IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特許7427580冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム
<>
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図1
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図2
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図3
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図4
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図5
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図6
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図7A
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図7B
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図8
  • 特許-冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/02 20060101AFI20240129BHJP
   G21C 17/022 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G21C17/02 200
G21C17/022
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020213474
(22)【出願日】2020-12-23
(65)【公開番号】P2022099616
(43)【公開日】2022-07-05
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】田畑 洋一
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠
【審査官】後藤 慎平
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得するステップと、
前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行するステップと、
前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成するステップと、
前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップと、
前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するステップと、
を有し、
前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、
前記反応度の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、
前記冷却材圧力の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する、
冷却材圧力係数測定方法。
【請求項2】
前記反応度の測定データの主成分と前記冷却材圧力の測定データの主成分について位相ずれを含む相関性を分析するステップ、
をさらに有する請求項1に記載の冷却材圧力係数測定方法。
【請求項3】
前記相関性の分析結果に基づいて選定された前記複数の関数の設定を受け付けるステップ、を更に有する請求項に記載の冷却材圧力係数測定方法。
【請求項4】
前記複数の関数には、前記反応度の測定データの主成分と前記冷却材圧力の測定データの主成分の間の位相のずれに対応する関数が含まれる、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の冷却材圧力係数測定方法。
【請求項5】
前記複数の関数には、一次関数、二次関数、三角関数、一次関数と三角関数を乗じた関数が含まれる、
請求項1から請求項の何れか1項に記載の冷却材圧力係数測定方法。
【請求項6】
原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得する取得部と、
前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行する主成分抽出部と、
前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成し、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを前記複数の関数の組み合せによって作成する再構成部と、
前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するノイズ分析法実行部と、
を備え、
前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、
前記再構成部は、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、
前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する、
冷却材圧力係数測定システム。
【請求項7】
コンピュータに、
原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得するステップと、
前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行するステップと、
前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成するステップと、
前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップと、
前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するステップと、
を有し、
前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、
前記反応度の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、
前記冷却材圧力の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する処理、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントの安全性を示す指標として、冷却材圧力係数や減速材温度係数が用いられる。特許文献1には、運転中のPWR型原子力プラントの減速材温度係数や、運転中のBWR(Boiling Water Reactor)型原子力プラントのボイド係数をノイズ分析法によって測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-45972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運転中のBWR型原子力プラントの冷却材圧力と反応度のデータには多くのノイズ成分が含まれており、冷却材圧力係数を測定することが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決することができる冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の冷却材圧力係数測定方法は、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得するステップと、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行するステップと、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するステップと、を有し、前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、前記反応度の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、前記冷却材圧力の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する。
【0007】
本開示の冷却材圧力係数測定システムは、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得する取得部と、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行する主成分抽出部と、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成し、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを前記複数の関数の組み合せによって作成する再構成部と、前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するノイズ分析法実行部と、を備え、前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、前記再構成部は、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する。
【0008】
本開示のプログラムは、コンピュータに、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得するステップと、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行するステップと、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するステップと、を有し、前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、前記反応度の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数を作成し、前記冷却材圧力の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数を作成する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
上述の冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラムによれば、ノイズ成分が多い冷却材圧力と反応度の測定データに基づいて冷却材圧力係数を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る冷却材圧力係数測定システムの一例を示すブロック図である。
図2】実施形態に係る冷却材圧力係数測定方法の概要を示す図である。
図3】冷却材圧力信号と反応度信号の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る信号の分析結果の一例を示す第1の図である。
図5】実施形態に係る信号の分析結果の一例を示す第2の図である。
図6】実施形態に係る再構成処理後の信号の一例を示す図である。
図7A】従来のノイズ分析法による処理結果の一例を示す図である。
図7B】実施形態の冷却材圧力係数測定方法による処理結果の一例を示す図である。
図8】実施形態の冷却材圧力係数測定処理の一例を示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る冷却材圧力係数測定システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示の冷却材圧力係数測定方法について、図1図9を参照して説明する。
(システム構成)
図1は、実施形態に係る冷却材圧力係数測定システムの一例を示すブロック図である。
冷却材圧力係数測定システム1は、運転中のBWR型原子力プラントから冷却材圧力と中性子束の測定値を取得して、冷却材圧力係数を算出する。
【0012】
冷却材圧力係数測定システム1は、原子力プラント2と通信可能に接続され、定格運転中の原子力プラント2から冷却材圧力と中性子束を取得し、冷却材圧力係数を測定する。
原子力プラント2には、圧力センサと中性子検出器が設けられている。圧力センサは原子炉冷却材の圧力を測定し、測定した圧力を冷却材圧力係数測定システム1へ送信する。中性子検出器は、原子炉の中性子束を測定し、測定した中性子束を冷却材圧力係数測定システム1へ送信する。
【0013】
冷却材圧力係数測定システム1は、反応度測定装置3と、測定装置10と、を備える。反応度測定装置3と、測定装置10は、1台又は複数台のPCやサーバ装置などのコンピュータによって構成される。
【0014】
反応度測定装置3は、原子力プラント2で測定された中性子束を取得し、炉心の反応度を算出する。反応度とは、臨界、未臨界を判断する指標であり、中性子束の時間変化に相当する。反応度測定装置3は、例えば、1点炉動特性方程式を用いて反応度を算出する反応度測定装置3は、反応度を測定装置10へ出力する。
【0015】
測定装置10は、信号取得部11と、入力受付部12と、特異値分解実行部13と、信号分析部14と、信号再構成部15と、ノイズ分析法実行部16と、記憶部17と、出力部18とを備える。
信号取得部11は、冷却材圧力測定値の信号(冷却材圧力信号と称する。)と、反応度測定装置3によって算出された反応度の信号(反応度信号と称する。)と、を取得する。これらの信号は、時々刻々と測定された又は時々刻々測定された測定値に基づいて算出された時系列データである。
入力受付部12は、複数の関数からなる関数セットの設定入力を受け付ける。
特異値分解実行部13は、冷却材圧力信号と反応度信号のそれぞれに対して特異値分解を実行し、各信号の主成分を抽出する。
【0016】
信号分析部14は、特異値分解後の冷却材圧力信号と反応度信号の相関性を分析する。この分析は、関数セットの選定を目的として実行される。
信号再構成部15は、関数セットの組み合せによって冷却材圧力信号を再構成する。再構成された冷却材圧力信号を冷却材圧力信号(再)と記載する。信号再構成部15は、関数セットの組み合せによって反応度信号を再構成する。再構成された反応度信号を反応度信号(再)と記載する。
ノイズ分析法実行部16は、冷却材圧力信号(再)と反応度信号(再)を用いて、PWR型原子力プラントに対して一般的に実施されているノイズ分析法を実行する。
記憶部17は、信号取得部11が取得した冷却材圧力信号、反応度信号、設定された関数セット、冷却材圧力信号(再)、反応度信号(再)など、冷却材圧力係数の測定に必要な情報を記憶する。
出力部18は、測定された冷却材圧力係数を表示装置や電子ファイルなどに出力する。
【0017】
(処理全体の流れ)
図2は、実施形態に係る冷却材圧力係数測定方法の概要を示す図である。
本実施形態の冷却材圧力係数測定方法は、第1の評価フローと第2の評価フローに大別される。第1の評価フローでは、特異値分解実行部13が、反応度信号(ρ)と冷却材圧力信号(p)のそれぞれに対し、特異値分解を行い、主成分を抽出する。次に、信号分析部14が、反応度信号(ρ)から主成分を抽出してできた信号と冷却材圧力信号(p)から主成分を抽出してできた信号に対し分析を行う。この分析結果に対し、分析者が、関数セット(関数1、関数2、関数3、・・・)を設定する。そして、信号再構成部15が、各信号の主成分に関数セットを適用し、各信号の主成分を関数セットによって展開する。換言すれば、関数セットの組み合せによって各信号の主成分を抽出してできた信号を再現する(信号の再構成)。以上の第1の評価フローにより、反応度信号(ρ)のノイズを除去し、反応度信号(再)(ρ´)を生成し、冷却材圧力信号(p)のノイズを除去し、冷却材圧力信号(再)(p´)を生成する。
【0018】
次に第2の評価フローを実施する。第2の評価フローの処理自体は、PWR型原子力プラントに適用されている処理と同様である。但し、第2の評価フローでは、反応度信号(ρ)および冷却材圧力信号を用いるのではなく、第1の評価フローの実施によって得られた反応度信号(再)(ρ´)および冷却材圧力信号(再)(p´)を用いる。まず、ノイズ分析法実行部16は、冷却材圧力信号(再)(ρ´)と反応度信号(再)(p´)のそれぞれに対し、高速フーリエ変換を行い、各信号(再)を三角関数の組み合せに変換する。そして、ノイズ分析法実行部16は、高速フーリエ変換後の反応度信号(再)(ρ´)および冷却材圧力信号(再)(p´)のそれぞれに対して、周波数ごとに信号成分の強度を算出する。これにより、高速フーリエ変換後の反応度信号(再)(ρ´)および高速フーリエ変換後の冷却材圧力信号(再)(p´)について、周波数と信号強度の関係が得られる(それぞれ、グラフ201、グラフ202)。次にノイズ分析法実行部16は、所定の方法により、周波数ごとに2つの信号の信号強度に基づく相関性及び冷却材圧力係数(=ρ´/p´)を評価し(グラフ203)、相関性の高い冷却材圧力係数を平均して最終的な冷却材圧力係数を算出する。
【0019】
(関数セットの設定)
本実施形態では、関数セットの組み合せによって、反応度信号と冷却材圧力信号を再構成し、反応度信号(再)および冷却材圧力信号(再)を得る。これにより、ノイズ成分が多いために困難であったBWR型原子力プラントの冷却材圧力係数の測定を実現する。図3に、BWR型原子力プラントの定格運転中に計測された冷却材圧力信号と反応度信号の一例を示す。グラフ31が冷却材圧力信号であり、グラフ32が反応度信号である。
【0020】
次に、図4図5を参照して、精度よく特異値分解後の反応度信号および冷却材圧力信号を再現するために、どのようにして関数セットを選定するかについて説明する。図4図5は、それぞれ、実施形態に係る信号の分析結果の一例を示す第1の図、第2の図である。
【0021】
信号分析部14は、関数セットの選定のために従来のノイズ分析法に含まれる処理と同様の処理、つまり、高速フーリエ変換を行って、周波数ごとに信号成分の強度を算出し、周波数ごとに2つの信号の相関性を算出するという処理を実施する。これをノイズ分析法(従来版)と称する。高速フーリエ変換は、2のn乗のデータ数を対象として実行する処理である。この為、例えば、300点からなる反応度信号(300個の測定時刻で計測された反応度の時系列データ)を取得しても、そのうちの256個(=2)の測定値を用いて処理することになる。つまり、ノイズ分析法(従来版)では、反応度信号や冷却材圧力信号から限られた数のデータを抽出して処理する。この従来手法に対し、本実施形態では、処理するデータ数を増やし、処理回数を増加させてより多くの処理結果を得ることで、より精緻な分析を行う。例えば、t~t+299の300点からなる反応度信号が得られた場合、t~t+255の測定値群、t+1~t+256の測定値群、・・・、t+44~t+299の測定値群の45個の反応度信号を作成する。そして、作成した45個の反応度信号のそれぞれについて高速フーリエ変換を行う。また、300点からなる冷却材圧力信号に対して、同様に45個の冷却材圧力信号を作成し、高速フーリエ変換を行う。そして、対応する測定値群(同じ期間の256個の測定値群)の反応度信号および冷却材圧力信号の相関性を分析する。このようにすると、45個の処理結果(相関性)が得られ、より精緻に反応度信号および冷却材圧力信号の相関性を分析することができる。この方法をノイズ分析法(改良版)と称する。さらにノイズ分析法(改良版)では、ノイズ分析法(従来版)では実施しない位相ずれの分析も行う。
【0022】
まず図4を参照する。図4は、ノイズ分析法(従来版)によって得られた相関値と、ノイズ分析法(改良版)によって得られた相関値をプロットしたグラフである。図4に示すグラフの縦軸は冷却材圧力および反応度の相関値、横軸は周波数である。図示するように、ノイズ分析法(改良版)によって得られた分析結果では、囲み41に示すように、低周波成分の相関値が高く、囲み42に示すように、4Hz付近の相関値が次に高いという結果が得られた。このように、ノイズ分析法(改良版)を用いることによって、ノイズ分析法(従来版)では十分に把握しきれない傾向をも分析することができる。この分析結果に基づいて、関数セットを選定する分析者は、例えば、低周波成分の相関値が高いことに基づいて、反応度信号および冷却材圧力信号を再構成する関数セットには、一次関数と二次関数が含まれると推定する。また、4Hz付近の相関値が高いことに基づいて、分析者は、反応度信号および冷却材圧力信号を再構成する関数セットには、三角関数が含まれると推定する。
【0023】
次に図5を参照する。図5は、ノイズ分析法(改良版)の相関性を分析する処理において、反応度信号と冷却材圧力信号との間の位相ずれ(時間遅れ)を考慮した相関性の分析を行ったものである。この分析は、ノイズ分析法(従来版)では扱われない、高速フーリエ変換後のデータの虚数成分を含めた分析によって可能となる。図5に示すグラフの縦軸は冷却材圧力および反応度の相関値、横軸は位相ずれの角度である。位相ずれの分析結果を参照すると、囲み51に示すように位相ずれが90°近傍で高い相関値が確認でき、囲み52に示すように位相ずれが270°近傍で高い相関値が確認できる。90°と270°にピークが現れる位相ずれの分析結果に基づいて、分析者は、例えば、先に推定した三角関数は、sin関数であると推定する。例えば、位相ずれが0°と180°近傍で高い相関値が確認できる場合、分析者は、三角関数はcos関数であると推定する。また、図3に示すグラフ31とグラフ32の全体的な傾向から、分析者は、関数セットには、一次関数×三角関数が含まれていると推定する。
【0024】
このように分析者は、ノイズ分析法(改良版)の分析結果に基づいて、対象とする信号の特徴から適すると考えられる関数を選定する。図3に例示する冷却材圧力信号および反応度信号の場合、分析者は、両信号とも全体的な特徴は、一定、あるいは時間の1次間数で変化する信号に周期的な変動が加わっていると考えられるので、例えば、以下のような関数セットの内容を推定する。
1)一次関数 f1(t)=a×t (tは時間)
2)二次関数 f2(t)=b×t
3)周期関数(三角関数) f3(t)=c×sin(ωn×t)
ωnについては周波数を変えたn個のセットを用意する。例えば、図4に示すように事前の分析で低周波成分が優勢なので、使用できるデータセットの長さから表現できる最低の低周波成分を対象に数百個(例えば、n=400)程度を用いる。
4)一次関数と周期関数の組み合わせ
f4(t)=d×t×e×sin(ωn×t)
ωnについては、3)と同様に低周波成分について数百個を選択する。
5)定数項 C(一定) Cは0でもよい。
例えば、sin関数について、400通りの周波数を設定する場合、関数セットとして、1)~5)の合計803個の関数が選定される。
【0025】
関数セットの設定処理(関数セットに含まれる関数群の選定)は、冷却材圧力係数測定の度に実施してもよいし、一度選定した関数群をそのまま用いてもよい。上記の1)~5)は、例えば、図3に例示した冷却材圧力信号および反応度信号の特徴に基づいて選定したものであるが、一般的な関数を選定しているので、よほど特異な信号が測定されない限り、同じ関数セットを用いることができると考えられる。分析者は、関数セットを設定すると関数セットを測定装置10へ入力する。入力受付部12は、設定された関数セットを受け取り、記憶部17に登録する。
【0026】
(信号の再構成)
関数セットが設定できると、信号再構成部15は、関数セットを展開することによって特異値分解後の冷却材圧力信号に近似する信号と特異値分解後の反応度信号に近似する信号をそれぞれ算出する。簡単な例として、関数セットは、一次関数1個、二次関数1個、三角関数2個、1次関数と周期関数の組み合わせが1個、定数Cが0とする。関数セットを展開した関数F(t)は、以下の式(1)ように表される。
【0027】
F(t)=a1×t+b1×t+c1×sin(ωn1×t)+
c2×sin(ωn2×t)+d1×t×e1×sin(ωn×t)・・・(1)
【0028】
信号再構成部15は、最小二乗法などを用いて、対象とする信号と式(1)のカーブフィッティングを行い、式(1)の係数a1、b1、c1、c2、d1、e1を決定する。信号再構成部15は、反応度信号について、係数a1、b1、c1、c2、d1、e1を決定する。また、信号再構成部15は、別途、冷却材圧力信号について、係数a1、b1、c1、c2、d1、e1を決定する。信号再構成部15は、反応度信号について決定した、係数a1、b1、c1、c2、d1、e1の値を式(1)に適用して、特異値分解後の反応度信号に近似する関数F1(t)を作成する。tに特異値分解後の反応度信号と同様の時間を与えることを特異値分解後の反応度信号を再構成するという。信号再構成部15は、反応度信号を再構成することにより、反応度信号(再)を算出する。同様に、信号再構成部15は、冷却材圧力信号について決定した係数a1、b1、c1、c2、d1、e1の値を式(1)に適用して、特異値分解後の冷却材圧力信号に近似する関数F2(t)を作成し、関数F2(t)を用いて冷却材圧力信号を再構成し、冷却材圧力信号(再)を算出する。
【0029】
信号再構成部15が、実際の関数セット(例えば、803個の関数群)を用いて、再構成した反応度信号(再)と冷却材圧力信号(再)を図6に示す。図3と同様に、グラフ31は冷却材圧力信号であり、グラフ32は反応度信号である。グラフ61は冷却材圧力信号(再)であり、グラフ62は反応度信号(再)である。
【0030】
(冷却材圧力係数の算出)
ノイズ分析法実行部16は、反応度信号(再)と冷却材圧力信号(再)について、一般的にPWR型原子力プラントで用いられるノイズ分析法を実行し、BWR型原子力プラントの冷却材圧力係数を算出する。反応度信号(再)と冷却材圧力信号(再)に基づいて算出した冷却材圧力係数の一例を図7Bに示す。比較のため、再構成前の同じ冷却材圧力信号および反応度信号を用いて、ノイズ分析法を実行した結果を図7Aに示す。図7A図7Bのグラフの縦軸は冷却材圧力係数、横軸は冷却材圧力と反応度の相関値である。相関値は、冷却材圧力と反応度の相関性が完全に一致するときに1.0となる。図7Aを参照すると、周波数ごとの冷却材圧力係数の単純平均であれ、周波数ごとの冷却材圧力係数に相関値で重み付けを与えて算出した値であれ、相関値の値は全体的に低く、有効な成分(相関値が0.4以上)はごくわずかである。冷却材圧力と反応度の相関性をみるため、冷却材圧力係数の算出には、冷却材圧力と反応度を周波数ごとに分解したデータのうち、信号強度の相関値が高い周波数のデータが用いられる。図7Aのような相関値しか得られないデータは、冷却材圧力係数の算出に適さない。
【0031】
一方、図7Bを参照すると、反応度信号(再)と冷却材圧力信号(再)の間に比較的高い、0.7程度の相関値が得られる周波数が存在する。この例の場合、ノイズ分析法実行部16は、例えば、相関値が所定値(例えば、0.4以上)となる周波数のデータを、冷却材圧力信号(再)と反応度信号信号(再)をそれぞれ高速フーリエ変換して得られたデータの中から抽出し、各周波数における反応度信号の信号強度÷冷却材圧力信号の信号強度を計算し、これらの平均値を算出する。この平均値が、冷却材圧力係数である。本実施形態の方法であれば、図7A図7Bに示すように、再構成しない冷却材圧力信号および反応度信号を用いる従来のノイズ分析法よりも、信号の有効成分を増加することができ、信頼度の高い冷却材圧力係数を算出することができる。なお、BWR型原子力プラントでは、プラント設計時に冷却材圧力係数の設計値を計算する。本実施形態の冷却材圧力係数測定方法によって算出された冷却材圧力係数は、冷却材圧力係数の設計値と同様の値であることが確認されている。
【0032】
(動作)
次に冷却材圧力係数測定システムの処理の流れについて説明する。
図8は、実施形態の冷却材圧力係数測定処理の一例を示すフローチャートである。
信号取得部11は、運転中の原子力プラント2から反応度信号と冷却材圧力信号を継続的に取得し(ステップS1)、記憶部17に各信号を記録する。分析者が、測定装置10へ冷却材圧力係数の測定処理の開始を指示する操作を行う。すると、特異値分解実行部13が、特異値分解を実行する(ステップS2)。特異値分解実行部13は、記憶部17から、同時間帯に測定された反応度信号と冷却材圧力信号を読み出す。特異値分解実行部13は、読み出した反応度信号に特異値分解を実施し、信号の主成分を抽出する。特異値分解実行部13は、例えば、10個程度の主成分を抽出する。同様に特異値分解実行部13は、読み出した冷却材圧力信号に特異値分解を実施し、信号の主成分を抽出する。反応度信号と冷却材圧力信号について主成分を抽出し、抽出された主成分によって構成される反応度信号(反応度信号の主成分と称する。)と抽出された主成分によって構成される冷却材圧力信号(冷却材圧力信号の主成分と称する。)を対象として、以降の相関性の分析や再構成などの処理を行うため、ノイズ成分が大きい、もともとの反応度信号や冷却材圧力信号を対象として同様の処理を行うよりも、処理が容易で精度が向上する。
【0033】
次に信号分析部14は、関数セットを設定するか否かを判定する(ステップS3)。例えば、分析者は、関数セットを設定するか否かを測定装置10へ入力する。信号分析部14は、この入力に基づいて、関数セットを設定するか否かを判定する。あるいは、信号分析部14は、関数セットが既に設定されていれば(記憶部17に既に関数セットが登録されていてば)関数セットを設定しないと判定し、関数セットが未だ設定されていなければ関数セットを設定すると判定する。関数セットを設定しないと判定した場合(ステップS3;No)、ステップS6の処理に進む。
【0034】
関数セットを設定すると判定した場合(ステップS3;Yes)、信号分析部14は、ノイズ分析法(改良版)を実行する(ステップS4)。つまり、信号分析部14は、主成分だけを抽出した反応度信号と主成分だけを抽出した冷却材圧力信号に対して、データ数及び処理数を増加させて、高速フーリエ変換を行い、両信号の相関性を分析する。この分析により図4に例示するグラフが得られる。また、信号分析部14は、主成分だけを抽出した反応度信号と主成分だけを抽出した冷却材圧力信号に対して、位相ずれ(時間遅れ)を考慮した相関性の分析を行う。この分析により図5に例示するグラフが得られる。出力部18は、信号分析部14による分析結果(例えば、図4図5のグラフ)を表示装置へ出力する。
【0035】
分析者は、表示装置に表示された分析結果を参照して、関数セットを設定する。例えば、分析者は、関数セットに含まれる関数は、一次関数(例えば、f1(t)=a×t)、二次関数(例えば、f2(t)=b×t)、複数(例えば、数百個)の三角関数(例えば、f3(t)=c×sin(ωn×t))、複数の一次関数×三角関数(例えば、f4(t)=d×t+e×sin(ωn×t))であると推定する。分析者は、推定した関数セットを測定装置10へ入力する。入力受付部12は、入力された関数セットを記憶部17に登録する(ステップS5)。
【0036】
関数セットが登録されると、あるいはステップS3で関数セットの設定をしないと判定すると、次に信号再構成部15が、関数セットを用いて反応度信号を再現する関数を作成する(ステップS6)。信号再構成部15は、例えば、関数セットに含まれる関数の線形和からなる関数F1(t)の波形が、特異値分解後の主成分だけで構成された反応度信号の波形と近似するように、関数F1(t)の各係数(例えば、a~e)を算出する。例えば、信号再構成部15は、最小二乗法による関数F1(t)と、特異値分解後の反応度信号とのフィッティングを行い、係数の値を調整する。信号再構成部15は、調整が完了した後の反応度用の係数を記憶部17に記録する。
【0037】
次に信号再構成部15が、関数セットを用いて冷却材圧力信号を再現する関数を作成する(ステップS7)。信号再構成部15は、例えば、関数セットに含まれる関数の線形和からなる関数F2(t)の波形が、特異値分解後の主成分だけで構成された冷却材圧力信号の波形と近似するように、関数F2(t)の各係数(例えば、a~e)を算出する。例えば、信号再構成部15は、最小二乗法による関数F2(t)と、特異値分解後の冷却材圧力号信号とのフィッティングを行い、係数の値を調整する。信号再構成部15は、調整が完了した後の冷却材圧力用の係数を記憶部17に記録する。
【0038】
フィッティングが完成すると、信号再構成部15は、特異値分解後の反応度信号と特異値分解後の冷却材圧力信号を関数セットによって再構成する(ステップS8)。信号再構成部15は、ステップS6で算出した係数を関数F1(t)に適用して、特異値分解後の反応度信号に近似する信号を関数F1(t)によって再構成することにより、反応度信号(再)を作成する。信号再構成部15は、ステップS7で算出した係数を関数F2(t)に適用して、特異値分解後の冷却材圧力信号に近似する信号を関数F2(t)によって再構成することにより、冷却材圧力の冷却材圧力信号(再)を作成する。
【0039】
次にノイズ分析法実行部16は、再構成された反応度信号(再)と再構成された冷却材圧力信号(再)を用いて冷却材圧力係数を算出する(ステップS9)。ノイズ分析法実行部16は、反応度信号(再)と冷却材圧力信号(再)をそれぞれ高速フーリエ変換によって周波数別に分解する。次にノイズ分析法実行部16は、周波数別の反応度信号(再)と周波数別の冷却材圧力信号(再)を用いて、周波数別の冷却材圧力係数と周波数別の信号強度の相関値(コヒーレンス)を算出する。ここで、周波数をω1、反応度信号(再)をρ、冷却材圧力信号(再)をpとすると、冷却材圧力係数(ω1)=ρ(ω1)÷p(ω1)である。これにより、図2のグラフ203が得られる。次にノイズ分析法実行部16は、相関値が閾値以上の周波数を選択する。例えば、ノイズ分析法実行部16は、相関値が0.4以上となる周波数を選択する。次にノイズ分析法実行部16は、選択した周波数における冷却材圧力係数(ω1)の平均値を算出する。この平均値が最終的な冷却材圧力係数である。これにより、運転中の原子力プラントから取得した冷却材圧力信号と中性子束信号とに基づいて、冷却材圧力係数が算出できる。
【0040】
なお、ステップS1~ステップS8の処理が図2に示す第1の評価フローに相当し、ステップS9の処理が図2に示す第2の評価フローに相当する。
【0041】
一般に、ノイズ成分が大きい冷却材圧力信号と反応度信号(中性子束信号)しか計測できないBWR型原子力プラントでは、データ間の有効な相関成分を見出すことが難しいことから、一般的なノイズ分析法による測定では、確からしい冷却材圧力係数を測定することが困難とされている。これに対し、本実施形態では、関数セットを組み合わせることによって、ノイズ成分を除去した評価用の冷却材圧力信号および評価用の反応度信号を得る。これにより、PWR型原子力プラントで利用されている一般的なノイズ分析法を用いて、BWR型原子力プラントの冷却材圧力係数を測定することができる。本実施形態によれば、炉物理パラメータのうちの冷却材圧力係数を測定することができる。なお、本実施形態の冷却材圧力係数測定方法は、PWR型原子力プラントに対して実行してもよい。
【0042】
また、本実施形態における冷却材圧力係数測定方法の変形例として、BWR型原子力プラントの減速材温度係数を測定する減速材温度係数測定装置を実現することができる。この場合、信号取得部11は、冷却材圧力信号に代えて、減速材温度の時系列的な信号を入力する。以降の処理は、冷却材圧力信号を減速材温度信号に読み替えて、本実施形態と同様に行われる。結果として、運転中のBWR型原子力プラントから測定値を取得して、減速材温度係数を算出することができる。
【0043】
図9は、実施形態に係る冷却材圧力係数測定システムのハードウェア構成の一例を示す図である。
コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の反応度測定装置3と、測定装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0044】
なお、反応度測定装置3と測定装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0045】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0046】
<付記>
各実施形態に記載の冷却材圧力係数測定方法、冷却材圧力係数測定システム及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0047】
(1)第1の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データ(それぞれ、冷却材圧力信号と反応度信号)を取得するステップ(S1)と、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理(特異値分解)を実行するステップ(S2)と、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データ(反応度信号(再))を、複数の関数の組み合せによって作成するステップ(S6,S8)と、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データ(冷却材圧力信号(再))を、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップ(S7,S8)と、前記冷却材圧力の測定データの主成分と、前記反応度の測定データの主成分と、の各々を複数の関数の組み合せによって再構成するステップ(S8)と、前記冷却材圧力の評価データ(冷却材圧力信号(再))と、前記反応度の評価データ(反応度信号(再))と、を用いてノイズ分析法を実行するステップ(S9)と、を有する。
【0048】
冷却材圧力の測定データと反応度の測定データから主成分を抽出し、それら主成分を対象に関数セットによる再構成を行うことで、冷却材圧力の測定データと反応度の測定データにノイズ成分が多く含まれる場合であっても、冷却材圧力と反応度の相関性が基準以上となるような成分を見つけることができるようになる。これにより、冷却材圧力の測定データと反応度の測定データにノイズ成分が多く含まれる場合であっても、冷却材圧力係数を測定することができる。
【0049】
(2)第2の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、(1)の冷却材圧力係数測定方法であって、前記反応度の評価データの作成に用いる前記複数の関数と、前記冷却材圧力の評価データの作成に用いる前記複数の関数とは、1つの関数群であって、前記反応度の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて前記反応度の測定データの主成分に近似する第1の関数(F1(t))を作成し(S6)、前記冷却材圧力の評価データを作成するステップでは、前記関数群に含まれる関数を組み合わせて前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する第2の関数(F2(t))を作成する(S7)。
もともと相関性があるはずの冷却材圧力と反応度について、ノイズ成分が大きいために相関性が確認できないことに対し、同じ種類の関数(相関性が高い関数)を組み合わせて冷却材圧力の測定データと反応度の測定データに近似する関数を作成することにより、相関のあるものに置き換えることができる。また、もともとの前記冷却材圧力の測定データと、前記反応度の測定データを対象としたのではノイズ成分が大きい為、反応度の測定データの主成分や冷却材圧力の測定データの主成分を対象とすることによって、再構成処理を実現させている。
【0050】
(3)第3の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、(1)~(2)の冷却材圧力係数測定方法であって、前記反応度の測定データの主成分と前記冷却材圧力の測定データの主成分について位相ずれを含む相関性を分析するステップ(S4)、をさらに有する。
分析結果を参考にして、関数セットとして、どのような関数を選定するかを決めることができる。また、もともとの前記冷却材圧力の測定データと、前記反応度の測定データを分析対象としたのではノイズ成分が大きい為、反応度の測定データの主成分や冷却材圧力の測定データの主成分を分析対象とすることによって、相関性の分析を容易にしている。
【0051】
(4)第4の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、(3)の冷却材圧力係数測定方法であって、前記相関性の分析結果に基づいて選定された前記複数の関数の設定を受け付けるステップ、を更に有する。
相関性の分析結果に基づいて、冷却材圧力の時系列データの主成分と反応度の時系列データの主成分に共通し、冷却材圧力の時系列データの主成分と反応度の時系列データの主成分の各々を表現できるような関数群を選定する。そして、その選定結果の関数群(関数セット)を設定することができる。
【0052】
(5)第5の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、(1)~(4)の冷却材圧力係数測定方法であって、前記複数の関数には、前記反応度の測定データの主成分と前記冷却材圧力の測定データの主成分の間の位相のずれに対応する関数(sin関数)が含まれる。
例えば、位相のずれが、90°と270°の場合、関数セットにsin関数を含める。位相ずれに対応する周期的関数を選定することで、信号を再構成するときの精度が向上する。
【0053】
(6)第6の態様に係る冷却材圧力係数測定方法は、(1)~(5)の冷却材圧力係数測定方法であって、前記複数の関数には、一次関数、二次関数、三角関数、一次関数と三角関数を乗じた関数が含まれる。
これらの関数を組み合わせることにより、主成分を抽出した冷却材圧力の測定データと主成分を抽出した前記反応度の測定データを精緻に再現することができる。
【0054】
(7)第7の態様に係る冷却材圧力係数測定システム1は、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得する取得部(信号取得部11)と、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行する主成分抽出部(特異値分解実行部13)と、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成し、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを前記複数の関数の組み合せによって作成する再構成部(信号再構成部15)と、前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するノイズ分析法実行部16と、を備える。
【0055】
(8)第8の態様に係るプログラムは、コンピュータに、原子力プラントの運転中に測定された時系列の冷却材圧力の測定データおよび反応度の測定データを取得するステップと、前記冷却材圧力の測定データと前記反応度の測定データの各々に対して主成分を抽出する処理を実行するステップと、前記反応度の測定データの主成分に近似する前記反応度の評価データを、複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の測定データの主成分に近似する前記冷却材圧力の評価データを、前記複数の関数の組み合せによって作成するステップと、前記冷却材圧力の評価データと、前記反応度の評価データと、を用いてノイズ分析法を実行するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・冷却材圧力係数測定システム
10・・・測定装置
11・・・信号取得部
12・・・入力受付部
13・・・特異値分解実行部
14・・・信号分析部
15・・・信号再構成部
16・・・ノイズ分析法実行部
17・・・記憶部
18・・・出力部
2・・・原子力プラント
3・・・反応度測定装置
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9