(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 50/289 20210101AFI20240129BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20240129BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240129BHJP
H01M 50/503 20210101ALI20240129BHJP
H01M 50/505 20210101ALI20240129BHJP
H01M 50/516 20210101ALI20240129BHJP
【FI】
H01M50/289 101
H01M50/291
H01M50/209
H01M50/503
H01M50/505
H01M50/516
(21)【出願番号】P 2021141105
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2023-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】村石 康輔
【審査官】儀同 孝信
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-33905(JP,A)
【文献】特開2014-179306(JP,A)
【文献】特開2016-38933(JP,A)
【文献】特開2014-160679(JP,A)
【文献】特開2017-152161(JP,A)
【文献】国際公開第2018/061894(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/058937(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20
H01M 50/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層方向に積層される複数の電池セルと、
前記電池セルの電極端子に接合される接合部が形成されたバスバーと、
前記接合部を前記電極端子に向けて押圧する押圧部が設けられ、前記積層方向に隣り合う前記電池セルの間に挟み込まれたスペーサと、を有し、
前記押圧部は、
前記積層方向に変位可能なように形成され、前記バスバーの前記積層方向に存在する第1縁部の周辺に対して押圧力を加える第1の爪部を有する電池モジュール。
【請求項2】
前記スペーサは、1つの前記電池セルを前記積層方向の両側から挟み込む第1のスペーサと第2のスペーサとを含み、
1つの前記電池セルの前記電極端子に接合される前記バスバーの前記接合部は、前記第1のスペーサに設けられた前記押圧部と前記第2のスペーサに設けられた前記押圧部とにより前記積層方向において対向する2つの前記第1縁部の周辺に対して押圧力が加えられる請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記押圧部は、
1つの前記電池セルに設けられる2つの前記電極端子の並び方向を幅方向とした場合に、前記バスバーの前記幅方向に存在する第2縁部の周辺に対して押圧力を加える第2の爪部をさらに有する請求項1又は2に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車等の車両駆動用電源には、高い出力電圧と大電力が求められるため、複数の電池セルを接続した電池モジュールが用いられる。電池モジュールは、複数の電池セルの電極端子同士をバスバーにより電気的に接続することにより構築される。電極端子とバスバーとを溶接等により接合する際には、電池モジュールを構成する部品やそれらの組付けのばらつきに起因して生じる電極端子同士の相対的な変位にバスバーを追従させることが好ましい。これにより、電極端子とバスバーとを十分な接合強度で接合し、良好な接続状態を確保することができる。
【0003】
特許文献1には、電極タブを有する複数の単電池と、電極タブに接合される接合部位(接合面)を有する複数のバスバーと、電極タブを支持する支持部材(第1スペーサ)と、バスバーを保持するバスバーホルダと、を有する組電池が開示されている。さらに、この組電池のバスバーホルダは、バスバーの接合面を、第1スペーサによって支持されている電極タブに向けて部分的に押圧する突起を備えた押圧部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の組電池では、バスバーの接合面(接合部)を電極タブ(電極端子)に向けて押圧することによって、電極タブとバスバーとの間に生じ得る隙間を吸収し、複数箇所存在する電極タブとバスバーとを各々容易に接触させて接合することができる。しかしながら、特許文献1に記載される技術では、電極タブを押圧する方向への電極タブの変位に対してはバスバーを追従させることができるが、他の方向への電極タブの変位に対してはバスバーを追従させることが困難であるという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、電極端子の変位にバスバーを追従させ、電極端子とバスバーとの間の良好な接続状態を確保する電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施の形態にかかる電池モジュールは、積層方向に積層される複数の電池セルと、電池セルの電極端子に接合される接合部が形成されたバスバーと、接合部を電極端子に向けて押圧する押圧部が設けられ、積層方向に隣り合う電池セルの間に挟み込まれたスペーサと、を有し、押圧部は、積層方向に変位可能なように形成され、バスバーの積層方向に存在する第1縁部の周辺に対して押圧力を加える第1の爪部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、電極端子の変位にバスバーを追従させ、電極端子とバスバーとの間の良好な接続状態を確保する電池モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1にかかる電池モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電池モジュールの分解斜視図である。
【
図3】
図1に示す電池モジュールに含まれるスペーサを積層方向からみた平面図である。
【
図4】
図1に示す電池モジュールを構築するための積層工程を説明する斜視図である。
【
図5】
図1に示す電池モジュールを構築するための加圧工程を説明する斜視図である。
【
図6】
図1に示す電池モジュールを構築するための取り付け工程を説明する斜視図である。
【
図7】
図6に示す取り付け工程の詳細を説明する部分断面図である。
【
図8】
図1に示す電池モジュールを構築するにあたり、バスバーが取り付けられた積層体を示す平面図である。
【
図9】
図1に示す電池モジュールを構築するための接合工程を説明する図である。
【
図10】実施の形態2にかかる電池モジュールの斜視図である。
【
図12】
図10に示す電池モジュールに含まれるスペーサを積層方向からみた正面図である。
【
図13】
図10に示す電池モジュールを構築するにあたり、バスバーが取り付けられた積層体を示す平面図である。
【
図14】
図10に示す電池モジュールを構築するための接合工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、本発明が以下の実施の形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。さらに、以下の説明において同一又は同等の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
なお、以下の説明では、電池セル10の厚さ方向であって複数の電池セル10が積層される積層方向をX方向、X方向に直交する方向であって、電池セル10の幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向であって、電池セル10の高さ方向をZ方向とする。
【0012】
まず、
図1を参照して、実施の形態1にかかる電池モジュール1の概要について説明する。
図1は、実施の形態1にかかる電池モジュールを示す斜視図である。
図1に示すように、電池モジュール1は、積層された複数の電池セル10と、積層方向(X方向)に隣り合う電池セル10同士を電気的に接続する複数のバスバー20と、それぞれ隣接する電池セル10の間に挟み込まれた複数のスペーサ30と、を有する。
【0013】
複数の電池セル10は、スペーサ30を挟んでX方向に積層されるように並んで配置されている。さらに、電池セル10の上面11aには、Y方向に沿って並んだ一対の電極端子14が設けられている。そして、電極端子14に接合される接合部が形成されたバスバー20が、X方向に隣り合う電極端子14に溶接等によって接合される。これにより、X方向に隣り合う電池セル10が電気的に接続されている。また、電池モジュール1を構成する各電池セル10は、それぞれスペーサ30によって保持される。スペーサ30には、接合部を電極端子14に向けて押圧する押圧部37が設けられている。
【0014】
電池モジュール1の製造工程では、スペーサ30の押圧部37によって、電極端子14とバスバー20との位置決めを行うとともに、電極端子14とバスバー20とを密着させた状態で接合を行なうことができる。また、電池モジュール1の使用時(充放電時等)には、電極端子14の変位にバスバー20が追従するため、電極端子14とバスバー20との良好な接続状態を維持することができる。
【0015】
図2を参照して、電池モジュール1の各部の詳細な構成を説明する。
図2は、
図1に示す電池モジュールの分解斜視図である。なお、
図2においては、1つの電池セル10と、1つの電池セル10に取り付けられるバスバー20と、1つの電池セル10を両側から挟み込むスペーサ30と、を示しており、他の部材の図示は省略している。
図2に示すように、電池セル10は、扁平な直方体形状を有する電池ケース11と、電池ケース11の内部に収容された発電要素と、を有し、Y方向に長い角型電池である。電池セル10としては、例えばニッケル水素電池、リチウムイオン電池、電気二重層キャパシタ等の二次電池を用いることができる。
【0016】
電池ケース11は、上面11a、底面11b、面積の広い一対の第1側面11c、及び面積の狭い一対の第2側面11dを有する。上面11aと底面11bは、Z方向で対向しているとともに、それぞれXY平面に延びている。一対の第1側面11cは、X方向で対向するとともに、それぞれYZ平面に延びている。一対の第2側面11dは、Y方向で対向するとともに、それぞれXZ平面に延びている。また、上面11aの中央付近には、電池ケース11内部のガスを排出するための安全弁12と、電解液を注入するための注入部13と、が設けられている。
【0017】
さらに、上面11aのY方向における両端部には、外部接続用の一対の電極端子14が設けられている。一対の電極端子14は、一方が正極の電極端子14であり、他方が負極の電極端子14である。各電極端子14は、導電性を有する略矩形状の金属により形成され、バスバー20が当接する平坦な頂面を有する。
【0018】
本実施形態にかかる電池モジュール1において、複数の電池セル10は、同じ極性の電極端子14がX方向で隣り合って配置されるように電池セル10の厚さ方向(X方向)に積層される。そして、X方向に隣り合う一方の電池セル10の電極端子14は、バスバー20により他方の電池セル10の電極端子14と接続される。これにより、複数の電池セル10が電気的に並列に接続されている。
【0019】
また、X方向の両端部に配置される電池セル10は、さらに他の電池セルもしくは他の電池モジュール、又は電池モジュール1が収容される外装ケース等に設けられる正極又は負極の外部端子に導電部材を介して電気的に接続される。
【0020】
バスバー20は、導電性を有する薄板状の金属がプレス加工等によって所定の形状に成型されたものである。バスバー20は、Z方向からみた場合に略U字状に形成されている。バスバー20は、それぞれ電池セル10のY方向の外側に向かって延びた2つの端子接続部21と、X方向に延びて2つ端子接続部21を繋ぐ連結部23と、を有する。連結部23は、端子接続部21側が下方に折り曲げられて各端子接続部21に連結されている。すなわち、バスバー20は、X方向からみた場合に略Z字状に形成されている。
【0021】
バスバー20が有する2つの端子接続部21は、X方向に並んで互いに離間して配置されている。端子接続部21は、電極端子14の形状に対応するようにXY面に延びる略矩形状を有し、電極端子14に当接する側の平坦な面に電極端子14に接合される接合部を有する。また、端子接続部21は、端子接続部21の厚さ方向(Z方向)に貫通するように形成される貫通孔22を有する。端子接続部21は、電極端子14に重ねて配置される。
【0022】
ここで、端子接続部21の外縁をなす縁部について、X方向に存在しY方向に沿う一対の縁部をそれぞれ第1縁部21aとし、端子接続部21の先端側(電池セル10のY方向の外側)に存在しX方向に沿う縁部を第2縁部21bとする。
【0023】
連結部23は、X方向の両端部が2つの端子接続部21のそれぞれ基端と連結している。連結部23は、X方向に隣り合うスペーサ30のそれぞれ第1カバー部33の一部に重ねて配置される。
【0024】
スペーサ30は、樹脂等の絶縁性部材で構成される。スペーサ30は、2つの電池セル10において隣り合う第1側面11cで挟まれるように配置される。スペーサ30の詳細な構造を説明するにあたっては、
図3を適宜参照して説明する。
図3は、
図1に示す電池モジュールのスペーサを積層方向からみた平面図である。
【0025】
スペーサ30は、ベースプレート31、リブ32、第1カバー部33、第2カバー部34、第3カバー部35、保持部36、押圧部37、及び支持板38を有する。ベースプレート31は、電池セル10の第1側面11cに対向して配置され、YZ平面に延びる板状に形成される。
【0026】
ベースプレート31のうち、一方の電池セル10に対向する面には、形状やサイズが異なる複数のリブ32が形成される。リブ32は、ベースプレート31からX方向に突出しており、X方向の端面が電池セル10の第1側面11cと接する。リブ32は、電池セル10の第1側面11cとベースプレート31との間に空間を形成する。そして、このリブ32により、空間に温度調節用の冷却風を流す複数の流路を形成する。複数の流路を形成するためのリブ32の形状、サイズ、配置は、特に限定されず、要求される電池特性等に応じて適宜設計されるものである。
【0027】
電池モジュール1では、冷却風を流路に流入させるための流入口40が第1カバー部33によって形成され、流路を流れた冷却風を流出させるための流出口50が第3カバー部35によって形成される。
【0028】
第1カバー部33は、ベースプレート31の下端からX方向に突出してXY平面に延びる板状に形成される。第1カバー部33は、流入口40に対応するY方向の中央部分を除いて形成されている。電池モジュール1を構成した際に、第1カバー部33は、電池セル10の底面11b側を部分的に覆うとともに、Z方向に開口した流入口40を形成する。
【0029】
第2カバー部34は、ベースプレート31の上端からX方向に突出してXY平面に延びる板状に形成される。第2カバー部34は、電極端子14が設けられる電池セル10の両端部に対応する部分を除いて形成されている。電池モジュール1を構成した際に、第2カバー部34は、少なくとも電極端子14を除いて電池セル10の上面11a側を覆う。第2カバー部34は、スペーサ30が電池セル10間に挟み込まれて積層された積層体にバスバー20を取り付ける際に、端子接続部21に干渉しない形状を有しているため、電極端子14にバスバー20の端子接続部21を重ねて互いに接触させることができる。
【0030】
第3カバー部35は、ベースプレート31のY方向における両端のそれぞれから、リブ32が突出する方向と同一方向に突出してXZ平面に延びる板状に形成される。第3カバー部35は、流出口50に対応するZ方向の中央部分を除いて形成されている。電池モジュール1を構成した際に、第3カバー部35は、電池セル10の第2側面11d側を覆うとともに、Y方向に開口した流出口50を形成する。第1カバー部33および第3カバー部35は連続して形成されている。
【0031】
保持部36は、ベースプレート31の下端部およびY方向における両端部のそれぞれから、リブ32が突出する方向と逆方向に突出して形成される。保持部36は、流入口40に対応するY方向の中央部分を除いて、XY平面およびXZ平面に延びる板状に形成される。電池モジュール1を構成した際に、保持部36は、電池セル10の第2側面11dおよび底面11bの一部に接触し、Y方向及びZ方向から電池セル10を保持する。また、電池モジュール1を構成した際に、保持部36は、突出する方向に隣り合うスペーサ30のベースプレート31との間に隙間が形成されるように、第2側面11dに接触する面がX方向に延びている。電池モジュール1において、流入口40から流入して流路を流れた冷却風は、この隙間を介して流出口50から流出する。
【0032】
電池モジュール1では、電池セル10に対向して配置され電池セル10をX方向の両側から挟み込むスペーサ30によって、X、Y、Z方向への電池セル10の移動が規制される。このように、スペーサ30は、電池セル10をX、Y、Z方向から保持するセルホルダとして機能する。なお、1つの電池セル10をX方向の両側から挟み込む2つのスペーサ30のうち、一方のスペーサ30は第1のスペーサに相当し、他方のスペーサ30は第2のスペーサに相当する。
【0033】
押圧部37は、接合部に対応する位置においてY方向に沿って複数設けられる。本実施形態では、Y方向に対称的に二対の押圧部37が設けられている。各押圧部37は、ベースプレート31の上端から上方向(すなわち、電池セル10から離れる方向)に突出して形成される。各押圧部37は、X方向に変位可能なように形成される一対の第1の爪部37bと、一対の第1の爪部37bをベースプレート31に支持する支持部37aと、を有する。
【0034】
支持部37aは、ベースプレート31の上端からZ方向に延びる棒状に形成されている。そして、支持部37aの先端からそれぞれ鋭角の角度をなして斜め下方(すなわち、電池セル10に接近する方向)に向かって、一対の第1の爪部37bが延びている。一対の第1の爪部37bは、支持部37aを挟んでX方向に対称的に設けられている。すなわち、押圧部37は、全体としてアンカー形状を呈している。
【0035】
一対の第1の爪部37bは、それぞれバスバー20の第1縁部21aに接触する端面を含んで構成される。第1の爪部37bの端面は、下方に向かうにしたがってX方向における支持部37aとの距離が徐々に拡がった後に狭くなるように支持部37aに向かって鈍角の角度をなして屈曲した形状を有している。
【0036】
すなわち、当該端面の基端側(Z方向の上方側)は、下方に向かうにしたがってX方向における支持部37aとの距離が徐々に離間するように、Z方向に対して傾斜した斜面37cである。また、当該端面の先端側(Z方向の下方側)は、下方に向かうにしたがってX方向における支持部37aとの距離が徐々に接近するように、Z方向に対して傾斜した斜面37dである。
【0037】
そして、一対の第1の爪部37bは、支持部37aに接近又は離間するX方向に変位可能に構成される。第1の爪部37bは端面側からの押圧力により支持部37aに連結された第1の爪部37bの基端を支点として弾性変形するように構成されている。
【0038】
電池モジュール1を構築する際に、押圧部37は、X方向に隣り合う端子接続部21(第1縁部21a)の間に形成される隙間G1に挿入され、第1の爪部37bが第1縁部21aに係止する。X方向の寸法を比べると、押圧部37の挿入端は隙間G1よりも小さく、押圧部37の最大幅は隙間G1よりも大きい。
【0039】
Y方向に対称的に設けられる一対の支持板38は、それぞれ保持部36の上端から上方向に突出して形成される。各支持板38は、XZ平面に延びる板状に形成される。支持板38は、電池セル10の上方において端子接続部21の第2縁部21bからY方向に僅かに離間した位置に配置され、保持部36の上端に連結されている。支持板38のX方向における寸法は、バスバー20を構成する1つの端子接続部21のX方向における寸法と同程度である。
【0040】
続いて、
図4~
図8を参照して、電池モジュール1を構築するための電池モジュール1の製造方法について説明する。電池モジュール1の製造方法は、複数の電池セル10と複数のスペーサ30とを積層した積層体を作製する積層工程と、積層体を加圧する加圧工程と、積層体にバスバー20を取り付ける取り付け工程と、電極端子14とバスバー20とを接合する接合工程と、を含む。
【0041】
図4は、
図1に示す電池モジュールを構築するための積層工程を説明する斜視図である。
図5は、
図1に示す電池モジュールを構築するための加圧工程を説明する斜視図である。
図6は、
図1に示す電池モジュールを構築するための取り付け工程を説明する斜視図である。
図7は、
図6に示す取り付け工程の詳細を説明する部分断面図である。
図8は、
図1に示す電池モジュールを構築するにあたり、バスバーが取り付けられた積層体を示す平面図である。
【0042】
まず、
図4に示すように、積層工程では、隣り合う電極端子14の極性が同じになるように第1側面11c同士を対向させて複数の電池セル10を並べ、隣り合う電池セル10の間にそれぞれスペーサ30を配置する。この時、第1側面11cにベースプレート31を対向させてスペーサ30を配置する。このように、複数の電池セル10と複数のスペーサ30とをX方向に交互に積層した積層体を作製する。
【0043】
続いて
図5に示すように、加圧工程では、加圧装置を用いて、X方向の両側から積層体を加圧する。加圧後の積層体では、隣り合う電池セル10の間に挟み込まれたスペーサ30によって、各電池セル10がX、Y、Z方向から保持される。なお、
図5に示す白抜き矢印は、加圧方向を示している。
【0044】
続いて
図6に示すように、取り付け工程では、加圧後の積層体にバスバー20を取り付ける。バスバー20を取り付ける際には、電極端子14と端子接続部21とが接触可能な位置まで、積層体(電極端子14)とバスバー20(端子接続部21)とをZ方向に接近させる。
【0045】
ここで、
図7および
図8を参照して、取り付け工程の詳細について説明する。
図7は、
図6に示す積層体について、スペーサ30に設けられた1つの押圧部37の周辺をX方向に沿って切った断面を示している。
図8には、バスバー20が取り付けられた積層体の一部であって、Y方向における片側の端部をZ方向からみた平面図を示している。なお、
図8においては、積層体に取り付けられた複数のバスバー20のうち1つのバスバー20を示しており、他のバスバー20の図示は省略している。
【0046】
図7及び
図8に示すように、取り付け工程では、積層体に対してバスバー20を下降させながら各隙間G1にそれぞれ押圧部37を押し込み、電極端子14と端子接続部21とを接触させる。
【0047】
まず、
図7のS1に示すように、積層体に対してバスバー20をZ方向に沿って下降させ、隙間G1に押圧部37の挿入端を挿入すると、斜面37cに第1縁部21aが当接しはじめる。そして、第1縁部21aが斜面37cに沿って下方に移動するにしたがって、第1の爪部37bは隙間G1の両側にある各第1縁部21aに押し付けられて弾性変形する。これに伴い、第1の爪部37bが支持部37aに接近する方向に徐々に変位する。
【0048】
引き続きバスバー20を下降させると、第1縁部21aが斜面37dに当接しはじめる。そして、第1縁部21aが斜面37dに沿って下方に移動するにしたがって、第1の爪部37bは弾性復帰する。これに伴い、第1の爪部37bは支持部37aから離間する方向に徐々に変位する。
【0049】
次いで、
図7のS2に示すように、電極端子14と端子接続部21とが当接する位置までバスバー20が下降して停止すると、第1の爪部37bの斜面37dが第1縁部21aの周辺(例えば、第1縁部21aの上端)に当接した状態で、第1の爪部37bが弾性復帰しつつ第1縁部21aに係止される。
【0050】
第1の爪部37bが第1縁部21aに係止された状態では、斜面37dと第1縁部21aの周辺とが当接する当接部を介して、第1の爪部37bは第1縁部21aの周辺に対して接合部を電極端子14に向かう下方(
図7において白抜き矢印で示す方向)に押圧する押圧力を加える。なお、
図7のS2に示す破線は、押圧部37の初期形状を示している。
【0051】
図8に示すように、本実施形態では、端子接続部21の基端側及び先端側であって、第1縁部21aのY方向における両端寄りの位置に対応するようにスペーサ30の各押圧部37が配置されている。すなわち、1つの端子接続部21に対しては、電池セル10を両側から挟み込む一方のスペーサ30と他方のスペーサ30にそれぞれ設けられた4つの押圧部37が当接している。本実施形態では、1つの端子接続部21に対して4つの押圧部37のそれぞれ一方の第1の爪部37bが係止するため、1つの端子接続部21には4つの当接部が存在している。なお、
図8において、ハッチングで示す部分が当接部である。
【0052】
積層体にバスバー20が取り付けられることにより、第1の爪部37bが係止した状態になると、端子接続部21の周囲に配置された4つの押圧部37は、X方向において対向する2つの第1縁部21aの周辺に対して押圧力を加えることにより、バスバー20の接合部を電極端子14に向けて押圧する。また、端子接続部21は、X方向に対向する押圧部37の第1の爪部37bによってX方向の両側からクランプされるため、X方向への移動が規制される。
【0053】
続いて、
図9に示すように、電極端子14とバスバー20とを接合する接合工程が行われる。
図9は
図8に対応する平面図である。また、
図9において、溶接範囲は破線で示している。接合工程では、電極端子14の頂面と端子接続部21の接合部とを接触させた状態で溶接することにより、バスバー20が電極端子14に接合される。電極端子14と端子接続部21との接合には、レーザ溶接、抵抗溶接等の溶接方法を用いることができる。
【0054】
図9に示すように、接合部は、4つの当接部で囲まれた溶接範囲内に存在することが好ましい。このように、電池モジュール1を構成する電極端子14とバスバー20の端子接続部21とをそれぞれ溶接範囲内で順次接合することにより、複数の電池セル10が電気的に接続された電池モジュール1を構築することができる。
【0055】
電極端子14とバスバー20とを接合する際に、押圧部37は、バスバー20の第1縁部21aの周辺に対して第1の爪部37bの弾性変形に伴う押圧力を加え、バスバー20の接合部を電極端子14に向けて面で押圧する。これにより、電極端子14と端子接続部21との間の隙間を低減し、電極端子14と端子接続部21とを密着させた状態で溶接することができるため、電極端子14とバスバー20との接合強度を向上することができる。
【0056】
また、電池モジュール1では、第1の爪部37bによって端子接続部21のX方向への移動が規制される。これにより、電極端子14とバスバー20とを接合する際に、電極端子14に対するバスバー20の位置決めを精度良く行うことができ、電極端子14とバスバー20との位置ずれに起因する接合不良を抑制することができる。
【0057】
このような構成により、電池モジュール1では、複数の電池セル10をバスバー20によって接続する際に、電極端子14に対してバスバー20を押圧するための専用治具等を用いることなく、電極端子14にバスバー20を容易に接合することができる。したがって、電池モジュール1を製造するにあったって、製造工程数の削減や製造コストの低減を図ることができる。
【0058】
さらに、本実施形態によれば、専用治具を配置するスペースや専用治具により押圧される領域を設けるために、電極端子14とバスバー20との溶接可能な面積を縮小する必要がないため、溶接可能な面積を十分に確保することができる。したがって、電極端子14とバスバー20との接合強度を向上することができる。
【0059】
さらに、例えば、電池モジュール1が搭載される車両に振動や衝撃が作用した場合や充放電に伴って熱膨張又は熱収縮した場合に、電池モジュール1を構成する各電池セル10がスペーサ30による位置規制の範囲内で相対的に変位する場合がある。このような電池セル10同士の相対的な変位により、電極端子14とバスバー20とが接合された接合箇所に負荷がかかって接合箇所の破損、破断、剥離が生じ得る。
【0060】
これに対し、電池モジュール1は、第1の爪部37bが弾性変形する構成であるため、上述した電池モジュール1の使用時における電池セル10同士の相対的な変位を吸収し、電極端子14にバスバー20を追従させることができる。その結果、電池セル10同士の相対的な変位に起因する電極端子14とバスバー20との接合箇所の破損、破断、剥離を抑制することができる。
【0061】
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかる電池モジュール100について説明する。実施の形態2にかかる電池モジュール100は、電極端子14とバスバー20との接続構造が異なる点を除いて実施の形態1にかかる電池モジュール1と同様の構成を有する。そのため、電池モジュール1との相違点を中心に、本実施形態にかかる電池モジュール100について説明する。なお、
図10~
図14において、実施の形態1と同一又は相当する構成要素には同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0062】
まず、
図10を参照して、実施の形態2にかかる電池モジュール100の概要について説明する。
図10に示すように、電池モジュール100は、積層された複数の電池セル10と、積層方向(X方向)に隣り合う電池セル10同士を電気的に接続する複数のバスバー20と、それぞれ隣接する電池セル10の間に挟み込まれた複数のスペーサ300と、を有する。
【0063】
電池モジュール100では、スペーサ300の一対の支持板38にY方向に変位可能なように形成される第2の爪部39をそれぞれ設けて一対の押圧部370が構成される。また、スペーサ300は、一対の第1の爪部37bを有する押圧部37も備えている。電池セル10及びバスバー20の構成は電池モジュール1と同様であり、スペーサ300は、押圧部37、370を除いてスペーサ30と同様の構成を有する。
【0064】
そこで、
図11及び
図12を参照して、スペーサ300の押圧部37、370について詳細を説明する。
図11は、
図10に示す電池モジュールの分解斜視図である。なお、
図2と同様に、
図11においては、1つの電池セル10と、1つの電池セル10に取り付けられるバスバー20と、1つの電池セル10を両側から挟み込むスペーサ300と、を示しており、他の部材の図示は省略している。
図12は、
図10に示す電池モジュールに含まれるスペーサを積層方向からみた正面図である。
【0065】
図11及び
図12に示すように、押圧部37は、接合部に対応する位置においてY方向に沿って複数設けられている。本実施形態では、Y方向に対称的に一対の押圧部37が設けられている。
【0066】
第2の爪部39は、各支持板38のバスバー20に対向する側の面から鋭角の角度をなして斜め下方(すなわち、電池セル10に接近する方向)に向かって延びている。各第2の爪部39は、バスバー20の第2縁部21bに接触する端面を含んで構成される。第2の爪部39の端面は、下方に向かうにしたがってY方向における支持板38との距離が徐々に拡がった後に狭くなるように、支持板38に向かって鈍角の角度をなして屈曲した形状を有している。
【0067】
すなわち、当該端面の基端側(Z方向の上方側)は、下方に向かうにしたがってY方向における支持板38との距離が徐々に離間するように、Z方向に対して傾斜した斜面39cである。また、当該端面の先端側(Z方向の下方側)は、下方に向かうにしたがってY方向における支持板38との距離が徐々に接近するように、Z方向に対して傾斜した斜面39dである。
【0068】
そして、第2の爪部39は、支持板38に接近又は離間するY方向に変位可能に構成される。第2の爪部39は、端面側からの押圧力により支持部37aと連結された第2の爪部39の基端を支点として弾性変形するように構成されている。電池モジュール1を構築する際に、押圧部370は、Y方向に隣り合う端子接続部21(第2縁部21b)と支持板38との間に形成される隙間G2に挿入され、第2の爪部39が第2縁部21bに係止する。第2縁部21bに係止した第2の爪部39は、第2縁部21bの周辺に対して押圧力を加える。
【0069】
電池モジュール100を構築するための電池モジュール100の製造方法は、積層工程及び加圧工程により複数の電池セル10と複数のスペーサ300とをX方向に交互に積層してから加圧した積層体を作製する。
【0070】
加圧後の積層体にバスバー20を取り付ける取り付け工程において、押圧部37の挙動は
図7で説明した通りであるため説明を省略する。そこで、取り付け工程における押圧部370の挙動について説明する。
【0071】
取り付け工程では、電極端子14と端子接続部21とが接触可能な位置まで、積層体(電極端子14)とバスバー20(端子接続部21)とをZ方向に接近させる。積層体に対してバスバー20を下降させると、第2縁部21bが斜面39cに沿って下方に移動するにしたがって、第2の爪部39は、第2縁部21bに押し付けられて弾性変形する。これに伴い、第2の爪部39が支持板38に接近する方向に徐々に変位する。
【0072】
引き続きバスバー20を下降させると、第2縁部21bが斜面39dに沿って下方に移動するにしたがって、第2の爪部39は弾性復帰する。これに伴い、第2の爪部39は支持板38から離間する方向に徐々に変位する。
【0073】
次いで、電極端子14と端子接続部21とが当接する位置までバスバー20が下降して停止すると、第2の爪部39の斜面39dが第2縁部21bの周辺(例えば、第2縁部21bの上端)に当接した状態で、第2の爪部39が弾性復帰しつつ第2縁部21bに係止される。
【0074】
バスバー20が取り付けられた積層体では、第1の爪部37bが第1縁部21aに係止された状態であるため、斜面37dと第1縁部21aの周辺とが当接する当接部を介して、第1の爪部37bが第1縁部21aの周辺に対して接合部を電極端子14に向かう下方に押圧する押圧力を加える。これに加え、本実施形態では、第2の爪部39が第2縁部21bに係止された状態である。そのため、斜面39dと第2縁部21bの周辺とが当接する当接部を介して、第2の爪部39が第2縁部21bの周辺に対して接合部を電極端子14に向かう下方に押圧する押圧力を加える。
【0075】
図13は
図10に示す電池モジュールを構築するにあたり、バスバー20が取り付けられた積層体を示す平面図である。
図13には、バスバー20が取り付けられた積層体の一部であって、Y方向における片側の端部をZ方向からみた平面図を示している。なお、
図8と同様に、
図13においては、積層体に取り付けられた複数のバスバー20のうち1つのバスバー20を示しており、他のバスバー20の図示は省略している。
【0076】
図13に示すように、本実施形態では、端子接続部21の基端側であって、第1縁部21aのY方向における内側寄りの位置に対応するようにスペーサ300の各押圧部37が配置されている。また、端子接続部21の先端側であって、第2縁部21bのX方向における中央部分にスペーサ300の各押圧部370が配置されている。
【0077】
すなわち、1つの端子接続部21に対しては、電池セル10を両側から挟み込む一方のスペーサ300に設けられた押圧部37、370と他方のスペーサ300に設けられた押圧部37とが当接している。そのため、1つの端子接続部21には3つの当接部が存在している。
図13において、ハッチングで示す部分が当接部である。
【0078】
積層体にバスバー20が取り付けられることにより第1の爪部37b及び第2の爪部39が係止した状態になると、端子接続部21の周囲に配置された押圧部37、370は、X方向において対向する2つの第1縁部21aの周辺及び第2縁部21bの周辺に対して押圧力を加えることにより、バスバー20の接合部を電極端子14に向けて押圧する。
【0079】
また、端子接続部21は、X方向に対向する押圧部37の第1の爪部37bによってX方向への移動が規制されるとともに、押圧部370の第2の爪部39によってY方向外側への移動が規制される。
【0080】
続いて、
図14を参照して電池モジュール100を構築する際の接合工程を説明する。
図14は、
図10に示す電池モジュールを構築するための接合工程を説明する図である。
図14は
図13に対応する平面図である。また、
図14において、溶接範囲は破線で示している。
【0081】
図14に示すように、電極端子14とバスバー20とを接合する接合工程が行われる。本実施形態において、接合部は、3つの当接部で囲まれた溶接範囲内に存在することが好ましい。このように、電池モジュール100を構成する電極端子14とバスバー20の端子接続部21とをそれぞれ溶接範囲内で順次接合することにより、複数の電池セル10が電気的に接続された電池モジュール100を構築することができる。
【0082】
このように構成される電池モジュール100では、実施の形態1と同様の効果を奏する。さらに、電池モジュール100では、第1の爪部37bによって端子接続部21のX方向への移動が規制されることに加え、第2の爪部39によって端子接続部21のY方向外側への移動が規制される。
【0083】
したがって、本実施形態にかかる電池モジュール100によれば、電極端子14とバスバー20とを接合する際に、電極端子14に対するバスバー20の位置決めの精度が向上し、電極端子14とバスバー20との位置ずれに起因する接合不良をより一層抑制することができる。
【0084】
また、本実施形態にかかる電池モジュール100によれば、電極端子14に対するバスバー20の追従性が向上するため、電池モジュール100を構成する電池セル10同士の相対的な変位に起因する電極端子14とバスバー20との接合箇所の破損、破断、剥離をより一層抑制することができる。
【0085】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、スペーサ30、300に設けられる押圧部37、370の数量、配置、組み合わせ等は、上記実施形態に限定されず、接合部の形状やサイズ及び要求される押圧力等に応じて適宜設計されるものである。
【符号の説明】
【0086】
1、100 電池モジュール
10 電池セル
11 電池ケース
11a 上面
11b 底面
11c 第1側面
11d 第2側面
12 安全弁
13 注入部
14 電極端子
20 バスバー
21 端子接続部
21a 第1縁部
21b 第2縁部
22 貫通孔
23 連結部
30、300 スペーサ
31 ベースプレート
32 リブ
33 第1カバー部
34 第2カバー部
35 第3カバー部
36 保持部
37、370 押圧部
37a 支持部
37b 第1の爪部
37c、37d、39c、39d 斜面
38 支持板
39 第2の爪部
40 流入口
50 流出口
G1、G2 隙間