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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電子放出電極及びマグネトロン
(51)【国際特許分類】
   H01J 23/04 20060101AFI20240129BHJP
   H01J 23/05 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01J23/04
H01J23/05
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020201039
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2022088906
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2023-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】吉田 学史
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 久生
(72)【発明者】
【氏名】木村 重哉
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-140815(JP,A)
【文献】特開2004-241352(JP,A)
【文献】特開2009-026594(JP,A)
【文献】特開平10-302608(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0125827(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 1/00-1/98,
5/00-9/02,
19/00-25/78,
37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパイラル状の第1部材であって、前記第1部材の表面は、第1領域及び第2領域を含む、前記第1部材と、
前記第1領域に設けられた第1ダイヤモンド部材であって、前記第1ダイヤモンド部材は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1ダイヤモンド部材と、
前記第2領域に設けられた第2ダイヤモンド部材であって、前記第2ダイヤモンド部材は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及びインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む、前記第2ダイヤモンド部材と、
を備えた電子放出電極。
【請求項2】
前記第2領域を基準にした前記第2ダイヤモンド部材の第2高さは、前記第1領域を基準にした前記第1ダイヤモンド部材の第1高さよりも高い、請求項1記載の電子放出電極。
【請求項3】
前記第2領域の面積の、前記第1領域の面積に対する比は、0.1以下である、請求項1または2に記載の電子放出電極。
【請求項4】
前記第2ダイヤモンド部材は、前記第1部材の延びる方向に沿って延びる、請求項1~3のいずれか1つに記載の電子放出電極。
【請求項5】
前記第1領域は、前記第1部材の延びる方向を中心とする周の一部に沿って設けられ、
前記第2領域は、前記周の他部に設けられた、請求項1~3のいずれか1つに記載の電子放出電極。
【請求項6】
複数の前記第1ダイヤモンド部材を備え、
前記表面は、複数の前記第1領域を含み、
前記第2領域は、前記複数の前記第1領域の1つと前記複数の第1領域の別の1つとの間にあり、
前記複数の第1ダイヤモンド部材の1つは、前記複数の前記第1領域の前記1つに設けられ、
前記複数の第1ダイヤモンド部材の別の1つは、前記複数の前記第1領域の前記別の1つに設けられた、請求項1または2に記載の電子放出電極。
【請求項7】
前記第2領域の面積の、前記複数の第1領域の面積の和に対する比は、0.1以下である、請求項6記載の電子放出電極。
【請求項8】
複数の前記第2ダイヤモンド部材を備え、
前記表面は、複数の前記第2領域を含み、
前記複数の前記第1領域の前記1つは、前記複数の前記第2領域の1つと前記複数の第2領域の別の1つとの間にあり、
前記複数の第2ダイヤモンド部材の1つは、前記複数の前記第2領域の前記1つに設けられ、
前記複数の第2ダイヤモンド部材の別の1つは、前記複数の前記第2領域の前記別の1つに設けられた、請求項6記載の電子放出電極。
【請求項9】
前記複数の第2領域の面積の和の、前記複数の第1領域の面積の和に対する比は、0.1以下である、請求項8記載の電子放出電極。
【請求項10】
第1電極端子と、
第2電極端子と、
をさらに備え、
前記第1部材は導電性であり、
前記第1電極端子は、前記第1部材の第1端部と電気的に接続され、
前記第2電極端子は、前記第1部材の第1他端部と電気的に接続された、請求項1~9のいずれか1つに記載の電子放出電極。
【請求項11】
前記第1端部と前記第1他端部との間に供給される電流により前記第1部材の温度が上昇し、
前記第1ダイヤモンド部材及び前記第2ダイヤモンド部材から電子が放出される、請求項10記載の電子放出電極。
【請求項12】
筒状の第1部材であって、前記第1部材の表面は、第1領域及び第2領域を含む、前記第1部材と、
前記第1領域に設けられた第1ダイヤモンド部材であって、前記第1ダイヤモンド部材は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む、前記第1ダイヤモンド部材と、
前記第2領域に設けられた第2ダイヤモンド部材であって、前記第2ダイヤモンド部材は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及びインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む、前記第2ダイヤモンド部材と、
導電性でスパイラル状の第2部材と、
第1電極端子と、
第2電極端子と、
を備え、
前記第1電極端子は、前記第2部材の第2端部と電気的に接続され、
前記第2電極端子は、前記第2部材の第2他端部と電気的に接続され、
前記第1部材は、前記第2部材と前記第1ダイヤモンド部材との間、及び、前記第2部材と前記第2ダイヤモンド部材との間にある、電子放出電極。
【請求項13】
前記第2端部と前記第2他端部との間に供給される電流により加熱される前記第2部材により前記第1部材の温度が上昇し、
前記第1ダイヤモンド部材及び前記第2ダイヤモンド部材から電子が放出される、請求項12記載の電子放出電極。
【請求項14】
前記第1ダイヤモンド部材は、第1多結晶を含む、請求項1~13のいずれか1つに記載の電子放出電極。
【請求項15】
前記第1多結晶は、(111)面を含み、
前記第1多結晶は(100)面を含まない、または、前記第1多結晶における(100)面の割合は、前記第1多結晶における(111)面の割合よりも低い、請求項14記載の電子放出電極。
【請求項16】
前記第1ダイヤモンド部材は、前記第1多結晶の表面に設けられ水素を含む第1水素領域を含む、請求項14または15に記載の電子放出電極。
【請求項17】
前記第2ダイヤモンド部材は、第2多結晶を含む、請求項1~16のいずれか1つに記載の電子放出電極。
【請求項18】
前記第2多結晶は、(111)面を含み、
前記第2多結晶は(100)面を含まない、または、前記第2多結晶における(100)面の割合は、前記第2多結晶における(111)面の割合よりも低い、請求項17記載の電子放出電極。
【請求項19】
前記第2ダイヤモンド部材は、前記第2多結晶の表面に設けられ水素を含む第2水素領域を含む、請求項17または18に記載の電子放出電極。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1つに記載の電子放出電極と、
前記電子放出電極と対向する対向電極であって、前記電子放出電極と前記対向電極との間に空隙が設けられた前記対向電極と、
を備えたマグネトロン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電子放出電極及びマグネトロンに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、マグネトロンに、熱電子素子などの電子放出電極が設けられる。電子放出電極において効率の向上が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-241352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、効率を向上可能な電子放出電極及びマグネトロンを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、電子放出電極は、第1部材と、第1ダイヤモンド部材と、第2ダイヤモンド部材と、を含む。前記第1部材の表面は、第1領域及び第2領域を含む。前記第1ダイヤモンド部材は、前記第1領域に設けられる。前記第1ダイヤモンド部材は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第1元素を含む。前記第2ダイヤモンド部材は、前記第2領域に設けられる。前記第2ダイヤモンド部材は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及びインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む第2元素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1(a)~図1(d)は、第1実施形態に係る電子放出電極を例示する模式図である。
図2図2(a)及び図2(b)は、第1実施形態に係る電子放出電極を例示する模式的断面図である。
図3図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る電子放出電極の一部を例示する模式的斜視図である。
図4図4(a)~図4(d)は、第2実施形態に係る電子放出電極を例示する模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、第2実施形態に係る電子放出電極を例示する模式的断面図である。
図6図6(a)及び図6(b)は、第3実施形態に係るマグネトロンを例示する模式図である。
図7図7は、第3実施形態に係るマグネトロンを例示する模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1(a)~図1(d)は、第1実施形態に係る電子放出電極を例示する模式図である。
図1(a)は、側面図である、図1(b)は、図1(a)の一部10Aが抽出されて描かれた斜視図である。図1(c)は、電子放出電極の1つの例の断面図である。図1(d)は、電子放出電極の別の例の断面図である。
【0009】
図1(a)及び図1(b)に示すように、実施形態に係る電子放出電極110は、第1部材10と、第1ダイヤモンド部材21と、第2ダイヤモンド部材22と、を含む。
【0010】
図1(a)に示すように、この例では、第1部材10は、スパイラル状である。第1部材10は、例えば、フィラメントである。第1部材10は、例えば、タングステンを含む。第1部材10は、例えば、酸化トリウム及び酸化セリウムよりなる群から選択された少なくとも1つと、タングステンと、を含んでも良い。第1部材10におけるタングステンの濃度は例えば、90%以上である。これらの材料の融点は高い。例えば、融点が1200℃以上の任意の材料が第1部材10として用いられても良い。第1部材10は、例えば、導電性である。
【0011】
図1(b)~図1(d)に示すように、第1部材10の表面10Fは、第1領域11及び第2領域12を含む。図1(b)に示すように、この例では、第1領域11及び第2領域12は、第1部材10の延びる方向Dx1に沿っている。
【0012】
第1ダイヤモンド部材21は、第1領域11に設けられる。第1ダイヤモンド部材21は、ダイヤモンドと第1元素とを含む。第1元素は、窒素、リン、ヒ素、アンチモン及びビスマスよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第1ダイヤモンド部材21は、例えば、n形である。
【0013】
第2ダイヤモンド部材22は、第2領域12に設けられる。第2ダイヤモンド部材22は、ダイヤモンドと第2元素とを含む。第2元素は、ホウ素、アルミニウム、ガリウム及びインジウムよりなる群から選択された少なくとも1つを含む。第2ダイヤモンド部材22は、例えばp形である。
【0014】
図1(a)に示すように、電子放出電極110は、第1電極端子T1及び第2電極端子T2を含んでも良い。第1電極端子T1は、第1部材10の第1端部10eと電気的に接続される。第2電極端子T2は、第1部材10の第1他端部10fと電気的に接続される。これらの端子に電流が供給されることで、第1部材10の温度が上昇する。第1部材10の温度の上昇に伴って、第1ダイヤモンド部材21及び第2ダイヤモンド部材22から電子が放出される。
【0015】
例えば、第1ダイヤモンド部材21から熱電子が放出される。例えば、第1ダイヤモンド部材21から、1次電子が放出される。例えば、第2ダイヤモンド部材22から、2次電子が放出される。例えば、電子放出電極110がマグネトロンなどの陰極に応用されても良い。この場合に、例えば、第1ダイヤモンド部材21から放出された電子が、第2ダイヤモンド部材22に入射する。これにより、第2ダイヤモンド部材22から2次電子が放出される。
【0016】
例えば、導電性ダイヤモンドは、負の電子親和力を持つ。このような材料において、伝導帯の準位は、真空の準位よりも高い。このような材料において、電子が放出されやすい。導電性ダイヤモンドを含む陰極により、第1部材10の温度が低くても電子が放出され易い。例えば、1次電子を出射する導電性ダイヤモンドとして、n形のダイヤモンドが用いられる。
【0017】
例えば、電子放出電極110がマグネトロンなどの陰極に応用された場合、放出された熱電子の一部はサイクロトロン運動し、逆衝撃現象によって陰極に衝突する。陰極が2次電子の放出効率の高い材料を含むことで、効率的に2次電子を放出させることができる。2次電子を放出する材料として、導電性ダイヤモンドを用いることができる。2次電子を放出する材料として、例えば、p形のダイヤモンドが用いられる。
【0018】
実施形態によれば、第1ダイヤモンド部材21からの電子の放出に加えて、第2ダイヤモンド部材22の電子の放出が利用できる。これにより、高い効率の電子放出が得られる。実施形態によれば、効率を向上可能な電子放出電極が提供される。
【0019】
例えば、p形のダイヤモンドの代わりに金属酸化物などを設ける参考例が考えられる。この参考例においては、2次電子の放出の効率が低い。実施形態において、p形の第2ダイヤモンド部材22が設けられることで、2次電子が高い効率で放出できる。
【0020】
図1(c)及び図1(d)に示すように、第1ダイヤモンド部材21及び第2ダイヤモンド部材22は、互いに離れている。
【0021】
第1ダイヤモンド部材21及び第2ダイヤモンド部材22のいずれかの表面は、凹凸を含んでも良い。これらの凹凸は、例えば、ダイヤモンドの結晶粒に起因しても良い。
【0022】
例えば、第2ダイヤモンド部材22は、50μm以下の深さの凹凸形状(突起形状を含む)を含んでも良い。凹凸形状により、2次電子が放出され易くなる。
【0023】
図1(c)及び図1(d)に示すように、第1領域11(第1部材10の表面10F)を基準にした第1ダイヤモンド部材21の高さを第1高さH1とする。第1高さH1は、例えば、第1ダイヤモンド部材21の厚さに対応する。第2領域12(第1部材10の表面10F)を基準にした第2ダイヤモンド部材22の高さを第2高さH2とする。第2高さH2は、例えば、第2ダイヤモンド部材22の厚さに対応する。実施形態において、第2高さH2は、第1高さH1よりも高いことが好ましい。これにより、第2ダイヤモンド部材22の表面の面積が実質的に増える。これにより、例えば、第2ダイヤモンド部材22への電子の入射、及び、第2ダイヤモンド部材22からの電子の出射がより効率的に行われる。より高い効率が得られる。
【0024】
実施形態において、第2高さH2は、第1高さH1の1.5倍以上10倍以下である。例えば、第2高さH2は、5μm以下である。これにより、第2ダイヤモンド部材22からの電子の出射が容易になる。
【0025】
図1(c)に示すように、第2ダイヤモンド部材22の頂部は、錐状でも良い。第2ダイヤモンド部材22の頂部は、面状でも良い。
【0026】
実施形態において、第2領域12の面積の、第1領域11の面積に対する比は、0.1以下であることが好ましい。例えば、第1領域11の面積は、第2領域12の面積の10倍以上である。例えば、第1ダイヤモンド部材21の面積は、第2ダイヤモンド部材22の面積の10倍以上である。これにより、第1ダイヤモンド部材21から放出される1次電子の量が多くなる。1次電子の量が多くなることで、第2ダイヤモンド部材22への電子の入射の量が多くなる。その結果、第2ダイヤモンド部材22から出射される2次電子の量が多くなる。
【0027】
図1(b)に示すように、この例では、第2ダイヤモンド部材22は、第1部材10の延びる方向Dx1に沿って延びる。この例では、第1領域11は、第1部材10の延びる方向Dx1を中心とする周の一部に沿って設けられている、第2領域12は、周の他部に設けられている。
【0028】
実施形態において、第1部材10の表面10Fは、複数の第1領域11を含んでも良い。例えば、複数の第1ダイヤモンド部材21が設けられても良い。第2領域12は、複数の第1領域11の1つと複数の第1領域11の別の1つとの間に設けられても良い。例えば、複数の第1ダイヤモンド部材21の1つは、複数の第1領域11の1つに設けられる。複数の第1ダイヤモンド部材21の別の1つは、複数の第1領域11の別の1つに設けられる。例えば、第2領域12の面積の、複数の第1領域11の面積の和に対する比は、0.1以下である。例えば、第2ダイヤモンド部材22の面積の、複数の第1ダイヤモンド部材21の面積の和に対する比は、0.1以下である。
【0029】
実施形態において、第1部材10の表面10Fは、複数の第2領域12を含んでも良い。例えば、複数の第2ダイヤモンド部材22が設けられても良い。例えば、複数の第1領域11の1つは、複数の第2領域12の1つと、複数の第2領域12の別の1つとの間にあっても良い。複数の第2ダイヤモンド部材22の1つは、複数の第2領域12の1つに設けられる。複数の第2ダイヤモンド部材22の別の1つは、複数の第2領域12の別の1つに設けられる。例えば、複数の第2領域12の面積の和の、複数の第1領域11の面積の和に対する比は、0.1以下である。例えば、複数の第2ダイヤモンド部材22の面積の和の、複数の第1ダイヤモンド部材21の面積の和に対する比は、0.1以下である。
【0030】
図2(a)及び図2(b)は、第1実施形態に係る電子放出電極を例示する模式的断面図である。
図2(a)及び図2(b)に示すように、第1ダイヤモンド部材21は、第1多結晶21cを含む。第1ダイヤモンド部材21は、第1水素領域21fを含んでも良い。第1水素領域21fは、第1多結晶21cの表面に設けられる。第1水素領域21fは、水素を含む。第1水素領域21fは、例えば、水素終端領域である。
【0031】
図2(a)及び図2(b)に示すように、第2ダイヤモンド部材22は、第2多結晶22cを含む。第2ダイヤモンド部材22は、第2水素領域22fを含んでも良い。第2水素領域22fは、第2多結晶22cの表面に設けられる。第2水素領域22fは、水素を含む。第2水素領域22fは、例えば、水素終端領域である。
【0032】
ダイヤモンド部材が多結晶を含むことで、例えば、均質なダイヤモンド部材が得易くなる。ダイヤモンド部材が水素領域を含むことで、例えば、効率良い電子の放出が安定して得易くなる。
【0033】
図3(a)~図3(c)は、第1実施形態に係る電子放出電極の一部を例示する模式的斜視図である。
これらの図は、第1多結晶21cまたは第2多結晶22cを例示している。
【0034】
図3(a)の例においては、第1多結晶21c及び第2多結晶22cの少なくともいずれかは、(100)面及び(111)面を含む。(111)面の割合は、(100)面の割合よりも高い。
【0035】
図3(b)の例においても、第1多結晶21c及び第2多結晶22cの少なくともいずれかは、(100)面及び(111)面を含む。図3(b)の例において、(111)面の割合は、(100)面の割合よりもさらに高い。
【0036】
図3(c)の例においても、第1多結晶21c及び第2多結晶22cの少なくともいずれかは、(111)面を含む。(100)面が実質的に設けられていない。
【0037】
例えば、(111)面の割合が高いことで、第2ダイヤモンド部材22からの2次電子の出射がより効率的に行われる。
【0038】
例えば、第2多結晶22cは、(111)面を含む。第2多結晶22cは(100)面を含まない。または、第2多結晶22cにおける(100)面の割合は、第2多結晶22cにおける(111)面の割合よりも低い。これにより、高い効率での電子の放出が得易い。
【0039】
(第2実施形態)
図4(a)~図4(d)は、第2実施形態に係る電子放出電極を例示する模式図である。
図4(a)は、断面及び側面図である、図4(b)は、電子放出電極の一部の斜視図である。図4(c)は、電子放出電極の1つの例の断面図である。図4(d)は、電子放出電極の別の例の断面図である。
【0040】
図4(a)及び図4(b)に示すように、実施形態に係る電子放出電極111は、第1部材10と、第1ダイヤモンド部材21と、第2ダイヤモンド部材22と、第2部材15と、を含む。
【0041】
第2部材15は、導電性である。第2部材15は、例えば、タングステンを含む。第2部材15は、例えば、酸化トリウム及び酸化セリウムよりなる群から選択された少なくとも1つと、タングステンと、を含んでも良い。第2部材15におけるタングステンの濃度は例えば、90%以上である。これらの材料の融点は高い。例えば、融点が1200℃以上の任意の材料が第2部材15として用いられても良い。この例では、第2部材15は、スパイラル状である。
【0042】
図4(a)に示すように、電子放出電極111は、第1電極端子T1と第2電極端子T2とを含んでも良い。第1電極端子T1は、第2部材15の第2端部15eと電気的に接続される。第2電極端子T2は、第2部材15の第2他端部15fと電気的に接続される。
【0043】
図4(a)及び図4(b)に示すように、この例では、第2部材15の周りに、筒状(円筒状を含む)の第1部材10が設けられる。図4(c)及び図4(d)に示すように、例えば、第1部材10は、第2部材15と第1ダイヤモンド部材21との間、及び、第2部材15と第2ダイヤモンド部材22との間にある。第2部材15は、筒状の第1部材10の中にある。
【0044】
例えば、第1電極端子T1及び第2電極端子T2を介して、第2端部15eと第2他端部15fとの間に電流が供給される。この電流により、第2部材15が加熱される。加熱された第2部材15により、第1部材10の温度が上昇する。第1部材10の温度の上昇に伴って、第1ダイヤモンド部材21及び第2ダイヤモンド部材22から電子が放出される。例えば、第1ダイヤモンド部材21から1次電子が放出される。例えば、第2ダイヤモンド部材22から2次電子が放出される。
【0045】
図4(c)及び図4(d)に示すように、第1領域11(第1部材10の表面10F)を基準にした第1ダイヤモンド部材21の高さを第1高さH1とする。第2領域12(第1部材10の表面10F)を基準にした第2ダイヤモンド部材22の高さを第2高さH2とする。第2高さH2は、第1高さH1よりも高いことが好ましい。より高い効率が得られる。
【0046】
図4(c)及び図4(d)に示すように、第1部材10の表面10Fは、複数の第1領域11を含んでも良い。例えば、第2領域12は、複数の第1領域11の1つと複数の第1領域11の別の1つとの間に設けられても良い。複数の第1ダイヤモンド部材21の1つは、複数の第1領域11の1つに設けられる。複数の第1ダイヤモンド部材21の別の1つは、複数の第1領域11の別の1つに設けられる。例えば、第2領域12の面積の、複数の第1領域11の面積の和に対する比は、0.1以下である。例えば、第2ダイヤモンド部材22の面積の、複数の第1ダイヤモンド部材21の面積の和に対する比は、0.1以下である。
【0047】
図4(c)及び図4(d)に示すように、第1部材10の表面10Fは、複数の第2領域12を含んでも良い。例えば、複数の第1領域11の1つは、複数の第2領域12の1つと、複数の第2領域12の別の1つとの間にあっても良い。複数の第2ダイヤモンド部材22の1つは、複数の第2領域12の1つに設けられる。複数の第2ダイヤモンド部材22の別の1つは、複数の第2領域12の別の1つに設けられる。例えば、複数の第2領域12の面積の和の、複数の第1領域11の面積の和に対する比は、0.1以下である。例えば、複数の第2ダイヤモンド部材22の面積の和の、複数の第1ダイヤモンド部材21の面積の和に対する比は、0.1以下である。
【0048】
図5(a)及び図5(b)は、第2実施形態に係る電子放出電極を例示する模式的断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示すように、第1ダイヤモンド部材21は、第1多結晶21cを含む。第1ダイヤモンド部材21は、第1水素領域21fを含んでも良い。第1水素領域21fは、第1多結晶21cの表面に設けられる。第1水素領域21fは、水素を含む。図5(a)及び図5(b)に示すように、第2ダイヤモンド部材22は、第2多結晶22cを含む。第2ダイヤモンド部材22は、第2水素領域22fを含んでも良い。第2水素領域22fは、第2多結晶22cの表面に設けられる。第2水素領域22fは、水素を含む。均質なダイヤモンド部材が得易くなる。例えば、効率良い電子の放出が安定して得易くなる。
【0049】
(第3実施形態)
図6(a)及び図6(b)は、第3実施形態に係るマグネトロンを例示する模式図である。
図6(a)は、斜視図である。図6(b)は、断面図である。図6(a)及び図6(b)に示すように、実施形態に係るマグネトロン210は、第1実施形態または第2実施形態に係る電子放出電極と、対向電極40と、を含む。この例では、電子放出電極110が描かれている。対向電極40は、電子放出電極110と対向する。電子放出電極110と対向電極40との間に空隙40Gが設けられる。空隙40Gにおける気圧は1気圧よりも低い。電子放出電極110は、例えば、陰極である。対向電極40は、例えば、陽極である。
【0050】
図6(a)に示すように、第1磁石51及び第2磁石52が設けられる。第1磁石51から第2磁石52への方向をZ軸方向とする。Z軸方向に対して垂直な1つの方向をX軸方向とする。Z軸方向及びX軸方向に対して垂直な方向をY軸方向とする。X-Y平面において、対向電極40は、電子放出電極110と対向する。
【0051】
図6(b)に示すように、これらの磁石による磁界により、電子放出電極110から出射した電子に基づく電子雲45が形成される。例えば、電子雲45の電子は、サイクロトロン運動をする。サイクロトロン運動をした電子の一部が逆衝撃現象により、電子放出電極110に入射する。実施形態においては、電子雲45に含まれる電子は、電子放出電極110の第2ダイヤモンド部材22に入射し、第2ダイヤモンド部材22から2次電子が出射される。
【0052】
図6(b)に示すように、対向電極40に空洞共振器41が設けられる。出力アンテナ55から、マイクロ波が出射する。
【0053】
実施形態によれば、効率を向上可能なマグネトロンを提供できる。
【0054】
図7は、第3実施形態に係るマグネトロンを例示する模式的断面図である。
図7に示すように、実施形態に係るマグネトロン210において、筐体56が設けられる。筐体56中に電子放出電極110及び対向電極40が設けられる。筐体56中の気圧は、1気圧よりも低い。
【0055】
実施形態においては、低温で熱電子を得ることができる。熱陰極の周辺部材を高融点金属から安価な金属へ代替できる。例えば、フィンなどの冷却構造を簡素化することができる。
【0056】
実施形態によれば、効率を向上可能な電子放出電極及びマグネトロンを提供することができる。
【0057】
本願明細書において、「電気的に接続される状態」は、複数の導電体が物理的に接してこれら複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。「電気的に接続される状態」は、複数の導電体の間に、別の導電体が挿入されて、これらの複数の導電体の間に電流が流れる状態を含む。
【0058】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、電子放出電極に含まれる、部材、ダイヤモンド部材、及び端子などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0059】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0060】
その他、本発明の実施の形態として上述した電子放出電極及びマグネトロンを基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての電子放出電極及びマグネトロンも、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0061】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと解される。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
10…第1部材、 10A…一部、 10F…表面、 10e…第1端部、 10f…第1他端部、 11、12…第1、第2領域、 15…第2部材、 15e…第2端部、 15f…第2他端部、 21、22…第1、第2ダイヤモンド部材、 21c、22c…第1、第2多結晶、 21f、22f…第1、第2水素領域、 40…対向電極、 41…空洞共振器、 45…電子雲、 51、52…第1、第2磁石、 110、111…電子放出電極、 210…マグネトロン、 Dx1…第1方向、 H1、H2…第1、第2高さ、 T1、T2…第1、第2電極端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7