(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】六方晶構造の支持体に触媒金属が担持された触媒およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/24 20060101AFI20240129BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240129BHJP
C01B 3/04 20060101ALI20240129BHJP
C01C 1/04 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B01J27/24 M
B01J37/08
C01B3/04 B
C01C1/04 E
(21)【出願番号】P 2022547029
(86)(22)【出願日】2021-02-02
(86)【国際出願番号】 KR2021001351
(87)【国際公開番号】W WO2021225254
(87)【国際公開日】2021-11-11
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0054538
(32)【優先日】2020-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヨン スク ジョ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヨン チャ
(72)【発明者】
【氏名】ヒャン ス ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン ミン キム
(72)【発明者】
【氏名】ヒュン テ ソン
(72)【発明者】
【氏名】スン ピル ユン
(72)【発明者】
【氏名】スク ウ ナム
(72)【発明者】
【氏名】タイク ジン リ
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウン ユン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ヘ ハン
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-149780(JP,A)
【文献】特開平08-141399(JP,A)
【文献】特表2016-538127(JP,A)
【文献】特開2004-035399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 3/00 - 3/58
C01C 1/00 - 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体;および
前記支持体上に担持された触媒金属;を含む、アンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応に使われる触媒であって、
前記触媒金属はロッド(Rod)状の粒子を含むかまたは六角形(Hexagonal)粒子、球状(Sphere)粒子および半球状(Semi-sphere)粒子からなる群から選択されたいずれか一つ以上の粒子を含
み、前記触媒の全体重量を基準として0.01重量%~3重量%の含量で担持されたものである、触媒。
【請求項2】
前記単結晶性物質は、六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride、h-BN)、窒化ホウ素ナノチューブ(Boron nitride nanotube、BNNTs)、窒化ホウ素ナノリボン(Boron nitride nanoribbons、BNNRs)、窒化ホウ素ナノシート(Boron nitride nanosheet)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒金属はルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、白金(Pt)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)および銅(Cu)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項2に記載の触媒。
【請求項4】
前記単結晶性物質は六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride、h-BN)を含む、請求項1に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒金属はルテニウム(Ru)を含む、請求項4に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒金属はロッド(Rod)状の粒子を含み、前記ロッド状の粒子は長さが10nm~80nmであり、アスペクト比(Aspect ratio)が1.2~20であるものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒金属は六角形(Hexagonal)粒子、球状(Sphere)粒子および半球状(Semi-sphere)粒子からなる群から選択されたいずれか一つ以上の粒子を含み、前記粒子は直径が2nm~40nmのものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒を利用した反応の転換頻度(TOF:Turnover frequency)が7,500h
-1以上であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒は、アンモニア脱水素化反応に使われるものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒は、アンモニア合成反応に使われるものである、請求項1に記載の触媒。
【請求項11】
六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体に触媒金属前駆体溶液を含浸させる段階;
含浸された結果物を乾燥する段階;および
乾燥した結果物を空気雰囲気または真空雰囲気で熱処理して前記支持体上に触媒金属が担持された触媒を得る段階;を含み、
前記乾燥した結果物を空気雰囲気または真空雰囲気で熱処理して前記触媒金属の形態および大きさのうち少なくともいずれか一つを調節することを特徴とする、触媒の製造方法。
【請求項12】
前記単結晶性物質は、六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride、h-BN)、窒化ホウ素ナノチューブ(Boron nitride nanotube、BNNTs)、窒化ホウ素ナノリボン(Boron nitride nanoribbons、BNNRs)、窒化ホウ素ナノシート(Boron nitride nanosheet)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項13】
前記触媒金属はルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、白金(Pt)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)および銅(Cu)からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項14】
前記触媒金属は触媒の全体重量を基準として0.1重量%~3重量%の含量で担持されたものである、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥した結果物を200℃~700℃で熱処理する、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項16】
前記乾燥した結果物を空気雰囲気で熱処理して前記触媒金属をロッド(Rod)状の粒子に形成し、
前記ロッド状の粒子は長さが10nm~80nmであり、アスペクト比(Aspect ratio)が1.2~20であるものである、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項17】
前記乾燥した結果物を真空雰囲気で熱処理して、前記触媒金属を六角形(Hexagonal)、球状(Sphere)、半球状(Semi-sphere)からなる群から選択されたいずれか一つ以上の形態の粒子に形成し、
前記粒子は直径が2nm~40nmのものである、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項18】
前記乾燥した結果物を真空雰囲気で熱処理して、前記触媒金属をエピタキシャル(Epitaxial)成長させることを特徴とする、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【請求項19】
前記触媒を利用した反応の転換頻度(TOF:Turnover frequency)が7,500h
-1以上であることを特徴とする、請求項
11に記載の触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体に触媒金属が担持された触媒およびその製造方法に関し、前記触媒はアンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応に有用に使うことができる。
【背景技術】
【0002】
化石エネルギーの枯渇および環境汚染の問題によって化石燃料を代替できる新再生可能代替エネルギーに対する要求が大きく、そのような代替エネルギーの一つとして水素が注目されている。
【0003】
燃料電池と水素燃焼装置は水素を反応ガスとして使っているが、燃料電池と水素燃焼装置を、例えば自動車や各種電子製品などに応用するために水素の安定的かつ持続的な供給乃至貯蔵技術が必要である。
【0004】
水素を利用する装置に水素を供給するために別途に設置された水素供給所から、水素が必要な時ごとに水素の供給を受ける方式を使うことができる。このような方式では、水素を貯蔵するために圧縮水素や液化水素を使うことができる。
【0005】
または、水素を貯蔵し発生させる物質を水素利用装置に搭載した後、該当物質の反応を通じて水素を発生させ、これを水素利用装置に供給する方式を使うことができる。この方式には例えば、金属水素化物(metal hydride)利用方法、吸着、脱着/炭素(absorbents/carbon)利用方法、化学的方法(chemical hydrogen storage)等が提案されている。
【0006】
このような水素発生物質として例えば、;アンモニアボラン、アンモニアなどを利用することができ、これらから脱水素化する過程で触媒が利用される。
【0007】
その中でも特にアンモニアは高い水素貯蔵密度(約17.7重量%)を有し、合成が容易である。
【0008】
ちなみに、アンモニア脱水素化反応およびアンモニア合成反応は下記の反応式1の通りである。
【0009】
(反応式1)
2NH3⇔3H2+N2△H=46kJ/mol
【0010】
従来はアンモニア脱水素化反応およびアンモニア合成反応の触媒として支持体に担持された触媒金属が研究されたが、触媒金属が支持体中によく分散されず、触媒活性が低調であるなど、改善の余地が多い。
【0011】
また、炭素で構成された支持体を使用するにおいての深刻な短所は、産業的な条件下で水素の添加に対する敏感性である。具体的には、炭素で構成された支持体はメタンに徐々に変形され、支持体の漸次的な損失とその結果として作業の困難を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は触媒活性が優秀なアンモニア脱水素用触媒またはアンモニア合成用触媒を提供することを目的とする。
【0013】
本発明は、アンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応中に分解されずに安定した触媒を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の目的は以上で言及した目的に制限されない。本発明の目的は以下の説明でより明確になるであろうし、特許請求の範囲に記載された手段およびその組み合わせで実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一実施例に係る触媒は、六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体および前記支持体上に担持された触媒金属を含むことができる。
【0016】
前記単結晶性物質は、六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride、h-BN)、窒化ホウ素ナノチューブ(Boron nitride nanotube、BNNTs)、窒化ホウ素ナノリボン(Boron nitride nanoribbons、BNNRs)、窒化ホウ素ナノシート(Boron nitride nanosheet)、炭素ナノチューブ(Carbon nanotubes、CNTs)、炭素ナノ繊維(Carbon nanofibers、CNFs)、還元された酸化グラフェン(Reduced graphene oxide、rGO)およびシリセン(Silicene)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0017】
前記触媒金属はルテニウム(Ru)ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、白金(Pt)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)および銅(Cu)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0018】
前記触媒金属は、触媒の全体重量を基準として0.01重量%~3重量%の含量で担持され得る。
【0019】
前記触媒金属はロッド(Rod)状の粒子を含み、前記ロッド状の粒子は長さが10nm~80nmであり、アスペクト比(Aspect ratio)が1.2~20であるものであり得る。
【0020】
前記触媒金属は、六角形(Hexagonal)粒子、球状(Sphere)粒子および半球状(Semi-sphere)粒子からなる群から選択されたいずれか一つ以上の粒子を含み、前記粒子は直径が2nm~40nmのものであり得る。
【0021】
前記触媒は反応の転換頻度(TOF:Turnover frequency)が7,500h-1以上であるものであり得る。
【0022】
前記触媒は、アンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応に使われるものであり得る。
【0023】
本発明の一実施例に係る触媒の製造方法は、六方晶窒化ホウ素を含む支持体に触媒金属前駆体溶液を含浸させる段階、含浸された結果物を乾燥する段階および乾燥した結果物を熱処理して前記支持体上に触媒金属が担持された触媒を得る段階を含むことができる。
【0024】
前記製造方法は、前記乾燥した結果物を200℃~700℃で熱処理するものであり得る。
【0025】
前記製造方法は、前記乾燥した結果物を空気雰囲気で熱処理して前記触媒金属をロッド(Rod)状の粒子に形成するものであり得る。
【0026】
前記製造方法は、前記乾燥した結果物を不活性気体雰囲気または真空雰囲気で熱処理して、前記触媒金属を六角形(Hexagonal)、球状(Sphere)、半球状(Semi-sphere)からなる群から選択されたいずれか一つ以上の形態の粒子に形成するものであり得る。
【0027】
前記製造方法は、前記乾燥した結果物を不活性気体雰囲気または真空雰囲気で熱処理して、前記触媒金属をエピタキシャル(Epitaxial)成長させるものであり得る。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る触媒は、比表面積が広い六方晶窒化ホウ素を支持体として使用し、これに触媒金属を均一に担持させたものであるため、触媒活性が優秀である。
【0029】
本発明に係る触媒は、アンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応の産業的な条件で分解されずに安定した六方晶窒化ホウ素を支持体として使ったものであるため、メタン化の問題なく触媒活性が安定的に維持される。
【0030】
本発明に係る触媒の製造方法は、熱処理を特定の条件で遂行することによって触媒金属の形態および/または大きさを調節できるところ、高い活性点を有する触媒を得ることができる。
【0031】
本発明に係る触媒は触媒活性および転換頻度(Turnover frequency)が高いため、少ない量でも従来に比べて同等乃至向上した性能を示すことができる。
【0032】
本発明に係る触媒は、既に知られている触媒に比べてアンモニア転換反応に対する転換頻度が非常に優秀であるため、水素の生産効率を大きく向上させることができる。
【0033】
本発明の効果は、以上で言及した効果に限定されない。本発明の効果は、以下の説明で推論可能なすべての効果を含むものと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の実施例1に係る触媒に対するXRD分析結果である。
【
図2】本発明の実施例1、実施例2、比較例1および比較例2に係る触媒のアンモニア転換率を測定した結果である。
【
図3a】本発明の実施例1に係る触媒に対するTEM分析結果である。
【
図3b】本発明の実施例2に係る触媒に対するTEM分析結果である。
【
図3c】本発明の実施例3に係る触媒に対するTEM分析結果である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴および利点は、添付された図面に関連した以下の好ましい実施例を通じて容易に理解され得るであろう。しかし、本発明はここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は開示された内容が徹底かつ完全になり得るように、そして通常の技術者に本発明の思想が十分に伝達されるようにするために提供されるものである。
【0036】
各図面を説明するにおいて、類似する参照符号を類似する構成要素に対して使った。添付された図面で、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して図示したものである。第1、第2等の用語は多様な構成要素を説明するのに使われ得るが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく第1構成要素は第2構成要素と命名され得、同様に第2構成要素も第1構成要素と命名され得る。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0037】
本明細書で、「含む」または「有する」等の用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加の可能性を予め排除しないものと理解されるべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは他の部分の「真上に」ある場合だけでなくその中間にさらに他の部分がある場合も含む。その反対に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」あるとする場合、これは他の部分の「真下に」ある場合だけでなくその中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0038】
特に明示されない限り、本明細書で使われた成分、反応条件、ポリマー組成物および配合物の量を表現するすべての数字、値および/または表現は、このような数字が本質的に異なるものの中でこのような値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、すべての場合「約」という用語によって修飾されるものと理解されるべきである。また、本記載において数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、特に指摘されない限りこのような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までのすべての値を含む。ひいては、このような範囲が整数を指称する場合、特に指摘されない限り最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
【0039】
本発明に係る触媒は、六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体および前記支持体上に担持された触媒金属を含む。
【0040】
前記六方晶構造の単結晶性物質は、六方晶窒化ホウ素(Hexagonal boron nitride、h-BN)、窒化ホウ素ナノチューブ(Boron nitride nanotube、BNNTs)、窒化ホウ素ナノリボン(Boron nitride nanoribbons、BNNRs)、窒化ホウ素ナノシート(Boron nitride nanosheet)、炭素ナノチューブ(Carbon nanotubes、CNTs)、炭素ナノ繊維(Carbon nanofibers、CNFs)、還元された酸化グラフェン(Reduced graphene oxide、rGO)およびシリセン(Silicene)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0041】
より具体的には、前記六方晶構造の単結晶性物質は、2次元の板状構造を有するものであり得る。例えば、前記六方晶構造の単結晶性物質は、シート(Sheet)またはフレーク(Flake)の板状構造を有する六方晶窒化ホウ素、窒化ホウ素ナノリボン、窒化ホウ素ナノシート、還元された酸化グラフェン、シリセンを含むことができ、好ましくは六方晶窒化ホウ素を含むことができる。
【0042】
2次元素材は既存のバルク素材で発見されていない新しい物理的および化学的特性のため、最近多くの研究が進行されている。六方晶窒化ホウ素はグラフェンのように六角形の形を有し、炭素の代わりにボロンと窒素で構成されているため、「白色グラフェン(white graphene)」と呼ばれたりもする。六方晶窒化ホウ素は表面にダングリングボンド(Dangling bond)がなく、非常に扁平であるため、触媒金属の支持体として有用に使うことができる。
【0043】
前記六方晶構造の単結晶性物質は表面積が広いのでその上に触媒金属を均一に分散させることができ、それにより触媒活性が大きく向上し得る。例えば、前記六方晶窒化ホウ素は表面積が2m2/g~50m2/gであり得る。
【0044】
前記六方晶窒化ホウ素は熱力学的に安定した支持体の役割をすることができる。したがって、アンモニア脱水素化反応またはアンモニア合成反応の産業的な条件で、メタン化または分解されずにその形状、特性などを維持することができる。したがって、前記触媒は安定的に触媒活性を維持することができる。
【0045】
前記触媒金属はルテニウム(Ru)、ニッケル(Ni)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、白金(Pt)、クロム(Cr)、パラジウム(Pd)および銅(Cu)からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。具体的には、前記触媒金属は前記触媒をアンモニア脱水素化反応に使う場合にはルテニウム(Ru)を含むことができる。一方、前記触媒金属は前記触媒をアンモニア合成反応に使う場合にはモリブデン(Mo)をさらに含むことができる。
【0046】
前記触媒金属は前記触媒の全体重量を基準として0.01重量%~3重量%の含量で担持され得る。前記触媒金属の担持量が0.01重量%未満であれば担持自体がされないか、触媒活性の向上を期待することが難しく、3重量%を超過すれば触媒金属間の凝集現象が発生して触媒活性が低下し得る。
【0047】
前記触媒金属の形態および/または大きさは、後述する製造方法の熱処理段階の雰囲気によって調節することができる。これについては後述する。
【0048】
本発明に係る触媒の製造方法は、六方晶構造の単結晶性物質を含む支持体に触媒金属前駆体溶液を含浸させる段階、含浸された結果物を乾燥する段階および乾燥した結果物を熱処理して前記支持体上に触媒金属が担持された触媒を得る段階を含む。前記触媒の製造方法は前述した触媒に関する内容と実質的に重複する構成を含むことができ、重複した部分に対する詳しい説明は省略する。
【0049】
まず、支持体上に触媒金属前駆体溶液を含浸させる。例示的な具現例で前記触媒金属がルテニウムである場合、前記触媒金属前駆体はRuCl3、RuCl3・xH2O、RuCl3・3H2O、[Ru(NH3)6]Cl2、Ru3(CO)12、C16H22O2Ru、C18H26Ruなどを含むことができる。
【0050】
引き続き、含浸された結果物を乾燥することができる。例示的な具現例で前記乾燥は40℃~100℃で遂行できる。また、前記含浸された結果物を真空乾燥することができる。
【0051】
乾燥した結果物を熱処理して前記支持体上に触媒金属が担持された触媒を得ることができる。例示的な具現例で前記熱処理は3~5時間の間、200~700℃の温度で遂行できる。温度が200℃未満であれば触媒金属が支持体の表面に固定されない場合があり、700℃を超過すれば触媒金属間の凝集現象が発生して触媒活性が低下し得る。
【0052】
また、前記熱処理は空気雰囲気、不活性気体雰囲気または真空雰囲気で遂行できる。前記不活性気体雰囲気はアルゴンガス雰囲気、窒素ガス雰囲気などであり得る。
【0053】
前記熱処理を空気雰囲気で遂行すると、前記触媒金属をロッド(Rod)状の粒子に形成することができる。前記ロッド状の触媒金属はこれに限定されないが、長さが10nm~80nmであり、アスペクト比(Aspect ratio)が1.2~20であるものであり得る。このように触媒金属をロッド状の粒子に形成すればアンモニア分解反応に高い活性を有するサイト数が増加する。
【0054】
前記熱処理を不活性気体雰囲気または真空雰囲気で遂行すると、前記触媒金属を六角形(Hexagonal)、球状(Sphere)、半球状(Semi-sphere)からなる群から選択されたいずれか一つ以上の形態の粒子に形成することができる。前記粒子はこれに限定されないが、直径が2nm~40nmのものであり得る。このように触媒金属を六角形(Hexagonal)、球状(Sphere)、半球状(Semi-sphere)からなる群から選択されたいずれか一つ以上の形態の粒子に形成すれば、相対的に高い分散度を有する触媒を得ることができる。また、不活性気体雰囲気または真空雰囲気での熱処理を通じて前記触媒金属をエピタキシャル(Epitaxial)成長させることができる。ここで、エピタキシャル成長は前記触媒金属が前記支持体の六方晶構造の骨格に沿って成長することを意味する。前記触媒金属をエピタキシャル成長させることによって、アンモニア分解活性の改善に役に立つ触媒金属の特定面あるいはサイトを成長させることができる。
【0055】
以下、実施例および実験を通じてさらに詳細に説明するが、本発明は以下に記載された内容に限定されない。
【0056】
実施例1
支持体である六方晶窒化ホウ素を準備した。前記支持体にルテニウム前駆体であるRu3CO12とテトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)の混合物を含浸させ、約40~80℃で約12時間乾燥した。乾燥した結果物を空気雰囲気で約3時間の間、200~700℃で熱処理して触媒を得た。前記触媒はルテニウムを1重量%含むように製造した。
【0057】
実施例2
乾燥した結果物を不活性気体であるアルゴンガス雰囲気で熱処理したことを除いては前記実施例1と同一にして触媒を製造した。
【0058】
実施例3
乾燥した結果物を真空雰囲気で熱処理したことを除いては前記実施例1と同一にして触媒を製造した。
【0059】
比較例1
支持体として六方晶窒化ホウ素の代わりにシリカ(SiO2)を使用し、ルテニウムの担持量を1.5重量%に増やしたことを除いては前記実施例と同一の工程を遂行して触媒を製造した。
【0060】
比較例2
支持体として六方晶窒化ホウ素の代わりにAl2O3を使ったことを除いては前記実施例と同一の工程を遂行して触媒を製造した。
【0061】
実験例1:XRD分析
前記実施例1に係る触媒に対してX線回折分析(X-ray diffraction)を実施した。その結果は
図1の通りである。これを参照すると、六方晶窒化ホウ素とルテニウムのピークがすべて観察されるので、ルテニウムが支持体である六方晶窒化ホウ素上に正しく担持されたことが分かる。
【0062】
実験例2:温度によるアンモニア転換率の測定
実施例1、実施例2、比較例1および比較例2に係る触媒を使ってアンモニア脱水素化反応を進行させ、その転換率を測定した。
【0063】
まず、それぞれの前記触媒40mgを直径が3/8″である充填層反応器に充填した。具体的な測定条件は350~450℃の温度、60,000mL/g
cat・hのGHSV(NH
3)、2時間の還元時間であった。その結果は
図2の通りである。
【0064】
図2を参照すると、実施例1および実施例2の場合、比較例1および比較例2に比べて触媒金属の担持量が同じであるかさらに少ないにもかかわらず、アンモニア転換率がはるかに高いことが分かる。
【0065】
実験例3:熱処理雰囲気に係る触媒金属の形態および大きさ
前記実施例1、実施例2および実施例3に係る触媒に対するTEM(Transmission electron microscope)分析を遂行した。その結果はそれぞれ
図3a、
図3bおよび
図3cの通りである。
【0066】
図3aを参照すると、空気雰囲気で熱処理をする場合、触媒金属がロッド(Rod)状の粒子に形成されることが分かる。
【0067】
図3bを参照すると、不活性気体雰囲気で熱処理をする場合、触媒金属が六角形、球状および半球状の粒子に形成されることが分かる。
【0068】
図3cを参照すると、真空雰囲気で熱処理をする場合、触媒金属が球状および半球状の粒子に形成されることが分かる。
【0069】
また、
図3bおよび
図3cを参照すると、不活性気体雰囲気または真空雰囲気で熱処理をする場合、触媒金属が支持体に沿ってエピタキシャル成長をすることが分かる。
【0070】
実験例4:TOF(Turn over frequency)計算
前記実験例2でアンモニア転換率を測定した結果に基づいて、実施例に係る触媒のTOFを450℃条件で計算した。その結果は下記の表1の通りである。
【0071】
【0072】
1)スラッシュ(/)の左側は触媒金属および担持量、右側は支持体を記載したものである。表1を参照すると、本発明の実施例に係る触媒のTOFが、既に知られているアンモニア脱水素化反応触媒のTOFに比べて並外れて高いことが分かる。したがって、本発明に係る触媒は非常に効率が優秀であることを確認することができる。
【0073】
以上、本発明の非制限的で例示的な実施例を説明したが、本発明の技術思想は添付図面や前記説明内容に限定されない。本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で多様な形態の変形が可能であることがこの分野の通常の知識を有する者には自明であり、また、このような形態の変形は本発明の特許請求の範囲に属すると言える。