(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】栄養組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/22 20060101AFI20240129BHJP
A61K 31/23 20060101ALI20240129BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240129BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240129BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240129BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240129BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240129BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240129BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240129BHJP
A23L 33/10 20160101ALI20240129BHJP
A23L 33/12 20160101ALI20240129BHJP
A23L 33/17 20160101ALI20240129BHJP
A23L 33/125 20160101ALI20240129BHJP
A23L 33/15 20160101ALI20240129BHJP
A23L 33/16 20160101ALI20240129BHJP
【FI】
A61K31/22
A61K31/23
A61K9/48
A61K9/06
A61K47/02
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/00
A23L33/10
A23L33/12
A23L33/17
A23L33/125
A23L33/15
A23L33/16
(21)【出願番号】P 2020188063
(22)【出願日】2020-11-11
(62)【分割の表示】P 2017002060の分割
【原出願日】2011-02-22
【審査請求日】2020-12-11
(32)【優先日】2010-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512218946
【氏名又は名称】ティーデルタエス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】クラーク キーラン
【審査官】参鍋 祐子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-520454(JP,A)
【文献】特開平10-313819(JP,A)
【文献】特表2001-515510(JP,A)
【文献】国際公開第2004/108740(WO,A1)
【文献】特開平08-191664(JP,A)
【文献】特開2008-263825(JP,A)
【文献】国際公開第2008/074473(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0013339(US,A1)
【文献】特表2009-532496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00
A61K 9/00
A61K 47/00
A23L 33/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)ブタン-1,3-ジオールのヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体;
ii)炭素数5~12の鎖長を有する脂肪酸を含む中鎖トリグリセリド;及び
iii)香味料
を含み、前記ii)中鎖トリグリセリドの対応する脂肪酸を含んでもよい、官能的に許容される組成物であって、使用者が1用量に体重1キログラムあたり少なくとも100mgのケトン体を摂取する量で投与される、組成物。
【請求項2】
使用者が1用量に体重1kgあたり300~750mgの量でケトン体を摂取する量で投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
少なくとも5gのケトン体の1日摂取量を提供する量で投与される、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
20~200gのケトン体の1日摂取量を提供する量で投与される、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が固体形態である、カプセル封入されている又はゲルである、請求項1~
4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
組成物の30~95質量%の濃度のケトン体を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物及びハイドロゲルを含む、食品、補助食品、健康補助食品、機能食品、栄養補助食品又は飲料。
【請求項8】
ハイドロゲルが、架橋ポリカルボキシレートホモポリマー又はコポリマーのポリマーを含む、請求項
7に記載の食品、補助食品、健康補助食品、機能食品、栄養補助食品又は飲料。
【請求項9】
治療によりヒト又は動物の体を処置する方法において使用される、請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
認知機能障害の治療、心臓効率、脳代謝効率の改善又は神経変性疾患の効果の減少において使用するための、請求項
9に記載の組成物。
【請求項11】
アルツハイマー病又はパーキンソン病の治療において使用するための、請求項
9に記載の組成物。
【請求項12】
筋障害又は疲労の治療において使用するための、請求項
9に記載の組成物。
【請求項13】
疲労下の認知機能を維持若しくは改善し、又は疲労下での認知機能への悪影響を減少させるための、請求項1~
6、
9~
12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~
6、
9~
13のいずれか1項に記載の組成物、並びにタンパク質、炭水化物、糖、脂質、繊維質、ビタミン及びミネラルから選択される1つ以上の栄養成分を含む、栄養組成物。
【請求項15】
認知機能障害、心臓疾患の治療、脳代謝効率の改善若しくは神経変性疾患の治療又は筋障害若しくは疲労の治療における使用のための薬剤の製造における、請求項1~
6、
9~
13のいずれか1項に記載の組成物の使用。
【請求項16】
ケトン体、中鎖トリグリセリド、香味料及びハイドロゲルを含む、官能的に許容される組成物を製造する方法であって、請求項1~
6、
9~
13のいずれか1項に記載の組成物にハイドロドロゲルを含ませ、ハイドロゲルを含む組成物を少なくとも1週間保存することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は栄養組成物に関し、特にケトン体を含む官能的に許容される組成物、組成物の製造方法、及び被験者の血漿中ケトン濃度の循環を上昇させる組成物の使用に関する。
ケトン体は、脂肪酸レベルが体内で上昇したときに生成され、エネルギーを得るために体内で代謝される。ケトン体は、被験者の血漿中で循環する遊離脂肪酸レベルを減少させるのに適切なものとして、及びケトン体の摂取は、身体及び認識能力の促進並びに心血管疾患、糖尿病の治療並びにミトコンドリアの機能障害及び疾患の治療並びに筋肉疲労及び障害の治療などの様々な臨床上の利点をもたらしうるものとして開示されてきた。
【背景技術】
【0002】
WO2004/108740は、ケトン体の血中濃度を上昇させるのに効果的な(R)-3-ヒドロキシブチラート誘導体を含む化合物及び組成物、並びにそのような化合物及び組成物を栄養補助剤又は病状を治療するために使用する方法を開示する。(R)-3-ヒドロキシブチラート誘導体及びこれらの誘導体を含む組成物は、アセトアセテート及び(R)-3-ヒドロキシブチラートのようなケトン体の前駆物質としての役割を果たすことができ、及び被験者に投与されたときに上昇したケトン体の血中濃度をもたらすと記載されている。
WO2004/105742は、筋肉、特に心筋若しくは骨格筋障害又は疲労又はミトコンドリアの機能障害の治療又は予防のために、被験者の血漿中で循環する遊離脂肪酸を減少させる、例えばケトン体、サリチル酸、ニコチン酸、チアゾリジンジオン及びフィブラート系医薬などの化合物の使用について開示する。水、糖質炭水化物及び血漿中で循環する遊離脂肪酸を減少させる化合物を含む、運動中又は運動後の水分補給のための液体組成物もまた、開示される。
しかしながら、ケトン体の特定の治療法及び他の利点は知られているものの、それらは概して、とりわけケトンエステルは、味がまずく、強い負の官能特性を有する。従って、有益な効果を提供するための十分なケトン体の提供には問題があり、ケトン及びそれらのエステルの摂取は、それらの極めて受け入れ難い味覚により、一般的に慣習的な食品の一部としては知られていない。結果として、使用者若しくは患者の適切な投薬計画の順守、又は患者の服薬順守を確実にすることは非常に困難となりうる。
【0003】
所望の治療法及び他の利点を得るため、ケトン体は一般的に血漿中に閾値で、例えば少なくとも1mMで存在する必要があり、所望の血漿中濃度を提供して、所望の効果を提供するのに十分なケトン体の摂取を確実にすることの困難が生じる。所望のケトン体を十分に高い濃度で使用者に供給して、所望の効果を提供するための、味のまずさをより抑えた手段を提供する必要性が存在する。
許容可能な保存期間及び生成物の安定性を有し、及び直接又は液体の担体、例えば水との組み合わせで容易に摂取可能である、製剤の提供もまた望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ここで我々は、ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体などの成分及び香味料、とりわけ苦味のある香味料、の特定の組み合わせを選択することにより、ケトンを所望の濃度で血漿中に送る、官能的に許容される組成物が得られることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、第1の側面において、ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体又はケトン体前駆物質、香味料を含み、及びタンパク質、炭水化物、糖、脂質、繊維質、ビタミン及びミネラルの1つ以上を含んでいてもよい、官能的に許容される組成物を提供する。
本明細書で使用される用語「ケトン」、「ケトン体」(“ketone body”又は“ketone bodies”)は、ケトン又はケトン体の前駆物質である化合物又は種、すなわち、ケトンの前駆物質でケトンに転換又は代謝されうる化合物又は種を意味する。本発明は、ケトン体又はその前駆物質の一部又は全体としてのヒドロキシブチラートエステルの存在を必要とする。
「官能的に許容される」により、我々は、組成物が、味覚、色調、感触及びにおいの許容可能な知覚特性を有すべきであることを意味する。組成物の官能的許容性又は別の方法は、個人的な味覚などの外的要因を考慮した、使用者による主観的な評価である。本発明において、官能的許容性は、例えば本明細書の実施例9に記載されるような目隠し試験におけるボランティアのサンプル集団を利用する味覚調査を実施することにより判断される。
【0007】
本発明はまた、本発明の組成物含む官能的に許容される生成物、及び組成物を摂取するための投薬計画の指示(例えば使用者が1日に体重1キログラムあたり少なくとも100mgのケトンを摂取する)を提供し、ここで組成物は、ケトンを最大50%の濃度で含み、指示に従って組成物を摂取することにより少なくとも0.1mM、好ましくは少なくとも0.2mM、より好ましくは少なくとも1mM及び最も有利には少なくとも3mMの血漿中ケトン濃度を提供する。
適切には、組成物は、血漿中ケトン濃度が8mMを超えないような、及び望ましくは5mMを超えないような量で摂取される。
ケトンの血漿中濃度は個人の体重に依存し、我々は、体重1キログラムあたり少なくとも300mgのケトンが、ケトン約1.5mMの血漿中濃度を提供することを発見した。
ケトンの血漿中濃度は市販の試験キット、例えばBayer, Inc.から入手可能なKetostixにより測定してもよい。
適切には、摂取の指示には、1日に本発明の組成物を1用量以上摂取するための指示を含む。1日1用量は、使用者が投薬計画を順守する可能性が高いという利点を提供する。有利には、組成物の1日の摂取は、複数の用量で摂取され、1用量において提供されるよりもより均一なケトン濃度を提供する。好ましくは少なくとも2用量、より好ましくは2~8用量、例えば3~6用量が1日に摂取される。適切には用量は、血中ケトン含有量のより均一な濃度を維持するよう一定間隔で摂取されるが、使用者は血液にケトンを「提供」して疲労又は認知障害の出現を和らげるため、予想される疲労又は考えられる認識機能の低下の前に組成物の1用量を摂取してもよい。
本発明は、さらに、用法においてケトン体又はケトン体前駆物質の投与方法を含む。ここで用法は、1用量に体重1kgあたり少なくとも100mg、好ましくは少なくとも300~750mg/kgの量でケトン体又はケトン体前駆物質を含む、官能的に許容される組成物を1日に少なくとも1用量投与することを含む。
【0008】
組成物中のケトン体の濃度は、適切には、組成物が固体形態か液体形態かにより異なる。組成物が液体形態である場合、適切には、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体を組成物の少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%及び最大で95質量%含む。例えば組成物が液体組成物を作るために液体を用いて使用されることを意図した乾燥粉末である場合には、乾燥組成物の15~30質量%の濃度が適切でありうるが、固形の棒又は生成物の形態は、適切には、組成物の30~95質量%、特には50~95質量%を含む。組成物が液体形態である場合、組成物は、適切には、ケトン体を液体組成物の少なくとも1質量%、例えば3~7質量%の濃度で含むが、組成物が単回用量として又は所望の血中ケトン濃度に到達するために複数のより少ない用量で摂取されることを意図されているかによって、より高く、例えば組成物の最大50質量%であってもよい。
液体形態における組成物は、適切には、適切な液体、例えば水、果汁又は牛乳により、好ましくは乾燥組成物対液体が1:1~1:10の割合で、より好ましくは1:3~1:7で希釈された乾燥組成物を含む。官能的に許容されるケトン体の濃度は、正確な組成物及びその形態並びに組成物の他の成分のマスキング効果によって異なる。
ケトン体及びとりわけケトンエステルの苦味は、組成物中のケトン体の濃度が増加すると、使用者が組成物を許容できないくらいまずいと感じるリスクが高くなることを意味する。組成物中のケトンの濃度は、従って、状況に応じて及び意図された投薬計画の不順守のリスクを考慮して選択される。
【0009】
我々は、ケトンエステルが、ケトンの他の形態、例えばトリオリド及びオリゴマーよりもより効率的に消化されることを発見した。比較的容易な消化から恩恵を受けるために、ケトン体は、好ましくはケトンエステルを含む。実用的な利益としては、所定の血漿中ケトン濃度を達成するために、組成物は、別のケトン体が使用された場合よりもより低い濃度でケトンエステルを含むことができ、従って所定の血漿中ケトン濃度を達成するためにより望ましい製剤にすることが可能になる。好ましくは、ケトンエステルは部分エステルを含み、すなわちヒドロキシ基の一部のみがエステル化されているポリオールである。モノエステル、及び2以上のヒドロキシ基がエステル化されているがエステル化されたヒドロキシ基は「ベータ関係(beta-relationship)」にない、すなわちヒドロキシ基が隣接する炭素原子に結合していないエステルが特に好ましい。
【0010】
組成物は、好ましくは十分な量で摂取され、1日あたり少なくとも5gのケトン体、好ましくは1日あたり20~200gのケトン体の平均1日摂取量を提供する。これは少ない回数の用量で摂取されてもよいが、より好ましくは、所望により、味のまずさを軽減するようそれぞれの用量においてより少量のケトンを用い、多い回数の用量で摂取されてもよい。
ケトンエステルは、それにもかかわらず、まだ一般的にヒトの味覚に対して苦いと認識されているため、消化の容易性に関して有益であるが、それらの負の官能特性をさらに緩和することが依然として望まれている。我々は、他のエステルよりもケトンモノエステル、及び好ましくはケトンモノエステルを含むケトンエステルが、より苦味が少ないことを発見した。
【0011】
官能的に許容されるケトン体の濃度は、正確な組成物及びその形態、並びに組成物の他の成分のマスキング効果によって異なる。組成物は固体、例えば、粉末、錠剤、棒、菓子の生成物又は顆粒であってもよく、及び固体の経口剤形としての使用が意図されていてもよい。他の態様においては、個体組成物は使用前に液体、好ましくは水、果実ベースの液体、又は乳製品、例えば牛乳及びヨーグルトと混合されて、使用者に液体飲料を提供してもよい。牛乳、果汁及び水は、組成物の担体であることが特に好ましい。組成物は、所望により、直ぐに摂取可能な形態における液体生成物として、又は使用に際して希釈するのに適切な濃縮物又はペーストとして提供されてもよい。液体組成物との使用のための希釈物は、好ましくは牛乳、果汁、又は水である。
組成物は、カプセル封入する材料及び使用される量が、安全なヒトの摂取に適切であるならば、カプセルに包まれた形態で提供されてもよい。しかしながら、カプセル化は好ましくない。
【0012】
任意のケトン体又はヒトの体にケトンを提供する任意の化合物が組成物に採用されてもよい。好ましくは、ケトンエステル、とりわけケトンモノエステルが採用される。適切なケトン体又はその場でケトン体を提供する化合物の例として、ヒドロキシブチラート及びその誘導体、例えば(R)-3-ヒドロキシブチラート及びその誘導体、(R)-3ヒドロキシブチラートのエステル及び(R)-3-ヒドロキシブチラートのオリゴマーなどのヒドロキシブチラートのエステルが挙げられ、アルコールから誘導されたエステル及び1以上の遊離ヒドロキシ基を含む化合物を含む。適切なアルコールとしては、ブタンジオール、とりわけブタン-1,3-ジオール、アルトロース、アラビノース、デキストロース、エリトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、グロース、イドース、ラクトース、リキソース、マンノース、リビトール、リボース、リブロース、スクロース、タロース、トレオース、キシリトール、キシロースが挙げられる。特に好ましい態様において、ケトンは3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチラートを、特に鏡像異性的に濃縮された形態において含む。
【0013】
我々は、2又は3のβ-ヒドロキシブチラート基の鎖のアルコールでのエステル化から結果として生じるものなどの、特定のケトン体が、苦味を示すことを発見した。例えば、ブタンジオールトリオリドジエステル、β-ヒドロキシブチラートの二量体と4つのヒドロキシ基でエステル化されたフルクトース、2つのβ-ヒドロキシブチラート基と1つのヒドロキシ基でエステル化されたグリセロール及び2つのβ-ヒドロキシブチラート基と1つのヒドロキシ基でエステル化されたブタンジオールである。我々はまた、β-ヒドロキシブチラート基との隣接するヒドロキシ基のエステル化、例えば、1つのβ-ヒドロキシブチラートと3つの各ヒドロキシ基でエステル化されたグリセロールが、苦味をもたらすことを発見した。
我々はまた、苦味が少ないか又は無いのに不愉快である味覚は、ブタンジオールの2つの非隣接ヒドロキシル基における1つのβ-ヒドロキシブチラートのエステル化から生じることを発見した。我々はまた、不愉快ではない「臨床的味覚」は、1,3-ブタンジオールの1つのヒドロキシ基における1つのβ-ヒドロキシブチラートのエステル化及びグリセロールの3つのヒドロキシ基うちの1つにおける1つのβ-ヒドロキシブチラートのエステル化(これはより「臨床的味覚」を提供する)から生じることを発見した。これらのケトン体が好ましいといえる。
D-β-ヒドロキシブチラート-R1,3-ブタンジオールモノエステルが特に好ましい。D-β-ヒドロキシブチラート-R1,3-ブタンジオールモノエステルは、他のケトン体又はケトン体前駆物質との組み合わせにおいて、任意の他のそのようなケトン体よりも少ない量で、又は好ましくは任意のそのような他のケトン体よりも多い量で採用されてもよい。特に好ましい態様においては、D-β-ヒドロキシブチラート-R1,3-ブタンジオールモノエステルが、本発明の組成物中の唯一のケトン体又はケトン体前駆物質である。
適切には、組成物は、ケトンモノエステル以外のケトン体又はケトン体前駆物質を実質的に含まず、好ましくはD-β-ヒドロキシブチラートモノエステル以外のケトン体又はケトン体前駆物質を実質的に含まず、及びより好ましくはD-β-ヒドロキシブチラート-R1,3-ブタンジオールモノエステル以外のケトン体又はケトン体前駆物質を実質的に含まない。
【0014】
β-ヒドロキシブチラートエステルの他の苦味が少ない又は味覚の無い形態として、β-ヒドロキシブチラートの線形オリゴマー及び、β-ヒドロキシブチラートのエタノールエステル(認知機能におけるエタノールの影響、及びその代謝生成物アセテートから結果として生じる予想される生理的能力の低下により、望ましくない)が挙げられる。多い量で供給された場合に有害な生理的影響を引き起こしそうにない、β-ヒドロキシブチラートとアルコールのモノエステル、例えば、グルコースモノエステル及びグリセロールモノエステル及びR1,3-ブタンジオールモノエステルが好ましい。
【0015】
β-ヒドロキシブチラートの線形オリゴマーのより小さいモノマーサイズ、例えば1~9は有毒である可能性があり、9又は10の長さ(mer length)を中心とする混合物は一般的に内臓から吸収しないことから望ましくない。
本発明の組成物は、中鎖トリグリセリド(MCT)及びそれらの対応する脂肪酸を含んでもよい。MCTsは、5~12の炭素原子の鎖の長さを有する脂肪酸を含む。MCTが豊富に含まれている食品は、高い血中ケトン濃度をもたらすことが知られている。適切な中鎖トリグリセリドは、以下の式、CH2R1-CH2R2-CH2R3(式中R1、R2及びR3は、5~12の炭素原子を有する脂肪酸である)により表される。好ましくは、tri-C6:0 MCTが極めて速やかに消化管(gastrointestinal track)により吸収されると報告されることから、R1、R2及びR3が6つの炭素の骨格を含む脂肪酸である(tri-C6:0)、MCTsが採用される。
MCTが採用される場合、適切には、本発明の組成物は、i)ケトン体、好ましくはケトンモノエステル、より好ましくはD-β-ヒドロキシブチラートモノエステル、及びii)MCT、好ましくはtri-C6:0 MCTを含む。
【0016】
本発明の組成物はまた、L-カルニチン又はL-カルニチンの誘導体を含んでもよい。
L-カルニチンの誘導体の例としては、デカノイルカルニチン、ヘキサノイルカルニチン、カプロイルカルニチン、ラウロイルカルニチン、オクタノイルカルニチン、ステアロイルカルニチン、ミリストイルカルニチン、アセチル-L-カルニチン、O-アセチル-L-カルニチン、及びパルミトイル-L-カルニチンが挙げられる。
カルニチンが採用される場合、適切には、本発明の組成物は、i)ケトン体、好ましくはケトンモノエステル、より好ましくはD-β-ヒドロキシブチラートモノエステル、及びii)L-カルニチン又はL-カルニチンの誘導体を含む。
【0017】
さらなる態様においては、組成物は、i)ケトン体、好ましくはケトンモノエステル、より好ましくはD-β-ヒドロキシブチラートモノエステル、ii)MCT、好ましくはtri-C6:0 MCT又はtri-C8:0 MCT及びiii)L-カルニチン又はL-カルニチンの誘導体を含む。
MCT及びL-カルニチン又はその誘導体が採用される場合、適切にはMCTはカルニチンと乳化させる。10~500gの乳化させたMCTは、10~2000mgのカルニチンと組み合わせるのが好ましく、例えば、50gのMCT(95% triC8:0)を500mgのL-カルニチンと組み合わせた50gのモノ及びジグリセリドと乳化させる。
MCTはケトン体よりも多い量で存在してもよいが、ケトン体の量は、MCTの量よりも多いことが好ましい。
【0018】
組成物は適切には、ケトン体の風味のマスキングを助けるためのタンパク源及び甘味料を提供するため、粉ミルク、マルトデキストリン及び糖から選択される1以上の成分を含む。選択された成分により、タンパク質の量は、減らすか又は省いてもよく、例えばマンゴーが採用されて甘味料として作用する場合、粉ミルクは官能的に許容される組成物を提供するためには必要とならない。
組成物はさらに香味料を含む。適切には香味料は、味のよい生成物の提供を助け、市場の要求及びその地域の味覚に応じて選択されてもよい。適切な香味料の例として、イチゴ、バナナ、キャラメル及びラズベリーが挙げられる。
【0019】
我々は、官能特性に関する特別な利点が、苦味のある香味料を採用することにより達成されうることを発見した。どのような論理によっても束縛されないのであれば、苦味香味料に付随する使用者の予想及び味覚は、組成物の知覚を苦味がより少ないものとして表現することを助け、これにより組成物の口当たりを改善し、投与計画に対する不順守のリスクを減らすと考えられる。
苦味香味料は、例えば、甘草、コーヒー、チョコレート及びクランベリーが好ましく、これらはケトン体の効果的なマスキングを提供することが見出された。
【0020】
組成物は、タンパク質、例えばホエイタンパク単離物、nutriose FB06、ビタミン及びミネラルの予混合物及び繊維質の1以上を含んでもよい。好ましい完全に形成された生成物において、組成物は、ケトンに加えて、組成物の口当たりをよくするために十分な、タンパク質、炭水化物、脂質、繊維質、ビタミン、ミネラル、甘味料及び香味料を含む。
適切には、ケトン体は、組成物のカロリー値の少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%及び望ましくは25~35%を提供する。
好ましくは、組成物は、タンパク質を組成物の少なくとも5質量%、より好ましくは少なくとも10質量%の濃度で含む。望ましくは、タンパク質は、組成物の95質量%以下、より望ましくは50質量%以下の濃度で存在する。
好ましくは、組成物は、炭水化物を組成物の少なくとも30質量%、好ましくは少なくとも40質量%の濃度で含む。望ましくは、炭水化物は、組成物の95質量%以下、より望ましくは50質量%以下の濃度で存在する。
好ましくは、組成物は、糖又は甘味料を組成物の少なくとも15質量%、好ましくは少なくとも25質量%の濃度で含む。望ましくは、糖又は甘味料は、組成物の95質量%以下、より望ましくは50質量%以下の濃度で存在する。
好ましくは、組成物は、脂質を組成物の少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%の濃度で含む。望ましくは、脂質は、組成物の95質量%以下、より望ましくは50質量%以下の濃度で存在する。
好ましくは、組成物は、繊維質を組成物の少なくとも2質量%、好ましくは少なくとも4質量%の濃度で含む。望ましくは、脂質は組成物の95質量%以下、より望ましくは50質量%以下の濃度で存在する。
組成物は、好ましくはまた、ビタミン及びミネラルを、24時間での推奨投薬計画に基づいて、推奨1日許容量の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも80%、及び望ましくは100%が組成物の摂取により提供されるような濃度で含む。例えば、推奨投薬計画が、24時間で5回の用量で組成物が摂取されることを定めているならば、それぞれの用量は、ビタミン及びミネラルを、推奨1日許容量の最大で20%を含む。
【0021】
組成物は、適切には、知覚、例えば組成物を摂取する際の質感を向上させるための、当業者に既知の成分を含む。適切な成分として、ガム、乳化剤、安定剤などが挙げられる。
組成物が固体形態である場合、組成物はさらに1以上の以下の成分を含んでもよい:
-希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、サッカロース、セルロース、コーンスターチ又はジャガイモデンプン;
-潤滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム又はカルシウム及び/又はポリエチレングリコール;
-結合剤、例えばデンプン、アラビアガム、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルピロリドン;
-崩壊剤、例えばデンプン、アルギン酸、アルギナート又はデンプングリコール酸ナトリウム;
-発泡剤;
-染料;
-甘味料;
-湿潤剤、例えばレシチン、ポリソルベート、ラウリル硫酸。
【0022】
本発明の好ましい態様において、組成物は薬学的に許容可能な吸着剤を含む。適切には吸着剤は、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質を吸着して、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質を中に含むか、ケトン体又はケトン体前駆物質の不快な風味が、吸着剤なしの同じ組成物の摂取において使用者により認識されるよりも、軽減されたように認識されるような吸着剤である。好ましくは、吸着剤は、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質を保持可能な格子又は空隙を備えている。
食品において使用され又は知られている任意の吸着剤が採用されて、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質の不快な風味を緩和してもよい。適切な吸着剤の例として、ポリマーハイドロゲル、例えば架橋ポリカルボキシレートホモポリマー又はコポリマーのポリマー、包接化合物、環状オリゴ糖、例えばシクロデキストリン、及び粉ミルクが挙げられる。
吸着剤はまた、栄養機能を提供し、例えばタンパク源を提供してもよく、組成物は、タンパク源及び吸着機能の両方を提供する、例えば粉ミルクといった成分を含んでいてもよい。
吸着剤は、特定の剤形によって所望の量で存在してもよく、組成物の5質量%~80質量%、例えば10質量%~50質量%であってもよい。
適切には、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質は、製造時に吸着剤に吸着され、発明者は、吸着剤を含む本発明の所定の組成物において認識される苦味のレベルが、一定期間にわたって、例えば組成物の製造後少なくとも1週間、少なくとも1ヶ月及び少なくとも3ヶ月低減されることを発見した。
【0023】
本発明は、さらなる側面において、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質、香味料及び吸着剤を含む、官能的に許容される組成物の製造方法を提供し、本発明の組成物中に吸着剤を含むこと、及び吸着剤を含む組成物を少なくとも1週間保存することを含む。
苦味の認識レベルは、適切には、定性的、定量的又は半定量的基準によって、例えば以下の実施例9において提示されるような試験パネルを採用することによって測定される。
組成物は、適切には、既知の方法、例えば混合、造粒、凝集、打錠、糖被覆、又は膜被覆の工程により製造されてもよい。
組成物は、固体の形態又は液体組成物の形態、又はゲルであってもよい。
組成物の適切な固体形態として、棒又は使用時に液体、例えば水、牛乳又は果汁と混合するのに適切な粉末が挙げられる。
好ましい態様において、組成物は、固形の棒を含み、前記棒は、ヒドロキシブチラートエステルなどのケトン体又はケトン体前駆物質を組成物中最大で95質量%の濃度で含み、香味料及び必要に応じて吸着剤を含む。好ましくは、ヒドロキシブチラートエステルは、組成物の30~95質量%の濃度で存在する。
液体組成物の適切な形態として、例えば、シロップ、エマルジョン及び懸濁液が挙げられる。適切には、シロップの形態において、組成物は担体としてさらに、例えばサッカロース又はサッカロースとグリセロール及び/又はマンニトール及び/又はソルビトールを含んでいてもよい。懸濁液又はエマルジョンの形態において、組成物は担体として、例えば天然ガム、寒天、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコールを含んでいてもよい。
【0024】
組成物は、バランスの取れた通常の食事と組み合わせて、補助食品又は飲料として摂取されるように形成されてもよく、又は適切に更なる成分と形成されて、使用者の全体的にバランスの取れた食事の中の重要な構成要素を提供してもよい。好ましくは、組成物は、さらなる栄養摂取が必要とならないような、十分にバランスの取れた食事を提供する。十分にバランスの取れた食事により、他の食料品が何らかの理由により利用できないような状況における使用、例えば戦地での軍事的利用、陸地又は空の探検における使用、飢饉又は渇水などの被災地における使用、人里離れた地域において及び治療上の処置又は外科手術前の予備処置において及び経腸栄養法における使用が可能となる。
【0025】
組成物はまた、食品、補助食品、健康補助食品、機能食品若しくは栄養補助食品又はその成分であってもよい。
食品とは、主に1以上の主要栄養素、タンパク質、炭水化物及び脂質から構成される食用材料であり、有機体である体に使用され、成長を維持し、損傷を修復し、生活過程を補助し又はエネルギーを供給する。食品はまた、1以上の微量栄養素、例えばビタミン若しくはミネラル、又は食品添加物、例えば香味料及び着色料を含みうる。本明細書で使用される用語食品はまた、飲料も含む。
組成物が添加剤として組み込まれてもよい食品の例として、スナックバー、シリアル、菓子、及びヨーグルトなどのプロバイオティクス製品が挙げられる。飲料の例としては、清涼飲料、アルコール飲料、エネルギー飲料、乾燥飲料混合物、栄養飲料及び浸出用のハーブティー又は水中で煎出用のハーブの混合物が挙げられる。
栄養補助食品は、疾患の予防又は治療のなどの医学上又は健康上の利点を提供すると考えられる、食品原料、補助食品又は食品である。一般的に、栄養補助食品は、消費者に特定の健康上の利益を与えるために具体的に適合される。栄養補助食品は典型的に、微量栄養素、例えばビタミン、ミネラル、ハーブ又は植生化学物質を、対応する通常の食品において検出されるよりも高い濃度で含む。その濃度は典型的に、単独の供給として又は食事療法若しくは栄養療法の過程の一部として摂取される場合のどちらにおいても、栄養補助食品の意図される健康上の利点を最適化するために選択される。
機能食品は、純粋な栄養供給を超える健康上の利点を消費者に提供するものとして市販される食品である。機能食品は典型的に、栄養上の効果以外の具体的な医学的又は生理学的利点を与える、上記した微量栄養素のような原料を組み込んでいる。機能食品は典型的には包装材料に栄養機能表示を有する。
【0026】
さらなる側面において、本発明は、乾燥成分を液体担体と組み合わせて加工可能な組成物を提供する工程、加工可能な組成物を混合工程に供する工程(例えば凝集)、及び/又は固体組成物を提供するための乾燥工程(例えば噴霧乾燥及び流動層乾燥)を含む、本発明の組成物の製造方法を提供する。
液体担体は適切にはケトン体を含み、又はケトン体は混合段階の前、間又は後に誘導されうる。
適切には、成分は所望の方法で、例えば混合により混ぜ合わせてもよい。乾燥成分は液体担体に個別に、又は2以上の乾燥成分を予混合した混合物の状態で加えてもよく、又は所望により全ての乾燥成分を液体担体に加える前に混合してもよい。液体担体は、適切には、水又はケトン体を含む。好ましい工程において、乾燥成分は、液体担体を加える前に混ぜ合わせておく。液体担体が水を含む場合、水は組成物の乾燥中に少なくとも一部除去され、再水和可能な固体粒子状組成物を提供してもよい。所望により、固体粒子状組成物は、使用時の使用者による再水和用の固体として提供されてもよく、又は使用時の二次的な希釈のためのペースト又は濃縮物を提供するため、例えば十分に又は部分的に水和している固体粒子状組成物による液体生成物として提供されてもよい。
好ましくは、固体組成物は、粒子状形態、例えば粉末及び顆粒であり、自由流動性である。組成物は所望により、液体形態、例えば流動性を有する液体、粘性液体又はペーストであってもよい。
【0027】
本発明の組成物は、ケトンが知られている又は有利な効果を提供しうる、既知の用途に使用されてもよい。組成物は、治療によりヒト又は動物の体を処置する方法において使用されてもよい。好ましい態様において、本発明は、1つ以上の疲労の治療又は緩和、筋障害の治療において、食欲抑制剤として、心血管疾患の治療、心臓効率の改善において、脳代謝効率、糖尿病、心臓欠陥、低体温(hypopyrexia)、甲状腺機能亢進症、代謝症候群X、発熱及び感染症並びにミトコンドリア機能障害に関連する状態の改善において、及び神経変性疾患又は認知機能障害、例えばパーキンソン病及びアルツハイマー病の治療において、又は神経変性疾患の効果の減少において、本発明の組成物の使用を提供する。
組成物は、認知機能の維持又は持続と組み合わせて、疲労の予防、治療又は緩和に特に有益であり、疲労又はストレスの条件下で認知機能の持続が重要である軍事的用途での使用に特に有利である。
【0028】
本発明はさらなる側面において、本発明の組成物及びケトン監視装置、及び必要に応じて、予め決められた血漿中ケトン濃度に到達するために単位体重あたり摂取する組成物の量及び予め決められた濃度で血漿中ケトンを維持するための投薬計画に関する指示を含むキットを提供する。使用者は適切に組成物を摂取し、定期的に彼らの血漿中ケトン濃度を試験して、所望の血漿中ケトン濃度に到達又は維持するためにケトンのさらなる摂取が必要であるかどうかを判断してもよい。
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することにより説明される。
【実施例】
【0029】
[実施例1]
本発明の組成物は、乾燥成分を混合して乾燥粉末を製造することにより、表1に記載される成分を混ぜ合わせて調製した。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0030】
【0031】
100gの粉末組成物を363gの水と混合して、約24gのケトンを含む463gの飲料を提供する。1食1キログラム体重あたり500mgのケトンを得るためには、1食1キログラム体重あたり9.65gの飲料を消費する必要があり、体重70kgの人では675gの飲料に相当する。463gの飲料は、374kcalのエネルギーを含み、体重70kgの人では1食あたり675g用量において545kcalの摂取に相当する。70kgの人に1日2400kcalの摂取を提供するため、3回の食事で1食あたり800kcalのカロリー摂取が必要となる。70kgの人で1食あたりの不足分255kcalは固形食で補ってもよく、固形食1食あたり3,64kcal/kg体重に相当する。
【0032】
[実施例2]
本発明の組成物は、乾燥成分を混合して乾燥粉末を製造することにより、表2に記載される成分を混ぜ合わせて調製した。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え、自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0033】
【0034】
[実施例3]
本発明の組成物を、パイロットスケールの二軸パドルミキサーを使用して乾燥成分を混合し乾燥粉末を製造することにより、表3に記載される成分を混ぜ合わせて調製し、3mmの篩いにかけた。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え、自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0035】
【0036】
[実施例4]
本発明の組成物を、パイロットスケールの二軸パドルミキサーを使用して乾燥成分を混合し乾燥粉末を製造することにより、表4に記載される成分を混ぜ合わせて調製し、3mmの篩いにかけた。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え、自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0037】
【0038】
[実施例5]
本発明の組成物を、パイロットスケールの二軸パドルミキサーを使用して乾燥成分を混合し乾燥粉末を製造することにより、表5に記載される成分を混ぜ合わせて調製し、3mmの篩いにかけた。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え、自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0039】
【0040】
[実施例6]
本発明の組成物を、パイロットスケールの二軸パドルミキサーを使用して乾燥成分を混合し乾燥粉末を製造することにより、表6に記載される成分を混ぜ合わせて調製し、3mmのに篩いにかけた。ケトン体を次に凝集により乾燥組成物に加え、自由流動性粉末を形成した。207gの用量の組成物を水で希釈し、960mlの単回用量の希釈液体組成物を提供した。この液体組成物の3用量は1日で消費され、カロリー摂取量2400カロリーを提供し、ケトンの平均摂取量150g/日を提供した。
【0041】
【0042】
[実施例7]
標準的なヒト被験者(n=18、9人の男性及び9人の女性)が、本発明のミルクベース飲料中のD-β-ヒドロキシブチラート-R1,3-ブタンジオールモノエステルの単回用量を摂取した。彼らの血中D-ヒドロキシブチラート濃度は、その後24時間以上の間隔をあけて測定された。到達最大血漿中ケトン濃度は、140、357又は714mg/kgのケトンエステル用量に対して、それぞれ0.23、0.76及び3.42mMであった。これらの結果は
図1に示される。
【0043】
[実施例8]
処方の単回分の飲料を飲んだ後に、140mg/kg体重が6人、357が6人、及び714mg/kg体重が6人に達成される18人の被験者(1グループあたりn=6)の最大血中ケトン濃度を測定した。結果は
図2に示され、血中ケトン濃度が摂取される用量に依存するという兆候を示した。
【0044】
[実施例9]
実施例3(チョコレート)、実施例4(コーヒー)、実施例5(甘草)及び実施例6(ラズベリー/クランベリー)で記載された組成物を、57人の無作為に選出されたボランティアにより目隠し味覚試験において試験した。ボランティアにそれぞれの組成物の試料を提供し、味覚、におい、感触及び色調を考慮して官能的許容性(1最低、10最高)に関し、それらを1~10にランク付けするように要求した。結果は以下の表7に示され、各香味料に対して1つである4つの結果のそれぞれの縦のグループは、各飲料に対して1人のボランティアにより与えられた4つのランク付けを表す。
【0045】
【0046】
結果が照合され、平均ランクは以下のとおりであった:
ラズベリー及びクランベリー 3.50
チョコレート 4.82
コーヒー 4.60
甘草 3.89
データを1-3、4-7及び8-10のランクに分類し、結果を表8に示す。
【0047】
【0048】
これらの結果は該して、全てが解答者のかなりの割合に対して許容可能であったものの、味覚の解答者が、チョコレート及びコーヒーの方が、ラズベリー及びクランベリー並びに甘草の組成物よりも好ましいと感じたことを明らかにする。表8のグループ分けしたデータは、
図3においてグラフを使って示される。
【0049】
[実施例10]
吸着剤(全乳製粉乳(Lakeland)又は脱脂粉乳(Napier))を含む本発明の組成物は、少なくとも1週間、好ましくは1ヶ月及び好ましくは3ヶ月の期間保管されたときには、新しく調製された生成物と比較して知覚の苦味が徐々に減少することを示す。吸着剤を含む本発明の組成物を一定期間保管することにより、組成物の官能特性が改善されうる。
【0050】
次に、本発明の態様を示す。
1. ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体又はケトン体前駆物質、香味料を含み、及びタンパク質、炭水化物、糖、脂質、繊維質、ビタミン及びミネラルの1つ以上を含んでいてもよい、官能的に許容される組成物。
2. ケトン体又はケトン体前駆物質が組成物の95質量%以下の濃度で存在する、上記1に記載の組成物。
3. ケトン体又はケトン体前駆物質が組成物の50質量%以下の濃度で存在する、上記1又は上記2に記載の組成物。
4. 組成物が固体形態又はゲルである、上記1~3のいずれか1項に記載の組成物。
5. 組成物の30~95質量%の濃度のヒドロキシブチラートエステル、香味料を含み、及び吸着剤を含んでいてもよい、上記4に記載の組成物。
6. 組成物が液体形態であり、ケトン体又はケトン体前駆物質を液体組成物の少なくとも1質量%の濃度で含む、上記1~3のいずれか1項に記載の組成物。
7. 液体成分として水、牛乳又は果汁を含む、液体形態の上記6に記載の組成物。
8. ケトン体又はケトン体前駆物質がケトンエステル又は中鎖トリグリセリドを含む、上記1~7のいずれか1項に記載の組成物。
9. ケトン体又はケトン体前駆物質がケトン部分エステル又はケトンモノエステルを含む、上記1~8のいずれか1項に記載の組成物。
10. ケトン体又はケトン体前駆物質が、(R)-3-ヒドロキシブチラート及びその誘導体、(R)-3-ヒドロキシブチラートのエステル、及び(R)-3-ヒドロキシブチラートのオリゴマーから選択される、上記1~9のいずれか1項に記載の組成物。
11. ヒドロキシブチラートエステルが2つ以上のヒドロキシ基を有するアルコールから誘導される、上記1~10のいずれか1項に記載の組成物。
12. アルコールが、アルトロース、アラビノース、デキストロース、エリトロース、フルクトース、ガラクトース、グルコース、グリセロール、グロース、イドース、ラクトース、リキソース、マンノース、リビトール、リボース、リブロース、スクロース、タロース、トレオース、キシリトール、キシロース及びブタン-1,3-ジオールから選択される、上記10に記載の組成物。
13. ケトン体又はケトン体前駆物質が3-ヒドロキシブチル-(R)-3-ヒドロキシブチラートを含む、上記1~12のいずれか1項に記載の組成物。
14. エステルが鏡像異性的に濃縮された形態である、上記13に記載の組成物。
15. 官能許容性が苦味香味料により提供又は強化される、上記1~14のいずれか1項に記載の組成物。
16. 苦味香味料が、甘草、コーヒー、チョコレート及びクランベリーから選択される、上記15に記載の組成物。
17. ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体又はケトン体前駆物質のための薬学的に許容可能な吸着剤を含む、上記1~16のいずれか1項に記載の組成物。
18. 吸着剤が、ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体又はケトン体前駆物質を保持可能な格子又は空隙を備えている、上記17に記載の組成物。
19. 吸着剤が、ポリマーハイドロゲル、包接化合物、環状オリゴ糖及び粉ミルクから選択される、上記17又は上記18に記載の組成物。
20. ケトンモノエステルを組成物の少なくとも5質量%の濃度、タンパク質を組成物の少なくとも5質量%の濃度、炭水化物を組成物の少なくとも30質量%の濃度、糖又は甘味料を組成物の少なくとも15質量%の濃度で含み、及び苦味香味料を含む、上記1~19のいずれか1項に記載の組成物。
21. 治療によりヒト又は動物の体を処置する方法において使用される、上記1~20のいずれか1項に記載の組成物。
22. 認知機能障害の治療、心臓効率、脳代謝効率の改善又は神経変性疾患の効果の減少において使用するための、上記21に記載の組成物。
23. アルツハイマー病又はパーキンソン病の治療において使用するための、上記22に記載の組成物。
24. 筋障害又は疲労の治療において使用するための、上記21に記載の組成物。
25. 疲労下の認知機能を維持若しくは改善し、又は疲労下での認知機能への悪影響を減少させる、上記1~24のいずれか1項に記載の組成物。
26. 中鎖トリグリセリド(MCT)をさらに含む、上記1~25のいずれか1項に記載の組成物。
27. MCTが式CH2R1-CH2R2-CH2R3を有し、式中R1、R2及びR3が、5~12の炭素原子を有する脂肪酸である、上記26に記載の組成物。
28. L-カルニチン又はL-カルニチン誘導体をさらに含む、上記26又は27に記載の組成物。
29. 上記1~28のいずれか1項に記載の組成物、並びにタンパク質、炭水化物、糖、脂質、繊維質、ビタミン及びミネラルから選択される1つ以上の栄養成分を含む、栄養組成物。
30. 上記1~29のいずれか1項に記載の組成物、及び使用者が1日に体重1キログラムあたり少なくとも100mgのケトン体又はケトン体前駆物質を摂取し、指示に従って組成物を摂取することにより少なくとも0.1mMの血漿中ケトン濃度を提供するような、組成物を摂取するための投薬計画の指示を含む、官能的に許容される生成物。
31. 投薬計画においてケトンエステルを投与する方法であって、投薬計画が、ケトン体又はケトン体前駆物質を1用量に体重1kgあたり少なくとも100mgの量で含む上記1~29のいずれか1項に記載の官能的に許容される組成物を、1日に少なくとも1用量投与することを含む方法。
32. 組成物が十分なケトンエステルを含み、投薬計画が1日あたり20~200gのケトンエステルの平均1日摂取量を提供するものである、上記31に記載の方法。
33. 認知機能障害、心臓疾患の治療、脳代謝効率の改善若しくは神経変性疾患の治療又は筋障害若しくは疲労の治療における使用のための薬剤の製造における、上記1~29のいずれか1項に記載の組成物の使用。
34. ヒドロキシブチラートエステルを含むケトン体又はケトン体前駆物質、香味料及び吸着剤を含む、官能的に許容される組成物を製造する方法であって、上記1~29のいずれか1項に記載の組成物に吸着剤を含ませ、吸着剤を含む組成物を少なくとも1週間保存することを含む方法。