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特許7427844溶接電流の同期方法、並びに溶接電流源および少なくとも2つの溶接電流源を含むシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】溶接電流の同期方法、並びに溶接電流源および少なくとも2つの溶接電流源を含むシステム
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20240129BHJP
   B23K 9/073 20060101ALI20240129BHJP
   B23K 9/10 20060101ALI20240129BHJP
   B23K 9/167 20060101ALI20240129BHJP
   B23K 9/235 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
B23K9/095 501A
B23K9/073 510
B23K9/073 530
B23K9/10 Z
B23K9/167 A
B23K9/167 E
B23K9/235 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023512469
(86)(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 EP2021075413
(87)【国際公開番号】W WO2022058398
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】20196640.5
(32)【優先日】2020-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112911
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】アルテルスマイア,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ラットナー,ペーター
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-082176(JP,A)
【文献】特開2017-188974(JP,A)
【文献】特開平05-159895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/00-9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのワークピース(10、10’)に対して同時溶接プロセス、特に非消耗電極(9)を用いた溶接プロセスを行う前に、少なくとも2つの溶接電流源(1、2)の溶接電流(I、I)を同期させる方法であって、
第1の溶接電流源(1)によって基準信号(11)を出力するステップであって、基準信号(11)は同期情報(13)を含むステップと、
第2の溶接電流源(2)によって基準信号(11)を測定または受信し、基準信号(11)に含まれる同期情報(13)を評価するステップと、
同期情報(13)に基づいて、第2の溶接電流源(2)の第2の溶接電流(I)を、第1の溶接電流源(1)の第1の溶接電流(I)に同期させるステップと、
を含み、
溶接電流源(1、2)は、共通の交流ネットワーク(3)、特に3相交流ネットワーク(3)に接続され、溶接電流源(1、2)を同期させるために、交流ネットワーク(3)の相導体(12)が第1の溶接電流源(1)に対して選択され、基準信号(11)は、選択された相導体(12)の電圧曲線(U U,V,W )に基づいて生成されることで、同期情報(13)は、第2の溶接電流源(2)により、選択された相導体(12)を識別することを特徴とする方法。
【請求項2】
同期の後に、第1の溶接電流(I)および前記第2の溶接電流(I)が生成され、溶接プロセスを実行することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
同期情報(13)は、基準信号(11)の周波数、変化する極性、および/または位相角(φ)に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第1の溶接電流(I)および第2の溶接電流(I)は、選択された相導体(12)の電圧曲線(UU,V,W)、好ましくは選択された相導体(12)の電圧曲線(UU,V,W)における周期的同期点(15)、例えば周期的ゼロクロス(14)と、同期することを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項5】
基準信号(11)は、時間曲線、特に周波数、極性、位相位置を有し、これに基づいて選択された相導体(12)が一意的に特定できることを特徴とする請求項1~4に記載の方法。
【請求項6】
基準信号(11)に含まれる同期情報(13)は、選択された相導体(12)の電圧曲線における周期的同期点(15)、例えば周期的ゼロクロス(14)、を識別することを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
同期情報(13)は、選択された相導体(12)の電圧曲線(UU,V,W)から、特に選択された相導体(12)の周波数、極性、および/または位相角から得られることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
基準信号(11)の曲線は、周波数、極性、および/または位相角において、選択された相導体(12)の電圧曲線(UU,V,W)と同期していることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
基準信号(11)は、第1の溶接電流源(1)から、第1の溶接電流源(1)に接続される第1の溶接トーチ(8)を介して、第2の溶接電流源(2)に接続される第2の溶接トーチ(8)に、さらには第2の溶接電流源(2)に、直接または間接的に導通することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
基準信号(11)の電流強度および電圧レベルは、ワークピース(10、10’)、溶接ワイヤ、または溶接トーチ(8)の電極(9)の溶融が防止されるように選択されることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
基準信号(11)は、電圧信号、好ましくは交流信号であることを特徴とする請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのワークピース(10、10’)に対して同時溶接プロセス、特に非消耗電極(9)による溶接プロセスを実行するための溶接電流源(1、2)であって、溶接電流源(1、2)は同期ユニット(16)を有し、溶接電流源(1)とさらなる類似の溶接電流源(2)を同期するための第1のモードにおいて、溶接プロセスを実行する前に、同期情報(13)を有する基準信号(11)を生成し、基準信号(11)をさらなる溶接電流源(2)に出力するように構成され、
第1のモードにおいて、同期ユニット(16)は、交流ネットワーク(3)の選択された相導体(12)の電圧曲線(U U,V,W )に基づいて、基準信号(11)を生成するように構成されたことを特徴とする溶接電流源(1、2)。
【請求項13】
溶接電流源(1、2)からなるシステムであって、
溶接電流源(1)は請求項12に従って形成されて第1のモードで作動し、さらなる溶接電流源(2)は第2のモードで作動し、
第2のモードにおいて、さらなる溶接電流源(2)は、溶接電流源(1)によって出力された基準信号(11)を測定または受信し、基準信号(11)に含まれる同期情報(13)を評価し、それに基づいて、溶接プロセスの実行前に、さらなる溶接電流源(2)の溶接電流(I )を、溶接電流源(1)の溶接電流(I )と同期させるように構成されたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのワークピースに対して、同時溶接プロセス、特に非消耗電極を用いた溶接プロセスを実行するために、少なくとも2つの溶接電流源の溶接電流を同期させるための方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、少なくとも1つのワークピースに対して同時溶接プロセス、特に非消耗電極を用いた溶接プロセスを実行するための溶接電流源、および少なくとも2つの溶接電流源を含むシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
(アルミニウム)タンク、バレル、またはサイロを製造する際には、複数の交流溶接電流源によって同時溶接プロセスが行われることが多い。これにより、タンク、バレル、サイロの端部や接合部は、2つの面(多くは内側と外側)から同時に溶接される。この種の溶接プロセスは、例えば、CN 101474709 BまたはCN 104096954 Aに示されている。
【0004】
交流溶接電流源から発生する溶接電流は、通常、溶接電流源が接続されている、相導体または交流ネットワークの相にそれぞれ同期している。複数の交流溶接電流源による同時溶接プロセスの場合、交流溶接電流源の溶接電流が交流ネットワークの異なる相導体または相導体の異なる同期点(例えば電圧曲線のゼロクロス)と同期し、溶接トーチの電極が互いに空間的に接近して案内されるとき、それぞれ溶接電流またはアークは少なくとも断続的にワークピースから別の溶接トーチの電極に飛び移ることが起こりうる。極端な場合、溶接電流が同期していないときに、一方の溶接トーチの電極上に正の電圧が存在し、他方の溶接トーチの電極上に負の電圧が存在するので、前述の異なる極性および/またはアークの空間的接触により、溶接プロセス中に、ワークからそれぞれの他の電極への溶接電流の相互の飛び超え(jump-over)が発生する。
【0005】
他の電極への溶接電流の飛び越えは、期間によっては、溶接プロセスを妨害したり、不可能にすることさえある。したがって、溶接電流の飛び越えを回避するために、先行技術による溶接電流源の場合には、溶接電流源の溶接電流を交流ネットワークの別の相導体または電圧曲線の別のゼロクロスに同期させることを可能にする切り替え手段がしばしば提供される。切り替え手段により、溶接電流源の溶接電流が同期し、溶接電流の飛び越えが起こらなくなるまで、溶接電流源は手動で切り替え可能である。現在、溶接電流が同期しているかどうかの制御は、溶接工の目視によって行われている。しかし、多くの場合、溶接電流の不正な同期を検出することは困難である。溶接電流は、通常、相導体の電圧曲線のゼロクロスに同期している。3相交流ネットワークの場合、交流ネットワークの相電圧のゼロクロスにより、通常、合計6つの可能な同期点が発生する。したがって、溶接電流の同期を手動で設定することは困難で複雑である。
【0006】
溶接プロセス中に溶接電流源の同期を実行することは、JP 2020 082176 Aより知られている。このための対応する信号は、溶接電流源の間で直接交換される。
【0007】
複数の溶接電流源からなる更なる溶接方法は、EP 1 043 107 A2、US 2004/0026391 A1、およびUS 2008/0011728 A1より知られている。
【0008】
これらの説明に照らして、本発明の目的は、先行技術の欠点を低減し、あるいは完全に除去することである。特に、本発明の目的は、少なくとも2つの溶接電流源の溶接電流の同期を簡略化することである。
【0009】
この目的は、請求項1にかかる方法、請求項13にかかる溶接電流源、および請求項15にかかる少なくとも2つの溶接電流源を含むシステムによって解決される。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、上述したタイプの方法の場合、以下のステップ:
第1の溶接電流源によって基準信号を出力するステップであって、基準信号は同期情報を含むステップ、
第2の溶接電流源によって基準信号を測定または受信し、基準信号に含まれる同期情報を評価するステップ、
同期情報に基づいて、第2の溶接電流源の第2の溶接電流を第1の溶接電流源の第1の溶接電流と同期させるステップ、が提供される。
【0011】
溶接電流の信頼性の高い自動同期は、本発明にかかる方法の助けを借りて、少なくとも2つの溶接電流源によって有利に実行することができる。従って、従来技術の場合のように、溶接電流源をそれぞれ手動で設定または切り替え、制御することはもはや必要ではない。溶接電流の同期は、溶接プロセスの開始前、つまり、溶接プロセスを実行するための溶接電流が出力される前に行われる。同期のための第1の溶接電流源の基準信号は、第1の溶接電流源から第2の溶接電流源へ、有線方式または無線接続によって伝送することができる。この文脈では、「有線」は、基準信号が第1の溶接電流源から第2の溶接電流源へ、電気ライン接続を介して伝送されることを意味する。特に、基準信号が、第1の溶接電流源に接続された第1の溶接トーチの接続線と、第2の溶接電流源に接続された第2の溶接トーチの接続線とを介して、第2の溶接電流源に導かれることが提供され得る。このため、第1の溶接トーチと第2の溶接トーチ、特にその電極を一時的に互いに電気的に接触させ、第1の溶接電流源と第2の溶接電流源の間に電気的接続を確立させる必要がある。
【0012】
代替として、基準信号が、溶接トーチから独立した専用のデータ接続線を介して、第1の溶接電流源から第2の溶接電流源に伝送されるようにすることもできる。基準信号が無線接続で送信される場合、第1の溶接電流源と第2の溶接電流源は、それぞれ送信ユニットおよび/または受信ユニットを備えることができる。基準信号が第1の溶接電流源から第2の溶接電流源に送信されるという事実により、第1の溶接電流源は「マスター」または「リード」と呼ばれ、第2の溶接電流源は「スレイブ」または「トレイル」と呼ばれる。基準信号は、好ましくは、電気電圧信号である。溶接電流を同期させるために、基準信号は同期情報を含む。溶接電流は、この同期情報に基づいて時間同期することができ、ここで、第1の溶接電流源は、同期を指定する。同期情報は、例えば、基準信号の形態、特に、基準信号の時間曲線に含まれることができる。同期情報は、例えば、基準信号の周波数または周期性のそれぞれ、位相角、振幅、および/または極性に含まれることができる。
【0013】
同期情報は、好ましくは、周波数または周期性のそれぞれ、位相角および極性において本質的に一致するという効果で、溶接電流の同期を可能にする。同期情報は、好ましくは、基準信号の周期性および極性にある。したがって、基準信号はクロックパルスを指定することができ、このクロックパルスは第2の溶接電流源によって評価および採用される。基準信号の送信は、溶接プロセスの前に行われるため、溶接電流は、溶接プロセスのためのその出力前に既に同期することができる。基準信号の送信後も、溶接電流の同期は維持される。第2の溶接電流源は、同期情報を記憶し、同期を維持する。
【0014】
一実施形態では、基準信号は周期的な電圧信号であり、基準信号のある電圧レベル、例えばゼロクロス、最小値、または最大値、または基準信号のフランクが、溶接電流の同期に使用される。代替として、同期情報は、開始コマンドのメッセージ、例えばタイムスタンプの形態で基準信号に含まれることもできる。基準信号は、第2の溶接電流源によって測定または受信され、その後、評価される。特に、同期情報は、それによって評価される。評価された同期情報に基づいて、第2の溶接電流を第1の溶接電流と同期することができる。この文脈では、「同期」とは、溶接電流の時間曲線が互いに適合していることを意味する。好ましくは、「同期」は、溶接電流の位相角、極性および周波数が互いに適合しており、特に本質的に同一であることを意味する。しかし、溶接電流の振幅は、異なることができる。同期後、溶接電流間の位相シフトは実質的に0°となる。好ましい実施形態では、例えば、共通の交流ネットワークの相導体のような外部クロックパルス発生器が、同期を維持するために使用される。相導体または選択された相導体は、それぞれ、第1の溶接電流源および第2の溶接電流源のクロックパルス発生器として使用することができる。特に、交流ネットワークの相導体の電圧曲線の周期的な同期点、例えば電圧のゼロクロス、最小値、または最大値は、例えば、溶接電流を同期させるために使用することができる。
【0015】
基準信号を送信することにより、第2の溶接電流源は、例えば、溶接電流を同期させるために、どの相導体と、相導体の電圧曲線におけるどの周期的な同期点とを使用するかを知ることができる。溶接電流を同期させるために、実際に溶接電流を生成して出力することは、まだ必要ではない。同期させた溶接電流を生成、出力する溶接工程は、同期させた後に行うことができる。溶接電流の同期が特に交流溶接プロセスの場合に重要な役割を果たすという事実のために、同時溶接プロセスは、特に非消耗電極を用いた交流溶接プロセスであり得る。溶接プロセスは、例えば、TIG-AC溶接プロセス(TIG=タングステン-不活性ガス、AC=交流)であり得る。溶接電流として交流電流を発生させる、特にAC溶接電流源は、したがって、特に溶接電流源として提供され得る。溶接電流源は、あらゆるタイプの溶接源として理解され、したがって電圧制御された溶接源も含まれる。
【0016】
同期後、同期情報が第1の溶接電流源および第2の溶接電流源に格納されることが好ましい。同期情報は、それぞれの場合において、溶接電流源の同期ユニットに記憶させることができる。こうして、同期を維持することができる。
【0017】
一実施形態では、第1の溶接電流の同期と第2の溶接電流の同期の後、第1の溶接電流と第2の溶接電流が生成され、溶接プロセスが実行されることが提供される。言い換えれば、同期された溶接電流を用いて同期された後に、溶接プロセスが実行される。
【0018】
同期情報は、好ましくは、基準信号の時間曲線に、特に、周波数に、変化する極性に、および/または基準信号の位相角度に、含まれる。基準信号は、好ましくは、周期的な信号である。基準信号は、例えば、正弦波信号、方形波信号、または周期的なパルスを有する信号であり得る。基準信号は、50%に等しくないデューティサイクルを有することができる。デューティサイクルによって、第2の溶接電流源に追加情報を送信することができる。例えば、期間内の溶接電流のスイッチオン時間は、第2の溶接電流源の基準信号のデューティサイクルによって報告することができる。基準信号の特定の信号レベル、例えばゼロクロス、最小値、または最大値、または基準信号のフランクは、第2の溶接電流源によって検出および評価することができ、第2の溶接電流の同期は、それに基づいて実行することができる。基準信号の周期性は、基準信号のゼロクロスによって、特に簡単な方法で決定することができる。
【0019】
上述のように、交流溶接電流源の場合、溶接電流を交流ネットワークの相導体と同期させるのが一般的である。例えば、複数の溶接電流源による同時溶接プロセスにおいて、溶接電流を交流ネットワークの異なる相導体に同期させる場合、問題が発生し得る。特に好ましい実施形態では、このように、第1および第2の溶接電流源が共通の交流ネットワーク、特に3相交流ネットワークに接続され、溶接電流源の同期のために第1の溶接電流源によって交流ネットワークの相導体が選択され、選択された相導体の電圧曲線に基づいて基準信号が生成され、これにより、第2の溶接電流源により、第1の溶接電流源の手段によって選択された相導体を識別するために、同期情報が提供される。相導体の電圧曲線は、例えば、中性導体または別の相導体に対して測定することができる。それによって、好ましくは、基準信号が、特に周期において、選択された相導体の電圧曲線と同期していることが提供される。
【0020】
したがって、基準信号が評価され、相導体の電圧曲線と比較されるという点で、第2の溶接電流源によって選択された相導体を識別することが簡単な方法で可能となる。しかしながら、基準信号が、選択された相導体の電圧曲線と同じ形式を有することは必要ではない。この実施形態の場合、好ましくは、相導体または交流ネットワークの相がそれぞれ、第1の溶接電流源によって最初に選択され、選択された相導体に同期した基準信号が生成され、基準信号が第1の溶接電流源から第2の溶接電流源に伝送され、基準信号が第2の溶接電流源によって評価され、同期情報に基づいて選択された相導体が識別される。すぐに説明されるように、第1および第2の溶接電流は、その後、選択された相導体、すなわち同じ相導体に同期させることができる。このように、交流ネットワークの選択された相導体がクロックパルスを指定するために、基準信号の送信後であっても、溶接電流を同期させたままにできる。
【0021】
この文脈では、「選択」は、溶接工が意図的に相導体を選択するという意味での選択プロセスとして強制的に理解されるべきではない。それどころか、(ランダムな)選択は、第1の溶接電流源の交流ネットワークへの接続によって行われ得る。この実施形態の場合、どの相導体で、特にどのゼロクロスで、または選択された相導体の電圧曲線におけるどの他の周期的同期点で、2つの溶接電流源の溶接電流を将来的に同期させるかを、第2の溶接電流源に知らせることが目的である。例えば、溶接電流が、選択された相導体の電圧曲線の正の半波の前のゼロクロス点または負の半波の前のゼロクロス点と同期されることを提供することができる。この情報は、基準信号とともに第2の溶接電流源に報告することができる。したがって、基準信号の送信後に溶接電流源が互いに通信できなくなったとしても、溶接電流は依然として同期を保つことができる。このように、交流ネットワークは、溶接電流の同期性を確保するための基盤として機能する。
【0022】
第2の溶接電流源によって選択された相導体を特定した後、第1の溶接電流および第2の溶接電流は、選択された相導体の電圧曲線、特に選択された相導体の電圧曲線の周期的同期点、例えば周期的なゼロクロスと同期することができる。周期的同期点は、一般に、選択された相導体の電圧曲線のある定期的に繰り返される信号レベルとすることができる。周期的同期点は、例えば、ゼロクロス、最小値、または最大値とすることができる。具体的な例示的実施形態の場合、例えば、選択された相導体の電圧曲線が正の半波の前でゼロクロスを有するとすぐに、溶接電流の正の半波が開始されることを提供することができる。しかし、選択された相導体の電圧曲線が負の半波の前でゼロクロスするとすぐに、溶接電流の正の半波を開始することも、同様に考えられる。また、同期情報には、溶接電流の極性に関連する仕様が含まれていることも可能である。
【0023】
基準信号が時間曲線、特に周波数と相位置と極性を有し、それに基づいて選択された相導体を一意的に特定できることが好ましい。同期情報は、このように、それによって基準信号の時間曲線内に存在する。基準信号は、選択された相導体と同期させることができる。しかしながら、基準信号は、それによって、選択された相導体の電圧曲線とは異なる形態および/または異なるデューティサイクルを有することができる。
【0024】
本発明の実施形態の場合、同期情報が、選択された相導体の電圧曲線における周期的同期点、例えば周期的なゼロクロスの識別を提供することが規定される。これは、例えば、基準信号自体が特徴的な周期的な曲線を有するという点で行われ得る。基準信号は、例えば、パルス、ゼロクロス、および/またはフランクを有することができ、これらは、時間の点で、選択された相導体の電圧曲線の特定のゼロクロスに一致する。例えば、正の信号フランクを有する基準信号のゼロクロスが、選択された相導体の電圧曲線における周期的な同期点をマークすることを提供できる。第1の溶接電流および第2の溶接電流は、特定された周期的な同期点に同期して維持され得る。したがって、クロックパルスは、交流ネットワークによって特定される。好ましくは、同期情報が、溶接電流の極性に関連する仕様を含むことも提供され、それにより、溶接電流は、極性においても互いに適合させることができる。
【0025】
同期情報は、好ましくは、選択された相導体の電圧曲線から、特に、選択された相導体の周波数、極性、および/または位相角から得られる。特に、導出された同期情報が、基準信号を生成するために使用され、基準信号に含まれることができる。
【0026】
基準信号の曲線が、周波数、極性、および/または位相角において、選択された相導体の電圧曲線と同期している場合、選択された相導体を特に簡単かつ迅速に識別することが可能である。基準信号の形態および/またはデューティサイクルは、選択された相導体の電圧曲線の形態を有することができるが、必ずしもそうである必要はない。基準信号は、例えば、周期的な方形波信号、または周期的なパルスを有する信号とすることができ、一方、選択された相導体の電圧曲線は正弦波である。
【0027】
基準信号が、第1の溶接電流源から、第1の溶接電流源に接続されている第1の溶接トーチを経由して、第2の溶接電流源に接続されている第2の溶接トーチに、さらに第2の溶接電流源に直接または間接的に伝導する場合に、基準信号を伝送する特に簡単な方法が続く。これにより、特に、基準信号を伝送するために、第1の溶接トーチの電極と第2の溶接トーチの電極を電気的に接触させることができる。また、溶接トーチの電極がワークピースに接触し、2つの電極の間に電気的接触が確立されるようにすることもできる。
【0028】
基準信号の電流強度および電圧レベルは、好ましくは、ワークピース、溶接ワイヤ、または電極の溶融が回避されるように選択される。
【0029】
一実施形態では、基準信号が電圧信号、好ましくは交番信号、特に矩形波信号である。
【0030】
上記に設定された目的は、請求項13に記載の溶接電流源によっても解決される。溶接電流源は、少なくとも1つのワークピースに対して同時溶接プロセス、特に非消耗電極による溶接プロセスを実行するように構成される。本発明によれば、溶接電流源は同期ユニットを有し、このユニットは、さらなる類似の溶接電流源との同期のための第1のモードにおいて、同期情報を有する基準信号を生成し、基準信号をさらなる溶接電流源に出力するように構成され、および/または第2のモードにおいて、さらなる溶接電流源が出力する基準信号を測定するかまたは受信し、基準信号に含まれる同期情報を評価し、これに基づいて溶接電流をさらなる溶接電流源の溶接電流と同期させる。
【0031】
したがって、本発明による溶接電流源は、上述の方法のために、第1および/または第2の溶接電流源として使用されるように構成される。上述の方法を実行するために、このように、第1のモードで動作可能な少なくとも1つの溶接電流源と、第2のモードで動作可能な溶接電流源とが使用される。比較的に好ましい実施形態では、溶接電流源が、第1のモードと同様に、第2のモードでも動作可能である。そのような溶接電流源は、それによって、有利には、第1のモードと第2のモードとの間で切り替え可能である。上述の方法を実行するために、この代替の場合、2つの類似の溶接電流源を有利に使用することができる。本方法の観点から、溶接電流源のうちの1つは、第1のモードで動作させるという点で、第1の溶接電流源として使用することができる。本方法では、他の溶接電流源を第2の溶接電流源として使用することができ、この場合、第2のモードで動作させることができる。これにより、第1の溶接電流源は、「マスター」または「リード」として動作し、一方、第2の溶接電流源は、「スレイブ」または「トレイル」として動作する。同期ユニットは、計算ユニットによって、特にマイクロプロセッサによって形成することができる。本方法の特徴および利点に関して、溶接装置にも適用される上記の説明を参照されたい。
【0032】
第1のモードでは、同期ユニットは、交流ネットワークの選択された相導体の電圧曲線に基づいて、基準信号を生成するように構成することができる。基準信号は、例えば周波数および周期において電圧曲線と同期させることができ、したがって、選択された相導体の識別を一意的に行うことができる。
【0033】
この目的は、さらに、それぞれが上述のように形成された2つの溶接電流源からなるシステムによって解決される。溶接電流源は、好ましくは、それぞれが第1モードと第2モードとの間で切り替えられるように形成することができる。代替として、2つの溶接電流源の一方を第1のモードのみで動作させ、他方の溶接電流源を第2のモードのみで動作させることができ、これにより、モード間の切り替えオプションが存在しなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、図に基づいて以下において更に詳細に説明されるが、しかし、これらに限定されるものではない。
【0035】
図1】第1および第2の溶接電流源を示す。
図2A】同期した溶接電流を用いた同時溶接プロセスを模式的に示す。
図2B】同期した溶接電流を用いた同時溶接プロセスを模式的に示す。
図3A】同期していない溶接電流を用いた同時溶接プロセスを模式的に示す。
図3B】同期していない溶接電流を用いた同時溶接プロセスを模式的に示す。
図4A】3相交流ネットワークの相導体Uを用いた溶接電流の同期を概略的に示し、ここでは相導体の電圧は中性導体に対して図示される。
図4B】3相交流ネットワークの相導体Uを用いた溶接電流の同期を概略的に示し、ここでは相導体の電圧は中性導体に対して図示される。
図4C】3相交流ネットワークの相導体Uを用いた溶接電流の同期を概略的に示し、ここでは相導体の電圧は中性導体に対して図示される。
図5A】2つの溶接電流源を同期させるためのプロセスシーケンスを示す。
図5B】2つの溶接電流源を同期させるためのプロセスシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、第1の溶接電流源1および第2の溶接電流源2を示し、これらはそれぞれ、3相導体4を含む、記号的に図示された共通の3相交流ネットワーク3に接続されている。図示された2つの溶接電流源1、2は、交流(AC)を用いたタングステン-不活性ガス溶接プロセスを行うためのTIG-AC溶接電流源である。なお、この溶接電流源1、2は、例えば、交流だけでなく直流でも可能なパルス溶接プロセスにも使用できることは言うまでもない。溶接電流源1、2は、それぞれアース端子5、ひいては接続線6を介してワークピース10に電気的に接続されている。電極9を含む溶接トーチ8は、それぞれにおいて、さらに接続線7を介して各溶接電流源1、2に接続される。接続線6は、互いに直接接続することができ、またはワークピース10は、共通の支持体(図示せず)を介して互いに接続することができる。
【0037】
溶接電流源によって生成される溶接電流I、I図2A図3A参照)は、典型的には、交流ネットワーク3の相導体4の時間電圧曲線UU,V,W、特に相導体4の特定のゼロクロス点(周期的同期点15として機能する)と同期される。しかしながら、上述のように、溶接プロセス中に複数の溶接電流源1、2が使用され、生成された溶接電流I、Iが同期していない場合、問題が生じることがある。そして、溶接プロセス中に、アークLBが、溶接されるべきワークピース10に向かって所望のように向けられず、結果として生じる電圧差により、ワークピース10から他の溶接トーチ8の電極9に飛び超えが起こり得る(図3A参照)。飛び越えは、特に、図示されているように、ワークピース10、10’の間に隙間が存在する場合に見られる。その結果、溶接電流源1、2が共通の電気回路で直列接続されることになる。これは、それぞれ、溶接プロセスを妨害し、あるいは、不可能にする可能性がある。以下では、正のフランクを有するゼロクロス14は+で識別され、負のフランクを有するゼロクロス14は-で識別される。
【0038】
図2Aには、2つのワークピース10、10’に対する同時溶接プロセスが模式的に示されている。2つのワークピース10、10’、例えばパイプ(図示せず)の前側は、同時溶接プロセスの助けを借りて互いに接続される。この目的のために、2つの溶接電流源1、2が使用され、それによって、ワークピース10、10’は、溶接トーチ8によってワークピース10、10’の2つの反対側において同時に溶接される。この目的のために、ワークピース10、10’は、接続線6を介して溶接電流源1、2の負極に接続される。溶接電流源1、2の正極は、それに応じて溶接トーチ8によって接続される。極性の切り替えや溶接電流の極性の変更は、それぞれ交流溶接プロセス中に、括弧内の極性識別子(図2Aおよび図3A)に従って周期的に行うことができるのは言うまでもない。既に述べたように、生成された溶接電流I、Iは、交流溶接電流源の場合、交流ネットワーク3の相導体4と同期している。
【0039】
相導体4の電圧曲線UU,V,Wにおいて、溶接電流I、Iがそれぞれ同じ相導体4または同じ周期的同期点15に同期している場合、溶接電流I、Iは互いに同期していることにもなる。この場合を図2Bに模式的に示す。図2Bは、時間t(ミリ秒)にわたって同期した溶接電流I、Iをアンペア数で示したものである。溶接電流I、Iは、周波数fおよび模式的に図示された位相角φ、φにおいて本質的に同期している。溶接電流I、Iの振幅は、用途に応じて適合され、図示されるように、異なることもできることは言うまでもない。より良く視覚化するためにのみ、Iは破線で図示されている。図2Aにおいて、アークLBは、そこでの入熱を達成するために、ワークピース10、10’に向けられていることが見て取れる。しかしながら、溶接電流I、Iは、それぞれの溶接電流源1、2のそれぞれの接続線6、7を介して、象徴的に図示されるように、別々の電気回路で流れる。
【0040】
図3Aは、溶接電流I、Iが同期していない(例えば、相導体4の電圧曲線UU,V,Wにおける異なるゼロクロス14との同期による)溶接プロセスを示す図である。アークLBは、この場合、ワークピース10、10’に向かってはいないが、少なくとも断続的にそれぞれの他の溶接トーチ8の電極9に向かうことが分かる。ワークピース10、10’への入熱はそれによって著しく減少し、正しい溶接シームの形成が妨げられる。図3Bにおいて、非同期溶接電流I、Iが、ミリ秒単位の時間tにわたってアンペアで模式的に図示されている。溶接電流I、Iは時間的に正確に位相がずれており、したがってφ1-φ2=180゜だけ電気的に互いにオフセットしていることが分かる。このように、溶接電流I、Iの極性は一致しない。
【0041】
視覚的にわかりやすくするために、Iを破線で示す。溶接電流I、Iは、周波数fにおいて同期しているが、位相角φ、φや極性においてそれぞれ同期していない。アークLBが互いに相対的に燃焼し、溶接電流源1、2の直列接続が生じるため、溶接電流I、Iの振幅は、ここでは本質的に同一に図示される。直列接続により、溶接電流源1、2のうちの1つが、共通電気回路への溶接電流IまたはIの影響を引き受ける。象徴的に、溶接電流Iが共通電気回路に図示されている。
【0042】
溶接電流源1、2の溶接電流I、Iの極性を同期させ、したがって、ワークピース10、10’から電極9上への溶接電流I、Iのそれぞれの飛び越しまたは反れを防止するために、溶接プロセスの前に(したがって溶接電流I、Iの出力前に)、例えば第1の溶接電流源1から第2の溶接電流源2に基準信号1を送信することが提供される。同期、特に基準信号1の生成および評価は、溶接電流源1、2に配置された同期ユニット16(図1参照)の助けを借りて行われ得る。溶接電流I、Iは、基準信号11に基づいて互いに同期させることができる。図示の実施形態の場合、基準信号11は、相導体4と、相導体4の電圧曲線UU,V,Wに含まれる周期的同期点15と、溶接電流I、Iの極性、周波数、位相位置が同期するように指定する。
【0043】
溶接電流源1、2間の基準信号11の伝送は、例えば溶接プロセスの前に、溶接トーチ8を介して行われることができる。この目的のために、基準信号11が送信され、同期が完了するまで、溶接トーチ8の電極9を接触させることができる。電極9の接触は、図1に示されている。したがって、基準信号11は、溶接プロセスに先立って送信される。
【0044】
相導体に関する溶接電流I、Iを同期させるためのタイムシーケンスが、図4A~4Cに示され、それにより、図4Aはマスターの基準信号11を示し、図4Bは非同期状態を示し、図4Cは2つの溶接電流源1、2の同期状態を示している。時系列としては、相導体4と中性導体との間の測定が図示されている。測定は相導体間でも可能であることは言うまでもない。選択された相導体の電圧曲線UU,V,Wのどの相導体4と、特にどのゼロクロス14(より一般的には周期的同期点15)と、2つの溶接電流源1、2の溶接電流I、Iが将来的に同期されるかを、溶接プロセス前に、基準信号11の助けを借りて、「スレイブ」として機能する第2の溶接電流源2に知らせることが図示の実施形態の目的である。また、溶接電流I、Iのデューティサイクルや振幅などの付加情報も、第2の溶接電流源2に報告することができる。
【0045】
送信される基準信号11は、第1の溶接電流源1によって選択される相導体4と周波数および周期が同期しており、それによって、基準信号に基づいて相導体4を特定することができる。以下では、選択された相導体4は、参照番号12で識別される。溶接電流I、Iは、基準信号11の送信の終了後、溶接電流源1、2がもはや互いに通信できない場合でも、選択された相導体12および同期点15からの通知によって、その後の溶接/溶接プロセス中に同期を維持できる。交流ネットワーク3は、その後、溶接電流源1、2の同期ユニット16が、基準信号11によって報告された交流ネットワーク3の同期点15に設定されたという点で、同期を確保する。したがって、同期が行われた選択された相導体12は、溶接電流源1、2に記憶される。同期情報13は、したがって、溶接電流源1、2に記憶される。
【0046】
溶接電流I、Iの同期は、溶接電流源1、2が交流ネットワーク3に接続されたままである限り、および/または位相シーケンスが変更されない限り、全ての溶接プロセスにおいて、このように保証される。同期は、溶接電流I、Iが周波数、位相角および極性において同期していることを保証するものである。ゼロクロス14は、選択された相導体12の電圧曲線UU,V,Wにおける周期的な同期点15を表し、これによって溶接電流I、Iを同期することができる。プロセスにおけるその役割のために、第1の溶接電流源1は、「マスター」または「リード」とも呼ぶことができる。どの相導体4とどのゼロクロス14を同期に使用するかについての選択は、第1の溶接電流源1によって行われる。選択された相導体12の電圧曲線UU,V,Wは、正のフランクを有するゼロクロス14+と、負のフランクを有するゼロクロス14-とを含む。示された例示的な実施形態では、正のフランクを有する電圧曲線Uのゼロクロス14+は、周期的同期点15として使用される。
【0047】
相導体12の選択は、ランダムに、即ち、交流ネットワーク3への接続の間の、接続された相導体4のシーケンスによって行われ得る。第2の溶接電流源2は、基準信号11に基づいて第1の溶接電流源1と同期する。すなわち、第2の溶接電流源2の、出力されるが、まだ生成されていない溶接電流I2の極性および位相位置は、相導体4のゼロクロス14に対して徐々に切り替えられ、それぞれ生成すべき溶接電流Iまたはその電圧曲線が基準信号11と同期するまで、切り替えられる。同期が終了すると、両溶接電流源1、2は、出力すべき溶接電流I、Iを、同一の相導体4と、電圧曲線Uの同一のゼロクロス14+で同期させる。発生させるべき溶接電流I、Iの周波数と位相位置は、選択された相導体12によって引き継がれる。
【0048】
溶接電流I、Iは、選択相導体12の同一の周期的同期点15、特にゼロクロス14+に同期することにより、周波数、位相位置、極性が同期している。出力すべき溶接電流I、Iは、同期をとるために、実際に生成して出力する必要はない。
【0049】
同期情報13を有する基準信号11は、最初に第1の溶接電流源1(図4A)により生成され、出力される。同期情報13は、それによって、例えば、どの相導体4(選択された相導体12)と、それぞれどのゼロクロス14+(正のフランク)または14-(負のフランク)とが同期に使用されるかに関する情報を含む。示された例示的な実施形態では、正のフランクを有する電圧曲線Uのゼロクロス14+が、周期的同期点15として使用される。同期情報13は、溶接電流I2の振幅および溶接電流I2の形態をさらに含むことができる。基準信号11は、それによって好ましくは溶接電流ではなく、著しく低いレベル、例えば5Aを有する。
【0050】
同期情報13は、特に、基準信号11の時間曲線に、例えば基準信号のフランクまたはゼロクロス14’+または14’-に、含まれ得る。基準信号11は、選択された相導体12の電圧曲線UU,V,Wに、それぞれ周期期間または周波数に関して適合し、それに同期する。本実施例では、基準信号11は、図示されるように、期間Tにおいて選択された相導体12と同期している。図示されるような基準信号11の可能なデューティサイクルは、溶接電流源1、2におけるユーザ設定に依存する。デューティサイクルは異なってもよく、同期に影響を与えない。デューティサイクル、したがって、2つの溶接電流1、2の正相および負相の継続時間の比率は、好ましくは、同一になるように設定される。溶接電流I、Iのデューティサイクルは、溶接プロセス中に溶接シームまたは溶接シームのクリーニングゾーンにそれぞれ入力される熱に影響を与える。これは、用途に応じて、ユーザが適宜設定する。
【0051】
この情報は、好ましくは基準信号11に含まれ、溶接電流源1、2の両方が同一に設定される。図示の場合、基準信号11は方形波信号であり、これは、選択された相導体12の電圧曲線と周期期間および周波数に関して一致し、したがって同期している。基準信号11のゼロクロス14’+は、選択された相導体12の電圧曲線のゼロクロス14+と時間的に一致する。基準信号11のゼロクロス14’+は、選択された相導体12の電圧曲線において、溶接電流I、Iが同期されるべき周期的同期点15を示す。このように、選択された相導体12の電圧曲線Uと基準信号11の位相の位置は一致する。基準信号11により、選択された相導体12は、第2の溶接電流源2によって一意的に識別され、したがって、他の相導体4から区別することができる。
【0052】
基準信号11は、溶接トーチ8を介して第2の溶接電流源2に伝送することができる。第2の溶接電流源2は、基準信号11を評価し、溶接電流I、Iを同期させるために第1の溶接電流源1によってどの相導体4およびどのゼロクロス(本実施例ではゼロクロス14+)が選択されたかを判定することができる。どの相導体4またはどのゼロクロス14がそれぞれ選択されたかの決定は、基準信号11を相導体4の電圧曲線UU,V,Wと比較することによって行われることができる。比較は、連続的に、したがって相導体4ごとに行われ得る。これにより、基準信号11は、各場合に、相導体4の電圧曲線UU,V,Wと比較される。この比較は少なくとも1回、例えば5回行われる。比較が負である場合(例えば図4Bに示されるように)、次の相導体4が使用され、または第2の溶接電流源2から次の相導体4への切り替えがそれぞれ行われ、基準信号11と比較される。
【0053】
第2の溶接電流源2の誤同期は、図4Bの下側に図示されており、第2の溶接電流源2が電圧Uの相導体4に同期している場合である。しかしながら、電圧Uを有する相導体4は、基準信号11と同期していない。正しい相導体4が特定されるとすぐに、正しい相導体4と正しいゼロクロス14+であるかどうかの制御が数回、例えば5回連続して実行され得る。それによって誤同期が回避される。両溶接電流I、Iは、その後、それぞれ同じ相導体4、特に同じ周期的同期点15またはゼロクロス14と同期されるが、まだ出力されない。同時溶接プロセスが開始されると、同期された溶接電流I、Iが出力されることができる。これは、図4Cに示されている。
【0054】
要約すると、このようにして第1の溶接電流源1は相導体12を選択し、選択された相導体12に適合し、選択された相導体12の電圧曲線UU,V,Wにおける特定の周期的同期点15(ゼロクロス14+)を含む、基準信号11が生成された。基準信号11は第2の溶接電流源2に送信され、基準信号11に基づいて第2の溶接電流源2により、選択相導体12と選択相導体12の電圧曲線UU,V,Wにおける所定の周期的同期点15が特定された。続いて、第1の溶接電流源1および第2の溶接電流源2の溶接電流が、選択された相導体12と、電圧曲線UU,V,Wに含まれる周期的同期点15とに同期された。溶接電流I、Iは、同期後に出力することができる。
【0055】
説明した方法を実行するために、2つの同様の溶接電流源1、2を使用することができる。これらは、それぞれの場合において、第1のモードと第2のモードとの間で切り替えられることができる。第1のモードでは、基準信号11を生成することができ、第2のモードの溶接電流源に送信することができる。代替として、溶接電流源を切り替えられないようにすることも可能である。第1のモードで動作可能な溶接電流源1と、第2のモードで動作可能な溶接電流源とが、次に本方法を実行するために使用されなければならない。
【0056】
図5Aは、第1のモードにおける第1の溶接電流源1の観点から、溶接電流I、Iを同期させるためのプロセスシーケンスを示す。本方法はステップ101で開始される。ステップ102では、溶接電流源1、2の溶接トーチ8が電気的に接触しているかどうか、電流が流れているかどうかが確認される。ステップ103では、選択された相導体12の電圧曲線と周期的に実質的に同期する基準信号11が出力される。選択された相導体12と周期的同期点15は、基準信号11の手段により、第2の溶接電流源2により特定することができる。相導体4の選択は、例えば、溶接電流源2を交流ネットワーク3に接続することによってランダムに行われることもあれば、系統的に行われることもある。基準信号11は、例えば、ある時間の間、出力することができる。この方法は、ステップ104において、第1の溶接電流源1の側で終了する。
【0057】
これと平行して、図5Bは、第2のモードにおける第2の溶接電流源2のプロセスシーケンスを示す。方法は、ステップ201で開始される。ステップ202で、溶接トーチ8が電気的に接触しているかどうか、電流が流れているかどうかがチェックされる。ステップ203において、基準信号11が測定され、評価され、相導体4の電圧曲線と比較される。基準信号11が比較された相導体4と同期していない場合(×で図示)、ステップ204において次の相導体4への切り替えが行われ、ステップ203が再び実行される。選択された相導体12が識別された場合(チェックマークの手段で図示)、この方法は、第2の溶接電流源2の側でも、任意的には繰り返し検証した後に、終了する(ステップ205)。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B