(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】多血小板血漿を濃縮するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/02 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
A61M1/02 123
(21)【出願番号】P 2021539049
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 US2020015212
(87)【国際公開番号】W WO2020163105
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2022-08-04
(32)【優先日】2019-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516353294
【氏名又は名称】ハヌマン ペリカン,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】弁理士法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ドリアン,ランディー
(72)【発明者】
【氏名】リーチ,マイケル ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ストーズ,リチャード ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】キング,スコット アール.
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-524451(JP,A)
【文献】特表2010-527912(JP,A)
【文献】特表2006-527025(JP,A)
【文献】特表2013-504755(JP,A)
【文献】特表2018-503501(JP,A)
【文献】特開昭60-140155(JP,A)
【文献】特表2006-502389(JP,A)
【文献】米国特許第05456885(US,A)
【文献】米国特許第5560830(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/02
A61J 1/05
G01N 33/48
B04B 5/00
B04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手部分を有するとともに内部にチャネルを形成するチューブと、
前記チューブの近位端に位置するとともに前記チャネルと流体連通する1つまたは複数のポートと、
前記チャネルの内面に対してシールを形成するとともに前記チャネル内で摺動可能に移動可能なプランジャと、
予め選択された密度を有するとともに前記
チャネル内に摺動可能に収容されるフロートであって、同フロートが
前記チューブの開口部に隣接する界面表面を有し、前記界面表面は、前記フロートの横断面に対して2乃至60度の角度をなしており、これにより、前記界面表面が
前記界面表面に沿って血液成分を優先的に溜めるように構成される、フロートと、
を備える、分離装置。
【請求項2】
前記プランジャに対して遠位側の前記チューブに沿って形成された通気孔または開口部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記1つまたは複数のポートが、血液導入ポート、PPP引き抜きポート、バフィーコート引き抜きポートからなる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記プランジャが、前記チューブの底面に対してシールを形成するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記フロートが、前記チューブを遠心分離したときに、RBCの層とPPPの層との間の密度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
凹状の前記界面表面が、前記チューブを遠心分離したときにバフィーコート層を保持するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記プランジャに取り付け可能なプルロッドをさらに備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記フロートが、前記チューブの上部内面に接触するために
上部を備えている、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記プランジャが、前記フロートから延びる突出部を受承する大きさの開口部を形成している、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液成分を分離する装置および方法に関するものである。より詳細には、本発明は、血液から特定の成分を効果的に分離および除去するための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液は分画され、異なる医療ニーズに対して血液の異なる分画が使用され得る。例えば、貧血(赤血球の量が少ない)は、赤血球の輸液で治療することができる。血小板減少症(血小板濃度の低下)は、血小板濃縮液の輸液で治療することができる。
【0003】
様々な血球および血漿の堆積は、細胞の比重および媒体の粘性の違いに基づいて行われる。堆積して平衡状態になると、比重(濃度)のもっとも大きいものが最終的に底部に堆積し、もっとも軽いものが上に上がってくる。重力や遠心力の影響を受けて、血液は自然に3つの層に堆積する。平衡状態では、一番上の低密度の層は血漿と呼ばれる麦わら色の透明な流体である。血漿は、塩類、代謝物、ペプチド、および小さなもの(インスリン)から非常に大きなもの(補体成分)までの多くのタンパク質が含まれる水溶液である。血漿自体は医療での使用が制限されるが、さらに分画されて、例えば血友病の治療(第VIII因子)または止血剤(フィブリノーゲン)として使用されるタンパク質が得られる。全血中の血漿タンパク質および血小板のほとんどが、緩慢に遠心分離した後の血漿中にあるため、血漿中の血小板の濃度が上昇し、上澄みの血漿中に浮遊していることから、この成分を多血小板血漿PRP(Platelet Rich Plasma)と呼んでいる。遠心分離後の最上層は、一般的に血漿タンパク質のみを含み、「ハードスピン」の結果として血小板が存在しない、または数が少ないことから、一般的に乏血小板血漿PPP(Platelet-Poor Plasma)と呼ばれている。
【0004】
最下層の高濃度層は、酸素運搬に特化した核赤血球(RBC)からなる深紅の粘性流体である。赤色は、赤血球の高比重の原因となる高濃度のキレート鉄またはヘムによるものである。血液型に適合したパックされた赤血球は、出血などによる貧血の治療に有用である。全血中の赤血球の相対的な量をヘマトクリット値と呼び、正常なヒトでは約38%乃至約54%となっている。
【0005】
中間層は最も小さい層で、赤血球層の上と血漿の下に薄い白色の帯状に現れ、バフィーコートと呼ばれている。バフィーコート自体は、核を有する白血球、および血小板と呼ばれる無核小体の2つの主要な成分を有する。白血球は免疫力を付与し、デブリーの回収にも貢献する。血小板は、血管の破れ目をシールして止血し、成長因子および創傷治癒因子を創傷部位に送り込む。バフィーコートは、血液を「ハードスピン」することで全血から分離することができる。「ハードスピン」では、全血を十分に強く、長く回転させることで、血漿から赤血球パックに血小板が堆積し、白血球が赤血球パックを通って赤血球と血漿との界面まで浸透していく。
【0006】
全血を低速(例えば、1,000gまで)で短時間(例えば、2乃至4分)遠心分離すると、白血球は赤血球よりも迅速に堆積し、両者とも血小板よりもはるかに迅速に堆積する。高速では、より短い時間で同じ分布が得られる。全血からPRPを採取する方法は、この原理に基づいている。赤血球およびPRPに分離するところまでしか分画を行わない遠心分離による堆積は「ソフトスピン」と呼ばれ、赤血球は堆積するが血小板は懸濁したままという遠心分離条件を表すことに一般的に使用される。「ハードスピン」とは、赤血球が堆積し、血小板が赤血球層のすぐ上の層に堆積するような遠心分離条件を表すことに一般的に使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
自己血小板濃縮液を生成するために使用される自動輸血装置は、熟練した操作者並びに相当な時間および費用を必要とし、これらの装置は大量の原血を必要とする。これらの装置の多くは、コストおよび所要時間を幾分か低減しているものの、熟練した操作者および時間がなお必要である。したがって、全血から成分を分離および除去するための単純かつ効果的な方法および装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、血液をその異なる成分、例えば、赤血球、血漿、および血小板画分に迅速に分画するための装置および方法に関するものである。ここに記載されているバフィーコート濃縮機の設計は、他の重力式血小板分離(GPS)設計に匹敵する血小板および白血球(WBC)の収量を提供するはずである。製造コストが低く、使い易いものである必要がある。また、バフィーコートの濃度をユーザが任意に選択することも可能である。所望の濃度を得るために、バフィーコートを再懸濁する前に採取する乏血小板血漿(PPP)の量を示すマーキングをチューブに付けることができる(PPPを多く採取すればするほど、チューブ内のフロートが高くなり、その結果、濃度が高くなる)。血小板は、フロートの凹面内に捕捉された赤血球の肉薄な層に堆積するため、血小板の損傷は最小限に抑えられ、再浮遊は、血小板を直接硬い表面に堆積させる場合よりも(GPSの場合と同様に)容易になるはずである。
【0009】
一変形例は、チューブの近位端に1つのポートまたは複数の個別のポートを有するチューブを含む。チューブの遠位端には無菌状態の通気孔が設けられ、プランジャがチューブ内に摺動可能に配置されていてもよい。上側フロート表面に凹面を設けた密度調整フロートを、プランジャとポートとの間のチューブ内に摺動可能に配置してもよい。ポートの遠位側に位置するとともにチューブの内部に面するチューブの内面は、上側フロート表面の凹面を鏡のように映し出す凸状の天井を形成してもよい。
【0010】
一態様による使用時には、フロートおよびプランジャは、チューブの上部に配置され、抗凝固血液の導入が可能な状態になっていてもよい。血液が血液導入ポートから導入されると、フロートおよびプランジャは一体的にチューブ内を遠位方向に摺動してもよい。チューブ内の変位した空気は、チューブ底部にある無菌状態の通気孔から排出される。フロートは平衡位置まで上昇し、フロートの下には赤血球の大部分がパックされており、フロートの上には血漿PPPがパックされた状態になっていてもよい。そのため、フロートは、遠心分離の際に2つの層の間に自動的に位置するように密度を調整するように構成されている。少量の赤血球が重なったバフィーコートが、フロートの凸状の上面に捕捉されてもよい。
【0011】
遠心分離後、PPPポートから所定量のPPPが引き抜かれ、フロートおよびプランジャは一体的にチューブを上昇するように摺動してもよい。フロートよりも上に残ったPPPの量によって、最終的なバフィーコート濃縮液のバフィーコート濃度のレベルが定まる。取り払われた所定量のPPPを置換するために、チューブ底部の無菌状態の通気孔からプランジャ下の空間に空気が入ってもよい。
【0012】
バフィーコートの引き抜きポートにシリンジを取り付け、シリンジを介して少量の空気を導入することで、バフィーコートの再懸濁を容易にすることができる。残ったPPPにバフィーコートを再懸濁させるために、チューブを複数回反転させたり、振ったり、旋回させたりしてもよい。再懸濁後、バフィーコート濃縮液をシリンジに引き抜き、すぐに使用することができる。
【0013】
一貫した選択不能な予め定められた濃度因子を得るために、フロートまたはその突出部は、製品の引き抜き時にフロートがフロートの上に一定量の流体を保持する位置で静止するように、チューブの天井に衝突するか、またはチューブの天井の何らかの機械的な停止部に遭遇するように構成されていてもよい。
【0014】
このシナリオでは、チューブの上部に無菌状態の通気孔を設けて、空気で所定量の採取した流体を置換しない限り、PPPの引き抜き後にフロートの上の所定の量を容易に取り除くことができない。上部空間(プランジャとチューブの天井との間)には抗凝固剤を入れることができるので、患者から直接装置内に全血を採取し、上部空間に充填する際に抗凝固剤を混入することができる。
【0015】
取り外し可能なプランジャのプルロッドは、通気孔を塞ぎ、血液導入ポートを隔膜で構成した状態か、閉鎖した閉鎖可能なバルブを装備した状態で、完全に延びた位置で張引してロックすることで、チューブ内に真空を生成することに任意に使用することができる。抗凝固剤をプランジャの上の空間に任意に予め入れておくことで、採取したばかりの全血を導入する際に、抗凝固剤が混ざるようにすることも可能である。
【0016】
特定の用途では、RBCおよびWBCを完全に排除した、より濃度の低いPRPが望ましい場合がある。このような用途には、平坦な頂部のフロートが好ましいであろう。他の種類の細胞を混入させずにPRPを製造するために、装置を所定の状態(「ソフトスピン」)にして、血小板を上に浮遊させたまま、大量のRBCおよびWBCをブイの下に堆積させることができる。不要な赤血球および白血球の除去は別として、血小板画分は所定量の赤血球が除去された分だけ濃縮されることになる(例えば、ヘマトクリットが50%の場合、赤血球を除去すると、血漿中の血小板濃度が全血中の血小板濃度に比べて約2倍になる可能性がある)。
【0017】
別例では、プランジャおよびフロートが初期状態で配置され、通気孔がキャップまたは栓で塞がれ、上部空間には任意に抗凝固剤が入っていてもよい。血液(または抗凝固血液)は、プランジャを引いて導入するか、またはチューブを退避させた後(例えば、プランジャを完全に延ばしてロックするように引くことで)、患者から直接引き抜きポートを介して採取することで導入することができる。その後、取り外し可能なプランジャを取り外し、引き抜きポートにキャップをすることができる。
【0018】
遠心分離後、バフィーコートは、平衡位置にある最下層のフロートの上に形成されてもよい。PPPは、フロートおよびプランジャが一体的に移動することで、(通気孔を止めた状態で)引き抜くことができる。PPPの引き抜きは、フロートの一部がチューブの天井に衝突することで停止し得る。通気孔の栓を外した状態で、引き抜きポートにシリンジを装着し、所定量の空気を導入することができる(再懸濁を容易にするため)。バフィーコートは、保持された容量のPPPに再懸濁させることができる。再懸濁したバフィーコートを回収用シリンジに引き抜き、抽出した量を無菌状態の通気孔を介して空気で置換することができる。
【0019】
さらなる別の変形例として、ペグなどの突出部をフロートの底面から突出させ、プランジャの上面に沿って対応する開口部を設けて、突出部を開口部に適合するように受承するようにしてもよい。これにより、フロートおよびプランジャが一時的に結合し、プランジャを引き下げて抗凝固血液または抗凝固剤に続いて全血を患者から直接導入する際に、フロートおよびプランジャが一体的に下降することができる。プランジャの開口部への突出部の嵌入は、プランジャを引き下げたときに両者が結合した状態を保持するように十分にきつくしてもよい。遠心分離の際にフロートにかかる浮力は、突出部を開口部から押し出すのに十分であるため、フロート24は上昇し、最終的には分離された血液の中で平衡状態になり得る。
【0020】
本明細書に記載されている分離装置の一変形例は、長手部分を有するとともに内部にチャネルを形成するチューブと、チューブの近位端に配置されるとともにチャネルと流体連通する1つまたは複数のポートとから構成されている。プランジャは、チャネルの内面に対してシールを形成するとともにチャネル内で摺動可能に移動可能であり、フロートは、予め選択された密度を有するとともに凹状の界面表面を形成しており、フロートは、凹状の界面表面が1つまたは複数のポートに近接するようにチャネル内に摺動可能に収容されている。
【0021】
血液から成分を分離するための一変形例は、一般的にチューブに所定量の血液を導入し、チューブ内の所定量の血液に遠心力を加えて、血液が少なくとも第1の分画層および第2の分画層を形成し、フロートが第1の分画層と第2の分画層との間に位置するように、フロートおよびプランジャをチューブ内の第1の位置から第2の位置に変位させることを含み、フロートが予め選択された密度を有し、凹状の界面表面を形成することを特徴とする。一旦遠心分離したら、フロートおよびプランジャが第2の位置から第1の位置に戻るように、チューブの近位端に形成された少なくとも1つのポートを介して、少なくとも第1の分画層をチューブから引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、上面に凹部が形成されたフロートを有する分離組立体の一例を示す斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、チューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、チューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
【
図2C】
図2Cは、チューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
【
図2D】
図2Dは、チューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
【
図2E】
図2Eは、チューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図3B】
図3Bは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図3C】
図3Cは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図3D】
図3Dは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図3E】
図3Eは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図3F】
図3Fは、チューブの使用に関する別の変形例を示す側面図である。
【
図4A】
図4Aは、様々なフロートの構造体を示す側面図である。
【
図4B】
図4Bは、様々なフロートの構造体を示す側面図である。
【
図4C】
図4Cは、様々なフロートの構造体を示す側面図である。
【
図4D】
図4Dは、様々なフロートの構造体を示す側面図である。
【
図5】
図5は、プランジャおよびフロートが一時的な固定機構を組み込み可能であるチューブのさらなる別の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書では、「頂」、「上」、「底」、「下」などの用語は、例えば、血液の分画成分を入れた容器チューブの長手方向軸線が直立している場合や非水平に配置されている場合に、成分の相対的な位置関係に関して文脈を提供するために使用されている。このような記載は、説明のためにのみ使用されている。
【0024】
ここで述べるように、堆積して平衡状態になると、比重(濃度)のもっとも大きい成分は最終的に底部に堆積し、もっとも軽いものは上に上がってくる。重力や遠心力の影響を受けて、血液は自然に3つの層に堆積する。平衡状態では、一番上の低密度の層は血漿と呼ばれる麦わら色の透明な流体である。全血中の血漿タンパク質および血小板のほとんどが、緩慢に遠心分離した後の血漿中にあるため、血漿中の血小板の濃度が上昇し、上澄みの血漿中に浮遊していることから、この成分を多血小板血漿PRP(Platelet Rich Plasma)と呼んでいる。一番下の高濃度の層は、堆積した赤血球(RBC)からなる。中間層は、血液がさらに遠心分離された場合、バフィーコートと呼ばれる。
【0025】
本発明は、血液をその異なる成分、例えば、赤血球、血漿、および血小板画分に迅速に分画するための装置および方法に関するものである。ここに記載されているバフィーコート濃縮機の設計は、他の重力式血小板分離(GPS)設計に匹敵する血小板および白血球(WBC)の収量を提供するはずである。製造コストが低く、使い易いものである必要がある。また、バフィーコートの濃度をユーザが任意に選択することも可能である。所望の濃度を得るために、バフィーコートを再懸濁する前に採取する乏血小板血漿(PPP)の量を示すマーキングをチューブに付けることができる(PPPを多く採取すればするほど、チューブ内のフロートが高くなり、その結果、濃度が高くなる)。血小板は、フロートの凹面内に捕捉された赤血球の肉薄な層に堆積するため、血小板の損傷は最小限に抑えられ、再浮遊は、血小板を直接硬い表面に堆積させる場合よりも(GPSの場合と同様に)容易になるはずである。
【0026】
図1の斜視図と、ここに記載されているステップバイステップの説明は、操作の原理および方法を理解するのに十分である。記載されているいくつかの変形例は、所定の用途/市場にも有用であり、WBCの無い、かつRBCの無い多血小板血漿(PRP)の調製も可能である。一変形例10は、チューブ12を有するものとして示されており、このチューブ12は、チューブ12の近位端に、例えば、血液導入ポート18、PPP引き抜きポート22、およびバフィーコート引き抜きポート20のような、3つの個別のポート16を有していてもよい。また、チューブの遠位端には、無菌状態の通気孔30が設けられていてもよい。プランジャ14は、チューブ内に摺動可能に配置され、底部の円周シール32は、チューブの内壁に対してシールを形成するとともに、任意により、チューブ12内の最下位置にあるときに遠心分離中にチューブの床部に対してシールを形成してもよい。この任意のシール32は、遠心分離時に発生する圧力下でチューブの底部から血液が漏れ出すのを防ぐために、より高いレベルで保証することができる。
【0027】
例えば、上側のフロート表面に形成された平坦面、凸面、または凹面26のような要素を有する調整密度フロート24は、プランジャ14とポート16との間でチューブ内を摺動可能に配置され得る。また、下側のフロート表面34は、平坦面、凹面、凸面など、さまざまな形状になるように構成されてもよい。これに代えて、下側のフロート表面34は、傾斜した円錐形、またはフロート24の片側からフロート24の反対側に向かって角度をなした傾斜面を呈するように先端ほど細くなるように形成されていてもよい。ポートの遠位側に位置するとともにチューブの内部に面するチューブの内面28は、上側フロート表面の凹面26を鏡のように映し出す凸状の天井を形成してもよい。
【0028】
キレート全血の導入、PPPの除去、バフィーコート濃縮液の採取のための3つの個別のポート16が示されているが、1つのポートで十分な場合もある。一般的に、1つのポートを複数回使用することは好ましくないため、必要に応じて図示の3つを超えるポートを組み込んで使用することもできる。
【0029】
図2A乃至2Eは、説明したようなチューブの使用に関する一変形例を示す斜視図である。
図2Aは、チューブ12の初期状態を示したもので、フロート24およびプランジャ14がチューブの上部に位置し、抗凝固血液の導入が可能な状態になっている。
図2Bは、血液導入ポート18から血液BLが導入されると、フロート24およびプランジャ14が一体的にチューブ内を遠位側に向かって下方に摺動していく態様を示している。チューブ12内の変位した空気は、チューブ底部の通気孔30を通って排出される。
図2Cは、遠心分離により、フロート24が平衡位置まで上昇し、RBCの大部分はフロートの下に、血漿PPPはフロートの上にパッキングされる態様を示している。したがって、フロート24は、遠心分離の際に2つの層の間に自動的に位置するように密度が調整されるように構成されていてもよい。例えば、フロート24は、全血と組み合わせた使用に特別に調整された密度、例えば、1000乃至1100kg/m
3(または、25℃における比密度1.0乃至1.1)を有していてもよいし、他の変形例では、フロート24は、異なる密度、例えば、1.03乃至1.07等を有するように形成されてもよい。少量の赤血球が重なったバフィーコートが、フロートの凸状の上面内に捕捉される。
【0030】
図2Dは、PPPポート22から所定量のPPPが引き抜かれた遠心分離後のチューブを示している。PPPが引き抜かれると、フロート24およびプランジャ14は一体的にチューブ12を摺動して上昇してもよい。フロート24よりも上に残ったPPPの量によって、最終的なバフィーコート濃縮液のバフィーコート濃度のレベルが定まる。取り払われた所定量のPPPを置換するために、チューブ12底部の無菌状態の通気孔30からプランジャ14下の空間に空気が入ってもよい。
【0031】
図2Eに示すように、バフィーコートの引き抜きポート20にシリンジを取り付け、シリンジを介して少量の空気を導入することで、バフィーコートBCの再懸濁を容易にすることができる。残ったPPPにバフィーコートBCを再懸濁させるために、チューブ12を複数回反転させたり、振ったり、旋回させたりしてもよい。再懸濁後、バフィーコートBC濃縮液をシリンジに引き抜き、すぐに使用することができる。
【0032】
一貫した選択不能な予め定められた濃度因子を得るために、フロートまたはその突出部は、製品の引き抜き時にフロートがフロートの上に一定量の流体を保持する位置で静止するように、チューブの天井に衝突するか、またはチューブの天井の何らかの機械的な停止部に遭遇するように構成されていてもよい。
【0033】
このシナリオでは、採取した所定量の流体を空気に置き換えるために、チューブ12の上部に無菌状態の通気孔46を設けなければ、PPPの引き抜き後に、フロートよりも上の量を容易に取り除くことができない。
図3A乃至3Fでは、通気孔46は、キャップやまたはプラグ50を装着することで塞ぐことができるサイドポートとして描かれている。また、図には、取り外し可能なプランジャのプルロッド52が示されている。このプルロッド52は、(中央の)血液導入ポート44を介して血液を装置内に吸引するために使用できる(シリンジから導入ポートに強制的に血液を注入する場合とは異なる)。上部空間(プランジャ14とチューブの天井との間)には抗凝固剤を入れることができるので、患者から直接装置内に全血を採取し、上部空間に充填する際に抗凝固剤を混入することができる。
【0034】
図示の取り外し可能なプランジャのプルロッド52は、通気孔を塞ぎ、血液導入ポートを隔膜で構成した状態か、閉鎖した閉鎖可能なバルブを装備した状態で、完全に延びた位置で張引してロックすることで、チューブ12内に真空を生成することに任意に使用することができる。抗凝固剤をプランジャの上の空間に任意に予め入れておくことで、採取したばかりの全血を導入する際に、抗凝固剤が混ざるようにすることも可能である。
【0035】
特定の用途では、RBCおよびWBCを完全に排除した、より濃度の低いPRPが望ましい場合がある。このような用途には、平坦な頂部のフロートが好ましいであろう。他の種類の細胞を混入させずにPRPを製造するために、装置を所定の状態(「ソフトスピン」)にして、血小板を上に浮遊させたまま、大量のRBCおよびWBCをブイの下に堆積させることができる。不要な赤血球および白血球の除去は別として、血小板画分は所定量の赤血球が除去された分だけ濃縮されることになる(例えば、ヘマトクリットが50%の場合、赤血球を除去すると、血漿中の血小板濃度が全血中の血小板濃度に比べて約2倍になる可能性がある)。
【0036】
図3A乃至3Fは、
図3Aに示すように、初期状態でプランジャ14およびフロート40が配置されている場合の変形例を示す。通気孔46は、キャップまたはプラグ50をした状態で示されており、上部空間には任意で抗凝固剤が入っている。
図3Bは、血液BL(または抗凝固血液)が、プランジャ14を引いて導入されるか、または、(例えばプランジャを完全に延ばしてロックするなどして)チューブを退避させた後に、患者から直接、引き抜きポート44を介して採取されるかの態様を示している。その後、着脱式プランジャを取り外して、引き抜きポート44にキャップ48をしてもよい。
【0037】
図3Cに示すように、遠心分離後、バフィーコートBCは、平衡位置にある最下層のフロート40の上に形成されてもよい。
図3Dに示すように、PPPは、フロート40およびプランジャ14が一体的に移動することで、引き抜かれ(通気が止められ)てもよい。PPPの引き抜きは、フロート40の界面表面42の一部がチューブの天井に衝突したときに停止してもよい。
図3Eに示すように、通気孔46の栓を外した状態で、引き抜きポート44にシリンジを装着し、所定量の空気を導入することができる(再懸濁を容易にするため)。バフィーコートBCは、保持された容量のPPPに再懸濁してもよい。
図3Fに示すように、再懸濁したバフィーコートBCを回収用シリンジに引き抜き、抽出した量を無菌状態の通気孔を介して空気で置換することができる。
【0038】
本実施形態で示したフロート40は、円筒状に形成され、その上面に沿って、遠心分離後のPPPおよびBCに接触する角度をなす界面表面を有するように構成されていてもよい。本実施形態のチューブで示しているが、フロート40は、本明細書に記載されているいずれの変形例にも使用できる。フロート40の上側の界面表面42は、比較的平坦な表面を形成しているが、界面表面42は、任意の数の構造体を形成してもよい。上側のフロート表面が凹面、平坦な面、または凸面であるこれらの変形例のいずれにおいても、上側のフロート表面に比較的滑りやすい層を適用してもよい。一変形例では、上側のフロート表面上にシリコン層を形成して、上側表面から血小板を容易に除去できるようにしてもよい。
【0039】
図4Aの側面図に示すように、上側のフロートの界面表面42は、フロート40の長手方向軸線60に対して角度をなしており、これにより、表面が予め定められた方向に沿って血小板を優先的に摺動させるようになっていてもよい。角度θは、フロート40の横断面と界面表面42との間でなす角度として、界面表面42の傾斜を規定しており、0度乃至丁度90度弱の範囲であればいずれでもよいが、いくつかの実施形態では、例えば、2度乃至60度の範囲であってもよい。上記
図3Fに示すように、また、角度をなす界面表面42を有することにより、BCなどの血液成分はチューブ内壁と界面表面42との間に界面表面42に沿って優先的に溜まるか収集され、これにより、フロートがチューブの上側の内壁面の近傍に、または内壁面に位置しているときに、採取されやすくされてもよい。
【0040】
図4Bは、フロート62の別の変形例を示す側面図であり、この変形例では、角度をなす界面表面64が、平坦な肩部66で終端するようになっている。
図4Cは、フロート68の別の変形例を示す側面図であり、界面表面70は、図示のように、フロート68の片側に向かって優先的に傾斜するように非対称的に角度をなす凹面として形成されてもよい。
図4Dは、フロート72のさらなる別の変形例を示す側面図であり、界面表面74は、図示のように、フロート72の片側に向かって優先的に傾斜するように非対称的に角度をなす凸面として形成されてもよい。
【0041】
図5の斜視図に別の実施形態が示されており、ペグのような突出部80が、フロート24の底部から突出していてもよい。対応する開口部82が、プランジャ14の頂面に沿って形成され、突出部80を開口部82に適合するように受承することができる。これにより、フロート24およびプランジャ14は結合可能となり、プランジャ14を引き下げて、抗凝固血液または抗凝固剤に続いて全血を患者から直接導入する際に、フロート24およびプランジャ14は一体的に下降することができる。ここで説明したフロートの変形例は、説明したような本実施形態または他の実施形態のいずれにも利用することができる。
【0042】
必要に応じて、まず抗凝固剤をチューブ12内に入れ、次に(通気孔ポートを含むすべてのポート16にキャップをした状態で)プランジャ14を完全に引き下げて真空状態にし、所定の位置にロックすることができる(例えば、プルロッド52またはプランジャ14とチューブの間とにラッチをひねって係合させることにより) 次に、患者の静脈に刺した血液ラインを、隔膜ポートまたはバルブ付きルアーポートを介してチューブ12に取り付けることができる(これにより、血液ラインが接続されるまで、チューブ12内の真空状態が維持される)。
【0043】
これに代えて、抗凝固剤をあらかじめチューブに入れておき、これにより、ユーザはプルロッド52を使用して真空引きをのみすることができ、続いて患者に血液ラインを接続することもできる(抗凝固剤を加える必要は無い)。
【0044】
プランジャの開口部82への突出部80の嵌入は、プランジャ14を引き下げたときに両者が結合した状態を保持するように十分にきつくしてもよい。遠心分離の際にフロートにかかる浮力は、突出部80を開口部82から押し出すのに十分であるため、フロート24は上昇し、最終的には分離された血液の中で平衡状態になり得る。
【0045】
上記に開示されている装置および方法は、図示または説明されている個別の実施形態に限定されるものではなく、異なる変形の間で個別の特徴を取り入れた組み合わせを含むことができる。本発明を実施するための上述した装置および方法の変更、実行可能な異なる変形例間の組み合わせ、および当業者にとって明白な本発明の態様の変形例は、特許請求の範囲内であることが意図されている。