(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 5/48 20240101AFI20240129BHJP
H01P 5/02 20060101ALI20240129BHJP
H02J 50/10 20160101ALI20240129BHJP
【FI】
H04B5/02
H01P5/02 D
H02J50/10
(21)【出願番号】P 2022126630
(22)【出願日】2022-08-08
(62)【分割の表示】P 2017171726の分割
【原出願日】2017-09-07
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】庄司 勇輝
【審査官】対馬 英明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-096612(JP,A)
【文献】特開2013-046561(JP,A)
【文献】特開2015-100232(JP,A)
【文献】特開2009-268022(JP,A)
【文献】特開2005-228981(JP,A)
【文献】特開2015-170936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 5/02
H01P 5/00-5/22
H02J 50/00-50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置であって、
送電コイルと、
前記送電コイルとの間で電界および磁界の少なくとも何れかにより結合する受電コイルを有する他の通信装置へ、前記送電コイルを介して所定の電力伝送周波数で無線送電する送電回路と、
前記他の通信装置に信号を送信するための送信アンテナと、
受信アンテナと、
前記他の通信装置が有する送信アンテナを介して前記他の通信装置から送信された
差動信号を、前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、
前記送電コイルから前記受信アンテナ
を介して前記受信回路へ入力される前記電力伝送周波数の信号を抑制するフィルタ回路と、を有し、
前記受信アンテナは、前記他の通信装置から送信される前記差動信号の一方と他方を受信するための2つの電極を有する
ことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記受信回路は、前記他の通信装置から所定の通信周波数の搬送波により送信された信号を、前記受信アンテナを介して受信することを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記フィルタ回路は、前記電力伝送周波数の信号の通過を抑制するノッチフィルタであることを特徴とする請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記フィルタ回路は、所定の遮断周波数を有する高域通過フィルタであって、前記遮断周波数が前記電力伝送周波数より大きく且つ前記通信周波数より小さい高域通過フィルタを有することを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記受信アンテナは、前記他の通信装置が有する送信アンテナとの間で電界結合することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記受信アンテナは、前記他の通信装置が有する送信アンテナとの間で磁界結合することを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項7】
前記受信アンテナは、前記他の通信装置から送信される差動信号の一方と他方を受信するための2つの伝送路を有することを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項8】
前記送電コイルと前記受信アンテナとは、同一基板上において同心円状に構成されることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項9】
前記受信アンテナは、前記送電コイルが成す円の内側に構成されることを特徴とする請求項8に記載の通信装置。
【請求項10】
前記受信回路は、複数の異なる周波数で変調された信号を、前記受信アンテナを介して同時に受信することを特徴とする請求項1から
9の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項11】
前記受信回路は、前記他の通信装置が有する送信アンテナを介して前記他の通信装置からベースバンド方式で送信された信号を、前記受信アンテナを介して受信することを特徴とする請求項
1に記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線による電力伝送および通信を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機器の可動性と制御の要求に対応するため、信号を伝送することができる旋回可動部を設けた機器が多くなっている。例として、ロボットのハンド部や、ネットワークカメラの雲台の接続部や、モバイル機器のコネクタ等が挙げられる。
【0003】
従来から、このような機器の旋回可動部において、無線で信号を伝送する技術が提案されている。高速な伝送レート及び低遅延性能を実現可能な無線信号伝送方式として、特許文献1や特許文献2の近傍電磁界結合による通信が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-72810号公報
【文献】特開2011-228933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
機器の旋回可動部において、無線による信号伝送のみならず、無線による電力伝送ができれば、ケーブルやフレキシブル基板(以下「ケーブル等」という)を完全に省略することができるようになる。機器の旋回可動部を完全にワイヤレス化できれば、ケーブル等の劣化を防止することができるだけでなく、製造時において、狭小部でケーブル等を接続する必要がなく、製造を容易にすることができる。
【0006】
しかし、信号伝送のためのアンテナと電力伝送のためのアンテナを近接して配置し、近傍電磁界結合による非接触の信号伝送および電力伝送を行う場合、電力伝送に用いるアンテナから信号伝送に用いるアンテナに対して、干渉が発生することがある。この干渉により信号伝送の品質が劣化するという課題があった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑み、非接触の信号伝送と電力伝送を近接して行う場合における、電力伝送が信号伝送に与える干渉を抑制し、非接触の信号伝送の通信品質を改善することができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決する手段として、本発明による通信装置は、通信装置であって、送電コイルと、前記送電コイルとの間で電界および磁界の少なくとも何れかにより結合する受電コイルを有する他の通信装置へ、前記送電コイルを介して所定の電力伝送周波数で無線送電する送電回路と、前記他の通信装置に信号を送信するための送信アンテナと、受信アンテナと、前記他の通信装置が有する送信アンテナを介して前記他の通信装置から送信された信号を、前記受信アンテナを介して受信する受信回路と、前記送電コイルから前記受信アンテナを介して前記受信回路へ入力される前記電力伝送周波数の信号を抑制するフィルタ回路と、を有し、
前記受信アンテナは、前記他の通信装置から送信される前記差動信号の一方と他方を受信するための2つの電極を有する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、非接触の信号伝送と電力伝送を近接して行う場合に、無線電力伝送が無線信号伝送に与える干渉を抑制し、近接通信の通信品質を改善することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態による通信装置の構成を示す構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるアンテナの構造と、カプラとフィルタ回路と受信回路の接続を模式的に示した説明図である。
【
図3】本発明の一実施形態によるアンテナのポートの位置を示す斜視図である。
【
図4】高域通過フィルタによる干渉の減衰量のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態による通信装置100について説明する。本実施形態は、無線電力伝送と無線通信が互いに近接した位置で同時に行われることがある通信装置100に関する。
【0012】
本実施形態では無線電力伝送を行う電力伝送アンテナとして、コイル状の導体が用いられるものとする。以下ではこの媒体を「コイル」という(特に区別する場合、送電側を「送電コイル」、受電側を「受電コイル」という)。一方、通信を行う通信アンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)としては、プリント基板上に電極のパターンが形成された結合器が用いられるものとする。以下ではこの媒体を「カプラ」という。また以下では、無線電力伝送を行う媒体と通信を行う媒体が一体化された構成を「アンテナ」という。ここで「通信」とは、機器を制御する信号や機器が取得した情報や機器の状態を示す情報を送受信することをいう。「電力伝送」とは、制御対象の機器や通信を行う機器に電力を供給するために、送電コイルから受電コイルへ無線で電力を伝送することをいう。
【0013】
また本明細書では、電力伝送するために使用する周波数を「電力伝送周波数」といい、通信を行うために使用する周波数を「通信周波数」というものとする。なお、通信装置100による通信は、通信周波数の搬送波の変復調を伴う通信方式に限らず、搬送波の変復調を伴わないベースバンド方式で行われてもよい。本明細書において、ベースバンド方式における通信周波数とは、伝送される信号の平均的な周波数を指すものとする。
【0014】
図1は本実施形態による通信装置100の構成を示す構成図である。なお、以下で説明する構成は、そのすべてが必須であるとは限られない。
【0015】
以下の説明では、電力の伝送においては、
図1のA側からB側に無線で電力を伝送する(
図1の実線の矢印方向)場合を例に説明する。また、無線通信においては、A側とB側との間で双方向に通信を行うことが可能であるが、以下ではB側からA側に信号を送信する場合を中心に説明する(
図1の破線の矢印方向)。
【0016】
例えば、撮像部が雲台に対して旋回するネットワークカメラに通信装置100が実装される場合、雲台内に存在するA側の構成から撮像部内に存在するB側の構成に対して電力が供給され、撮像部で撮像された画像データなどの情報がB側からA側に伝送される。
【0017】
符号101は無線電力伝送のための電力源である外部直流電源を示している。符号102は、外部直流電源101から供給された電力をスイッチングして交流電流(AC電流)に変換する送電回路を示している。符号103,104は電力伝送のそれぞれ送電側と受電側のアンテナを示している。アンテナ103,104はそれぞれ送受電のコイルとカプラを有しているが、このことは後に再び説明する。符号105は、アンテナ103からアンテナ104に伝送された電力を整流して出力する受電回路を示している。符号107は、伝送される信号により制御される機器を示しており、本実施形態ではカメラを示している。符号123は、カメラ107が撮像した映像データあるいはカメラの状態信号の入力を受け付け、信号伝送により送信するための送信回路を示している。受電回路105から出力された電力は、カメラ107と送信回路123に供給され、それぞれの動作のために用いられる。
【0018】
符号122は、送信回路123から送信された信号を受信する受信回路を示している。なお、本実施形態では、アンテナ104が信号の送信側、アンテナ103が信号の受信側になっている場合を説明しているため、送信回路と受信回路がそれぞれアンテナ104側とアンテナ103側に位置しているが、信号伝送方向が逆の場合は送信回路と受信回路が入れ替わることは言うまでもない。この場合、フィルタ回路151の位置も入れ替わることになる。また、アンテナ104とアンテナ103との間で双方向通信が行われる場合には、通信装置100のA側とB側のそれぞれに送信回路と受信回路の両方が含まれていてもよい。そしてこの場合、フィルタ回路151はA側とB側の何れか一方に存在していてもよいし、両方に存在していてもよい。
【0019】
アンテナ103と受信回路122の間には、フィルタ回路151が設けられている。フィルタ回路151は、無線電力伝送の無線通信に対する影響を低減させるフィルタを有している。符号106は雲台内の制御部を示している。
【0020】
図2は、アンテナの構造と、カプラとフィルタ回路と受信回路の接続を模式的に示した説明図である。
【0021】
図2(A),(B)に示すように、アンテナ103は送電コイル201と受信側カプラ202を有している。送電コイル201と受信側カプラ202は互いに同心円状に配置されている。アンテナ104は、受電コイル211と送信側カプラ212を有している。受電コイル211と送信側カプラ212も互いに同心円状に配置されている。送電コイル201と受電コイル211、および、受信側カプラ202と送信側カプラ212はそれぞれ互いに対向して近接して設けられている。送電コイル201側に交流電力が流れることにより、該電力が受電コイル211に伝送されるようになっている。
【0022】
受信側カプラ202と送信側カプラ212は、電界または磁界またはその両方による結合に基づいて通信することができるように、互いに十分近づけられて設けられている。受信側カプラ202と送信側カプラ212の間隙は例えば1mm以下とすることができる。
【0023】
図2(C)は、カプラとフィルタ回路と受信回路の接続を示している。本実施形態の通信は差動ディジタル信号で行われるようになっている。カプラはインピーダンスを持ち、差動方式で入出力を行う。受信側カプラ202は、差動方式で通信できるようにフィルタ回路151に接続される。そのため、受信側カプラ202は、
図2(C)に示すように、通信ポートを二つ有している。二つの通信ポートは差動信号を構成する正と負の信号のそれぞれの伝送路を構成している。フィルタ回路151は、受信側カプラ202と受信回路122の間の伝送路に設けられている。なお、送信側カプラ212と送信回路123との間も、上記と同様に差動通信を行うための二つの通信ポートを介して接続される。ただし、送信側と受信側との通信は差動方式でなくシングルエンド方式によって行われてもよく、その場合には各カプラが有する通信ポートが一つであってもよい。
【0024】
本実施形態の通信装置100にとって、無線の電力伝送を行うための構成としては、少なくとも受電コイル211と送電コイル201があればよい。すなわち、外部直流電源101と送電回路102は外部の装置とし、交流電流を送電コイル201に直接供給するようにしてもよい。
【0025】
また、本実施形態の通信装置100にとって、無線の信号伝送を行うための構成としては、少なくとも送信回路123と、送信側カプラ212と、受信側カプラ202と、フィルタ回路151と、受信回路122があればよい。
【0026】
図3は、本実施形態によるアンテナ103のポート位置を示す斜視図である。なお、アンテナ104も同様の構成であり、受電コイル211が
図3の送電コイル201と同様に配置され、送信側カプラ212が
図3の受信側カプラ202と同様に配置される。
【0027】
図3に示すように、本実施形態では送電コイル201と受信側カプラ202は同心円状に配置されている。本実施形態では差動ディジタル信号を伝送するために、受信側カプラ202は図に示すように通信ポート301と通信ポート302の二つの通信ポートを有している。また、送電コイル201は一つの電力伝送ポート303を有している。
【0028】
以上の構成により、本実施形態の通信装置100は以下のように作用する。外部直流電源101から直流電力が送電回路102に入力され、送電回路102においてスイッチングによりAC電流に変換され、アンテナ103の送電コイル201に供給される。なお、このスイッチングの周波数が電力伝送周波数となる。送電コイル201に交流電流が流れることにより、受電コイル211に交流電流が発生し、すなわち、送電コイル201から受電コイル211に電力が伝送され、受電回路105に入力される。受電回路105では、交流電流を必要な電圧の直流電流に変換し、送信回路123とカメラ107に供給し、それらの機器の動作の動力源として使用させる。
【0029】
カメラ107は撮像を行い、取得した画像データとカメラの状態信号(たとえばカメラのパン、チルト、ズーム(PTZ)の状態を示す状態信号)を出力し、送信回路123に送る。送信回路123は、入力された信号を差動ディジタル信号に変換し、送信側カプラ212に送る。受信側カプラ202と送信側カプラ212は電界、磁界、またはその両方で結合されているため、送信側カプラ212に入力された信号が受信側カプラ202に伝送される。この時、送電コイル201及び受電211がそれぞれ受信側カプラ202及び送信側121に近接して設けられ、かつ、電力の伝送波形の振幅が通信信号の伝送波形の振幅より大きく変動するため、受信側カプラ202に伝送された信号には、電力伝送に起因するノイズが混入しうる。そこで通信装置100は、ノイズを抑制するためのフィルタ回路151を備える。ノイズは主に電力伝送のために直流を交流に変換する時の電力伝送周波数を中心に存在するため、フィルタ回路151は電力伝送周波数の近傍帯域の信号を除去するように構成される。フィルタ回路151からノイズが除去された信号が受信回路122に入力され、受信回路122は差動ディジタル信号の少なくともエッジ信号を検出するようにする。受信回路122はさらにコンパレータを有し、検出した信号を整形して復調する。なお、コンパレータにおける電流又は電圧の閾値の設定により電力伝送周波数以外のノイズをさらに除去するようにしてもよい。受信回路122によって復調された信号は制御部106に送られ、所定のデータ処理に利用される。
【0030】
なお、カメラ107を制御するため、制御部106から制御用信号をカメラ107に送る場合は、制御部106から送信回路、カプラ、受信回路、カメラの順番に信号を送ればよい。このとき、受信回路122と送信回路123がそれぞれ送信回路と受信回路として機能することは既述した通りである。この場合、信号を受信するカメラ側における受信回路とカプラとの間にもフィルタ回路151を設けるのが好ましい。
【0031】
次に、フィルタ回路151が高域通過フィルタを有する場合のフィルタの効果について
図4を用いて説明する。
【0032】
図4は、高域通過フィルタによる干渉の減衰量のシミュレーション結果を示す。
図4(A)、(B)において、縦軸は電力伝送ポート303から各通信ポートへの干渉度を示し、干渉度の値が低くければ低いほど、電力伝送が信号伝送に与える影響が低いことを示す。横軸は通信周波数を示す。
【0033】
図4(A)は通信装置100がフィルタ回路151を実装しない場合のグラフ、
図4(B)はフィルタ回路151を実装した場合のグラフを示している。電力伝送周波数は1.8MHzであると想定し、電力伝送周波数を遮断する高域通過フィルタが用いられる。電力伝送ポート303、通信ポート301、通信ポート302は、それぞれ
図3に示すように配置されているものとする。401と403は電力伝送ポート303から通信ポート301への干渉度を示しており、402と404は電力伝送ポート303から通信ポート302への干渉度を示している。
【0034】
図4(A)に示すように、フィルタ回路151を実装しない場合、通信周波数1.8MHzでの干渉度は、電力伝送ポート303から通信ポート301に対する干渉度は約-29dB、電力伝送ポート303から通信ポート302に対する干渉度は約-39dBであった。
【0035】
図4(B)に示すように、フィルタ回路151を実装する場合、通信周波数1.8MHzでの干渉度は、電力伝送ポート303から通信ポート301に対する干渉度は約-55dB、電力伝送ポート303から通信ポート302に対する干渉度は約-65dBであった。
【0036】
以上より、フィルタ回路151による干渉度の改善はいずれの通信ポートに対しても約26dBの効果があることが分かる。
【0037】
なお、フィルタ回路151のフィルタの方式は上記の高域通過フィルタに限られない。
【0038】
図5は、フィルタの方式と特性を示したグラフである。
【0039】
図5(A)にノッチフィルタの特性を示す。縦軸に通過特性、横軸に周波数を示す。
【0040】
符号f1は送電回路102のスイッチングによる電力伝送周波数、符号f2は信号を伝送する通信周波数を示している。また符号f3は、
図5(B)との比較のために、高域通過フィルタの遮断周波数を示している。電力伝送周波数f1は1.8MHzを想定している。
【0041】
ノッチフィルタは、所定の周波数の信号のみを遮断するフィルタである。本実施形態のノッチフィルタには、通信周波数f2の信号を通過させ、電力伝送周波数f1の信号を遮断あるいは少なくとも抑制するノッチフィルタが用いられる。すなわち、周波数f1の信号と周波数f2の信号のうち、電力伝送周波数f1の信号のみを減衰させるようにフィルタの特性が調整される。
【0042】
図5(A)に示すように、このようなノッチフィルタをアンテナ103の受信側カプラ202と受信回路122の間に挿入する事で無線通信への無線電力伝送の影響を減衰させることが出来る。
【0043】
なお、スイッチング周波数が変化する場合、それに応じてフィルタ特性を適宜変更させるような構成とすることで、変化に対応して信号の干渉を抑制することができる。
図5(B)は、高域通過フィルタによって無線通信に対する無線電力伝送の影響を減衰させる方式とフィルタ特性を示している。
【0044】
図5(A)と同様に、縦軸に通過特性、横軸に周波数を示す。符号f1は送電回路102のスイッチングによる電力伝送周波数、符号f2は信号を伝送する通信周波数、符号f3はフィルタの遮断周波数をそれぞれ示している。
【0045】
高域通過フィルタは、その遮断周波数以上の信号を通過させるものである。本実施形態では、遮断周波数f3が電力伝送周波数f1より大きく、かつ、通信周波数f2より小さい高域通過フィルタを用いるようにする。
【0046】
図5(B)に示すように、このような高域通過フィルタを用いることにより、通信周波数f2における信号の損失が十分に小さく、かつ、電力伝送周波数f1においては大きな損失を有する急峻な減衰特性を得ることができる。
【0047】
上述したように、ノッチフィルタの代わりに高域通過フィルタを用いても、無線通信に対する無線電力伝送の影響を減衰させることができる。
【0048】
なお、送信回路123は、複数種類の信号を、それぞれ別の周波数で変調して同時に送信し、受信回路122は各周波数で各信号を復調してもよい。
【0049】
また、複数種類の信号を異なる周波数で伝送する方法に代えて、シリアルパラレル変換手段とパラレルシリアル変換手段を用いても良い。この場合、信号の送信回路123の上流にパラレルシリアル変換回路を設け、受信回路122の下流にシリアルパラレル変換回路を設けるようにする。
【0050】
この場合、複数種類の信号は、送信回路123に入力される前に、パラレルシリアル変換回路に入力され、パラレルシリアル変換回路によってシリアル信号に変換される。シリアル信号に変換された信号は、シリアル信号の状態で送信側カプラ212と受信側カプラ202との間で伝送される。受信側に伝送されたシリアル信号も電力伝送のノイズが混入されるため、フィルタ回路151によってノイズが除去され、しかる後に受信回路122に入力される。受信回路122はシリアル信号を整形及び復調した後に、シリアルパラレル変換回路に該信号を入力する。シリアルパラレル変換回路は、シリアル信号を元の複数種類の信号に変換し、以降の処理に供する。
【0051】
以上では、通信装置100がネットワークカメラに実装される例を説明したが、これに限らず、ロボットハンド、船舶等に搭載の旋回式レーダー、風力発電用プロペラなどに通信装置100を適用することもできる。また、通信及び電力伝送を行うアンテナは、機器の旋回部に限らず、スライド移動する部分や、可動でない固定された部分に配置されてもよい。さらに、
図1に示す通信装置100のA側の部分とB側の部分とが、それぞれ独立した別々の機器に実装されることで、電力伝送及び通信を行う複数の機器による通信システムが構成されてもよい。
【0052】
また、アンテナ103,104は旋回可能な円形状のアンテナを例にとり説明したが、アンテナの形状は円形、矩形、立体の円筒形、立方形、平行形など、その形を問わない。また、上記の説明では電力伝送を行うための媒体としてコイルが用いられるものとしたが、これに限らず、例えばコイルの代わりに電極を用いて電界結合による無線電力伝送が行われてもよい。
【0053】
さらに、本実施形態ではコイルとカプラが同心状に配置される場合について説明したが、その他の配置であっても効果を得ることができる。例えば、コイルとカプラを平行に配置しても同様の効果を得ることができる。また、コイルとカプラの配置は、カプラがコイルの外側に配置されてもよいし、コイルとカプラが順不同に混在する場合でも本実施形態の効果を得ることができる。
【0054】
また、基板でアンテナを構成する場合、材料、材質、基板厚、外径、パターンの太さ、パターン間隔などは任意に決められる。また、基板以外によってもアンテナを実現可能で、例えばリード線やリッツ線が巻かれて構成されたアンテナであってもよい。
【0055】
無線の電力伝送の方式は、電磁誘導方式、磁界共鳴方式など、方式に制限はない。また、無線通信の方式は、本実施形態では電界、磁界、又はその両方による結合を用いた通信方式としたが、これに限らず、例えばWi-Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標)などの通信方式であってもよい。これらの場合にも同様の効果を得ることができる。
【0056】
上記通信のための信号は2値のディジタル信号であるものとして説明したが、通信用の信号は2値に限られず、多値の信号であってもよい。
【0057】
本実施形態によれば、小さいアンテナを介して無線で電力と信号を同時に伝送する場合において、信号伝送に対する電力伝送の影響を抑制することができる。これにより、例えば、種々の機器の旋回可動部を完全にワイヤレス化することができ、構造が簡単であり、かつ、製造が容易な機器を実現することができる。
【0058】
本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0059】
100 通信装置
101 外部直流電源
102 送電回路
103 アンテナ
104 アンテナ
105 受電回路
106 制御部
107 カメラ
122 受信回路
123 送信回路
151 フィルタ回路
201 送電コイル
202 受信側カプラ
211 受電コイル
212 送信側カプラ