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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】免震装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240129BHJP
   F16F 1/40 20060101ALI20240129BHJP
   F16B 9/02 20060101ALI20240129BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
F16F15/04 P
F16F1/40
F16B9/02 A
E04H9/02 331A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020205379
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092525
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 昌弘
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-179256(JP,A)
【文献】特開2001-074096(JP,A)
【文献】特開2001-343040(JP,A)
【文献】特開平11-029986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/04
F16F 1/40
F16B 9/02
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体の板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部弾性板と前記内部弾性板よりも剛性の高い板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部剛性板が装置軸方向に沿って交互に積層されると共に、前記内部弾性板の前記孔と前記内部剛性板の前記孔により装置軸方向に貫通したプラグ挿入孔が形成された弾性積層体と、
前記プラグ挿入孔の内側面に形成された雌ねじ部と、
前記内部弾性板よりも高剛性かつ前記内部剛性板よりも低剛性に形成され、装置軸方向に沿って略円柱状に形成された軸部と前記軸部の外側面に前記雌ねじ部と螺合可能に形成された雄ねじ部を備え、前記プラグ挿入孔に螺入されたプラグと、
を含んで構成された免震装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、円形孔を有する複数の薄いゴム板と複数の薄い鋼板とが交互に積み重ねられて加硫接着され、複数のゴム板の円形孔と複数の鋼板の円形孔により上下に貫通した鉛プラグ挿入孔が形成された積層体と、積層体の鉛プラグ挿入孔に装着された円柱状の鉛プラグと、を備える免震用積層ゴム装置の製造方法が開示されている。これにより、免震用積層ゴム装置は、鉛プラグの外周部が鉛プラグ挿入孔の内周部にぴったりと合って、鉛プラグの外周部が鋼板の内周部に密着すると共に、鉛プラグの外周部がゴム層の中にやや食い込んだ状態で製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-74096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、長さと幅の寸法に比べて高さ寸法が大きくなるような建造物では、建造物が横転するような大きな地震荷重等が生じると、免震装置に作用する建物上下方向の引張荷重が大きくなる。特許文献1に記載された免震装置をこのような建造物に適用した場合、外周部がゴム層の中にやや食い込んだ状態あるいは食い込まずに鉛プラグ挿入孔に装着されているだけの鉛プラグは引張荷重により建物上方へ向けて変位し易く、免震装置の機能を低下させる可能性がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、装置軸方向の荷重によるプラグの装置軸方向の変位を抑制又は防止できる免震装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る免震装置は、弾性体の板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部弾性板と前記内部弾性板よりも剛性の高い板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部剛性板が装置軸方向に沿って交互に積層されると共に、前記内部弾性板の前記孔と前記内部剛性板の前記孔により装置軸方向に貫通したプラグ挿入孔が形成された弾性積層体と、前記内部弾性板よりも高剛性かつ前記内部剛性板よりも低剛性に形成されると共に前記プラグ挿入孔に挿入されたプラグと、を含んで構成され、前記プラグは、装置軸方向に沿って略円柱状に形成され、外側部が前記複数の内部剛性板と密着する軸芯部と、前記軸芯部の外側部が前記内部弾性板へ向けて突出されると共に前記複数の内部剛性板の間に各々押入された複数の押入部と、を備えている。
【0007】
第1の態様に係る免震装置によれば、プラグは、内部剛性板よりも低剛性に形成され、外側部が複数の内部剛性板と各々密着する軸芯部を備えている。また、プラグは、内部弾性板よりも高剛性に形成され、軸芯部の外側部が内部弾性板へ向けて突出されると共に複数の内部剛性板の間に各々押入された複数の押入部を備えている。このため、プラグは弾性積層体のプラグ挿入孔に隙間なく挿入され、免震装置の装置軸方向に沿って荷重が作用した場合に、プラグの軸芯部と押入部は弾性積層体との間に抗力を生じさせる。これにより、装置軸方向の荷重によるプラグの装置軸方向の変位を抑制又は防止することができ、免震装置の免震力を維持することができる。
【0008】
第2の態様に係る免震装置は、第1の態様に係る免震装置において、前記プラグの前記軸芯部の外径及び装置径方向に沿った断面の面積と前記プラグの前記複数の押入部の数及び前記内部剛性板の装置径方向内側の端部における装置軸方向の厚さ寸法は、装置軸方向に沿った荷重に対する前記押入部のせん断強度が前記プラグの引張強度を上回るように設定されている。
【0009】
第2の態様に係る免震装置によれば、装置径方向外側へ向けて突出されると共に内部弾性板に押入された押入部は、免震装置の装置軸方向に荷重が作用した際に抗力を生じさせ、プラグの装置軸方向に沿った変位を抑制又は防止する。このため、押入部には装置軸方向に沿った荷重に対するせん断強度を確保する必要がある。せん断強度は、プラグの軸芯部の外径と押入部の数及び内部剛性板の装置径方向内側の端部における装置軸方向の厚さ寸法により変化する。また、プラグ自体の引張強度は、プラグの軸芯部の装置径方向に沿った断面の面積により変化する。このため、プラグの外径及び断面積と押入部の数及び装置軸方向の厚さ寸法を適切に設定することによってプラグ自体が引張破断する荷重よりも小さい荷重では押入部のせん断破壊を抑制又は防止することができる。これにより、装置軸方向に沿った荷重によるプラグの装置軸方向の変位を適切に抑制又は防止することができ、免震装置の免震力を維持することができる。
【0010】
第3の態様に係る免震装置は、第1の態様又は第2の態様に係る免震装置において、前記内部剛性板の装置径方向内側の端部における前記複数の押入部の装置軸方向の厚さ寸法は、前記複数の内部剛性板の装置軸方向の間隔と各々略同一とされている。
【0011】
第3の態様に係る免震装置によれば、内部剛性板の装置径方向内側の端部における押入部の装置軸方向の厚さ寸法は、内部剛性板の装置軸方向の間隔と各々略同一に形成されている。このため、装置軸方向に沿った荷重に対する押入部のせん断強度を向上させることができる。これにより、装置軸方向に沿った荷重が作用した場合に、押入部はせん断強度を適切に確保した上で弾性積層体との間に抗力を生じさせ、装置軸方向の荷重によるプラグの装置軸方向の変位を抑制又は防止することができる。
【0012】
第4態様に係る免震装置の取付構造は、弾性体の板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部弾性板と前記内部弾性板よりも剛性の高い板により形成され、略円形の孔を備えた複数の内部剛性板が装置軸方向に沿って交互に積層されると共に、前記内部弾性板の前記孔と前記内部剛性板の前記孔により装置軸方向に貫通したプラグ挿入孔が形成された弾性積層体と、前記プラグ挿入孔の内側面に形成された雌ねじ部と、前記内部弾性板よりも高剛性かつ前記内部剛性板よりも低剛性に形成され、装置軸方向に沿って略円柱状に形成された軸部と前記軸部の外側面に前記雌ねじ部と螺合可能に形成された雄ねじ部を備え、前記プラグ挿入孔に螺入されたプラグと、を含んで構成されている。
【0013】
第4態様に係る免震装置の取付構造によれば、プラグ挿入孔の内側面には装置軸方向に沿って雌ねじ部が形成され、プラグの軸部の外側面には雌ねじ部と螺合可能な雄ねじ部が形成されている。このため、プラグを弾性積層体のプラグ挿入孔に容易に螺入することができ、装置軸方向に沿って荷重が作用した場合にプラグと弾性積層体との間に抗力を生じさせる。これにより、装置軸方向の荷重によるプラグの装置軸方向の変位を抑制又は防止することができ、免震装置の免震力を維持することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明に係る免震装置は、装置軸方向の荷重によるプラグの装置軸方向の変位を抑制又は防止できるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態に係る免震装置を装置上方側から見た斜視図である。
図2図1の2-2断面線に沿った免震装置の縦断面図である。
図3図2のA部分の拡大図である。
図4】第2実施形態に係る免震装置の縦断面図である。
図5図4のB部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、図1図3を用いて、本発明の第1実施形態に係る免震装置10について説明する。ここで、図中矢印DAは免震装置10の装置軸方向かつ装置上下方向(建物上下方向)を示し、矢印DRは免震装置10の装置径方向を示す。
【0017】
図1には、免震装置10を装置上方側から見た斜視図が示されている。免震装置10は、弾性積層体12を備えている。弾性積層体12は、装置軸方向(建物上下方向)には、例えば、橋、家等の構造物や重量物(いずれも図示省略)を支え、装置径方向(建物水平方向)には、例えば、地震、外部振動力等による構造物や重量物の揺れを吸収するように構成されている。
【0018】
図2には、免震装置10をその中心軸CLを通過するように装置軸方向(装置上下方向)かつ装置径方向に沿って切断した縦断面図が示されている。免震装置10は、その装置軸方向が建物上下方向(鉛直方向)と一致するように構造物又は重量物に設置される。
【0019】
弾性積層体12の上面には、当該上面の外形よりも大きな底面積を有して略平板状に形成された金属製の上部フランジ板14(図1参照)が固定されている。上部フランジ板14は、図示しないボルトを介して構造物又は重量物の下部に埋め込まれた上部支持部材(図示省略)に固定されている。これにより、免震装置10の上端部は、構造物又は重量物に固定されている。また、上部フランジ板14の装置径方向の略中央部の装置上方側には、装置上下方向(厚さ方向)に沿ってその中心軸を免震装置10の中心軸CLと一致させた略円形の上側孔14Aが形成されている。上側孔14Aの装置下方側には、その中心軸を免震装置10の中心軸CLと一致させ、上側孔14Aよりも内径の短い略円形の下側孔14Bが装置軸方向に沿って形成されている。下側孔14Bの内径は、後述するプラグ30の軸芯部32の外径と略同一に形成されている。
【0020】
弾性積層体12の下面には、当該下面の外形よりも大きな底面積を有して略平板状に形成された金属製の下部フランジ板16(図1参照)が固定されている。下部フランジ板16は、図示しないボルトを介して、構造物又は重量物が設置される基礎に埋め込まれた下部支持部材(いずれも図示省略)に固定されている。これにより、免震装置10の下端部は、構造物又は重量物が設置される基礎に固定されている。また、下部フランジ板16の装置径方向の略中央部の装置下方側には、装置上下方向(厚さ方向)に沿ってその中心軸を免震装置10の中心軸CLと一致させた略円形の下側孔16Aが形成されている。下側孔16Aの装置上方側には、その中心軸を免震装置10の中心軸CLと一致させ、下側孔16Aよりも内径の短い略円形の上側孔16Bが装置軸方向に沿って形成されている。上側孔16Bの内径は、プラグ30の軸芯部32の外径と略同一に形成されている。
【0021】
図2に示されるように、弾性積層体12は、略円板状に形成されたゴム製(弾性体)の内部弾性板18と略円板状に形成された内部弾性板よりも剛性の高い鋼製の内部剛性板20が装置軸方向(装置上下方向)に沿って交互に積層されることにより一体に形成されている。ここでいう剛性とは、主に、せん断剛性及び曲げ剛性を意味する。また、積層された内部弾性板18と内部剛性板20の外周部には、内部弾性板18と一体成形されたゴム製の被覆ゴム22が外周部全体を覆うように設けられている。なお、弾性積層体12の外形は略円形に限られず、四角や多角形であってもよい。
【0022】
ゴム製の内部弾性板18は、装置軸方向に沿って構造物等を支持し、装置径方向に沿って所定の距離を変位することが可能となる弾性を有している。鋼製の内部剛性板20は、構造物等から受ける装置軸方向の荷重や構造物等の装置径方向に沿った変位により生じる装置径方向の荷重に対して変形しない程度の剛性を有している。なお、以下の説明では、内部剛性板20は鋼製であるとして説明するが、これに限らず、内部剛性板として作用する荷重に対して適切に剛性を確保することができる鋼製以外の金属板が用いられてもよい。
【0023】
内部弾性板18の略中央部には、孔としての第1孔部24が装置軸方向(厚さ方向)に沿って貫通形成されている。また、内部剛性板20の略中央部には、孔としての第2孔部26が装置軸方向に沿って貫通形成されている。第1孔部24と第2孔部26は、内部弾性板18と内部剛性板20が積層された際に外形が装置径方向に重なるように各々形成されている。このため、弾性積層体12の略中央部には、第1孔部24と第2孔部26が交互に積層されることにより装置軸方向に貫通したプラグ挿入孔28が形成されている。
【0024】
プラグ挿入孔28の内部には、装置軸方向に沿ってプラグ30が挿入されている。プラグ30は、内部弾性板18よりも高剛性かつ内部剛性板20よりも低剛性に構成されている。このため、プラグ30は、例えば、鉛、錫、樹脂等により構成されている。
【0025】
プラグ30の装置径方向略中央部には、装置軸方向に沿って延在された略円柱状の軸芯部32が形成されている。軸芯部32の外側部は、プラグ30がプラグ挿入孔28に挿入された際に複数の内部剛性板20と密着するように形成されている。
【0026】
軸芯部32の外側部のうち複数の内部弾性板18と対向する部分には、内部弾性板18に第1孔部24から径方向外側まで各々押入された複数の押入部34が形成されている。プラグ30は、プラグ挿入孔28に挿入され、その軸方向(装置軸方向)に沿って軸圧縮力が、例えば、工具等により付与(負荷)される。このため、軸芯部32の外側部のうち複数の内部弾性板18と対向する部分は、塑性変形により内部弾性板18へ向けて(装置径方向外側へ向けて)突出されると共に複数の内部剛性板20の間に各々押入されている。
【0027】
図3に示されるように、複数の押入部34の装置軸方向の厚さ寸法Bは、装置軸方向(建物上下方向)に隣接する内部剛性板20の装置径方向内側の端部EDにおける複数の内部剛性板20の装置軸方向の間隔DDと略同一となるように各々形成されている。このため、複数の押入部34の装置軸方向の厚さ寸法Bは、押入部34が押入されている内部弾性板18の装置軸方向の厚さ寸法とも各々略同一とされている。これにより、複数の押入部34は、装置径方向内側の端部EDにおいて内部剛性板20の装置軸方向の間隔DDを塞ぐように形成されている。
【0028】
プラグ30の軸芯部32の外径DI及び装置径方向に沿った断面の面積AS(いずれも図2参照)とプラグ30の複数の押入部34の数N及び内部剛性板20の装置径方向内側の端部EDにおける装置軸方向の厚さ寸法Bは、装置軸方向に沿った荷重に対する押入部34のせん断強度がプラグ30の引張強度を上回るように設定されている。
【0029】
引張強度の評価指標となるプラグ30の引張荷重により破断する際の荷重(ここでは、破断引張荷重WTBと称する)は、例えば、WTB=AS×σと近似的に表すことができる。ここで、ASは、プラグ30の軸芯部32の装置径方向に沿った断面積(有効断面積)、σは、プラグ30の引張破断応力を各々表す。
【0030】
せん断強度の評価指標としてプラグ30の押入部34にせん断き裂が生じる荷重(以下、せん断破壊荷重WSFと称する)用いることができる。押入部34は内部剛性板20に沿って装置径方向に延在されていることから押入部34の内部剛性板20との接触面の法線方向は装置軸方向と略同一とすると、せん断破壊荷重WSFは、例えば、WSF=π×DI×B×τ×Nと近似的に表すことができる。この近似式は、せん断破壊によるき裂が押入部34の付け根部分、すなわち、装置径方向内側の端部EDにおいて装置軸方向に沿って生じるとの仮定に基づいて導かれる。ここで、πは円周率、DIはプラグ30の軸芯部32の外径、Bは押入部34の装置径方向内側の端部EDにおける装置軸方向の厚さ寸法、Nは軸芯部32の外側部に形成された押入部34の数、τは押入部34のせん断破壊応力を各々表す。
【0031】
ここでは、せん断破壊荷重WSFを破断引張荷重WTBよりも大きくする(WSF>WTB)ことにより、装置軸方向に沿った荷重に対する押入部34のせん断強度がプラグ30の引張強度を上回るように設定されている。このため、WSF>WTBから、(τ/σ)×(π×DI×B×N)>ASの関係が導かれる。ここで、せん断破壊応力τと引張破断応力σの比τ/σは、プラグ30を構成する材料に依存する係数αと置き換えることができるため(α×π×DI×B×N)>ASの関係が成り立つ。このため、軸芯部32の外径DA及び断面積ASと押入部34の数N及び装置軸方向の厚さ寸法Bを、(α×π×DI×B×N)>ASの関係を満たして設定することにより押入部34のせん断強度がプラグ30の引張強度を上回るように設定することができる。なお、係数αについては、プラグ30を構成する材料の物性値に基づいて算定されてもよく、室内実験等により算出されてもよい。
【0032】
プラグ30の軸芯部32の上端部は、上部フランジ板14の下側孔14Bに挿入されている。また、軸芯部32の装置上方側における上部フランジ板14の上側孔14Aの内部には、軸芯部32の上端部と接合又は一体成形された略円板状の上側蓋部36が配置されている。
【0033】
プラグ30の軸芯部32の下端部は、下部フランジ板16の上側孔16Bに挿入されている。また、軸芯部32の装置下方側における下部フランジ板16の下側孔16Aの内部には、軸芯部32の下端部と接合又は一体成形された略円板状の下側蓋部38が配置されている。
【0034】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係る免震装置10の作用並びに効果について説明する。
【0035】
本実施形態に係る免震装置10によれば、プラグ30は、内部剛性板20よりも低剛性に形成され、外側部が複数の内部剛性板20と各々密着する軸芯部32を備えている。また、プラグ30は、内部弾性板18よりも高剛性に形成され、軸芯部32の外側部が内部弾性板18へ向けて突出されると共に複数の内部剛性板20の間に各々押入された複数の押入部34を備えている。このため、プラグ30は弾性積層体12のプラグ挿入孔28に隙間なく挿入され、免震装置10の装置軸方向に沿って荷重が作用した場合にプラグ30の軸芯部32と押入部34は弾性積層体12との間に抗力を生じさせる。これにより、装置軸方向の荷重によるプラグ30の装置軸方向の変位を抑制又は防止することができ、免震装置10の免震力を維持することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る免震装置10によれば、装置径方向外側へ向けて突出されると共に内部弾性板18に押入された押入部34は、免震装置10の装置軸方向に荷重が作用した際に抗力を生じさせ、プラグ30の装置軸方向に沿った変位を抑制又は防止する。ここで、せん断強度を評価する指標となるせん断破壊荷重WSFは、例えば、WSF=π×DI×B×τ×Nと近似的に表すことができる。また、プラグ30の引張強度を評価するための破断引張荷重WTBは、例えば、WTB=AS×σと近似的に表すことができる。このため、(α×π×DI×B×N)>ASの関係を満たすようにプラグ30の軸芯部32の外径DI及び断面積ASと押入部34の数N及び装置軸方向の厚さ寸法Bを適切に設定することによってプラグ30自体が引張破断する荷重よりも小さい荷重では押入部34のせん断破壊を抑制又は防止することができる。これにより、装置軸方向に沿った荷重によるプラグ30の装置軸方向の変位を適切に抑制又は防止することができ、免震装置10の免震力を維持することができる。
【0037】
さらに、本実施形態に係る免震装置10によれば、内部剛性板20の装置径方向内側の端部EDにおける押入部34の装置軸方向の厚さ寸法Bは、内部剛性板20の装置軸方向の間隔DDと略同一に各々形成されている。このため、装置軸方向に沿った荷重に対する押入部34のせん断強度を向上させることができる。これにより、装置軸方向に沿った荷重が作用した場合に、押入部34はせん断強度を適切に確保した上で弾性積層体12との間に抗力を生じさせ、装置軸方向の荷重によるプラグ30の装置軸方向の変位を抑制又は防止することができる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る免震装置10は、装置軸方向の荷重によるプラグ30の装置軸方向の変位を抑制又は防止できる。
【0039】
(第2実施形態)
以下、図4図5を用いて、本発明の第2実施形態に係る免震装置40について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0040】
本実施形態に係る免震装置40によれば、プラグ挿入孔28には、その内側面に沿って雌ねじ部42が形成されている。また、プラグ44には、内部弾性板18よりも高剛性かつ内部剛性板20よりも低剛性に形成されると共に装置軸方向に沿って略円柱状に形成された軸部46と軸部46の外側面に雌ねじ部42と螺合可能に形成された雄ねじ部48が設けられている。
【0041】
本実施形態に係る免震装置40によれば、プラグ挿入孔28の内側面には雌ねじ部42が形成され、プラグ44の軸部46には雌ねじ部42と螺合可能な雄ねじ部48が形成されている。このため、プラグ44を弾性積層体12のプラグ挿入孔28に容易に螺入することができ、装置軸方向に沿って荷重が作用した場合にプラグ44と弾性積層体12との間に抗力を生じさせる。これにより、装置軸方向の荷重によるプラグ44の装置軸方向の変位を抑制又は防止することができ、免震装置40の免震力を維持することができる。
【0042】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0043】
なお、ここでは、図2に示されるように、内部弾性板18と内部剛性板20は、装置径方向の厚さ寸法が略同一となるように表されているが、これに限らず、例えば、内部弾性板の厚さ寸法が内部剛性板の厚さ寸法よりも厚く形成されてもよい。
【0044】
さらに、ここでは、内部弾性板18と内部剛性板20は円板状に形成されているとして説明したが、これに限らず、内部弾性板と内部剛性板は、例えば、矩形状等に形成されてよい。
【0045】
また、ここでは、上部フランジ板14と下部フランジ板16は略平板状に形成されているとして説明したが、これに限らず、上部フランジ板と下部フランジ板は、例えば、円板状等に形成されてよい。
【0046】
さらに、ここでは、内部剛性板20の装置径方向内側の端部EDにおける押入部34の厚さ寸法Bは、内部剛性板20の間隔DDと略同一に各々形成されているとして説明したが、例えば、押入部の数を増やすことにより、厚さ寸法は内部剛性板の間隔よりも短く形成されてもよい。
【0047】
また、ここでは、せん断破壊荷重WSFと破断引張荷重WTBの近似式を定義することにより装置軸方向に沿った荷重に対する押入部34のせん断強度がプラグ30の引張強度を上回るように設定できるとして説明したが、これに限らず、例えば、有限要素法による直接解析や模型実験等に基づいて強度評価を行った上でプラグの各寸法が設定されてもよい。
【0048】
さらに、ここでは、図2に示されるように、第1孔部24と第2孔部26は、内径が略同一となるように表されているが、これに限らず、例えば、プラグの押入部が押入される第1孔部の内径が第2孔部の内径よりも大きく形成されてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10、40…免震装置、12…弾性積層体、18…内部弾性板、20…内部剛性板、24…第1孔部(孔)、26…第2孔部(孔)、28…プラグ挿入孔、30、44…プラグ、32…軸芯部、34…押入部、42…雌ねじ部、46…軸部、48…雄ねじ部、AS…軸芯部の断面積、B…押入部の厚さ寸法、CL…中心軸、DD…間隔、DI…軸芯部の外径、ED…端部、N…押入部の数、WSF…せん断破壊荷重(せん断強度)、WTB…破断引張荷重(引張強度)、σ…引張破断応力、τ…せん断破壊応力
図1
図2
図3
図4
図5