(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】データ推定装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06N 20/00 20190101AFI20240129BHJP
【FI】
G06N20/00
(21)【出願番号】P 2022529998
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2020023286
(87)【国際公開番号】W WO2021250902
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000000310
【氏名又は名称】株式会社アシックス
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(72)【発明者】
【氏名】猪股 貴志
【審査官】▲はま▼中 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031714(JP,A)
【文献】特開2015-076076(JP,A)
【文献】特開2020-109598(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0087476(US,A1)
【文献】三宅尚志ほか,気象情報の不確かさを考慮した週間電力負荷予測,電気学会論文誌B,日本,社団法人電気学会,1995年01月20日,第115-B巻, 第2号,pp.135-142,ISSN 0385-4213 (MIYAKE, Takashi et al., One-day- through Seven-day-ahead Electrical Load Forcasting
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06N 3/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習部を含み、
前記学習部は、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
i
から目的変数O
i
を推定する機械学習モデルM
i
を生成し、機械学習モデルM
i
により推定された目的変数O
i
を説明変数群E
i
に加えて新たな説明変数群E
i+1
を設定し、説明変数群E
i+1
から目的変数O
i+1
を推定する機械学習モデルM
i+1
を生成し(ただしi=1)、
前記学習部は、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習部は、n個の目的変数を説明変数として投入する順序を決めるために、各投入順序で機械学習モデルを生成してn個の目的変数の予測精度を算出し、n個の目的変数の予測精度の平均値が最大である、又は、n個の目的変数の予測精度の標準偏差が最小である投入順序を最終的に選択することを特徴とす
るデータ推定装置。
【請求項2】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習部を含み、
前記学習部は、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
i
から目的変数O
i
を推定する機械学習モデルM
i
を生成し、機械学習モデルM
i
により推定された目的変数O
i
を説明変数群E
i
に加えて新たな説明変数群E
i+1
を設定し、説明変数群E
i+1
から目的変数O
i+1
を推定する機械学習モデルM
i+1
を生成し(ただしi=1)、
前記学習部は、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習部は、n個の目的変数の内、機械学習モデルによる説明変数からの予測精度が最も高い目的変数を目的変数O
1
として選択し、
前記学習部は、既に選択された目的変数O
1~O
iとの相関が高い順にそれ以降の目的変数O
i+1(i=1~(n-1))を選択することを特徴とす
るデータ推定装置。
【請求項3】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習ステップを含み、
前記学習ステップは、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
iから目的変数O
iを推定する機械学習モデルM
iを生成し、機械学習モデルM
iにより推定された目的変数O
iを説明変数群E
iに加えて新たな説明変数群E
i+1を設定し、説明変数群E
i+1から目的変数O
i+1を推定する機械学習モデルM
i+1を生成
し(ただしi=1)
、
前記学習ステップは、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習ステップは、n個の目的変数を説明変数として投入する順序を決めるために、各投入順序で機械学習モデルを生成してn個の目的変数の予測精度を算出し、n個の目的変数の予測精度の平均値が最大である、又は、n個の目的変数の予測精度の標準偏差が最小である投入順序を最終的に選択することを特徴とするデータ推定方法。
【請求項4】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習ステップを含み、
前記学習ステップは、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
i
から目的変数O
i
を推定する機械学習モデルM
i
を生成し、機械学習モデルM
i
により推定された目的変数O
i
を説明変数群E
i
に加えて新たな説明変数群E
i+1
を設定し、説明変数群E
i+1
から目的変数O
i+1
を推定する機械学習モデルM
i+1
を生成し(ただしi=1)、
前記学習ステップは、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習ステップは、n個の目的変数の内、機械学習モデルによる説明変数からの予測精度が最も高い目的変数を目的変数O
1
として選択し、
前記学習ステップは、既に選択された目的変数O
1
~O
i
との相関が高い順にそれ以降の目的変数O
i+1
(i=1~(n-1))を選択することを特徴とするデータ推定方法。
【請求項5】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習ステップをコンピュータに実行させ、
前記学習ステップは、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
iから目的変数O
iを推定する機械学習モデルM
iを生成し、機械学習モデルM
iにより推定された目的変数O
iを説明変数群E
iに加えて新たな説明変数群E
i+1を設定し、説明変数群E
i+1から目的変数O
i+1を推定する機械学習モデルM
i+1を生成
し(ただしi=1)
、
前記学習ステップは、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習ステップは、n個の目的変数を説明変数として投入する順序を決めるために、各投入順序で機械学習モデルを生成してn個の目的変数の予測精度を算出し、n個の目的変数の予測精度の平均値が最大である、又は、n個の目的変数の予測精度の標準偏差が最小である投入順序を最終的に選択することを特徴とするデータ推定プログラム。
【請求項6】
説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習ステップをコンピュータに実行させ、
前記学習ステップは、1つ以上の説明変数を含む説明変数群E
i
から目的変数O
i
を推定する機械学習モデルM
i
を生成し、機械学習モデルM
i
により推定された目的変数O
i
を説明変数群E
i
に加えて新たな説明変数群E
i+1
を設定し、説明変数群E
i+1
から目的変数O
i+1
を推定する機械学習モデルM
i+1
を生成し(ただしi=1)、
前記学習ステップは、i=2~(n-1)(nは2以上の自然数)に対して機械学習モデルの生成を繰り返し、
前記学習ステップは、n個の目的変数の内、機械学習モデルによる説明変数からの予測精度が最も高い目的変数を目的変数O
1
として選択し、
前記学習ステップは、既に選択された目的変数O
1
~O
i
との相関が高い順にそれ以降の目的変数O
i+1
(i=1~(n-1))を選択することを特徴とするデータ推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、説明変数から目的変数を推定するデータ推定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習の手法として、説明変数と目的変数を含む訓練データから木構造の分類器を生成する決定木学習が用いられている。学習した決定木を用いて未知の入力データに対して分類結果を予測することができる。また、訓練データをランダムに変えて複数の決定木を学習し、多数決を取って予測することで汎化能力を高めるランダムフォレストが利用されている。
【0003】
特許文献1に記載の学習装置は、それぞれに説明変数および目的変数を有する訓練データから、説明変数の組合せにより構成され、説明変数の真偽により目的変数の推定をそれぞれ行う複数の決定木を生成し、複数の決定木と等価な線形モデルであって、説明変数の組み合わせにより構成される項をもれなく列挙した線形モデルを生成することにより、入力データから線形モデルを用いて安定した予測結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
説明変数から目的変数を予測する機械学習において、目的変数の推定精度が頭打ちになるという問題があった。
【0006】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、説明変数から目的変数を推定する精度を高めることのできるデータ推定技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のデータ推定装置は、説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習部を含む。前記学習部は、1つ以上の説明変数を含む説明変数群Eiから目的変数Oiを推定する機械学習モデルMiを生成し、機械学習モデルMiにより推定された目的変数Oiを説明変数群Eiに加えて新たな説明変数群Ei+1を設定し、説明変数群Ei+1から目的変数Oi+1を推定する機械学習モデルMi+1を生成する(ただしi=1)。
【0008】
本発明の別の態様は、データ推定方法である。この方法は、説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する学習ステップを含む。前記学習ステップは、1つ以上の説明変数を含む説明変数群Eiから目的変数Oiを推定する機械学習モデルMiを生成し、機械学習モデルMiにより推定された目的変数Oiを説明変数群Eiに加えて新たな説明変数群Ei+1を設定し、説明変数群Ei+1から目的変数Oi+1を推定する機械学習モデルMi+1を生成する(ただしi=1)。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、コンピュータプログラム、データ構造、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、説明変数から目的変数を推定する精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るデータ推定装置の構成図である。
【
図2】
図1のデータ推定装置による機械学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
【
図3】走行性能に関する二次データを説明する図である。
【
図4】実施例におけるデータ推定手順を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5(a)、
図5(b)は、
図1の評価項目表示部による評価項目の表示例を説明する図である。
【
図6】実施例における目的変数の推定精度を説明する図である。
【
図7】4個の目的変数A~D間の相関係数を説明する図である。
【
図8】
図8(a)、
図8(b)は、選択された目的変数と残りの目的変数の相関係数を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本実施の形態に係るデータ推定装置100の構成図である。データ推定装置100は、説明変数入力部10、学習部20、目的変数出力部30、説明変数追加部40、評価項目表示部50、説明変数記憶部60、学習モデル記憶部70、および目的変数記憶部80を含む。同図は機能に着目したブロック図を描いており、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェア、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現することができる。
【0013】
データ推定装置100は、学習フェーズにおいて、説明変数および目的変数を含む訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成する。データ推定装置100は、予測フェーズにおいて、生成された機械学習モデルに未知の説明変数を入力して目的変数を予測する。
【0014】
まず、学習フェーズにおけるデータ推定装置100の構成と動作を説明する。学習部20には、説明変数の値と目的変数の値が訓練データとして与えられる。学習部20は、与えられた訓練データを用いて、説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成し、学習モデル記憶部70に記憶する。機械学習の手法として回帰モデル、決定木、ランダムフォレスト、ベイス推定、ニューラルネットワークなどを用いることができる。
【0015】
目的変数出力部30は、学習された機械学習モデルにもとづいて説明変数の値から推定される目的変数の値を出力し、目的変数記憶部80に記憶する。説明変数追加部40は、機械学習モデルにもとづいて推定された目的変数を新たに説明変数に加え、説明変数記憶部60に記憶する。
【0016】
説明変数入力部10は、新たに設定された説明変数を説明変数記憶部60から読み出し、学習部20に供給する。学習部20は、新たに設定された説明変数から目的変数を推定する機械学習モデルを生成し、学習モデル記憶部70に記憶する。以降、推定された目的変数を新たに説明変数に加えて機械学習モデルの生成を繰り返す。
【0017】
次に予測フェーズにおけるデータ推定装置100の構成と動作を説明する。予測フェーズでは、学習部20は予測部として機能する。
【0018】
説明変数入力部10は、説明変数記憶部60に格納された説明変数の値を未知データとして読み出し、学習部20に与える。
【0019】
学習部20は、学習モデル記憶部70に格納された機械学習モデルを読み出し、機械学習モデルにもとづいて説明変数から目的変数を推定する。目的変数出力部30は推定された目的変数の値を目的変数記憶部80に記憶する。
【0020】
説明変数追加部40は、機械学習モデルにもとづいて推定された目的変数を新たに説明変数に加え、説明変数記憶部60に記憶する。
【0021】
説明変数入力部10は、新たに設定された説明変数を説明変数記憶部60から読み出し、学習部20に供給する。学習部20は、学習モデル記憶部70に格納された機械学習モデルにもとづいて新たに設定された説明変数から目的変数を推定する。以降、推定された目的変数を新たに説明変数に加えて機械学習モデルによる目的変数の推定を繰り返す。
【0022】
評価項目表示部50は、推定された目的変数の値にもとづいて各評価項目の値を算出して表示する。評価項目表示部50は、説明変数の値と推定された目的変数の値にもとづいて各評価項目の値を算出してもよい。
【0023】
図2は、データ推定装置100による機械学習モデルの生成手順を説明するフローチャートである。
【0024】
訓練データとして、1つ以上の説明変数と複数の目的変数Oi(i=1~n)が与えられているとする。
【0025】
説明変数入力部10は、1つ以上の説明変数を説明変数群E1に設定する(S10)。学習部20は、変数iに1を設定する(S20)。
【0026】
学習部20は、説明変数群Eiから目的変数Oiを推定する学習モデルMiを生成し、目的変数出力部30は推定された目的変数Oiを目的変数記憶部80に出力する(S30)。
【0027】
説明変数追加部40は、学習モデルMiにより推定された目的変数Oiを説明変数群Eiに追加して新たな説明変数群Ei+1を設定し、説明変数記憶部60に記憶する(S40)
【0028】
学習部20は、変数iを1だけインクリメントする(S50)。変数iがnより大きい場合(S60のY)、機械学習モデルの生成処理を終了する。変数iがn以下である場合(S60のN)、ステップS30に戻り、それ以降の手順を繰り返す。
【0029】
このように、説明変数が同一で目的変数が複数ある場合、以下の手順(1)~(3)により目的変数の推定精度を向上させることができる。
(1)予め用意した説明変数で任意の目的変数を推定可能な機械学習モデルを構築する。(2)推定した目的変数を新たに説明変数に加えて、新たな機械学習モデルを構築する。(3)上記(2)を繰り返す。
【0030】
次に、実施例として、データ推定装置100を用いて、ランナーの走行に関する一次データと身体特性データから走行性能に関する二次データを学習し、予測する例を説明する。
【0031】
ランナーのシューズに設けられたセンサを用いて計測可能な走行に関する一次データとして、走行ペース、ストライド、ピッチ、接地時間、滞空時間がある。ランナーの身体特性データとして身長、体重がある。これらの計測可能な一次データと身体特性データが説明変数である。
【0032】
推定する走行性能に関する二次データとして、地面反力z成分(「Fz」と表記する)の2番目のピーク値(「Fz 2nd max」と表記する)、推進力積、ブレーキ力積、地面反力z成分立ち上がり率(「Fz Loading Rate」と表記する)がある。これらの二次データが目的変数である。
【0033】
図3は、走行性能に関する二次データを説明する図である。グラフの横軸は時間、縦軸は地面反力(Ground Reaction Force)である。地面反力は鉛直方向(z方向)の成分と、前後方向(y方向)の成分を有し、実線は地面反力のz成分Fz、破線は地面反力のy成分Fyを示す。
【0034】
地面反力z成分Fzの値の2番目のピーク値がFz 2nd maxであり、地面反力z成分Fzの立ち上がりの傾きがFz Loading Rateである。地面反力y成分が正の値をもつ領域の面積が推進力積であり、地面反力y成分が負の値をもつ領域の面積がブレーキ力積である。
【0035】
以下、説明の便宜上、Fz 2nd maxを二次データA、推進力積を二次データB、ブレーキ力積を二次データC、Fz Loading Rateを二次データDと呼ぶ。これらの二次データA~Dを目標変数A~Dとも呼ぶ。
【0036】
一例として、機械学習モデルにより、説明変数である一次データと身体特性データから目的変数である二次データA、B、C、Dをこの順で推定し、推定された二次データをこの順で説明変数に加えていく。目的変数を推定する順番、言い換えれば推定された目的変数を説明変数に投入する順番はこれ以外の順番であってもよく、目的変数の推定精度がより高い投入順序の決め方は後述する。
【0037】
図4は、実施例におけるデータ推定手順を説明するフローチャートである。
【0038】
ランナーのシューズのセンサから走行に関する一次データを取得し、ランナーの身体特性データとともに説明変数記憶部60に記憶する(S100)。
【0039】
学習部20は、一次データと身体特性データを説明変数として回帰モデルに入力し、走行性能に関する二次データAを目的変数として推定する(S110)。
【0040】
説明変数追加部40は、推定された二次データAを新たに説明変数に加え、学習部20は、一次データ、身体特性データ、および二次データAを説明変数として回帰モデルに入力し、二次データBを目的変数として推定する(S120)。
【0041】
説明変数追加部40は、推定された二次データBを新たに説明変数に加え、学習部20は、一次データ、身体特性データ、二次データA、および二次データBを説明変数として回帰モデルに入力し、二次データCを目的変数として推定する(S130)。
【0042】
説明変数追加部40は、推定された二次データCを新たに説明変数に加え、学習部20は、一次データ、身体特性データ、二次データA、二次データB、および二次データCを説明変数として回帰モデルに入力し、二次データDを目的変数として推定する(S140)。
【0043】
評価項目表示部50は、一次データと二次データA~Dにもとづいて評価項目の値を算出して表示する(S150)。
【0044】
図5(a)、
図5(b)は、評価項目表示部50による評価項目の表示例を説明する図である。一次データと推定された二次データA~Dにもとづいて、左足、右足のキック力、衝撃の負担軽減度、ブレーキ効果、キック効率などの評価項目V
1~V
Mについてたとえば5段階評価で表示する。表示態様は
図5(a)、
図5(b)のようにレーダチャートであってもよく、棒グラフでもよい。
【0045】
図6は、実施例における目的変数の推定精度を説明する図である。上記の実施例の一次データと身体特性データを説明変数として回帰モデルに入力し、二次データA~Dを目的変数として推定したときの決定係数を求めた。
図6では、比較のため、従来手法として説明変数のみで目的変数A~Dを推定したときの決定係数と、本手法により二次データA~Dの順に推定された目的変数を説明変数に加えて推定したときの決定係数を示す。決定係数は寄与率とも呼ばれるものであり、1に近いほど目的変数の推定精度が高い。
【0046】
目的変数Aの決定係数は、説明変数のみで予測した場合、0.84であり、最初の目的変数の推定であるため、本手法でも同じ0.84である。
【0047】
目的変数Bの決定係数は、説明変数のみで予測した場合、0.67であり、推定された目的変数Aを説明変数に追加して予測した場合、0.69に向上した。
【0048】
目的変数Cの決定係数は、説明変数のみで予測した場合、0.36であり、推定された目的変数Bをさらに説明変数に追加して予測した場合、0.52に向上した。
【0049】
目的変数Dの決定係数は、説明変数のみで予測した場合、0.69であり、推定された目的変数Cをさらに説明変数に追加して予測した場合、0.74に向上した。
【0050】
実施例において、回帰モデルで推定された目的変数を説明変数に順次追加して次の目的変数を回帰モデルで推定することにより、目的変数の推定精度を向上させることができた。
【0051】
次に複数の目的変数を説明変数に投入する順序を変えて、目的変数の推定精度をさらに向上させる方法について説明する。
【0052】
n個の目的変数を説明変数として投入する順序を決めるために、各投入順序で機械学習モデルを生成してn個の目的変数の予測精度を算出し、n個の目的変数の予測精度の平均値が最大である、又は、n個の目的変数の予測精度の標準偏差が最小である投入順序を最終的に最適な投入順序として選択する。
【0053】
上記の実施例において、4個の目的変数A~Dの24通りのすべての投入順序について4個の目的変数A~Dの予測精度を評価した。4個の目的変数をA、D、B、Cの順序で投入した場合、目的変数A、B、C、Dの決定係数はそれぞれ0.84、0.70、0.55、0.71となり、4個の目的変数A~Dの決定係数の平均値は0.7000、4個の目的変数A~Dの決定係数の標準偏差は0.1186となった。24通りの投入順序の内、A、D、B、Cの順序で投入した場合に、4個の目的変数A~Dの決定係数の平均値が最大であり、かつ、標準偏差が最小となった。A、D、B、Cの投入順序を最適な投入順序として選択する。
【0054】
目的変数の最適な投入順序は、すべての投入順序を試さなくても、目的変数間の相関係数にもとづいて導出することができる。目的変数の最適な投入順序の決定方法を次に説明する。
【0055】
図7は、4個の目的変数A~D間の相関係数を説明する図である。この相関係数を参照して、目的変数の最適な投入順序を次の手順で決定する。
図8(a)、
図8(b)は、選択された目的変数と残りの目的変数の相関係数を
図7から抜き出したものであり、以下の手順の説明の際に参照する。
【0056】
(ステップ1)説明変数のみで回帰モデルを構築した際に最も予測精度が高い目的変数を選択し、説明変数に加えて回帰モデルを構築する。
実施例の場合、
図6を参照すると、説明変数のみで予測した場合、目的変数Aが最も予測精度が高いので、目的変数Aを最初に説明変数に加えて、回帰モデルを構築する。
【0057】
(ステップ2)選択された目的変数と残りのすべての目的変数の相関係数を求め、相関係数の絶対値が最も大きい目的変数を選択し、新たに説明変数に加えて回帰モデルを構築する。ここで、選択された目的変数が複数の場合は、相関係数の絶対値の平均を取る。
実施例の場合、
図8(a)に示すように、選択された目的変数Aとの相関係数の絶対値が最も大きい目的変数Dを新たに説明変数に加え、回帰モデルを構築する。
【0058】
(ステップ3)ステップ2を繰り返す。
実施例の場合、
図8(b)に示すように、選択された目的変数A、Bとの相関係数の絶対値の平均が最も大きい目的変数Bを新たに説明変数に加え、回帰モデルを構築する。
【0059】
(ステップ4)さらに目的変数が残っている場合、ステップ2を繰り返す。
実施例の場合、最後の目的変数Cを新たに説明変数に加え、回帰モデルを構築する。
【0060】
以上述べたように、本実施の形態のデータ推定装置100によれば、説明変数から予測すべき目的変数が複数ある場合、まず説明変数で任意の目的変数を推定可能な機械学習モデルを構築し、次に推定された目的変数を新たに説明変数に加えて、次の目的変数を推定可能な機械学習モデルを構築することを繰り返すことで目的変数の推定精度を高めることができる。なお、目的変数は1つずつ説明変数に加えるものに限られず、複数の目的変数を説明変数に加える実施例にも本発明を適用することができる。
【0061】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
ランナーの走行に関する一次データと身体特性データから走行性能に関する二次データを推定する実施例を説明したが、説明変数から目的変数を推定するものであれば、どのような実施例にも本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
この発明は、データ推定技術に利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 説明変数入力部、 20 学習部、 30 目的変数出力部、 40 説明変数追加部、 50 評価項目表示部、 60 説明変数記憶部、 70 学習モデル記憶部、 80 目的変数記憶部、 100 データ推定装置。