(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】ロープソケッティング装置及びロープソケッティング方法
(51)【国際特許分類】
B66B 7/08 20060101AFI20240129BHJP
【FI】
B66B7/08 A
(21)【出願番号】P 2023109666
(22)【出願日】2023-07-03
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【氏名又は名称】山下 和也
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 翔
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開平2-85546(JP,A)
【文献】中国実用新案第213176661(CN,U)
【文献】国際公開第2020/240656(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0111795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/08
F16G 11/04
F16G 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クサビと、前記クサビを先端部内に受容するソケットと、を含む留め具に、ロープの一部が前記クサビに巻きかけられ前記ロープの前記一部の両側部分が前記クサビの先端部と共に前記ソケットの前記先端部の開口から延び出た状態で、前記クサビおよび前記ロープの前記一部を前記ソケットの前記先端部内に引き込むことによって、前記ロープを前記留め具に締結するロープソケッティング装置であって、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方が係止される枠体と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を牽引する牽引装置と、
前記留め具に対面する位置で前記クサビの前記先端部分に対して固定された検出器であって、前記ソケットの前記クサビに対する移動を検出する検出部を有する検出器と、
を備え、
前記検出部は、前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引前に前記ソケットに対面し、前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引によって前記ロープの前記両側部分または前記ソケットが前記ソケットまたは前記ロープの前記両側部分に対して所定量以上移動すると、前記クサビの先端部に対面し、
前記検出部は、前記ソケットおよび前記クサビの前記先端部のいずれが前記検出部に対面しているかを検出する、ロープソケッティング装置。
【請求項2】
前記検出部と前記留め具との距離が、前記検出部が前記ソケットに対面している場合と前記クサビに対面している場合とで異なり、
前記検出部は、前記留め具との距離を検出する、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項3】
前記検出部と前記留め具との距離が、前記検出器が前記ソケットに対面している場合と前記クサビに対面している場合とで異なり、
前記検出部は、前記留め具との距離に応じて、その姿勢を変化させる、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記留め具の前記検出部に対面している部分の画像を取得する、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項5】
前記牽引装置は、電力供給を受けて前記ロープの前記両側部分または前記ソケットを牽引するものであり、
前記検出部が前記ソケットに対面した状態から前記クサビに対面した状態に移行すると、前記牽引装置への電源供給が停止される、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項6】
前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引方向への移動を案内するガイド部材を更に備えた、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項7】
前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引方向以外のいずれかの方向への傾倒を防止する傾倒防止部材を更に備えた、請求項1に記載のロープソケッティング装置。
【請求項8】
前記傾倒防止部材は、前記枠体上を前記牽引方向に沿って移動可能である、請求項7に記載のロープソケッティング装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のロープソケッティング装置を用いて前記ロープを前記留め具に締結する方法であって、
前記ロープの前記一部が前記クサビに巻きかけられた状態で前記ロープの前記両側部分が前記クサビの先端部と共に前記ソケットの前記先端部の開口から延び出すよう、前記ソケットに前記クサビおよび前記ロープを挿入する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方を前記枠体に係止する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を前記牽引装置に接続する工程と、
前記クサビの前記先端部分を前記検出器に対して固定する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方に対して前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を前記牽引装置によって牽引し、且つ、前記ソケットおよび前記クサビの前記先端部のいずれが前記検出部に対面しているかを前記検出器によって検出する工程と、
を備えたロープソケッティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、ロープソケッティング装置及びロープソケッティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許第5625763号公報に開示されているように、エレベータ装置の乗りかごや釣合い重りとワイヤロープとを接続するクサビ式の留め具100が知られている。
図9に示すように、留め具100は、クサビ110と、クサビ110を受容するソケット120と、を有する。留め具100は、先端部101と後端部103とを有する。
【0003】
図9において、留め具100はZ方向に沿って延びている。本明細書では、留め具100の先端部101から後端部103に向かう方向を+Z方向と呼ぶ。また、留め具100の後端部103から先端部101に向かう方向を-Z方向と呼ぶ。また、以下では、留め具100の先端部101の側がクサビ110及びソケット120の先端部側であり、留め具100の後端部123の側がクサビ110及びソケット120の後端部側であるものとする。したがって、+Z方向は、クサビ110及びソケット120の先端部111,121から後端部113,123に向かう方向に一致し、-Z方向は、クサビ110及びソケット120の後端部113,123から先端部111,121に向かう方向に一致する。また、本明細書では、留め具100の幅方向をX方向と呼び、厚み方向をY方向と呼ぶ。
【0004】
クサビ110は、先端部111と、後端部113と、先端部111と後端部113とを接続する一対の側縁部115,115とを有する。クサビ110は、後端部113から先端部111に向けて先細りとなっている。クサビ110の側縁部115,115は、V字形状である。クサビ110の一方の側縁部115から後端部113を介して他方の側縁部115にロープRの一部R1が巻きかけられる。クサビ110は、ロープRが巻きかけられた状態でソケット120内に受容される。
【0005】
ソケット120は、クサビ110が挿入される内部空間Aを有する。ソケット120の先端部121には、先端部開口122が形成されている。ソケット120の後端部123には、後端部開口124が形成されている。先端部開口122及び後端部開口124は、内部空間Aに連通している。ソケット120の内部空間Aは、後端部123から先端部121に向けて先細りとなっている。ソケット120の内面は、クサビ110の一対の側縁部115,115に対面する一対の内側面125,125を有する。一対の内側面125,125は、クサビ110の一対の側縁部115,115がV字形状であることに対応して、概ねV字形状をなす。したがって、各内側面125は、クサビ110の対応する側縁部115に概ね平行である。ソケット120に巻きかけられたロープRの上記一部R1は、クサビ110の側縁部115,115とソケット120の内側面125,125とに挟まれる。先端部開口122を通じて、クサビ110の先端部111が延び出す。また、先端部開口122を通じて、ロープRの上記一部R1の両側部分R0,R2が延び出す。ロープRの上記両側部分R0,R2は、保持具130によって保持され、互いに対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなクサビ式の留め具は、ロープの締結に火気を使用しないため、安全面等を考慮すると好ましい。しかしながら、大容量の高速エレベータに用いられるロープのようにロープの径が大きい場合は、クサビ式の留め具にロープを締結する作業を行うことは困難である。これは、ロープの反発力が強いためにロープをクサビの外周面に沿わせて曲げることが困難であり、この結果、ロープが巻きかけられたクサビをソケット内の適切な位置まで引き込むことが困難だからである。
【0008】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、径が大きなロープであっても留め具に適切に締結させることが容易なロープソケッティング装置およびロープソケッティング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施の形態によるロープソケッティング装置は、
クサビと、前記クサビを先端部内に受容するソケットと、を含む留め具に、ロープの一部が前記クサビに巻きかけられ前記ロープの前記一部の両側部分が前記クサビの先端部と共に前記ソケットの前記先端部の開口から延び出た状態で、前記クサビおよび前記ロープの前記一部を前記ソケットの前記先端部内に引き込むことによって、前記ロープを前記留め具に締結するロープソケッティング装置であって、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方が係止される枠体と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を牽引する牽引装置と、
前記留め具に対面する位置で前記クサビの前記先端部分に対して固定された検出器であって、前記ソケットの前記クサビに対する移動を検出する検出部を有する検出器と、
を備え、
前記検出部は、前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引前に前記ソケットに対面し、前記ロープの前記両側部分または前記ソケットの前記牽引装置による牽引によって前記ロープの前記両側部分または前記ソケットが前記ソケットまたは前記ロープの前記両側部分に対して所定量以上移動すると、前記クサビの先端部に対面し、
前記検出部は、前記ソケットおよび前記クサビの前記先端部のいずれが前記検出部に対面しているかを検出する。
【0010】
本実施の形態によるロープソケッティング方法は、上述したロープソケッティング装置を用いて前記ロープを前記留め具に締結する方法であって、
前記ロープの前記一部が前記クサビに巻きかけられた状態で前記ロープの前記両側部分が前記クサビの先端部と共に前記ソケットの前記先端部の開口から延び出すよう、前記ソケットに前記クサビおよび前記ロープを挿入する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方を前記枠体に係止する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を前記牽引装置に接続する工程と、
前記クサビの前記先端部分を前記検出器に対して固定する工程と、
前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの一方に対して前記ロープの前記両側部分および前記ソケットの他方を前記牽引装置によって牽引し、且つ、前記ソケットおよび前記クサビの前記先端部のいずれが前記検出部に対面しているかを前記検出器によって検出する工程と、
を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本実施の形態によるロープソケッティング装置の全体構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すロープソケッティング装置の一部を拡大して示す側面図である。
【
図3A】
図3Aは、牽引前の留め具を検出器と共に示す側面図である。
【
図3B】
図3Bは、牽引後の留め具を検出器と共に示す側面図である。
【
図5】
図5は、ロープソケッティング装置の変形例を示す部分拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、ロープソケッティング装置の他の変形例を示す部分拡大斜視図である。
【
図7】
図7は、ロープソケッティング装置のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、ロープソケッティング装置のさらに他の変形例を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、ロープが締結された留め具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。方向の関係を図面間で明確にするため、いくつかの図面には、共通する符号を付した矢印により共通する方向を示している。図面の紙面に垂直な方向に沿って手前に向かう矢印は、例えば
図2に示すように、円の中に点を設けた記号により示されている。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面の奥に向かう矢印は、例えば
図9に示すように、円の中に×を設けた記号により示されている。
【0013】
装置1は、
図9に示す留め具100にロープRを締結するために使用される。留め具100の構成は
図9に示す構成と同じであるため、留め具100の説明は省略する。留め具100は、ロープRの上記一部R1がクサビ110に巻きかけられてクサビ110と共にソケット120の内部空間Aに挿入され、ソケット120の先端部開口122からロープRの上記両側部分R0,R2がクサビ110の先端部分111と共に延び出した状態で、ロープソケッティング装置1に取り付けられる。ロープソケッティング装置1は、ロープRが巻きかけられたクサビ110をソケット120内の適切な位置まで引き込み、ロープRを留め具100に締結させる。
【0014】
以下、ロープソケッティング装置1の構成について、説明する。ロープソケッティング装置1(以下、単に「装置1」とも称する。)は、枠体10と、牽引装置20と、検出器30と、を備える。
【0015】
枠体10は、牽引装置20や検出器30を支持する。また、枠体10は、ロープRの上記両側部分R0,R2を係止する係止部11を有する。図示された例では、係止部11は、枠体10は、保持具130に接触して保持具130の+Z方向への移動を規制する。
【0016】
図示された例では、装置1の軽量化の観点および枠体10の組み立て易さの観点から、枠体10はアルミニウム製である。枠体10は、複数の棒状のアルミニウム部材を、ネジ等の締結具で互いに結合することにより組み立てられている。これにより、枠体10を組み立てることが容易であり、また、組み立てられた枠体10を分解することが容易である。また、アルミニウム製の枠体は軽量であるため、持ち運びも容易である。もちろん、枠体10の材料としてはアルミニウムに限られず、任意の材料を採用可能である。また、枠体10を構成する部材の結合方法も、任意の方法を採用可能である。
【0017】
牽引装置20は、ソケット120を+Z方向に牽引する。図示された例では、牽引装置20は、牽引索21と巻上機25とを含む。牽引索21の一端は、ソケット120の後端部123に接続される。牽引索21の他端は巻上機25に接続され、巻上機25は牽引索21を巻き上げる。牽引索21は、巻上機25に巻き上げられると、ソケット120を+Z方向に牽引する。牽引索21は、ワイヤロープやチェーンであってよい。図示された例では、巻上機25は電力供給を受けて回転し、牽引索21を巻き上げる。巻上機25は、ソケット120から+Z方向に離れた位置で枠体10に固定されている。なお、牽引索21は、巻上機25以外の動力によって引っ張られてもよい。
【0018】
牽引装置20がソケット120を+Z方向に牽引することにより、ソケット120がクサビ110に対して+Z方向に移動し、相対的に、クサビ110がソケット120の先端部121内に引き込まれる。ソケット120がクサビ110に対して所定量以上移動すると、クサビ110に巻きかけられたロープRがクサビ110とソケット120との間にしっかりと挟み込まれる。これにより、ロープRは留め具100に締結される。
【0019】
検出器30は、
図2に示すように、枠体10によって支持されている。検出器30は、固定部31と検出部35とを有する。固定部31にクサビ110の先端部111が固定される。より具体的には、検出部35が留め具100に対面した状態で、固定部31にクサビ110の先端部111が固定される。検出部35は、ソケット120のクサビ110に対する移動を検出する。検出部35の固定部31に対する位置は、不変である。
【0020】
図3Aに示すように、牽引装置20がソケット120を牽引する前は、検出部35はソケット120に対面している。牽引装置20がソケット120を牽引してソケット120がクサビ110に対して移動すると、これに伴って、検出部35もソケット120に対して移動する。
図3Bに示すように、クサビ110がソケット120に対して上記所定量以上移動すると、検出部35はクサビ110の先端部111に対面する。検出部35は、留め具100のソケット120及びクサビ110の先端部111,121のいずれが検出部35に対面しているかを検知する。これによって、ソケット120がクサビ110に対して上記所定量以上移動したか否かを判定することができる。言い換えると、検出部35の検出結果によって、ロープRが留め具100に締結されたか否かを判定することができる。
【0021】
検出器30は、枠体10上をZ方向に移動可能であってよい。これにより、牽引装置20がソケット120を牽引する際にクサビ110が多少+Z方向に移動しても、検出器30はクサビ110の移動に追随することができる。検出器30は、クサビ110の先端部111が検出部35に対面していることを報知する報知機能を有していてもよい。例えば、検出器30は、クサビ110の先端部111が検出部35に対面すると、音を鳴らしたり、ランプ点灯させるものであってよい。
【0022】
図3A及び
図3Bに示す例では、検出部35と留め具100との距離が、検出部35がソケット120に対面している場合(
図3A)とクサビ110に対面している場合(
図3B)とで異なる。検出部35がソケット120に対面している場合、検出部35と留め具100との距離はL1である。一方、検出部35がクサビ110に対面している場合、検出部35と留め具100との距離はL2である。距離L1と距離L2は互いに異なる。これに対応して、検出部35は距離センサである。このような検出部35を有する検出器30は、検出部35と留め具100との距離に基づいて、ソケット120及びクサビ110の先端部111,121のいずれが検出部35に対面しているかを検知することができる。
【0023】
次に、本実施の形態の装置1の使用方法及び作用について説明する。まず、ロープRの一端R0を、ソケット120の先端部開口122から内部空間Aに挿入する。次に、ロープRの一端R0を、ソケット120の後端部開口124から引き出す。次に、ロープRの一端R0の近傍の一部R1をクサビ110の側縁部115,115及び後端部113の周りに巻きかけた後、一端R0をソケット120の内部空間Aに挿入し先端部開口122から引き出す。このとき、クサビ110の先端部111をソケット120の先端部121に向けた状態で、クサビ110をソケット120の内部空間Aに挿入する。そして、クサビ110の先端部111を、ソケット120の先端部開口122から突出させる。次に、ソケット120の先端部開口122から延び出したロープRの上記両側部分R0,R2に保持具130を取り付け、ロープRの上記両側部分R0,R2を互いに対して固定する。
【0024】
次に、
図1に示すように、保持具130を装置1の枠体10の係止部11に接触させ、保持具130の+Z方向への移動を規制する。また、ソケット120の後端部123に牽引装置20の牽引索21の一端を固定する。次に、
図3Aに示すように、枠体10に支持された検出器30の固定部31に、クサビ110の先端部111を固定する。このとき、ソケット120からのクサビ110の先端部111の延出量は小さく、検出部35はソケット120に対面する。その後、検出器30を作動させ、検出部35と留め具100との距離の測定を開始させる。このとき、検出部35は、留め具100と検出部35との距離として、ソケット120と検出部35の距離L1を測定する。
【0025】
次に、牽引装置20の巻上機25を作動させて、牽引索21を巻き上げる。これにより、ソケット120が+Z方向に移動し、ソケット120からクサビ110の先端部111の延出量が増大する。ソケット120がクサビ110に対して上記所定量以上移動すると、
図3Bに示すように、検出部35がクサビ110の先端部111に対面する。このとき、検出部35は、留め具100と検出部35との距離として、クサビ110の先端部111と検出部35の距離L2を測定する。このように、検出部35がソケット120に対面した状態からクサビ110に対面した状態に移行すると、検出部35によって検出される距離が変化する。これにより、検出部35がクサビ110の先端部111に対面していることが検出され、クサビ110がソケット120内の適切な位置まで引き込まれたことが検出される。
【0026】
検出部35がクサビ110の先端部111に対面した後、巻上機25を停止し、牽引装置20によるソケット120の牽引を停止する。その後、クサビ110の先端部111に設けられた開口(図示せず)に割りピンを挿入するなどして、クサビ110のソケット120に対する移動を防止する。これにより、ロープRの留め具100への締結作業が終了する。
【0027】
なお、上述してきた一実施の形態に対して、さらに様々な変更を加えることが可能である。
【0028】
例えば、上述した例のように、牽引装置20が電力供給を受けてソケット120を牽引する者である場合、装置1は、検出部35がソケット120に対面した状態からクサビ110に対面した状態に移行すると、牽引装置20への電力供給を止めるよう構成されていてもよい。この場合、ソケット120がクサビ110に対して上記所定量以上移動すると、自動的に牽引装置20を停止させることができる。
【0029】
また、検出部35は、検出部35がソケット120に対面した状態からクサビ110に対面した状態に移行すると、その姿勢を変化させるものであってもよい。
図4Aおよび
図4Bに示す例では、検出器30は、基部32と検出部35とを含む。検出部35は、一端36aが基部32に接続したアーム36を含む。アーム36は、揺動可能に基部32に接続している。アーム36は、全体として、基部32から留め具100に向かう方向に延びている。アーム36の他端36bにはローラ37が回転可能に取り付けられ、ローラ37は留め具100に接触している。アーム36の揺動は、その他端36bが一端36a(アーム36と基部32の接続位置P)よりも下方に移動しないよう、制限されている。
【0030】
図示された例では、上記接続位置Pと留め具100との距離が、アーム36の他端36bがソケット120に対面している場合(
図4A参照)と、アーム36の他端36bがクサビ110に対面している場合(
図4B参照)とで異なる。アーム36の他端36bがソケット120に対面している場合、上記接続位置Pと留め具100との距離はL3である。一方、アーム36の他端36bがクサビ110に対面している場合、上記接続位置Pと留め具100との距離はL4である。距離L4は距離L3よりも大きい。このため、
図4Aに示すように、アーム36の他端36bがソケット120に対面している間は、アーム36は上記接続位置Pから上方に延びる第1位置に配置される。その一方で、
図4Bに示すように、アーム36の他端36bがクサビ110に対面すると、アーム36の他端36bが下がり、アーム36は上記接続位置Pから概ね水平に延びる第2位置に配置される。このように、検出部35は、検出部35がソケット120に対面した状態からクサビ110に対面した状態に移行すると、その姿勢を変化させる。
【0031】
図4Aおよび
図4Bに示す例では、検出部35は、さらに基部32に揺動可能に接続するスイッチ38を含む。スイッチ38は、アーム36が回転する仮想平面内に配置されている。スイッチ38は、牽引装置20への電力供給を許容する通電位置(
図4A参照)と、牽引装置20への電力供給を遮断する遮断位置(
図4B参照)との間を移動可能である。また、アーム36は、上記接続位置Pからスイッチ38に向かって延びる延出部36cを有する。
図4Aに示すように、延出部36cは、アーム36が第1位置に配置されている間は、スイッチ38が通電位置に配置されることを妨げない。その一方で、
図4Bに示すように、延出部36cは、アーム36が第2位置に配置されると、スイッチ38を遮断位置に向けて押す。この結果、牽引装置20への電力供給を遮断される。すなわち、ソケット120がクサビ110に対して上記所定量以上移動すると、検出器35は、自動的に牽引装置20を停止させる。
【0032】
また、検出部35は、留め具100の検出部35に対面している部分の画像を取得するものであってもよい。この場合、検出部35は、取得した画像から、留め具100のソケット120およびクサビ110のいずれが検出部35に対面しているかを検出する。検出部35は、ソケット120および/またはクサビ110に設けられたマークを検出することで、ソケット120およびクサビ110のいずれが検出部35に対面しているかを検出してもよい。
【0033】
また、
図5に示すように、枠体10にはソケット120のZ方向への移動を案内するガイド部材40が設けられていてもよい。この場合、ソケット120がZ方向以外の方向へ牽引されることを抑制することができ、ロープRを留め具100に適切に締結することができる。
【0034】
また、
図6に示すように、枠体10には、ソケット120の傾倒を防止する傾倒防止部材45が設けられていてもよい。
図6に示す例では、ソケット120は、その後端部123に、牽引索21が接続される一対の接続部126,126を有する。各接続部126は、+Z方向に延びている。一対の接続部126,126は、Y方向に対面している。傾倒防止部材45は、一対の接続部126,126の間をX方向に延びている。傾倒防止部材45により、ソケット120のY方向への傾倒が抑制される。この結果、ソケット120がY方向に傾倒した状態で牽引されることを抑制することができ、ロープRを留め具100に適切に締結することができる。傾倒防止部材45は、ソケット120のX方向への傾倒を防止するものであってもよい。傾倒防止部材45は、ソケット120がZ方向以外のいずれかの方向へ傾倒することを防止するものであればよい。
【0035】
図6に示す例では、傾倒防止部材45は、枠体10上をZ方向に移動可能である。これにより、傾倒防止部材45はソケット120と共に+Z方向に移動することができる。したがって、傾倒防止部材45によってソケット120のZ方向の移動が妨げられる虞がない。
【0036】
また、巻上機25の枠体10における設置位置は任意である。例えば、
図7に示すように、巻上機25は枠体10の側部に取り付けられていてもよい。この場合、ソケット120に接続された牽引索21をソケット120から+Z方向に案内し、そして巻上機25に案内するプーリ26が枠体10に設けられていることが好ましい。
【0037】
また、
図8に示すように、枠体10に複数の留め具100を取り付け可能であってもよい。これにより、1つの装置1で複数の留め具100へ複数のロープRの締結を、同時に行うことができる。なお、この場合、装置1は、装置1に取り付け可能な留め具100と同じ数の牽引装置20および検出器30を含んでいることが好ましい。これにより、各留め具100へのロープRの締結を、適切に行うことができる。
【0038】
また、牽引装置20は、ソケット120ではなく、ロープRの上記両側部分R0,R2を-Z方向に牽引するものであってもよい。この場合、ロープRの上記両側部分R0,R2は枠体10に対して-Z方向に移動可能である。一方、ソケット120は、枠体10に係止され、その枠体10に対する-Z方向への移動が規制される。また、この場合、ガイド部材40は、ロープRの上記両側部分R0,R2のZ方向への移動を案内するものであってよい。また、この場合、傾倒防止部材45は、ロープRの上記両側部分R0,R2の傾倒を防止するものであってよい。
【0039】
上述した一実施の形態および変形例によれば、ロープソケッティング装置1は、ロープRを留め具100に締結するために使用される。留め具100は、クサビ110と、クサビ110を先端部121内に受容するソケット120と、を含む。ロープRの一部R1がクサビ110に巻きかけられロープRの上記一部R1の両側部分R0,R2がクサビ110の先端部111と共にソケット120の先端部121の開口122から延び出た状態で、クサビ110およびロープRの上記一部R1をソケット120の先端部121内に引き込むことによって、ロープRは留め具100に締結される。ロープソケッティング装置1は、枠体10と牽引装置20と検出器30とを備える。枠体10には、ロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の一方が係止される。牽引装置20は、ロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の他方を牽引する。検出器30は、留め具100に対面する位置でクサビ110の先端部分111に対して固定されている。検出器30は、ソケット120のクサビ110に対する移動を検出する検出部35を有する。検出部35は、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120の牽引装置20による牽引前に、ソケット120に対面する。検出部35は、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120の牽引装置20による牽引によってロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120がソケット120またはロープRの上記両側部分R0,R2に対して所定量以上移動すると、クサビ110の先端部111に対面する。検出部35は、ソケット120およびクサビ110の先端部111のいずれが検出部35に対面しているかを検出する。
【0040】
このようなロープソケッティング装置1によれば、検出器30によって、クサビ110がソケット120内の適切な位置まで引き込まれたことを確認することができ、したがってロープRが留め具100に適切に締結されたことを確認することができる。これにより、径が大きくて反発力が大きなロープRであっても、留め具100に適切に締結することが容易である。
【0041】
また、上述した一実施の形態および変形例によれば、検出部35と留め具100との距離が、検出部35がソケット120に対面している場合とクサビ110に対面している場合とで異なる。検出部35は、留め具100との距離を検出する。この場合、ソケット120およびクサビ110の先端部111のいずれが検出部35に対面しているかを検出することが容易である。
【0042】
また、上述した変形例によれば、検出部35と留め具100との距離が、検出部35がソケット120に対面している場合とクサビ110に対面している場合とで異なる。検出部35は、留め具100との距離に応じて、その姿勢を変化させる。この場合も、ソケット120およびクサビ110の先端部111のいずれが検出部35に対面しているかを検出することが容易である。
【0043】
また、上述した変形例によれば、検出部35は、留め具100の検出部35に対面している部分の画像を取得する。この場合も、ソケット120およびクサビ110の先端部111のいずれが検出部35に対面しているかを検出することが容易である。
【0044】
また、上述した変形例によれば、牽引装置20は、電力供給を受けてロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120を牽引するものである。検出部35がソケット120に対面した状態からクサビ110に対面した状態に移行すると、牽引装置20への電源供給が停止される。この場合、クサビ110がソケット120内の適切な位置まで引き込まれると、牽引装置20を自動的に停止させることができる。
【0045】
また、上述した変形例によれば、ロープソケッティング装置1は、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120の牽引装置20による牽引方向(Z方向)への移動を案内するガイド部材40を更に備える。この場合、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120がZ方向以外の方向へ牽引されることを抑制することができ、ロープRを留め具100に適切に締結することができる。
【0046】
また、上述した変形例によれば、ロープソケッティング装置1は、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120の、牽引装置20による牽引方向(Z方向)以外のいずれかの方向への傾倒を防止する傾倒防止部材45を更に備える。この場合、ロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120が牽引方向(Z方向)以外のいずれかの方向に傾倒した状態で牽引されることを抑制することができ、ロープRを留め具100に適切に締結することができる。
【0047】
また、上述した変形例によれば、傾倒防止部材45は、枠体10上を牽引方向(Z方向)に沿って移動可能である。この場合、傾倒防止部材45によってロープRの上記両側部分R0,R2またはソケット120の牽引方向(Z方向)の移動が妨げられる虞がない。
【0048】
また、上述した一実施の形態及び変形例によれば、ロープソケッティング方法は、上述したロープソケッティング装置1を用いてロープRを留め具100に締結する方法である。ロープソケッティング方法は、ロープRの上記一部R1がクサビ110に巻きかけられた状態でロープRの上記両側部分R0,R2がクサビ110の先端部111と共にソケット120の先端部121の開口122から延び出すよう、ソケット120にクサビ110およびロープRを挿入する工程を備える。また、ロープソケッティング方法は、ロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の一方を枠体10に係止する工程を備える。また、ロープソケッティング方法は、ロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の他方を牽引装置20に接続する工程を備える。また、ロープソケッティング方法は、クサビ110の先端部分111を検出器30に対して固定する工程を含む。また、ロープソケッティング方法は、ロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の一方に対してロープRの上記両側部分R0,R2およびソケット120の他方を牽引装置20によって牽引し、且つ、ソケット120およびクサビ110の先端部111のいずれが検出部35に対面しているかを検出器30によって検出する工程を備える。
【0049】
このようなロープソケッティング方法によれば、検出器30によって、クサビ110がソケット120内の適切な位置まで引き込まれたことを確認することができ、したがってロープRが留め具100に締結されたことを確認することができる。これにより、径が大きく反発力が大きなロープRであっても、留め具100に適切に締結することが容易である。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、当然のことながら、本発明の要旨の範囲内でこれらの実施形態やその変形を、部分的に適宜組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
1:ロープソケッティング装置、10:枠体、11:係止部、20:牽引装置、21:牽引索、25:巻上機、30:検出器、35:検出部、100:留め具、110:クサビ、111:先端部、120:ソケット、121:先端部、122:先端部開口、R:ロープ
【要約】 (修正有)
【課題】径が大きなロープであっても留め具に適切に締結させることが容易なロープソケッティング装置およびロープソケッティング方法を提供する。
【解決手段】ロープソケッティング装置1は、枠体10と牽引装置20と検出器とを備える。枠体10には、ソケット120が固定される。牽引装置20は、ロープを牽引する。検出器は、ソケット120のクサビに対する移動を検出する検出部を有する。検出部は、ソケット120およびクサビの先端部のいずれが検出部に対面しているかを検出する。
【選択図】
図1