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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】チャンネルボックス及び燃料集合体
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/324 20060101AFI20240129BHJP
   G21C 5/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
G21C3/324
G21C5/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021044742
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2022143942
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊城
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 智子
(72)【発明者】
【氏名】秋元 恵
(72)【発明者】
【氏名】須山 章子
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 勝
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-529298(JP,A)
【文献】特開2016-024062(JP,A)
【文献】特開2015-137223(JP,A)
【文献】特開2018-193259(JP,A)
【文献】特表2008-501977(JP,A)
【文献】特開2018-030753(JP,A)
【文献】特開2007-269621(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/00-3/64,5/00-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部を有し、当該筒状部の内側に複数の原子炉用燃料棒を収容するチャンネルボックスであって、
前記筒状部は、長手方向において上下端および中央部のエリアを有し、長手方向の中央部は上下端より曲げに強い特性を有し、かつ上下端は長手方向の中央部よりせん断に強い特性を有するように前記長手方向に沿って炭化ケイ素繊維の含有量が異なる複数種の炭化ケイ素複合材料から構成され
ていることを特徴とするチャンネルボックス。
【請求項2】
筒状部を有し、当該筒状部の内側に複数の原子炉用燃料棒を収容するチャンネルボックスであって、
前記筒状部は、長手方向において上下端および中央部のエリアを有し、長手方向の中央部は上下端よりせん断に強い特性を有し、かつ上下端は長手方向の中央部より曲げに強い特性を有するように前記長手方向に沿って炭化ケイ素繊維の含有量が異なる複数種の炭化ケイ素複合材料から構成され
ていることを特徴とするチャンネルボックス。
【請求項3】
記エリアは、長手方向のエリアまたは長手方向のエリアと水平方向のエリアで区分されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチャンネルボックス。
【請求項4】
筒状部を有し、当該筒状部の内側に複数の原子炉用燃料棒を収容するチャンネルボックスであって、
前記筒状部は、四角筒状であり、炭化ケイ素繊維の含有量が異なる複数種の炭化ケイ素複合材料から構成され、水平断面形状において、少なくとも1つのコーナー部の外側及び内側が角筒よりも外側に膨らみを持つ凸の形状であることを特徴とするチャンネルボックス。
【請求項5】
前記炭化ケイ素複合材料が、炭化ケイ素からなる第1の層と、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素からなる第2の層と、これらの間に介在し固体潤滑剤を有する中間層とを具備したことを特徴とする請求項1乃至の何れか1項に記載のチャンネルボックス。
【請求項6】
複数の前記原子炉用燃料棒と、これらの原子炉用燃料棒の外周を囲む請求項1乃至の何れか1項に記載のチャンネルボックスとを具備したことを特徴とする燃料集合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、チャンネルボックス及び燃料集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧水型原子力発電プラント(PWR)は、蒸気発生器、高圧タービン、低圧タービン、復水器、給水ポンプ、給水加熱器を順次経て、再び原子炉へ戻る循環サイクルで構成されており、蒸気発生器で発生した蒸気によって高圧タービンおよび低圧タービンを駆動して発電機を作動させ、発電を行うようになっている。
【0003】
沸騰水型原子力発電プラント(BWR)においては、原子炉でウランの核分裂反応から発生するエネルギーを利用して冷却水を沸騰させており、原子炉が蒸気発生器を兼ねている。
【0004】
これら軽水炉の燃料となるウランやプルトニウムは焼結体(燃料ペレット)として、燃料被覆管に収納されており、燃料被覆管の周囲を冷却水が流れている。複数の燃料被覆管を束ねた周囲を覆うようにチャンネルボックスが配置されて燃料集合体が構成され、燃料被覆管の周囲に効率的に冷却水が流れる構成となっている。
【0005】
一般に、チャンネルボックスには、その優れた耐食性と低い中性子吸収断面積から、ジルカロイ4と呼ばれるSn-Fe-Cr-Zr合金、ジルカロイ2と呼ばれるSn-Fe-Cr-Ni-Zr合金が使用されており、Zr-Nb合金等の使用も検討されている。
【0006】
これらのジルコニウム基合金は、事故時のような高温になると周囲の水分と以下に示すような反応が生じる。
Zr + 2HO → ZrO + 2H …(1)
【0007】
ここで(1)式で示した反応は発熱反応であり、ジルコニウム基合金は自身の発した熱により(1)式の酸化反応を促進し、およそ900℃以上の高温になると劇的に水素の発生が増加する。原子炉内に水分が存在する環境でジルコニウム基合金がこのような高温にさらされると、短時間に多量の水素が発生し、この水素が格納容器から漏洩し、原子炉建屋内に滞留して水素爆発を起こすおそれがある。このようなことから、チャンネルボックスの材料として、事故時のような高温において、化学的及び機械的に耐性を有するセラミック複合材料の使用が検討されている。中でも、高温まで耐性を有する炭化ケイ素複合材料の使用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6226342号明細書
【文献】米国特許出願公開2011/0268243号明細書
【文献】特開2016-024062号公報
【文献】特許第2560571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1~3については、炭化ケイ素複合材料チャンネルボックスにおける、一般的なジルコニウム基合金製チャンネルボックス形状への炭化ケイ素複合材料適用可能性を提示したのみであった。また、チャンネルボックスの形状においては特許文献4に記載されるような従来ジルコニウム基合金製チャンネルボックスの形状についての提案もなされている。
【0010】
本発明の目的は、炭化ケイ素複合材料を適用することで実現可能な形状を有し、耐震性を高めることができるとともに、燃料集合体としての機能および性能の向上を図ることのできるチャンネルボックス及び燃料集合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態のチャンネルボックスは、筒状部を有し、当該筒状部の内側に複数の原子炉用燃料棒を収容するチャンネルボックスであって、前記筒状部は、長手方向において上下端および中央部のエリアを有し、長手方向の中央部は上下端より曲げに強い特性を有し、かつ上下端は長手方向の中央部よりせん断に強い特性を有するように前記長手方向に沿って炭化ケイ素繊維の含有量が異なる複数種の炭化ケイ素複合材料から構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、炭化ケイ素複合材料を適用することで実現可能な形状を有し、耐震性を高めることができるとともに、燃料集合体としての機能および性能の向上を図ることのできるチャンネルボックス及び燃料集合体を提供することとができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係るチャンネルボックスの概略構成を模式的に示す斜視図。
図2】第1実施形態に係るチャンネルボックスの概略構成を模式的に示す概略斜視図。
図3】炭化ケイ素複合材料の構成例を示す断面図。
図4】第2実施形態に係るチャンネルボックスの概略構成を模式的に示す水平断面図。
図5】第2実施形態に係るチャンネルボックス及び燃料集合体の、燃料棒、制御棒の位置関係を従来のチャンネルボックス及び燃料集合体と比較して示し、(a)は本発明を、(b)は従来例を示す要部拡大水平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態に係るチャンネルボックス及び燃料集合体について、図面を参照して説明する。実施形態に係るチャンネルボックスは、炭化ケイ素複合材料を用いて構成されており、沸騰水型発電炉(BWR)の燃料集合体を覆うように配置され、原子炉冷却材流路の確保、制御棒のガイド、燃料棒の固定と保護の機能を有する。なお、以下の説明では、主にチャンネルボックスの構成について説明するが、このチャンネルボックス内に格子状に燃料棒が配列されて燃料集合体が構成される。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る炭化ケイ素複合材料を適用したチャンネルボックス1の概略構成を示す斜視図である。チャンネルボックス1は、全体形状が略四角筒状に形成された角筒状部2を有する。また、チャンネルボックス1は、角筒状部2の四隅に位置するチャンネルボックスコーナー部21と、これらのチャンネルボックスコーナー部21の間に位置するチャンネルボックス辺22を有する。
【0016】
図2は、第1実施形態に係るチャンネルボックス1の構成を模式的に示した概略斜視図である。図2に示すように、チャンネルボックス1の長手方向において複数(図2に示す例では6つ)のエリア7~12に区切って、使用する炭化ケイ素複合材料を異ならせた構成となっている。なお、図2に示す例では、6つのエリア7~12に区切った場合を示しているが、エリアの数は5以下であってもよく、7以上であってもよい。また、複数のエリアに区切らずに、連続的に炭化ケイ素複合材料の構成を変更してもよい。
【0017】
上記の炭化ケイ素複合材料としては、例えば、図3に示す構成のものを使用することができる。図3に示す炭化ケイ素複合材料は、例えば、第1の層31と、第2の層32と、これらの間に介在する中間層33の3層構造を有する。第1の層31は、例えば炭化ケイ素から構成されている。また、第2の層32は、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素から構成されている。中間層33は、固体潤滑剤から構成されている。
【0018】
第1実施形態のチャンネルボックス1においては、その構成成分が基本的に炭化ケイ素であることから、使用時の放射化が抑制される。また、原子炉の重大事故時、水分と接触したとしても、水分との反応による水素の発生が抑制される。
【0019】
さらに、第1実施形態のチャンネルボックス1においては、炭化ケイ素からなる第1の層31と、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素からなる第2の層32とが結合力を弱める界面となる中間層33を介して配置された構造を有することから、強度、破壊靭性、および破壊エネルギーが高次元で両立される。
【0020】
具体的には、炭化ケイ素からなる第1の層31により強度が確保され、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素からなる第2の層32により破壊靭性、破壊エネルギーが確保される。
【0021】
特に、これら第1の層31と第2の層32とが結合力を弱める界面となる中間層33を介して配置されることにより、第1の層31と第2の層32とが機能的に分離され、それぞれの機能が有効に発現される。これにより、通常時や地震発生時の振動に必要とされる強度は、炭化ケイ素からなる第1の層31により十分に確保され、原子炉の重大事故時に設計基準を超えるような荷重または熱衝撃が加えられたときには、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素からなる第2の層32により破壊が抑制される。なお、炭化ケイ素複合材料としては、上記の3層構造のものに限らず4層以上の構成としてもよい。
【0022】
第2の層32は、炭化ケイ素繊維が複合化された炭化ケイ素から構成されている。これにより、例えば、第2の層32が延性破壊を示すようになり、第1の層31のように脆性破壊するものと組み合わされることにより、破壊の進行を抑制できる。第2の層32は、例えば、炭化ケイ素によりマトリックスが構成され、この炭化ケイ素からなるマトリックス中に炭化ケイ素繊維が配置されている。なお、炭化ケイ素繊維どうしの間は、炭化ケイ素からなるマトリックスによって完全に埋められている必要はなく、気孔を有するものでもよい。
【0023】
炭化ケイ素繊維は、通常、100~10000本程度が束ねられた繊維束の状態で炭化ケイ素からなるマトリックス中に配置される。第2の層32においては、このような繊維束が連続していることが好ましい。例えば、第2の層32においては、1本の連続した繊維束により全体が構成されていることが好ましい。このような場合、特に、破壊靭性、破壊エネルギーが高くなる。
【0024】
上述したとおり、中間層33は、第1の層31と第2の層32との間に配置され、固体潤滑剤を有する。第1の層31と第2の層32との間に中間層33が配置されることにより、第1の層31と第2の層32とが機能的に分離されて、それぞれの機能が有効に発現される。また、第1の層31と第2の層32との間に中間層33が配置されることにより、第1の層31において発生した亀裂がそのまま第2の層32に進展することが抑制される。これにより、第1の層31と第2の層32とが直接接合されている場合に比べて、強度、破壊靭性、および破壊エネルギーが高次元で両立される。
【0025】
中間層33における結合力を弱める界面としては、窒化ホウ素、グラファイト、雲母系鉱物等が好ましい。これらのものから中間層33が構成される場合、特に第1の層31と
第2の層32が機能的に良好に分離される。
【0026】
上記構成の炭化ケイ素複合材料では、例えば、第1の層31の平均厚みと、第2の層32の平均厚みの割合を変更することによって、強度、破壊靭性、破壊エネルギーの状態を調整することができる。また、第2の層32の炭化ケイ素繊維の含有量等を調整することによっても、強度、破壊靭性、破壊エネルギーの状態を調整することができる。
【0027】
チャンネルボックス1は地震時に水平方向に振動するが、チャンネルボックス1の長手方向(上下方向)における位置や水平(長手方向に対して垂直)方向における位置によって、地震の振動によって加わる力が異なる。第1実施形態のチャンネルボックス1では、図2に示したとおり、チャンネルボックス1の長手方向において例えば地震時に加わる水平方向応力等によって6つのエリア7~12に区切って、使用する炭化ケイ素複合材料を異ならせることにより、その長手方向位置において必要とされる力学特性(強度、破壊靭性、破壊エネルギー)等を付与することができる。
【0028】
例えば、チャンネルボックス1の長手方向の中央部は、曲げに強い特性を必要とし、上下端はせん断に強い特性を必要とする場合、エリア7~12毎の炭化ケイ素複合材料の炭化ケイ素繊維の含有量を、長手方向の中央部では少なくし、上下端では多くすることによって、このような力学的特性を持たせることができる。炭化ケイ素繊維の含有量の調整は、前述したとおり、例えば第1の層31の平均厚みと、第2の層32の平均厚みの割合を変更すること、第2の層32の炭化ケイ素繊維の含有量等を調整すること等によって行うことができる。
【0029】
また、上記とは逆に、チャンネルボックス1の長手方向の中央部は、せん断に強い特性を必要とし、上下端は曲げに強い特性を必要とする場合は、エリア7~12毎の炭化ケイ素複合材料の炭化ケイ素繊維の含有量を、長手方向の中央部では多くし、上下端では少なくすることによって、このような力学的特性を持たせることができる。
【0030】
なお、上記の説明では、チャンネルボックス1の長手方向の中央部と上下端という3つのエリアについて説明したが、例えば、図2に示す例では、チャンネルボックス1の長手方向を6つのエリア7~12に区切っていることから、各長手方向の位置毎に、より細かな調整を行うことができる。例えば、隣り合うエリア毎に、異なる力学的特性を有するものに調整することもできる。
【0031】
また、上記の説明では、チャンネルボックス1を長手方向のエリア7~12に区切った場合について説明したが、水平方向のエリアに区切ってもよく、長手方向のエリアと水平方向のエリアとに区切ってもよい。さらに、炭化ケイ素複合材料の炭化ケイ素繊維の含有量だけでなく、チャンネルボックス1の水平断面形状を変化させてもよい。
【0032】
(第2実施形態)
次に、図4図5を参照して第2実施形態について説明する。なお、図4図5において、第1実施形態と対応する部分には、同一の符号を付して、重複した説明は省略する。図4に示すように、第2実施形態に係るチャンネルボックス1aは、その水平断面形状において、外側に膨らみを持つコーナー部3を有する。すなわち、チャンネルボックス1aの側壁部は、角筒コーナー部を外に凸とした形状を有する。
【0033】
図5は、第2実施形態に係るチャンネルボックス1a、制御棒4、燃料棒5の位置関係に関して従来のチャンネルボックス100と比較して示す要部拡大水平断面図であり、(a)は、チャンネルボックス1aの場合、(b)は、従来のチャンネルボックス100の場合を示している。図5(b)に示すように、チャンネルボックスコーナー部21の内壁と、そのコーナー部に最も近接する燃料棒5の間には冷却材ギャップ6が形成されている。
【0034】
炭化ケイ素複合材料からなるチャンネルボックス1aは、複数の燃料棒5により構成された燃料集合体を覆った状態で原子炉の炉内に設置される。そのため、燃料集合体を覆うための角筒状の角筒状部2を有しており、この形状により、燃料集合体内部の原子炉冷却材流路を確保する機能に加え、制御棒挿入時の制御棒のガイド機能、更に燃料集合体の保護機能を担っている。従って、これらの機能を満足できる板厚を有する構造となっている。
【0035】
炭化ケイ素複合材料は、ジルコニウム合金より高い強度を有するため、現行のジルコニウム基合金製のチャンネルボックス100の材料を、炭化ケイ素複合材料に変更したチャンネルボックス1aとすれば、現行のジルコニウム基合金製のチャンネルボックス100に要求される板厚より薄い板厚を採用できる。また、チャンネルボックスの板厚を薄くできれば、冷却材ギャップ6が従来より大きくなるような曲率を有する構造に変更でき、チャンネルボックス外側に膨らみを持つコーナー部3を採用することができる。また、例えば、ジルコニウム合金からなる板材をプレス等で曲げ加工する場合に比べて、炭化ケイ素複合材料の場合、例えば所定形状とした治具に巻き付けて加熱する等の方法により、より容易に任意の形状に成形することができる。
【0036】
なお、図5では、チャンネルボックス1aの板厚と、チャンネルボックス100の板厚との差を分かり易くするため、誇張して示してあるが、炭化ケイ素複合材料の場合、現行のジルコニウム基合金製の場合に比べて2~3割板厚を薄くすることが可能である。
【0037】
上記構成の第2実施形態に係るチャンネルボックス1aは、その水平断面形状において、外側に膨らみを持つコーナー部3を有するので、全体的な強度を高めることができ、第1実施形態と同様に耐震性を高めることができる。また、板厚薄肉化により、従来と同様の外形寸法以内で燃料の流路面積が増加する。また、チャンネルボックスコーナー部内壁と、そのコーナー部に最も近接する燃料棒5の間の冷却材ギャップ6が広がり、流路面積が増加する。
【0038】
以上のように第2実施形態によれば、耐震性を高めることができるとともに、チャンネルボックスにおいて流路面積が狭く、熱的に厳しいコーナー燃料棒周りの流路面積を増加でき、限界出力を改善できる。また、従来と同様の外形寸法以内で、燃料の流路面積を拡大することができ、燃料集合体の圧損設計に裕度ができる。さらに、最適化設計によりチャンネル安定性の向上、増出力化、熱的裕度向上等に繋げることができる。なお、上記第2実施形態では、4つのコーナー部を全て外側に膨らみを持つコーナー部3とした場合について説明したが、少なくとも1つのコーナー部を全て外側に膨らみを持つコーナー部3としてもよい。
【0039】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
1,1a……チャンネルボックス、2……角筒状部、3……外側に膨らみを持つコーナー部、4……制御棒、5……燃料棒、6……冷却材ギャップ、7~12……区分したエリア、21……チャンネルボックスコーナー部、22……チャンネルボックス辺。
図1
図2
図3
図4
図5