(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ロボット溶接における位置追跡を伴う、スマートトーチを使用する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B23K 9/127 20060101AFI20240129BHJP
B23K 9/12 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B23K9/127 504H
B23K9/12 331K
B23K9/127 507A
(21)【出願番号】P 2020511788
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 IB2018001359
(87)【国際公開番号】W WO2019106425
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-10-25
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ,ウィリアム,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ガイモン,ランス,エフ.
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-109168(JP,A)
【文献】特開平09-076065(JP,A)
【文献】特開昭59-087978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/127
B23K 9/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動電気アーク溶接の方法であって、
相対位置センサを使用することにより、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置を判定するステップと、
絶対位置センサを使用することにより、前記溶接トーチの絶対位置を判定するステップと、
前記実際の溶接経路が、計画されている溶接経路と異なっている際に、前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの前記相対位置及び前記溶接トーチの前記絶対位置に基づいて補正ベクトルを算出するステップと、
前記計画されている溶接経路及び前記補正ベクトルに従って前記溶接トーチを運動させるステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの前記相対位置に基づいて、溶接トーチ位置の補正が必要とされているかどうかを判定するステップを更に有し、且つ/又は、
前記補正ベクトルを実装する時点を判定するステップを更に有する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記計画されている溶接経路及び前記補正ベクトルに基づいて、調節済みの溶接経路を算出するステップを更に有し、且つ、前記計画されている溶接経路及び前記補正ベクトルに従って前記溶接トーチを運動させるステップは、前記調節済みの溶接経路に従って前記溶接トーチを運動させるステップを有する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記計画されている溶接経路及び初期ベクトルに従って前記溶接トーチを運動させるステップを更に有し、前記補正ベクトルを算出するステップは、初期ベクトルに適用される調節ベクトルを算出するステップを有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記実際の溶接経路又は前記計画されている溶接経路のうちの少なくとも1つは、一連の位置を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記補正ベクトルを第1補正ベクトルとして保存するステップであって、前記補正ベクトルは1回目に算出されたものである、ステップと、
前記1回目とは異なる2回目に、前記相対位置センサを用いて、前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの第2相対位置を判定するステップと、
前記絶対位置センサを用いて前記溶接トーチの第2絶対位置を判定するステップと、
前記実際の溶接経路が前記計画されている溶接経路と異なる場合に、前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの第2相対位置及び前記溶接トーチの第2絶対位置に基づいて第2補正ベクトルを算出するステップと
、
を更に有する請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記相対位置センサは、電流センサを有し、且つ/又は、
前記絶対位置センサは、少なくとも1つの加速度計を有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記補正ベクトルの第1成分は、第1アルゴリズムに従って算出され、前記補正ベクトルの第2成分は、第2アルゴリズムに従って算出され、且つ、前記第1アルゴリズムは、前記第2アルゴリズムとは異なっている請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
溶接システムであって、
溶接トーチを有する溶接装置と、
実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの相対位置を検知する相対位置センサと、
前記溶接トーチの絶対位置を検知する絶対位置センサと、
計画されている溶接経路及び補正ベクトルに基づいて前記溶接トーチの運動を制御する溶接コントローラと、
を有し、
前記溶接コントローラは、前記実際の溶接経路が前記計画されている溶接経路と異なっている際に、前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの前記相対位置及び前記溶接トーチの前記絶対位置に基づいて前記補正ベクトルを算出するロジックを有する、システム。
【請求項10】
前記計画されている溶接経路を保存するメモリを更に有する請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記相対位置センサは、電流センサを有し、且つ/又は、
前記絶対位置センサは、少なくとも1つの加速度計を有し、前記相対位置センサは、溶接経路追跡システムと関連付けられている請求項9又は10に記載のシステム。
【請求項12】
前記溶接トーチを運動させるロボットと、
前記ロボットの運動を制御するロボットコントローラと、
を更に有し、
前記ロボットコントローラは、前記補正ベクトルに基づいて前記ロボットの運動を調節している請求項9乃至11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
前記溶接トーチは、前記実際の溶接経路に沿って、少なくとも50インチ(127センチ)/分において運動している請求項9乃至12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
溶接システムであって、
溶接トーチによって溶接する手段と、
計画されている溶接経路及び補正ベクトルに従って前記溶接トーチを運動させる手段と、
実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置を判定する、且つ、前記溶接トーチの絶対位置を判定する、手段と、
前記実際の溶接経路に対する前記溶接トーチの前記相対位置及び前記溶接トーチの前記絶対位置に基づいて前記溶接トーチの前記運動に対する補正を算出する手段と、
を有するシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載の自動電気アーク溶接の方法と、請求項10及び15に記載の溶接システムと、に関する。本発明の実施形態は、一般に、溶接に関係するシステム及び方法に関し、且つ、更に詳しくは、モノのインターネット(IOT:Internet-of-Things)を使用するネットワーク接続されたロボット溶接に関する。本出願は、2017年11月29日付けで出願された、且つ、「METHODS AND SYSTEMS USING THE INTER-NET-OF-THINGS IN ROBOTIC WELDING」という名称を有する、米国仮特許出願第62/592,072号明細書の優先権及びそのすべてのその他の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
溶接システムは、一般に、コンポーネントを正確且つ反復的に1つに溶接するべく、ロボットと共に使用されている。このようなロボット溶接システムは、一般に、溶接動作を安全に閉じ込めるべく、且つ、プロセスを観察しうるユーザーを保護するべく、溶接セル内において配設されている。通常、ロボット溶接システムは、溶接セル内の作業台上において位置決めされた被加工物を溶接するべく使用される溶接トーチを有するロボットアームを含む。ロボットは、それぞれの特定の溶接タイプと釣り合いが取れた、望ましい又は計画された経路に沿って溶接するようにプログラミングされている。現在、溶接セル内のシステムの間の、2つ以上の溶接セルの間の、又は溶接セルと外部システムの間の、通信は、例えば、その能力及び速度において制限されている。このような限られた通信は、溶接プロセス及び動作の制御、速度、精度、及びその他の態様を制限している。これらの及びその他の欠点を克服するべく、改善されたシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
既存の溶接装置の上述の問題点及び欠点に鑑み、本出願は、これらの欠点を克服するためのシステム及び方法について記述している。特に、溶接の通信側面を加速化させるべく、請求項1に記載の自動電気アーク溶接の方法と、請求項10及び15に記載の溶接システムと、について説明する。好適な実施形態は、従属請求項の主題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態は、モノのインターネット(物体の間のデータの通信を許容する、物体内において組み込まれたコンピュータ装置の、インターネットを介した、相互接続)を介してロボット溶接の様々な側面を改善するシステム、アーキテクチャ、プロセス、及び方法を含む。
【0005】
本発明の一態様によれば、電気アーク溶接の方法は、相対位置センサを使用して実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置を判定するステップと、絶対位置センサを使用して溶接トーチの絶対位置を判定するステップと、実際の溶接経路が、計画されている溶接経路と異なっている際に、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置及び溶接トーチの絶対位置に基づいて補正ベクトルを算出するステップと、計画されている溶接経路及び補正ベクトルに従って溶接トーチを運動させるステップと、を含む。
【0006】
本発明の説明は、請求項において使用されている用語或いは請求項又は発明の範囲を決して限定するものではない。請求項において使用されている用語は、そのあらゆる通常の意味のすべてを有している。
【0007】
本明細書に内蔵されている、且つ、その一部を構成している、添付の図面には、以上において付与されている本発明の概略的な説明及び以下において付与されている詳細な説明と共に、本発明の実施形態を例示するべく機能する本発明の実施形態が示されている。図中の図示の要素の境界(例えば、ボックス、ボックスのグループ、又はその他の形状)は、境界の一実施形態を表していることを理解されたい。いくつかの実施形態においては、1つの要素が複数の要素として設計されてもよく、或いは、複数の要素が1つの要素として設計されてもよい。いくつかの実施形態においては、別の要素の内部コンポーネントとして示されている要素は、外部コンポーネントとして実装されてもよく、且つ、逆も又真である。更には、要素は、描かれているその縮尺が正確ではない場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】ロボット溶接セルユニットの例示用の一実施形態を示す。
【
図2】絶対及び相対位置センサを有する例示用の溶接システムのブロック図を示す。
【
図3】例示用の絶対及び相対位置関係を示す、被加工物上の実際の溶接経路に近接した電極を有するように示された例示用の溶接トーチを示す。
【
図4】溶接の際の様々な位置における例示用の溶接トーチを示す。
【
図5】横方向の運動に起因した溶接アークの変化を示す、被加工物上の実際の溶接経路に近接した電極を有するように示された別の例示用の溶接トーチを示す。
【
図6】例示用の補正ベクトルの適用の前及び後の、例示用の計画された溶接経路を示す。
【
図7】補正ベクトルを算出及び実装する例示用の方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下は、本開示の全体を通じて使用されている例示用の用語の定義を含む。すべての用語の単数形及び複数形は、そのいずれもが、以下のそれぞれの意味を有する。
【0010】
本明細書において使用されている「コンポーネント」は、ハードウェアの一部分、ソフトウェアの一部分、又はこれらの組合せとして定義することができる。ハードウェアの一部分は、少なくともプロセッサ及びメモリの一部分を含むことが可能であり、この場合に、メモリは、実行対象の命令を含む。
【0011】
本明細書において使用されている、「回路」と同義である、「ロジック」は、限定を伴うことなしに、機能又はアクションを実行するべく、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれぞれの組合せを含む。例えば、望ましい用途又はニーズに基づいて、ロジックは、ソフトウェアによって制御されたマイクロプロセッサ、用途固有の集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)などの別個のロジック、或いは、その他のプログラミングされた論理装置及び/又はコントローラを含みうる。又、ロジックは、完全にソフトウェアとして実施することもできる。
【0012】
本明細書において使用されている「ソフトウェア」は、限定を伴うことなしに、コンピュータ、ロジック、又はその他の電子装置が、機能やアクションを実行する、且つ/又は、望ましい方式によって振る舞う、ようにする、1つ又は複数のコンピュータ可読且つ/又は実行可能な命令を含む。命令は、動的にリンクされたライブラリからの別個のアプリケーション又はコードを含む、ルーチン、アルゴリズム、モジュール、又はプログラムなどの様々な形態において実施することができる。又、ソフトウェアは、スタンドアロンプログラム、関数の呼び出し、サーブレット、アプレット、メモリ内において保存されている命令、オペレーティングシステムの一部分、又はその他のタイプの実行可能な命令などの、様々な形態において実装することができる。当業者は、ソフトウェアの形態は、例えば、望ましいアプリケーションの要件、それが稼働する環境、及び/又は設計者/プログラマの所望、或いは、これらに類似したものに、依存していることを理解するであろう。
【0013】
ロボット溶接用のシステム、アーキテクチャ、プロセス、及び方法の実施形態が開示されている。本明細書における例及び図は、例示を目的としたものに過ぎず、且つ、本発明を制限することを意図したものではなく、本発明は、請求項の範囲及び精神によって評価される。図面は、本発明の例示用の実施形態の例示を目的としたものに過ぎず、且つ、これを限定することを目的とするものではない。
【0014】
図1を参照すれば、例示用の溶接セル10の図面は、一般に、フレーム12と、フレーム12内において配設されたロボット14と、それぞれ、こちらもフレーム12内において配設された第1及び/又は第2溶接テーブル16及び18と、を含む。ロボット溶接セル10は、更に詳細に後述される方式により、溶接テーブル16、18上において配設された被加工物22及び/又は24を溶接するべく、有用である。
【0015】
図示の実施形態においては、フレーム12は、ロボット14及び溶接テーブル16及び18を取り囲むべく、複数の側壁及びドアを含む。平面図においては、実質的に矩形の構成が示されているが、フレーム12及びセル10は、多数の構成を有することができる。
【0016】
フレーム12の内部へのアクセスを提供するべく、フロントアクセスドア26がフレーム12に取り付けられている。フロントアクセスドア26は、第1ヒンジセットがドア26をフレーム12に装着し、且つ、第2ヒンジセットがドアの1つのパネルを別のパネルに装着する、という、2つのヒンジセットをドアが含む、二つ折りの構成を有することができる。但し、フロントアクセスドア26は、スライドドア又はスイングドアなどの、その他の構成を有することもできる。同様に、リアアクセスドア28も、フレーム12に取り付けられている。図示の実施形態におけるリアアクセスドア28は、二つ折りの構成を有しているが、リアアクセスドアも、フロントアクセスドア26を参照して記述されているものなどのその他の構成を有することができる。両方のドア上には、ウィンドウ32を提供することができる(フロントドア26上においてのみ、描かれている)。ウィンドウは、着色された安全スクリーンを含むことが可能であり、これについては、当技術分野において既知である。
【0017】
フレーム12上には、フロントドア26に隣接した状態において、制御パネル40が提供されている。制御パネル40上において提供されている制御ノブ及び/又はスイッチは、こちらもフレーム12に取り付けられた制御エンクロージャ42内において収容されている制御装置と通信している。制御パネル40上のコントロールは、既知の溶接セルユニットと共に使用されているコントロールに類似した方式により、セル10内において実行される動作を制御するべく、使用することができる。
【0018】
一実施形態においては、ロボット14は、支持部上に取り付けられた台座上に取り付けられている。その他の実施形態においては、溶接装置の運動を制御するべく、その他の自動化された運動装置を使用することができる。図示の実施形態のロボット14は、溶接テーブル16及び18との関係においてセンタリングされており、且つ、例示用の11個の運動の軸を含む。適宜、台座は、タレットに類似した方式により、支持部との関係において回転しうる。従って、ロボット14を回転させるべく、台座及び/又は支持部内には、例えば、モーター及びトランスミッション(図示されてはいない)などの、なんらかの種類の駆動メカニズムを収容することができる。
【0019】
一実施形態においては、溶接装置の溶接トーチ又はガン60が、ロボットアーム14の遠端に装着されている。溶接ガン60は、当技術分野において既知である、且つ、例えば、遮蔽型の金属アーク溶接(SMAW:Shielded Metal Arc Welding)、ガス金属アーク溶接(GMAW:Gas Metal Arc Welding、MIG)、有心アーク溶接(FCAW:Flux-Cored Arc Welding)、ガスタングステンアーク溶接(GTAW:Gas Tungsten Arc Welding、TIG)を含む、任意のタイプの溶接、切削、又は類似のプロセスに適しうる、ものに類似したものであってよい。曲がりやすいチューブ又はコンジット62が、溶接ガン60に装着されており、これは、電力、シールドガス、及び/又は消耗ワイヤを収容することができる。例えば、溶接のタイプに応じて、コンテナ66内において保存されうる、消耗される溶接電極ワイヤ64をコンジット62を通じて溶接ガン60に供給することができる。溶接ガン60への溶接ワイヤ64の供給を促進するべく、ワイヤ供給器68をフレーム12に装着することができる。ロボット14は、フレーム12の基部又は下部部分に取り付けられた状態において示されているが、適宜、ロボット14は、フレームの上部構造に取り付けることも可能であり、且つ、セル10内に下方にぶら下がることもできる。
【0020】
一実施形態においては、溶接動作用の電源72が、フレーム12に接続された、且つ、その一部でありうる、プラットフォーム74に取り付けられ、且つ、その上部において休止している。又、ロボット14を制御する、ロボットコントローラ76も、プラットフォーム74上において、休止し、且つ、取り付けられている。ロボットコントローラ76は、通常、ロボット14を伴っている。セル基部は、様々な装着地点80及びチャネル82を含みうる。フレーム内における静止型のセルとして示されているが、その他の実施形態は、ロボット及び関連する溶接機器を運動する組立ラインや携帯型のセルなどの一部分として含むことができる。
【0021】
又、一実施形態においては、溶接コントローラは、例えば、スタンドアロン装置/コンポーネントとして、或いは、制御エンクロージャ42、電源72、ロボットコントローラ76などの一部分として、セル10内に含むこともできる。又、システムコントローラは、1つ又は複数のコントローラを有することができる。これらのコントローラ及び制御システムのうちの任意のもの又はすべては、様々な程度において、共有されたシステム又はエンクロージャ内に組み合わせることができる。
【0022】
図2を参照すれば、例示用の溶接システム200のブロック図が示されている。この実施形態においては、溶接コントローラ210は、プロセッサ220と、メモリ230と、溶接ルーチン240と、を有する。溶接システム200は、様々なコンポーネント、ロジック、及びソフトウェアを含みうる。例として、且つ、限定を伴うことなしに、(例えば、
図1のセル10などの)溶接セルは、特定の被加工物用の特定の溶接プロセスに関係する1つ又は複数のルーチン又はステップを実装しうる溶接機器(例えば、ウェルダ電源用のコントローラ、溶接装置、ワイヤ供給器、ウェルダ電源、ロボット用のコントローラなど)を含むことが可能であり、この場合に、ルーチンは、溶接機器用の個々の設定、構成、及び/又は位置(例えば、経路)を含みうる。更には、コントローラ210は、メモリ230内において保存されている1つ又は複数の溶接ルーチン210又はプロセスと関連する1つ又は複数のウェルダ電源、パラメータ、溶接スケジュール、ロボット、取付具、供給器などを直接又は間接的に制御することができる。直接的な制御の一例は、溶接電源と関連する様々な溶接パラメータ(電源、電流、波形など)の設定である。間接的な制御の一例は、ロボットコントローラ又はその他の周辺装置に対する溶接位置、経路、速度などの伝達である。又、コントローラ210は、米国特許出願公開第2014/0042136号(米国特許出願第13/803,032号)明細書において記述されている溶接シーケンスを実行してもよく、この特許文献の内容は、引用により、そのすべてが本明細書において包含される。適切なコマンドを望ましい装置に伝達するべく、任意の適切な方式により、溶接セル10と関連しうる様々なコントローラの階層構造を構成することができる。
【0023】
更には、当業者は、本発明の方法が、そのそれぞれが1つ又は複数の関連する装置に動作自在に結合されうる、シングルプロセッサ又はマルチプロセッサコンピュータシステム、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、のみならず、パーソナルコンピュータ、ハンドヘルド型の演算装置、マイクロプロセッサに基づいた又はプログラミング可能な消費者電子装置、及びこれらに類似したもの、を含む、その他のコンピュータシステム構成によって実施されうることを理解するであろう。又、本発明の図示の態様は、特定のタスクが通信ネットワークを通じてリンクされたリモート処理装置によって実行される、分散型の演算環境内において実施することもできる。分散型の演算環境においては、プログラムモジュールは、ローカル及びリモートのメモリストレージ装置の両方において配置することができる。溶接システム200と共に、例えば、リモートデータベース、ローカルデータベース、クラウド演算プラットフォーム、クラウドデータベース、又はこれらの組合せを利用することができる。
【0024】
溶接システム200は、コンピュータを含む本発明の様々な態様を実装するべく例示用の実施形態を利用することが可能であり、この場合に、コンピュータは、プロセッサ220と、メモリ230と、システムバスと、を含む。システムバスは、限定を伴うことなしに、メモリ230を含むシステムコンポーネントをプロセッサ220に結合しており、且つ、その他のシステム、コントローラ、コンポーネント、装置、及びプロセッサと通信することができる。プロセッサ220は、様々な市販のプロセッサのうちの任意のものであってよい。又、デュアルマイクロプロセッサ及びその他のマルチプロセッサアーキテクチャも、処理ユニットとして利用することができる。
【0025】
メモリ230は、読み出し専用メモリ(ROM:Read Only Memory)及びランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)を含みうる。ROM内には、スタートアップの際などの、溶接システム200内の要素の間の情報転送を支援する基本ルーチンを収容する基本入出力システム(BIOS:Basic Input/Output System)が保存されている。メモリ230は、溶接ルーチン240などの、ルーチンを含む、様々なソフトウェアを保存することができる。
【0026】
溶接システム200は、例えば、着脱自在のディスクとの間における読取り又は書込みのために、ハードディスクドライブ、磁気ディスクドライブを更に含むことが可能であり、且つ、例えば、CD-ROMディスクを読み取るために、或いは、その他の光学媒体との間における読取り又は書込みのために、光ディスクドライブを更に含むことができる。溶接システム200は、少なくともなんらかの形態のコンピュータ可読媒体を含みうる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータによってアクセスされうる任意の利用可能な媒体であってよい。例として、且つ、限定を伴うことなしに、コンピュータ可読媒体は、コンピュータストレージ媒体及び通信媒体を有することができる。メモリ及びコンピュータストレージ媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータなどの、情報の保存用の任意の方法又は技術において実装された、揮発性及び不揮発性の、着脱自在及び非着脱自在の、媒体を含む。メモリ及びコンピュータストレージ媒体は、限定を伴うことなしに、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリ又はその他のメモリ技術、CD-ROM、デジタルバーサタイルディスク(DVD:Digital Versatile Disk)又はその他の磁気ストレージ媒体、或いは、望ましい情報を保存するべく使用されうる、且つ、溶接システム200によってアクセスされうる、任意のその他の媒体を含む。
【0027】
溶接システム200は、溶接用の出力経路/回路又は溶接ライン250を介して溶接電力又は波形を提供している。この実施形態においては、1つの溶接ライン250が、(電極Eを有する)例示用の溶接トーチ260に接続されており、これは、上述の例示用の溶接プロセスのうちの任意のものに適した溶接装置の任意のガン又はトーチであってよい。溶接トーチ260は、ロボットなどの、自動化された運動装置に装着することができる。もう1つの溶接ライン250は、当技術分野において既知のように、溶接回路を完成させるべく、被加工物Wに接続されている。
図1に示されているように、一実施形態においては、トーチ260は、溶接の際の位置決めのためにロボットアームに取り付けられている。又、溶接システム200は、溶接トーチ260の絶対位置を検知するべく、絶対位置センサ270をも含む。絶対位置センサ270は、溶接トーチ260の絶対位置を判定する能力を有する任意のセンサであってよい。いくつかの実施形態においては、絶対位置センサ270は、トーチ260に直接的に取り付けられている。例示用の絶対位置センサ270は、加速度計、ジャイロスコープ、光学システム、RFシステムなどを含みうる。いくつかの実施形態においては、絶対位置センサ270は、センサ、トランスミッタ、レシーバ、トランシーバなどのシステムを有することができる。絶対位置センサ270は、その絶対位置を判定しうるように、基準又は開始点を利用しうることを理解されたい。一実施形態においては、基準点は、セル10内の固定された地点であってよい。絶対位置センサ270は、トーチ260の絶対位置を通知するデータ/フィードバックをコントローラ210に提供している。
【0028】
又、溶接システム200は、溶接経路に対する溶接トーチ260の相対位置を検知する相対位置センサ280をも含む。相対位置センサ280は、被加工物Wと関連する実際の溶接経路に対する溶接トーチ260の相対位置を判定する能力を有する任意のセンサであってよい。いくつかの実施形態においては、相対位置センサ280は、以下において詳述されるように、溶接回路経路内の電流センサである。電流を検知する際に、相対位置センサ280は、出力経路250内の任意の場所に配置することができる。例示用の相対位置センサ280は、電流センサ、光学システム、磁気システムなどを含みうる。いくつかの実施形態においては、相対位置センサ280は、センサ、トランスミッタ、レシーバ、トランシーバなどのシステムを有することができる。相対位置センサ280は、その相対位置を判定しうるように、基準又は開始点を利用することができることを理解されたい。相対位置センサ280は、実際の溶接経路に対するトーチ260の相対位置を通知するデータ/フィードバックをコントローラ210に提供している。
【0029】
溶接の際の溶接トーチ260の位置の検知は、(一連の位置であってよい)計画されている溶接経路に沿って溶接トーチ260の位置をガイド及び調節するべく、使用することができる。又、その他の実施形態においては、位置情報は、溶接トーチ260の実際の位置が、計画されている位置と異なっている際を単に判定するべく、使用することもできる。例えば、一実施形態においては、溶接システム200は、トーチ260が溶接の最中に被加工物W内の溝を辿るように、構成することができる。被加工物Wが、(例えば、部品/被加工物(W)や取付具のアライメントなどの寸法の変動に起因して)予想又は計画されている位置に存在していない場合にも、溶接システム200は、自動的に溝を辿ることが可能であり、この結果、実際の経路が、計画されている経路と異なっている場合にも、溶接が適切に適用されることになる。位置情報は、相対及び/又は絶対データを含みうる。一実施形態においては、以下において詳述されるように、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置の検知は、適切な溶接経路に沿ってトーチ260を維持するための1つの技法である。トーチ260の絶対位置の検知は、実際の溶接経路と計画されている溶接経路の間のなんらかの差を定量化するべく、使用することができる。
【0030】
図3は、例示用のトーチ360を有する別の例示用のシステム300の図面である。
図3においては、トーチ360は、被加工物W上の実際の溶接経路310に近接した電極Eを有する状態において、示されている。又、この実施形態においては、例示用の基準系320が、x、y、及びz方向においてプレーンを有する3軸基準として、示されている。一実施形態においては、基準系320は、当技術分野において既知のように、x、y、及びz座標によって場所を識別するべく、デカルト座標系を利用することができる。又、角度系を含む、その他の基準系を使用することもできる。様々な基準、開始、又は「ゼロ化」技法が使用されてもよい。
図3に示されているように、(例えば、相対位置センサ280を介して)溶接経路310に対するトーチ360の相対位置を検知することができる。同時に、x、y、及びz座標の基準系320に従って、(例えば、絶対位置センサ270を介して)トーチ360の絶対位置を検知することができる。
【0031】
例えば、
図2を再度参照すれば、相対位置センサ280は、溶接経路に沿ったトーチ360の実際の位置が、溶接経路に沿った計画されている地点よりも更に遠く右側(例えば、横y方向において、+1)であり、且つ、更に遠く下方(例えば、上/下のz方向において、-1)である、ことを検知しうる。同時に、絶対位置センサ270は、トーチ360が、基準系320内において、なんらかの例示用の位置(4,2,3)に位置している(即ち、トーチ360が、x、y、z軸に沿った、x=4、y=2、及びz=3という絶対位置に位置している)ことを検知しうる。更に詳しく後述するように、システム300が、相対位置の変動を判定しつつ、トーチ360の絶対位置を判定しうる、ことが重要である。
【0032】
図4は、溶接の際の様々な位置における例示用の溶接トーチ460の図面400である。位置(a)は、被加工物W上の実際の溶接経路に対する正しい相対位置(正しい横方向位置及び正しい高さ位置)において電極Eを有する溶接トーチ460を示している。例示を目的として、このトーチ位置は、基準軸320を使用することにより、絶対位置(2,2,2)に対応している。位置(b)は、被加工物W上の実際の溶接経路の(横方向において)右側の相対位置において電極Eを有する溶接トーチ460を示している。例示を目的として、このトーチ位置は、基準軸320を使用することにより、絶対位置(2,3,2)に対応している。位置(c)は、被加工物W上の実際の溶接経路よりも高い相対位置において電極Eを有する溶接トーチ460を示している。例示を目的として、このトーチ位置は、基準軸320を使用することにより、絶対位置(2,2,3)に対応している。
【0033】
溶接システムは、様々な方法により、検知された相対位置データに反応することができる。例えば、一実施形態においては、ウェルダシステムは、トーチが、計画されている経路を辿っている間に、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置が、計画されている溶接経路と異なっていることを検知しうる。別の実施形態においては、ウェルダシステムは、トーチが実際の経路を辿っている間に、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置が、計画されている溶接経路と異なっていることを検知しうる。いずれの実施形態においても、ウェルダシステムは、その差に応答して、トーチの実際の位置を調節することができる。これらの調節は、リアルタイムで発生することも可能であり、或いは、溶接経路に沿った後続の位置に、且つ/又は、溶接経路に沿った後のパスに、適用することもできる。位置データは、収集することが可能であり、且つ、まっすぐ(水平材)、スタッターステップ、ウィーブ(weave)、円形、凸形、凹形、三角形、梯子、「v字」、正方形、階段などを含む、様々な溶接パターンにおいて、調節を実施することができる。
【0034】
一実施形態においては、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置は、例えば、スルーアークシーム追跡(TAST:Through Arc Seam Tracking)を使用して、アークを通過する溶接電流を監視することにより、判定することができる。
図5は、例示用のトーチ560を有する別の例示用のシステム500の図面である。
図5においては、トーチ560は、被加工物W上の実際の溶接経路510に近接した電極Eを有する状態において、示されている。
図5は、溶接トーチが横方向のウィーブ溶接パターン(L→C→R→C→L→C→R...)によって両側部の間において移動するのに伴って、溶接経路510との関係における溶接トーチ560の左L、中心C、及び右R位置を示している。又、この実施形態においては、例示用の基準系520は、上述のように、x、y、及びz方向においてプレーンを有する3軸基準として、示されている。
【0035】
図5に示されているように、溶接経路510に対するトーチ560の相対位置は、相対位置センサ580によって検知されている。この実施形態においては、相対位置センサ580は、溶接アークAを通じて電極Eから被加工物Wに流れる電流を検知する電流センサである。TASTは、溶接経路510との関係における「z」軸に沿ったトーチ560の垂直方向位置を判定するべく、溶接電流フィードバックを使用している。電極Eから被加工物Wまでの距離が増大するのに伴って、電流は小さくなる。電極Eから被加工物Wまでの距離が短くなるのに伴って、電流の量は増大する。TASTは、被加工物Wの上方の電極Eの高さを維持するべく、トーチの垂直方向位置の変動を補正している(例えば、突出部)。同様に、TASTは、溶接経路510との関係において「y」軸に沿ったトーチ560の横方向位置を判定するべく、ロボットの溶接電流フィードバック及びウィーブ溶接パターンを使用することができる。例えば、溶接経路510の溝の中心(例えば、
図5のトーチ560の中心C位置)においては、溶接アークA電流は、最小である。トーチ560がそのウィーブサイクルのエッジ(例えば、
図5のトーチ560の左L位置)に到達するのに伴って、溶接アークA電流は、ピークに達する。ウィーブサイクルの1つのエッジにおけるピーク溶接アークA電流の値が増大している場合には、トーチ560は、実際の溶接経路510から離れるように運動している。この状況においては、溶接システム500のコントローラ590は、溶接経路の変動にも拘らず、適切な溶接経路を維持するべく、実際の溶接経路510の中心に向かって、溶接トーチ560を調節することができる。
【0036】
但し、TAST及び類似のシステムは、実際の溶接経路510に対する溶接トーチ560の相対位置を判定するべく、アーク、電流、及び/又は位置フィードバックを提供しうるが、(フィードバック信号の)処理及び帯域幅の制約が、これらの技術が、通常の溶接速度において溶接結合部とセンタリングされた状態において溶接経路に沿ってトーチ560を確実に維持することを妨げる可能性がある。TAST及び類似の技法は、反動性を有しており、且つ、進行中の溶接経路に対するなんらの絶対的な位置のシフトを含んではいない。例えば、被加工物Wが右Rにシフトした場合に、TASTを使用する溶接経路510に沿ったウィーブパターンのそれぞれの横方向パスは、溶接システム500がリアルタイムで調節するように構成されている場合には、計画されている溶接経路との関係において、左L側部における早期の回動点と、右R側部における遅れた回動点と、を結果的にもたらすことになる。これらの回動点の常時調節は、例えば、約40~50インチ/分などの、相対的に大きな溶接速度においては、可能ではない。いくつかの用途においては、TAST及び類似の技法は、溶接の様々な側面に応じて、相対的に低速の溶接速度においてさえも、十分な調節を実施できない場合がある。
【0037】
この課題に対処するべく、溶接経路510に対するトーチ560の相対位置が相対位置センサ580によって検知されるのと実質的に同時に、溶接経路510に対するトーチ560の絶対位置を絶対位置センサ570によって検知することができる。一実施形態においては、トーチ560の絶対位置は、絶対x、y、及びz座標において、
図5において示されている基準系520に従って検知することができる。ロボットのヘッド位置データからの溶接トーチ560の絶対位置の判定は、溶接速度におけるロボットシステムに伴う、不十分な精度、位相関係の問題、及び帯域幅/処理の制限に起因して、効果的ではない。ロボットコントローラからの位置データは、不正確である可能性があり、且つ、大幅に遅延しうる。
【0038】
絶対位置データは、溶接中であり、且つ、例えば、TASTシステムを介して、相対位置フィードバックを受け取っている際の、トーチ560の絶対位置を通知している。この結果、データの収集及び処理が、ロボットコントローラには結合されておらず、これにより、その上述の固有の問題が回避されている。絶対位置センサ570及び相対位置センサ580からのデータフィードバックは、溶接コントローラ590に提供することができる。この実施形態においては、コントローラ590は、実際の溶接経路510が、計画されている溶接経路と異なっている際に、実際の溶接経路510に対する溶接トーチ560の相対位置に基づいて、且つ、溶接トーチ560の絶対位置に基づいて、補正ベクトルを算出することができる。補正ベクトルは、計画されている溶接経路に沿った後続の地点及び/又は同一の溶接経路に沿った後続のパスを調節するべく、使用することができる。様々な実施形態においては、補正ベクトルは、補正ベクトルによって溶接ルーチン240の計画されている溶接経路を調節する、補正ベクトルをロボットコントローラに提供する、などにより、実装することができる。その他の実施形態においては、補正ベクトルの一部分又はすべては、例えば、作業台位置決め装置などを含む、被加工物に対する溶接トーチの相対位置を調節しうるその他の装置に対して適用することができる。補正ベクトルの適用は、迅速且つ正確に実装することが可能であり、且つ、溶接経路510の全体に適用される位置調節を結果的にもたらし、これにより、同一の調節を必要としている将来の地点について調節処理を反復するニーズが除去される。
【0039】
更には、ロボットの溶接経路は、補正ベクトルにより、継続的に調節することができる。例えば、(それぞれ、センサ570及び580を介した)絶対位置データ及びTASTフィードバックは、溶接経路510に跨って、5~10個のウィーブサイクルにわたって蓄積することができる。絶対位置データ及びTAST相対データを組み合わせることにより、様々なアルゴリズムを使用して、実際の溶接経路位置を(例えば、基準系520内の)計画されている経路位置に関係付けることができる。ロボットによって制御されている後続の溶接経路に適用される補正ベクトルを算出するべく、例えば、5~10個のサイクルにわたる実際の溶接経路と計画されている溶接経路の間の平均差を使用することができる。別の実施形態においては、絶対及び相対位置データは、継続的に収集することが可能であり、且つ、例えば、5~10サイクルの移動平均として、補正ベクトルに適用することができる。
【0040】
図6は、相対及び絶対位置データの組合せに基づいた例示用の補正ベクトルの適用の前及び後の例示用の計画された溶接経路の図面600である。計画されている溶接経路605及び実際の溶接経路610が被加工物W上において示されている。溶接経路(a)は、溶接経路に沿ったそれぞれの位置又はサイクルごとに実際の溶接経路610に到達するべく、計画されている溶接経路605及び相対位置に基づいた補正630を示している。この例においては、溶接トーチ(図示されてはいない)の位置に対する補正は、+y方向におけるものである。例えば、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置を検知し、且つ、それぞれの地点ごとに必要とされる調節を継続的に実施するべく、TASTシステムを利用することができる。例示を目的として、このトーチ位置補正は、基準軸620を使用することにより、それぞれの地点に対するy+3補正に対応しうる。
【0041】
溶接パス(b)は、溶接経路に沿った最初の4サイクルについて実際の溶接経路610に到達するべく、計画されている溶接経路605及び相対位置に基づいた補正630を示している。但し、このパスにおいては、+y方向における最初の4回の補正における溶接トーチの絶対位置が、絶対位置センサにより、キャプチャされている。溶接コントローラ(図示されてはいない)は、実際の溶接経路610が、計画されている溶接経路605と異なっている際に、実際の溶接経路610に対する溶接トーチの相対位置及び溶接トーチの絶対位置に基づいて、補正ベクトルを算出することができる。この例においては、算出される補正ベクトルは、(0,+3,0)となろう。第4サイクルの後に、(0,+3,0)の補正ベクトルが、計画されている溶接経路605に適用され、この結果、後続の位置用の調節済みの経路(615)が得られることになる。調節済みの経路615と関連する後続のサイクルは、もはや、パス(a)において示されている連続的な補正630(並びに、関連する処理)を必要としてはいない。
【0042】
例えば、溶接トーチ位置は、相対位置データ(例えば、検知されたアーク電流)に基づいてリアルタイムで調節することができる。但し、これらの相対位置調節が発生するのに伴って、実際の調節は、追跡又は定量化されていない。この欠点に対処するべく、一実施形態においては、トーチの位置が実際の溶接経路を追跡するべく調節されるのに伴って、計画されている且つ実際の溶接位置(経路)の間の差を判定するべく、基準系(例えば、x、y、及びz座標)内のトーチの絶対位置が、同一の基準系内において、計画されている位置と比較されている。このデータは、トーチの位置に対してリアルタイムで実施されている調節を表している。このデータ及びその差から、補正ベクトルを算出することが可能であり、且つ、同一の調節に対するニーズを除去するべく、後続の位置/経路に対して事前に適用することができる。このようにして、相対位置調節が、補正ベクトルの計算及び実装を駆動する絶対位置チェックをトリガしている。
【0043】
補正ベクトルと、補正ベクトルを実装する時点と、を算出するべく、継続的な/周期的な監視及び様々なアルゴリズムの様々な組合せを使用することができる。例えば、平均、移動平均、最大値、最小値、オフセット、ヒステリシスなど、並びに、様々な制御理論を補正ベクトルに適用することができる。更には、補正ベクトルの個々の成分(例えば、上述の例示用の基準軸内のx、y、及びz成分)に異なるアルゴリズム及び/又はタイミングを適用することもできる。例えば、x位置の変動は、y及び/又はz位置の変動とは異なる方式により、且つ、異なる時点において、補正ベクトルに対する変更を結果的にもたらしうる。x、y、及び/又はzについて、(詳細に後述する)補正ループが、独立的に(但し、同時に)実行されてもよい。補正ベクトルに対する調節/更新を実施する又はこれを実装する前に、補正ベクトルは、保存することができると共に、後から算出される補正ベクトルや様々な位置などと比較することができる。
【0044】
以下のブロックダイアグラムは、上述のシステムとの対応性を含む、補正ベクトルの算出及び実装と関連する例示用の方法である。例示用の方法は、ロジック、ソフトウェア、ハードウェア、又はこれらの組合せにおいて、実行することができる。これに加えて、方法は、1つの順序において提示されているが、ブロックは、異なる順序やシリーズにおいて、且つ/又は、並行して、実行することができる。更には、更なるステップ又はより少ない数のステップが使用されてもよい。
【0045】
図7は、上述の装置、システム、装置、コンポーネント、及び/又は構成のうちの任意のものを使用することにより、補正ベクトルを算出及び実装する例示用の方法700を示している。まず、ステップ710において、方法は、初期補正ベクトルをゼロに設定するステップを含む。次いで、ステップ720において、方法は、計画されている溶接経路及び補正ベクトルに従って溶接トーチを運動させるステップを含む。次に、ステップ730において、方法は、実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置を判定するステップを含む。例えば、相対位置は、自動化されたシーム追跡システムの一部分としてのものを含む、電流センサを使用することにより、判定することができる。ステップ740において、方法は、相対位置データに基づいて、位置補正が必要とされているかどうかを判定している。位置補正が必要とされていない場合には(例えば、実施の溶接経路が、計画されている溶接経路に十分近接している、或いは、閾値未満である際には)、方法は、補正ベクトルの実装又はこれに対する調節を伴うことなしに、溶接トーチの運動を継続するステップ720に戻る。
【0046】
位置補正が必要とされている場合には(例えば、実際の溶接経路が、計画されている溶接経路と異なっている、或いは、閾値超である際には)、方法は、ステップ720に進み、ここで、溶接トーチの位置が補正されている。又、ステップ760において、方法は、ステップ750からの溶接トーチの補正に対応する溶接トーチの絶対位置を判定している。実際の溶接経路に対する溶接トーチの相対位置の補正に対応する溶接トーチの絶対位置の判定は、更なる分析及び/又は処理を許容する方式により、補正を定量化するものである。ステップ770において、方法は、相対及び絶対位置データに基づいて補正ベクトルを算出している。次いで、ステップ780において、方法は、補正ベクトルを実装する時点を判定している。
【0047】
例えば、一実施形態において、溶接トーチの相対位置が、5回の連続的な溶接サイクルにおいて、y方向において+3運動することにより、補正される場合には、y方向における+3の継続的な調節が、溶接経路に沿ったそれぞれの位置について、溶接コントローラによって処理される必要がないように、ロボットコントローラが、溶接経路の計画されているロボット運動をy方向において+3だけシフトさせるように、(0,3,0)の補正ベクトルを処理することができる。
【0048】
上述の実施形態は、上述のシステム及び方法に関係付けられているが、これらの実施形態は、例示を目的としており、且つ、これらの実施形態の適用可能性を本明細書において記述されている内容にのみ限定することを意図したものではない。本明細書において記述されている制御システム及び方法は、上述の発明の範囲の精神を逸脱することなしに、アーク溶接、レーザー溶接、蝋付け、はんだ付け、プラズマ切削、ウォータージェット切削、レーザー切削、並びに、類似の制御方法を使用する任意のその他のシステム又は方法に関係するシステム及び方法に等しく適用可能でありうると共に、これらにおいて使用することができる。本明細書における実施形態及び説明は、当業者により、これらのシステム及び方法のうちの任意のものに、容易に内蔵されうる。
【0049】
以上、本発明が、その実施形態の説明によって例示されており、且つ、これらの実施形態は、ある程度、詳細に記述されているが、添付の請求項の範囲をこのような詳細に制限する又はなんらかの方法によって限定することは、本出願人の意図するところではない。当業者には、更なる利点及び変更について容易に明らかとなろう。従って、その相対的に広い態様における本発明は、図示及び記述されている特定の詳細、代表的な装置及び方法、及び例示用の例に限定されるものではない。従って、本出願人の一般的な発明概念の精神又は範囲を逸脱することなしに、このような詳細からの逸脱が実施されうる。
【符号の説明】
【0050】
10 溶接セル
12 フレーム
14 ロボット
16 溶接テーブル
18 溶接テーブル
22 溶接被加工物
24 溶接被加工物
26 フロントアクセスドア
28 リアアクセスドア
32 ウィンドウ
40 制御パネル
42 制御エンクロージャ
60 溶接トーチ/ガン
62 コンジット
64 溶接電極ワイヤ
72 電源
74 プラットフォーム
76 ロボットコントローラ
80 地点
82 チャネル
200 溶接システム
210 溶接コントローラ
220 プロセッサ
230 メモリ
240 溶接ルーチン
250 溶接ライン
260 溶接トーチ
270 絶対位置センサ
280 相対位置センサ
300 例示用のシステム
310 溶接経路
320 基準系
360 トーチ
400 システム
460 溶接トーチ
500 溶接システム
510 溶接経路
560 トーチ
570 位置センサ
580 位置センサ
590 コントローラ
600 溶接経路
605 溶接経路
610 溶接経路
620 軸
630 位置に基づいた補正
700 方法
710 ステップ
720 ステップ
730 ステップ
740 ステップ
750 ステップ
760 ステップ
770 ステップ
780 ステップ
A 溶接アーク
E 電極
W 被加工物