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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】鉄骨部材の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
E04B1/94 V
E04B1/94 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022067227
(22)【出願日】2022-04-14
(65)【公開番号】P2023157361
(43)【公開日】2023-10-26
【審査請求日】2023-07-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蛇石 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】青木 慧
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-011063(JP,A)
【文献】特開2018-145654(JP,A)
【文献】特開2020-118022(JP,A)
【文献】特開2018-003475(JP,A)
【文献】特開2019-078044(JP,A)
【文献】特許第5748975(JP,B2)
【文献】特許第5839787(JP,B2)
【文献】特開2002-180569(JP,A)
【文献】特開2010-018971(JP,A)
【文献】実開平2-34635(JP,U)
【文献】韓国登録特許第10-0636429(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に立てられ、又は前記鉄骨部材に取り付けられる下地材と、
前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる複数の木質耐火被覆材と、
を備え、
前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる、
鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記木質耐火被覆材の前記端部は、前記角部の外面から前記木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内で、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる、
請求項1に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項3】
前記木質耐火被覆材の前記端部の密度は、前記木質耐火被覆材の前記一般部の密度よりも高い、
請求項1に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記木質耐火被覆材の外面に取り付けられ、前記木質耐火被覆材の前記端部よりも密度が高い木質外装材を備える、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の鉄骨部材の耐火被覆構造。
【請求項5】
鉄骨部材と、
前記鉄骨部材の周囲に配置される下地材と、
前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる複数の木質耐火被覆材と、
前記木質耐火被覆材の外面に取り付けられ、前記木質耐火被覆材の前記端部よりも密度が高い木質外装材と、
を備え、
前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされ、
前記木質外装材は、隣り合う前記木質耐火被覆材の目地を跨ぐように設けられる、
骨部材の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄骨部材の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木材で形成された荷重支持部と、荷重支持部の外側に配置される燃止層と、木材で形成され、燃止層の外側に配置される燃代層とを備える木質構造材が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
また、鉄骨柱と、鉄骨柱の周囲に立てられる複数のスタッドと、複数のスタッドに取り付けられ、鉄骨柱を取り囲む耐火ボードとを備える耐火被覆構造が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-129669号公報
【文献】特開2005-048585号公報
【文献】特開2005-053195号公報
【文献】特開2012-041749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数の木質耐火被覆材によって、鉄骨柱等の鉄骨部材を耐火被覆することが考えられる。この場合、例えば、隣り合う木質耐火被覆材の端部は、角部において突き当てられ、鉄骨部材の周囲に配置された下地材にビス留めされる。
【0006】
ここで、隣り合う木質耐火被覆材の端部が突き当てられた角部では、火災時に、2方向から加熱(二面加熱)されるため、他の部位よりも焼失し易い。そして、角部において、下地材にビス留めされた木質耐火被覆材の端部が焼失すると、木質耐火被覆材が脱落する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、火災時における木質耐火被覆材の脱落を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、鉄骨部材と、前記鉄骨部材の周囲に配置される下地材と、前記鉄骨部材と対向する金属板が内面に取り付けられ、互いに突き当てられて角部を形成する端部が、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる複数の木質耐火被覆材と、を備え、前記金属板は、前記木質耐火被覆材における前記端部から外れた一般部にビス留めされる。
【0009】
第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、鉄骨部材の周囲には、下地材が配置される。また、木質耐火被覆材の内面には、鉄骨部材と対向する金属板が取り付けられる。
【0010】
ここで、隣り合う木質耐火被覆材の端部は、互いに突き当てられて角部を形成する。この木質耐火被覆材の端部は、金属板と共に下地材にビス留めされる。これにより、木質耐火被覆材及び金属板によって、鉄骨部材が耐火被覆される。
【0011】
また、金属板は、木質耐火被覆材における端部から外れた一般部にビス留めされる。つまり、木質耐火被覆材の一般部は、金属板を介して下地材に支持される。
【0012】
これにより、火災時に、角部において、下地材にビス留めされた木質耐火被覆材の端部が焼失したとしても、木質耐火被覆材の一般部が金属板を介して下地材に支持される。したがって、火災時に、木質耐火被覆材の一般部が脱落することが抑制される。
【0013】
第2態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記木質耐火被覆材の前記端部は、前記角部の外面から前記木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内で、前記金属板と共に前記下地材にビス留めされる。
【0014】
第2態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、木質耐火被覆材の端部は、角部の外面から、木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内で、金属板と共に下地材にビス留めされる。
【0015】
このように角部の外面から木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内で、木質耐火被覆材の端部を金属板と共に下地材にビス留めすることにより、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材の端部の目地が開くことが抑制される。
【0016】
一方、角部の外面から木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内は、火災時に、木質耐火被覆材の端部が焼失し易くなる。
【0017】
これに対して本発明では、金属板が、木質耐火被覆材における端部から外れた一般部にビス留めされる。つまり、木質耐火被覆材の一般部は、金属板を介して下地材に支持される。
【0018】
これにより、火災時に、角部の外面から木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域内が焼失したとしても、木質耐火被覆材の一般部が金属板を介して下地材に支持される。したがって、火災時に、木質耐火被覆材の一般部が脱落することが抑制される。
【0019】
このように本発明では、火災時に、木質耐火被覆材の一般部が脱落することを抑制しつつ、隣り合う木質耐火被覆材の端部の目地が開くことを抑制することができる。
【0020】
第3態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第1態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記木質耐火被覆材の前記端部の密度は、前記木質耐火被覆材の前記一般部の密度よりも高い。
【0021】
第3態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、木質耐火被覆材の端部の密度は、木質耐火被覆材の一般部の密度よりも高い。これにより、木質耐火被覆材の端部が、木質耐火被覆材の一般部よりも燃え難くなる。
【0022】
したがって、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材の端部が突き当てられて形成された角部において、下地材にビス留めされた木質耐火被覆材の端部が焼失することが抑制される。
【0023】
第4態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第1態様第3態様の何れか1つに係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記木質耐火被覆材の外面に取り付けられ、前記木質耐火被覆材の前記端部よりも密度が高い木質外装材を備える。
【0024】
第4態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、木質耐火被覆材の外面には、木質耐火被覆材の端部よりも密度が高い木質外装材が取り付けられる。これにより、火災時に、木質耐火被覆材が焼失することが抑制される。
【0025】
第5態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造は、第4態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造において、前記木質外装材は、隣り合う前記木質耐火被覆材の目地を跨ぐように設けられる。
【0026】
第5態様に係る鉄骨部材の耐火被覆構造によれば、木質外装材は、隣り合う木質耐火被覆材の目地を跨ぐように設けられる。これにより、隣り合う木質耐火被覆材の目地から、鉄骨部材側へ火災熱が侵入することが抑制される。したがって、鉄骨部材の耐火性能が向上する。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、火災時における木質耐火被覆材の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す横断面図である。
図2図1の一部拡大断面図である。
図3】第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造の変形例を示す図2に対応する断面図である。
図4】第二実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図1に対応する断面図である。
図5図4の一部拡大断面図である。
図6】第二実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造の変形例を示す図5に対応する断面図である。
図7】第三実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱を示す図2に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。なお、各図に適宜示される矢印X方向、及び矢印Y方向は、互いに直交する水平二方向を示している。
【0030】
図1には、第一実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたコンクリート充填鋼管柱(以下、「CFT柱」という)10が示されている。CFT柱10は、鋼管12と、鋼管12の内部に充填されたコンクリート14とを備えている。
【0031】
鋼管12は、一例として、角形鋼管とされている。この鋼管12の周囲には、複数のコーナー下地材20が配置されている。なお、鋼管12は、角形鋼管に限らず、丸形鋼管でも良い。また、鋼管12は、鉄骨部材の一例である。
【0032】
(コーナー下地材)
複数のコーナー下地材20は、鋼管12の周囲に、当該鋼管12の材軸方向に沿って配置されている。各コーナー下地材20は、断面L字形状の軽量鉄骨等によって形成されており、鋼管12の各角部の外側に配置されている。なお、コーナー下地材20は、下地材の一例である。
【0033】
コーナー下地材20は、鋼管12の材軸方向を長手方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。また、コーナー下地材20の上下の端部は、図示しないランナーによって支持されている。
【0034】
コーナー下地材20は、一対のフランジ部20Aを有している。一対のフランジ部20Aは、後述する木質耐火被覆材30の隅部に沿って屈曲されている。この一対のフランジ部20Aには、木質耐火被覆材30及び金属板40の端部30E,40Eが取り付けられている。
【0035】
(木質耐火被覆材)
複数(本実施形態では4枚)の木質耐火被覆材30は、鋼管12を取り囲むように配置されている。より具体的には、複数の木質耐火被覆材30は、鋼管12の材軸方向から見て、鋼管12を取り囲む矩形枠状に配置されており、鋼管12を耐火被覆している。
【0036】
各木質耐火被覆材30は、鋼管12の外面との間に間隔を空けて配置されている。間隔は、断熱層(断熱空間)として機能する。また、鋼管12の外面と木質耐火被覆材30との間に間隔を空けることにより、鋼管12の外面に形成された溶接ビード等の凹凸と木質耐火被覆材30との干渉が抑制されるとともに、間隔によって、木質耐火被覆材30の施工誤差等が吸収可能とされる。
【0037】
各木質耐火被覆材30は、例えば、CLT(Cross Laminated Timber)、LVL(Laminated Veneer Lumber)、集成材、又は合板等の木質板によって形成されている。なお、集成材等に用いる接着剤は、熱可塑性樹脂系、及び熱硬化性樹脂系の接着剤が使用可能で有るが、耐火性能の観点から熱硬化性樹脂系の接着剤が好ましい。
【0038】
木質耐火被覆材30は、耐火被覆材として機能する。具体的には、木質耐火被覆材30は、鋼管12を耐火被覆する燃え代層として機能する。燃え代層は、火災時に燃焼して炭化層(断熱層)を形成することにより、鋼管12側への火災熱の浸入を抑制する層とされる。
【0039】
木質耐火被覆材30の厚み(板厚)t(図2参照)は、要求される耐火性能に応じて適宜設定される。より具体的には、木材(木質材)は、一面加熱の場合、1時間加熱で40mm~60mm、2時間加熱で70mm~90mm、3時間加熱で100mm~120mm炭化する。
【0040】
また、木材(木質材)は、二面加熱になると、厚みに10%~20%の余裕が必要となり、柱・梁等の木材厚(木質耐火被覆材30の厚みt)としては、1時間加熱で44mm~72mm、2時間加熱で77mm~108mm、3時間加熱で110mm~144mmに設定される。
【0041】
木質耐火被覆材30に使用する樹種(木材)としては、例えば、カラマツ、ベイマツ、又はスギが挙げられる。ここで、樹種によって、加熱後に、木質耐火被覆材30の外面(見つけ面)30Bの燃焼状態が異なる場合がある。例えば、スギの場合、木質耐火被覆材30の外面30Bの全面において、燃焼が継続され易い。
【0042】
一方、カラマツ、及びベイマツの場合、木質耐火被覆材30の外面30Bにおいて、部分的に燃焼が継続されるが、全体としては燃え止まり易い。したがって、木質耐火被覆材30に使用する樹種(木材)としては、カラマツ、及びベイマツが好ましい。
【0043】
また、鋼管12は、熱伝導率が高い。そのため、火災時に、木質耐火被覆材30の外面30Bにおいて部分的に燃焼が継続しても、火災熱が鋼管12全体に拡散されるため、鋼管12の局所的な温度上昇が抑制される。さらに、鋼管12の内部のコンクリート14は、熱容量が大きいため、鋼管12の温度上昇がさらに抑制される。
【0044】
したがって、木質耐火被覆材30にカラマツ、又はベイマツを使用した場合であって、火災時に、木質耐火被覆材30の外面30Bにおいて部分的に燃焼が継続しても、CFT柱10の耐火性能は確保される。
【0045】
鋼管12の材軸方向から見て、隣り合う木質耐火被覆材30は、互いに略直交する方向(矢印X方向、矢印Y方向)に沿って配置されている。また、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30Eは、鋼管12の材軸方向から見て、L字形状に突き当てられており、角部30Cを形成している。さらに、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30E間には、目地32が形成されている。これらの木質耐火被覆材30の端部30Eは、金属板40を介してコーナー下地材20に取り付けられている。
【0046】
(金属板)
金属板40は、熱伝導率が高い鋼板や鉄板等によって形成されている。また、金属板40は、木質耐火被覆材30と略同じ大きさとされており、木質耐火被覆材30の内面30Aの略全面に亘って重ねられている。
【0047】
金属板40は、木質耐火被覆材30の端部30Eから外れた部位(以下、「一般部30M」という)に、鋼管12側から複数のビス42によって取り付けられている(ビス留めされている)。また、金属板40は、木質耐火被覆材30の内面30Aに取り付けられた状態で、鋼管12の外面(側面)と対向して配置されている。
【0048】
木質耐火被覆材30及び金属板40は、隣り合うコーナー下地材20のフランジ部20Aの外面に亘って配置されており、その両側の端部30E,40Eが複数のビス34によってフランジ部20Aに取り付けられている(ビス留めされている)。
【0049】
複数のビス34は、フランジ部20Aの長手方向の間隔を空けて配置されている。なお、本実施形態では、木質耐火被覆材30の外面30Bに、ビス34用のザグリ36が形成されている。しかし、ザグリ36は、適宜省略可能である。
【0050】
(二面加熱領域、一面加熱領域)
図2に示されるように、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30Eが突き当てられた角部30Cでは、火災時に2方向から加熱(二面加熱)される。このように火災時に2方向から加熱される木質耐火被覆材30の領域(以下、「二面加熱領域R2」という)は、例えば、角部30Cの外面30C1から木質耐火被覆材30の厚みtの1.5倍の領域とされる。
【0051】
具体的には、例えば、2時間耐火の場合、木質耐火被覆材30の厚みtは、70mm~90mmに設定される。この場合、角部30Cの外面30C1から105mm~135mm(70mm×1.5~90mm×1.5)領域が、二面加熱領域R2とされる。
【0052】
なお、前述したように、1時間耐火の場合の木質耐火被覆材30の厚みtは、40mm~60mmに設定され、3時間耐火の場合の木質耐火被覆材30の厚みtは、100mm~120mmに設定される。
【0053】
また、二面加熱領域R2以外の木質耐火被覆材30の領域は、火災時に1方向から加熱される領域(以下、「一面加熱領域R1」という)とされる。
【0054】
本実施形態では、二面加熱領域R2において、木質耐火被覆材30の端部30Eが、複数のビス34によって金属板40と共にコーナー下地材20に取り付けられている。また、一面加熱領域R1において、木質耐火被覆材30の一般部30Mが、複数のビス42によって金属板40に取り付けられている。
【0055】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0056】
図1に示されるように、本実施形態によれば、CFT柱10の鋼管12の周囲には、コーナー下地材20が配置されている。また、木質耐火被覆材30の内面30Aには、鋼管12と対向する金属板40が取り付けられている。
【0057】
図2に示されるように、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30Eは、互いに突き当てられて角部30Cを形成している。この木質耐火被覆材30の端部30Eは、金属板40と共にコーナー下地材20にビス留めされている。これにより、木質耐火被覆材30及び金属板40によって、CFT柱10の鋼管12が耐火被覆される。したがって、CFT柱10の鋼管12の耐火性能が向上する。
【0058】
また、金属板40は、木質耐火被覆材30における端部30Eから外れた一般部30Mにビス留めされる。つまり、木質耐火被覆材30の一般部30Mは、金属板40を介してコーナー下地材20に支持されている。
【0059】
これにより、火災時に、角部30Cにおいて、コーナー下地材20にビス留めされた木質耐火被覆材30の端部30Eが焼失したとしても、木質耐火被覆材30の一般部30Mが金属板40を介してコーナー下地材20に支持される。したがって、火災時に、木質耐火被覆材30の一般部30Mが脱落することが抑制される。
【0060】
ここで、火災時には、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30E間の目地32が開き易くなる。この目地32の開きを抑制するためには、目地32に近い位置で、木質耐火被覆材30の端部30Eをコーナー下地材20にビス留めすることが好ましい。
【0061】
そこで、本実施形態では、火災時における目地32の開きを抑制する観点から、角部30Cの外面30C1から木質耐火被覆材30の厚みの1.5倍の二面加熱領域R2内で、木質耐火被覆材30の端部30Eが金属板40と共にコーナー下地材20にビス留めされている。つまり、ビス34は、二面加熱領域R2内に配置されている。これにより、火災時に、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30Eの目地32が開くことが抑制される。
【0062】
一方、二面加熱領域R2は、火災時に2方向から加熱されるため、木質耐火被覆材30の端部30Eが焼失し易くなる。
【0063】
これに対して本実施形態では、一面加熱領域R1において、木質耐火被覆材30の一般部30Mが金属板40にビス留めされている。つまり、ビス42は、一面加熱領域R1内に配置されている。これにより、木質耐火被覆材30の一般部30Mは、金属板40を介してコーナー下地材20に支持されている。
【0064】
したがって、火災時に、二面加熱領域R2が焼失したとしても、木質耐火被覆材30の一般部30Mが金属板40を介してコーナー下地材20に支持される。したがって、火災時に、木質耐火被覆材30の一般部30Mが脱落することが抑制される。
【0065】
このように本実施形態では、火災時に、木質耐火被覆材30の一般部30Mが脱落することを抑制しつつ、隣り合う木質耐火被覆材30の端部30Eの目地32が開くことを抑制することができる。
【0066】
(第一実施形態の変形例)
次に、上記第一実施形態の変形例について説明する。
【0067】
図3に示される変形例では、木質耐火被覆材30の端部30Eの密度が、木質耐火被覆材30の一般部30Mの密度よりも高くされている。具体的には、木質耐火被覆材30は、集成材によって形成されている。この木質耐火被覆材30は、積層接着された複数の低密度木板50L及び複数の高密度木板50Hを有している。
【0068】
なお、低密度木板50L及び高密度木板50Hは、木板(ラミナ)の一例である。
【0069】
高密度木板50Hの密度は、低密度木板50Lの密度よりも高くされている。これらの高密度木板50Hによって、木質耐火被覆材30の端部30Eが形成されている。これにより、火災時における木質耐火被覆材30の端部30Eの焼失が抑制される。一方、木質耐火被覆材30の一般部30Mは、複数の低密度木板50Lによって形成されている。
【0070】
なお、高密度木板50Hは、低密度木板50Lと同じ樹種で形成されても良い。この場合、例えば、木材の重量及び体積から密度を算出し、密度が所定値未満の木板が低密度木板50Lとされ、密度が所定値以上の木板が高密度木板50Hとされる。
【0071】
また、高密度木板50Hは、低密度木板50Lよりも密度が高い樹種で形成されても良い。この場合、低密度木板50Lとしては、例えば、スギが挙げられ、高密度木板50Hとしては、例えば、カラマツ及びベイマツが挙げられる。
【0072】
また、上記第一実施形態では、二面加熱領域R2において、木質耐火被覆材30の端部30Eが、金属板40の端部40Eと共にコーナー下地材20にビス留めされる。しかし、木質耐火被覆材30の厚みtは、CFT柱10に求められる耐火性能(耐火時間)に応じて設定される。また、一面加熱領域R1及び二面加熱領域R2は、木質耐火被覆材30の厚みtに応じて設定される。
【0073】
そのため、木質耐火被覆材30の厚みtによっては、一面加熱領域R1において、木質耐火被覆材30の端部30Eが、金属板40の端部40Eと共にコーナー下地材20にビス留めされる。
【0074】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0075】
図4には、第二実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたCFT柱10が示されている。第二実施形態では、木質耐火被覆材30の外面30Bに、複数の低密度木質外装材60L及び複数の高密度木質外装材60Hが取り付けられている。なお、低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hは、木質外装材の一例である。
【0076】
(木質外装材)
低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hは、例えば、集成材、又は合板等の木質板によって形成されており、木質耐火被覆材30の外面30Bに重ねられた状態で図示しないビスや接着剤等によって取り付けられている。
【0077】
低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hの密度は、木質耐火被覆材30の密度よりも高くされている。これらの低密度木質外装材60L、及び高密度木質外装材60Hによって、木質耐火被覆材30の外面30Bが被覆されている。これにより、CFT柱10の意匠性が高められる。
【0078】
図5に示されるように、高密度木質外装材60Hの密度は、低密度木質外装材60Lの密度よりも高くされている。この高密度木質外装材60Hは、木質耐火被覆材30の端部30Eの外面30Bに取り付けられている。
【0079】
また、高密度木質外装材60Hは、木質耐火被覆材30の二面加熱領域R2の外面30Bに取り付けられている。さらに、高密度木質外装材60Hは、木質耐火被覆材30の一面加熱領域R1と二面加熱領域R2との境界を跨いて配置され、二面加熱領域R2と一面加熱領域R1とに亘っている。
【0080】
一方、低密度木質外装材60Lは、木質耐火被覆材30の一般部30Mの外面30Bに取り付けられている。また、低密度木質外装材60Lは、木質耐火被覆材30の一面加熱領域R1の外面30Bに取り付けられている。
【0081】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0082】
本実施形態によれば、木質耐火被覆材30の外面30Bには、低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hが取り付けられている。これにより、火災時に、木質耐火被覆材30が焼失することが抑制される。したがって、CFT柱10の意匠性を高めつつ、CFT柱10における鋼管12の耐火性能を向上させることができる。
【0083】
また、低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hの密度は、木質耐火被覆材30の密度よりも高くされている。これにより、火災時に、木質耐火被覆材30が焼失することがさらに抑制される。
【0084】
さらに、木質耐火被覆材30の端部30Eの外面30Bに取り付けられた高密度木質外装材60Hの密度は、木質耐火被覆材30の端部30Eの密度よりも高くされている。これにより、火災時に、木質耐火被覆材30の端部30Eが焼失することをより確実に抑制することができる。
【0085】
また、高密度木質外装材60Hは、木質耐火被覆材30の二面加熱領域R2と一面加熱領域R1との境界を跨いて配置され、二面加熱領域R2と一面加熱領域R1とに亘っている。これにより、火災時に、木質耐火被覆材30の二面加熱領域R2が焼失した場合、高密度木質外装材60Hの一端側が、一面加熱領域R1に支持される。したがって、高密度木質外装材60Hの脱落が抑制される。
【0086】
(第二実施形態の変形例)
次に、第二実施形態の変形例について説明する。
【0087】
上記第二実施形態では、低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hの密度は、木質耐火被覆材30の密度よりも高くされている。しかし、低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hの少なくとも一方の密度が、木質耐火被覆材30の密度よりも高くされても良い。
【0088】
また、上記第二実施形態では、木質耐火被覆材30の外面30Bに、2種類の低密度木質外装材60L及び高密度木質外装材60Hが取り付けられている。しかし、木質耐火被覆材30の外面30Bには、木質耐火被覆材30よりも密度が高い1種類の木質外装材を取り付けても良い。また、木質耐火被覆材30の外面30Bには、木質耐火被覆材30と密度が同じ、又は木質耐火被覆材30よりも密度が低い木質外装材を取り付けても良い。
【0089】
また、図6に示される変形例では、高密度木質外装材60Hが、隣り合う木質耐火被覆材30の目地32,38を跨ぐように、木質耐火被覆材30の外面30Bに取り付けられている。
【0090】
具体的には、鋼管12の周囲には、複数のコーナー下地材20、及び複数の中間下地材22が配置されている。中間下地材22は、例えば、断面L字形状の軽量鉄骨等によって形成されており、隣り合うコーナー下地材20の間に、鋼管12の材軸方向に沿って配置されている。
【0091】
中間下地材22は、鋼管12の材軸方向を長手方向として配置されており、鋼管12の柱脚部から柱頭部に亘っている。この中間下地材22の上下の端部は、図示しないランナーによって支持されている。
【0092】
木質耐火被覆材30は、隣り合うコーナー下地材20及び中間下地材22に亘って配置されており、その両側の端部が、複数のビス34によってコーナー下地材20及び中間下地材22にそれぞれ取り付けられている。また、中間下地材22上には、隣り合う木質耐火被覆材30の端部間に形成された目地38が配置されている。
【0093】
ここで、高密度木質外装材60Hは、隣り合う木質耐火被覆材30の目地32,38を跨ぐように、木質耐火被覆材30の外面30Bに取り付けられている。これにより、隣り合う木質耐火被覆材30の目地32,38から、CFT柱10の鋼管12側へ火災熱が侵入することが抑制される。したがって、CFT柱10の鋼管12の耐火性能が向上する。なお、木質耐火被覆材30の外面30Bの他の部位には、低密度木質外装材60Lが取り付けられている。
【0094】
(第三実施形態)
次に、第三実施形態について説明する。なお、第三実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0095】
図7には、第三実施形態に係る鉄骨部材の耐火構造が適用されたCFT柱10が示されている。第三実施形態では、木質耐火被覆材30が、CLT(Cross Laminated Timber)によって形成されている。
【0096】
具体的には、木質耐火被覆材30は、厚み方向に複数の木質層72を有している。各木質層72は、複数の木板(ラミナ)74によって形成されている。隣り合う木質層72は、厚み方向から見て、各々の木板74を互いに交差(直交)させた状態で積層接着されている。
【0097】
最も鋼管12側に位置する木質層72は、木板74の長手方向が、鋼管12の材軸方向に沿うように配置されている。また、最も鋼管12側に位置する木質層72において、ビス34が貫通される木板(高密度木板)74Hは、他の木板74よりも密度が高くされている。
【0098】
(作用)
次に、第三実施形態の作用について説明する。
【0099】
図7に示されるように、木質耐火被覆材30は、CLTによって形成されている。この木質耐火被覆材30の最も鋼管12側に位置する木質層72において、ビス34が貫通される木板(高密度木板)74Hは、他の木板(低密度木板)74よりも密度が高くされている。
【0100】
これにより、火災時に、木板74Hの焼失が抑制される。したがって、火災時に、木質耐火被覆材30が脱落することが抑制される。
【0101】
(上記第一~第三実施形態の変形例)
次に、上記第一実施形態、第二実施形態、及び第三実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態及び第三実施形態にも適宜適用可能である。
【0102】
上記第一実施形態では、コーナー下地材20が、断面L字形状に形成されている。しかし、下地材は、断面L字形状に限らず、断面C字形状や断面矩形状のスタッド等でも良い。
【0103】
また、上記第一実施形態では、コーナー下地材20が、図示しないランナーに支持されている。しかし、下地材は、CFT柱10の鋼管12に支持されても良い(取り付けられても良い)。
【0104】
また、上記第一実施形態では、鉄骨部材がCFT柱10の鋼管12とされている。しかし、鉄骨部材は、鋼管12に限らず、形鋼でも良い。また、上記第一実施形態では、鉄骨部材が柱(CFT柱10)とされている。しかし、鉄骨部材は、柱に限らず、鉄骨梁でも良い。
【0105】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
12 鋼管(鉄骨部材)
20 コーナー下地材(下地材)
30 木質耐火被覆材
30A 内面(木質耐火被覆材の内面)
30B 外面(木質耐火被覆材の外面)
30C 角部
30C1 外面(角部の外面)
30E 端部(木質耐火被覆材の端部)
30M 一般部(木質耐火被覆材の一般部)
32 目地
38 目地
40 金属板
60H 高密度木質外装材(木質外装材)
60L 低密度木質外装材(木質外装材)
t 厚み(木質耐火被覆材の厚み)
R2 二面加熱領域(角部の外面から木質耐火被覆材の厚みの1.5倍の領域)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7