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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】表面改質を施した多成分層状誘電体膜
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/14 20060101AFI20240129BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240129BHJP
   H01G 4/32 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
H01G4/14
H01G2/10 J
H01G4/32 301A
H01G4/32 301B
H01G4/32 511G
H01G4/32 511L
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021526213
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 US2019042341
(87)【国際公開番号】W WO2020018750
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】62/700,558
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521026862
【氏名又は名称】ポリマープラス エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,ディーパック
(72)【発明者】
【氏名】ポンティング,マイケル
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048307(WO,A1)
【文献】特開2006-165400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/10
H01G 4/14
H01G 4/32
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別の重複誘電体層、および前記重複誘電体層と比較してより高い表面エネルギーを有する多成分誘電体膜の最外層を形成する外層のスタックを備える多成分誘電体膜であって、前記個別の重複誘電体層のスタックは、少なくとも第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および任意選択で第3のポリマー材料の第1の誘電体層及び第2の誘電体層を含み、隣接する第1の誘電体層及び第2の誘電体層は、それらの間に、概してxyz座標系のxy平面にある略平面の界面を画定し、前記略平面の界面は、層内に蓄積された電荷を非局在化し、電極上の電荷貯蔵の増加を可能にし、
前記外層は、前記第1のポリマー材料、前記第2のポリマー材料、および前記任意選択の第3のポリマー材料とは異なる組成、ならびに前記第1のポリマー材料、前記第2のポリマー材料、および前記任意選択の第3のポリマー材料より高い表面エネルギーを有する第4のポリマー材料から形成される、多成分誘電体膜。
【請求項2】
前記誘電体層の少なくとも1つが、2つ以上のポリマーのブレンドを含む、請求項1に記載の多成分誘電体膜。
【請求項3】
前記第1の誘電体層が、xy平面を横切って延在するポリマー層界面を有する個別のポリマー層のスタックを含み、任意選択で、少なくとも1つの非ポリマー充填剤が、前記第1のポリマー材料、前記第2のポリマー材料および/または第3のポリマー材料よりも高い誘電定数を有する、請求項1に記載の多成分誘電体膜。
【請求項4】
前記個別のポリマー層のスタックが、交互する第1のポリマー層および第2のポリマー層を含み、前記スタックの隣接する第1のポリマー層および第2のポリマー層が、それらの間に略平面の界面を画定する、請求項3に記載の多成分誘電体膜。
【請求項5】
前記ポリマー層界面が、xy平面に実質的に垂直に延在する、請求項4に記載の多成分誘電体膜。
【請求項6】
多層共押出強制組立プロセスにより製造された交互する第1の誘電体層および第2の誘電体層のスタックを備える、請求項1に記載の多成分誘電体膜。
【請求項7】
前記第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料が、前記第3のポリマー材料よりも高い誘電率を有し、前記第3のポリマー材料が、前記第1のポリマー材料および/または前記第2のポリマー材料よりも高い破壊強度を有する、請求項1に記載の多成分誘電体膜。
【請求項8】
前記膜の破壊強度を高めるのに、前記膜の表面に実質的に平行な平面内で膜を約1:1~約5:5の延伸比で延伸することによって二軸配向されている、請求項1に記載の多成分誘電体膜。
【請求項9】
請求項1に記載の多成分誘電体膜を備えるエネルギー貯蔵デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2018年7月19日に出願された米国仮出願第62/700,558号の優先権を主張し、その主題は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、多成分層状誘電体膜、ならびにコンデンサおよび他のエネルギー貯蔵デバイスにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
コンデンサは、金属化された、または金属箔電極間に維持されたポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフェニレンオキシド、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリフェニレンサルファイド等の熱可塑性誘電体薄膜ポリマーを使用する。金属化膜コンデンサは、エアコン、蛍光灯および高輝度ライトバラスト、電源、電気通信機器、計装、医療用電子機器のモーター運転およびモーター始動回路を含む幅広い電気および電子機器で広範囲に使用されている。これらの用途の多くでは、金属化コンデンサを使用してエネルギーを貯蔵する。
【0004】
米国特許第8,611,068号は、誘電体膜を製造するためのポリマー材料の多層共押出しプロセスを記載している。この特許は、電荷を非局在化し、誘電特性を改善する層間の界面を形成する、異なる誘電特性を有するポリマーの交互する層を備える誘電多層ポリマー膜を開示している。この特許は、多層膜において、混和性または非混和性の2種以上のポリマーまたはそれらのブレンドを使用することを開示している。その後の膜の延伸も、誘電特性を改善することが教示されている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に記載の実施形態は、膜の誘電性能を著しく犠牲にすることなく膜の表面エネルギーを増強することができる膜表面改質を有する多成分層状誘電体膜に関する。膜の表面エネルギーの増強は、膜の外面への金属の接着および電極の付着を向上させ、それによりコンデンサおよびエネルギー貯蔵用途のための金属化および電極の適合性を改善することができる。
【0006】
いくつかの実施形態において、多成分層状誘電体膜は、少なくとも部分的に重複して個別の重複誘電体層を画定する複数の個別のポリマー層を含み得る。複数の個別のポリマー層は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の個別の重複誘電体層を画定する第1のポリマー層、第2のポリマー層、および任意選択で第3のポリマー層を含み得る。
【0007】
膜の表面エネルギーを増強して、金属化および膜への電極の付着を改善するように、膜の外面(例えば、上面および/または下面)を改質することができる。いくつかの実施形態において、膜の外面は、外側の層と同じまたは異なるポリマーの追加の層で改質され得る。外側の層を追加して、膜の表面エネルギー特性を改善することができる。他の実施形態において、膜の外面は、膜の表面エネルギーを改善するために、コロナ処理またはUV光化学等の表面処理技術で改質され得る。
【0008】
いくつかの実施形態において、改質膜は、少なくとも約30ダイン/cm、少なくとも約35ダイン/cm、少なくとも約40ダイン/cm、または少なくとも約45ダイン/cmの表面エネルギーを有し得、少なくとも約700MV/m、少なくとも約750MV/m、約800MV/m、少なくとも約850MV/m、少なくとも約900MV/m、少なくとも約950MV/m、または少なくとも約1000MV/mの破壊強度を有し得る。
【0009】
いくつかの実施形態において、多成分層状誘電体膜は、異なる個々の層の厚さを有する勾配層構造または層のパケットを有し得る。膜はまた、複数のそのようなパケットを含み得、層の各パケットは、2つ以上の層の厚さの変化を含む。
【0010】
他の実施形態において、多成分層状誘電体膜は、個別の重複誘電体層のスタックを含み得る。誘電体層のスタックは、少なくとも第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および任意選択で第3のポリマー材料を含み得る。スタックの隣接する誘電体層は、それらの間に、概してxyz座標系のxy平面にある略平面の界面を画定し得る。誘電体層間の界面は、層内に蓄積された電荷を非局在化し、従来技術の誘電体膜と比較して増強された破壊強度および低減された損失を提供することができる。
【0011】
いくつかの実施形態において、誘電体層の少なくとも1つは、xy平面を横切って延在するポリマー層界面を有する別個のポリマー層のスタックを含み得、任意選択で、少なくとも1つの非ポリマー充填剤は、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料および/または第3のポリマー材料よりも高い誘電定数を有する。
【0012】
他の実施形態において、誘電体層の少なくとも1つは、約1体積%~約50体積%の非ポリマー充填剤または2つ以上の非ポリマー充填剤もしくは粒子サイズのブレンドを含み得る。非ポリマー充填剤は、粒子、繊維、または他の材料、例えばSrTiO、ZrO、HfO、Y2O、CaCuTi12、LaAlO、BaTiO、SiO、TiO、La、Al、カーボンブラック、グラフェン、もしくはカーボンナノチューブ、またはそれらの改質物の少なくとも1つを含み得る。
【0013】
他の実施形態において、誘電体層の少なくとも1つは、2種以上のポリマーのブレンドまたは混合物を含み得る。2種以上のポリマーは、ポリマー混合物またはブレンドの押し出しを可能にするために、互いに実質的に混和性であり得る。
【0014】
いくつかの実施形態において、多成分誘電体膜は、多層共押出強制組立プロセスにより製造された、約2~約500,000の交互する第1の誘電体層および第2の誘電体層を含み得る。
【0015】
いくつかの実施形態において、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料から形成された第1の誘電体層は、第3のポリマー材料から形成された第2の誘電体層よりも大きい誘電率を有し得る。他の実施形態において、第3のポリマー材料から形成される第2の誘電体層は、より大きな破壊強度と、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料から形成される第1の誘電体層とを有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明の前述および他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の説明を読むことにより、本発明が関連する技術分野の当業者に明らかとなるであろう。
図1】一実施形態による多成分層状誘電体膜の概略図である。
図2】別の実施形態による多成分層状誘電体膜の概略図である。
図3】別の実施形態による多成分層状誘電体膜の概略図である。
図4】一実施形態による多成分層状誘電体膜を形成するために使用される共押出および層増倍プロセスの概略図である。
図5図8の複合膜上にスキン層を共押出しして複合ストリームを形成する概略図である。
図6図5の複合ストリームの追加の層増倍ステップの概略図である。
図7】一実施形態によるコンデンサの概略図である。
図8】異なる層構造を有する多成分層状誘電体膜を比較して、異なる最外層および構造を実現する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載の実施形態は、膜の誘電性能を著しく犠牲にすることなく膜の表面エネルギーを増強することができる膜表面改質を有する多成分層状誘電体膜に関する。膜の表面エネルギーの増強は、膜の外面への金属の接着および電極の付着を向上させ、それによりコンデンサおよびエネルギー貯蔵用途のための金属化および電極の適合性を改善することができる。
【0018】
多成分層状誘電体膜は、少なくとも部分的に重複して個別の重複誘電体層を画定する複数の個別のポリマー層を含む。複数の個別のポリマー層は、1つ、2つ、3つ、またはそれ以上の個別の重複誘電体層を画定する第1のポリマー層、第2のポリマー層、および任意選択で第3のポリマー層または追加のポリマー層を含み得る。
【0019】
膜の表面エネルギーを増強して、金属化および膜への電極の付着を改善するように、膜の外面(例えば、上面および/または下面)を改質することができる。いくつかの実施形態において、膜の外面は、外側の層と同じまたは異なるポリマーの追加の層で改質され得る。外側の層を追加して、膜の表面エネルギー特性を改善することができる。他の実施形態において、膜の外面は、膜の表面エネルギーを改善するために、コロナ処理またはUV光化学等の表面処理技術で改質され得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、改質膜は、少なくとも約30ダイン/cm、少なくとも約35ダイン/cm、少なくとも約40ダイン/cm、または少なくとも約45ダイン/cmの表面エネルギーを有し得、少なくとも約700MV/m、少なくとも約750MV/m、約800MV/m、少なくとも約850MV/m、少なくとも約900MV/m、少なくとも約950MV/m、または少なくとも約1000MV/mの破壊強度を有し得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、多成分層状誘電体膜は、誘電体層と比較して増強された表面エネルギーを有する、個別の重複誘電体層および外層のスタックを含み得る。誘電体層のスタックは、少なくとも第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および任意選択で第3のポリマー材料を含み得る。スタックの隣接する誘電体層は、それらの間に、概してxyz座標系のxy平面にある略平面の界面を画定し得る。誘電体層間の界面は、層内に蓄積された電荷を非局在化し、従来技術の誘電体膜と比較して増強された破壊強度および低減された損失を提供することができる。
【0022】
いくつかの実施形態において、誘電体層の少なくとも1つは、xy平面を横切って延在するポリマー層界面を有する別個のポリマー層のスタックを含み得、任意選択で、少なくとも1つの非ポリマー充填剤は、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料および/または第3のポリマー材料よりも高い誘電定数を有する。
【0023】
他の実施形態において、多成分層状誘電体膜は、異なる個々の層の厚さを有する勾配層構造または層のパケットを有し得る。膜はまた、複数のそのようなパケットを含み得、層の各パケットは、2つ以上の層の厚さの変化を含む。層構造は、外側の層と同じまたは異なるポリマーの追加の層とともに存在し得る。外側の層を追加して、表面エネルギーを改善し、膜への金属の接着を強化することができる。
【0024】
図1を参照すると、表面改質多成分層状誘電体膜10は、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料の第1の誘電体層12、ならびに第3のポリマー材料の第2の誘電体層14、ならびに第4のポリマー材料の外層20および22を含む。第1の誘電体層12および第2の誘電体層14の隣接する表面16および18は、それらの間に、概してxyz座標系のxy平面にある略平面の界面を画定する。例えば、第1の誘電体層12および第2の誘電体層14は、第1の誘電体層12および第2の誘電体層14の隣接する表面が隣接する層12と14との間の水平平面界面を画定するように垂直にスタックされ得る。第1の誘電体層12は、xy平面を横切って、または第1の誘電体層12および第2の誘電体層14により画定される垂直スタックに対して水平に延在するポリマー層界面を有する個別のポリマー層のスタックを含み得る。
【0025】
いくつかの実施形態において、個別のポリマー層24のスタックは、第1のポリマー材料および第2のポリマー材料の交互する第1のポリマー層26および第2のポリマー層28み得る。第1のポリマー層26の第1のポリマー材料および第2のポリマー層28の第2のポリマー材料は、異なる組成を有し得るか、または異なるポリマーから形成され得る。第2の誘電体層の第3のポリマーは、第1のポリマーおよび第2のポリマー材料とは異なる組成を有し得るか、または異なるポリマーから形成され得る。
【0026】
いくつかの実施形態において、スタックの隣接する第1のポリマー層26および第2のポリマー層28は、それらの間に略平面の界面30を画定し得る。ポリマー層界面30は、xy平面に実質的に垂直に延在するものとして示されているが、それらは他の構成を有することができることが理解されよう。
【0027】
第1の誘電体層12および第2の誘電体層14を形成するために使用されるポリマー材料は、望ましい誘電特性および電気的破壊に対する障壁として作用する絶縁特性を有するポリマーを含み得る。一例において、第1の誘電体層12に形成された第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、高い誘電率(例えば、第2のポリマー材料の誘電率よりも大きい)を有するように選択され得るが、高い絶縁耐力を有する必要はない。第2の誘電体層に形成された第3のポリマー材料は、高い破壊強度(例えば、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料の破壊強度よりも大きい)を有するように選択され得る。第1の誘電体層と第2の誘電体層との間の界面は、層内に蓄積された電荷を非局在化し、従来技術の誘電体膜と比較して増強された破壊強度および低減された損失を提供することができる。
【0028】
最外層20および22の第4のポリマーは、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および第3のポリマー材料とは異なってもよく、再外装32および34を有する交互する第1のポリマー材料の第1のポリマー層26および第2のポリマー材料の第2のポリマー層28から形成された膜と比較して、膜の表面エネルギーを改善または実質的に改善するように選択され得る。
【0029】
多成分層状誘電体膜の外層または最外層を形成するために使用される第4のポリマー材料は、誘電体膜への金属接着を改善するために膜の表面エネルギーを増強または改善することができる任意のポリマー材料を含み得る。外層を形成するために使用されるポリマー材料は、第1の誘電体層および第2の誘電体層を形成するために使用される第1のポリマー材料よりも高い表面エネルギーを有し得る。
【0030】
図2は、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および第3のポリマー材料の複数の交互する第1の誘電体層42および第2の誘電体層44、ならびに第4のポリマー材料の外層46および48を含む多成分層状誘電体膜40を示す。第1の誘電体層42および第2の誘電体層44は、実質的に平行かつ垂直にスタックされ得、その結果、各第1の誘電体層42は、第2の誘電体層44の少なくとも1つに隣接し、各層間の界面50を画定する。第1の誘電体層42は、誘電体層の界面50に対して垂直または横方向の界面58を有する第1のポリマー層54および第2のポリマー層56の水平スタック52を含み得る。第2の誘電体層44は、第3のポリマー層60によって画定され得る。誘電体層42および44の各界面50、ならびに/または誘電体層42および44の界面50の組み合わせは、層42および44ならびに多成分膜40に蓄積された電荷を非局在化して、コンデンサ用途に使用された場合、電極の電荷貯蔵を増加させることができる。
【0031】
第4のポリマー材料の外層46および48は、誘電体膜への金属接着を改善するために膜の表面エネルギーを増強または改善することができる任意のポリマー材料を含み得る。外層46および48を形成するために使用されるポリマー材料は、第1の誘電体層および第2の誘電体層を形成するために使用されるポリマー材料よりも高い表面エネルギーを有し得る。
【0032】
第1の誘電体層42、第2の誘電体層44、ならびに外層46および48、ならびに第1のポリマー層54、第2のポリマー層56、および第3のポリマー層60は、様々な厚さ、例えば、約5~約5000nmの厚さを有してもよく、これは多成分層状誘電体膜の電気的特性を調節するために容易に変化させることができる。図7に示されるようにコンデンサ内の膜316として使用される場合、第1の誘電体層、第2の誘電体層、および外層は電界に垂直であり、したがって、ポリマー材料によって示される絶縁破壊伝播に対する障壁を最大化することにより膜316の破壊電界または強度を最大化する。誘電体材料の最大貯蔵エネルギー密度は、実効誘電率に絶縁耐力の2乗を掛けたものに比例するため、多成分層状誘電体膜の最大貯蔵エネルギー密度は、純粋な状態のいずれかの成分ポリマーの最大貯蔵エネルギー密度を大幅に超えることができる。外層は、ポリマー層の誘電性能に悪影響を与えることなく、コンデンサの金属電極付着の金属化効率および効率を増強するために、第1の誘電体層および第2の誘電体層と比較して改善されたまたはより高い表面エネルギーを有することができる。
【0033】
任意選択で、図3に示されるように、第1の誘電体層、第2の誘電体層、および/または外層は、多層ポリマー誘電体膜の貯蔵エネルギー密度、破壊、および/または誘電率を改善するための1種または複数種の添加剤70を含み得る。例えば、第1の誘電体層および/または第2の誘電体層は、ホストポリマーの誘電特性(すなわち、耐放電性、破壊強度、および誘電率)を改善するために、約1体積%~約50体積%の非ポリマー充填剤または2つ以上の非ポリマー充填剤もしくは粒子サイズのブレンドを含み得る。非ポリマー充填剤は、SrTiO、ZrO、HfO、Y、CaCuTi12、LaAlO、BaTiO、SiO、TiO、La、Al、カーボンブラック、グラフェン、および/またはカーボンナノチューブ、ならびにそれらの改質物を含む、粒子、繊維、または金属酸化物粒子等の他の充填剤を含み得る。
【0034】
第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および任意選択で第3のポリマー材料は、膜の貯蔵エネルギー密度および破壊強度が最大になるように選択され得る。本発明の一態様において、第1の誘電体層を形成するために使用される第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、高い誘電率(例えば、第3のポリマー材料より高い誘電率)を有する、ガラス状、結晶性またはエラストマー性材料等の熱可塑性ポリマーを含み得る。第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料は、単一のポリマー、複合ポリマー材料、またはポリマーのブレンドを含み得る。本発明の一態様において、貯蔵エネルギー密度および誘電率は、第3のポリマー材料の貯蔵エネルギー密度および誘電率よりも実質的に大きくなり得る。
【0035】
別の態様において、第3のポリマー材料は、高い破壊強度(例えば、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料よりも高い破壊強度)を有する、ガラス状、結晶性またはエラストマー性材料等の熱可塑性物質を含み得る。第3のポリマー材料は、単一のポリマー、複合ポリマー材料、またはポリマーのブレンドを含み得る。本発明の一態様において、第3のポリマー材料の破壊強度は、第1のポリマー材料および/または第2のポリマー材料の破壊強度よりも実質的に大きくなり得、これは、純粋な成分ポリマーのいずれよりも高い最大貯蔵エネルギー密度および破壊強度を多成分膜に与えることができる。
【0036】
さらなる実施形態において、多成分層状誘電体膜の外層または最外層を形成するために使用される第4のポリマー材料は、誘電体膜への金属接着を改善するために膜の表面エネルギーを増強または改善することができる任意のポリマー材料を含み得る。外層を形成するために使用されるポリマー材料は、第1の誘電体層および第2の誘電体層を形成するために使用される第1のポリマー材料よりも高い表面エネルギーを有し得る。
【0037】
別の態様において、層構造は、層スタックのZ方向に沿った厚さの変化を構成し得る。膜は、異なる個々の層の厚さを有する勾配層構造または層のパケットを構成し得る。膜はまた、複数のそのようなパケットを含み得、層の各パケットは、2つ以上の層の厚さの変化を含む。
【0038】
他の実施形態において、多成分膜構造は、コロナ処理、UV架橋、硬化、または膜の表面エネルギーをさらに改善するための他の分子の吸収等の他の技術で処理され得る。
【0039】
当業者は、多種多様な熱可塑性ポリマー材料を使用して、本明細書に記載の多成分層状誘電体膜の第1の誘電体層、第2の誘電体層、および外層を形成することができることを容易に理解するであろう。そのような材料は、ガラス状ポリマー、結晶性ポリマー、およびエラストマーを含むが、これらに限定されない。
【0040】
「ポリマー」または「ポリマー材料」という用語は、本出願において使用される場合、少なくとも5000の重量平均分子量(Mw)を有する材料を意味する。好ましくは、ポリマーは有機ポリマー材料である。「オリゴマー」または「オリゴマー材料」という用語は、本出願において使用される場合、重量平均分子量が1,000~5,000未満の材料を意味する。そのようなポリマー材料は、ガラス状、結晶性、またはエラストマー性ポリマー材料であり得る。
【0041】
多成分層状誘電体膜の第1の誘電体層、第2の誘電体層、および外層を形成するために使用され得るポリマー材料の例は、無水マレイン酸改質ポリプロピレン(PPgMA);ポリエチレンナフタレートおよびその異性体、例えば2,6-、1,4-、1,5-、2,7-、および2,3-ポリエチレンナフタレート;ポリアルキレンテレフタレート、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、およびポリ-1,4-シクロヘキサンジメチレンテレフタレート;ポリイミド、例えばポリアクリルイミド;ポリエーテルイミド;スチレン系ポリマー、例えばアタクチック、アイソタクチック、シンジオタクチックポリスチレン、α-メチル-ポリスチレン、パラ-メチル-ポリスチレン;ポリカーボネート、例えばビスフェノールA-ポリカーボネート(PC);ポリ(メタ)アクリレート、例えばポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)およびポリ(メチルアクリレート)(「(メタ)アクリレート」という用語は、本明細書において、アクリレートまたはメタクリレートを示すために使用される);セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、および硝酸セルロース;ポリアルキレンポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、およびポリ(4-メチル)ペンテン;フッ素化ポリマー、例えばパーフルオロアルコキシ樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化エチレン-プロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデンおよびポリクロロトリフルオロエチレン、ならびにそれらのコポリマー;塩素化ポリマー、例えばポリジクロロスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよびポリ塩化ビニル;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアクリロニトリル;ポリアミド;ポリ酢酸ビニル;ポリエーテル-アミドを含む。誘電体層はまた、例えば、10~50重量%、好ましくは20~40重量%のアクリロニトリル、スチレン-エチレンコポリマーおよびポリ(エチレン-1,4-シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)(PETG)を含有するスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)等のコポリマーから形成され得る。追加の高分子材料は、アクリルゴム;イソプレン(IR);イソブチレン-イソプレン(IIR);ブタジエンゴム(BR);ブタジエン-スチレン-ビニルピリジン(PSBR);ブチルゴム;ポリエチレン;クロロプレン(CR);エピクロロヒドリンゴム;エチレンプロピレン(EPM);エチレン-プロピレン-ジエン(EPDM);ニトリルブタジエン(NBR);ポリイソプレン;シリコーンゴム;スチレンブタジエン(SBR);およびウレタンゴムを含む。追加の高分子材料は、ブロックまたはグラフトコポリマー、PLA、COC、ETFE、およびPFAを含む。
【0042】
さらに、個々の各層は、2つ以上の上記のポリマーまたはコポリマーのブレンドを含み得る。ブレンドの成分は、実質的に混和性または非混和性であり得る。
【0043】
一例において、第1の誘電体層は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)またはその誘導体、例えばポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)(P(VDF-HFP))、およびポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)またはそれらの複合材料等の高誘電率を有する第1のポリマー層および第2のポリマー層のスタックから形成され得る。第2の誘電体層は、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテラフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリ(p-フェニレンサルファイド)、それらのコポリマー、またはそれらの複合材料の第3のポリマー層から形成され得る。外層は、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリオキシメチレンで形成され得る。
【0044】
多成分層状誘電体膜中の第2のポリマー材料、第3のポリマー材料、および/または第4のポリマー材料に対する第1のポリマー材料の重量比または重量パーセントは、膜の誘電特性およびエネルギー密度特性を調整するために、第1の誘電体層、第2の誘電体層、および/または外層の厚さを変えることによって調節することができる。さらに、第1のポリマー層、第2のポリマー層、第3のポリマー層、および/または外層を形成するために使用されるポリマーの重量比または重量パーセントは、膜の誘電性、エネルギー密度、および表面エネルギー特性を調整するために、第1のポリマー層、第2のポリマー層、第3のポリマー層、および/または外層の厚さを変えることによって調節することができる。
【0045】
しかしながら、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、第3のポリマー材料、および/もしくは第4のポリマー材料の特定の構成成分もしくは濃度、または本明細書に記載の多成分層状誘電体膜中の任意の構成成分は、様々な用途に合わせて高分子誘電体の特性を調整するために調節され得ることが理解される。例えば、植込み型除細動器の場合、高いエネルギー密度および高い絶縁破壊電圧が必要である。その場合、本明細書に記載の例に示されるように、エネルギー要件に対してPVDFおよびPMMA含有量を最大化し、それに応じてそれをPCとバランスさせて、PVDFおよびPMMAの不十分な電気的特性を安定させる必要がある。しかしながら、単にエネルギー密度以外のいくつかの望ましい特性を得るためには、PVDFおよびPMMAの濃度を下げることが必要となり得る。
【0046】
多成分層状誘電体膜は、多成分層状誘電体膜の表面エネルギーを増強するために、少なくとも2つの個別の誘電体層(すなわち、第1の誘電体層および第2の誘電体層)、例えば、第1の誘電体層と第2の誘電体層との間で交互する少なくとも10の誘電体層、および任意選択で2つの外層を含む。多成分層状誘電体膜における層数は、好ましくは約2~約100,000の範囲内であり、より好ましくは約10~約10,000の範囲内であり、これらの範囲内の任意の増分を含む。多成分層状誘電体膜は、第1の層と第2の層との間で交互する最大約500,000の層を含み得る。
【0047】
多成分層状誘電体膜の垂直誘電体層および外層は、例えば、約5ナノメートル(nm)~約1,000マイクロメートル(μm)の範囲内の厚さを有し得る。第1の誘電体層および第2の誘電体層の厚さは、最終的な多成分層状誘電体膜が、ナノメートル、マイクロメートル、およびセンチメートルスケールで階層構造または勾配構造を有し得るような厚さである。多成分層状誘電体膜に採用されている第1の誘電体層および第2の誘電体層の数、ならびに各層の厚さは、膜のエネルギー密度および破壊強度が最大になるように選択され得る。外層の厚さもまた、誘電性能を犠牲にすることなく誘電体膜の表面エネルギーを増強するように選択され得る。
【0048】
いくつかの実施形態において、誘電体層の水平ポリマー層は、例えば、約5ナノメートル(nm)~約500マイクロメートル(μm)の範囲内の厚さを有し得る。第1のポリマー層および第2のポリマー層の厚さは、最終的な多成分層状誘電体膜が、ナノメートル、マイクロメートル、およびセンチメートルスケールで階層構造を有し得るような厚さである。各誘電体層の水平ポリマー層の数および各ポリマー層の厚さは、膜のエネルギー密度および破壊強度が最大になるように選択され得る。
【0049】
多層誘電体膜はまた、第1の誘電体層および第2の誘電体層に加えて他のポリマー層を含み得る。これらの他の誘電体層には、貯蔵エネルギー密度、破壊、および誘電率を変更するために、第1の誘電体層および第2の誘電体層が散在し得る。一例において、多成分層状誘電体膜が交互層(ABCABCABC・・・)または(ABC)x(xは少なくとも5である)の3成分構造を有するように、第1の層(A)、第2の層(B)、および追加(すなわち第3の)層を交互にすることができる。第1の層、第2の層、および第3の層は、(CACBCACBC・・・)等の任意の数の異なる成分の層を提供することができることが理解されよう。
【0050】
図4~6に示されるいくつかの実施形態において、多成分誘電体膜は、第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および第3のポリマー材料を共押出して、重複する第1のポリマー層、第2のポリマー層、および第3のポリマー層を形成することによって調製され得る。第1のポリマー材料、第2のポリマー材料、および第3のポリマー材料は、別個または個別の層を画定するために、共押出しの間実質的に非混和性であり得る。
【0051】
重複層を増倍して、第3のポリマー材料の第2の誘電体層の間に散在する第1のポリマー層および第2のポリマー層の水平スタックの第1の誘電体層を形成することができる。いくつかの実施形態において、重複層を増倍することは、重複層の流れをダイを通して水平に切断することによる重複する第1のポリマー層および第2のポリマー層の垂直層増倍、垂直層増倍により形成された垂直層の上面および下面への重複ポリマー層の表面層化、ならびに表面層状垂直スタックの一方の側面部分を第2の側面部分にスタックする表面層状垂直層の水平層増倍を含む。いくつかの実施形態において、垂直層の増倍が8回繰り返されて、1024の交互する512層の第1の層および512層の第2の層で構成される垂直層が得られる。
【0052】
図4は、多成分層状誘電体膜110を形成するために使用される共押出しおよび増倍プロセスを示している。まず、第1のポリマー層112および第2のポリマー層114が提供される。第1の層112は、第1のポリマー材料(a)から形成され、第2のポリマー層14は、第2のポリマー材料(b)から形成される。第2のポリマー材料(b)は、実質的に非混和性であり得、共押出しされた場合、第1の材料(a)と同様の粘度を有し得る。多成分層状誘電体膜110を製造するために、ポリマー材料(a)もしくは(b)または異なるポリマー材料から形成された1つまたは複数の追加の層を提供することができることが理解されよう。
【0053】
図4を参照すると、多層ポリマー複合膜110を形成するために、層112、114が共押出しされ、増倍される。特に、ダイの対140、150は、層112、114を共押出し、増倍させるために使用される。各層112、114は、最初に、xyz座標系のy方向に延在する。y方向は、層12、14の長さを画定し、ダイ140、150を通る材料の流れの全体的方向に延在する。x方向は、y方向に対して横方向、例えば垂直に延在し、層112、114の幅を画定する。z方向は、x方向およびy方向の両方に対して横方向、例えば垂直に延在し、層112、114の高さまたは厚さを画定する。
【0054】
層112、114は、最初にz方向にスタックされ、xy平面に存在するそれらの間の界面120を画定する。層112、114が第1のダイ140に近づくと、それらは、z軸に沿って互いに分離されて、それらの間に空間122を画定する。次いで、層112、114は、それらが第1のダイ140を通過するときに再配向される。より具体的には、第1のダイ140は、層112、114がz方向に縦に延在するように、各層112、114のアスペクト比を変化させる。層112、114はまた、それらがyz平面に存在するインターフェース124に沿って互いに係合または隣接するまで、互いに接近させられる。
【0055】
次いで、層112、114は、層の増倍が行われる第2のダイ150に入る。第2のダイ150は、層112、114を連続して処理する単一のダイまたは複数のダイを構成し得る(図示せず)。各層112、114は、第2のダイ150において増倍されて、互いに交互になって多層ポリマー複合膜10を形成する複数の第1の層112および複数の第2の層114を生成する。層112、14の各対は、yz平面に存在するインターフェース124を含む。層112、114は、概してx軸に沿って互いに接続されて、ポリマー材料(a)、(b)の一連の個別の交互する層112、114を形成する。各層112および114の3つが示されているが、多層ポリマー複合膜110は、例えば、最大数千の各層112、114を含み得ることが理解されよう。
【0056】
図5を参照すると、多層ポリマー複合膜110が形成されると、膜110がダイ160に入り、膜110がz軸に沿って2つの外層130の間に挟まれて第1の複合ストリーム200を形成するように、外層10が膜110の上部および下部に適用される。外層130は、ポリマー材料(a)、ポリマー材料(b)、またはポリマー材料(a)および材料(b)とは異なるポリマー材料(c)から形成され得る。
【0057】
図6を参照すると、第1の複合ストリーム200は、x軸に沿って複数の分岐ストリーム200a、200bに分割され、一対の増倍ダイ170、180を介して処理される。ダイ170において、ストリーム200a、200bは、z方向にスタックされ、x方向およびy方向の両方に延伸され、再結合されて、外側の誘電体層130と交互する複数の誘電体交互ポリマー層210を含む第2の複合ストリーム210を形成する。分岐ストリーム200a、200bのx方向およびy方向への二軸延伸は、対称的または非対称的であり得る。
【0058】
ダイ180は、ダイ170が分岐ストリーム200a、200bに対して実行したのと同様の変更を第2の複合ストリーム210に対して実行する。特に、ダイ180において、第2の複合ストリーム210は、x軸に沿って分割され、z軸に沿ってスタックされ、x方向およびy方向の両方に延伸され、z方向にスタックされて、第3の複合ストリーム220を形成する。図3に示される第3の複合ストリーム220は、5つの外側誘電体層130と交互する4つの多層誘電体膜10を含むが、より多い、またはより少ない膜110および/または層130が第3の複合ストリーム220に存在してもよい。いずれにしても、第3の複合ストリーム220は、層112、114の間に複数の層インターフェース124を含む。ダイ170、180を通るポリマー層112、114の体積流量を変更することにより、ポリマー層112、114および各多層誘電体膜110の両方のz方向の厚さが正確に制御され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、多成分層状誘電体膜が形成されると、増強された表面エネルギーを有する外面層を、スタックされた膜の上面および下面に適用することができる。外面層は、スタックされた膜の上面または下面にラミネートするか、または共押出プロセス中にインラインで追加することができる。外層は、多成分層状誘電体膜の金属化を増強するために、ポリマー材料(a)、ポリマー材料(b)、またはポリマー(a)および/もしくはポリマー(b)より高い表面エネルギーを有するポリマー材料(a)および材料(b)とは異なるポリマー材料(c)から形成され得る。
【0060】
他の実施形態において、多成分層状誘電体膜が形成されると、多成分層状誘電体膜の外面は、多成分誘電体膜の表面エネルギーを増強するために、コロナ処理等のプロセスによって改質され得る。
【0061】
いくつかの実施形態において、そのように形成された多成分層状誘電体膜の第1の表面層および反対の第2の表面層を、アルミニウム等の適切な金属の第1の層および第2の層で金属化して、第1の電極および第2の電極を形成することができる。第1の金属層および第2の金属層は、約5nm~約500nmの厚さを有することができ、例えば従来の金属化技術によって形成することができる。
【0062】
別の実施形態において、多成分層状誘電体膜の誘電特性は、軸方向配向(例えば延伸)、圧力、張力、圧縮もしくは剪断応力、またはこれらの応力の組み合わせによって機械的に変化させることができる。上で指摘されたように、複合材料は、成分ポリマーの一方または両方がエラストマーであるように製造され得る。膜の表面に平行な少なくとも一方向における多成分層状誘電体膜の軸方向配向は、いくつかの場合において、膜の破壊強度を増加または改善し得る。一例において、多成分層状誘電体膜は、膜の破壊強度を増加させるのに効果的な延伸比で膜の表面に実質的に平行な平面内で膜を延伸することによって二軸配向され得る。二軸配向多層ポリマー誘電体膜の延伸比は、約1:1~約5:5であり得る。膜は、膜を少なくとも2方向に延伸することによって二軸配向され得るが、膜はまた、一方向に延伸する(例えば一軸配向)され得るか、または複数方向に延伸され得る(例えば三軸配向)ことが理解されよう。
【0063】
適切な初期材料を選択し、ポリマー材料、ポリマー材料の層の数、および層の厚さを調整することにより、多成分層状誘電体膜の多くの設計が可能である。
【0064】
この多層技術を用いて非常に薄い金属化膜コンデンサを設計し、バルクコンデンサシステムからの前例のないエネルギー密度の可能性とともに、(例えば、ホモポリマーPVDFと比較して)安定した誘電定数、ひいては電圧による安定した静電容量、改善された絶縁抵抗およびクリアリングまたは自己修復能力、より低いリーク電流、ならびにより高い電圧破壊を有するデバイスの達成を可能にすることができる。著しく高い性能値(エネルギー密度、信頼性、重量)は、大量生産が採用される場合、性能の単位あたりの著しく低いコストと一致すると予想される。本発明の方法論は、例えば、植込み型除細動器の製造、およびエネルギー密度がプレミアムを与えられる他の多くの高パルス出力用途に非常に適している。
【0065】
表面改質された多成分層状誘電体膜は、高い誘電定数、改善された安定性、改善された散逸率、改善されたクリアリング能力、改善された金属化、高い破壊電圧を提供し、これによりコンデンサ用途に非常に適したものとなる。例えば、図7は、本出願の実施形態によるコンデンサ310の概略図を示している。コンデンサ310は、第1の電極312、第2の電極314、および多成分層状誘電体膜316を含む。多成分層状誘電体膜316は、第1の表面320と、第1の表面320から分離され、それと実質的に平行である第2の表面322とを含む。多成分層状誘電体膜は、第1の電極312が第1の表面320上に提供されて第1の表面320と接触し、第2の電極14が第2の表面322上に提供されて接触するように、第1の電極312と第2の電極314との間に挟まれている。第1の電極312は、第1の電源に結合され得、第2の電極14は、第2の電源302に結合され得る。第1の電源Vおよび第2の電源Vは、電極312および314に様々なバイアス電圧を印加することができる電圧源324に結合され得る。
【0066】
この膜は、膜コンデンサの用途に特に適しているが、いくつかの他の用途を挙げると、電気ケーブル、磁気テープ、セキュリティおよびその他の目的の光学膜、圧電センサー、食品包装等にも役立つ。
【0067】
本発明は、限定的であると解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。本出願を通して引用されたすべての参考文献、特許出願、特許、および公開された特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0068】
この実施例では、図8に示されるように、共押出技術を使用して多成分多層膜を作製し、さまざまな膜構造を形成した。多成分構造は、異なる誘電特性を有するポリマーAおよびBの層状構造を構成し得る。典型的な多層膜構造では、AもしくはB、または両方のポリマーが膜の最外層として存在する。表面エネルギーを含む全体的な表面特性は、外層の影響を強く受ける。実証された革新では、最外層がこの新しいポリマーを構成するように、所望の表面エネルギーを有する第3のポリマーを図8に示すように膜構造に加えることができる。新しいポリマーの存在は、誘電性能を著しく犠牲にすることなく、膜の表面エネルギーに影響を与える。
【表1】
【0069】
表1を参照して、誘電特性を評価するために、様々な幾何学的構造を有する膜を製造した。ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリオキシメチレン等の第3のポリマーを含むポリカーボネート(PC)およびポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜を製造した。層状構造の成分としてPPを含む膜の例は、膜の表面エネルギー特性を改善しながら、膜の全体的な誘電性能に影響を与えなかった。膜の全体的な破壊強度は、PC/PVDF膜システムと比較して大幅に変化しなかったが、PVDFコントロール膜よりも大幅に優れていた。膜の誘電定数は、組成に応じて変化した。成分ポリマーの比率を変えることにより、システムの誘電率をさらに変えることができる。この第3のポリマーは、ラミネーション、ポリマー堆積、または溶媒キャスティング等のいくつかの技術により、共押出プロセス中または製造後にインラインで追加され得る。表面エネルギーは、コロナ処理またはUV光化学等の他の表面処理技術によっても改質され得る。
【0070】
本発明の好ましい実施形態を例示および説明してきたが、本発明はこの実施形態に限定されないことが理解されるべきである。添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲から逸脱することなく、多数の修正、変更、および変形が当業者に明らかであろう。多層ポリマー誘電体膜は、主に除細動器、車両電源システム、パルス電源アプリケーション、掘削システム等のデバイス用の膜コンデンサに使用することを意図しているが、従来の膜コンデンサおよび電池と比較してより高い動作温度、より高い効率、より速い充電時間、およびより多くの充放電サイクルが望ましいいかなる場所にも使用され得る。
【0071】
本発明の上記の説明から、当業者は、改善、変更および修正を認識するであろう。当業者の範囲内のそのような改善、変更および修正は、添付の特許請求の範囲によってカバーされることが意図されている。本出願で引用されるすべての参考文献、刊行物、および特許は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8