(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】バッテリ診断装置
(51)【国際特許分類】
B66B 5/00 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
B66B5/00 G
(21)【出願番号】P 2022131037
(22)【出願日】2022-08-19
【審査請求日】2022-08-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹山 和徳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178598(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198234(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源からの電力供給によって駆動する巻上機と、前記巻上機を制御して乗りかごを着床運転させるエレベータ制御装置と、前記商用電源からの電力供給が停止した場合に前記巻上機に電力を供給するバッテリと、を備えるエレベータ装置に関するバッテリ診断装置であって、
ユーザ操作によって、バッテリ寿命診断開始信号を前記エレベータ制御装置に送信する診断開始信号送信手段と、
前記診断開始信号送信手段からの前記バッテリ寿命診断開始信号を受信すると前記巻上機への電力の供給元を前記商用電源から前記バッテリに切り替える供給電力切替手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記商用電源からの電力供給系統を切り離す商用電源遮断手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記巻上機への供給電流を任意に制御可能なバッテリ供給電流制御手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に、前記バッテリ供給電流制御手段を用いて前記バッテリの寿命診断を実施するバッテリ寿命診断モード実施手段と、
前記バッテリ寿命診断モード実施手段による前記バッテリの寿命診断の実施時に、前記バッテリから前記巻上機に電力を供給するときに低下するバッテリ電圧を取得するバッテリ電圧取得手段と、
前記バッテリ電圧取得手段によって得られたバッテリ電圧を記録するバッテリ電圧記録手段と、
前記バッテリ電圧記録手段に記録されたバッテリ電圧の変化量を算出するバッテリ電圧変化演算手段と、
前記バッテリ電圧の変化量に基づいて前記バッテリの交換の要否を判定するバッテリ寿命診断手段と、
前記バッテリ寿命診断手段による診断結果を外部データベースへ送信する診断結果送信手段と、を備え
、
前記バッテリ供給電流制御手段は、前記バッテリから前記巻上機に対して一定間隔で複数回のバッテリ定格以上のパルス電流を通電し、
前記バッテリ電圧変化演算手段は、それぞれの前記パルス電流の通電時のバッテリ電圧降下値から電圧降下の傾きを算出し、
前記バッテリ寿命診断手段は、前記電圧降下の傾きが閾値を超過した場合に、バッテリ交換要と判定する、バッテリ診断装置。
【請求項2】
商用電源からの電力供給によって駆動する巻上機と、前記巻上機を制御して乗りかごを着床運転させるエレベータ制御装置と、前記商用電源からの電力供給が停止した場合に前記巻上機に電力を供給するバッテリと、を備えるエレベータ装置に関するバッテリ診断装置であって、
ユーザ操作によって、バッテリ寿命診断開始信号を前記エレベータ制御装置に送信する診断開始信号送信手段と、
前記診断開始信号送信手段からの前記バッテリ寿命診断開始信号を受信すると前記巻上機への電力の供給元を前記商用電源から前記バッテリに切り替える供給電力切替手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記商用電源からの電力供給系統を切り離す商用電源遮断手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記巻上機への供給電流を任意に制御可能なバッテリ供給電流制御手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に、前記バッテリ供給電流制御手段を用いて前記バッテリの寿命診断を実施するバッテリ寿命診断モード実施手段と、
前記バッテリ寿命診断モード実施手段による前記バッテリの寿命診断の実施時に、前記バッテリから前記巻上機に電力を供給するときに低下するバッテリ電圧を取得するバッテリ電圧取得手段と、
前記バッテリ電圧取得手段によって得られたバッテリ電圧を記録するバッテリ電圧記録手段と、
前記バッテリ電圧記録手段に記録されたバッテリ電圧の変化量を算出するバッテリ電圧変化演算手段と、
前記バッテリ電圧の変化量に基づいて前記バッテリの交換の要否を判定するバッテリ寿命診断手段と、
前記バッテリ寿命診断手段による診断結果を外部データベースへ送信する診断結果送信手段と、を備え
、
前記バッテリ供給電流制御手段は、前記バッテリから前記巻上機に対して一定間隔で複数回のバッテリ定格以上のパルス電流を通電し、
前記バッテリ寿命診断手段は、前記バッテリの容量不足により前記バッテリからの通電が指令値通りに実施できなかったと判定した場合、バッテリ寿命診断信号の受付を禁止し、
その場合、前記診断結果送信手段は、バッテリ交換要求を外部監視センターに発報する、バッテリ診断装置。
【請求項3】
商用電源からの電力供給によって駆動する巻上機と、前記巻上機を制御して乗りかごを着床運転させるエレベータ制御装置と、前記商用電源からの電力供給が停止した場合に前記巻上機に電力を供給するバッテリと、を備えるエレベータ装置に関するバッテリ診断装置であって、
ユーザ操作によって、バッテリ寿命診断開始信号を前記エレベータ制御装置に送信する診断開始信号送信手段と、
前記診断開始信号送信手段からの前記バッテリ寿命診断開始信号を受信すると前記巻上機への電力の供給元を前記商用電源から前記バッテリに切り替える供給電力切替手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記商用電源からの電力供給系統を切り離す商用電源遮断手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記巻上機への供給電流を任意に制御可能なバッテリ供給電流制御手段と、
前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に、前記バッテリ供給電流制御手段を用いて前記バッテリの寿命診断を実施するバッテリ寿命診断モード実施手段と、
前記バッテリ寿命診断モード実施手段による前記バッテリの寿命診断の実施時に、前記バッテリから前記巻上機に電力を供給するときに低下するバッテリ電圧を取得するバッテリ電圧取得手段と、
前記バッテリ電圧取得手段によって得られたバッテリ電圧を記録するバッテリ電圧記録手段と、
前記バッテリ電圧記録手段に記録されたバッテリ電圧の変化量を算出するバッテリ電圧変化演算手段と、
前記バッテリ電圧の変化量に基づいて前記バッテリの交換の要否を判定するバッテリ寿命診断手段と、
前記バッテリ寿命診断手段による診断結果を外部データベースへ送信する診断結果送信手段と、を備え
、
前記バッテリ供給電流制御手段は、前記バッテリから前記巻上機に対して一定間隔で複数回のバッテリ定格以上のパルス電流を通電し、
前記バッテリ電圧変化演算手段は、それぞれの前記パルス電流の通電時のバッテリ電圧降下値から電圧降下の傾きを算出し、
前記バッテリ寿命診断手段は、前記電圧降下の傾きが閾値を超過し、その超過した回数が所定回数以上である場合に、バッテリ交換要と判定する、バッテリ診断装置。
【請求項4】
前記バッテリ寿命診断手段は、前記バッテリの容量不足により前記バッテリからの通電が指令値通りに実施できなかったと判定した場合、バッテリ寿命診断信号の受付を禁止し、
その場合、前記診断結果送信手段は、バッテリ交換要求を外部監視センターに発報する、請求項
3に記載のバッテリ診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータにおけるバッテリの寿命診断に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの救出運転装置に使用されるバッテリが劣化した状態では、救出運転時にバッテリから電力を供給できなくなり、救出運転が行えずに乗客をエレベータ内に閉じ込めてしまう可能性がある。そのため、バッテリについては、本来の寿命に対して余裕を持った定期的な交換がなされる。
【0003】
また、バッテリの寿命診断に関しては様々な提案がなされているが、例えば、診断専用の回路が必要であったり、バッテリで実際に負荷となる機器を動作させたりする必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1では、エレベータの乗りかごに搭載されたバッテリの状態を測定するテストモードを用意し、テストモード時にバッテリからの電力で乗りかごを運転させ、運転の前後のバッテリ電圧の比較で、バッテリの劣化状況を判定する技術が記載されている。
【0005】
また、特許文献2では、ドア制御部がバッテリのテストモード時にドア駆動電源の供給を遮断してバッテリからの電源をドア駆動用モータに供給した状態で、検出部で検出した信号からバッテリの状態を取得してバッテリの劣化状況を判定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-139324号公報
【文献】特開2018-2388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、例えば、乗りかごに搭載されたバッテリの端子電圧を測定するためには、電圧測定装置などが必要であり、エレベータ側に電圧測定装置を予め用意するか、あるいは保守員が点検の都度、エレベータ内に電圧測定装置を持ち込む必要がある。
【0008】
そして、エレベータ側に電圧測定装置を備えた場合には、その分、エレベータ装置が追加の回路構成を持つことになり、エレベータ装置のコストアップにつながる。また、保守員が電圧測定装置を持ち込んで電圧を測定する場合は、保守作業量の増加や安全面から好ましくない。
【0009】
そこで、本発明の実施形態は、保守員による作業を要することなく、低コストで、エレベータのバッテリの寿命診断を実行可能なバッテリ診断装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態のバッテリ診断装置は、商用電源からの電力供給によって駆動する巻上機と、前記巻上機を制御して乗りかごを着床運転させるエレベータ制御装置と、前記商用電源からの電力供給が停止した場合に前記巻上機に電力を供給するバッテリと、を備えるエレベータ装置に関するバッテリ診断装置であって、ユーザ操作によって、バッテリ寿命診断開始信号を前記エレベータ制御装置に送信する診断開始信号送信手段と、前記診断開始信号送信手段からの前記バッテリ寿命診断開始信号を受信すると前記巻上機への電力の供給元を前記商用電源から前記バッテリに切り替える供給電力切替手段と、前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記商用電源からの電力供給系統を切り離す商用電源遮断手段と、前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に前記巻上機への供給電流を任意に制御可能なバッテリ供給電流制御手段と、前記供給電力切替手段によって前記巻上機への電力の供給元が前記商用電源から前記バッテリに切り替えられた場合に、前記バッテリ供給電流制御手段を用いて前記バッテリの寿命診断を実施するバッテリ寿命診断モード実施手段と、前記バッテリ寿命診断モード実施手段による前記バッテリの寿命診断の実施時に、前記バッテリから前記巻上機に電力を供給するときに低下するバッテリ電圧を取得するバッテリ電圧取得手段と、前記バッテリ電圧取得手段によって得られたバッテリ電圧を記録するバッテリ電圧記録手段と、前記バッテリ電圧記録手段に記録されたバッテリ電圧の変化量を算出するバッテリ電圧変化演算手段と、前記バッテリ電圧の変化量に基づいて前記バッテリの交換の要否を判定するバッテリ寿命診断手段と、前記バッテリ寿命診断手段による診断結果を外部データベースへ送信する診断結果送信手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第1実施形態の全体構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第2実施形態におけるパルス電流の変化の様子を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3実施形態におけるパルス電流の変化の様子を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第4実施形態の動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第5実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を用いて、本発明のバッテリ診断装置の実施形態(第1実施形態~第5実施形態)について説明する。なお、第2実施形態以降では、それまでの実施形態と同様の事項については説明を適宜省略する。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の全体構成を示す概略図である。
図2は、
図1の各構成から一部を抜粋した図である。
【0014】
図1に示すように、エレベータ装置100は、エレベータ(乗りかご)を駆動する巻上機5に電力を供給する商用交流電源1、バッテリ充電回路14によって充電されるバッテリ15、バッテリ15からの電力をインバータ4経由やDC/DCコンバータ17経由で受け取るエレベータ制御装置9などを備える。
【0015】
エレベータ装置100では、通常の買電時は商用交流電源1からの交流電力が主回路遮断器2、買電遮断用継電器接点13bを介してコンバータ3に供給され、コンバータ3で所定電圧の直流電力に変換され、コンバータ3で得られた直流電力がインバータ4を介して所定の周波数の交流電力として巻上機5に供給される。
【0016】
また、商用交流電源1からの交流電力が買電監視用継電器接点6b、買電遮断用継電器接点13bを介して変圧器7に供給され、変圧器7および整流器8a、8bで所定電圧の直流電力に変換され、エレベータ制御装置9に供給される。エレベータ制御装置9は、図示や詳細な説明を省略するがエレベータ制御に必要な機能を有し、エレベータ(乗りかご)を昇降動作させる。
【0017】
バッテリ充電回路14は、通常の買電時には商用交流電源1から主回路遮断器2、買電遮断用継電器接点13b、継電器接点10、買電遮断器11を介して供給される電力でバッテリ15を充電する。停電等で商用交流電源1からの電力供給が途絶えると、買電監視用継電器6aがオフとなり、買電監視用継電器6aの買電監視用継電器接点6b(NO接点)によって買電遮断用継電器13aがオフとなる。
【0018】
買電遮断用継電器13aがオフとなることで買電遮断用継電器13aの買電遮断用継電器接点13b(NO接点)によって巻上機5およびエレベータ制御装置9は商用交流電源1と遮断され、バッテリ15による電力供給が開始される。また、同時に買電監視用継電器12aがオフとなり、買電監視用継電器12aのNC接点によってバッテリ電力供給用継電器16aがオンとなる。バッテリ電力供給用継電器16aがオンとなることで、バッテリ電力供給用継電器16aのバッテリ電力供給用継電器接点16bおよび16c(NO接点)によりバッテリ15からインバータ4およびDC/DCコンバータ17経由でエレベータ制御装置9に電力が供給される。
【0019】
なお、バッテリ15による電力供給中にエレベータ制御装置9からの信号でオンとなる継電器(図示せず)の継電器接点10(NC接点)により、復電時等の停電等で商用交流電源1からの電力供給が開始されたとしても、エレベータ制御装置9がバッテリによる電力供給終了信号を発するまでバッテリ15による電力供給回路を商用交流電源1から遮断する。
【0020】
診断開始信号送信手段18は、停電等の異常発生時以外に、ユーザによる任意のタイミングでの診断開始用接点19の操作によって買電監視用継電器6aをオフにし、インバータ4およびエレベータ制御装置9への電力供給手段を商用交流電源1からバッテリ15に切り替える。
【0021】
ここで、
図3は、第1実施形態の動作を示すフローチャートである。エレベータ制御装置9が診断開始信号送信手段18により送信された診断開始信号を受信すると(S1)、供給電力切替手段20によって電力供給手段を商用交流電源1からバッテリ15に切り替えると共に、バッテリ寿命診断モード実施手段21によってバッテリ寿命診断を開始する(S2)。
【0022】
以下、バッテリ供給電流制御手段22によってバッテリ15から、回転しないようにブレーキをかけた状態の巻上機5のコイルにバッテリ寿命診断に必要な電流を供給する(S3)。そして、電力供給中のバッテリ15の電圧(電圧降下値)をバッテリ電圧取得手段23によって取得し(S4)、電力供給中のバッテリ15の電圧降下の変化量をバッテリ電圧変化演算手段24によって算出する(S5)。
【0023】
その後、バッテリ15の電圧降下の変化量をバッテリ電圧記録手段25に保存すると共に(S6)、その結果からバッテリ寿命診断手段26にてバッテリ15の交換要否を判定する(S7)。診断結果は診断結果送信手段27によって外部データベース28に送信される(S8)。電圧降下の変化量が、予め設定された閾値を超過していた場合(S9でYes)、つまり、バッテリ15の交換が必要と判定された場合、診断結果送信手段27は、外部監視センター等にバッテリ15の交換要求を発報し(S10)、保守員等によってバッテリ15の交換を実施する。
【0024】
このように、第1実施形態のエレベータ装置100によれば、巻上機5にブレーキをかけた状態におけるバッテリ寿命診断モード実施手段21によるバッテリ15の検知電圧をバッテリ電圧記録手段25で記録し、バッテリ電圧変化演算手段24で算出される電圧低下の変化量に基づいてバッテリ15の交換要否がバッテリ寿命診断手段26にて判定される。この結果、エレベータ(乗りかご)を実際に昇降させることなく実際のバッテリ放電特性からバッテリ15の寿命を把握することができ、バッテリ15の交換時期を適切に判定することができる。
【0025】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態の構成を示す概略図および動作を示すフローチャートは第1実施形態(
図1~
図3)と同様である。
図4は、第2実施形態におけるパルス電流の変化の様子を示すグラフである。
【0026】
バッテリ寿命診断モード実施手段21によってバッテリ15の寿命診断を行う際、バッテリ供給電流制御手段22によってバッテリ15から巻上機5に対して一定間隔で複数回のバッテリ定格以上のパルス電流30(IP)を通電する。そして、各電流通電時の各バッテリ電圧31の電圧降下値32(Vd)をバッテリ電圧取得手段23によって取得する。その後、バッテリ電圧変化演算手段24は各々の電圧降下の変化量から傾き33、35(α)を算出し、バッテリ電圧記録手段25に保存する。αが閾値34を超えた場合(つまり、閾値34を基準に、αが傾き33の側ではなく傾き35の側になった場合)に、バッテリ交換要と判定する。
【0027】
このような診断は、例えば、3か月ごとに行う。そして、αが閾値34を超えていない場合は、バッテリ交換不要と判定する。αが閾値34を超えた場合は、バッテリ交換要と判定する。
【0028】
このように、第2実施形態によれば、具体的に、バッテリ15から巻上機5に対して一定間隔でパルス電流30(IP)を通電したときのバッテリ15の電圧降下値の変化量から算出した傾きαに基づいて、バッテリ15の交換の要/不要を高精度に判定できる。
【0029】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態の構成を示す概略図は第1実施形態(
図1、
図2)と同様である。
図5は、第3実施形態の動作を示すフローチャートである。
図6は、第3実施形態におけるパルス電流の変化の様子を示すグラフである。
【0030】
図5のフローチャートについて、
図3のフローチャートと同様の事項については説明を省略する。S3の後、S11において、バッテリ供給電流制御手段22によってバッテリ15から巻上機5に対して一定間隔で複数回のバッテリ定格以上のパルス電流30(IP)を通電する。その際、バッテリ寿命診断手段26は、バッテリ15の容量不足によりバッテリ15からの通電が指令値36(
図6)通りに実施できなかったと判定した場合(S11でNo)、バッテリ寿命診断信号の受付を禁止し、つまり、以降の診断を実施しない設定とし(S12)、診断結果送信手段27によって直ちにバッテリ交換要求を外部監視センター等に発報する(S10)。
【0031】
このように、第3実施形態によれば、バッテリ15の容量不足によりバッテリ15からの通電が指令値36(
図6)通りに実施できなかったときに、バッテリ15の寿命診断を中止するとともに直ちにバッテリ交換要求を外部監視センター等に発報するという迅速な対応をとることができる。
【0032】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態の構成を示す概略図は第1実施形態(
図1、
図2)と同様である。
図7は、第4実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0033】
図7のフローチャートについて、
図3のフローチャートと同様の事項については説明を省略する。S9で電圧降下の変化量が閾値を超過していた場合(Yes)、S13において、診断結果送信手段27は、閾値超過が2回目以上か否かを判定し、Yesの場合はステップS10に進み、Noの場合はステップS1に戻る。つまり、閾値超過が1回目の場合には交換要求発報を行わず、閾値超過が2回目以降の場合には交換要求発報を行う。
【0034】
このように、第4実施形態のエレベータ装置100によれば、閾値超過が1回目の場合は誤診断の可能性も踏まえて交換要求発報は行わず、閾値超過が2回目以降の場合に交換要求発報を行うことで、誤診断による交換要求発報の可能性を低減できる。
【0035】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態の構成を示す概略図は第1実施形態(
図1、
図2)と同様である。
図8は、第5実施形態の動作を示すフローチャートである。
【0036】
図8のフローチャートは、
図3のフローチャートに対して、
図5のフローチャートのS11、S12を追加するとともに、
図7のフローチャートのS13を追加したものである。
【0037】
このように、第5実施形態のエレベータ装置100によれば、第1実施形態の作用効果に加えて、第3実施形態の作用効果と第4実施形態の作用効果を併せて得ることができる。
【0038】
本実施形態のエレベータ制御装置9で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disc)-ROM(Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供することができる。また、当該プログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0039】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0040】
例えば、バッテリ15の劣化度合いが高い場合、停電時自動着床運転は行うが、ドアゾーン内力行運転は行わずにドアを開くとともに、必要があればアナウンスで段差注意を促すようにしてもよい。
【0041】
また、環境温度によってバッテリ15の劣化の進行度は異なるので、それも反映させてもよい。具体的には、例えば、環境温度が異なる複数の地域のバッテリ15の劣化に関するデータを収集、蓄積しておき、環境温度が近い地域のデータを用いて各種閾値などを調整してもよい。
【符号の説明】
【0042】
1…商用交流電源、2…主回路遮断器、3…コンバータ、4…インバータ、5…巻上機、6a…買電監視用継電器、6b…買電監視用継電器接点、7…変圧器、8a…整流器、8b…整流器、9…エレベータ制御装置、10…継電器接点、11…買電遮断器、12a…買電監視用継電器、12b…買電監視用継電器接点、13a…買電遮断用継電器、13b…買電遮断用継電器接点、14…バッテリ充電回路、15…バッテリ、16a…バッテリ電力供給用継電器、16b…バッテリ電力供給用継電器接点、16c…バッテリ電力供給用継電器接点、17…DC/DCコンバータ、18…診断開始信号送信手段、19…診断開始用接点、20…供給電力切替手段、21…バッテリ寿命診断モード実施手段、22…バッテリ供給電流制御手段、23…バッテリ電圧取得手段、24…バッテリ電圧変化演算手段、25…バッテリ電圧記録手段、26…バッテリ寿命診断手段、27…診断結果送信手段、28…外部データベース、29…巻上機回転数、30…パルス電流IP、31…バッテリ電圧、32…バッテリ電圧降下値Vd、33…電圧降下の傾きα(N回目)、34…電圧降下の傾きαの閾値、35…電圧降下の傾きα(N+1回目)、36…パルス電流IP指令値
【要約】
【課題】保守員による作業を要することなく、低コストで、エレベータのバッテリの寿命診断を行う。
【解決手段】実施形態のバッテリ診断装置は、商用電源からの電力供給によって駆動する巻上機と、巻上機を制御して乗りかごを着床運転させるエレベータ制御装置と、商用電源からの電力供給が停止した場合に巻上機に電力を供給するバッテリと、を備えるエレベータ装置のバッテリ診断時に、巻上機への電力の供給元を商用電源からバッテリに切り替え、バッテリから巻上機に電力を供給するときに低下するバッテリ電圧の変化量に基づいて、バッテリの交換の要否を判定する。
【選択図】
図1