(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】スマートバルブ付き保持チャンバ
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
(21)【出願番号】P 2021517927
(86)(22)【出願日】2019-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2019054580
(87)【国際公開番号】W WO2019234586
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-02
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520479489
【氏名又は名称】トゥルーデル メディカル インターナショナル
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー アダム
(72)【発明者】
【氏名】ノヴァク バルト
(72)【発明者】
【氏名】ロードハウス キャメロン
(72)【発明者】
【氏名】ヤング ヒーサー
(72)【発明者】
【氏名】ラヴダス マイケル
(72)【発明者】
【氏名】サカリア ロナク
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/199215(WO,A1)
【文献】特表2004-505692(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163211(WO,A1)
【文献】特表2013-516265(JP,A)
【文献】特表2016-535358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0265191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 11/00-15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤送達システムであって、
入力端
と、出力端
と、前記入力端と前記出力端との間に延びる内部空間を定める壁部とを有し、薬剤が前記内部空間において前記入力端から前記出力端へ流れる保持チャンバと、
前記保持チャンバの前記入力端に結合され
るバックピースであって、電気回路
と、MDIの挿入部を受け入れるように形成された開口部
とを含むバックピースと、
薬剤容器を受け入れるように形成された空洞を定める煙突部分と、前記薬剤を前記薬剤容器から前記保持チャンバの前記内部空間へ放出するオリフィスと、挿入部が前記開口部に収容される係合位置と前記挿入部が前記開口部から除去される解放位置との間で移動可能な前記挿入部
と、前記挿入部が前記係合位置にある時に前記電気回路を完結する少なくとも1つの接点
とを含むMDIと、
を備え、
前記MDIは、前記挿入部を定めるアクチュエータブーツを含むと共に、前記アクチュエータブーツに解除可能に結合されたアダプタをさらに含み、前記アダプタは、1対の前記接点を含み、
この1対の接点は、1対の磁石を含み、前記アクチュエータブーツは、前記挿入部が前記係合位置にある時に前記バックピースに磁気的に結合される、
ことを特徴とする薬剤送達システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接点は、1対の離間した接点を含む、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項3】
前記MDIは、前記1対の接点を定めるラベルを含む、
請求項2に記載の薬剤送達システム。
【請求項4】
前記1対の磁石間に電気的に結合された抵抗器をさらに備える、
請求項
1に記載の薬剤送達システム。
【請求項5】
前記保持チャンバ又はバックピースの一方は、流量センサを含む、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項6】
前記保持チャンバは、光検出器から離間したLEDを含
み、前記LED及び前記光検出器は、前記保持チャンバの内部空間に配置されている、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項7】
前記保持チャンバは、半径方向内向きに面する反射面を有し、該反射面は、前記保持チャンバの内面に沿って配置される、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項8】
前記保持チャンバは、該保持チャンバの内面及び/又は外面に適用される光吸収性被覆を有する、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項9】
前記保持チャンバは、流量インジケータと、フォトダイオードと、LEDとを含み、前記流量インジケータは、吸入流と呼気流の一方又は両方に応答して第1の位置と第2の位置との間で移動可能であり、インジケータが前記第1の位置又は前記第2の位置の一方にある時に、前記フォトダイオードとLEDとの間のライトカーテンが遮られる、
請求項1に記載の薬剤送達システム。
【請求項10】
前記保持チャンバに隣接して又は前記保持チャンバの内部に配置されたマイクをさらに備える、
請求項
5に記載の薬剤送達システム。
【請求項11】
薬剤送達システムであって、
入力端
と、出力端
と、前記入力端と前記出力端との間に延びる内部空間を定める壁部とを有し、薬剤が前記内部空間において前記入力端から前記出力端へ流れる保持チャンバと、
前記保持チャンバの前記入力端に結合され
るバックピースであって、電気回路
と、MDIの挿入部を受け入れるように形成された開口部
とを含むバックピースと、
薬剤容器を受け入れるように形成された空洞を定める煙突部分と、前記薬剤を前記薬剤容器から前記保持チャンバの前記内部空間へ放出するオリフィスと、挿入部が前記開口部に収容される係合位置と前記挿入部が前記開口部から除去される解放位置との間で移動可能な前記挿入部と、前記挿入部が前記係合位置にある時に前記電気回路を完結する少なくとも1つの接点とを含むMDIと、
前記MDI
の煙突部分と係合するように構成されたアダプタと、
前記アダプタに解除可能に結合され
、前記MDIの前記挿入部を受け入れるように形成された中央開口部を有するリングを含むフェイスプレートと、を備え、
前記アダプタと前記フェイスプレートは、前記フェイスプレートが前記バックピースに結合されている係合位置と、前記フェイスプレートが前記バックピースに結合されていない解放位置との間で移動可能であり、
前記フェイスプレートは、前記アダプタと前記フェイスプレートが係合位置にある時に、電気回路を完結させる少なくとも1つの接点を含む、
ことを特徴とする薬剤送達システム。
【請求項12】
前記フェイスプレートは、受動電子部品及び/又は能動電子部品に電気的に接続された1対の離間した磁石を含む、
請求項
11に記載の薬剤送達システム。
【請求項13】
前記受動電子部品は、抵抗器を含む、
請求項
12に記載の薬剤送達システム。
【請求項14】
前記アダプタ及びフェイスプレートが係合位置にある時に、前記磁石は、前記バックピースに解放可能に係合し、前記電気回路を完結する、
請求項
12に記載の薬剤送達システム。
【請求項15】
前記開口部は、第1の開口部を含み、この第1の開口部と整列した第2の開口部を定めるU字型ヨークを含む、
請求項
11に記載の薬剤送達システム。
【請求項16】
前記アダプタ及び/又はフェイスプレートの一方は、前記アダプタ及び/又はフェイスプレートの他方の切り欠きと解放可能に係合する1又は2以上のタブを含む、
請求項
15に記載の薬剤送達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願との相互参照〕
本出願は、2018年6月4日に出願された米国仮特許出願第62/680232号の利益を主張するものであり、この文献の開示は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0002】
本出願は、定量吸入器(MDI)及びバルブ付き保持チャンバ(VHC)を介した肺エアロゾル製剤送達の分野において使用される装置及びシステムに関し、具体的には、患者の投薬計画順守を改善して、ユーザ、処方者又は支払者に正しい吸入法及び治療の終了に関するフィードバックを提供する装置及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
通常、喘息、COPD及び嚢胞性線維症などの病気の治療にはVHC及びMDIシステムが使用される。このような病気の治療を受けている患者は、投薬又は治療計画を十分に順守せず、装置吸入法(device technique)の実践が不適切であり、及び/又は服用量保証(dose assurance)に関するフィードバックを受けられないことがある。これらのタイプの問題は、医療システムのさらなる費用負担及び最適とは言えない患者転帰をもたらす恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2017/0333645号明細書
【文献】米国特許第6557549号明細書
【文献】米国特許第7201165号明細書
【文献】米国特許第7360537号明細書
【文献】米国特許第8550067号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
薬物治療コンプライアンスは、モニタリングが困難な場合が多いが、この情報は医療提供者及び保険会社にとって非常に貴重である。現在のところ、患者によるVHCの使用を積極的にモニタする手だてはなく、最近のスマート吸入器の登場にもかかわらず、ほとんどのMDIは投薬使用のモニタリング及び伝達を単独で行うことができない。従って、投薬使用をモニタしてユーザ、医療提供者及び保険会社にフィードバックを提供できるVHCに対するニーズが存在する。
【0006】
用途によっては各吸入器にスマート装置が取り付けられるが、このようなシステムは高価である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本システムは、VHCにMDIを挿入すると、VHCにMDIが挿入されていることを識別する。MDIが作動すると、システムはこの作動を検出して記録する。この情報を使用して、現在の治療後及び/又は後続の治療の開始時に協調フィードバック(coordination feedback)を提供する。システムは、装置が最適に動作していない時、例えばバルブが破れ、外れ、開固着(stuck open)し、又は別様に機能していない場合などの、吸気/呼気バルブが正しく機能していない時に、これを検出することもできる。
【0008】
システムは、時間の経過と共に、例えば保持チャンバの内側における残留物の蓄積などによる装置の洗浄又は交換時期に関するフィードバックをユーザ又は介護者に提供することもできる。システムは、例えば各吸入器の作動について行われる吸入の長さ及び呼吸回数を含むことができるユーザの吸入特性の分析などの、吸入法の順守に関するフィードバックを提供することもできる。
【0009】
様々なシステム及び装置は、患者の順守を改善し、装置吸入法を向上させ、服用量の保証を提供する。さらに、これらの側面は、正しい順守を確実にすることによって医療システム及び医療提供者(支払者)のコスト削減にも役立つ。また、この結果、順守及び使用に関する信頼できる情報を有する医療提供者(処方者)は、患者固有のデータに依拠して治療プロトコル及び変更に関する十分な情報に基づいた決定を行うこともできる。さらに、患者は、治療から最大限の利益を受けるとともに自己負担額(out of pocket costs)を削減することもできる。
【0010】
1つの態様では、薬剤送達システムが、入力端及び出力端を有する保持チャンバと、保持チャンバの入力端に結合された、電気回路及び開口部を有するバックピースとを含む。MDIが、挿入部及び少なくとも1つの接点を含み、挿入部は、挿入部が開口部に収容される係合位置と、挿入部が開口部から除去される解放位置との間で移動可能であり、少なくとも1つの接点は、挿入部が係合位置にある時に電気回路を完結する。
【0011】
別の態様では、MDIを保持チャンバに結合する識別付属品(identification accessory)の1つの実施形態が、MDIの挿入部を受け入れる形状の開口部を有するフェイスプレートと、フェイスプレートに解除可能に結合された、MDIに係合する形状の保持部材を含むアダプタとを含む。
【0012】
別の態様では、薬剤送達システムの組み立て方法が、電気回路を含んで保持チャンバの内部への開口部を定めるバックピースを保持チャンバの入力端に結合するステップと、バックピースの開口部を通じてMDIの挿入部を挿入するステップと、MDI上に配置された少なくとも1つの接点を有する電気回路を完結するステップとを含む。
【0013】
上述の段落は、概略の紹介として示したものであり、以下の特許請求の範囲を限定するものではない。添付図面と併せて行う以下の詳細な説明を参照することにより、様々な好ましい実施形態及びさらなる利点が最も良く理解されるであろう。
【0014】
図には、薬剤送達システムの異なる実施形態、ブロック図/フロー図、並びにこれらの使用法及び組み立て法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】MDIが適用され結合されたスマートVHCの1つの実施形態の斜視図である。
【
図2】
図1に示すスマートVHC及びMDIの実施形態の分解図である。
【
図3A】スマートVHCの1つの実施形態の上面斜視図である。
【
図3B】スマートVHCの1つの実施形態の正面斜視図である。
【
図3C】スマートVHCの1つの実施形態の背面分解図である。
【
図4A】スマートVHCと共に使用されるMDIアダプタの1つの実施形態の上面図である。
【
図4B】スマートVHCと共に使用されるMDIアダプタの別の実施形態の上面図である。
【
図4C】
図4Aに示すMDIアダプタの1つの実施形態の斜視図である。
【
図4D】
図4Aに示すMDIアダプタの1つの実施形態の正面図である。
【
図4E】
図4Aに示すMDIアダプタの1つの実施形態の側面図である。
【
図4F】
図4Dの線4Fに沿って切り取ったMDIアダプタの断面図である。
【
図5】
図1に示すスマートVHCの部分的切断斜視図である。
【
図6】保持チャンバに取り付けられたスマートVHCアダプタの断面図である。
【
図7】吸気中のスマートVHCの部分的断面図である。
【
図8】吸入器作動中のスマートVHCの部分的断面図である。
【
図9A】異なるMDIに結合されたMDIアダプタを示す図である。
【
図9B】異なるMDIに結合された別のMDIアダプタを示す図である。
【
図10A】MDI及びMDIアダプタの組み立て順を示す図である。
【
図10B】MDI及びMDIアダプタの組み立て順を示す図である。
【
図10C】MDI及びMDIアダプタの組み立て順を示す図である。
【
図10D】MDI及びMDIアダプタの組み立て順を示す図である。
【
図11】MDIアダプタのフェイスプレートの背面図である。
【
図12】吸入中及び作動中の出力(電圧)対時間を示すグラフである。
【
図13】スマートVHCと相互連結するMDIの実施形態の側面図である。
【
図14A】埋め込み電気接点を含むMDI識別ラベルの正面図である。
【
図14B】埋め込み電気接点を含むMDI識別ラベルの背面図である。
【
図15】欠陥のある一方向バルブを含む呼気流路を示すスマートVHCの概略的側面図である。
【
図16】清浄状態のVHC及び残留薬剤が蓄積したVHCの光検出器出力対時間を示すグラフである。
【
図17A】1つの光検出位置を有するスマートVHCの部分図である。
【
図17B】別の光検出位置を有するスマートVHCの部分図である。
【
図17C】さらに別の光検出位置を有するスマートVHCの部分図である。
【
図18】ライトカーテンを含むスマートVHCの部分的側面図である。
【
図19】スマートVHCのシステム構成のブロック図である。
【
図20】流量センサ及びマイクからの、作動及び吸入を示す電圧出力を示すグラフである。
【
図21】マイクを示す部分的切断図を伴うスマートVHCの側面図である。
【
図24】スマートVHC及びMDIの使用プロトコルを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において使用する「複数(plurality)」という用語は、2又は3以上を意味すると理解されたい。「結合された(coupled)」という用語は、例えば介在する部材に直接的又は間接的にかかわらず接続又は係合されることを意味し、この係合は、固定的又は持続的である必要はないが固定的又は持続的(又は一体的)とすることもでき、機械的接続及び電気的接続の両方を含む。本明細書で使用する「第1の(first)」及び「第2の(second)」などの用語は、このように指定された特定のコンポーネントに割り当てられることを意図するものではなく、むしろこのようなコンポーネントを取り扱いの番号順で単純に参照するものであり、参照する順番に応じて、「第1の」として指定されたコンポーネントが後で「第2の」このようなコンポーネントになる場合もあることを意味する。また、「第1の」及び「第2の」との指定は、必ずしもこのように指定された2つのコンポーネント又は値が異なることを意味するものではなく、例えば第1のコンポーネントを第2のコンポーネントと同じものとし、それぞれを単独のただし同一のコンポーネントに単純に適用することもできると理解されたい。
【0017】
従来の患者/処方者/支払者モデルでは、患者が治療法を処方されて薬剤及び/又は治療装置を購入する。この購入が支払者によって賄われる場合、通常、将来的な追加治療の要求を除き、治療が正しく処方通りに行われている旨のフィードバックが支払者に対して行われることはない。通常、患者は、処方者から医療装置の使用に関するトレーニングを受けた上で、日常生活において装置を使用するように求められる。何らかの時点で、患者は、病状の変化や処方薬の補充のために又は所定の頻度で、処方者と共に経過観察を行うことがある。このような場合、処方者は、治療の有効性を評価して、治療を変更するか、それとも継続するかを決定することができる。処方者が治療を変更すると決定した場合には、新たな処方薬が与えられて、このサイクルが繰り返される。費用追跡及び診断の改善にも繋がり得る治療計画の順守を改善する上で直面するいくつかの技術的課題としては、異なる治療装置の機能及び装置の使用を効果的にモニタする能力、その後にユーザ及び/又は処方者に効果的なリアルタイムのフィードバックを提供する方法、また場合によっては装置の性能及び/又はユーザの行動/吸入法に対してリアルタイムな変更を行う方法における課題が挙げられる。
【0018】
図1~
図3を参照すると、様々なスマート装置及びこれらに関連するフィードバックを導入して治療の有効性を改善することができる。また、処方者には、治療の変更を含む治療に関する決定を十分な情報に基づいて行うために患者固有のデータが提供され、支払者には、別の処方薬の費用を賄う前に患者が治療計画を遵守していた旨の確信が与えられる。スマートVHC、通信及びコンピュータシステム、並びにそのアセンブリの他のコンポーネントの様々な態様は、Trudell Medical International社に譲渡された「スマートバルブ付き保持チャンバ(Smart Valved Holding Chamber)」という名称の米国特許出願公開第2017/0333645(A1)号に開示されており、この文献の開示は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0019】
図3A~
図3C、
図5、
図6、
図15及び
図18を参照すると、スマートVHCの1つの例示的な実施形態が、長手方向軸/吸入流路6に沿って延びる内部空間4を定める壁部を有するチャンバハウジング2と、チャンバハウジングの入力端10に結合されたバックピース8と、チャンバハウジングの出力端14に結合されたマウスピース及び/又はバルブアセンブリ12とを含む。マウスピースアセンブリは、例えば溝内に収容されるタブを使用してチャンバハウジングに解除可能かつ取り外し可能に結合することができる。マウスピースは、呼気流路13を提供する吸気バルブ16及び/又は呼気バルブ18を有するように構成される。或いは、吸気バルブ及び呼気バルブは、VHCの他のコンポーネント上に配置することもできる。様々な実施形態では、バルブが、吸気バルブ16を定める内周面と呼気バルブ18を定める外周面とを有する環状ドーナツバルブ(annular donut valve)の一部として構成される。他の実施形態では、吸気バルブが、呼気バルブを定める外側環状フランジを有することもできるダックビルバルブの一部として構成される。他の実施形態では、吸気バルブ及び呼気バルブを一体型とせず、むしろ単独で形成してVHC内に配置することもできる。バックピース8は、MDI作動ブーツ(MDI actuation boot)24のマウスピース部22を受け取るような形状の開口部20を有するように構成される。作動ブーツは、薬剤容器28を受け取るような形状の空洞を定める煙突部分(chimney portion)26をさらに含む。作動ブーツは、MDIのバルブ軸を受け取るような形状のウェルを定める支持ブロックをさらに含む。ウェルは、エアロゾル化された薬剤をチャンバハウジングの内部空間に放出するオリフィスと連通する。マウスピースアセンブリ、チャンバハウジング及びバックピースを含むVHC及びMDIの様々な実施形態は、例えば本出願の譲受人であるTrudell Medical International社に譲渡された米国特許第6557549号、第7201165号、第7360537号及び第8550067号に制限なく開示されており、これらの特許の開示は全体が引用により本明細書に組み入れられる。
【0020】
通信及びデータ処理
これらの命題を満足させようとする上で、MDIに関連するVHCなどの装置は、(1)VHCと共に使用されるMDIを正しく識別し、(2)MDIが作動した時点を正しく識別し、(3)ユーザの正しい吸入法をモニタしてこれに関するフィードバックをユーザに提供し、(4)処方者及び/又は提供者に患者固有のデータを提供する、ことのうちの1つ又は2つ以上を実行するように構成することができる。
図19及び
図22~
図24を参照すると、実施形態の1つの態様はデータの取り扱いに関連する。VHC及び/又はMDIによってログ記録されたデータは、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータなどの外部装置に転送することができる。このような外部装置が利用できない場合、データは、VHC及び/又はMDIのデータ記憶モジュール又はその他のメモリに内部的に記憶して、VHC/MDIと外部装置との間の次の同期時に転送することができる。VHC/MDIは、データの転送及び分析を実行するソフトウェアを伴うことができる。
【0021】
スマートVHC及び/又はMDI内で生成された、例えば1又は2以上の様々なセンサからのデータをより高速かつ正確に処理するために、データは、未加工のセンサデータを解釈してこれに作用するスマートフォン、ローカルコンピュータ装置及び/又はリモートコンピュータ装置に無線で伝えることもできる。
【0022】
1つの実施形態では、スマートVHC及び/又はMDIが、スマートフォンなどのローカル装置に未加工のセンサデータをリアルタイムで送信する回路を含む。スマートフォンは、ユーザにグラフィクス又は命令を表示するとともに、未加工データを解釈してこれに作用する処理ソフトウェアを実装することができる。スマートフォンは、未加工のセンサデータをフィルタ処理して加工し、未加工のセンサデータに含まれている関連ステータス情報をスマートフォンのディスプレイに出力するソフトウェアを含むことができる。或いは、スマートフォン又はその他のローカルコンピュータ装置は、そのローカルリソースを使用してリモートデータベース又はサーバに接触して処理命令を取り出し、或いは未加工のセンサデータを遠隔処理及び遠隔解釈のために転送し、処理及び解釈済みのセンサデータを再びリモートサーバから受け取ってスマートVHCのユーザ又はユーザに付き添う介護者に表示することもできる。
【0023】
スマートVHC及び/又はMDIの近傍のスマートフォン又はその他のローカルコンピュータのディスプレイ上にデータ、統計又は命令を単純に提示することに加え、スマートVHC及び/又はMDIに関連する事前対応動作(proactive operations)を能動的に管理して制御することもできる。例えば、スマートVHC及び/又はMDIの近傍のスマートフォン又はその他のローカルコンピュータは、治療の終了に到達した旨、又はさらなる治療が必要である旨をセンサデータが示していると判定した場合、このような情報を直接患者に伝えることができる。例えば、スマートフォンと通信しているリモートサーバ、又はスマートVHC及び/又はMDIと通信ネットワークを介して直接通信しているリモートサーバが患者/ユーザに情報及び命令を提供できる場合などの他の変形例も検討される。
【0024】
さらに他の実装では、スマートVHC及び/又はMDIにおいて収集され、スマートフォンを介してリモートサーバに中継されたリアルタイムデータが、特定のユーザの過去の治療セッションに基づいて特定の治療セッションの問題点又は時間の経過と共に発現したパターンを突き止め、これに関して医師又は管理介護者に通知するようにリモートサーバをトリガすることができる。リモートサーバは、スマートVHC及び/又はMDIにおける1又は2以上のセンサからのデータに基づいてアラートを生成し、テキスト、電子メール又はその他の電子通信媒体を介してユーザ、ユーザの医師又はその他の介護者に送信することができる。
【0025】
上述したスマートVHC及び/又はMDI内の電子回路、ローカルコンピュータ装置及び/又はリモートサーバは、コンピュータ500のネットワーク526と通信する能力及び/又はその他のコンピュータと直接通信する能力の一部又は全部を含むことができる。
図22~
図24に示すように、コンピュータ500は、プロセッサ502と、記憶装置516と、ディスプレイ又はその他の出力装置510と、入力装置512と、ネットワークインターフェイス装置520とを含むことができ、これらは全てバス508を介して接続される。コンピュータには、バッテリ503が結合されてコンピュータに電力を供給する。コンピュータは、ネットワークと通信することができる。プロセッサ502は、CISC(複雑命令セットコンピューティング)、RISC(縮小命令セットコンピューティング)、VLIW(超長命令語)又はハイブリッド構造などのいずれかのタイプの構造の中央処理装置を表すが、あらゆる適切なプロセッサを使用することができる。プロセッサ502は命令を実行し、コンピュータ全体の動作を制御するコンピュータ500の部分を含む。
図22及び
図23には示していないが、通常、プロセッサ502は、メモリに記憶されたデータ及びプログラムを体系化し、データ及びその他の情報をコンピュータ500の様々な部品間で転送する制御ユニットを含む。プロセッサ502は、入力装置512から入力データを受け取り、ネットワーク526は、ランダムアクセスメモリ(RAM)などのメインメモリ504、リードオンリメモリ(ROM)などのスタティックメモリ506及び記憶装置516から命令(例えば、プロセッサ実行可能コード)524及びデータを読み出して記憶する。プロセッサ502は、出力装置510を介してユーザにデータを提示することができる。
【0026】
コンピュータ500は、単一のプロセッサ502及び単一のバス508を含むように示しているが、開示する実施形態は、複数のプロセッサを有することができるコンピュータ、及び複数のバスを有することができるコンピュータにも等しく適用され、これらの一部又は全部は異なる機能を異なる方法で実行する。
【0027】
記憶装置516は、データを記憶する1又は2以上の機構を表す。例えば、記憶装置516は、リードオンリメモリ(ROM)、RAM、不揮発性記憶媒体、光学記憶媒体、フラッシュメモリデバイス及び/又はその他の機械可読媒体などのコンピュータ可読媒体522を含むことができる。他の実施形態では、いずれかの適切なタイプの記憶装置を使用することができる。1つの記憶装置516しか図示していないが、複数の記憶装置及び複数のタイプの記憶装置が存在することもできる。さらに、コンピュータ500が記憶装置516を含むように示しているが、記憶装置516は、例えばサーバなどの他のコンピュータにわたって分散することもできる。
【0028】
記憶装置516は、コントローラ(図示せず)と、センサデータを処理し、センサデータ又はセンサデータに基づく命令を表示し、スマートVHC及び/又はMDIの動作を変更するようにその態様を制御し、或いは第三者又はその他の離れて位置するリソースに接触して、これらの離れて位置するリソースにアップデート情報を提供し又はこれらのリソースからデータを取り出すことに関連して上述した機能を実行するためにプロセッサ502上で実行できる命令524を有するコンピュータ可読媒体522とを含むことができる。別の実施形態では、機能の一部又は全部が、プロセッサベースシステムの代わりにハードウェアを介して実行される。1つの実施形態では、コントローラがウェブブラウザであるが、他の実施形態では、コントローラがデータベースシステム、ファイルシステム、電子メールシステム、メディアマネージャ、画像マネージャであり、又はデータ項目にアクセスできる他のいずれかの機能を含むことができる。また、記憶装置516は、さらなるソフトウェア及びデータ(図示せず)を含むこともできるが、これらは本発明を理解するために必須ではない。
【0029】
出力装置510は、ユーザに出力を表示するコンピュータ500の部分である。出力装置510は、コンピュータハードウェアの技術において周知の液晶ディスプレイ(LCD)とすることができる。他の実施形態では、出力装置510を、ガス又はプラズマベースのフラットパネルディスプレイ、又は従来の陰極線管(CRT)ディスプレイに置き換えることもできる。さらに他の実施形態では、いずれかの適切なディスプレイ装置を使用することができる。1つの出力装置510しか図示していないが、他の実施形態では、異なるタイプ又は同じタイプのあらゆる数の出力装置が存在することができる。ある実施形態では、出力装置510がユーザインターフェイスを表示する。入力装置512は、キーボード、マウス又はその他のポインティングデバイス、トラックボール、タッチパッド、タッチ画面、キーパッド、マイク、音声認識装置、或いはユーザがコンピュータ500にデータを入力して上述したユーザインターフェイスを操作するための他のいずれかの適切な機構とすることができる。1つの入力装置512しか図示していないが、別の実施形態ではあらゆる数及びタイプの入力装置が存在することができる。
【0030】
ネットワークインターフェイス装置520は、いずれかの適切な通信プロトコルを通じたコンピュータ500からネットワーク526への接続性を提供する。ネットワークインターフェイス装置520は、無線又は有線トランシーバ514を介してネットワーク526との間でデータ項目を送受信する。トランシーバ514は、セルラ周波数、無線周波数(RF)、赤外線(IR)、或いはネットワーク526、又は
図83及び
図84のコンピュータ例の特徴の一部又は全部を有するその他のスマート装置102と通信できる複数の既知の無線又は有線伝送システムのいずれかとすることができる。バス508は、例えばUSB、PCI、ISA(業界標準アーキテクチャ)、Xバス、EISA(拡張業界標準アーキテクチャ)、或いは他のいずれかの適切なバス及び/又は(バスコントローラとも呼ばれる)ブリッジなどの1又は2以上のバスを表すことができる。
【0031】
コンピュータ500は、パーソナルコンピュータ又は他の電子コンピュータ装置などのいずれかの好適なハードウェア及び/又はソフトウェアを使用して実装することができる。コンピュータ500は、ポータブルコンピュータ、ラップトップ、タブレット又はノートブックコンピュータ、スマートフォン、PDA、ポケットコンピュータ、電気製品、電話機とすることができ、メインフレームコンピュータは、他の可能なコンピュータ500の構成の例である。ネットワーク526は、いずれかの好適なネットワークとすることができ、コンピュータ500との通信に適したいずれかの適切なプロトコルをサポートすることができる。ある実施形態では、ネットワーク526が無線通信をサポートすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526が、電話回線又はケーブルなどの配線通信をサポートすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526が、イーサネットIEEE(アメリカ電気電子技術者協会)802.3x規格をサポートすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526がインターネットであり、IP(インターネットプロトコル)をサポートすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526をLAN又はWANとすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526をホットスポットサービスプロバイダネットワークとすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526をイントラネットとすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526をGPRS(汎用パケット無線サービス)ネットワークとすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526を、いずれかの適切なセルラデータネットワーク又はセルベースの無線ネットワーク技術とすることができる。別の実施形態では、ネットワーク526をIEEE 802.11無線ネットワークとすることができる。さらに別の実施形態では、ネットワーク526を、いずれかの好適なネットワーク又はネットワークの組み合わせとすることができる。1つのネットワーク526を示しているが、他の実施形態では(同じ又は異なるタイプの)あらゆる数のネットワークが存在することができる。
【0032】
本明細書で説明する様々な技術は、ハードウェア又はソフトウェア、或いは必要に応じてこれらの両方の組み合わせに関連して実装することができると理解されたい。従って、本開示の主題又はそのいくつかの態様又は部分の方法及び装置は、フロッピーディスケット、CD-ROM、ハードドライブ又は他のいずれかの機械可読記憶媒体などの有形媒体に具体化されるプログラムコード(すなわち、命令)の形を取ることができ、これらのプログラムコードがコンピュータなどの機械にロードされて機械によって実行される時には、この機械が本開示の主題を実施する装置になる。プログラマブルコンピュータ上でプログラムコードを実行する場合、コンピュータ装置は、一般にプロセッサと、プロセッサが読み取ることができる(揮発性及び不揮発性メモリ及び/又は記憶素子を含む)記憶媒体と、少なくとも1つの入力装置と、少なくとも1つの出力装置とを含む。1又は2以上のプログラムは、例えばAPI又は再使用可能コントロールなどの使用を通じて、本開示の主題に関連して説明するプロセスを実装又は使用することができる。このようなプログラムは、コンピュータシステムと通信する高水準の手続き型言語又はオブジェクト指向型プログラミング言語で実装することができる。しかしながら、これらの(単複の)プログラムは、必要に応じてアセンブリ言語又はマシン語で実装することもできる。いずれの場合にも、言語は、コンパイラ型言語又はインタープリタ型言語とすることができ、ハードウェアの実装と組み合わせることができる。例示的な実施形態は、本開示の主題の態様を1又は2以上のスタンドアロン型コンピュータシステムの文脈で使用することに言及している場合もあるが、本主題はこのように限定されるものではなく、むしろネットワーク又は分散コンピュータ環境などのあらゆるコンピュータ環境に関連して実装することができる。さらに、本開示の主題の態様は、複数の処理チップ又は処理装置において、或いは複数の処理チップ又は処理装置にわたって実装することもでき、同様にストレージも複数の装置にわたって分散することができる。このような装置は、例えばパーソナルコンピュータ、ネットワークサーバ及びハンドヘルド装置を含むことができる。
【0033】
吸入器の識別
多くの患者は、異なる時点又は状況で使用すべき複数の吸入器又は薬剤(例えば、救急薬及び/又は制御薬)を有しているので、客観的な患者固有の順守データを提供するためには、どの吸入器すなわち薬剤容器28が使用されているかを識別する必要性が重要である。一般的なタイプの非順守は、救急吸入器(rescue inhaler)28の方が症状を素早く緩和するとの理由で制御吸入器28’の代わりに救急吸入器を定期的に使用することである。医療提供者は、どの吸入器が使用されたかが分からなければ、患者が処方された治療プロトコルを遵守していたかどうかを判断することはできない。
【0034】
1つの実施形態では、
図13、
図14A及び
図14Bを参照して分かるように、吸入器ブーツ26に(抵抗又はシリアル番号などの)固有の電気的特性を有する受動電子ラベル100が適用される。この電気的特性は、吸入器が作動する度に読み取られ又は認識される。
図13及び
図14に示す、ラベル100の位置及びこれに適用される接点102の位置は、薬剤送達又は空気流を妨害せず、吸入器マウスピースが電子部品を含まないことを可能にする。電子ラベルは、薬剤師が薬局で吸入器に貼り付けることも、或いは家庭内で患者又は介護者が貼り付けることもできる。他の実施形態では、処方箋を記入する際に付与される薬局ラベル(pharmacy label)に電子ラベルを埋め込むこともできる。
【0035】
1つの実施形態では、
図14A及び
図14Bに示すように、ラベルの前面に短絡を防ぐように十分に離して2つの接点102が提供される。2つの接点102は、埋め込まれた受動電子部品106(すなわち、抵抗器、コンデンサ、インダクタ)又は能動電子部品108(すなわち、メモリチップ、認証チップ、マイクロプロセッサなど)にワイヤなどの導電体104を使用して電気的に接続される。抵抗器106を採用する実施形態では、抵抗器を10Ω~10MΩとすることができる。この実施形態を単純な直列抵抗回路の分圧器で実装すると、結果として生じるアナログ信号によって吸入器を区別することができる。例えば、
図13に示すように、救急吸入器28は10Ωの抵抗器を有することができ、制御吸入器28’は10kΩの抵抗器を有することができる。この装置は、1又は2以上のコネクタ110又は接点を有するスマートVHCに取り付けられると抵抗を測定し、吸入器を救急吸入器28又は制御吸入器28'のいずれかとして識別する。EEPROMチップ108を使用する場合には、各チップに一意のシリアルIDが割り当てられ、ユーザは、最初の使用時にスマートフォン又はコンピュータを介してコンパニオンアプリ(companion app)に吸入器情報を入力する。
【0036】
保持チャンバの入力端に結合されたバックピース8は、電気回路及び開口部を有する。挿入部と呼ばれるMDIのマウスピース22は、挿入部が開口部に収容される係合位置と、挿入部が開口部から除去される解放位置との間で移動可能である。MDI上の接点102は、ラベル100上に存在するか、それとも付属品上に存在するかにかかわらず、マウスピース22又は挿入部が係合位置にある時に1又は2以上のコネクタ110によって電気回路を完結させ、それ以後は回路が完結してMDIのアイデンティティを記録して記憶することができる。
【0037】
図4A~
図11に示す別の実施形態では、元の吸入器が有効期限切れ又は空になると、再使用可能な識別付属品120、120’又はアダプタを異なる吸入器に適用し、或いは1つの吸入器から別の吸入器に移すことができる。識別付属品120、120’は、異なるブーツ形状(例えば、
図4A~
図4Fを参照)に適合するように汎用フェイスプレート122及びカスタムアダプタ124、124’を含む。
【0038】
1つの実施形態では、付属品が、1)電気接点間の信頼できる機械的接続が維持されるように、スマートVHCに挿入されている間に吸入器の物理的重量を支持し、2)接点130を定めることによって電気回路の一部を形成し、3)チャンバ壁に最低量の薬剤しか堆積しないように、吸入器の排出薬剤出力部(expelled drug output)がチャンバ本体2と整列することを確実にする、という複数の役割を果たす磁石126を使用する。これらの役割は、磁石が吸入器の支持及び位置付けを行う一方で(例えば、上述したようにラベルに埋め込まれた、又はフェイスプレート上の異なる位置に配置された)別個の電気接点の対が電気回路を完結するように分離することもできる。
図11は、フェイスプレート122の背面図である。この実施形態では、ワイヤなどの導電体104を使用して2つの磁石126間に抵抗器106が直列に接続される。スマートVHCに挿入されると、吸入器の識別付属品又はフェイスプレート120、120’上の磁石126が
図7及び
図8に示すようにスマートVHC上の2つの対応する磁石130と噛み合って回路を完結し、抵抗値の測定及び吸入器の識別を可能にする。
【0039】
フェイスプレート122は、吸入器のマウスピース22を内部に受け取るような形状及び寸法の中央開口部132を有するリング146と、このリングから上向き及び下向きに延びる1対のラグ(lug)134とを含む。
図4A~
図4Fに示すように、磁石は、好ましくは磁石の表面136がフェイスプレートの背面138から後方に延びるようにラグに埋め込まれ又は取り付けられる。上側ラグ及びリングの対向する側面は、アダプタ124、124’から後方に延びる弾性タブ142と解除可能に係合するような形状の窪み又は切り欠き140を有するように構成される。なお、タブは、フェイスプレート上に配置されてアダプタ上の切り欠きに係合することも、或いはフェイスプレート及びアダプタのそれぞれに切り欠き及びタブの両方が存在する構成を有することもできると理解されたい。他の実施形態では、アダプタ及びフェイスプレートが、磁石、簡易脱着ファスナ(quick release fasteners)、ねじ、戻り止め、弾性バンド及びこれらの組み合わせを制限なく含む他の機械的接続部を通じて解除可能に係合することもできる。上側ラグ及び下側ラグ上に磁石134が配置され、リング146によって定められた経路に沿ってこれらのラグ間に導電体104が延び、リング146に抵抗器が結合される。
【0040】
図4A~
図4F及び
図10A~
図10Dに示すように、アダプタ124、124’は、内部に吸入器のマウスピースを受け入れる形状の開口部145を定める口部を有する下方に面した(逆U字型の)ヨークを有する取り付けプレート147と、取り付けプレート147から後方に延びる第2の取り付けリング148、148’又は保持部材とを含む。第2のリングは、ヨーク開口部の軸に対して横方向に延びる、例えば1つの実施形態では直交する軸を定める。第2のリングは、アクチュエータブーツの煙突部分を受け取ってMDIを確実に保持するような形状及び寸法を有する。取り付けプレート147は、そのクリップ又はタブ142によってフェイスプレート122に解除可能に固定され、切り欠き140の位置は、フェイスプレートに対する、そして最終的にはVHCに対するMDIの正しい位置合わせを確実にする。MDIのマウスピース22は、VHCのバックピース8を通じて挿入され、磁石126、130が係合してVHCにおけるMDIの正しい位置合わせを確実にする。同時に、磁石126、130間の境界面がMDIとVHCとの間の電気的接続部を提供して、VHCが測定された抵抗又は一意のシリアル識別に従ってMDIを識別することを可能にする。
【0041】
図6及び
図21に示すように、バックピース8には様々な電子部品が取り付けられる。バックピースは、保持チャンバ2の入力端10を受け取るような形状及び寸法の溝及び/又は肩部を有するエラストマリング部品202を含む。このリング部品には1対の磁石130が埋め込まれる。リング部品から前方へはシュラウド部204が延びて、保持チャンバを少なくとも部分的に取り囲む。シュラウドから上方へはハウジング206が延びて、USB充電器208、内部ストレージ及び/又はプロセッサ210、バッテリ212及び/又はMEMS流量センサ150を内部に収容する。リング部品には、可聴作動測定値(audible readings of actuation)を最大化するように、例えば保持チャンバの内部空間に近接してマイク200を結合し又は埋め込むことができる。磁石130は、MDI上の磁石126によって閉じられた回路内に配置される。ハウジング上には、1又は2以上のLED214(例えば、アレイ)又はその他のインジケータが配置されてユーザにフィードバックを提供し、例えば所定の作動回数の完了、(例えば、保持チャンバを空にするのに十分な)所定の呼吸回数の完了、欠陥のあるバルブの検出、及び/又は保持チャンバを洗浄する必要性の検出などを含む1又は2以上の条件が満たされた時に点灯することができる。
【0042】
図9A、
図9B及び
図10A~
図10Dに示すように、取り付けプレート147は、マウスピース22がヨークの開口部145内に位置するまでアクチュエータブーツ24上を摺動することができる。その後、タブ142が切り欠き140に係合するまでフェイスプレート122をマウスピース22上で摺動させることによってMDIがフェイスプレート122に解除可能に固定され、その後は磁石126、130が係合するまでマウスピース2をバックピース8に挿入することによってアダプタ120、120’をVHCに固定する準備が整う。
【0043】
吸入器の作動
スマート薬剤送達装置の1つの重要な側面は、吸入器が作動した時点を識別する能力である。本明細書で説明する解決策は、微小電気機械システムMEMS流量センサ150を使用して吸入器の作動を検出し、これによって両機能を果たすために必要とされるセンサの数を減少させる。
図6~
図8に、明確にするためにいくつかのコンポーネントを除去した装置の1つの実施形態を示す。
図7及び
図8には、MEMS流量センサを通じた吸気及び吸入器作動のための流路をそれぞれ示す。呼気のチャンバ内への、従ってMEMS流量センサ150への進入は、VHCの近位部の一方向吸入バルブ16によって防がれる。
【0044】
ユーザが吸入を開始すると、チャンバ2の内部4に負圧が発生する。この負圧により、吸入器バックピース内に成型された流路152を通じてMEMS流量センサ150を越えて空気が引き込まれる。
図12に、MEMS流量センサを使用して記録したデータの例を示す。吸入器が作動すると(
図8)、チャンバ2、4内に正圧が発生し、空気が押されてMEMS流量センサ150を逆方向に越える。この逆流が吸入器の作動として検出される。
図12を参照して分かるように、出力の緩やかな上昇部分は吸入を示し、急激な下降部分は作動を示す。
【0045】
不良バルブの検出
1つの実施形態では、
図15に示すように、MEMS流量センサ150を使用して、例えば欠陥バルブ16などの欠陥のある送達装置の指標を提供することもできる。通常の使用方法では、保持チャンバに呼気が入り込まないように構成されたマウスピース内の一方向バルブ16を通じて患者の呼気空気流が装置から排出される。一方向バルブ16が緩み、破れ又は開固着した場合には、保持チャンバ2の内部4に呼気が入り込むことによって装置のデッドスペースが増加し、チャンバから残りの薬剤が排出される恐れがある。この状況では、MEMS流量センサ150が呼気空気流を検出し、装置が、バルブが誤動作している恐れがあるため交換すべきであることを示す。アルゴリズムは、(短い急激なスパイクを生じる)作動と(より長く緩やかな曲線を生じる)呼気空気流とを識別する。
【0046】
洗浄検出及びプルーム分析
1つの実施形態では、
図16及び
図17A~
図17Cを参照して分かるように、吸入器のプルーム(plume)に反射、透過又は遮断された光を測定することによって吸入器の作動を検出することができる。光検出技術を使用して、装置をいつ洗浄又は交換すべきであるかなどのフィードバックをユーザに提供することができる。1つの実施形態では、チャンバが新品又は洗浄したての時に光透過の基準レベルが設定される。作動毎に保持チャンバの内側に薬剤残留物が蓄積してこれを覆うことにより、送信機(例えば、LED158)によって送信されて光検出器160によって検出される光の量を減少させる。光検出器160の検出される光、従って出力信号の基準状態からの大幅な変化は、チャンバを洗浄する必要があり、或いは洗浄によって残留物を十分に除去できない場合には交換する必要があることを示す。
図16には、新品の/清浄状態の装置(182)とチャンバ内に目に見えて薬剤が蓄積した装置(180)とを比較した、光検出器信号を介した光透過の基準測定値を示す。
【0047】
1つの実施形態では、チャンバの清浄度が、吸入器の作動を検出するように構成された(上述のMEMS流量センサと同様の)第1のセンサ150の出力と、やはり吸入器の作動を検出するように構成された光検出器160の出力とを比較することによって決定される。第1のセンサ150が作動を検出して光検出器160が(光の反射、透過又は減少のいずれかによって)作動を検出しない場合には、チャンバの内部が清浄状態でないと結論付けることができる。
【0048】
光検出能力を向上させるには、作動検出目的又はその他の目的(上記を参照)で光検出器160によって観察される信号が増幅されるように、バルブ付き保持チャンバ2の内部に反射面180、182(例えば、フィルム)適用し、又は外部に反射面180、182を巻き付けることができる。反射面は、保持チャンバの内部の中心に向かって半径方向内側に面する。光粒子が反射する反射面により、受光光の変化が光検出器によって観察される度合いが高くなる。この表面皮膜180、182は、光検出技術を用いた作動検出の信頼度を高める。効果的な反射性表面皮膜としては、VHCの外面又はVHCカバーの内面に適用されるアルミ箔、マイラプラスチック、反射性塗料又はアルミニウムを挙げることができる。
【0049】
同時に、周囲光の影響を最小限に抑えることも有用である。作動目的又はその他の目的(上記を参照)で使用される光検出器に対する周囲光の影響を最小限に抑えるには、スマートバルブ付き保持チャンバを外側被覆184によって覆うことができる。ベンタブラックなどの暗色材料又は光吸収材料を使用すると、チャンバハウジングの外部の実質的に全ての光源が排除される。チャンバ本体内で光の散乱及び反射を行うエアロゾル粒子の検出は、信頼度が外部の変化から隔離されている場合の方が高い。
【0050】
周囲光の干渉を抑えるための第2の方法は、光源の変調を通じて、光検出器160が受け取った信号を復号することである。LED158に給電する順方向電流のパルス幅変調を使用して既知の周波数で光を放出することにより、光検出器160が受け取った信号をこの周波数で復調してアーチファクトを無視することができる。LEDがオン及びオフする発生から入力信号を減算することにより、周囲光によって生じるノイズを効果的に無視することができる。この方法は、光の散乱及びエアロゾル粒子からの反射の検出と、MDI作動イベントの識別とをより正確なものにする。
【0051】
1つの実施形態では、第1の構成(
図17A)が、チャンバを挟んでLED158及び光検出器160を互いに真向かいに配置する。この位置では、エアロゾルプルームがLEDへの直接見通し線を遮るので、光検出器が受光量の減少を理解する。
【0052】
第2の構成(
図17B)では、LED158及び光検出器160がそれぞれチャンバの上部中心から15度オフセットして配置される。この配置では、これらの2つのコンポーネントを、プルームが分散する際のエアロゾル粒子の散乱及び反射を検出するようにチャンバ本体の前方寄りに配置すべきである。30度を上回る(例えば、0~180度の)又は30度未満の好適な鋭角も機能すると思われる。
【0053】
第3の構成(
図17C)では、これらのコンポーネントが、バルブ付き保持チャンバ本体の後部に互いに隣接して配置される。この構成をチャンバの底部側に配置してエアロゾル粒子による光の変化を検出することもできる。
【0054】
正しい吸入法
治療順守を評価する上で重要な側面は、ユーザの吸入特性を含む吸入器の吸入法である。1つの実施形態では、
図18を参照して分かるように、バルブ付き保持チャンバ上の流量インジケータ190の動きが、マウスピースを介したエアロゾル製剤の吸入を示す。流量インジケータ190は、(吸入、呼気及び/又はこれらの両方による)チャンバを通る流れが存在している間には動き、流れが存在しない期間中はその静止位置に戻る。
図18に示すようなFED194及びフォトダイオード192を使用する場合、フォトダイオード192は、流量インジケータ190’が下がっている吸入中にFED194又はその他の発信源からの光を受け取る。吸入が停止すると、流量インジケータ190が直立位置に戻ってフォトダイオードによるFEDの観察を妨げる。この2値出力(開又は閉)を検出することで、各吸入器の作動について行われる吸入の長さ及び呼吸回数が識別される。この記録データから、患者の行動及び吸入法を推測することができる。このFED及びフォトダイオードを含む構成は、ハウジング内に収容してこれらのコンポーネントを周囲光から隔離することができる。流量インジケータが動く覗き窓198を真っ暗にすることもできると理解されたい。
【0055】
スマートVHCのコンポーネント
1つの実施形態では、
図1~
図3C、
図6及び
図19を参照して分かるように、スマートバルブ付き保持チャンバ(VHC)が、バルブ付き保持チャンバ2と、電子バックピース8と、識別付属品120付きの吸入器又はMDIとを含む。スマートVHCの3つの主な特徴は、各吸入器作動の日付、時間及び識別を検出して記録し、作動に至るまでの吸入特性を記録し、正しい吸入法に関するフィードバックを提供する点である。
【0056】
図6及び
図21に示す好ましい実施形態では、バックアップとしてのMEMSマイク200を含むMEMS流量センサ150によって作動検出が行われる。上述したように、大気からチャンバの内部には迂回チャネル152が延びる。吸入器が作動すると、チャネル152の大気開口部と内部開口部との間に圧力差が生じ、センサ150を通過して大気へ向かう小さな負の流れを引き起こす。この急速な負の流れの検出は、吸入器の作動を示す。
【0057】
吸入中に吸入器が作動すると、吸入からの負圧が吸入器作動からの正圧を相殺し、この場合、MEMS流量センサ150は、吸入器が作動したかどうかを確実に判定することができない。この場合は、MEMSマイク200を使用して吸入器の作動を示す音を識別する。マイク200は、保持チャンバのバックピース8内の吸入器マウスピース付近に収容され、MEMS流量センサ150が吸入流を検出した時に吸入器の作動を識別するために使用される。
【0058】
図20に、複数の吸入器作動及び吸入サイクル中のMEMS流量センサ150及びマイク200からの電圧出力を示す。吸入が行われていない場合には、吸入器が作動したかどうかをMEMS流量センサ150が確実に判定することができる。しかしながら、吸入中は、マイクからの出力を考慮しなければ、加圧された薬剤及び推進剤(propellant)の放出からの負の流れを確実に識別することはできない。
【0059】
図6に、MEMS流量センサ、バックピース、バックピース8に含まれる迂回チャネル、及びMEMSマイク200の位置及び幾何学的形状を示す。スマートVHCにどの吸入器が挿入されているかを識別する方法は、ユーザに処方される各吸入器に追加される付属品の電気的特性の測定に依拠する。各吸入器付属品の電気的特性は、各埋め込み磁石126に接続された埋め込み抵抗器106を変更することによって変化する。ほとんどの吸入器に取り付けることができる汎用フェイスプレート122は、埋め込み磁石及び抵抗器を含む。異なる吸入器形状及びスタイルに対応する固有のアダプタも利用可能である。
図4A~
図4Fに示したように、固有のアダプタは吸入器ブーツを覆って配置され、汎用フェイスプレートは吸入器のマウスピースを覆って取り付けられる。
【0060】
好ましい実施形態では、正しい吸入法が行われたかどうかを判定するために、MEMS流量センサ150を使用して吸入流データを記録する。
図20には、MEMS流量センサからの出力例を示す。センサによって収集された作動及び吸入データを分析することにより、スペーサ付き吸入器の正しい使用にとって極めて重要なユーザの誤った吸入法に関するフィードバックが患者、介護者又は医師に示される。
【0061】
検出できる誤った吸入法のタイプの例としては、以下が挙げられる。
【表1】
【0062】
記録された各吸入器作動の日付、時間及び識別は、吸入データと共にオンボードメモリに記憶される。
図19に示すように、データは、無線(BTLE)法又は有線(USB)法を介して分析のためにユーザの電話機又はコンピュータに配信される。以前に同期した装置と対になっている場合、使用データはリアルタイムで転送される。装置が検出されない場合、データはオンボードで記憶され、次の接続時に履歴が転送される。
【0063】
ユーザにリアルタイムでフィードバックを提供して、スマートVHCの正しい使用を確認することができる。
【0064】
ユーザに自身の吸入法に関するフィードバックを提供することは、薬剤送達を最適化するのに役立つVHCの1つの特徴である。1つの実施形態では、流量センサ150を使用してデータを収集し、吸入法に関するフィードバックを提供することができる。流量センサは、ユーザが吸入している流量を測定する。吸入が速すぎると、薬剤の大部分が肺ではなく喉に堆積する恐れがある。制御された吸入によって、肺内への効果的な薬剤堆積を達成することができる。また、一定期間にわたって流量を積分して、吸入された空気容量を求め、これを使用して、チャンバハウジングの内部空間が空になって完全な服用量を受け取った時点についての指標をユーザに提供することもできる。流量情報をリアルタイムで使用して、例えば(視覚的、聴覚的及び/又は触覚的)インジケータ又はディスプレイなどのフィードバック装置を通じた練習セッション(practice sessions)に関するフィードバック、並びに吸入を開始すべきかどうか、及び/又は、例えば最大流量を超えた時に流量を抑える必要があるかどうかに関するフィードバックをユーザに提供することもできる。また、MDIの作動を使用して、作動の開始及び/又は吸入の開始に関するフィードバックをユーザに提供することもできる。
【0065】
図19に示すように、本明細書で説明したスマートVHCの様々な実施形態上又はその内部に配置できるコントローラは、スマートVHCの動作を追跡又は制御している1又は2以上のセンサ、スイッチ及び/又は計器と通信する。コントローラは、収集データを後で受信装置にダウンロードできるようにメモリに記憶することができ、又は受信装置にリアルタイムでデータを送信することもできる。また、コントローラは、センサから収集されたデータに何らかの加工を行うことができ、又は未加工データを記憶して送信することもできる。スマートVHCのコントローラにRF送信機及び/又は受信機モジュールを関連付けて、リモートハンドヘルドコンピュータ装置又は固定コンピュータ装置とリアルタイムで、或いはスマートVHCがリモートハンドヘルドコンピュータ装置又は固定位置のコンピュータ装置に対して通信ネットワークの通信範囲内に存在する後の時点で通信することもできる。コントローラは、
図22に示すコンピュータシステム500の特徴のうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。また、1又は2以上のセンサ、スイッチ又は計器は、コントローラと有線又は無線で通信することもできる。
【0066】
説明した様々なスマートVHCの実施形態の他の特徴の表示を明確にするためにコントローラ回路を省略しているが、これらの実施形態の1つの変形例では、少なくともスマートVHCからのデータのルーティング又は記憶を管理できるコントローラ又はその他の処理エージェントが想定される。他の実装では、スマートVHCがオンボードプロセッサを含まずに、特定の実施形態の様々なセンサ、計器及びスイッチが、ハンドヘルド装置又はリモートサーバなどの遠隔的に配置されたコントローラ又はその他の処理装置と直接無線で通信することもできる。コントローラ又はその他の処理装置によって収集されたデータは、ローカルコントローラメモリ又はその他の遠隔位置における期待値又は予めプログラムされた値と比較して、所望の動作又は治療が行われているかどうかに関するフィードバックの基準を提供することができる。コントローラがさらに高機能であって
図22に示すコンピュータ500の要素よりも多くの要素を含む場合、これら処理は、全てスマート装置(スマートVHC、スマートMDIなど)の局所で行うことができる。より基本的なコントローラ構成では、データに単純に日付/時間を刻印して、後で処理できるように局所的又は遠隔的に記憶することができる。さらに、1つの実施形態では、データに固有の装置又は患者識別子を局所的又は遠隔的に刻印することもできる。
【0067】
MDIは、順守モニタリングを目的として作動して服用作動時間(dose actuation time)、回数及び合計を取り込む服用カウンタモジュールを有するように構成することができる。同時に、VHCは、吸入時間、継続時間及び回数を取り込んでBluetooth技術などを使用して通信するフロー検出モジュールを有するように構成することもできる。スマートVHC又はそのアプリケーションからのこれらの装置との通信を使用して、MDIの作動及び吸入法を検出して確認することができる。
【0068】
上述したスマート装置の実施形態では、いずれもセンサ、計器又はスイッチとの通信又はこれらの制御を行うコントローラ又はその他の処理要素をスマート装置自体に統合することも、スマート装置自体又はその内部に、或いはスマート装置自体から離して配置することもできる。なお、様々なセンサ、計器又はスイッチは、複数の機能を果たして様々な組み合わせで使用することができ、これらは全てコントローラ又はその他の処理要素と通信すると理解されたい。また、上述したスマート装置については、いずれもセンサ、スイッチ又は計器によって収集されたデータ及び装置のユーザに提供されるフィードバックの一部又は全部を、離れて位置する介護者に同時に送信することができる。離れて位置する介護者又はモニタリング機関は、治療セッション中に介入してさらなる助言又は情報を提供することができる。或いは、ユーザと同時に介護者又はモニタ機関に送信されたデータ及びフィードバックは、後で医療専門家が評価できるように遠隔的に記憶することもできる。感知データ及びあらゆるフィードバックを含む情報を遠隔ソースに同時送信することにより、スマート装置自体に記憶されたデータの改竄又は破損に伴う問題を防ぐこともできる。
【0069】
本明細書で説明したスマート装置の異なる実施形態では、あらゆるコントローラ回路、センサ、計器及びスイッチのバッテリ又はその他の電源を再充電可能又は取り外し可能とすることができる。バッテリの消耗を最小限に抑えるために、いくつかのセンサは、連続測定モードではなく所定のサンプリング周波数のために構成することができる。また、スマート装置上の回路は、特定のイベントの検出時にのみ作動することができ、最初のトリガから所定の期間後に、又は装置のアイドル期間の感知後に自動的にオフになることができる。
【0070】
好ましい実施形態を参照しながら本発明を説明した。当業者であれば、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく形状及び細部に変更を加えることができると認識するであろう。従って、上記の詳細な説明は、限定的なものではなく例示的なものであると見なすべきであり、また本発明の範囲は、全ての同等物を含む添付の特許請求の範囲によって定められるように意図される。
【符号の説明】
【0071】
2 チャンバハウジング
8 バックピース
12 マウスピース
26 煙突部分
28 薬剤容器
148 第2の取り付けリング
208 USB充電器