(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20240129BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20240129BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60K1/04 Z
(21)【出願番号】P 2021015597
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】谷口 剛士
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-137354(JP,A)
【文献】特開2019-166850(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/20
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーと、前記ロッカーと隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材と、を有する車両側部構造であって、
前記ロッカーは、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーインナパネルと、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーアウタパネルと、が互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間を構成しており、
前記ロッカーの内方空間は、前記ロッカーの下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間が構成されており、
前記延長空間内には、前記ロッカーに沿って延在する長尺状であると共に
、前記ロッカーインナパネル側から前記ロッカーアウタパネル側に向かって延在する延在面と、前記ロッカーアウタパネルと対向する対向面と、前記ロッカーインナパネル側へ折り返される折返し面を有しており、前記ロッカーインナパネルと接合されることで閉断面部を構成する荷重伝達部材を有し、
前記ロッカーアウタパネルには、前記対向面を挟む上下位置に隣接した位置で前記ロッカーの内方空間側に突出する第1のビードが車両前後方向に沿って設けられており、
前記第1のビードは、前記荷重伝達部材と上下方向において重なった位置関係で構成されており、
前記荷重伝達部材を通じて車幅方向の外方側からの衝撃荷重が、前記延長空間に対し車幅方向の内方側に隣接される前記衝撃吸収部材に伝達される車両側部構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両側部構造であって、
前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネルの下端面と接合されている車両側部構造。
【請求項3】
車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーと、前記ロッカーと隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材と、を有する車両側部構造であって、
前記ロッカーは、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーインナパネルと、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーアウタパネルと、が互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間を構成しており、
前記ロッカーの内方空間は、前記ロッカーの下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間が構成されており、
前記延長空間内には、前記ロッカーに沿って延在する長尺状であると共に
前記ロッカーアウタパネルと接合されることで閉断面部を構成する荷重伝達部材を有し、
前記荷重伝達部材を通じて車幅方向の外方側からの衝撃荷重が、前記延長空間に対し車幅方向の内方側に隣接される前記衝撃吸収部材に伝達される車両側部構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両側部構造であって、
前記荷重伝達部材は、車幅方向に沿った第2のビードが車両前後方向に間隔を隔てて複数列が構成される車両側部構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両側部構造であって、
前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネルまたは前記ロッカーアウタパネルに対しスポット溶接で接合された接合部を有する車両側部構造。
【請求項6】
車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーと、前記ロッカーと隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材と、を有する車両側部構造であって、
前記ロッカーは、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーインナパネルと、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーアウタパネルと、が互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間を構成しており、
前記ロッカーの内方空間は、前記ロッカーの下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間が構成されており、
前記延長空間内には、前記ロッカーに沿って延在する長尺状であると共に前記ロッカーインナパネル又は前記ロッカーアウタパネルのいずれかと接合されることで閉断面部を構成する荷重伝達部材を有し、
前記衝撃吸収部材は、合成樹脂の中空の筒状体が複数連続して隣接することで平面充填されたハニカム構造で構成されており、
前記荷重伝達部材を通じて車幅方向の外方側からの衝撃荷重が、前記延長空間に対し車幅方向の内方側に隣接される前記衝撃吸収部材に伝達される車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1のような車両側部構造が知られている。係る特許文献1には、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーが、全てアルミニウム合金の押出材で構成される技術が開示されている。このアルミニウム合金の押出材によるロッカーは、内方空間が細かく区切られて車両前後方向に連通した筒状の小空間が複数隣接されており、係る小空間が車幅方向からの衝撃によって潰されることで衝突エネルギーを吸収する構造とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなアルミニウム合金の押出材によるロッカーは、効率よく衝撃荷重を吸収するために係る小空間の構造が複雑となり易いことが懸念されている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーにおいて、アルミニウム合金の押出材とは異なる素材によって骨格を構成すると共に、車幅方向の衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材に対し効率よく衝撃荷重を伝達する構造とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の車両側部構造は次の手段をとる。先ず、第1の発明は、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーと、前記ロッカーと隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材と、を有する車両側部構造であって、前記ロッカーは、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーインナパネルと、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーアウタパネルと、が互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間を構成しており、前記ロッカーの内方空間は、前記ロッカーの下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間が構成されており、前記延長空間内には、前記ロッカーに沿って延在する長尺状であると共に前記ロッカーインナパネル又は前記ロッカーアウタパネルのいずれかと接合されることで閉断面部を構成する荷重伝達部材を有し、前記荷重伝達部材を通じて車幅方向の外方側からの衝撃荷重が、前記延長空間に対し車幅方向の内方側に隣接される前記衝撃吸収部材に伝達される。
【0007】
次に、第2の発明は、上記第1の発明に係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネルと接合されることで閉断面部を構成する。
【0008】
次に、第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネルの下端面と接合されている。
【0009】
次に、第4の発明は、上記第1の発明から第3の発明のいずれかに係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネル側から前記ロッカーアウタパネル側に向かって延在する延在面と、前記ロッカーアウタパネルと対向する対向面と、前記ロッカーインナパネル側へ折り返される折返し面によって、閉断面部を構成しており、前記ロッカーアウタパネルには、前記対向面を挟む上下位置に隣接した位置で前記ロッカーの内方空間側に突出する第1のビードが車両前後方向に沿って設けられており、前記第1のビードは、前記荷重伝達部材と上下方向において重なった位置関係で構成される。
【0010】
次に、第5の発明は、上記第1の発明に係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ロッカーアウタパネルと接合されることで閉断面部を構成する。
【0011】
次に、第6の発明は、上記第1の発明から第5の発明のいずれかに係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、車幅方向に沿った第2のビードが車両前後方向に間隔を隔てて複数列が構成される。
【0012】
次に、第7の発明は、上記第1の発明から第6の発明のいずれかに係る車両側部構造において、前記荷重伝達部材は、前記ロッカーインナパネルまたは前記ロッカーアウタパネルに対しスポット溶接で接合された接合部を有する。
【0013】
次に、第8の発明は、上記第1の発明から第7の発明のいずれかに係る車両側部構造において、前記衝撃吸収部材は、合成樹脂の中空の筒状体が複数連続して隣接することで平面充填されたハニカム構造で構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記各発明の手段をとることにより、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカーにおいて、アルミニウム合金の押出材とは異なる素材によって骨格を構成すると共に、車幅方向の衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材に対し効率よく衝撃荷重を伝達する構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係る車両側部構造を適用した車両下部を車両前後方向の前側から模式的に示した断面図である。
【
図2】本実施形態に係る車両側部構造の左側の一部を示した斜視図である。
【
図3】本実施形態に係る車両側部構造の左側の一部を示した分解斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る車両側部構造が適用された車両のロッカーに衝撃荷重が入力された状態を模式的に示した断面図である。
【
図5】本実施形態に係る車両側部構造の変形例が適用された車両のロッカーに衝撃荷重が入力された状態を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本実施形態に係る車両側部構造について、図面を用いて説明する。なお、各図に適宜示す矢印は、車両の前後、上下、左右を示している。また、以下の説明において、車両前後方向を単に前後と称し、車両上下方向を単に上下と称することもある。
【0017】
<全体構成>
図1は、本実施形態に係る車両側部構造を適用した車両下部を車両前後方向の前側から模式的に示した断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る車両側部構造を適用した車両は、例えば、図示しない電動機(モータ)を駆動源として走行する、電動自動車、ガソリンハイブリッド車、燃料電池ハイブリッド車等であり、車両フロアを構成するフロアパネル(不図示)の下方に電動機へ供給される電力を蓄電するバッテリとしての電池パック80が搭載されている。また、電池パック80の車両幅方向の両端には、車両前後方向に沿ってアルミニウムフレーム90が延在している。アルミニウムフレーム90は、アルミニウム合金により押し出し加工、引き抜き加工などによって筒状に形成されている。
【0018】
<電池パック80>
電池パック80は、複数の電池モジュールと電池ECUを内蔵し、電池システムとして車載可能にユニット化されて扁平な箱形状に形成されている。ここで、電池モジュールは、モーターを駆動するための電気エネルギーの放電・充電の両機能を備えており、電池セルと呼ばれる単電池を複数つないで構成されている。電池セルには、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などを用いた蓄電池である。電池ECUは、電池パック80の電子制御ユニット(Electronic Control Unit)である。
【0019】
<車両側部構造>
車両下部には、車両幅方向及び車両前後方向に沿ってフロアパネル(不図示)が延在されている。フロアパネルの車両幅方向の両端には、車両前後方向に沿ってロッカー10、ロッカー20がそれぞれ延在されている。フロアパネルの上には、ロッカー10とロッカー20の間において、車両幅方向にそってクロスメンバ(不図示)が架渡されている。ロッカー10とアルミニウムフレーム90の間には、衝撃吸収部材70が配設されている。同様に、ロッカー20とアルミニウムフレーム90の間には、衝撃吸収部材70が配設されている。
【0020】
<ロッカー10、20>
図2は、本実施形態に係る車両側部構造の左側の一部を示した斜視図である。
図3は、本実施形態に係る車両側部構造の左側の一部を示した分解斜視図である。
図4は、本実施形態に係る車両側部構造が適用された車両のロッカー20に衝撃荷重Fが入力された状態を模式的に示した断面図である。ロッカー10、20は、車幅方向の側方において車両前後方向に延在して車両の骨格構造の一部として機能されるものである。ここで、ロッカー10とロッカー20は、左右対称の構造であり実質的に同一の構成であるため、代表して詳細構成を左側のロッカー20を用いて説明することとし、ロッカー10についての詳細説明は省略する。
図2から
図4に示すように、ロッカー20は、ロッカーインナパネル30と、ロッカーアウタパネル40とが互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間22を構成している。
【0021】
ロッカーインナパネル30は、鋼板製であり、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成されている。ロッカーインナパネル30は、車幅方向に切った断面視で見て、上方側から下方側に向かって、上方フランジ面31、上端面32、側壁面33、下端面34、立設面35、下方フランジ面36を有した断面ハット状で構成されている。上方フランジ面31は、車両上下方向に延在した面であり、後述するロッカーアウタパネル40の上方フランジ面41と接合される部位である。上端面32は、上方フランジ面31の下端縁から屈曲して車両幅方向の内方側に延在する面である。側壁面33は、上端面32の内方縁から屈曲して車両上下方向の下方に向かって延在する面である。下端面34は、側壁面33の下端縁から屈曲して車両幅方向の外方側に延在する面である。立設面35は、下端面34の外方縁から屈曲して車両上下方向の下方に向かって延在する面である。下方フランジ面36は、立設面35から延長された面であり、後述するロッカーアウタパネル40の下方フランジ面46と接合される部位である。
【0022】
ロッカーアウタパネル40は、鋼板製であり、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成されている。ロッカーアウタパネル40は、車幅方向に切った断面視で上方から下方に向かって、上方フランジ面41、上端面42、側壁面43、下端面44、下方フランジ面46を有した断面ハット状で構成されている。上方フランジ面41は、車両上下方向に延在した面であり、上述したロッカーインナパネル30の上方フランジ面31と接合される部位である。上端面42は、上方フランジ面41の下端縁から屈曲して車両幅方向の外方側に延在する面である。側壁面43は、上端面42の外方縁から屈曲して車両上下方向の下方に向かって延在する面である。下端面44は、側壁面43の下端縁から屈曲して車両幅方向の内方側に延在する面である。下方フランジ面46は、下端面44の内方縁から屈曲して車両上下方向の下方に向かって延在する面であり、上述したロッカーインナパネル30の下方フランジ面36と接合される部位である。
【0023】
ロッカー20は、ロッカーインナパネル30と、ロッカーアウタパネル40とが互いの開口を対向させた状態で重ね合わせる。そして、上方フランジ面31と上方フランジ面41をスポット溶接にて接合する。また下方フランジ面36と下方フランジ面46をスポット溶接にて接合する。こうしてロッカー20は、筒状の内方空間22を構成する。
【0024】
ここで、ロッカーインナパネル30の側壁面33に比べて、ロッカーアウタパネル40の側壁面43の方が長く設定されている。すなわち、ロッカーアウタパネル40の側壁面43の長さは、ロッカーインナパネル30における側壁面33と立設面35の両方の長さと略同じ長さである。よって、ロッカーインナパネル30の下端面34と、ロッカーアウタパネル40の下端面44の車両上下方向の位置関係を見ると、相対的にロッカーインナパネル30の下端面34の方が上方に位置し、ロッカーアウタパネル40の下端面44の方が下方に位置している。従って、ロッカー20の内方空間22は、ロッカー20の下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間24が構成されている。延長空間24内には、荷重伝達部材60を有している。
【0025】
<荷重伝達部材60>
荷重伝達部材60は、ロッカー20に沿って延在する長尺状であると共にロッカーインナパネル30又はロッカーアウタパネル40のいずれかと接合されることで閉断面部を構成する部材である。本実施形態における荷重伝達部材60は、ロッカーインナパネル30と接合されることで閉断面部を構成する。荷重伝達部材60は、上方接合面61、延在面62と、対向面64と、折返し面66と、下方接合面67を有しており、ロッカーインナパネル30と接合されて延長空間24内に閉断面部を構成する。
【0026】
上方接合面61、延在面62と、対向面64と、折返し面66、下方接合面67は、車幅方向に切った断面視で見て、次のような構成である。上方接合面61は、ロッカーインナパネル30の下端面34とスポット溶接によって接合される面である。延在面62は、上方接合面61から延長され、ロッカーインナパネル30側からロッカーアウタパネル40側に向かって延在する面である。対向面64は、延在面62の外方縁から屈曲してロッカーアウタパネル40と対向する面である。折返し面66は、対向面64の下端縁から屈曲してロッカーインナパネル30側へ折り返される面である下方接合面67は、折返し面66から屈曲して、ロッカーインナパネル30の立設面35に面して、この立設面35とスポット溶接によって接合される面である。ここで、上方接合面61、下方接合面67は、ロッカーインナパネル30に対しスポット溶接で接合される「接合部」に相当する。また、荷重伝達部材60は、車幅方向に沿ったビード68が車両前後方向に間隔を隔てて長手方向全域に複数列が構成されている。ここで、ビード68が「第2のビード」に相当する。
【0027】
ロッカーアウタパネル40には、対向面64を挟む上下位置に隣接した位置でロッカー20の内方空間22側に突出する上方ビード43a、下方ビード43bが車両前後方向に沿って設けられている。ここで、上方ビード43a、下方ビード43bは、対向面64よりも車幅方向の内方側まで突出していることから、荷重伝達部材60と上下方向において重なった位置関係で構成される。ここで、上方ビード43a、下方ビード43bは、対向面64を挟む上下位置に隣接した位置でロッカー20の内方空間22側に突出する「第1のビード」に相当する。
【0028】
<衝撃吸収部材70>
衝撃吸収部材70は、ロッカー20と隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する機能を有する。具体的に衝撃吸収部材70は、ロッカー20の延長空間24とアルミニウムフレーム90の挟まれた位置に配設されている。衝撃吸収部材70は、合成樹脂製の箱型状で構成されている。衝撃吸収部材70は、車幅方向において中空の筒状体72が複数連続して隣接することで平面充填されたハニカム構造で構成される。本実施形態では、正六角形の中空の筒状体72が平面充填されたハニカム構造で構成される。
【0029】
<作用・効果>
図4は、本実施形態に係る車両側部構造が適用された車両のロッカー20に衝撃荷重Fが入力された状態を模式的に示した断面図である。ここで、車幅方向の外方側から及ぼされる衝撃荷重Fは、ロッカー20の側壁面43から下端面44を通じて衝撃吸収部材70の下方側に伝達される。また、衝撃荷重Fは、ロッカー20の側壁面43と荷重伝達部材60の対向面64が接触すると、延在面62、上方接合面61を通じて衝撃吸収部材70の上方側に伝達される。また、衝撃荷重Fは、ロッカー20の側壁面43と荷重伝達部材60の対向面64が接触すると、折返し面66、下方接合面67を通じて衝撃吸収部材70の中段側に伝達される。このように、ポール側突等の側面衝突の衝撃荷重Fは、ロッカー20の一部に局所的に集中することが考えられるが、本実施形態の車両側部構造であれば、衝撃吸収部材70全体に満遍なく荷重が伝達されるため、効率よく車幅方向の衝突エネルギーを吸収することができる。また、ロッカー20は、アルミニウム合金の押出材とは異なり鋼板製による簡素な構造によって骨格を構成できる。
【0030】
以上、本実施形態について説明したが、車両側部構造は、本実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができる。
図5は、本実施形態に係る車両側部構造の変形例が適用された車両のロッカー20に衝撃荷重Fが入力された状態を模式的に示した断面図である。なお、上述した実施形態と実質的に同一な構成については、各符号の数に100を加えた符号とし、各部の詳細な説明は省略することがある。
図5に示すように、例えば、ロッカー120は、ロッカーインナパネル130とロッカーアウタパネル140のように、互いを接合するフランジの形態は種々適用できる。例えば、下方フランジ面136、146のように互いに近接する方向に屈曲して重ね合わせて接合する形態であってもよい。上方フランジ面131、141も同様に、種々の形態を適用できる。また、荷重伝達部材160のようにロッカーアウタパネル40と接合されることで閉断面部を構成する部材であってもよい。また、ロッカー120には、上方ビード43a、下方ビード43b(第1のビード)と同様の構成を設けてもよい。荷重伝達部材160には、ビード68(第2のビード)と同様の構成を設けてもよい。
【0031】
<各発明に対応する上記実施形態の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における第1発明以降の各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0032】
第1の発明によれば、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカー20と、ロッカー20と隣接することで車幅方向の外方側からの衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材70と、を有する車両側部構造である。ロッカー20は、車幅方向の外方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーインナパネル30と、車幅方向の内方側が開口した断面ハット状で構成された鋼板製のロッカーアウタパネル40と、が互いの開口を対向させた状態で重ね合わせて接合されることで筒状の内方空間22を構成している。ロッカー20の内方空間22は、ロッカー20の下面において車幅方向の外方側下面が内方側下面よりも相対的に下方に延長した段差形状とされることで延長空間24が構成されている。この延長空間24内には、ロッカー20に沿って延在する長尺状であると共にロッカーインナパネル30又はロッカーアウタパネル40のいずれかと接合されることで閉断面部を構成する荷重伝達部材60を有している。荷重伝達部材60を通じて車幅方向の外方側からの衝撃荷重Fが、延長空間24に対し車幅方向の内方側に隣接される衝撃吸収部材70に伝達される。これにより、車幅方向の側方において車両前後方向に延在した車両骨格構造の一部としてのロッカー20において、アルミニウム合金の押出材とは異なる素材によって骨格を構成すると共に、車幅方向の衝突エネルギーを吸収する衝撃吸収部材70に対し効率よく衝撃荷重Fを伝達する構造とすることができる。
【0033】
第2の発明によれば、荷重伝達部材60は、ロッカーインナパネル30と接合されることで閉断面部を構成するため、延長空間24内の閉断面部の配設位置を設定しやすい。よって、衝撃吸収部材70に対し効率よく衝撃荷重Fを伝達する構造とすることができる。
【0034】
第3の発明によれば、荷重伝達部材60は、ロッカーインナパネル30の下端面34と接合されているため、衝撃荷重Fの及ぼされる方向に抗する位置で接合することになり効率的な構造とすることができる。
【0035】
第4の発明によれば、荷重伝達部材60は、ロッカーインナパネル30側からロッカーアウタパネル40側に向かって延在する延在面62と、ロッカーアウタパネル40と対向する対向面64と、ロッカーインナパネル30側へ折り返される折返し面66によって、閉断面部を構成している。ロッカーアウタパネル40には、対向面64を挟む上下位置に隣接した位置でロッカー20の内方空間22側に突出する上方ビード43a、下方ビード43b(第1のビード)が車両前後方向に沿って設けられている。上方ビード43a、下方ビード43bは、荷重伝達部材60と上下方向において重なった位置関係で構成される。そのため、荷重伝達部材60の上下方向の倒れを抑制することができる。
【0036】
第5の発明によれば、荷重伝達部材60は、ロッカーアウタパネル40と接合されることで閉断面部を構成する。そのため、延長空間の形状によっては荷重伝達部材60をロッカーアウタパネル側と接合する態様とすることもでき、設計自由度の向上を図ることができる。
【0037】
第6の発明によれば、荷重伝達部材60は、車幅方向に沿ったビード68(第2のビード)が車両前後方向に間隔を隔てて複数列が構成されるため、車幅方向から及ぼされる衝撃荷重Fに対する剛性を向上させることができる。
【0038】
第7の発明によれば、荷重伝達部材60は、ロッカーインナパネル30またはロッカーアウタパネル40に対しスポット溶接で接合された上方接合面61、下方接合面67(接合部)を有するため、効率的に接合が可能とすることができる。
【0039】
第8の発明によれば、衝撃吸収部材70は、合成樹脂の中空の筒状体72が複数連続して隣接することで平面充填されたハニカム構造で構成されることで軽量化を図ることができる。
【符号の説明】
【0040】
10 ロッカー
20 ロッカー
22 内方空間
24 延長空間
30 ロッカーインナパネル
31 上方フランジ面
32 上端面
33 側壁面
34 下端面
35 立設面
36 下方フランジ面
40 ロッカーアウタパネル
41 上方フランジ面
42 上端面
43 側壁面
44 下端面
46 下方フランジ面
43a 上方ビード(第1のビード)
43b 下方ビード(第1のビード)
60 荷重伝達部材
61 上方接合面(接合部)
62 延在面
64 対向面
66 折返し面
67 下方接合面(接合部)
68 ビード(第2のビード)
70 衝撃吸収部材
72 筒状体
80 電池パック
90 アルミニウムフレーム
120 ロッカー
122 内方空間
124 延長空間
130 ロッカーインナパネル
131 上方フランジ面
132 上端面
133 側壁面
134 下端面
135 立設面
136 下方フランジ面
140 ロッカーアウタパネル
141 上方フランジ面
142 上端面
143 側壁面
146 下方フランジ面
160 荷重伝達部材
161 上方接合面(接合部)
162 延在面
164 対向面
166 折返し面
167 下方接合面(接合部)
F 衝撃荷重