(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】呼気湿度を測定する装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/08 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61B5/08
(21)【出願番号】P 2021526471
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 GB2019053225
(87)【国際公開番号】W WO2020099874
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-07
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521207298
【氏名又は名称】エクスハレイション テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘレ フォンク-ニールセン
【審査官】藤原 伸二
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-524267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073183(US,A1)
【文献】国際公開第2018/017699(WO,A1)
【文献】特開2016-075533(JP,A)
【文献】特表2011-504235(JP,A)
【文献】特表2010-528684(JP,A)
【文献】特表2010-534333(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/08-5/097
G01N 33/497
G01N 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気湿度を測定する装置であって、
内管容積を規定する管状体と、
前記内管容積に流体接続された注入口と、
前記管状体の第2の端部に流体接続されて呼気を受ける凝縮プレートと、
第1の端部と前記第2の端部の間にあり、前記内管容積を第1及び第2のチャンバに分割する隔壁であって、前記第2のチャンバは前記凝縮プレートへの流体アクセスを提供し、呼気を前記第1のチャンバから前記第2のチャンバにそれを通じて可能とする一方向弁を有する隔壁と、
を備え、
前記第1のチャンバの前記管状体の壁における1以上の開口であって、該開口又は各開口が、前記呼気における相対湿度以外の前記呼気のパラメータを測定する第1のセンサを前記第1のチャンバに流体結合する、1以上の開口と、
前記第2のチャンバに流体結合された相対湿度センサである第2のセンサと、
をさらに備える装置。
【請求項2】
前記第1のセンサは、CO
2センサである、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1のセンサは、エアフローセンサである、請求項1
又は請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1のセンサは、過酸化水素センサである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1のセン
サは、前記装置に取付け可能である取外し可能なハウジングに収納された、請求項1から
4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記凝縮プレートを冷却するペルチェピースタイプ冷却手段を含む請求項1から
5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
ヒータプレートが、前記ペルチェピースとともに冷却配置で収納された、請求項
6に記載の装置。
【請求項8】
前記ヒータプレートにわたってエアを吸引するように配置されたファンを含む請求項
7に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が正しい向きで保持されていることを判定する、又は、使用中の前記装置のいずれの移動も判定する加速度計を含む請求項1から
8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記第2のチャンバは、呼気を前記装置から排出する流体排出口を有する、請求項1から
9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記第2のチャンバは、前記凝縮プレート上に呼気を集中させるための方向付け手段を含む、請求項1から
10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記方向付け手段は、傾斜内壁である、請求項
11に記載の装置。
【請求項13】
プロセッサであって、前記相対湿度センサ及び
前記第1のセンサからデータを受信し、前記データを処理して、呼気凝縮液の過酸化水素濃度、一酸化窒素分画濃度、又はpHを呼気相対湿度で除することで定義される複合Helleスコアを導出するプロセッサを含む請求項1から
12のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、呼気湿度を測定するための装置、特に、他のパラメータも測定可能な装置に関し、呼気湿度測定は単独で使用又は他のパラメータと併用され、測定値は肺疾患を含む疾患の識別、トリアージ及び長期的追跡に使用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、呼気湿度を測定するための装置、及び病状の判定であって、ウマ、イヌなどの動物を含むが特にヒトの容態の判定のための測定の使用に関する。
【0003】
呼気湿度の測定は、肺疾患を含む疾患の識別、トリアージ及び長期的追跡のために使用され得る。また、呼気湿度の測定値を多数の他の呼気パラメータと組み合わせることによって、患者をトリアージ又は患者の医学的容態を追跡する際の臨床的精度が向上し得る。
【0004】
発明は、具体的には呼気に使用するためのものであり、肺胞による、中枢による、及び肺のデッドボリュームとして従来から知られているものによる呼気の相対量を部分的に決定する。呼気の湿度は、絶対的及び/又は相対的な用語で表現可能であり、独立した測定値として使用され、又は呼気凝縮液の測定、呼気の気相の測定、呼気の蒸気相及び/若しくは気相内の構成要素の測定、呼吸量、呼息速度、強制エア手技、呼気温度などを含む他のいくつかの呼気パラメータと併用され得る。呼気湿度と併せて測定可能な気相及び蒸気相の構成要素又はそれら構成要素の特性の例は、pHと、糖類と、グルコースと、ケトンと、カチオンと、アニオンと、一酸化窒素、過酸化水素、酸素、二酸化炭素、一酸化炭素などのような小分子とを含む。さらに、癌などの他の病状の「マーカー」も、決定可能である。
【0005】
呼気湿度の測定値は、組合せ装置において又は分離した装置を使用して、他の呼気パラメータと並行して又は順に測定され得る。
【0006】
健常な人口集団内では、呼気湿度の測定値は、ヒトの総体内含水量の指標であり、ヒトの水分補給レベルの指標として使用可能である。呼気湿度の値は、より正確な臨床的決定のために他の呼気パラメータと分離して、比較され又は組み合わされて使用され得る。
【0007】
本出願人の名義における先行出願の特許文献1では、呼気の効率的な収集、特に、その後の分析に誤差をもたらし得る揮発性成分を最小損失に抑えた収集を可能とする装置が記載されている。呼気サンプルは凝縮されると、分析に利用可能となる。しかしながら、装置は呼気の湿度を測定できず、この装置が使用された場合には、患者及び臨床医に対して患者の呼気湿度を知ることの臨床的有用性は失われる。
【0008】
先行技術文書の特許文献2は、所定容積のサンプルが採取されるまで呼気を凝縮する方法を記載しているが、これでも呼気湿度は分からず、患者が適量の凝縮液を提供するにはどれ程の時間を要するかを知る方法はない。呼気湿度とともに呼気温度、呼気流速などのパラメータを知ることにより、一定容積の呼気凝縮液を収集するのに必要な時間が計算可能であり、それは呼吸時間、呼吸数などに基づく任意の設定点の使用を回避する。呼気凝縮液収集装置を充填する場合に、妥当な時間内に装置を充填できないのは珍しいことではなく、これは臨床医又は患者の知らないうちに、患者が低湿度の呼吸をしていたり、その後に凝縮される、装置を充填するのに十分な蒸気を単に送っていなかったりするからである。これらの被検体は、「ドライブリーザ」といわれることがある。
【0009】
我々の発明を記載する先行技術文書を検索したが見つからず、検討した文書は、特許文献3、特許文献4、特許文献5及び特許文献6を含む。
【0010】
特許文献3-この出願は、肺の容態モニタリング装置を開示し、CdSナノ粒子が、息を吐き出している間にヒトの湿度レベルの超高速検出を実行するための湿度検知の一部として使用される。
【0011】
特許文献4-開示の発明は、1回の呼気に含まれる生体ガスを分析し、続いて分析された生体ガスを通じて患者の呼吸器疾患をモニタリングする方法及び装置に関する。
【0012】
特許文献5-この文書で開示される装置は、水による陽イオン交換によって機能する(例えば、パーフルオロカーボンを利用する)1つの作用電極、及びカバーによって呼気から保護される基準電極の2つの電極を使用して、1回の呼吸又は複数回の呼吸の水分含有量を測定する。
【0013】
特許文献6-ここで装置は、(湿度などの)第1の呼気特徴、及び例示の実施形態ではケトンである特定の分析物などの第2の特徴を測定する。後者の測定は、ナノ粒子によるセンサを利用して得られる。
【0014】
患者は様々な呼気湿度レベルを有するものであり、例えば、健常コントロール群は、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)の患者群よりも高い呼気相対湿度を有するが、これらのCOPD患者に呼気測定を行う場合には、呼気湿度は未知であることから未制御のパラメータであることが多い。
【0015】
一酸化炭素、二酸化炭素、一酸化窒素などのような気相内の呼気の構成要素を測定する場合には、そのエアをフィルタ、スクラバ、除湿機などに通して、水蒸気を含む呼気の分画を意図的に除去するのが一般的である。この処理は知見なく行われることもあるので、除去は「偶然的」な場合がある。そして、これらの装置は、乾燥及び/又は処理された呼気サンプルにおける分子の濃度を報告する。これは、最初の呼気における分子の濃度と必ずしも同一ではないが、そのように報告及び解釈されることが多い。呼気における分析物の真の濃度は、呼気の湿度及び温度並びに気相と蒸気相の間の分子の区分けによって部分的に影響され、それは部分的に分子の各タイプに対して特異的である。呼気湿度を測定することによって、呼気湿度に対して呼気において測定された分析物の濃度を正規化することから、他の方法では制御されず又は未知の患者ごとの変数が減少し得るので、臨床的精度が向上する。
【0016】
現在、研究者及び臨床医は、疾患の識別、トリアージ及び長期的モニタリングの一環として、呼気のパラメータ及び/又は呼気における分析物を測定することに関心がある。現在使用されていないパラメータが、呼気湿度である。現行では、COPD患者に対して、彼らの診断及びケアの評価は、強制エア移動、一酸化窒素分画測定(FNO)、問診票及び呼気凝縮液(EBC)過酸化水素測定を含む一連のテストによって実行され得るが、呼気湿度の測定は日常的には行われていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第2173250号明細書
【文献】独国特許出願公開第19951204号明細書
【文献】国際公開第2018/061022号
【文献】国際公開第2018/101650号
【文献】米国特許出願公開第2017/360328号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/056302号明細書
【発明の概要】
【0018】
発明の第1の態様によると、呼気湿度を測定する装置が提供され、装置は、内管容積を規定する管状体と、内管容積に流体接続された注入口と、管状体の第2の端部に流体接続されて呼気を受ける凝縮プレートと、第1の端部と第2の端部の間にあり、内管容積を第1及び第2のチャンバに分割する隔壁であって、第2のチャンバは凝縮プレートへの流体アクセスを提供し、呼気を第1のチャンバから第2のチャンバにそれを通じて可能とする一方向弁を有する隔壁と、を備え、装置は、第1のチャンバの管状体の壁における1以上の開口であって、当該開口又は各開口がセンサを第1のチャンバに流体結合する、1以上の開口と、第2のチャンバに流体結合された相対湿度センサと、をさらに備える。
【0019】
好適には、当該センサ又は各センサはデータ記憶装置に結合されて、データは健康管理士に即時送信され又は分析され得る。
【0020】
選択的に、センサはCO2センサである。
【0021】
選択的に、センサは、装置が正しく使用されているかを判定する際に役立つエアフローセンサである。
【0022】
選択的に、センサは、過酸化水素を検出して、呼吸器の問題についての診断を可能とすることができる。
【0023】
好適には、装置が後続の患者によって使用され又は欠陥があれば交換され得るように、当該センサ又は各センサは、装置に取付け可能な、取外し可能なハウジングに収納されて容易な交換を可能とする。
【0024】
好適には、凝縮プレートは、ペルチェピースタイプ冷却手段によって冷却される。さらに好適には、ヒータプレートが、ペルチェピースとともに冷却配置で収納されて、凝縮プレートからの熱エネルギーの高速除去に役立つ。装置は、またさらに好適には、ヒータプレートにわたってエアを吸引して、装置から熱エネルギーを除去するファンを含む。
【0025】
装置は、分析を行う装置の要素の適切な機能を確保するように装置が安定して保持されているかを判断する加速度計を含むことが好ましい。
【0026】
第2のチャンバは、呼気を装置から排出するとともにいずれの乱流も最小化する流体排出口を有することが好ましい。
【0027】
第2のチャンバは、第2のチャンバに進入する呼気を凝縮プレート上に方向付けるように、さらに好適には傾斜台である方向付け手段を含むことが好ましい。
【0028】
発明を、呼気湿度及び他のパラメータを測定する装置の2つの実施形態を単に例として示す添付の図面に関して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】様々な呼吸器の容態の患者の
呼気湿度を示す。
【
図2】測定された
呼気湿度及び過酸化水素の値を組み合わせて示す。
【
図7a】装置内で使用するためのカートリッジホルダ及びカートリッジを示す。
【
図7b】装置内で使用するためのカートリッジホルダ及びカートリッジを示す。
【
図10a】呼気の測定パラメータのグラフ表示である。
【
図10b】呼気の測定パラメータのグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
ヒトの
呼気湿度は、ヒトが病気であることを立証可能な手段である。またさらに、
呼気湿度は、病気のカテゴリー分類内で人々を区別するのに使用可能であり、例えば、COPD患者は喘息患者とは分けられ得る。これを
図1で以下に説明する。
【0031】
図1では、COPD患者群の
呼気サンプルの測定された平均相対湿度(RH:relative humidity)は、健常患者群において測定された相対湿度よりも約15%低かった。簡単に言うと、COPD患者は、健常コントロール群に対して彼らの
呼気には概してより少ない水蒸気しかなかった。さらに、喘息患者群は、健常コントロール群とCOPD患者群との間の平均
呼気相対湿度を有することが分かる。
図1のデータは、155人以上の個体から得られ、
呼気相対湿度からCOPDと、喘息と、健常コントロールとの間で診断又はトリアージすることが可能であり得ることを示している。重要なことに、
呼気湿度は、強制エア移動、呼気凝縮液過酸化水素及び一酸化窒素分画(FNO:fractionated nitric oxide)などの他のパラメータと組み合わされた場合にのみさらに有用となる。
【0032】
図1のデータは、
呼気湿度が人物を健常又は肺疾患であるかを分類するにはそれ自体で十分であるが、平均相対
呼気湿度のおよその差は5%であるため、患者が例えばCOPDであるか又は喘息であるかを小分類するには問題がより多いことを示している。
呼気湿度が第2のパラメータと組み合わされると、患者をCOPD及び喘息などの更なる群にカテゴリー分類可能となり得る。例えば、呼気RHが呼気凝縮液(EBC:exhaled breath condensate)過酸化水素濃度とともに検査されると、COPD患者にはEBC過酸化水素濃度の中間値及び最低RHを有する明白なパターンがあり、一方、健常群は最低EBC過酸化水素濃度及び最高
呼気RHを有する。喘息群は、RHに中間値及びEBC過酸化水素濃度に最高値を有する(
図2参照)。
【0033】
説明したように、2個、3個又はそれ以上の
呼気パラメータが組み合わされて、患者をより良好に分類するスコア又はスケールを提供することが可能であり、例えば、EBC過酸化水素濃度を相対湿度で除算すると、喘息群とCOPD群との差は増幅される(表1参照)。
【表1】
【0034】
EBC過酸化水素をRHと組み合わせることによって、ここではHelleスコアというスコアが明確に示され、それはCOPD患者から喘息患者の分離を向上させる。呼気湿度の組合せは過酸化水素との組合せに限定されず、FNO、pHなどを呼気湿度と組み合わせることによって、更なる臨床的利点が期待され得る。この組合せは、装置に又は遠隔で含まれるプロセッサ(不図示)によって行われ得る。
【0035】
同様に、問診票による出力を呼気湿度と組み合わせることによって、臨床的に有用なスコア又はスケールが生成され得る。呼気測定及び呼気湿度によるスコア又はスケールの作成は、単純な数学的演算に限定されず、累乗、対数、三角関数などを含む他の演算子も個別に使用又は併用され得る。
【0036】
患者の呼気湿度を測定するために、装置は、装置が患者の口腔に嵌ることが可能でなければならないこと、装置が決められた経路に沿って呼気を誘導可能でなければならないこと、装置が口腔と呼気収集ゾーンの間のデッドスペースを最小化可能でなければならないこと、装置が湿度を測定可能でなければならないこと、装置が湿度センサを非呼吸性の蒸気及びエアロゾルから保護可能でなければならないこと、装置が周囲蒸気を含む周囲状況から湿度センサを遮断しなければならないこと、装置が唯一の発生源が呼吸器系である蒸気を測定可能でなければならないこと、最適には、装置は呼気温度も測定すべきであること、呼息が前回の呼息により残留しているエアを装置から移動させるように装置が作用すべきであることを含む多数の機能を有することが必要とされる。
【0037】
呼気湿度のいずれの測定に対しても潜在的な汚染の主な発生源はテスト対象患者の近傍内の周囲湿度であるため、
呼気湿度は、センサが周囲湿度から遮断されている密閉装置を使用してなされるべきである。さらに、湿度センサは口腔に対して約10cmの近さで近接すべきであり、そのセンサは、気道とは対照的に口腔内で生じる唾液エアロゾルなどの汚染から保護されるべきである(
図3参照)。
【0038】
図4a、4bは、
呼気湿度及び二酸化炭素レベル並びに他の多数のパラメータを測定可能な装置10のハンドヘルド式の実施形態の画像である。これらの図面には、例えば、過酸化水素、pH、グルコース、ケトン、窒素酸化物などをそこで判定可能とするマイクロ流体分析システムを組み込む交換可能なカートリッジ11を示す。
図7で詳述するカートリッジ11は、同一出願人に対する国際公開第2009/013450号で開示されたように、冷却皿などの冷却要素を含んで、
呼気の一部、通常は肺胞部分を収集可能である。
【0039】
装置10は、追加的にCO2センサ12を含み、それは例えば、近赤外センサである。凝縮プレート13は、プレート13に冷却を提供するペルチェピース(Peltier piece)14に隣接して位置する。ペルチェピース14の他方側には、ペルチェピース14に対してヒートシンクとして作用するヒートプレート15が位置する。ファン16は、装置10から不要な熱を奪うように作用し、特に、ヒートプレート15にわたってエアを通してヒートプレート15を冷却する。
【0040】
図5は、発明による装置20を概略的に示す。装置20は、ユーザが装置20内へ呼吸することを容易化するように設計されたエア注入口21を有する。したがって通常、注入口21は、呼気の大部分が装置20に進入することをユーザが確実に行えるようにプロファイルされる。注入口21は、装置20の異なるユーザごとに衛生状態を向上させる交換可能なマウスピースを含み、又はそれに結合され得る。
【0041】
注入口21は、カートリッジ11上で開口し、装置20自体に組み込まれたセンサ、例えばCO2センサにその後に導かれる分離したフローストリームに、呼気の一部が分配されるのも可能とする。センサは、ハウジング22内に位置する。使用されなかった呼気には、呼気の不要な乱流又は逆流を防ぐ出口23が設けられる。ハンドグリップ28は、ユーザが快適に息を吐くのに都合の良い位置に装置20を保持可能であるように設けられる。ハンドグリップ28は、健康施設内のデスクトップ装置として使用される場合又はそうでない場合でも、存在しなくてもよい。さらなる選択肢では、装置は、装置の使用時に柔軟性を与える取外し可能なハンドグリップを含むこともある。
【0042】
図6は、発明の実施形態による装置30の内部特徴を示す。装置30は、
呼気注入口31、及びユーザによる装置30の保持を可能とするハンドル34を有する。この実施形態では、ハンドル34は、排出口33及びハウジング32などの装置30の他の要素と一体形成される。ハンドル34の外面は、ユーザに装置の把持を容易にするように人間工学的にプロファイルされ得る。
【0043】
図7a、7bに示すカートリッジ11は、
呼気注入口31の近傍に位置する。カートリッジ11は、とりわけまず確実に、カートリッジ11の正しいロギングがなされ、ユーザに結合され得るように使用可能なRFIDタグ35を含む。さらに、タグ35は、カートリッジが依然として期限内であるかを判定可能なように、カートリッジの年代を確認することが可能である。カートリッジ11はまた、通常、種々のパラメータ及び分析物の決定を可能とするセンサ及びそれと関連する試薬を含むマイクロ流体アレイも備える。そのようなアレイは、本技術分野では周知されており、当業者には利用可能であり得る。
【0044】
装置30内には、多数の機能を有する加速度計36がある。第1に、加速度計36は、装置30が正しい向きで保持されていることを判定することができる。第2に、加速度計36は、使用中の装置30のいずれの移動の決定も可能である。これは、例えば、ユーザの手が震えているかを示すことができ、手の震えは装置30内の流体のフローに有害であり、誤った結果をもたらし得る。
【0045】
CO
2センサ42の位置を、更なるセンサ43とともに示す。装置30の実施形態では、CO
2センサ42への
呼気は、装置30の外部に位置するチューブ44(
図4に示す)に沿って流れる。センサ43は、他の別のチューブによって同様に供給される。更なる1組のセンサは、温度及び相対湿度センサ並びに3軸加速度計センサを収納するpcbカード38の使用中の下部37に位置する。
【0046】
図6では、凝縮プレート45を、カートリッジ11の真後ろに示す。ペルチェピース46は、プレート45に隣接して収納されて、必要に応じてそれに冷却を提供する。装置のペルチェピース46及び他の構成要素に対する電力は、バッテリ47によって提供される。
【0047】
センサを通じて取得される情報は、USBインターフェース48を通じて外部のモニタリングシステムに渡され得る。データの処理は、外部で、又は装置30内に搭載された更なるpcb49上でも実行され得る。ハンドヘルド式の装置30を介してユーザに情報を提供するために、ユーザインターフェース149も設けられる。H2O2レベルなどの更なる情報は、有効なカートリッジ11が存在するかについて判断及び中継するのにも使用され得る接続点80を介して取得され得る。ユーザが呼吸する大気からH2O2を除去することが望まれる場合には、フィルタがエア注入口に整合され得る。必要に応じて装置30を通じてエアを吸引するために、バッテリ47から電力を引き出すことができるファン81が含まれる。
【0048】
ここで
図8及び9では、これらは発明による装置を図式的に示す。
図8では、装置50の構成要素を示す。
図9は、
図8の装置を通じるエアフローを示す。装置50は、略管状形態の主本体51を有する。本体51は、ユーザからの呼気が本体51の一端に進入して他端の凝縮プレート52に誘導されることを可能とする。その間、フローは、装置50を使用するとともに
呼気の分析が行われることも可能としつつユーザが吸息可能となるように制御される。
【0049】
より詳細には、マウスピース53が、本体51の一端に固定される。マウスピース53は、本体51に取外し可能に搭載されて、装置50の残りの洗浄に続いて、他のユーザが装置50を使用可能となるように更なるマウスピースの取付けとを可能とし得る。マウスピース53は、二方向弁54によって本体51の内部容積に流体接続される。本体51は、チャンバ壁55によって2つのチャンバ56a、56bに分割される。第1のチャンバ56aは弁54を介してマウスピース53に結合される。第2のチャンバ56bは一方向弁57を介して第1のチャンバ56aに流体結合され、その弁は第1から第2のチャンバへのフローを可能とする。チャンバ壁55及び呼気の一部を第1から第2のチャンバへ渡すことを可能とする手段は、呼気の不要な分画が凝縮プレート52に到達することを阻止するように作用する。チャンバ壁55は、第1のチャンバ56aが、第2のチャンバ56bに関連した呼気センサ58及び凝縮プレート52への呼気の通過に影響を及ぼすことなくエアが本体51に吸引されることを可能とするように機能することを可能とする。さらに、チャンバ壁55は、第1のチャンバ内にある程度の乱流を引き起こすように作用する。これはセンサ62、64内のエアフローに対するベルヌーイの影響を制限するように作用し(以下参照)、そうでなければ、エアはセンサ62、64を通じるのではなくこれらのセンサ62、64から第1のチャンバ56aに流れることになり得る。
【0050】
センサ58は、いくつかのパラメータにデータを供給する。例えば、センサ58は、相対湿度(RH)センサ及び温度センサを含み得る。第2のチャンバ56bに進入するエアフローの大部分は、開口60を介して凝縮プレート52上に出る。凝縮プレート52は、冷却して維持されて、そこに溶解された他の材料とともに呼気の水性成分を凝縮させる。そして、凝縮プレート52において凝縮する液体は、適切に配置されたマイクロ流体アレイにおいて分析のために導かれ得る。凝縮プレート52上に呼気のフローをより集中させるために、傾斜内壁70が設けられる。さらに、一方向出口弁71は、事実上、呼気の凝縮プレート52からの跳ね返りによる圧力を、いずれの進入してくる呼気によってでも乱流を引き起こし得る第2のチャンバ56bに戻すのではなく、装置50から流出可能とする。そのような乱流は、とりわけ生じるカオス流の状況により、得られる結果に影響を及ぼし得る。
【0051】
さらに本体51における流体排出口は、本体51の外部に位置する更なる分析器に呼気が導かれることを可能とする。第1の更なる排出口61aは、呼気をエアフロー測定センサ62に方向付ける。エアフロー測定センサからのデータは、ユーザが装置50を正しく使用しており、ユーザの肺の全体的有効性の表示も与えているかについての判断を可能とする。一般的なエアフロー測定センサは圧電素子を含み、それは圧電素子で引き起こされる上記圧力と変形との間の1対1対応の結合によるエアフローの圧力に起因して変形された状態となる。センサ62から出る流路が、チューブ63によって設けられる。第2の更なる排出口61bは、CO2センサ64に至る。CO2センサ64の例として、近赤外検出器がある。さらに、チューブ65が、センサ64から出る流路を供給するように設けられる。
【0052】
エアフロー測定装置62及びCO2センサ64は双方とも、ハウジング66内に保持される。ハウジング66は、本体51の外部に取外し可能に搭載され、排出口61a、61bは本体51の壁67を通じて延在する。図示される説明の実施形態では、スチールプレート68は、壁67に固定される。そして、磁石69が利用されて、プレート68に対して磁気によってハウジング66を保持する。本技術分野で公知の、ハウジング66を本体51に固定する他の手段が使用され得ることが分かるはずである。
【0053】
装置は、装置内に存在することもある任意のスクラバ、凝縮器、除湿機、乾燥機などの上流に位置する、呼気湿度の少なくとも1つの測定点を有するべきである。
【0054】
装置内の弁及び制御された容積の使用は、測定されているサンプルが呼気の結果のものであり呼気及び周囲エアの混合物でないという確証を与えるように構成されるべきである。エアロゾルの形態で口腔から運ばれる唾液などの明らかな汚染物は、センサに到達し、センサを汚染することを阻止されるべきである。
【0055】
呼気における測定は、COPD及び喘息などの疾患の識別に現在使用されており、ここでは、呼気の湿度を測定するための装置、そのような測定の臨床的使用、及び呼気において測定される多数のパラメータと並行した呼気湿度の使用を説明している。
【0056】
呼気湿度を測定するための装置は、患者の口腔に嵌ることが可能でなければならない。口腔と接触する装置のそれらの部分は、患者ごとに直ちに汚染除去可能でなければならず、又は好適には、二次汚染のリスクを排除するように配設されなければならない。装置は、選択的に、口腔からのエアロゾル及び微粒子が装置の本体に浸入すること又は湿度センサを汚染するリスクを阻止するために、唾液を捕捉する手段を有する。装置は、好適には、患者に吸息することを可能とするが、通常約500cm3である想定の周期性呼吸の呼息量未満の内部容積を有するべきであるため、呼気は装置の内部容積を占める。装置は、呼気湿度、並びに好適には呼気温度及び理想的には呼気相対湿度を測定可能であるべきである。装置は、選択的に、呼気の圧力、流速及び二酸化炭素レベルを測定すべきである。装置は、二酸化炭素、呼吸の吸息/呼息圧、二酸化炭素濃度、呼気温度、呼気湿度、呼気相対湿度、周囲湿度、周囲相対湿度、周囲温度などのようなパラメータがすべて時系列に整列及び比較可能なように、時間の関数としてすべてのパラメータを測定可能であるべきである。装置は、選択的に、呼気の凝縮及び分析、呼気蒸気の除去、FNOを含む気相分子の測定などの追加的機能を有し得る。
【0057】
呼気蒸気の除去又は収集が重要である用途では、第2の湿度センサが、蒸気収集後の呼気湿度を測定するために、最初の呼気湿度センサ及び蒸気収集点の下流に位置決めされ得る。呼気湿度センサと蒸気収集後センサとの違いは、蒸気の収集容積及び収集の効率の決定を可能とする。