-16388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、船舶には、複数の電気機器それぞれに接続される配線を中継するための中継機器(中継端子やリレー、継電器など)を収容する中継ボックスが備えられている。前記中継ボックスは、前記電動モータや前記保護ボックスなどとともに機関室に設けられている。しかしながら、機関室において、前記中継ボックス及び前記保護ボックスを設ける場合、前記中継ボックスと前記保護ボックスとの間を配線で接続する必要があり、配線作業が煩雑である。また、前記中継ボックスから前記保護ボックスまでの配線の引き回しを考慮して各ボックスを配置する必要があり、機関室における各ボックスや他の機器のレイアウトが複雑となり、また、各ボックス間の配線の保護措置も講じる必要がある。
【0006】
本発明の目的は、中継ボックスやインバータユニットなどが配置される収容室における省スペース化を実現するとともに、各機器の配線を簡略化することを実現可能な船舶を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る船舶は、推進装置に駆動力を供給する電動モータを備える。前記船舶は、前記船舶に備えられる複数の電気機器それぞれに接続された配線を中継する中継機器を収容する中継ボックスと、前記電動モータの回転を制御するインバータユニットと、を備える。前記インバータユニットは、前記中継機器とともに前記中継ボックスに収容されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、船舶において、中継ボックスやインバータユニットなどが配置される収容室における省スペース化を実現するとともに、各機器の配線を簡略化することを実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る船舶を示す側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る船舶に適用される電気推進システムを示す図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係る船舶を示す平面図である。
図4A図4Aは、インバータユニットが収容されるジャンクションボックスを示す正面図である。
図4B図4Bは、図4Aの切断面IVB-IVBの断面図であり、ジャンクションボックスの内部断面図が示されている。
図5図5は、インバータユニットの冷却するための冷却経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0011】
[船舶1の構成]
図1は、本発明の実施形態に係る船舶1を示す側面図である。
【0012】
図1に示すように、船舶1は、前後方向D2における所定の長さと、左右方向D3における所定の幅とを有する船体2を備える。なお、図1は、船舶1が水上に正常姿勢で静止しているときの静止状態を示しており、船舶1の上下方向D1は、前記静止状態における上下方向である。
【0013】
船体2には、キャビン3及びデッキ4が設けられている。キャビン3は、船体2における前後方向D2及び左右方向D3の中央部に設けられている。デッキ4は、キャビン3の前方部(船体2の前部)に形成された船首デッキ4Aと、キャビン3の後方部(船体2の後部)に形成された船尾デッキ4Bを有する。また、キャビン3の左右両側方には、船首デッキ4Aと船尾デッキ4Bとを結ぶ通路が設けられている。
【0014】
キャビン3の内部空間3Aには、操船者が着座するための操縦席や、操船者によって操舵される操舵ハンドル46(図2参照)、船速を指示するための船速レバー47(図2参照)などが設けられている。キャビン3は、内部空間3Aの周囲を囲むように設けられる外周フレーム13と、外周フレーム13の上部に設けられる上部フレーム15とを有する。外周フレーム13の前方部及び側方部それぞれには窓17が設けられている。したがって、内部空間3Aへの雨や波しぶきの浸入は、キャビン3によって阻止される。
【0015】
また、キャビン3の後部、つまり、外周フレーム13の後部には、ドアが取り付けられた出入り口が設けられている。また、キャビン3の後部には、キャビン3の外部から操船操作を可能とする操舵装置を備えるアフトステーションボックスが設けられている。
【0016】
船舶1は、船体2の内部(船内)2Aに据付けられたエンジン7及びモータ8などを備える。エンジン7及びモータ8などは、船体2の内部に設けられた機関室20に設けられている。エンジン7及びモータ8などは、船体2の前後方向D2及び左右方向D3の中央部に設けられている。船舶1は、船内機タイプの船舶であり、船尾へ向けて延びるプロペラシャフト9が船底から突出している。プロペラシャフト9の先端にプロペラ10(推進装置の一例)が装着されている。また、船体2の船底後端には旋回舵12が設けられており、旋回舵12の左右回動により船舶1の左右旋回を可能としている。なお、船舶1は、プロペラシャフト9を備えないスタンドライブのタイプの船舶であってもよい。
【0017】
ここで、船舶1は、所謂小型船舶であり、具体的には、スポーツやレクリエーションなどのレジャーに用いられるプレジャーボートである。小型船舶は、総トン数20トン未満の船舶をいうが、スポーツまたはレクリエーションに供する長さ24m未満で国土交通大臣が認める20トン以上の船舶も小型船舶に含まれる。なお、本実施形態では、船舶1が小型船舶である例について説明するが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、本発明は、海、湖、川などの水上に浮かんで移動する船舶であれば如何なる構造や用途の船舶であっても適用可能である。
【0018】
図2は、船舶1に適用される電気推進システム30を示す図である。電気推進システム30は、主として、エンジン7と、推進用のモータ8(電動モータの一例)と、旋回用のモータ11と、エンジン7により駆動される発電機31と、モータ8の回転速度を制御するインバータユニット37(以下、インバータ37と略称する。)と、メインコントローラ43と、エンジンコントローラ39と、を有しており、これらが船体2の内部2A、又は機関室20(図1参照)に設置されている。
【0019】
また、電気推進システム30は、二次電池である複数のバッテリー33(33A,33B)を有している。これらの複数のバッテリー33は、船体2に設けられたバッテリー収容部50(図1参照)の内部、或いは、機関室20に設置されている。また、バッテリー収容部50には、機関室20に設けられた各電気機器や、後述のジャンクションボックス70からの配線を中継して各バッテリー33に接続するジャンクションボックス35が設けられている。
【0020】
発電機31は、エンジン7に連結されており、エンジン7によって回転駆動されることにより発電する。発電機31により発電した電力は、充電のために、モータ8,11の駆動用に用いられる複数のバッテリー33Aと、船内機器用のバッテリー33Bに供給される。詳細には、発電機31により発電した電力は、充電のためにバッテリー33Aに供給されるか、或いは、モータ8,11の駆動制御のために直接にインバータ37に供給される。また、発電機31により発電した電力は、充電のためにバッテリー33Bにも供給される。
【0021】
インバータ37は、モータ8,11の駆動及びその回転速度を制御する。インバータ37は、電動のモータ8を駆動制御する推進用インバータと、電動のモータ11を駆動制御する旋回用インバータとを含む。インバータ37は、例えば、可変電圧可変周波数インバーター(VVVFインバータ)である。
【0022】
モータ8の出力軸にプロペラシャフト9が連結されており、モータ8の駆動によりプロペラ10が回転駆動されて、プロペラ10の回転方向と回転速度に応じた推進力が得られる。また、モータ11の出力軸に旋回舵12(図1参照)の回転軸が連結されており、モータ11の駆動により旋回舵12が回動されて、船舶1が旋回される。
【0023】
エンジン7の運転状態は、エンジンコントローラ39により制御される。バッテリー33Bは、エンジンコントローラ39及び船内機器41に電力を供給する。複数のバッテリー33は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等、種々の形式のものを使用可能である。また、バッテリー33に替えて、キャパシタを用いることもできる。
【0024】
インバータ37には、発電機31により発電した電力が複数のバッテリー33Aを介して、又は発電機31から直接に供給される。このため、インバータ37を構成する推進用インバータ及び旋回用インバータそれぞれに、バッテリー33A及び発電機31それぞれが接続している。本実施形態では、4つのバッテリー33Aが船体2に設けられており、これらがバッテリー収容部50に収容されている。バッテリー33Aとインバータ37との間、及び、発電機31とインバータ37との間には、図示しないスイッチが設けられている。これらのスイッチの切り換えにより、発電機31からインバータ37に電力を直接供給するか、或いは、バッテリー33Aからインバータ37に電力を供給するかを切り換えることができる。
【0025】
各スイッチのオンオフは、メインコントローラ43により制御される。発電機31は、例えば、ブラシ付DCモータと同じ構成を有する。ただし、発電機31は、この構成に限定されるものではなく、例えばACモータの構成を有するものとし、発電機31から発電した電力をインバータまたは整流器で交流から直流に変換後、バッテリー33に充電することもできる。この場合、発電機31とインバータ37との間に別のインバータまたは整流器を設けることもできる。
【0026】
メインコントローラ43及びエンジンコントローラ39は、制御部であり、CPUとメモリと有するマイクロコンピュータを含む。メインコントローラ43は、船内機器41や、現在位置を検出するためのナビゲーションシステム45から検出信号や制御信号等の信号が入力される。更に、メインコントローラ43は、船速レバー47から船速指示が入力され、操舵ハンドル46から旋回指示が入力される。また、メインコントローラ43には、イグニッションスイッチ等の図示しない起動スイッチから起動指示が入力される。
【0027】
メインコントローラ43は、各機器からの信号に基づいて、エンジンコントローラ39と、インバータ37とにそれぞれ対応する制御信号を出力する。例えば、起動スイッチからの起動指示の入力に基づいてエンジンコントローラ39がエンジン7の作動を開始させ、起動停止指示の入力に基づいてエンジンコントローラ39がエンジン7の作動を停止させる。
【0028】
また、船速レバー47からメインコントローラ43に加速または減速の船速指示が入力されると、その入力に基づいてインバータ37における前記推進用インバータが制御される。これにより、モータ8が前記船速指示に応じた回転方向及び回転数となるように回転駆動される。また、操舵ハンドル46からメインコントローラ43に旋回指示が入力されると、その入力に基づいてインバータ37における前記旋回用インバータが制御される。これにより、モータ11が前記旋回指示に応じた回動方向及び回動角となるように回転駆動される。
【0029】
図3は、船舶1を示す平面図である。図3では、キャビン3の図示が省略されている。
【0030】
図3に示すように、機関室20は、上面視において、デッキ4における前後方向D2の中央部に配置されている。機関室20は、デッキ4よりも下方の船体2の内部2Aに区画されている。
【0031】
機関室20には、上述したエンジン7、モータ8、発電機31、メインコントローラ43、船内機器用のバッテリー33Bのほかに、マリンギヤ装置61、ジャンクションボックス70(中継ボックスの一例)、冷却装置90(第1熱交換器の一例)、オイルポンプ101(第1ポンプの一例)、オイルクーラー102(第2熱交換器の一例)、冷却水ポンプ103(第2ポンプの一例)などが設置されている。
【0032】
マリンギヤ装置61は、モータ8の出力軸とプロペラシャフト9(図1参照)との間に設けられており、前記出力軸からの駆動力をプロペラシャフト9に伝達する伝達機構を有する。前記伝達機構は、例えば、複数の伝達ギヤからなる減速機構である。マリンギヤ装置61は、前記伝達機構を収容するとともに、各ギヤを回転可能に支持するギヤボックスを有する。前記ギヤボックスには、冷却媒体としての冷却オイルが通る流路が形成されており、前記冷却オイルによってマリンギヤ装置61が冷却される。
【0033】
[ジャンクションボックス70]
ジャンクションボックス70は、操舵ハンドル46や船速レバー47などの操船装置や、電動ポンプ、航行灯などの複数の電気機器それぞれに接続される配線を中継するための中継機器95(図4A参照)を収容する防水ボックスである。中継機器95は、例えば、中継端子やリレー、継電器などである。機関室20において、エンジン7、モータ8、及びマリンギヤ装置61は、左右方向D3の中央部に設けられている。また、ジャンクションボックス70は、機関室20において、エンジン7の右舷側に設けられている。
【0034】
図4A及び図4Bは、ジャンクションボックス70を示す図である。図4Aは、ジャンクションボックス70のカバー72を取り外したときの正面図であり、図4Bは、切断面IVB-IVBの断面図である。
【0035】
図4A及び図4Bに示すように、ジャンクションボックス70は、ケース本体71(筐体の一例)と、ケース本体71の開口75を閉塞するカバー72とを有する。
【0036】
ケース本体71の底板73に取付板74が固定されている。取付板74は、底板73において、図4Aの紙面右側に配置されている。取付板74に中継機器95が取り付けられる。
【0037】
ケース本体71には、4つの取付座76が設けられている。取付座76がビスなどの締結具によって機関室20の床面に固定される。本実施形態では、ジャンクションボックス70は、ケース本体71の左側(図4Aの紙面左側)が船舶1の船尾側に、ケース本体71の右側(図4Aの紙面右側)が船舶1の船首側となるように機関室20の床面に固定される。
【0038】
図4Aに示すように、ケース本体71には、中継機器95とともに、インバータ37が収容されている。インバータ37は、底板73において、図4Aの紙面左側に配置されている。つまり、ジャンクションボックス70が機関室20に取り付けられた状態で、インバータ37は、ケース本体71の左側(船尾側)に配置されている。
【0039】
図4Bに示すように、ケース本体71の底板73の裏側に冷却装置90が設けられている。冷却装置90は、インバータ37を冷却するものであり、具体的には、内部に冷却媒体が流通可能な流路92を有する熱交換器である。本実施形態では、前記冷却媒体として冷却オイルが用いられる。なお、前記冷却媒体は、冷却オイル以外のもの、例えば、エチレングリコールを主成分とするクーラント液であってもよい。また、冷却装置90は、冷却媒体により熱交換するものに限られず、例えば、複数のフィンを有するアルミなどの金属で形成されたヒートシンクであってもよい。
【0040】
冷却装置90の本体93は、直方体形状の金属製のブロック部材であり、その内部に流路92が形成されている。本体93は、底板73の外面にビスなどの締結部によって固定される。本実施形態では、インバータ37は、ケース本体71の内部において、冷却装置90が取り付けられた底板73に隣接する位置に配置されている。
【0041】
インバータ37は、概ね直方体形状に形成されている。底板73には、インバータ37に対応するサイズの開口73Aが形成されている。開口73Aは、インバータ37が挿通可能なように、インバータ37の外形よりも大きく形成されている。インバータ37は、開口73Aを通じて、冷却装置90の本体93の取付面93Aに接触されており、その状態で、取付面93Aに締結具によって固定されている。
【0042】
図5は、インバータ37の冷却するための冷却経路を示す図である。図5に示すように、冷却装置90の流路92の入口ポート92Aと、出口ポート92Bに冷却媒体の流路としての配管105(冷媒流路の一例)が接続されている。配管105は、オイルクーラー102の入口ポート102A及び出口ポート102Bに接続されており、環状流路を形成している。
【0043】
オイルポンプ101は、前記環状流路に設けられており、具体的には、出口ポート102Bから入口ポート92Aに至る配管105に設けられている。オイルポンプ101によって、前記冷却媒体が入口ポート92Aに送り出される。つまり、オイルポンプ101は、冷却装置90の入口ポート92Aよりも上流側に設けられている。
【0044】
オイルクーラー102は、前記環状流路に設けられており、配管105を通る前記冷却媒体を冷却する熱交換器である。オイルクーラー102には、冷却水ポンプ103によって水面から汲み上げられた水(例えば海水)が供給され、オイルクーラー102内を通過した後に、船体2から排水される。
【0045】
本実施形態では、冷却装置90とオイルクーラー102との間の配管105の取付作業、及び配管105の配設を容易にするために、冷却装置90は、ケース本体71の左側(船尾側)、つまり、オイルクーラー102側に配置される。また、冷却装置90による冷却対象であるインバータ37も、ケース本体71の左側(船尾側)、つまり、オイルクーラー102側に配置される。
【0046】
以上説明したように、本実施形態の船舶1は、機関室20にジャンクションボックス70が設けられており、また、ジャンクションボックス70にインバータ37が設けられている。そのため、船舶1において、インバータ37を単独で収容する保護ケースが機関室20に設けられる場合に比べて、機関室20を省スペース化することができる。また、前記保護ケースとジャンクションボックス70とが機関室20に設けられる従来構成に比べて、各機器間の配線を簡略化することができ、作業者による配線作業が容易となる。
【0047】
また、インバータ37を冷却するための冷却装置90がジャンクションボックス70内に配置されていないため、冷却媒体の漏れによる短絡事故などを防止できる。
【0048】
また、インバータ37は、ケース本体71の内部から冷却装置90の本体93の取付面93Aに締結具によって直接に固定されている。そのため、インバータ37の熱を効率的に放熱することができる。また、インバータ37は、開口73Aを通じて取付面93Aに固定されているため、ジャンクションボックス70を機関室20の床面から取り外した後、冷却装置90とインバータ37とを一体にしたまま、ジャンクションボックス70のケース本体71から取り外すことができる。
【符号の説明】
【0049】
1 :船舶
2 :船体
8 :モータ
20 :機関室
30 :電気推進システム
33 :バッテリー
35 :ジャンクションボックス
37 :インバータユニット
39 :エンジンコントローラ
41 :船内機器
43 :メインコントローラ
70 :ジャンクションボックス
71 :ケース本体
72 :カバー
73 :底板
73A :開口
74 :取付板
75 :開口
76 :取付座
90 :冷却装置
92 :流路
92A :入口ポート
92B :出口ポート
93 :本体
93A :取付面
95 :中継機器
101 :オイルポンプ
102 :オイルクーラー
102A :入口ポート
102B :出口ポート
103 :冷却水ポンプ
105 :配管
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5