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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240129BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240129BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240129BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20240129BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02H7/18
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020546057
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 JP2019035739
(87)【国際公開番号】W WO2020054775
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】P 2018172747
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】小早川 忠彦
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-148008(JP,A)
【文献】特開2011-229319(JP,A)
【文献】特開2017-159449(JP,A)
【文献】特開2008-177138(JP,A)
【文献】特開2005-182522(JP,A)
【文献】特開2010-158163(JP,A)
【文献】特開2011-201004(JP,A)
【文献】特開2016-022566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B23B45/00-45/16
B23D29/00-29/02
B23D45/16
B24B23/00-23/08
B25B21/00-33/00
B25C1/00-13/00
B25D1/00-17/32
B26B15/00
B27B1/00-23/00
A01D34/68-34/69
A01G3/047-3/053
H01M10/44;10/48
H02H7/18
H02J7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
過負荷に関連するバッテリパックの状態値が保護閾値を越したことに応じて保護動作を実行する前記バッテリパックから電力の供給を受けて作動する電動作業機であって、
前記バッテリパックから電力の供給を受けて駆動するモータと、
前記モータを始動させるために操作されるように構成された操作部と、
前記操作部が操作されたことに応じて、前記モータを始動させ、前記バッテリパックから前記モータへ流れる放電電流の値を電流上限値以下に制御するように構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記バッテリパックの状態値を取得し、
前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに応じて、前記電流上限値減少させる、ように構成されている、
電動作業機。
【請求項2】
過負荷に関連するバッテリパックの状態値が保護閾値を越したことに応じて保護動作を実行する前記バッテリパックから電力の供給を受けて作動する電動作業機であって、
前記バッテリパックから電力の供給を受けて駆動するモータと、
前記モータを始動させるために操作されるように構成された操作部と、
前記操作部が操作されたことに応じて、前記モータを始動させ、前記モータのパルス幅変調制御におけるデューティ比をデューティ比上限値以下に制御するように構成された制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記バッテリパックの状態値を取得し、
前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに応じて、前記デューティ比上限値減少させる、ように構成されている、
電動作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記バッテリパックの状態値に基づいて、前記バッテリパックにより前記保護動作が実行される前に、前記モータを停止させるように構成されている、
請求項1又は2に記載の電動作業機。
【請求項4】
前記バッテリパックの状態値は、前記バッテリパックから前記モータに供給される放電電流の値に応じた加算値を累積した、前記バッテリパックが前記保護動作を実行するために用いる累積値に相当し、
前記制御部は、前記バッテリパックの状態値を用いて、前記モータの駆動を制御するように構成されている、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項5】
前記制御部は、
前記バッテリパックが前記保護動作を実行するために用いる累積値を算出するためのマップ情報を取得し、
前記バッテリパックから前記電動作業機へ流れる放電電流の値を検出し、
検出された前記放電電流の値と前記マップ情報とから、前記バッテリパックにより前記マップ情報における前記放電電流の値に応じた加算値を累積して算出される前記累積値に対応する前記バッテリパックの状態値を算出し、
算出された前記バッテリパックの状態値を用いて、前記モータの駆動を制御する、ように構成されている、
請求項1~のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項6】
前記制御部は、
前記バッテリパックから前記累積値を取得し、
前記バッテリパックから前記累積値を取得したことに応じて、前記バッテリパックから取得された前記累積値を、前記バッテリパックの状態値とするように構成されている、
請求項に記載の電動作業機。
【請求項7】
前記制御部は、前記バッテリパックから取得された過去の前記累積値に、前記マップ情報における検出された前記放電電流の値に応じた前記加算値を加算して、前記バッテリパックの状態値を算出するように構成されている、
請求項6に記載の電動作業機。
【請求項8】
前記バッテリパックは、前記累積値が前記保護閾値を超えたことに応じて、前記保護動作を実行するように構成されており、
前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値よりも小さい制限閾値を超えることが、前記バッテリパックの状態が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに相当する、
請求項~7のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項9】
前記バッテリパックは、前記累積値が前記保護閾値を超えたことに応じて、前記保護動作を実行するように構成されており、
前記制御部は、
前記バッテリパックから前記モータへ流れる放電電流の値と前記加算値との対応関係を示すマップ情報を取得し、
前記放電電流の値を検出し、
前記バッテリパックの状態値と検出された前記放電電流の値と前記マップ情報とから、前記バッテリパックが前記保護動作を実行するまでの時間を予測する、ように構成されており、
予測された前記時間が時間閾値よりも短いことが、前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに相当する、
請求項~8のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項10】
前記バッテリパックは、前記累積値が前記保護閾値を超えたことに応じて、前記保護動作を実行するように構成されており、
前記制御部は、前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値よりも小さい停止閾値を超えたことに応じて、前記モータを停止させるように構成されている、
請求項のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項11】
前記停止閾値は、第1停止閾値と、前記第1停止閾値よりも大きい第2停止閾値とを含み、
前記制御部は、前記バッテリパックの状態値が前記第1停止閾値を超えたことに応じて、前記モータを停止させた後、前記操作部が操作されたことに応じて、前記モータを再始動させ、前記バッテリパックの状態値が前記第2停止閾値を超えたことに応じて、前記モータを停止させた後、前記バッテリパックの状態値が前記第1停止閾値を下回るまで、前記モータの再始動を禁止するように構成されている、
請求項10に記載の電動作業機。
【請求項12】
前記制御部は、
前記バッテリパックから前記モータへ流れる放電電流の値と前記加算値との対応関係を示すマップ情報を取得し、
前記放電電流の値を検出し、
検出された前記放電電流の値と取得された前記マップ情報とに基づいて、前記制限閾値を設定するように構成されている、
請求項8に記載の電動作業機。
【請求項13】
前記制御部は、
前記バッテリパックのバッテリ温度と、前記バッテリ温度別の前記マップ情報と、を取得し、
検出された前記放電電流の値と、取得された前記バッテリ温度と、取得された前記マップ情報と、に基づいて、前記制限閾値を設定する、ように構成されている、
請求項12に記載の電動作業機。
【請求項14】
前記バッテリパックの状態値は、前記バッテリパックの残容量であり、
前記バッテリパックは、前記残容量が前記保護閾値を下回ったことに応じて、前記保護動作を実行するように構成されており、
前記残容量が前記保護閾値よりも大きい容量閾値を下回ることが、前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに相当する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項15】
前記バッテリパックの状態値は、前記バッテリパックのバッテリ温度であり、
前記バッテリパックは、前記バッテリ温度が前記保護閾値を超えたことに応じて、前記保護動作を実行するように構成されており、
前記バッテリ温度が前記保護閾値よりも小さい温度閾値を超えたことが、前記バッテリパックの状態値が前記保護閾値に対して予め決められた範囲まで近づいたことに相当する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項16】
前記制御部へ電源を供給するための主電源スイッチを更に備え、
前記制御部は、前記主電源スイッチがオンになった後、且つ、前記モータの駆動前の時点から、前記バッテリパックに対して情報の要求を開始する、
請求項1~15のいずれか1項に記載の電動作業機。
【請求項17】
前記制御部は、前記バッテリパックからシリアル通信によって伝送された情報を取得し、
前記バッテリパックから前記モータへ電流が流れている時における前記シリアル通信の頻度は、前記バッテリパックから前記モータへ電流が流れていない時における前記シリアル通信の頻度よりも高い、
請求項1~16のいずれか1項に記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本国際出願は、日本国特許庁に出願された日本国特許出願第2018-172747号に基づく優先権を主張するものであり、日本国特許出願第2018-172747号の全内容を本国際出願に参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電動作業機に関する。
【背景技術】
【0003】
下記特許文献1に記載の電動作業機は、複数のバッテリセルが直列接続されたバッテリパックから電力の供給を受けて動作する。上記バッテリパックは、複数のバッテリセルのいずれか1つの電圧値が閾値よりも低い状態が一定時間継続した場合に、放電禁止信号を電動作業機へ出力している。上記電動作業機は、バッテリパックから放電禁止信号が入力されると、モータの電流を制御するスイッチング素子を停止して、バッテリパックを保護している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-131770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリパックは、比較的大きな電流が比較的長い時間流れた場合にも、故障する可能性がある。よって、このような過電流状態の場合においても、放電禁止信号がバッテリパックから出力されて、バッテリパックが保護されることが望ましい。しかしながら、作業機の負荷が高くなると、バッテリパックから作業機へ流れる電流が大きくなる。そのため、バッテリパックが過電流状態の時に放電を禁止すると、作業機の負荷が高いときに頻繁に放電が禁止され、作業効率が低下するという問題がある。
【0006】
本開示は、保護すべきときにバッテリパックの保護機能を動作させつつ、使用者の利便性を向上した電動作業機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの局面は、過負荷になったことに応じて保護動作を実行するバッテリパックから電力の供給を受けて作動する電動作業機であって、モータと、スイッチと、制御部と、を備える。モータは、バッテリパックから電力の供給を受けて駆動する。スイッチは、モータを始動させるために操作されるように構成される。制御部は、スイッチが操作されたことに応じて、モータを始動させ、バッテリパックの放電状態に関する状態情報を取得し、取得した状態情報に基づいて、バッテリパックによる保護動作の実行を抑制するように、モータの駆動を制御するように構成されている。
【0008】
上述の電動作業機の制御部によりバッテリパックの放電状態に関する状態情報が取得される。バッテリパックは過負荷になると保護動作を実行する。そのため、制御部は、取得した状態情報に基づいて、バッテリパックによる保護動作の実行を抑制するように、モータの駆動を制御する。これにより、バッテリパックによる保護動作の実行を抑制しつつ、電動作業機による作業を継続することができる。このとき、バッテリパックが保護動作を実行する条件は変更されない。よって、保護すべきときにバッテリパックが保護動作を実行できるようにしつつ、使用者の利便性を高めることができる。
【0009】
また、制御部は、状態情報に基づいて、バッテリパックにより保護動作が実行される前に、供給電力に関するモータの制御パラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0010】
バッテリパックにより保護動作が実行される前に、制御部が供給電力に関するモータの制御パラメータを変更することにより、バッテリパックによる保護動作の実行が抑制され、電動作業機による作業を継続することができる。
【0011】
また、制御部は、状態情報に基づいて、供給電力を制限するように制御パラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0012】
制御部が供給電力を制限するように制御パラメータを変更することにより、バッテリパックが保護動作を実行する前に供給電力が制限される。その結果、バッテリパックの負荷の累積が抑制されるため、バッテリパックによる保護動作が実行されない状態で、電動作業機による作業を継続することができる。
【0013】
また、状態情報は、バッテリパックが保護動作を実行する予兆に関する情報を含んでいてもよい。
【0014】
状態情報が、保護動作が実行される予兆に関する情報を含んでいることにより、制御部は、バッテリパックが保護動作を実行する前にその予兆を認識することができる。ひいては、制御部は、バッテリパックにより保護動作が実行される前に、保護動作が実行されないように、すなわち、バッテリパックの負荷の累積が抑制されるように、制御パラメータを変更することができる。
【0015】
また、制御パラメータは、バッテリパックからモータへ流れる放電電流の値を含み、制御部は、状態情報に基づいて、放電電流の値を制限してもよい。
【0016】
制御部が放電電流を制限することにより、バッテリパックが保護動作を実行する前に供給電力が制限される。その結果、使用者は、電動作業機の出力が低下するものの、バッテリパックによる保護動作が実行されない状態で、電動作業機による作業を継続することができる。
【0017】
また、制御部は、状態情報に基づいて、バッテリパックにより保護動作が実行される前に、モータを停止させるように構成されていてもよい。
【0018】
バッテリパックが保護動作を実行することにより、電動作業機は比較的長い期間使用できなくなる。そこで、制御部が、バッテリパックによる保護動作が実行される前に、モータを停止させることにより、比較的短い時間でバッテリパックを回復させて、電動作業機による作業を再開することができる。
【0019】
また、状態情報は、バッテリパックからモータに供給される放電電流の値に応じた加算値を累積した、バッテリパックが保護動作を実行するために用いる累積値を含んでもよい。制御部は、累積値をバッテリ保護値として用いて、モータの駆動を制御するように構成されていてもよい。
【0020】
制御部により、バッテリパックが保護動作を実行するために用いる累積値が、バッテリパックから取得される。これにより、制御部は、取得された累積値を用いて、バッテリパックが保護動作を実行することを抑制するように、モータの駆動を制御することができる。
【0021】
また、状態情報は、バッテリパックが保護動作を実行するために用いる累積値を算出するためのマップ情報を含んでもよい。制御部は、放電に関する放電関係値を検出し、検出された放電関係値とマップ情報とからバッテリ保護値を算出し、算出されたバッテリ保護値を用いて、モータの駆動を制御するように構成されていてもよい。バッテリ保護値は、バッテリパックによりマップ情報における放電関係値に応じた加算値を累積して算出される累積値に対応する値であってもよい。
【0022】
制御部により、バッテリパックが保護動作を実行するために用いる累積値を算出するためのマップ情報が取得され、取得されたマップ情報を用いて、累積値に対応するバッテリ保護値が算出される。これにより、制御部は、算出されたバッテリ保護値を用いて、バッテリパックが保護動作を実行することを抑制するように、モータの駆動を制御することができる。
【0023】
また、放電関係値は、バッテリパックから電動作業機へ流れる放電電流の値であってもよい。
【0024】
放電関係値として検出された放電電流の値を用いて、バッテリ保護値を算出することができる。
【0025】
また、状態情報は、累積値を含んでいてもよい。制御部は、バッテリパックから累積値を取得したことに応じて、バッテリパックから取得された累積値を、バッテリ保護値とするように構成されていてもよい。
【0026】
制御部が、バッテリパックから累積値を取得したことに応じて、バッテリパックから取得された累積値がバッテリ保護値とされる。したがって、制御部は、できる限りバッテリパックが保護動作を実行するために用いる値と同じ値を用いるため、バッテリパックが保護動作を実行する予兆を精度良く検出することができる。
【0027】
また、制御部は、バッテリパックから取得された過去の累積値に、マップ情報における検出された放電関係値に応じた加算値を加算して、バッテリ保護値を算出するように構成されていてもよい。
【0028】
制御部により、バッテリパックから過去に取得された累積値に加算値を加算して、バッテリ保護値が算出される。したがって、制御部は、できる限りバッテリパックが保護動作を実行するために用いる値を用いることができる。ひいては、制御部は、できる限りバッテリパックが保護動作を実行するために用いる値を用いつつ、通信と通信との間や通信が一時的に途切れた場合などの累積値を取得できない期間でも、バッテリ保護値を更新することができる。よって、バッテリパックが保護動作を実行する予兆を精度良く検出することができる。
【0029】
また、バッテリパックは、累積値が保護閾値を超えたことに応じて、保護動作を実行するように構成されていてもよい。制御部は、バッテリ保護値が保護閾値よりも小さい制限閾値を超えたことに応じて、供給電力を制限するように、供給電力に関するモータの制御パラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0030】
バッテリ保護値が保護閾値よりも小さい制限閾値を超えると、供給電力を制限するように、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、累積値及びバッテリ保護値の増加が抑制される。その結果、バッテリパックによる保護動作の実行が抑制され、モータは、バッテリパックから電力供給を継続して受けることができる。
【0031】
また、状態情報は、バッテリパックからモータへ流れる放電電流の値と加算値との対応関係を示すマップ情報を含んでもよい。バッテリパックは、累積値が保護閾値を超えたことに応じて、保護動作を実行するように構成されていてもよい。制御部は、放電電流を検出し、バッテリ保護値と検出された放電電流の値とマップ情報とから、バッテリパックが保護動作を実行するまでの時間を予測し、予測された時間が時間閾値よりも短いことに応じて、供給電力を制限するように供給電力に関するモータの制御パラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0032】
バッテリパックが保護動作を実行するまでの時間が予測され、予測された時間が時間閾値よりも短いことに応じて、供給電力を制限するように、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、累積値及びバッテリ保護値の増加が抑制される。その結果、バッテリパックによる保護動作の実行が抑制され、モータは、バッテリパックから電力供給を継続して受けることができる。
【0033】
また、バッテリパックは、累積値が保護閾値を超えたことに応じて、保護動作を実行するように構成されていてもよい。制御部は、バッテリ保護値が保護閾値よりも小さい停止閾値を超えたことに応じて、モータを停止させるように構成されていてもよい。
【0034】
バッテリ保護値が保護閾値よりも小さい停止閾値を超えると、モータが停止される。これにより、累積値及びバッテリ保護値が減少する。その結果、バッテリパックによる保護動作の実行された場合よりも、短いモータ停止期間により、バッテリパックを回復させることができる。ひいては、モータは、比較的短い停止期間後に、バッテリパックからの電力の受給を再開することができる。
【0035】
また、停止閾値は、第1停止閾値と、第2停止閾値とを含んでもよい。第2停止閾値は、第1停止閾値よりも大きい。制御部は、バッテリ保護値が第1停止閾値を超えたことに応じて、モータを停止させた後、スイッチが操作されたことに応じて、モータを再始動させてもよい。また、制御部は、バッテリ保護値が第2停止閾値を超えたことに応じて、モータを停止させた後、バッテリ保護値が第1停止閾値を下回るまで、モータの再始動を禁止するように構成されていてもよい。
【0036】
バッテリ保護値が第1停止閾値を超えたことに応じて、モータが停止され、その後、操作部が操作されたことに応じて、モータが再始動される。さらに、バッテリ保護値が第2停止閾値を超えたことに応じて、モータが停止され、バッテリ保護値が第1停止閾値を下回るまで、モータの再始動が停止される。これにより、使用者は、一旦モータが停止した際には、操作部を操作することにより電動作業機の使用を継続することができるとともに、使用を継続することよって、電動作業機が使用できなくなる期間が到来することを認識することができる。
【0037】
また、状態情報は、バッテリパックからモータへ流れる放電電流の値と加算値との対応関係を示すマップ情報を含んでもよい。制御部は、放電電流の値を検出し、検出された放電電流の値と取得されたマップ情報とに基づいて、制限閾値を設定するように構成されていてもよい。
【0038】
状態情報がマップ情報を含んでいることにより、制御部は、放電電流の値に応じて、制限閾値を変化させることができる。ひいては、制御部は、放電電流の値に応じて、好適に供給電力を制限することができる。
【0039】
また、状態情報は、バッテリパックのバッテリ温度と、バッテリ温度別のマップ情報と、を含んでいてもよい。制御部は、検出された放電電流の大きさと、取得されたバッテリ温度と、取得されたマップ情報と、に基づいて、制限閾値を設定してもよい。
【0040】
状態情報がバッテリ温度別のマップ情報を含んでいることにより、制御部は、バッテリ温度と放電電流の値とに応じて、制限閾値を変化させることができる。ひいては、制御部は、より好適に供給電力を制限することができる。
【0041】
また、状態情報は、バッテリパックの残容量を含んでもよい。バッテリパックは、残容量が第1容量閾値を下回ったことに応じて、保護動作を実行してもよい。制御部は、残容量が第1容量閾値よりも大きい第2容量閾値を下回ったことに応じて、供給電力を制限するように供給電力に関するモータの制御パラメータを変更するように構成されていてもよい。
【0042】
バッテリパックの残容量が第1容量閾値よりも大きい第2容量閾値を下回ると、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、バッテリパックの残容量の減少速度が緩やかになる。その結果、バッテリパックによる保護動作の実行が抑制され、モータは、バッテリパックから供給電力を継続して受けることができる。
【0043】
また、状態情報は、バッテリパックのバッテリ温度を含んでもよい。バッテリパックは、バッテリ温度が第1温度閾値を超えたことに応じて、保護動作を実行してもよい。制御部は、バッテリ温度が第1温度閾値よりも小さい第2温度閾値を超えたことに応じて、供給電力を制限するように供給電力に関する制御パラメータを変更してもよい。
【0044】
バッテリ温度が第1温度閾値よりも小さい第2温度閾値を超えると、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、バッテリパックの温度上昇が抑制される。その結果、バッテリパックによる保護動作の実行が抑制され、モータは、バッテリパックから供給電力を継続して受けることができる。
【0045】
また、制御部は、モータのパルス幅変調(PWM)制御を実行してもよい。制御パラメータは、PWM制御でのデューティ比を含んでいてもよい。
【0046】
PWM制御におけるデューティ比を変更することによって、モータに流れる電流の値を変更し、モータに供給される供給電力を変更することができる。ひいては、デューティ比を低減して供給電力を抑制することによって、バッテリパックによる保護動作の実行を抑制することができる。
【0047】
また、制御部は、モータの駆動前から状態情報を取得し、モータの駆動前から状態情報に基づいて制御パラメータを変更してもよい。
【0048】
バッテリパックを電動作業機に装着すると、モータの駆動前に、電動作業機によりバッテリパックから状態情報が取得され、取得された状態情報に基づいて制御パラメータが変更される。これにより、バッテリパックが保護動作を実行しないように制御パラメータを設定してから、モータを始動させることができる。ひいては、モータの始動直後に、バッテリパックが保護動作を実行して、モータが停止することを回避できる。
【0049】
また、上述の電動作業機は、制御部へ電源を供給するための主電源スイッチを更に備えてもよい。制御部は、主電源スイッチがオンになった後、且つ、モータの駆動前の時点から、バッテリパックに対して状態情報の要求を開始してもよい。
【0050】
主電源スイッチがオン状態になった後に、電動作業機とバッテリパックとの通信が開始される。そのため、電動作業機にバッテリパックが装着されただけで通信を開始する場合と比べて、消費電力を抑制することができる。また、モータの駆動前の時点から、バッテリパックに対して状態情報の要求が開始される。そのため、モータの駆動前に制御パラメータを変更して、バッテリパックが保護動作を実行しない消費電力の範囲でモータを始動させることができる。
【0051】
また、制御部は、バッテリパックからシリアル通信によって伝送された状態情報を取得してもよい。バッテリパックからモータへ電流が流れている時におけるシリアル通信の頻度は、バッテリパックからモータへ電流が流れていない時におけるシリアル通信の頻度よりも高くてもよい。
【0052】
バッテリパックからモータへ電流が流れていない時は、バッテリパックからモータへ電流が流れている時と比べて、バッテリパックの状態が変化しにくい。そのため、バッテリパックからモータへ電流が流れていない時には、シリアル通信の頻度を抑制することにより、電動作業機の処理負荷を抑制することができる。
【0053】
また、制御部は、取得された状態情報に基づいて、バッテリパックからモータへ流れる放電電流について電流上限値を設定し、放電電流の値が設定された電流上限値以下に制御してもよい。
【0054】
放電電流の電流上限値が設定され、放電電流の値が設定された電流上限値以下となるようにモータの駆動が制御される。よって、バッテリパックが保護動作を実行する前に電流上限値を低減することにより、バッテリパックが保護動作を実行しない消費電力の範囲で、モータの駆動を続けることができる。
【0055】
本開示はさらに以下の項目を含む。
【0056】
[項目A-1]
本開示の1つの局面は、電動作業機であって、モータと、取得部と、制御部と、を備える。モータは、バッテリパックから電力の供給を受けて回転する。取得部は、バッテリパックの放電状態に関する状態情報を取得する。制御部は、取得部により取得された状態情報に基づいて、バッテリパックの保護機能が動作する前に、前記バッテリパックから前記モータへ供給される供給電力に関するモータの制御パラメータを変更する。
【0057】
本開示の1つの局面によれば、電動作業機によりバッテリパックの放電状態に関する状態情報が取得される。バッテリパックは例えば過電流状態になると保護機能が動作する。そのため、電動作業機は、取得した状態情報に基づいて、バッテリパックの保護機能が動作する前に、供給電力に関するモータの制御パラメータを変更する。これにより、電動作業機は、バッテリパックの保護機能の動作を抑制するように変更された供給電力を継続して受けることができる。また、バッテリパックの保護機能が動作する条件は変更されないため、バッテリパックを保護すべきときには保護機能が動作する。よって、保護すべきときにバッテリパックの保護機能を動作させつつ、使用者の利便性を高めることができる。
【0058】
[項目A-2]
制御部は、状態情報に基づいて、供給電力を制限するように制御パラメータを変更してもよい。
【0059】
制御部が供給電力を制限するように制御パラメータを変更することにより、バッテリパックの保護機能が動作する前に供給電力が制限される。その結果、使用者は、バッテリパックの保護機能が動作しない状態で、電動作業機の使用を続けることができる。
【0060】
[項目A-3]
状態情報は、保護機能が動作する予兆に関する情報を含んでいてもよい。
【0061】
状態情報が保護機能の動作する予兆に関する情報を含んでいることにより、電動作業機は、バッテリパックの保護機能が動作する前にその予兆を認識することができる。ひいては、電動作業機は、保護機能が動作する前に、保護機能が動作しないように制御パラメータを変更することができる。
【0062】
[項目A-4]
制御パラメータは、バッテリパックからモータに供給される放電電流を含んでいてもよい。制御部は、状態情報に基づいて、放電電流を制限してもよい。
【0063】
制御部が放電電流を制限することにより、バッテリパックの保護機能が動作する前に供給電力が制限される。その結果、使用者は、バッテリパックの保護機能が動作しない状態で、電動作業機の使用を続けることができる。
【0064】
[項目A-5]
状態情報は、バッテリパックからモータに供給される放電電流の大きさに応じた加算値を積算したカウンタ値を含んでいてもよい。バッテリパックの保護機能は、カウンタ値が第1閾値を超えた場合に動作してもよい。そして、制御部は、カウンタ値が第1閾値よりも小さい第2閾値を超えた場合に、制御パラメータを変更してもよい。
【0065】
カウンタ値が第1閾値よりも小さい第2閾値を超えると、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、カウンタ値の上昇が抑制される。その結果、バッテリパックの保護機能の動作が抑制され、モータは、バッテリパックから電力供給を継続して受けることができる。
【0066】
[項目A-6]
状態情報は、放電電流の大きさと加算値との対応関係を示すマップ情報を含んでいてもよい。そして、制御部は、検出された放電電流の大きさと、取得されたマップ情報と、に基づいて、第2閾値を設定してもよい。
【0067】
状態情報がマップ情報を含んでいることにより、制御部は、放電電流の大きさに応じて、第2閾値を変化させることができる。ひいては、制御部は、放電電流の大きさに応じて、好適に供給電力を制限することができる。
【0068】
[項目A-7]
状態情報は、バッテリパックのバッテリ温度と、バッテリ温度別のマップ情報と、を含んでいてもよい。そして、制御部は、検出された放電電流の大きさと、取得されたバッテリ温度と、取得されたマップ情報と、に基づいて、第2閾値を設定してもよい。
【0069】
状態情報がバッテリ温度別のマップ情報を含んでいることにより、制御部は、バッテリ温度と放電電流の大きさとに応じて、第2閾値を変化させることができる。ひいては、制御部は、より好適に供給電力を制限することができる。
【0070】
[項目A-8]
状態情報は、バッテリパックの残容量を含んでいてもよい。バッテリパックの保護機能は、残容量が第1容量閾値を下回った場合に動作してもよい。そして、制御部は、残容量が第1容量閾値よりも大きい第2容量閾値を下回った場合に、制御パラメータを変更してもよい。
【0071】
バッテリパックの残容量が第1容量閾値よりも大きい第2容量閾値を下回ると、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、バッテリパックの残容量の減少速度が緩やかになる。その結果、バッテリパックの保護機能の動作が抑制され、モーは、バッテリパックから供給電力をより長い期間継続して受けることができる。
【0072】
[項目A-9]
状態情報は、バッテリパックのバッテリ温度を含んでいてもよい。バッテリパックの保護機能は、バッテリ温度が第1温度閾値を超えた場合に動作してもよい。そして、制御部は、バッテリ温度が前記第1温度閾値よりも小さい第2温度閾値を超えた場合に、制御パラメータを変更してもよい。
【0073】
バッテリ温度が第1温度閾値よりも小さい第2温度閾値を超えると、供給電力に関するモータの制御パラメータが変更される。これにより、バッテリパックの温度上昇が抑制される。その結果、バッテリパックの保護機能の動作が抑制され、モータは、バッテリパックから供給電力をより長い期間継続して受けることができる。
【0074】
[項目A-10]
制御部は、モータに流れる電流のパルス幅変調(PWM)制御を実行してもよい。制御パラメータは、PWM制御でのデューティ比を含んでもよい。
【0075】
PWM制御におけるデューティ比を変更することによって、モータに流れる電流の値を変更し、モータに供給される供給電力を変更することができる。ひいては、デューティ比を低減して供給電力を抑制することによって、バッテリパックの保護機能の動作を抑制することができる。
【0076】
[項目A-11]
取得部は、モータの駆動前から状態情報を取得してもよい。制御部は、モータの駆動前から状態情報に基づいて制御パラメータを変更してもよい。
【0077】
モータの駆動前から状態情報が取得され、取得された状態情報に基づいて制御パラメータが変更される。これにより、モータを一時停止させて再始動させる場合に、制御パラメータは一時停止前の値から初期値に戻されることなく、モータが再始動される。よって、バッテリパックの保護機能が動作しない消費電力の範囲でモータを再始動させることができる。
【0078】
[項目A-12]
電動作業機は、制御部へ電源を供給するための主電源スイッチを備えてもよい。制御部は、主電源スイッチがオン状態になった後、且つ、モータの駆動前の時点から、バッテリパックに対して状態情報の要求を開始してもよい。
【0079】
主電源スイッチがオン状態になった後に、電動作業機とバッテリパックとの通信が開始される。そのため、電動作業機にバッテリパックが装着されただけで通信を開始する場合と比べて、電力消費を抑制することができる。また、モータの駆動前の時点から、バッテリパックに対して状態情報の要求が開始される。そのため、モータの駆動前に制御パラメータを変更して、バッテリパックの保護機能が動作しない供給電力の範囲でモータの駆動を開始させることができる。
【0080】
[項目A-13]
取得部は、バッテリパックからシリアル通信によって伝送された状態情報を取得してもよい。バッテリパックからモータへ電流が流れている時におけるシリアル通信の頻度は、バッテリパックからモータへ電流が流れていない時におけるシリアル通信の頻度よりも高くてもよい。
【0081】
バッテリパックからモータへ電流が流れていない時は、バッテリパックからモータへ電流が流れている時と比べて、バッテリパックの状態が変化しにくい。そのため、バッテリパックからモータへ電流が流れていない時には、シリアル通信の頻度を抑制することにより、電動作業機の処理負荷を抑制することができる。
【0082】
[項目A-14]
電動作業機は、取得部により取得された状態情報に基づいて、バッテリパックからモータに供給される放電電流の電流上限値を設定するように構成された設定部を備えてもよい。制御部は、放電電流の値を設定部により設定された電流上限値以下となるように制御してもよい。
【0083】
放電電流の電流上限値が設定され、放電電流の値が設定された電流上限値以下となるように制御される。よって、バッテリパックの保護機能が動作する前に電流上限値を低減することにより、バッテリパックの保護機能が動作しない供給電力の範囲で、モータの駆動を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0084】
図1】第1実施形態の作業機の外観を表す斜視図である。
図2】第1実施形態に係るモータ制御システムの構成を示すブロック図である。
図3】第1実施形態に係る作業機の制御回路が実行するメイン処理を示すフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る作業機の制御回路が実行するバッテリ状態処理を示すフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る作業機の制御回路が実行するモータ制御処理を示すフローチャートである。
図6】第1実施形態に係る作業機の制御回路が実行するモータ駆動処理を示すフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る作業機の制御回路が実行する電流上限設定処理を示すフローチャートである。
図8】第1実施形態に係るバッテリパックと作業機との間のデータの流れを模式的に示す図である。
図9】第1実施形態に係るバッテリパックから作業機へ送信される蓄積割合を示す図である。
図10】第1実施形態に係るモータ負荷、電流上限値、放電電流、回転速度、トリガスイッチ、保護カウンタ値のタイムチャートである。
図11】第1実施形態に係るバッテリ制御回路が実行する履歴処理を示すフローチャートである。
図12】第1実施形態に係るバッテリパックへの充電器の装着回数を記憶する記憶領域を示す図である。
図13】第1実施形態に係るバッテリパックへの工具の装着回数を記憶する記憶領域を示す図である。
図14】第2実施形態に係る作業機の制御回路が実行するモータ駆動処理を示すフローチャートである。
図15】第2実施形態に係る作業機の制御回路が実行する保護カウント処理を示すフローチャートである。
図16】第2実施形態に係る作業機の制御回路が実行するデューティ比上限値設定処理を示すフローチャートである。
図17】第2実施形態に係るバッテリパックと作業機との間のデータの流れを模式的に示す図である。
図18】第3実施形態に係る作業機の制御回路が実行する電流上限値設定処理を示すフローチャートである。
図19】放電電流値と加算値との対応関係を示すカウンタマップである。
図20】第3実施形態に係るバッテリパックと作業機との間のデータの流れを模式的に示す図である。
図21】第4実施形態に係る作業機の制御回路が実行するバッテリ通信処理を示すフローチャートである。
図22】第4実施形態に係る作業機の制御回路が実行する保護カウント処理を示すフローチャートである。
図23】第4実施形態に係る作業機の制御回路が実行する保護カウンタ値算出処理を示すフローチャートである。
図24】第4実施形態に係る電流上限値設定処理を示すフローチャートである。
図25】第4実施形態に係る電流上限値設定処理の別例を示すフローチャートである。
図26】第4実施形態に係るバッテリパックから作業機へ送信されるカウンタマップである。
図27】第4実施形態に係る保護カウンタ値に対する制限電流値の変化を示す図である。
図28】第4実施形態に係るバッテリパックと作業機との間のデータの流れを模式的に示す図である。
図29】第5実施形態に係る作業機の制御回路が実行する保護カウンタ停止処理を示すフローチャートである。
図30】第5実施形態に係るモータ負荷、放電電流、保護カウンタ値、トリガスイッチのタイムチャートである。
【符号の説明】
【0085】
1…作業機、2…メインパイプ、3…制御ユニット、4…駆動ユニット、5…カバー、6…ハンドル、7…右グリップ、8…左グリップ、9…正逆切替スイッチ、10…ロックオフボタン、11…トリガ、12…トリガスイッチ、13…制御配線パイプ、16…モータハウジング、17…刈刃、21…後端ハウジング、22…バッテリパック、23…変速ダイヤル、24…メインスイッチ、25…表示部、28…バッテリ電圧検出部、30…コントローラ、32…駆動回路、34…ゲート回路、36…制御回路、38…レギュレータ、41…正極端子、42…負極端子、43…ES端子、44…シリアル端子、50…モータ、52…回転センサ、54…電流検出部、56…温度検出部、60…バッテリ、61…バッテリ正極端子、62…バッテリ負極端子、63…バッテリES端子、64…バッテリシリアル端子、65…バッテリ制御回路。
【発明を実施するための形態】
【0086】
以下、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
【0087】
(第1実施形態)
<1-1.全体構成>
図1に示すように、本例示的な実施形態では、草刈機に本開示の電動作業機を適用した場合について説明する。本例示的な実施形態の作業機システムは、作業機1とバッテリパック22と、を備える。作業機1は、メインパイプ2と、制御ユニット3と、駆動ユニット4と、カバー5と、ハンドル6とを備えた草刈機である。メインパイプ2は、長尺かつ中空の棒状に形成されている。制御ユニット3は、メインパイプ2の後端側に設けられている。駆動ユニット4及びカバー5は、メインパイプ2の前端側に設けられている。
【0088】
駆動ユニット4は、モータハウジング16と、刈刃17とを備えている。刈刃17は、草や小径木などの刈り取り対象物を刈り取るための円板状の刃であり、モータハウジング16に対して着脱可能に構成されている。カバー5は、刈刃17により刈り取られた草等が、作業機1の使用者に向かって飛んでくることを抑止するために設けられている。
【0089】
モータハウジング16の内部には、刈刃17を回転させるための回転力を発生するモータ50が搭載されている。モータ50の駆動により発生した回転力は、減速機構を介して刈刃17が装着された回転軸に伝達される。刈刃17がモータ50の回転力によって回転しているときに、刈刃17の外周部分を対象物に当接させることで、使用者は、対象物を切断することができる。
【0090】
ハンドル6は、U字状に形成されており、メインパイプ2の長さ方向における中間位置近傍でメインパイプ2に接続されている。ハンドル6の第1端側には使用者が右手で把持する右グリップ7が設けられ、ハンドル6の第2端側には使用者が左手で把持する左グリップ8が設けられている。
【0091】
右グリップ7の先端側には、正逆切替スイッチ9、ロックオフボタン10、及びトリガ11が設けられている。正逆切替スイッチ9は、モータ50の回転方向、つまり刈刃17の回転方向を、正回転又は逆回転の何れかに切り替える。なお、正回転は、草等を刈り取る際に設定される回転方向であり、逆回転は、刈刃17に絡まった草等を取り除く際に設定される回転方向である。
【0092】
トリガ11は、使用者が刈刃17の回転又は停止を指令するために操作する操作部材である。右グリップ7の内部には、トリガ11と連動して動作するトリガスイッチ12が配置されている。トリガスイッチ12は、トリガ11の操作時にオンし、トリガ11の非操作時にオフして、そのオン状態又はオフ状態を示すトリガ信号TSを出力する。本実施形態では、トリガ11が操作部の一例に相当する。
【0093】
ロックオフボタン10は、刈刃17の誤動作を防止又は抑制するためのボタンである。ロックオフボタン10が押下されていない状態では、ロックオフボタン10がトリガ11に機械的に係合する。これにより、トリガ11の動きを規制し、トリガスイッチ12がオン状態になることを阻止又は抑制する。ロックオフボタン10が押下された状態では、ロックオフボタン10によるトリガ11との係合が解除される。
【0094】
右グリップ7の下端と制御ユニット3の前端の間には、制御配線パイプ13が設けられている。制御配線パイプ13は、中空の棒状に形成されており、内部には、制御用ハーネスが配設されている。制御用ハーネスは、トリガスイッチ12及び正逆切替スイッチ9と制御ユニット3とを電気的に接続するための配線である。
【0095】
制御ユニット3は、後端ハウジング21とバッテリパック22とから構成される。
【0096】
後端ハウジング21の前端側には、変速ダイヤル23及びメインスイッチ24が、使用者が操作可能な状態で設けられている。変速ダイヤル23は、使用者がモータ50の回転速度を可変設定するために設けられている。メインスイッチ24は、バッテリ60から各部への給電を開始させることで、作業機1を使用可能な状態にするためのスイッチである。メインスイッチ24がオンのときに、バッテリ60からモータ50への放電経路が形成され、メインスイッチ24がオフのときに、バッテリ60からモータ50への放電経路が遮断される。本実施形態では、メインスイッチ24が主電源スイッチの一例に相当する。
【0097】
さらに、後端ハウジング21の前端側には、表示部25が使用者から視認可能に設けられている。表示部25は、動作状態や異常等を使用者に報知するために設けられており、表示灯、残容量表示灯、逆転表示灯などを備える。表示灯は、メインスイッチ24がオンされ作業機1の各部への給電が行われているときに点灯する。残容量表示灯は、バッテリ60の残容量を表示する。逆転表示灯は、モータ50が逆回転中であることを表示する。なお、残容量は、バッテリ60に残っている電力量である。
【0098】
後端ハウジング21の内部には、後述するコントローラ30が配置されている。コントローラ30は、主に、モータ50の駆動制御を実行する。コントローラ30は、モータ50への通電を制御することによりモータ50の回転速度を制御する。
【0099】
バッテリパック22は、後端ハウジング21の後端部に着脱可能に構成されている。
【0100】
図2に示すように、バッテリパック22は、バッテリ60と、バッテリ制御回路65と、バッテリ正極端子61、バッテリ負極端子62、バッテリES端子63と、バッテリシリアル端子64と、を備える。バッテリ60は、複数のバッテリセルが直列に接続されて構成されている。バッテリ60は、後端ハウジング21内の各部及びモータ50へ電力を供給するための、繰り返し充電可能な電源である。バッテリ60は、一例としてリチウムイオン2次バッテリを備えている。また、バッテリ60の定格電圧は、例えば64Vであってもよい。
【0101】
<1-2.モータ制御システムの構成>
次に、バッテリ制御回路65及びコントローラ30とを備える、モータ50の制御システムについて図2を参照して説明する。
【0102】
バッテリ制御回路65は、CPU65a、ROM65b、RAM65c、フラッシュメモリなどのメモリ65d、及びI/O等を備える。
【0103】
バッテリ正極端子61は、バッテリ60の正極側に接続されている。バッテリ負極端子62は、バッテリ60の負極側に接続されている。バッテリES端子63は、第1バッテリ接続線68を介してバッテリ制御回路65に接続されている。バッテリES端子63は、バッテリパック22からの放電許可信号又は放電禁止信号を出力する端子である。ESはエラーストップの略である。
【0104】
バッテリシリアル端子64は、第2バッテリ接続線69を介してバッテリ制御回路65に接続されている。バッテリシリアル端子64は、シリアル通信によって複数のバッテリ情報を出力する端子である。複数のバッテリ情報は、バッテリパック22の放電状態に関する状態情報を含む。状態情報は、後述する保護カウンタ値、カウンタ閾値、バッテリ温度、バッテリ60の残容量などを含む。さらに、状態情報は、後述するカウンタマップ情報、加算閾値、減算閾値、などを含んでいてもよい。
【0105】
また、バッテリパック22は、図示しないセル電圧検出部、セル温度検出部、バッテリ電流検出部を備える。セル電圧検出部は、バッテリ60の各セルの電圧値を検出し、検出信号をバッテリ制御回路65へ出力する。セル温度検出部は、サーミスタ等によって構成されており、少なくとも1つのセルの温度を検出して検出信号をバッテリ制御回路65へ出力する。バッテリ電流検出部は、放電時にバッテリ60を流れる放電電流を検出し、検出信号をバッテリ制御回路65へ出力する。
【0106】
コントローラ30は、正極端子41、負極端子42、ES端子43、及びシリアル端子44を備える。さらに、コントローラ30は、駆動回路32、ゲート回路34、制御回路36、及び、レギュレータ38を備える。
【0107】
正極端子41は、バッテリパック22のバッテリ正極端子61に接続される。負極端子42は、バッテリパック22のバッテリ負極端子62に接続される。ES端子43は、バッテリパック22のバッテリES端子に接続される端子であり、バッテリパック22から送信された放電許可信号又は放電禁止信号が入力される端子である。シリアル端子44は、シリアル通信により、バッテリパック22から送信されたバッテリ情報が入力される端子である。
【0108】
ES端子43は、第1接続線48を介して制御回路36に接続されており、シリアル端子44は、第2接続線49を介して制御回路36に接続されている。
【0109】
駆動回路32は、バッテリ60から電力供給を受けて、モータ50の各相に対応する各巻線に電流を流す回路である。モータ50は、3相のブラシレスモータである。駆動回路32は、ハイサイドのスイッチング素子Q1~Q3と、ローサイドのスイッチング素子Q4~Q6を備える3相フルブリッジ回路である。各スイッチング素子Q1~Q6は、例えばMOSFETを含むが、MOSFET以外を含んでいてもよい。
【0110】
ゲート回路34は、制御回路36から出力された制御信号に従い、駆動回路32の各スイッチング素子Q1~Q6をオン又はオフさせ、モータ50の各相巻線に順次電流を流すことで、モータ50を回転させる。なお、スイッチング素子Q1~Q6を全てオフさせた場合、モータ50はフリーランの状態となる。また、スイッチング素子Q1~Q3をいずれもオフ、且つスイッチング素子Q4~Q6をいずれもオンさせた場合、モータ50はいわゆる短絡ブレーキがかかった状態となる。
【0111】
レギュレータ38は、メインスイッチ24がオンのときに、バッテリ60から電力供給を受けて、制御回路36を動作させるために必要な一定の電源電圧Vcc(例えば、直流5V)を生成する。
【0112】
制御回路36は、CPU36a、ROM36b、RAM36c及びI/O等を備えている。制御回路36には、ES端子43、シリアル端子44、トリガスイッチ12、メインスイッチ24、表示部25、及びバッテリ電圧検出部28が接続されている。また、図示していないが、制御回路36には、正逆切替スイッチ9及び変速ダイヤル23も接続されている。
【0113】
バッテリ電圧検出部28は、正極端子41と負極端子42との間の電圧、すなわち、バッテリ60の電圧(以下、バッテリ電圧)の値を検出し、検出信号を制御回路36へ出力する。
【0114】
また、コントローラ30において、駆動回路32からバッテリ60の負極に至る通電経路には、モータ50に供給された放電電流値を検出する電流検出部54が設けられている。さらに、モータ50の近傍には、モータ50に含まれるロータの回転位置を検出する回転センサ52が設けられている。回転センサ52は、例えば、ホールセンサや、光学エンコーダ、磁気エンコーダなどである。さらに、駆動回路32のスイッチング素子の近傍には、スイッチング素子の温度を検出するサーミスタ等によって構成された温度検出部56が設けられている。そして、制御回路36には、電流検出部54や回転センサ52、温度検出部56からの検出信号も入力される。制御回路36は、回転センサ52からの検出信号に基づきモータ50の回転位置及び回転速度を算出する。
【0115】
制御回路36は、レギュレータ38から電力供給を受けて動作する。制御回路36は、各種の検出信号及び各種スイッチの操作状態に基づいて、後述するメイン処理を含む各種の処理を実行する。本実施形態では、制御回路36は、制御部の一例に相当する。
【0116】
<1-3.作業機における処理>
<1-3-1.メイン処理>
次に、作業機1の制御回路36が実行するメイン処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0117】
まず、S10では、制御回路36はタイムベースが経過したか否か判定する。制御回路36は、タイムベースが経過していない場合には待機し、タイムベースが経過した場合にはS20の処理へ進む。タイムベースは、制御回路36の制御周期に相当する。
【0118】
S20では、制御回路36は、トリガスイッチ12の操作検出処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、トリガスイッチ12からの信号に基づいて、トリガスイッチ12がオンかオフかを検出する。
【0119】
続いて、S30では、制御回路36は、バッテリパック22から出力された情報に基づいて、バッテリ状態処理を実行する。バッテリ状態処理の詳細は後述する。
【0120】
続いて、S40では、制御回路36は、AD変換処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、バッテリ電圧検出部28、電流検出部54、及び温度検出部56から入力された検出信号をAD変換する。これにより、制御回路36は、モータ50に供給される放電電流の値、バッテリ60の電圧値、及び、スイッチング素子の温度を取得する。
【0121】
続いて、S50では、制御回路36は、異常検出処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、S40において取得した放電電流値、電圧値、及び温度とそれぞれの閾値とを比較して、過電流、バッテリ電圧の低下、スイッチング素子の高温状態などの異常を検出する。
【0122】
続いて、S60では、制御回路36は、トリガスイッチ12の操作状態、バッテリ状態、異常の検出結果に基づいて、モータ制御処理を実行する。モータ制御処理の詳細は後述する。
【0123】
続いて、S70では、制御回路36は、表示処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、モータ50の動作状態、バッテリ60の残容量、検出された異常などを表示して、使用者に報知する。以上で本処理を終了する。
【0124】
<1-3-2.バッテリ状態処理>
次に、制御回路36がS30において実行するバッテリ状態処理の詳細について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0125】
まず、S100では、制御回路36は、バッテリ通信処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、作業機1にバッテリパック22が装着されたことを検出すると、バッテリパック22との初期通信で、シリアル端子44を介して、作業機1のモデルナンバーを送信するとともに、バッテリパック22のモデルナンバーを受信する。さらに、制御回路36は、バッテリパック22との初期通信で、カウンタマップ情報を受信してもよい。
【0126】
さらに、制御回路36は、シリアル端子44を介して、所定の周期でバッテリ制御回路65へ情報要求信号を送信し、バッテリ制御回路65から情報要求信号の応答としてバッテリ情報を受信する。ここで、情報要求信号を送信する周期は、バッテリパック22から作業機1へ放電電流が流れていない時には、バッテリパック22から作業機1へ放電電流が流れている時よりも、長く設定される。すなわち、バッテリパック22から作業機1へ放電電流が流れていない時には、放電電流が流れている時よりも、シリアル通信の頻度が低く設定される。
【0127】
また、制御回路36は、メインスイッチ24がオン状態になった後、且つ、モータ50の駆動前の時点から、バッテリ制御回路65へ情報要求信号を送信して、バッテリパック22に対してバッテリ情報の要求を開始する。
【0128】
続いて、S110では、制御回路36は、バッテリパック22からの放電の許可又は禁止を設定する。具体的には、制御回路36は、バッテリパック22から放電許可信号を受信した場合には、放電許可フラグをセットする。また、制御回路36は、バッテリパック22から放電禁止信号を受信した場合には、放電許可フラグをクリアする。以上で本処理を終了する。
【0129】
<1-3-.モータ制御処理>
次に、制御回路36がS60において実行するモータ制御処理の詳細について、図5のフローチャートを参照して説明する。
【0130】
まず、S300では、制御回路36は、トリガスイッチ12がオンになっているか否か判定する。制御回路36は、トリガスイッチ12がオンになっていると判定した場合には、S310の処理へ進み、トリガスイッチ12がオフになっていると判定した場合には、S340の処理へ進む。
【0131】
S310では、制御回路36は、S50において異常が検出されたか否か判定する。制御回路36は、異常が検出されていないと判定した場合には、S320の処理へ進む。また、制御回路36は、異常が検出されていると判定した場合には、S340の処理へ進む。
【0132】
S320では、制御回路36は、放電許可フラグがセットされているか否か判定する。制御回路36は、放電許可フラグがセットされていると判定した場合には、S330の処理へ進み、放電許可フラグがクリアされていると判定した場合には、S340の処理へ進む。
【0133】
S330では、制御回路36は、バッテリ60からの電力供給を受けて、モータ駆動処理を実行し、本処理を終了する。モータ駆動処理の詳細は後述する。
【0134】
一方、S340では、制御回路36は、ブレーキ制御を実施するか否か判定する。具体的には、制御回路36は、モータ50が回転しており、且つ、モータ50に制動力を発生させてもコントローラ30に影響がない場合には、ブレーキ制御を実行すると判定する。この場合、制御回路36は、S350においてブレーキフラグをセットし、本処理を終了する。これにより、バッテリ60からモータ50への電力供給が停止されて、短絡ブレーキが実行される。
【0135】
一方、制御回路36は、モータ50が回転していない場合、及び、モータ50が回転しているがモータ50に制動力を発生させるとコントローラ30に影響がある場合には、ブレーキ制御を実施しないと判定する。この場合、制御回路36は、S360においてブレーキフラグをクリアし、本処理を終了する。これにより、バッテリ60からモータ50への電力供給が停止される。そして、モータ50が回転している場合には、フリーランなどが実行される。
【0136】
<1-3-.モータ駆動処理>
次に、制御回路36がS330において実行するモータ駆動処理の詳細について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0137】
まず、S400では、制御回路36は、モータ50の目標回転速度を設定する回転速度設定処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、正逆切替スイッチ9の設定に基づいて、モータ50の回転方向を設定する。そして、制御回路36は、変速ダイヤル23の設定に基づいて、設定した回転方向における、モータ50の目標回転速度を設定する。
【0138】
続いて、S410では、制御回路36は、放電電流の電流上限値を設定する上限値設定処理を実行する。電流上限値は放電電流を制御するための値である。制御回路36は、放電電流の値を電流上限値以下に制御する。上限値設定処理の詳細は後述する。
【0139】
続いて、S420では、制御回路36は、パルス幅変調(PWM)制御におけるデューティ比の算出処理を実行する。制御回路36は、算出されたデューティ比を用いて、モータ50に流れる電流をPWM制御する。S420では、制御回路36は、次の条件(1)及び(2)を満たすように、PWM制御におけるデューティ比を算出する。条件(1)は、放電電流がS410において設定した電流上限値以下になることである。条件(2)は、モータ50の回転速度がS400において設定した目標回転速度へ収束することである。制御回路36は、条件(1),(2)の両方を満たすことができない場合、条件(1)を満たすことを優先し、条件(1)を満たす中で、モータ50の回転速度ができる限り目標回転速度に近づくように、デューティ比を算出する。
【0140】
続いて、S430では、制御回路36は、デューティ比の出力処理を実行する。詳しくは、制御回路36は、S420において算出したデューティ比に基づいた制御指令を生成し、生成した制御指令をゲート回路34へ出力する。以上で本処理を終了する。
【0141】
<1-3-.電流上限値設定処理>
次に、制御回路36がS410において実行する電流上限値設定処理の詳細について、図7のフローチャートを参照して説明する。
【0142】
まず、S500では、バッテリパック22から取得した保護カウンタ値が、カウンタ閾値よりも大きいか否か判定する。保護カウンタ値は、バッテリ制御回路65により、バッテリ60の放電電流の大きさに応じた加算値を積算(すなわち累積)した値である。
【0143】
バッテリ制御回路65は、放電電流値が加算閾値以上の場合に、保護カウンタ値に加算値を加算する。また、バッテリ制御回路65は、放電電流値が大きいほど、加算値を大きくする。例えば、加算閾値が50Aである場合、バッテリ制御回路65は、放電電流値が50A未満の場合には、保護カウンタ値に値を加算しない。また、バッテリ制御回路65は、放電電流値が50Aのとき加算値「1」を保護カウンタ値に加算し、放電電流値が70Aのとき加算値「3」を保護カウンタ値に加算する。バッテリ制御回路65は、制御周期ごとに、放電電流の大きさに応じた加算値を保護カウンタ値に加算する。よって、加算値の積算値(すなわち、累積値)が保護カウンタ値になる。よって、保護カウンタ値は、放電電流値が大きいほど、また、加算閾値以上の値の大きさの放電電流が流れる時間が長いほど、大きな値になる。さらに、バッテリ制御回路65は、放電電流値が減算閾値以下の場合には、保護カウンタ値から所定値を減算する。減算閾値は例えば5Aである。
【0144】
バッテリ60は、比較的大きな電流が比較的長い時間流れる過電流状態(すなわち、バッテリ60の過負荷状態)になると、劣化する可能性がある。そのため、バッテリ制御回路65は、保護カウンタ値が保護閾値を超えると、保護動作を実行する。具体的には、バッテリ制御回路65は、制御回路36へ放電禁止信号を送信する。S500の判定に用いるカウンタ閾値は、保護閾値よりも小さい値であり、例えば、保護閾値の50%~70%の値である。
【0145】
すなわち、S500において、制御回路36は、バッテリパック22の保護機能が動作する前に、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出したか否か判定する。S500において、制御回路36は、保護カウンタ値がカウンタ閾値以下の場合、すなわち、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出していない場合には、S510の処理へ進む。また、制御回路36は、S500において保護カウンタ値がカウンタ閾値よりも大きい場合、すなわち、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出した場合には、S520の処理へ進む。
【0146】
S510では、制御回路36は、電流上限値に通常電流値を設定する。通常電流値は、加算閾値以上の電流値である。
【0147】
一方、S520では、制御回路36は、電流上限値に制限電流値を設定する。制限電流値は、加算閾値未満の電流値である。すなわち、制限電流値は、保護カウンタ値を一定値以下に保持する値である。
【0148】
ここで、モータ50の負荷が上がると、モータ50の回転速度を目標回転速度に収束させるために、放電電流が大きくなる。そのため、保護カウンタ値がカウンタ閾値を超えている状態でモータ50の負荷が上がると、保護カウンタ値が保護閾値まで到達し、バッテリパック22の保護機能が動作する可能性がある。バッテリパック22の保護機能が動作すると、バッテリパック22の放電が停止され、モータ50に電力が供給されなくなり、モータ50が停止する。ひいては、使用者は、作業を続けることができなくなり、作業効率が低下する。
【0149】
そこで、制御回路36は、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出した場合には、放電電流値を加算閾値よりも小さい値に制限する。これにより、モータ50の負荷が上がっても、保護カウンタ値が増加しないため、バッテリパック22の保護機能が動作しない。したがって、放電電流値を制限することによって、モータ50の回転速度が目標回転速度よりも低くなることはあるものの、使用者は、作業機1を使い続けることができる。
【0150】
図8は、本実施形態に係るメイン処理を実行した場合における、バッテリパック22と作業機1との間のデータの流れの概要を示す図である。バッテリパック22において、放電電流とカウンタマップとから保護カウンタ値が算出される。カウンタマップは、放電電流値と加算値及び減算値(すなわち、負の加算値)との対応関係を示すマップである(図19及び図26参照)。バッテリパック22では、所定周期で、カウンタマップにおいて放電電流値と対応する加算値又は減算値を累積して、保護カウンタ値が算出される。
【0151】
そして、バッテリパック22から作業機1へ、算出された保護カウンタ値と、バッテリパック22に保存されている保護閾値と、が送信される。作業機1では、受信された保護カウンタ値と保護閾値よりも小さいカウンタ閾値とを用いて、放電電流が制限される。
【0152】
また、バッテリパック22から作業機1へ、保護カウンタ値の代わりに、蓄積割合が送信されてもよい。図9に示すように、蓄積割合は、保護閾値を100%とした場合における保護閾値に対する現在の保護カウンタ値の割合である。この場合、カウンタ閾値は、保護閾値に対する割合(例えば、80%)で表される。
【0153】
<1-3-.作業機の動作>
次に、作業機1の動作について、図10のタイムチャートを参照して説明する。
【0154】
時点t0において、トリガスイッチ12がオンになると、放電電流が流れ始め、モータ50の回転速度が上昇し始める。そして、時点t1から時点t5までの期間、モータ負荷が徐々に大きくなり、時点t5においてモータ負荷はゼロになる。
【0155】
時点t1から時点t2の期間では、モータ負荷の増加に伴い、放電電流も増加する。そして、時点t2において、放電電流値は加算閾値以上となり、保護カウンタ値が増加し始める。
【0156】
時点t3において、放電電流は電流上限値に到達する。この時の電流上限値は通常設定値である。モータ50の回転速度は目標回転速度に到達してから時点t3までの期間において、目標回転速度に保持される。
【0157】
時点t3から時点t4までの期間では、モータ負荷が増加している中で、放電電流は電流上限値に抑えられている。そのため、時点t3から時点t4までの期間では、モータ50の回転速度は低下している。また、この期間では、放電電流値は加算閾値以上であるため、保護カウンタ値は増加している。
【0158】
そして、時点t4において、保護カウンタ値がカウンタ閾値を超えると、電流上限値が制限電流値に設定される。これにより、放電電流が加算閾値未満に抑えられるため、保護カウンタ値の増加が停止する。そのため、時点t4から時点t7までの期間では、保護カウンタ値は一定値に保持される。また、時点t4から時点t5までの期間では、放電電流値が通常設定値よりも小さい制限電流値に制限されるため、さらに、モータ50の回転速度が低下する。
【0159】
時点t5では、モータ50の負荷がゼロなる。これに伴い、放電電流が電流上限値よりも小さくなり、モータ50の回転速度は目標回転速度に戻る。
【0160】
そして、時点t6において、トリガスイッチ12がオフになると、放電電流値がゼロになる。すなわち、放電電流が流れなくなる。その後、時点t7において、放電電流が流れなくなったことに伴い、保護カウンタ値が減少し始める。さらに、時点t8において、保護カウンタ値がカウンタ閾値を下回ったことに伴い、電流上限値が通常設定値に設定される。
【0161】
ここで、時点t4において、電流上限値を通常設定値のままにした場合、保護カウンタ値は保護閾値まで増加を続ける。そして、保護カウンタ値が保護閾値に到達した時点でバッテリパック22の保護機能が動作して、モータ50が停止し、使用者は作業を継続できなくなる。これに対して、本実施形態では、時点t4において、電流上限値を制限電流値に抑制することにより、使用者はトリガ11をオフにするまでの間、作業を継続することができる。
【0162】
<1-4.バッテリパックにおける処理>
<1-4-1.履歴処理>
次に、バッテリ制御回路65が実行する履歴処理について、図11のフローチャートを参照して説明する。
【0163】
まず、S600では、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22に充電器又は作業機が装着されたか否か判定する。バッテリ制御回路65は、バッテリパック22に充電器又は作業機が装着されていない場合には、装着されるまでS600の処理を繰り返し実行する。また、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22に充電器又は作業機が装着された場合には、S610の処理へ進む。
【0164】
S610では、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22に装着されている充電器又は作業機(以下、装着機器)と初期通信を行い、バッテリパック22のモデルナンバーを送信するとともに、装着機器から送信された装着機器のモデルナンバーを取得する。
【0165】
続いて、S620において、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22から装着機器が取り外されたか否か判定する。バッテリ制御回路65は、装着機器が取り外されていない場合には、装着機器が取り外されるまでS620の処理を繰り返し実行する。また、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22から装着機器が取り外された場合には、S630の処理へ進む。
【0166】
S630では、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22のメモリ65d内の履歴データベースに、S610において取得した装着機器のモデルナンバーがあるか否か判定する。図12及び図13に示すように、履歴データベースは、充電器の装着回数を記憶する充電器記憶領域と、作業機の装着回数を記憶する作業機記憶領域とをそれぞれ有する。充電器記憶領域には、充電器のモデルナンバーと当該モデルナンバーの充電器の装着回数とが対応づけて記憶されている。作業機記憶領域には、作業機のモデルナンバーと当該モデルナンバーの作業機の装着回数とが対応付けて記憶されている。
【0167】
バッテリ制御回路65は、装着機器が充電器の場合には、充電器記憶領域にS610において取得したモデルナンバーがあるか否か判定する。また、バッテリ制御回路65は、装着機器が作業機の場合には、作業機記憶領域にS610において取得したモデルナンバーがあるか否か判定する。
【0168】
バッテリ制御回路65は、履歴データベースに装着機器のモデルナンバーが存在しない場合には、S640の処理へ進み、履歴データベースに装着機器のモデルナンバーが存在する場合には、S660の処理へ進む。
【0169】
S640では、バッテリ制御回路65は、履歴データベースの対応する記憶領域に空きがあるか否か判定する。具体的には、バッテリ制御回路65は、装着機器が充電器の場合には、充電器記憶領域に空きがあるか否か判定する。また、バッテリ制御回路65は、装着機器が作業機の場合には、作業機記憶領域に空きがあるか否か判定する。バッテリ制御回路65は、履歴データベースの対応する記憶領域に空きがない場合には、S600の処理へ戻り、対応する記憶領域に空きがある場合には、S650の処理へ進む。
【0170】
S650では、バッテリ制御回路65は、S610において取得した装着機器のモデルナンバーを、対応する記憶領域に記憶する。具体的には、バッテリ制御回路65は、装着機器が充電器の場合には、充電器記憶領域の空きに取得したモデルナンバーを記憶する。また、バッテリ制御回路65は、装着機器が作業機の場合には、作業機記憶領域の空きに取得したモデルナンバーを記憶する。
【0171】
一般に、作業機のモデルナンバーの種類は、充電器のモデルナンバーの種類と比べてかなり多い。そのため、履歴データベースが1つの記憶領域しか有していないと、記憶領域に作業機のモデルナンバーが次々と記憶され、充電器の新しいモデルナンバーを記憶する空きがなくなる可能性がある。これに対して、履歴データベースが充電器記憶領域と作業域記憶領域とを別個に有するため、バッテリパック22に装着された作業機のモデルナンバーの種類が増加しても、充電器の新しいモデルナンバーを記憶する領域を確保できる。
【0172】
続いて、S660では、バッテリ制御回路65は、S610において取得したモデルナンバーに対応する装着回数をインクリメントする。具体的には、バッテリ制御回路65は、装着機器が充電器の場合には、充電機器領域に記憶されているモデルナンバーのうち、S610において取得したモデルナンバーに対応する装着回数を「1」増やす。また、バッテリ制御回路65は、装着機器が作業機の場合には、作業機記憶領域に記憶されているモデルナンバーのうち、S610において取得したモデルナンバーに対応する装着回数を「1」増やす。以上で本処理を終了する。
【0173】
履歴処理では、バッテリパック22に装着機器が装着された時に、装着機器のモデルナンバーが取得され、バッテリパック22から装着機器が取り外された時に、モデルナンバーのメモリ65dへの書き込み、及びメモリ65dにおける装着回数の更新が実行される。バッテリパック22に装着機器が装着されているときには、バッテリ制御回路65は、充電制御、放電制御、装着機器との通信などの処理を実行するため、処理負荷が高く、メモリ65dへの書き込みやメモリ65dの更新を実行する余裕がないことがある。そのため、バッテリ制御回路65は、バッテリパック22から装着機器が取り外されるまで、すなわち、時間的な余裕ができるまで、メモリ65dへの書き込み及びメモリ65dの更新の実行を保留する。これにより、バッテリ制御回路65は、メモリ65dへの書き込み及びメモリ65dの更新を確実に実行することができる。
【0174】
<1-5.効果>
以上説明した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
【0175】
(1)制御回路36は、取得したバッテリパック22の状態情報に基づいて、バッテリパック22の保護機能が動作する前に、放電電流の電流上限値を低減する。これにより、放電電流が制限されるため、使用者は、作業機1の負荷が比較的高いときでも、バッテリパック22の保護機能が動作しない消費電力の範囲で、作業機1の使用を続けることができる。また、保護カウンタ値が保護閾値を超えたときには保護機能が動作する。すなわち、バッテリパック22を保護すべきときには保護機能が動作する。よって、保護すべきときにバッテリパック22の保護機能を動作させつつ、使用者の利便性を高めることができる。
【0176】
(2)バッテリパック22の過電流状態(すなわち、過負荷状態)は、放電電流の大きさ及び放電電流が流れる時間に応じて判定できる。よって、制御回路36は、放電電流の大きさに応じた加算値又は減算値を累積した保護カウンタ値に基づいて、バッテリパック22の過電流状態を判定することができる。
【0177】
(3)保護カウンタ値が保護閾値よりも小さいカウンタ閾値を超えると、バッテリパック22からモータ50に供給される供給電力が低減される。これにより、モータ50は、バッテリパック22の保護機能が動作しない消費電力の範囲で、バッテリパック22から電力供給を継続して受けることができる。
【0178】
(4)保護カウンタ値がカウンタ閾値を超えた場合に、放電電流の電流上限値が低減される。電流上限値が低減されることによって、放電電流値が低減され、モータ50への供給電力が低減される。ひいては、保護カウンタ値の増加を抑制して、バッテリパック22の保護機能の作動を抑制することができる。
【0179】
(5)モータ50の駆動前から保護カウンタ値、加算閾値、及び減算閾値が取得され、取得されたこれらの値に基づいて電流上限値が変更される。これにより、モータ50を一時停止させて再始動させた場合に、電流上限値が一時停止前の設定値から通常設定値に変更されることなく、モータ50が再始動される。よって、バッテリパック22の保護機能が動作しない消費電力の範囲でモータ50を再始動させることができる。
【0180】
(6)メインスイッチ24がオンになった後に制御回路36とバッテリ制御回路65との通信が開始される。そのため、作業機1にバッテリパック22が装着されただけで通信を開始する場合と比べて、バッテリ60の消費電力を抑制することができる。また、モータ50の駆動前の時点から、制御回路36からバッテリ制御回路65へ情報要求信号の送信が開始される。そのため、バッテリパック22の保護機能が動作しない消費電力の範囲でモータ50の駆動を開始させることができる。
【0181】
(7)バッテリパック22からモータ50へ電流が流れていない時は、バッテリパック22からモータ50へ電流が流れている時と比べて、バッテリパック22の状態が変化しにくい。そのため、バッテリパック22からモータ50へ電流が流れていない時には、シリアル通信の頻度を抑制することにより、制御回路36及びバッテリ制御回路65の処理負荷を抑制することができる。
【0182】
(8)保護カウンタ値に基づいて、放電電流の電流上限値が設定され、設定された電流上限値以下となるように、放電電流が制御される。よって、バッテリパック22の保護機能が動作する前に電流上限値が低減されるため、バッテリパック22の保護機能が動作しない消費電力の範囲で、モータ50の駆動を続けることができる。
【0183】
(第2実施形態)
<2-1.第1実施形態との相違点>
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0184】
上述した第1実施形態では、バッテリ制御回路65が、保護カウンタ値を算出し、算出した保護カウンタ値及びカウンタ閾値をバッテリ情報として、作業機1の制御回路36へ送信した。これに対し、第2実施形態では、制御回路36が、バッテリパック22からカウンタマップ情報、加算閾値、及び減算閾値を受信し、受信したこれらを用いて、保護カウンタ値を算出する点で、第1実施形態と相違する。
【0185】
また、第1実施形態では、制御回路36は、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出した場合に、電流上限値を低減して、保護カウンタ値が保護閾値を超えないようにした。これに対して、第2実施形態では、制御回路36は、バッテリパック22の保護機能が動作する予兆を検出した場合に、PWM制御におけるデューティ比上限値を低減して、保護カウンタ値が保護閾値を超えないようにする。すなわち、第1実施形態では、電流上限値を通常の値よりも小さい値にすることで、放電電流値を低減した。これに対して、第2実施形態では、デューティ比上限値を通常の値よりも小さい値にすることで、放電電流値を低減する。
【0186】
具体的には、第2実施形態は、図5に示すモータ制御処理のS330におけるモータ駆動処理が第1実施形態と異なる。第1実施形態では、制御回路36は、S330におけるモータ駆動処理において、図6及び図7に示すフローチャートに示す処理を実行した。これに対して、第2実施形態では、制御回路36は、S330におけるモータ駆動処理において、図14図16のフローチャートに示す処理を実行する。
【0187】
<2-2.作業機における処理>
<2-2-1.モータ駆動処理>
次に、制御回路36がS330において実行するモータ駆動処理の詳細について、図14のフローチャートを参照して説明する。
【0188】
まず、S700では、制御回路36は、図6に示すS400と同様の処理を実行する。
【0189】
続いて、S710では、制御回路36は、保護カウンタ値を算出する保護カウント処理を実行する。保護カウント処理の詳細は後述する。
【0190】
続いて、S720では、制御回路36は、PWM制御におけるデューティ比の上限値を設定するデューティ比上限値設定処理を実行する。デューティ比上限値設定処理の詳細は後述する。
【0191】
続いて、S730では、制御回路36は、PWM制御におけるデューティ比の算出処理を実行する。具体的には、制御回路36は、条件(3)及び(4)を満たすように、デューティ比を算出する。次の条件(3)は、デューティ比が、S720において設定したデューティ比上限値以下になることである。条件(4)は、モータ50の回転速度が、S700において設定した目標回転速度へ収束することである。制御回路36は、条件(3),(4)の両方を満たすことができない場合、条件(3)を満たすことを優先し、条件(4)を満たす中で、モータ50の回転速度ができる限り目標回転速度に近づくように、デューティ比を算出する。
【0192】
続いて、S740では、制御回路36は、図6に示すS430と同様の処理を実行する。以上で本処理を終了する。
【0193】
<2-2-2.保護カウント処理>
次に、制御回路36が、S710において実行する保護カウント処理の詳細について、図15のフローチャートを参照して説明する。
【0194】
まず、S800では、制御回路36は、電流検出部54により検出された放電電流値が加算閾値以上か否か判定する。
【0195】
制御回路36は、放電電流値が加算閾値以上の場合には、S810の処理へ進み、放電電流値が加算閾値未満の場合には、S830の処理へ進む。
【0196】
S810では、受信したカウンタマップを用いて、放電電流の大きさに応じた正の値の加算値を算出する。図19に示すように、制御回路36は、放電電流値が大きいほど、大きな加算値を算出する。例えば、制御回路36は、放電電流値が50Aのとき加算値「1」を算出し、放電電流値が70Aのとき加算値「3」を算出する。
【0197】
続いて、S820では、制御回路36は、S810において算出した加算値を保護カウンタ値に加算して、保護カウンタ値を更新し、本処理を終了する。
【0198】
一方、S830では、制御回路36は、放電電流値が減算閾値以下か否か判定する。減算閾値は、加算閾値よりも小さい値であり例えば5Aである。制御回路36は、放電電流値が減算閾値以下の場合には、S840の処理へ進み、放電電流値が減算閾値よりも大きい場合には、本処理を終了する。
【0199】
S840では、制御回路36は、受信したカウンタマップから一定値である減算値を算出し、保護カウンタ値から算出した減算値を減算して、保護カウンタ値を更新する。以上で、本処理を終了する。
【0200】
<2-2-3.デューティ比上限値設定処理>
次に、制御回路36がS720において実行するデューティ比上限値設定処理の詳細について、図16のフローチャートを参照して説明する。
【0201】
まず、S900では、制御回路36は、保護カウンタ値がカウンタ閾値よりも大きいか否か判定する。制御回路36は、保護カウンタ値がカウンタ閾値以下の場合には、S910の処理へ進み、保護カウンタ値がカウンタ閾値よりも大きい場合には、S920の処理へ進む。
【0202】
S910では、制御回路36は、デューティ比上限値に通常デューティ比を設定する。通常デューティ比は、放電電流値を加算閾値以上の値にするデューティ比であり、例えば100%である。
【0203】
一方、S920では、制御回路36は、デューティ比上限値に制限デューティ比を設定する。制限デューティ比は、放電電流値を加算閾値未満の値にするデューティ比であり、通常デューティ比よりも小さい値である。以上で本処理を終了する。
【0204】
図17は、本実施形態に係るメイン処理を実行した場合における、バッテリパック22と作業機1との間のデータの流れの概要を示す図である。バッテリパック22から作業機1へ、カウンタマップと、加算閾値と、減算閾値と、保護閾値と、が送信される。作業機1では、放電電流値と、受信したカウンタマップと加算閾値と保護閾値と、を用いて、保護カウンタ値が算出される。そして、作業機1では、算出した保護カウンタ値と受信した保護閾値から算出したカウンタ閾値とを用いて、デューティ比が制限される。
【0205】
<2-3.効果>
以上説明した第2実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(3),(6),(7)を奏するとともに、次の効果(9)を奏する。
【0206】
(9)保護カウンタ値がカウンタ閾値を超えた場合に、デューティ比上限値が低減される。デューティ比上限値が低減されることによって、放電電流が低減され、バッテリパック22からモータ50への供給電力が低減される。ひいては、保護カウンタ値の増加を抑制し、バッテリパック22の保護機能の作動を抑制することができる。
【0207】
(第3実施形態)
<3-1.第1実施形態との相違点>
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0208】
第1実施形態では、カウンタ閾値は固定値であった。これに対して、第3実施形態では、カウンタ閾値は、制御回路36がバッテリパック22から受信した状態情報に基づいて設定する可変値である点で、第1実施形態と異なる。
【0209】
具体的には、第3実施形態では、図6に示すモータ駆動処理のS410における電流上限値設定処理が第1実施形態と異なる。第1実施形態では、制御回路36は、S410における電流上限値設定処理において、図7のフローチャートに示す処理を実行した。これに対して、第3実施形態では、制御回路36は、S410における電流上限値設定処理において、図18のフローチャートに示す処理を実行する。
【0210】
<3-2.電流上限値設定処理>
次に、本実施形態において、制御回路36がS410において実行する電流上限値設定処理の詳細について、図18に示すフローチャートを参照して説明する。
【0211】
まず、S505において、制御回路36は、カウンタ閾値を設定する。詳しくは、制御回路36は、電流検出部54により検出された放電電流の大きさと、バッテリパック22から受信したカウンタマップ情報とに基づいて、カウンタ閾値を設定する。図19に示すように、カウンタマップ情報は、放電電流の大きさと加算値及び減算値との対応関係を示す。ここでの加算値は、正の値、ゼロを含み、減算値は、負の値を含む。加算値は、放電電流値が大きいほど大きな値になっており、減算値は、一定の値になっている。
【0212】
制御回路36は、カウンタマップ情報を用いて、検出された放電電流の大きさに対応する加算値を取得する。そして、制御回路36は、取得した加算値を保護カウンタ値に加算した場合における保護カウンタ値の上昇率を算出し、算出した上昇率に応じてカウンタ閾値を設定する。例えば、制御回路36は、上昇率が設定された上昇率閾値よりも高い場合には、直ぐに放電電流が制限されるように、カウンタ閾値を比較的小さい値に設定し、上昇率が上昇率閾値以下の場合には、カウンタ閾値を比較的大きい値に設定する。
【0213】
また、同じ大きさの放電電流が流れていても、バッテリ温度が比較的高い場合は、バッテリ温度が比較的低い場合よりも、バッテリ60が劣化しやすい。よって、カウンタマップ情報は、バッテリ温度別に分けられていてもよい。例えば、図19に示すように、バッテリ温度がTh℃以上の場合と、バッテリ温度がTh℃未満の場合とで、カウンタマップ情報が分けられていてもよい。この場合、制御回路36は、検出された放電電流の大きさと、バッテリパック22から受信したバッテリ温度及びカウンタマップ情報と、に基づいて、カウンタ閾値を設定すればよい。
【0214】
さらに、同じ大きさの放電電流が流れていても、バッテリ60の残容量が比較的小さい場合は、残容量が比較的大きい場合よりも、バッテリ60が劣化しやすい。よって、カウンタマップ情報は、バッテリ温度別及び残容量別に分けられていてもよい。この場合、制御回路36は、検出された放電電流の大きさと、バッテリパック22から受信したバッテリ温度、残容量及びカウンタマップ情報と、に基づいて、カウンタ閾値を設定すればよい。
【0215】
次に、S515~S535の処理では、制御回路36は、図7に示すS500~S520と同様の処理を実行する。
【0216】
図20は、本実施形態に係るメイン処理を実行した場合における、バッテリパック22と作業機1との間のデータの流れの概要を示す図である。バッテリパック22において、放電電流値とカウンタマップとから保護カウンタ値が算出される。カウンタマップは、バッテリ温度及び/又は残容量に応じたマップでもよい。
【0217】
そして、バッテリパック22から作業機1へ、算出された保護カウンタ値と、カウンタマップとが送信される。作業機1では、受信された保護カウンタ値とカウンタマップとからカウンタ閾値が算出される。さらに、作業機1では、受信された保護カウンタ値と、算出したカウンタ閾値とを用いて、放電電流が制限される。
【0218】
<3-3.効果>
以上説明した第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(8)を奏するとともに、次の効果(10)を奏する。
【0219】
(10)制御回路36は、カウンタマップ情報を用いることにより、放電電流の大きさに応じてカウンタ閾値を変化させることができる。ひいては、制御回路36は、放電電流の大きさに応じて好適に供給電力を制限することができる。特に、制御回路36は、バッテリ温度別及び/又は残容量別のカウンタマップ情報を用いる場合には、より好適に供給電力を制限することができる。
【0220】
(第4実施形態)
<4-1.第1実施形態との相違点>
第4実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0221】
上述した第1実施形態では、バッテリ制御回路65が、保護カウンタ値を算出し、算出した保護カウンタ値及びカウンタ閾値をバッテリ情報として、作業機1の制御回路36へ送信した。これに対し、第4実施形態では、バッテリ制御回路65から制御回路36へ保護カウンタ値及びカウンタマップを送信する。そして、制御回路36は、バッテリ制御回路36から保護カウンタ値を受信するとともに、保護カウンタ値を受信する周期よりも短い周期で、自身で保護カウンタ値を算出する。
【0222】
具体的には、第4実施形態は、図4に示すバッテリ状態処理のS100におけるバッテリ通信処理が第1実施形態と異なる。第4実施形態では、制御回路36は、S100におけるバッテリ通信処理において、図21のフローチャートに示す処理を実行する。また、図6に示すモータ駆動処理のS400とS410の処理の間において、図22に示す保護カウント処理を実行する。さらに、図6に示すモータ駆動処理のS410における電流上限値設定処理において、図24又は図25のフローチャートに示す処理を実行する。
【0223】
<4-2.作業機における処理>
<4-2-1.バッテリ通信処理>
次に、制御回路36が、S100において実行するバッテリ通信処理の詳細において、図21のフローチャートを参照して説明する。
【0224】
S105では、制御回路36は、初期通信が完了したか否か判定する。S105において、初期通信が完了していないと判定した場合は、S115の処理へ進み、初期通信が完了していると判定した場合は、S125の処理へ進む。
【0225】
S115では、制御回路36は、初期通信処理を実行する。具体的には、制御回路36は、バッテリ制御回路65から、カウンタマップ、加算閾値、減算閾値、保護閾値、カウンタ閾値、及び後述する時間閾値を受信する。図26に、カウンタマップの一例を示す。このカウンタマップは、バッテリ温度及び/又は残容量に応じたカウンタマップでもよい。一方、S125では、バッテリ制御回路65により算出された保護カウンタ値を受信する。
【0226】
なお、制御回路36は、作業機1とバッテリパック22とが接続したときの初回通信以外でも、バッテリ制御回路65からカウンタマップ等を受信してもよい。例えば、制御回路36は、バッテリパック22からの電力供給が停止して作業機1が停止した後に、作業機1が電力の再供給を受けて再始動した際において、バッテリ制御回路65からカウンタマップ等を受信してもよい。
【0227】
<4-2-2.保護カウント処理>
次に、制御回路36が、S400とS410の処理の間において実行する保護カウント処理の詳細について、図22のフローチャートを参照して説明する。
【0228】
まず、S205では、保護カウンタ値算出処理を実行して、保護カウンタ値を算出する。保護カウンタ値算出する処理の詳細は後述する。
【0229】
続いて、S215では、制御回路36は、バッテリパック22との通信により、現時点の保護カウンタ値を取得したか否か判定する。現時点の保護カウンタ値は、例えば、今回の保護カウント処理サイクルと、今回の保護カウント処理サイクルから所定期間遡った時点との間における保護カウンタ値である。あるいは、現在の保護カウンタ値は、前回の保護カウント処理サイクルと、今回の保護カウント処理サイクルとの間における保護カウンタ値である。上述したバッテリ通信処理の周期は、保護カウント処理の周期よりも長いため、保護カウント処理のサイクル間で、バッテリパック22から保護カウンタ値を取得できる場合と、取得できない場合がある。
【0230】
S215において、保護カウンタ値を取得したと判定した場合は、S225の処理へ進み、保護カウンタ値を取得していないと判定した場合は、本処理を終了する。
【0231】
S225では、制御回路36は、制御回路36が有するバッテリ保護カウンタ値を、バッテリパック22から取得した保護カウンタ値に更新し、本処理を終了する。すなわち、制御回路36は、バッテリパック22から現時点の保護カウンタ値を取得した場合には、制御回路36が算出した保護カウンタ値よりも、バッテリパック22から取得した保護カウンタ値を優先して用いる。また、制御回路36は、バッテリパック22から現時点の保護カウンタ値を取得していない場合には、制御回路36が算出した保護カウンタ値を用いる。
【0232】
<4-2-.保護カウンタ値算出処理>
次に、制御回路36が、S205において実行する保護カウンタ値算出処理の詳細について、図23のフローチャートを参照して説明する。
【0233】
まず、S305~S345では、図15に示すS800~S840と同様の処理を実行する。すなわち、S325及びS345では、保護カウンタ値を、保護カウンタ値に加算値を加算した値、又は保護カウンタ値から減算値を減算した値に、更新する。
【0234】
このとき、更新前の保護カウンタ値は、前回の保護カウンタ処理算出処理サイクルにおいて算出した値、又は、S225において、バッテリパック22からの取得値に更新した保護カウンタ値である。したがって、制御回路36は、バッテリ通信処理を実行してバッテリ制御回路65から保護カウンタ値を取得する。そして、制御回路36は、バッテリ通信処理のサイクル間において、直近の通信によりバッテリ制御回路65から取得した保護カウンタ値に、加算値又は減算値を累積して、現時点の保護カウンタ値を算出する。
【0235】
<4-2-.電流上限値設定処理>
次に、制御回路36がS410において実行する電流上限値設定処理の詳細について、図24のフローチャートを参照して説明する。
【0236】
S405では、制御回路36は、バッテリパック22が過負荷停止になるまでの時間予測処理を実行する。バッテリパック22は、保護カウンタ値が保護閾値に到達した場合に、過負荷のため放電禁止信号を出力し、放電停止状態になる。制御回路36は、受信したカウンタマップを用いて、保護カウンタ値が保護閾値に到達するまでの時間を予測する。
【0237】
S415では、制御回路36は、S405において予測した停止までの時間が、時間閾値未満か否か判定する。S415において、停止までの時間が時間閾値以上と判定した場合には、S425の処理へ進み、停止までの時間が時間閾値未満と判定した場合には、S435の処理へ進む。すなわち、制御回路36は、停止までの時間と時間閾値との比較から、バッテリパック22が保護動作を実行する予兆を検出した場合は、S435の処理へ進み、予兆を検出していない場合は、S425の処理へ進む。
【0238】
S425では、制御回路36は、電流上限値に通常電流値を設定する。通常電流値は、加算閾値以上の電流値である。すなわち、通常電流値は、保護カウンタ値を増加させる値である。
【0239】
一方、S435では、制御回路36は、電流上限値に制限電流値を設定する。制限電流値は、加算閾値未満の電流値であってもよい。すなわち、制限電流値は、保護カウンタ値を一定値以下に保持する値であってもよい。
【0240】
あるいは、図27に示すように、電流制限値は、保護カウンタ値に応じて設定する値であってもよい。例えば、図26に示すように、保護カウンタ値が保護閾値の60%の値の場合には、加算値を2以下に制限するように、電流制限値を70Aに設定する。そして、保護カウンタ値が保護閾値の80%の値まで上昇した場合には、加算値を1以下に制限するように、電流制限値を60Aに設定する。さらに、保護カウンタ値が保護閾値の90%の値まで上昇した場合には、加算値を0以下に制限するように、電流制限値を50Aに設定する。すなわち、放電電流を加算値が0以下となる値にいきなり制限するのではなく、保護カウンタ値の増加が緩やかになるように放電電流を制限し、保護カウンタ値が保護閾値に到達する直前に、保護カウンタ値が増加しない値に放電電流を制限してもよい。このようにすれば、放電電流を加算値が0以下となる値にいきなり制限する場合と比べて、使用者は作業機の出力をできる限り低下させることなく、使用し続けることができる。
【0241】
<4-2-.電流上限値設定処理の別例>
次に、制御回路36がS410において実行する電流上限値設定処理の別例の詳細について、図25のフローチャートを参照して説明する。
【0242】
S505、S515、及びS545では、S405~S435と同様の処理を実行する。
【0243】
そして、S515において、停止までの時間が時間閾値以上と判定した場合には、S525の処理へ進む。S525では、制御回路36は、保護カウンタ値がカウンタ閾値よりも大きいか否か判定する。S525において、保護カウンタ値がカウンタ閾値よりも大きいと判定した場合は、S545の処理へ進み、電流上限値に制限電流値を設定する。
【0244】
一方、S525において、保護カウンタ値がカウンタ閾値以下であると判定した場合は、S535の処理へ進み、電流上限値に通常電流値を設定する。すなわち、電流上限値設定処理の別例では、停止までの時間と時間閾値との比較と、保護カウンタ値とカウンタ閾値との比較とから、バッテリパック22が保護動作を実行する予兆を検出する。
【0245】
図28は、本実施形態に係るメイン処理を実行した場合における、バッテリパック22と作業機1との間のデータの流れの概要を示す図である。初期通信において、バッテリパック22から作業機1へ、カウンタマップと、加算閾値と、減算閾値と、保護閾値と、時間閾値と、が送信される。また、バッテリパック22において、保護カウンタ値が算出され、所定の周期で、算出された保護カウンタ値が作業機1へ送信される。
【0246】
作業機1では、受信された保護カウンタ値と、カウンタマップと、放電電流値とから、現時点の保護カウンタ値が算出される。そして、作業機1では、算出された現時点の保護カウンタ値と、時間閾値とを用いて、放電電流が制限される。あるいは、作業機1では、算出された現時点の保護カウンタ値と、時間閾値と、受信した保護閾値から算出したカウンタ値と、を用いて、放電電流が制限される。
【0247】
<4-3.効果>
以上説明した第4実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(8)を奏するとともに、次の効果(11)~(12)を奏する。
【0248】
(11)制御回路36が、バッテリパック22から現時点の保護カウンタ値を取得した場合には、バッテリパック22から取得された保護カウンタ値が、制御回路36が算出した保護カウンタ値よりも優先して用いられる。したがって、制御回路36は、できる限りバッテリパック22が保護動作を実行するために用いる値と同じ値を用いるため、バッテリパック22が保護動作を実行する予兆を精度良く検出することができる。
【0249】
(12)制御回路36により、バッテリパック22から過去に取得された保護カウンタ値に加算値を加算又は減算値を減算して、保護カウンタ値が算出される。したがって、制御回路36は、できる限りバッテリパックが保護動作を実行するために用いる値を用いるため、バッテリパック22が保護動作を実行する予兆を精度良く検出することができる。
【0250】
(第5実施形態)
<5-1.第1実施形態との相違点>
第5実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、共通する構成については説明を省略し、相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0251】
上述した第1実施形態では、制御回路36は、バッテリパック22により保護動作が実行される予兆を検出した場合に、放電電流を抑制し、バッテリパック22の過負荷状態の進行を抑制していた。これに対して、第5実施形態では、制御回路36は、バッテリパック22により保護動作が実行される予兆を検出した場合に、モータ50を一旦停止させて、バッテリパック22の回復を促す点で、第1実施形態と異なる。第5実施形態では、制御回路36は、S410における電流上限値設定処理の代わりに、図29のフローチャートに示す過負荷停止処理を実行する。
【0252】
図19及び図26のカウンタマップに示すように、モータ50が停止して放電電流が0Aになると、保護カウンタ値から減算値が減算され、保護カウンタ値が減少する。保護カウンタ値が所定値まで減少した後、モータ50を再始動させることにより、作業機1の停止時間が、バッテリパック22が保護動作を実行した場合と比べて、比較的短い時間に抑制される。バッテリパック22が保護動作を実行して放電禁止信号を出力すると、モータ50の停止期間は、例えば3~5分になる。これに対して、作業機1が、バッテリパック22により保護動作が実行される前にモータ50を停止させる場合、モータ50の停止期間は、例えば、20~30秒になる。
【0253】
<5-2.過負荷停止処理>
次に、制御回路36が、S410において電流上限値設定処理の代わりに実行する過負荷停止処理の詳細について、図29に示すフローチャートを参照して説明する。
【0254】
まず、S605において、制御回路36は、停止フラグがクリアされているか否か判定する。停止フラグがセットされている場合、S50の処理において、制御回路36は異常を検出する。その結果、バッテリ60からモータ50への電力供給が停止されて、モータ50が停止する。
【0255】
S605において、停止フラグがクリアされていると判定した場合は、S615の処理へ進む。S615では、制御回路36は、保護カウンタ値が、設定されている停止閾値よりも大きいか否か判定する。S615において、保護カウンタ値が停止閾値よりも大きいと判定した場合は、S625の処理へ進み、保護カウンタ値が停止閾値以下と判定した場合は、S645の処理へ進む。
【0256】
S625では、制御回路36は、停止フラグをセットする。続いて、S635では、制御回路36は、停止閾値に第2カウンタ値を設定し、本処理を終了する。第2カウンタ値は、バッテリパック22が保護動作を実行する保護閾値よりも小さい値である。本実施形態では、第2カウンタ値が第2停止閾値の一例に相当する。
【0257】
一方、S645では、制御回路36は、保護カウンタ値が第3カウンタ値よりも小さいか否か判定する。第3カウンタ値は、第2カウンタ値よりも小さい値である。S645において、保護カウンタ値が第3カウンタ値よりも小さいと判定した場合は、S655の処理へ進み、保護カウンタ値が第3カウンタ値以上と判定した場合は、本処理を終了する。
【0258】
S655では、制御回路36は、停止閾値に第1カウンタ値を設定して、本処理を終了する。第1カウンタ値は、第2カウンタ値よりも小さく、第3カウンタ値よりも大きい値である。本実施形態では、第1カウンタ値が第1停止閾値の一例に相当する。
【0259】
また、S605において、停止フラグがセットされていると判定した場合は、S665の処理へ進む。S665では、制御回路36は、保護カウンタ値が第1カウンタ値よりも小さいか否か判定する。S665において、保護カウンタ値が第1カウンタ値よりも小さいと判定した場合は、S675へ進み、保護カウンタ値が第1カウンタ値以上と判定した場合は、本処理を終了する。S675では、制御回路36は、停止フラグをクリアして、本処理を終了する。
【0260】
<5-3.作業機の動作>
次に、制御回路36が過負荷停止処理を実行した場合における、作業機1の動作について、図30のタイムチャートを参照して説明する。図30に示す保護カウンタ値のタイムチャートにおいて、ハッチング部分は、モータ50の停止期間を示す。また、ハッチング部分のうち、点のハッチング部分は、トリガ11を引くことにより、モータ50の再始動が可能な期間を示し、斜線のハッチング部分は、トリガ11の操作の有無にかかわらず、モータ50の再始動を禁止する期間を示す。
【0261】
時点t10において、トリガ11が引かれてトリガスイッチ12がオンになり、加算閾値以上の放電電流が流れ、保護カウンタ値が増加し始める。このとき、停止閾値には、第1カウンタ値が設定されている。
【0262】
時点t11において、保護カウンタ値が停止閾値(=第1カウンタ値)を超えると、停止閾値に第2カウンタ値が設定される。また、モータ50が一旦停止し、モータ50の再始動の可能期間に入る。モータ50の停止により、放電電流が流れなくなるため、保護カウンタ値が減少し始める。
【0263】
そして、時点t12において、トリガ11が離されてトリガスイッチ12が一旦オフになり、時点t13において、トリガ11が引かれてトリガスイッチ12がオンになると、モータ50が再始動し、放電電流が流れる。
【0264】
そして、時点t14において、保護カウンタ値が停止閾値(=第2カウンタ値)を超えると、モータ50が停止し、モータ50の再始動の不可期間に入る。時点t13から時点t14の期間は、時点t10から時点t11の期間よりも、モータ50の負荷が大きく、放電電流値が大きくなっている。そのため、時点t13から時点t14の期間では、時点t10から時点t11の期間よりも、保護カウンタ値の増加率が大きくなっている。
【0265】
また、時点t14において、モータ50が停止すると、保護カウンタ値が減少し始める。時点t15において、トリガ11が離れトリガスイッチ12がオフになり、時点t16において、トリガ11が引かれてトリガスイッチ12がオンになる。しかしながら、モータ50の再始動の不可期間であるため、モータ50は停止状態に維持され、放電電流は流れていない。使用者は、時点t11において、モータ50が一旦停止することにより、作業機1の使用を継続すると、モータ50の再始動の不可期間が到来することを認識できる。
【0266】
時点t17において、トリガ11が離されトリガスイッチ12がオフになる。時点t18において、保護カウンタ値が第1カウンタ値以下になり、モータ50の再始動の不可期間から可能期間へ遷移する。
【0267】
そして、時点t19において、トリガ11が引かれてトリガスイッチ12がオンなると、モータ50が再始動し、放電電流が流れる。時点t20において、保護カウンタ値が再び停止閾値(=第2カウンタ値)を超えると、モータ50が停止し、モータ50の再始動の不可期間に入る。
【0268】
時点t19から時点t20の期間は、時点t13から時点t14の期間よりも、モータ50の負荷が小さく、放電電流値が小さくなっている。そのため、時点t19から時点t20の期間では、時点t13から時点t14の期間よりも、保護カウンタ値の増加率が小さくなっている。
【0269】
また、時点t20において、モータ50が停止すると、保護カウンタ値が減少し始める。時点t21において、トリガ11が離されトリガスイッチ12がオフになる。時点t22において、保護カウンタ値が第1カウンタ値以下になり、モータ50の再始動の不可期間から可能期間へ遷移する。しかしながら、トリガ11が引かれないため、モータ50が再始動することなく、保護カウンタ値が減少し続ける。
【0270】
そして、時点t23において、保護カウンタ値が第3カウンタ値未満になると、停止閾値に第1カウント値が設定される。時点t24において、トリガ11が引かれてトリガスイッチ12がオンになると、モータ50が再始動し、放電電流が流れ始める。また、保護カウンタ値が増加し始める。時点t25において、保護カウンタ値が停止閾値(=第1カウント値)を超えると、モータ50が停止し、モータ50の再始動の可能期間に入る。本実施形態では、放電電流を制限していないため、全期間に亘って、放電電流はモータ50の負荷の変化に応じて、変化している。
【0271】
<5-4.効果>
以上説明した第5実施形態によれば、以下の効果(13)~(15)を奏する。
【0272】
(13)制御回路36が、バッテリパック22による保護動作が実行される前に、モータ50を停止させる。これにより、バッテリパック22が保護動作を実行する場合と比べて、比較的短い時間でバッテリパック22をから回復させることができる。ひいては、使用者は、作業機1の比較的短い停止期間を経て、作業機1の使用を継続することができる。また、使用者は、バッテリパック22の出力が制限されない状態で、作業機1の使用を継続することができる。
【0273】
(14)保護カウンタ値が保護閾値よりも小さい停止閾値を超えると、モータ50が停止される。これにより、保護カウンタ値が減少する。その結果、モータ50の比較的短い停止期間を経て、バッテリパック22をから回復させることができる。ひいては、モータ50は、比較的短い停止期間後に、バッテリパック22から電力供給を継続して受けることができる。
【0274】
(15)保護カウンタ値が、第1カウンタ値が設定された停止閾値を超えた場合に、モータ50が停止され、モータ50の停止後、トリガ11が操作された場合に、モータ50が再始動される。さらに、保護カウンタ値が、第2カウンタ値が設定された停止閾値を超えた場合に、モータ50が停止され、保護カウンタ値が第1カウンタ値を下回るまで、モータ50の再始動が禁止される。これにより、使用者は、モータ50が一旦停止した際には、トリガ11を操作することにより作業機1の使用を継続することができるとともに、使用を継続することよって、作業機1が使用不可能な期間が到来することを認識することができる。
【0275】
(他の実施形態)
以上、本開示を実施するための形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0276】
(a)上記各実施形態では、バッテリパック22は保護カウンタ値が保護閾値を超えた場合に保護機能が作動したが、本開示はこれに限定されるものではない。バッテリパック22は、バッテリ60の残容量が第1容量閾値を下回った場合に、保護機能が作動してもよい。すなわち、バッテリパック22は過放電状態になった場合に、保護機能が作動して放電禁止になってもよい。
【0277】
そして、制御回路36は、バッテリパック22から取得した残容量が第2容量閾値を下回った場合に、電流上限値に制限電流値を設定してもよい。あるいは、制御回路36は、取得した残容量が第2容量閾値を下回った場合に、デューティ比上限値に制限デューティ比を設定してもよい。第2容量閾値は、第1容量閾値よりも大きい値である。この場合、制御回路36は、残容量が第2容量閾値を下回った場合に、保護機能が作動する予兆を検出する。
【0278】
(b)また、バッテリパック22は、バッテリ温度が第1温度閾値を超えた場合に、保護機能が作動してもよい。すなわち、バッテリパック22が高温状態になった場合に、保護機能が作動して放電禁止になってもよい。
【0279】
そして、制御回路36は、バッテリパック22から取得したバッテリ温度が第2温度閾値を超えた場合に、電流上限値に制限電流値を設定してもよい。あるいは、制御回路36は、取得したバッテリ温度が第2温度閾値を超えた場合に、デューティ比上限値に制限デューティ比を設定してもよい。第2温度閾値は第1温度閾値よりも小さい値である。この場合、制御回路36は、バッテリ温度が第2温度閾値を超えた場合に、保護機能が作動する予兆を検出する。
【0280】
(c)第1実施形態では、保護カウンタ値がカウンタ閾値以下の場合に、電流上限値に通常電流値を設定したが、保護カウンタ値がカウンタ閾値以下の場合には電流上限値を設定しなくてもよい。この場合、制御回路36は、S420の処理において、条件(2)を満たすように、デューティ比を算出すればよい。
【0281】
(d)第1実施形態では、電流上限値を、2段階の値のいずれかに設定したが、3段階以上の値のいずれかに設定してもよい。例えば、保護閾値よりも小さい閾値として、第1カウンタ閾値と、第1カウンタ閾値よりも小さい第2カウンタ閾値とを設定する。そして、制御回路36は、保護カウンタ値が第2カウンタ閾値よりも小さい場合には、電流上限値に通常電流値を設定する。また、制御回路36は、保護カウンタ値が第1カウンタ閾値以上の場合には電流上限値に第1制限電流値を設定し、保護カウンタ値が第1カウンタ閾値未満且つ第2カウンタ閾値以上の場合には、電流上限値に第2制限電流値を設定する。第1電流制限値及び第2電流制限値は、いずれも加算閾値よりも小さい値で、第1電流制限値は第2電流制限値よりも小さい値とする。同様に、第2実施形態では、デューティ比上限値を、3段階以上の値のいずれかに設定してもよい。
【0282】
(e)第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。具体的には、第1実施形態において、第2実施形態のように、作業機1の制御回路36は、バッテリ制御回路65から保護カウンタ値を受信する代わりに、保護カウンタ値を算出してもよい。この場合、バッテリ制御回路65は、保護カウンタ値を算出しなくてもよい。
【0283】
また、第2実施形態において、第1実施形態にように、バッテリ制御回路65は、保護カウンタ値を算出してもよい。この場合、作業機1の制御回路36は、保護カウンタ値を算出する代わりに、バッテリ制御回路65から保護カウンタ値、加算閾値及び減算閾値を受信してもよい。
【0284】
(f)第3実施形態において、S505の処理において、制御回路36は、放電電流の大きさ等とカウンタマップ情報とに基づいて、カウンタ閾値を設定したが、放電電流の大きさ等とカウンタマップ情報とに基づいて、制限電流値を設定してもよい。例えば、制御回路36は、カウンタマップ情報から推定した保護カウンタ値の上昇率が比較的大きい場合には、制限電流値を比較的小さい値に設定し、保護カウンタ値の上昇率が比較的小さい場合には、制限電流値を比較的大きい値に設定してもよい。
【0285】
(g)上記各実施形態において、第2接続線49及び第2バッテリ接続線69のそれぞれを構成する通信線は1本に限らず2本でもよい。第2接続線49及び第2バッテリ接続線69が2本の通信線を含んでいる場合、一方の通信線は、制御回路36からバッテリ制御回路65へデータを送信する送信専用線であり、他方の通信線は、バッテリ制御回路65から制御回路36へデータを送信する送信専用線である。第2接続線49及び第2バッテリ接続線69が2本の通信線を含んでいる場合、シリアル端子44及びバッテリシリアル端子64のそれぞれは、2つのシリアル通信用の端子を含む。そして、2本の通信線のそれぞれは、シリアル通信用の端子に接続されている。このように、第2接続線49及び第2バッテリ接続線69が2本の通信線を含む場合、1本の通信線しか含まない場合と比べて、制御回路36とバッテリ制御回路65との間における通信速度を高くすることができる。このようにしても、好適にバッテリパック22からモータ50への供給電力を制限することができる。
【0286】
(h)本開示は、草刈機への適用に限らず、例えばチェーンソー、ヘッジトリマ、バリカンや、インパクトドライバー等の電動工具など、回転力により作業ツールが駆動されるように構成された各種の作業機に対して適用可能である。
【0287】
(i)制御回路36及びバッテリ制御回路65は、マイクロコンピュータに代えて、又はマイクロコンピュータに加えて、個別の各種電子部品の組み合わせを備えてもよいし、Application Specified Integrated Circuit(ASIC)を備えてもよいし、Application Specific Standard Product(ASSP)を備えてもよいし、例えばField Programmable Gate Array(FPGA)などのプログラマブル・ロジック・デバイスを備えてもよいし、あるいはこれらの組み合わせを備えてもよい。
【0288】
(j)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0289】
(k)上述した電動作業機の他、当該電動作業機とバッテリパックとを構成要素とするシステム、モータ駆動方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
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