(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート及び熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器並びにこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/04 20060101AFI20240129BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20240129BHJP
B29C 51/08 20060101ALI20240129BHJP
B65D 1/00 20060101ALI20240129BHJP
C08G 63/183 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04
B29C44/00 E
B29C51/08
B65D1/00 111
C08G63/183
(21)【出願番号】P 2020549285
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037594
(87)【国際公開番号】W WO2020067154
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-02-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-04
(31)【優先権主張番号】P 2018182069
(32)【優先日】2018-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019036356
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治
【合議体】
【審判長】磯貝 香苗
【審判官】加藤 友也
【審判官】天野 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-47228(JP,A)
【文献】特開2014-43528(JP,A)
【文献】特開平11-320647(JP,A)
【文献】特開平9-76327(JP,A)
【文献】特開2013-144811(JP,A)
【文献】特開2006-188690(JP,A)
【文献】特開2010-132930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/04
B29C44/00
B29C51/08
B65D1/00
C08G63/183
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が20質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項2】
Mz/Mnで表される比が8.0~36.0である、請求項1に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項3】
前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下である、請求項1又は2に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項4】
前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項5】
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項6】
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
【請求項7】
熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が20質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項8】
Mz/Mnで表される比が8.0~36.0である、請求項7に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項9】
前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下である、請求項7又は8に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項10】
前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下である、請求項7~9のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項11】
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、請求項7~10のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項12】
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%である、請求項7~11のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項13】
食品用容器である、請求項7~12のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
【請求項14】
粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤とを混練して混練物とする工程、及び前記混練物を
押出機から押し出し、発泡して、前記発泡層を形成する工程を有
し、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が20質量ppm以下となるように、前記押出機からの前記混練物の吐出量を前記押出機内のスクリューの回転数で除した吐出比を調整する、請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項15】
前記混
練物とする工程において、前記粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と前記発泡剤と架橋剤とを混練して混練物とする、請求項14に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
【請求項16】
請求項1~6のいずれか一項に記載の前記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形して容器を得る工程を有する、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート及び熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器並びにこれらの製造方法に関する。
本願は、2018年9月27日に、日本に出願された特願2018-182069号、及び2019年2月28日に、日本に出願された特願2019-036356号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形してなる容器は、耐熱性に優れることが一般に知られている。このため、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの成形品である容器は、電子レンジやオーブンで加熱加工する食品の容器として、広く使用されている。
容器の成形方法としては、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形可能な温度に加熱した後、この発泡シートを所定の形状の金型で挟んで成形する方法が一般的である。
例えば、特許文献1には、結晶化度が20%以下で、分子配向比が4.5以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートが開示されている。特許文献1に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの断熱性の向上及び容器の成形を容易にすることが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート及びその成形品は、フルーツ様の特有の臭気を発することがあった。熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート及びその成形品から特有の臭気が生じると、用途によっては好ましくないことがある。
そこで、本発明は、特有の臭気の発生を抑制できる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討した結果、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートにおけるフルーツ様の臭気は、アセトアルデヒドに起因するとの知見を得た。アセトアルデヒドは、ポリエステルが分解して生じる。アセトアルデヒドは、食品の香料成分として用いられる化合物であるが、内容物によっては、アセトアルデヒドの臭気は望ましくない。本発明者らは、発泡層の熱可塑性ポリエステル系樹脂の平均分子量を制御することにより、アセトアルデヒドの含有量を低減することができ、本願発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が25質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[2] Mz/Mnで表される比が8.0~36.0である、[1]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[3] 前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下である、[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[4] 前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[5] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[6] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[7] 熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が25質量ppm以下である、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[8] Mz/Mnで表される比が8.0~36.0である、[7]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[9] 前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下である、[7]又は[8]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[10] 前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下である、[7]~[9]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[11] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、[7]~[10]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[12] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%である、[7]~[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[13] 食品用容器である、[7]~[12]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[14] 粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤とを混練して混練物とする工程、及び前記混練物を押し出し、発泡して、前記発泡層を形成する工程を有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[15] 前記混錬物とする工程において、前記粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と前記発泡剤と架橋剤とを混練して混練物とする、[14]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[16] [1]~[6]のいずれか一項に記載の前記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形して容器を得る工程を有する、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器の製造方法。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、15,000~26,000が好ましく、20,000~25,000がより好ましく、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、270,000~710,000が好ましく、300,000~650,000がより好ましく、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が25質量ppm以下であり、0.5~25質量ppmが好ましく、1~20質量ppmがより好ましく、2~15質量ppmがさらに好ましい、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[2] Mz/Mnで表される比が8.0~36.0が好ましく、12~36がより好ましく、15~30がさらに好ましい、[1]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[3] 前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましく、0.2~3.0質量%がさらに好ましく、0.3~2.0質量%が特に好ましい、[1]又は[2]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[4] 前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下が好ましく、10~1000質量ppmがより好ましく、20~700質量ppmがさらに好ましく、30~500質量ppmが特に好ましい、[1]~[3]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[5] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、[1]~[4]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[6] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%が好ましく、1.5~11重量%がより好ましく、1~9重量%がさらに好ましい、[1]~[5]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[7] 前記発泡層の発泡倍率は、1.5~15倍が好ましく、2~10倍がより好ましく、2~8倍がさらに好ましい、[1]~[6]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート。
[8] 熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む発泡層を有し、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnが9,000~26,000であり、15,000~26,000が好ましく、20,000~25,000がより好ましく、
前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzが240,000~710,000であり、270,000~710,000が好ましく、300,000~650,000がより好ましく、
前記発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量が25質量ppm以下であり、0.5~25質量ppmが好ましく、1~20質量ppmがより好ましく、2~15質量ppmがさらに好ましい、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[9] Mz/Mnで表される比が8.0~36.0が好ましく、12~36がより好ましく、15~30がさらに好ましい、[8]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[10] 前記発泡層における灰分の含有量が5.0質量%以下が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましく、0.2~3.0質量%がさらに好ましく、0.3~2.0質量%が特に好ましい、[8]又は[9]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[11] 前記発泡層における重金属の含有量が1000質量ppm以下が好ましく、10~1000質量ppmがより好ましく、20~700質量ppmがさらに好ましく、30~500質量ppmが特に好ましい、[8]~[10]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[12] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂は、植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂を含む、[8]~[11]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[13] 前記発泡層に含まれる前記熱可塑性ポリエステル系樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%が好ましく、1.5~11重量%がより好ましく、1~9重量%がさらに好ましい、[8]~[12]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[14] 食品用容器である、[8]~[13]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器。
[15] 粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤とを混練して混練物とする工程、及び前記混練物を押し出し、発泡して、前記発泡層を形成する工程を有する、[1]~[7]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[16] 前記混錬物とする工程において、前記粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と前記発泡剤と架橋剤とを混練して混練物とする、[15]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[17] 前記混錬物とする工程において、粗熱可塑性ポリエステル系樹脂に架橋剤を加え、続いて前記発泡剤を加え、混練して混練物とする、[15]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[18] 前記混錬物とする工程において、粗熱可塑性ポリエステル系樹脂に架橋剤を加え、加熱して架橋させて熱可塑性ポリエステル系樹脂を得て、続いて前記熱可塑性ポリエステル系樹脂に前記発泡剤を加え、混練して混練物とする、[15]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[19] 前記混錬物とする工程において、前記粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と前記発泡剤と架橋剤とを含む混合物を混練して混練物とする、[15]に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[20] 前記粗熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV値)は0.50~1.50が好ましく、0.80~1.10がより好ましい、[15]~[19]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[21] 前記架橋剤が、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、及びオキサジン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、[15]~[20]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[22] 前記架橋剤の使用量が、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、0.08~0.5質量部が好ましく、0.12~0.45質量部がより好ましく、0.15~0.4質量部がさらに好ましい、[15]~[21]のいずれか一項に記載の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートの製造方法。
[23] [1]~[7]のいずれか一項に記載の前記熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを成形して容器を得る工程を有する、熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートによれば、特有の臭気の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の発泡シートの一例を示す断面図である。
【
図2】植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図3】植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図4】植物由来の熱可塑性ポリエステル系樹脂の製造工程の一例を示すフロー図である。
【
図5】本発明の発泡シートの成形品の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート)
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シート(以下、「発泡シート」ということがある)は、熱可塑性ポリエステル系樹脂(以下、「ポリエステル系樹脂」ということがある)を含有する発泡層を有する。
発泡シートは、発泡層のみからなる単層構造でもよいし、発泡層の片面又は両面に非発泡層を備える多層構造の発泡シート(以下、「積層発泡シート」ともいう)でもよい。例えば、
図1の積層発泡シート1は、発泡層10と、発泡層10の一方の面に設けられた非発泡層20とを備える。
図1の積層発泡シート1は二層構造である。
発泡シートの厚さとしては、0.3~5.3mmが好ましい。
【0011】
[発泡層]
発泡層の厚さとしては、0.3~5.0mmが好ましく、0.4~4.5mmがより好ましく、0.5~4.0mmがさらに好ましい。上記下限値以上であれば、後述する熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器(以下、「発泡容器」ということがある)の強度をより高められる。上記上限値以下であれば、容器の成形時に発泡シートの内部まで十分に加熱しやすい。
なお、厚みは、以下の方法で求められる値である。発泡層のTD方向(横幅方向)の任意の10点の厚みをマイクロゲージで測定する。10点の測定値を平均して、発泡層の厚みとする。
【0012】
[発泡層の厚さ]/[発泡シートの厚さ]で表される比は、0.5~1.0が好ましく、0.7~1.0がより好ましい。上記下限値以上であれば、発泡容器の強度をより高められる。上記上限値以下であれば、容器の成形時に発泡シートの内部まで十分に加熱しやすい。
【0013】
発泡層の坪量としては、250~900g/m2が好ましく、250~800g/m2がより好ましく、300~700g/m2がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、発泡容器の強度をより高められる。上記上限値以下であれば、発泡容器をより成形しやすい。
【0014】
発泡層の発泡倍率としては、1.5~15倍が好ましく、2~10倍がより好ましく、2~8倍がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、発泡容器の断熱性をより高められる。上記上限値以下であれば、容器の成形時に発泡シートの内部まで十分に加熱しやすい。「発泡層の発泡倍率」は、1を「発泡層の見掛け密度」で除した値である。
【0015】
発泡層の見掛け密度は、0.06~0.67g/cm3が好ましく、0.10~0.50g/cm3がより好ましく、0.12~0.50g/cm3がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、発泡容器の断熱性をより高められる。上記上限値以下であれば、容器の成形時に発泡シートの内部まで十分に加熱しやすい。
発泡層の見掛け密度は、得られた発泡層の寸法を測定して体積V(cm3)を求め、測定した質量W(g)と体積から密度を下記の式により求める。
見掛け密度(g/cm3)=測定試料の質量W(g)/測定試料の体積V(cm3)
【0016】
発泡層の平均気泡径は、例えば、80~450μmが好ましい。発泡層の平均気泡径は、ASTM D2842-69に記載の方法に準拠して測定された値である。
【0017】
発泡層の独立気泡率は、50%以上が好ましく、60%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましく、80%以上が特に好ましく、90%以上でもよい。発泡層の独立気泡率は、JIS K7138:2006「硬質発泡プラスチック-連続気泡率及び独立気泡率の求め方」に記載の方法により測定される値である。
【0018】
<ポリエステル系樹脂>
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンフラノエート樹脂(PEF)、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂(PTT)、テレフタル酸とエチレングリコールとシクロヘキサンジメタノールの共重合体、及びこれらの混合物並びにこれらと他の樹脂との混合物等が挙げられる。また、植物由来のポリエチレンテレフタレート樹脂、植物由来のポリエチレンフラノエート樹脂、植物由来のポリトリメチレンテレフタレート樹脂が用いられてもよい。これらのポリエステル系樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。特に好ましいポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。
【0019】
ポリエステル系樹脂としては、いわゆるバイオPET等、植物由来のポリエステル系樹脂でもよい。
植物由来のポリエステル系樹脂は、サトウキビ、トウモロコシ等の植物原料を由来とするポリマーである。「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたポリマーが挙げられる。また、例えば、「植物原料を由来とする」とは、植物原料から合成され又は抽出されたモノマーが重合されたポリマーが挙げられる。「植物原料から合成され又は抽出されたモノマー」には、植物原料から合成され又は抽出された化合物を原料とし合成されたモノマーが含まれる。植物由来のポリエステル系樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
【0020】
植物由来のポリエステル系樹脂について、PET、PEFを例にして説明する。
【0021】
PETの合成反応を(1)式に示す。nモルのエチレングリコールとnモルのテレフタル酸(Benzen-1,4-dicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PETが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:テレフタル酸=30:70(質量比)である。なお、PETの主鎖の両末端は水素原子である。
【0022】
【0023】
[(1)式中、nは化学量論係数であり、250~1100の数である。]
【0024】
エチレングリコールは、エチレンを酸化し、水和することで、工業的に製造される。また、テレフタル酸は、パラキシレンを酸化することで、工業的に製造される。
ここで、
図2に示すように、植物由来のエタノール(バイオエタノール)の脱水反応によりエチレンを得、このエチレンから合成されたエチレングリコール(バイオエタノール由来のエチレングリコール)と、石油化学品由来のテレフタル酸からPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来30質量%のPETである。
また、
図3に示すように、植物由来のイソブタノール(バイオイソブタノール)の脱水反応によりパラキシレンを得、このパラキシレンから合成したテレフタル酸と、バイオエタノール由来のエチレングリコールとからPETを合成する場合、製造されるPETは、植物由来100質量%のPETである。
【0025】
PEFの合成反応を(2)式に示す。nモルのエチレングリコールと、nモルのフランジカルボン酸(2,5-Furandicarboxylic Acid)との脱水反応によって、PEFが合成される。この合成反応における化学量論上の質量比は、エチレングリコール:フランジカルボン酸=33:66(質量比)である。PEFの主鎖の両末端は水素原子である。
【0026】
【0027】
[(2)式中、nは化学量論係数であり、250~1100の数である。]
【0028】
フランジカルボン酸(FDCA)は、例えば、植物由来のフルクトースやグルコースの脱水反応によってヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を得、HMFを酸化して得られる。
図4に示すように、FDCA及びエチレングリコールの双方が植物由来の場合、製造されるPEFは、植物由来100質量%のPEFである。
【0029】
ポリエステル系樹脂が前記他の樹脂を含有する場合、他の樹脂の含有量は、ポリエステル系樹脂の総質量に対して50質量%未満が好ましく、30質量%未満がより好ましく、10質量%未満がさらに好ましい。
【0030】
発泡層のポリエステル系樹脂の数平均分子量Mnは、9,000~26,000であり、15,000~26,000が好ましく、20,000~25,000がより好ましい。
Mnが上記下限値以上であれば、アセトアルデヒドの発生に起因する高分子鎖の末端の数が少なくなり、フルーツ様の臭気を抑制できる。Mnが上記上限値以下であれば、製造工程中におけるポリエステル系樹脂の粘度を低減できるため、剪断発熱を抑制することができ、フルーツ様の臭気を抑制できる。
Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値を、標準試料として昭和電工株式会社製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」を用いて得られる較正曲線に基づき換算した値である分子量から、下記式(a)で求められる。
【0031】
【0032】
Niはポリマー分子の数であり、Miは分子量であり、Ciは試料の濃度を表す。なお、試料濃度はCi=Mi×Niで表される。
【0033】
発泡層のポリエステル系樹脂のZ平均分子量Mzは、240,000~710,000であり、270,000~710,00が好ましく、300,000~650,000がより好ましい。
Mzが上記下限値以上であれば、アセトアルデヒドの発生に起因する高分子鎖の末端の数が少なくなり、フルーツ様の臭気を抑制できる。Mzが上記上限値以下であれば、製造工程中におけるポリエステル系樹脂の粘度を低減できるため、剪断発熱を抑制することができ、フルーツ様の臭気を抑制できる。
Mzは、Mnと同様にして求めた分子量から、下記式(c)で求められる。
【0034】
【0035】
Niはポリマー分子の数であり、Miは分子量であり、Ciは試料の濃度を表す。なお、試料濃度はCi=Mi×Niで表される。
【0036】
Mz/Mnで表される比(Mz/Mn比)は、8~36が好ましく、12~36がより好ましく、15~30がさらに好ましい。Mz/Mn比が上記範囲内であれば、フルーツ様の臭気をより良好に抑制できる。
【0037】
発泡層に含まれるポリエステル樹脂のゲル分量は、0.5~12.0重量%が好ましく、1.5~11重量%がより好ましく、1~9重量%がさらに好ましい。ゲル分量が上記範囲内であれば、発泡しやすくなり押出発泡シートが得られやすくなる。ゲル分量上記上限値以下であれば、平滑なシートが得られやすくなる。
ゲル分量は後述の方法で測定できる。
【0038】
原料であるポリエステル系樹脂(以下、「粗熱可塑性ポリエステル系樹脂」又は「粗ポリエステル系樹脂」ともいう)の極限粘度(IV値)は0.50~1.50が好ましく、0.80~1.10がより好ましい。IV値が上記下限値以上であれば、発泡しやすくなり押出発泡シートが得られやすくなる。IV値が上記上限値以下であれば、平滑なシートが得られやすくなる。
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法で測定できる。
「粗熱可塑性ポリエステル系樹脂」は、架橋剤により形成される架橋構造を有さないが、「熱可塑性ポリエステル系樹脂」は、架橋剤により形成される架橋構造を有する。
【0039】
<発泡剤>
発泡剤としては、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタン等のフロン、二酸化炭素、窒素等が挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素、窒素が好ましい。これらの発泡剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0040】
発泡剤の含有量は、特に限定されないが、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部が好ましい。
【0041】
<任意成分>
本発明の発泡シートは、ポリエステル系樹脂、結晶化促進剤及び発泡剤以外にその他成分(任意成分)を含有していてもよい。
かかる任意成分としては、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等が挙げられる。
なお、ポリエステル系樹脂、発泡剤及び任意成分の合計は、100質量%を超えない。
【0042】
架橋剤としては、例えば、無水ピロメリット酸等の酸二無水物、多官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物等が挙げられる。
架橋剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.08~0.5質量部が好ましい。
【0043】
気泡調整剤は、例えば、タルク、シリカ等の無機粉末等の混合物等である。これらの気泡調整剤は、発泡層の独立気泡率を高め、発泡層を形成しやすい。
気泡調整剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、0.2~5質量部が好ましい。
【0044】
安定剤は、例えば、カルシウム亜鉛系熱安定剤、スズ系熱安定剤、鉛系熱安定剤等である。
安定剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0045】
紫外線吸収剤は、例えば、酸化セシウム系紫外線吸収剤、酸化チタン系紫外線吸収剤等である。
紫外線吸収剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0046】
酸化防止剤は、例えば、酸化セリウム、酸化セリウム/ジルコニア固溶体、水酸化セリウム、カーボン、カーボンナノチューブ、酸化チタン、及びフラーレン等である。
酸化防止剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、1質量部以下が好ましい。
【0047】
着色剤は、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、チタンイエロー、酸化鉄、群青、コバルトブルー、焼成顔料、メタリック顔料、マイカ、パール顔料、亜鉛華、沈降性シリカ、カドミウム赤等である。
本発明の発泡シートを食品用の容器に用いる場合には、上記の着色剤の中からポリオレフィン等衛生協議会登録品を選択することが好ましい。
着色剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、2質量部以下が好ましい。
【0048】
結晶化促進剤は、例えば、ケイ酸塩、炭素、金属酸化物等である。ケイ酸塩としては、例えば、含水ケイ酸マグネシウムであるタルクが挙げられる。炭素としては、例えば、カーボンブラック、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、活性炭、グラファイト、グラフェン、コークス、メソポーラスカーボン、ガラス状炭素、ハードカーボン、ソフトカーボン等が挙げられ、カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラックが挙げられる。金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン等が挙げられる。
結晶化促進剤の含有量は、粗ポリエステル系樹脂100質量部に対して、例えば、3質量部以下が好ましい。
【0049】
上述した任意成分は、それぞれ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0050】
発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量は、25質量ppm以下であり、20質量ppm以下が好ましく、15質量ppm以下がより好ましい。アセトアルデヒドの含有量が上記上限値以下であれば、発泡シートにおけるフルーツ様の臭気の発生を抑制できる。
発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量の下限値は、実質的に0.1質量ppm以上が好ましく、0.5質量ppm以上がより好ましく、1質量ppm以上がさらに好ましく、2質量ppm以上が特に好ましい。アセトアルデヒドの含有量が上記範囲内であると、発泡層中のポリエステル系樹脂の分解が抑制されているため、ポリエステル系樹脂の熱成形性、耐熱性、機械的強度等の性質を向上することができる。
発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量は、原料である粗ポリエステル系樹脂の極限粘度(IV値)、押出機における粗ポリエステル系樹脂を含有する混合物の到達温度、押出機における粗ポリエステル系樹脂を含有する混合物に対する剪断力等の組み合わせにより調節できる。混合物の到達温度は、押出機における溶融温度(押出機シリンダーの設定温度)、混合物の剪断発熱量等により調節できる。混合物に対する剪断力は、押出機における吐出量(kg/h)、押出機スクリューの回転数(rpm)、押出機における吐出比(kg/h/rpm)等により調節できる。
【0051】
発泡層における灰分の含有量は、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましい。灰分の含有量が上記上限値以下であれば、押出機内での剪断によるポリエステル系樹脂の分解をさらに抑制し、発泡層中のアセトアルデヒドの含有量をさらに低減し、発泡シートにおけるフルーツ様の臭気の発生をより良好に抑制できる。
発泡層における灰分の含有量の下限値は、実質的に0.1質量%以上である。
発泡層における灰分の含有量は、気泡調整剤等の無機系添加剤の添加量によって調節できる。
【0052】
発泡層における重金属の含有量は、1000質量ppm以下が好ましく、700質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。重金属の含有量が上記上限値以下であれば、押出機内でのポリエステル系樹脂の分解をさらに抑制し、発泡層中のアセトアルデヒドの含有量をさらに低減し、発泡シートにおけるフルーツ様の臭気の発生をより良好に抑制できる。
発泡層における重金属の含有量の下限値は、実質的に1質量ppm以上である。
発泡層における重金属の含有量は、ポリエステル系樹脂を重合する際の触媒の量、任意成分の種類と量等の組み合わせにより調節できる。
発泡層に含まれる重金属は、粗ポリエステル系樹脂を重合する際の触媒に由来する。このため、重金属としては、例えば、チタン、ゲルマニウム、アンチモンが挙げられる。
【0053】
[非発泡層]
発泡シートは、発泡層の片面又は両面に非発泡層を有してもよい。
非発泡層を構成する樹脂は、特に限定されず、発泡層を構成する樹脂と同様の樹脂が挙げられる。
非発泡層を構成する樹脂は、発泡層を構成する樹脂と同じでもよいし、異なってもよい。
【0054】
非発泡層の厚みは、発泡シートの用途等を勘案して決定され、例えば、10~300μmが好ましく、20~200μmがより好ましい。非発泡層の厚みが上記下限値以上であれば、発泡シートの強度のさらなる向上を図れる。非発泡層の厚みが上記上限値以下であれば、発泡シートの軽量化を図れる。
【0055】
非発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量は、発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量と同様である。非発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量と、非発泡層におけるアセトアルデヒドの含有量とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
非発泡層における灰分の含有量は、発泡層における灰分の含有量と同様である。非発泡層における灰分の含有量と、非発泡層における灰分の含有量とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0057】
非発泡層における重金属の含有量は、発泡層における重金属の含有量と同様である。非発泡層における重金属の含有量と、非発泡層における重金属の含有量とは同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
(発泡シートの製造方法)
発泡シートの製造方法は、粗ポリエステル系樹脂を溶融し、溶融した粗ポリエステル系樹脂と発泡剤とを混練して混練物とする工程、及び前記混練物を押し出し、発泡して発泡層を得る工程を有する。混錬物とする工程として、以下の2つが挙げられる。
工程(1):粗熱可塑性ポリエステル系樹脂に架橋剤を加え、続いて発泡剤を加え、混練して混練物とする工程。
工程(2):粗熱可塑性ポリエステル系樹脂と発泡剤と架橋剤とを含む混合物を混練して混練物とする工程。
上記2つの工程のうち、工程(1)が発泡倍率を向上させる観点からも好ましい。
なお、上記工程(1)においては、粗熱可塑性ポリエステル系樹脂に架橋剤を加え、加熱して架橋させて熱可塑性ポリエステル系樹脂とし、前記熱可塑性ポリエステル系樹脂に発泡剤を加え混錬して混錬物としてもよい。
かかる発泡シートの好適な製造方法としては、公知の発泡シートの製造方法を採用でき、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
【0059】
粗ポリエステル系樹脂及びその他成分を含有する原料組成物と、発泡剤とを押出機に供給して溶融し、混練して混合物とする。その他成分としては、架橋剤が挙げられる。粗ポリエステル系樹脂を溶融する温度(溶融温度:設定温度)は、例えば、220~300℃が好ましく、240~290℃がより好ましい。
溶融温度が上記下限値以上であれば、粗ポリエステル系樹脂と他の原料とを均一に混合できる。溶融温度が上記上限値以下であれば、粗ポリエステル系樹脂の分解をさらに抑制し、発泡層中のアセトアルデヒドの含有量をさらに低減できる。
混合物の温度(到達温度)は、280~330℃が好ましく、290~320℃がより好ましい。到達温度が上記下限値以上であれば、流動しやすく、押出機からより円滑に押し出せる。到達温度が上記上限値以下であれば、ポリエステル系樹脂の分解をさらに抑制し、発泡層中のアセトアルデヒドの含有量をさらに低減できる。
混合物の温度(到達温度)は、押出機内での樹脂の剪断発熱により、樹脂が溶融する温度(溶融温度:設定温度)よりも高温になる傾向にある。
【0060】
続いて、押出機内のスクリューで混合物を混錬しつつ、前記押出機の先端に取り付けたサーキュラーダイから混合物を押し出し、発泡して円筒状の発泡体を得る。
この円筒状の発泡体を拡径させ、マンドレルに供給して冷却する。冷却された円筒状の発泡体を押出方向に連続的に切断し、これを展開して、発泡シートとする。
押出機からの混合物の吐出量(単に「吐出量」ということがある)は、特に限定されず、押出機の能力等を勘案して決定される。
押出機の運転条件として、[吐出量(kg/h)]/[押出機内のスクリューの回転数(rpm)]で表される吐出比(kg/h/rpm)を大きくすると、ポリエステル系樹脂に加わる剪断力が小さくなり、発泡層中のアセトアルデヒドの含有量をより低減できる。
【0061】
(熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器)
本発明の熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡容器(発泡容器)は、上述した本発明の発泡シートを成形してなる成形品である。
図5は、発泡シートの成形品である容器2の一例を示す斜視図である。発泡シートは積層発泡シートであってもよく、非発泡層が容器の内側となるように成形されることが好ましい。
容器の形状は特に限定されず、例えば、平面視形状が真円形、楕円形、半円形、多角形、扇形等のトレー、丼形状の容器、有底円筒状又は有底角筒状等の容器、納豆用容器等の蓋付容器等の種々の容器、容器本体に装着される蓋体等が挙げられる。
これらの容器の用途としては、例えば、食品用容器、耐熱容器、工業用運搬トレー、農業用育苗トレー、自動車用部材等が挙げられる。
【0062】
(発泡容器の製造方法)
発泡容器の製造方法は、上述した本発明の発泡シートを成形して、容器とする方法であってもよいし、上述した本発明の発泡シートの製造方法で発泡シートを得、得られた発泡シートを成形して容器とする方法であってもよい。
かかる発泡容器の好適な製造方法としては、公知の発泡容器の製造方法を採用でき、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
【0063】
まず、発泡シートを任意の温度に加熱して、発泡シートを軟化する(予備加熱工程)。
予備加熱工程では、例えば、発泡シートを120~130℃とする。
次いで、任意の温度に加熱した雄型と雌型と(金型)で、軟化した発泡シートを挟み込み、所望の形状に成形する。その後、雄型と雌型とを離間して、成形された容器を取り出す。成形時の金型の温度は、例えば、170~200℃が好ましい。
【0064】
以上説明した通り、本発明の発泡シート又は発泡容器によれば、MnとMzとが特定の範囲であり、アセトアルデヒドの含有量が特定の範囲であるため、フルーツ様の特有の臭気を低減できる。
【実施例】
【0065】
(使用原料)
・粗ポリエステル系樹脂:下記製造例1に従い、表1、3に記載の粗ポリエステル系樹脂を得た。
[製造例1]粗ポリエステル系樹脂の製造
実施例1で使用されるポリエチレンテレフタレートを調製した。表中の「触媒量純分」は、触媒に含まれる金属の量である。
ビスヒドロキシエチルテレフタル酸(試薬、アルドリッチ製)66質量部を250℃の窒素雰囲気化で溶解した。これに高純度テレフタル酸43.2質量部と、エチレングリコール18.6質量部とのスラリーを2.5時間かけて添加し、エステル化反応を行った。
エステル化反応を行った後、リン酸トリメチル0.01質量部を添加し、5分間撹拌した。これに酢酸マグネシウム0.05質量部と、表中に記載した種類及び量の触媒を添加し、5分間撹拌した。表中の触媒の種類を表す記号は、後述の通りである。触媒「Ti」については、下記[製造例2]で製造したクエン酸キレートチタン化合物として添加した。
これにリン酸水素二カリウム0.013質量部(0.75モル/1000kg相当)を添加し、290℃に昇温し、その後、徐々に減圧して133Pa以下で縮重合反応を行い、粗ポリエチレンテレフタレート(粗PET)を得た。
粗PETを133Pa以下、160℃で、4時間乾燥した後、220℃、24時間、133Pa以下の条件で固相重合反応を行い、表中に記載の極限粘度(IV値)のポリエチレンテレフタレート(PET)である粗ポリエステル系樹脂を得た。表中に記載した種類及び量の触媒の添加によって、数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを調節して、表中に記載の極限粘度(IV値)のPETである粗ポリエステル系樹脂を得た。得られた粗ポリエステル系樹脂は、石油化学品由来100質量%の原料からなる樹脂(石油由来樹脂)である。
【0066】
表中の触媒の種類を表す記号は以下の通りである。
・Ti:クエン酸キレートチタン化合物、下記製造例2で製造されたもの。
・Sb:三酸化アンチモン(アンチモン含有量約100質量%)。
・Ge:二酸化ゲルマニウム(ゲルマニウム含有量約100質量%)。
【0067】
[製造例2]クエン酸キレートチタン化合物の製造
撹拌機、凝縮器及び温度計を備えた3Lフラスコ内で、水371gにクエン酸・一水和物532g(2.52モル)を溶解して、クエン酸水溶液とした。このクエン酸水溶液を撹拌しつつ、クエン酸水容液にチタンテトライソプロポキシド288g(1.00モル)を滴下漏斗で徐々に加えて混合液とした。この混合液を1時間還流した。還流後の混合液にイソプロパノール-水混合液を加え、これを減圧下で蒸留した。得られた蒸留物を70℃以下に冷却し、そこに水酸化ナトリウム380g(3.04モル)の32質量%水溶液を滴下漏斗で徐々に添加した。得られた生成物をろ過した後、ろ液とエチレングリコール504g(80モル)とを混合した。これを減圧下で加熱して、イソプロパノールと水とを除去し、クエン酸キレートチタン化合物(チタン含有量3.85質量%)を触媒として得た。
【0068】
(実施例1)
製造例1で得られた粗ポリエステル系樹脂100質量部と、表に記載量の気泡調整剤(タルク)とを130℃で4時間乾燥した。乾燥後の原料と、表に記載量の架橋剤(無水ピロメリット酸、ダイセル社製)とをφ90mmの押出機に入れ、押出機に窒素ガスを圧入し、混練した。粗ポリエステル系樹脂を溶融する温度(溶融温度:設定温度)を285℃とし、吐出比を3.2kg/h/rpmとし、口径φ135mmのサーキュラーダイから押し出し、マンドレルで冷却しながら切り裂いて、単層の発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
【0069】
各例の発泡シートを150℃のヒータで90秒間加熱して、発泡シートの表面温度を125℃とした。雄型側から圧縮空気を供給して、雌型に発泡シートを密着させた。その後、雄型と雌型とを6秒間閉じて、180℃で真空圧空成形を行って、各例の発泡容器を得た。発泡容器は、直径15cm、深さ3cmの円形の容器であり、円形の底面とこの底面の周縁から立ち上がる側面とを有し、上部が開口している。
各例の発泡シート及び各例の発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表中に示す。
【0070】
(実施例2~11、比較例1~6)
表1、3の配合に従った以外は、実施例1と同様にして単層の発泡シートを得た。
各例の発泡シート及び各例の発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表中に示す。
但し、実施例4、6、8は参考例である。
【0071】
(実施例12)
実施例12~16は、植物由来の粗ポリエステル系樹脂(植物由来樹脂)を含む例である。植物由来樹脂は、モノマーの一部が「植物原料を由来とする」ものを含む。
粗ポリエステル系樹脂100質量部に代えて、植物由来30質量%の粗ポリエステル系樹脂(CB-602AB、極限粘度=0.77dl/g、遠東新世紀社製)100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
得られた発泡シートを用いて、実施例1と同様にして発泡容器を得た。得られた発泡シート及び発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表2に示す。
【0072】
(実施例13)
粗ポリエステル系樹脂100質量部に代えて、植物由来30質量%の粗ポリエステル系樹脂(BCB-60、極限粘度=0.80dl/g、豊田通商社(GLOBIO)製)100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
得られた発泡シートを用いて、実施例1と同様にして発泡容器を得た。得られた発泡シート及び発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表2に示す。
【0073】
(実施例14)
溶融温度を300℃とした以外は、実施例12と同様にして発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
得られた発泡シートを用いて、実施例1と同様にして発泡容器を得た。得られた発泡シート及び発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表2に示す。
【0074】
(実施例15)
吐出比を0.5kg/h/rpmとした以外は、実施例12と同様にして、発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
得られた発泡シートを用いて、実施例1と同様にして発泡容器を得た。得られた発泡シート及び発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表2に示す。
但し、実施例15は参考例である。
【0075】
(実施例16)
粗ポリエステル系樹脂100質量部に代えて、植物由来30質量%の粗ポリエステル系樹脂(CB-602AB、極限粘度=0.77dl/g、遠東新世紀社製)30質量部と、実施例1の石油化学品由来100質量%の粗ポリエステル系樹脂70質量部(極限粘度=1.06dl/g)とを用いた以外は、実施例1と同様にして、発泡シートを得た。得られた発泡シートは、厚み0.75mm、坪量は330g/m2、見掛け密度0.44g/cm3、発泡倍率2.27倍であった。
得られた発泡シートを用いて、実施例1と同様にして発泡容器を得た。得られた発泡シート及び発泡容器について、臭気評価を行い、その結果を表2に示す。
【0076】
(測定方法)
[ポリエステル系樹脂の分子量]
各例の測定対象から試料5mgを取り、これにヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)0.5mL、クロロホルム0.5mLの順に追加して軽く手動で振とうした。これを浸漬時間24±1.0hrで放置した。試料が完全に溶解したことを確認後に、クロロホルムで10mLに希釈して軽く手動で振とうして、混合した。その後、ジーエルサイエンス(株)製非水系0.45μmのクロマトディスク、又は(株)島津ジーエルシー製非水系0.45μmシリンジフィルターにて濾過して、測定試料とした。測定試料を次の測定条件にて、クロマトグラフで測定し、予め作成しておいた標準ポリスチレン検量線から試料の分子量を求めた。得られた分子量に基づいて、試料の数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを求めた。
【0077】
<測定装置>
・測定装置=東ソー(株)製、「HLC-8320GPC EcoSEC」、ゲル浸透クロマトグラフ(RI検出器・UV検出器内蔵)。
<GPC測定条件>
・カラム
≪サンプル側≫
ガードカラム=東ソー(株)製 TSK guardcolumn HXL-H(6.0mm×4.0cm)×1本。
測定カラム=東ソー(株)製 TSKgel GMHXL(7.8mmI.D.×30cm)×2本直列。
≪リファレンス側≫
抵抗管(内径0.1mm×2m)×2本直列。
カラム温度=40℃。
移動相=クロロホルム。
≪移動相流量≫
サンプル側ポンプ=1.0mL/min。
リファレンス側ポンプ=0.5mL/min。
検出器=UV検出器(254nm)。
注入量=15μL。
測定時間=26min。
サンプリングピッチ=500msec。
【0078】
<検量線用標準ポリスチレン試料>
検量線用標準ポリスチレン試料は、昭和電工(株)製の製品名「STANDARD SM-105」及び「STANDARD SH-75」から、質量平均分子量Mwが5,620,000、3,120,000、1,250,000、442,000、131,000、54,000、20,000、7,590、3,450、1,320のものを用いた。
上記検量線用標準ポリスチレンをA(5,620,000、1,250,000、131,000、20,000、3,450)及びB(3,120,000、442,000、54,000、7,590、1,320)にグループ分けした。Aを秤量(2mg、3mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解した。Bを秤量(3mg、4mg、4mg、4mg、4mg)した後、クロロホルム30mLに溶解した。
標準ポリスチレン検量線は、作成した各A及びB溶解液を50μL注入して測定後に得られた保持時間から較正曲線(三次式)を作成することにより得た。その検量線を用いて数平均分子量Mn及びZ平均分子量Mzを算出した。
【0079】
[極限粘度(IV値)の測定方法]
IV値は、JIS K7367-5(2000)の方法に準じ、フェノール/テトラクロロエタン(50/50質量比)中、30℃で測定した。
【0080】
[アセトアルデヒドの測定方法]
<試料調製>
各例の測定対象から1gの切片を切り出した。切り出した切片を下記粉砕装置及び下記粉砕条件で粉砕して、試料とした。
≪粉砕装置≫
・凍結粉砕装置:西進商事株式会社、6870 Freezer Mill。
・粉砕容器:内容量12mL、ステンレス製。
≪粉砕条件≫
・液体窒素予備冷却時間:3分間。
・振とう粉砕時間:1分間。
・再冷却時間:1分間。
・反復操作:5回。
【0081】
<前処理:メタノール抽出法>
粉砕した試料0.4gと、メタノール5mLとを遠沈管に入れ、15分間、超音波を印加した。これを3500rpm、15分間、遠心分離した。上澄み液を非水系0.2μmクロマトディスクでろ過した。
ろ液2mLと20体積%リン酸-メタノール溶液40μLとを混合した。これに、0.2質量%DNPH(ジニトロフェニルヒドラジン)-アセトニトリル溶液(誘導体化試薬)100μLを加え、これを室温(25℃)で2時間静置して測定用試料とした。
【0082】
<UHLC(超高速液体クロマトグラフィー)測定>
測定用試料を下記測定装置及び下記測定条件で、UHLC法によって測定した。アセトアルデヒドの含有量は、別途作成した検量線により求めた。
≪測定装置≫
・装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ、超高速液体クロマトグラフ LaChromUltra。
・カラム:LaChromUltra C18 2μm(2.0mm I.D.×50mmL)。
・ポンプ注入部温度:室温(25℃)。
・溶媒:0・05質量%TFA(トリフルオロ酢酸)/アセトニトリル(50/50)溶液。
・流量:0.6mL/min。
・実行時間:3分間。
・注入量:5μL。
・検出条件:アセトアルデヒド(UV=360nm)。
【0083】
[灰分の測定方法]
各例の測定試料から1gの試料を切り出した。マイクロウェーブ式マッフル炉(Phoenix、CEM社製)を用いて、試料を下記灰化条件で灰化した。灰化物の入った容器の質量(灰化後の容器質量)を測定し、下記(1)式で、灰分量を算出した。
<灰化条件>
・Dwell Time:30分間。
・Operating Temp.:800℃。
【0084】
灰分量(質量%)={(灰化後の容器質量)-(容器のみの質量)}÷{試料質量(1.0g)}×100 ・・・(1)
【0085】
[重金属の測定方法]
各例の測定対象から3cm角の試料を切り出した。試料の質量を測定した。カーボンテープを用いて、試料をカーボン台に貼り付け、下記測定装置及び下記測定条件で、重金属の含有量を測定した。測定に際しては、バランス成分をポリエチレンテレフタレートにし、オーダー分析を行った。
<測定装置>
・蛍光X線解析装置:株式会社リガク、RIX-2100。
・X線間:縦型Rh=3kw。
<測定条件>
・スリット幅:標準。
・分光結晶:TAP(F~Mg)、PET(Al、Si)、LiF(K~U)、F-PC(F~Ca)、SC(Ti~U)。
・測定モード:FP薄膜法(Zn-PET)。
・バランス測定:あり(PET)。
・換算式:バランス成分をPETとして、合計が100mass%となるように再計算し、金属担体のmass%を算出した。得られた金属のmass%の値を重金属の質量%として換算し、質量ppm(μg/kg)に換算した。
重金属種については、ポリエチレン系樹脂の縮重合に用いられたチタン、ゲルマニウム、アンチモンを測定対象とした。
【0086】
[ゲル分量の測定方法]
各例の測定対象から試料を切り出し、約60mgを秤量した。10mL容量の試験官に試料を入れ、ヘキサフルオロイソパノール5mLをこれに加え、試験管を24時間、常温にて振とうさせ、試料を溶解させた。試験管の内容物を、200メッシュの、重量を測定された金網(1)を用いてろ過した。ろ過後の金網を24時間静置し、金網に付着した不溶物を乾燥させた。不溶物を乾燥後、ヘキサフルオロイソプロパノールを1mL用いて金網上の不溶物を洗浄した。洗浄後、不溶物が付着した金網をホットプレートにて、約80℃にて30分間乾燥した。乾燥後、不溶物が付着した金網をデシケーターにて冷却した。冷却後、不溶物が付着した金網(2)の重量を測定し、下記式にてゲル分量を算出した。
ゲル分量(重量%)=100×{(不溶物が付着した金網(2)の重量)-(金網の重量(1))}/(試料の重量(60mg))
同じ試験を3回行い、平均値を算出して本願実施例及び比較例のゲル分量とした。表中、ゲル分量を測定していない実施例及び比較例は、「-」で表す。
【0087】
(評価方法)
[臭気評価]
<発泡シート>
各例の発泡シートを10cm×10cmに切り出した。切り出した発泡シートをアルミニウム箔で包み、これを200℃のオーブンで10分間加熱した。加熱後直ちにアルミニウム箔を外し、10名の選任者が下記評価基準に従って採点した。
10名の採点を平均し、小数点以下を四捨五入して判定値とした。平均値を下記判定基準に沿って分類し、臭気評価とした。
<発泡容器>
各例の発泡容器の上面の開口部をアルミニウム箔で覆い、これを200℃のオーブンで10分間加熱した。加熱後直ちにアルミニウム箔を外し、10名の選任者が下記評価基準に従って採点した。
10名の採点を平均し、小数点以下を四捨五入して判定値とした。平均値を下記判定基準に沿って分類し、臭気評価とした。
【0088】
<評価基準>
5点:異臭を感じない。
4点:わずかに異臭を感じるが、フルーツ様の臭気であると認識できない。
3点:フルーツ様の臭気をわずかに感じる。
2点:フルーツ様の臭気をはっきりと感じるが、許容できる範囲である。
1点:フルーツ様の臭気を著しく強く感じる。
【0089】
<判定基準>
A:平均点が4.5~5点。
B:平均点が2.5~4.4点。
C:平均点が1.5~2.4点。
D:平均点が1~1.4点。
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
表1~3に示すように、本発明を適用した実施例1~16は、発泡シート及び発泡容器のいずれにおいても臭気判定が「C」~「A」であった。
実施例12と実施例14との比較において、到達温度の低い実施例12の方が臭気をより抑制できた。
実施例12と実施例15との比較において、吐出比が大きい実施例12の方が臭気をより抑制できた。
Mz及びMnの双方又はいずれか一方が、本発明の範囲外である比較例1~6は、発泡シート及び発泡容器のいずれにおいても臭気判定が「D」であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、フルーツ様の臭気を良好に抑制できることを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、特有の臭気の発生を抑制できる熱可塑性ポリエステル系樹脂発泡シートを提供することを目的とする。