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特許7427853活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、それを用いた印刷物及び積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化性接着剤組成物、それを用いた印刷物及び積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/12 20060101AFI20240130BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20240130BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240130BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240130BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B37/12
C09J201/00
C09J11/06
C09J7/38
C09J4/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022207038
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2023-05-17
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592057961
【氏名又は名称】マツイカガク株式会社
(72)【発明者】
【氏名】保崎 篤史
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 航平
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-525620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112724744(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0216691(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319136(US,A1)
【文献】特開2021-102667(JP,A)
【文献】国際公開第2019/073978(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非反応性樹脂(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、及び光開裂型光開始剤(C)を含み、かつ、粘度が200~3000mPa・sである活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を基材上にフレキソ印刷した印刷物を作製し、印刷物に金属箔を貼り合わせたのち、活性エネルギー線を照射して硬化及び接着する積層体の製造方法であって、
活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、非反応性樹脂(A)を活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の総質量中に15~40質量%含み、
エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)をエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して10質量%以上含み、光開裂型光開始剤(C)は、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上である光開裂型開始剤(C1)を前記接着剤組成物の全質量に対して2質量%以上含む、積層体の製造方法。
【請求項2】
エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であるモノマーをエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して70質量%以上含む請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
非反応性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以上である請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
非反応性樹脂(A)は、ポリエステル樹脂である請求項1または2に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子材料等の接着に適した活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いた積層体に関する。詳しくは、優れた作業性、塗工・印刷適性を有し、低エネルギー量で接着性を有する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いる金属箔押し積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に接着剤組成物は、包装材料やラベル等の表示材料、建築材料、電子部品、光学部品等の様々な分野において広く利用されている。従来の溶剤乾燥型接着剤組成物は、溶剤の乾燥に時間を要するため生産性に劣り、VOC(揮発性有機化合物)の発生やCO2排出等の環境負荷の課題があることから、電子線や紫外線等の活性エネルギー線で硬化する接着剤組成物が利用されるようになっている。この活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、一般に無溶剤で使用でき、短時間に少ないエネルギーでの硬化が可能であることから、生産性向上や環境負荷低減の観点において優れた特性を有している。
【0003】
一方で、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物が利用される分野や用途の拡大及び高性能化、コスト削減が進むにつれ、低エネルギー量で硬化させ、十分な接着性が得られることが要求されている。
【0004】
また、フィルム基材上の接着剤層に金属箔を転写し、包装材料やラベル等に金属光沢を与える手法としてホットスタンピング法およびコールドスタンピング法が知られている。ホットスタンピング方式の転写方法は、加熱した金型を用いて金属箔を基材に圧着させることにより金属箔を基材に転写するため、高コストで作業効率が悪く、熱の影響を受けやすい基材に適用することができなかった。
【0005】
そのため近年、加熱しないコールドスタンピング方式の転写方法が広く用いられている。コールドスタンピング方式の転写方法では、まず、金属箔を転写する箇所に光硬化性接着剤を塗布した基材に、金属箔を圧着させる。そして、光硬化性接着剤を硬化させた後、基材から金属箔を剥がすことにより、基材の光硬化性接着剤を塗布した箇所に金属箔が転写される(以下、コールドスタンピング方式で作成した金属箔転写物をコールド箔ともいう)。このように、コールドスタンピング方式の転写方法では、金型を用いて加熱及び加圧する必要がないため、低コストで作業効率が良いが、巻き取り加工時にクラック(箔割れ)が生じやすいといった課題があった。
【0006】
コールド箔用の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物として、例えば、重量平均分子量2000から5000、酸価40から80(mgKOH/g)および軟化点80から120℃であるポリエステル樹脂、分子量200以上の単官能モノマー、モル吸光係数(dm/mol・cm)が、波長313nmにおいて、10000以下である光開始剤を含有する活性エネルギー線硬化型印刷インキが優れた接着性を有することが報告されている(特許文献1)。
【0007】
また、(メタ)アクリレート基を有するモノマー成分と、(メタ)アクリレート基を有するオリゴマー成分と、光重合開始剤とを含むコールド箔転写用光硬化性接着剤がコールド箔の割れを抑制できることが報告されている(特許文献2)。
【0008】
しかしながら、特許文献1、2の組成物は、低エネルギー量の条件では十分な接着性や耐クラック性が得られない問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-024139号公報
【文献】特開2020-055987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、低エネルギー量の条件で優れた接着性および耐クラック性を有する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いる積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化性接着剤組成物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、非反応性樹脂(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、及び光開裂型光開始剤(C)を含む活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であって、エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)をエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して10質量%以上含み、光開裂型光開始剤(C)は、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上である光開裂型開始剤(C1)を前記接着剤組成物の全質量に対して2質量%以上含む活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【0013】
また、エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であるモノマーをエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して70質量%以上含む請求項1に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【0014】
また、非反応性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)が0℃以上である請求項1または2に記載の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【0015】
また、フレキソ印刷方式に用いられる上記の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物に関するものである。
【0016】
また、上記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を基材に印刷してなる印刷物に関するものである。
【0017】
また、上記印刷物に、金属箔を接着した積層体に関するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によって、低エネルギー量の条件で優れた接着性および耐クラック性を有する活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いる積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0020】
以下の説明において、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルは、それぞれメタクリレートおよび/またはアクリレート、メタクリロイルおよび/またはアクリロイル、メタクリルおよび/またはアクリルを意味する。本発明に使用される活性エネルギー線硬化型印刷インキの組成としては、以下の組成が好ましい組成として挙げられる。
【0021】
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、非反応性樹脂(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、及び光開裂型光開始剤(C)を含むものであって、エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)をエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して10質量%以上含み、光開裂型光開始剤(C)は、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上である光開裂型開始剤(C1)を前記接着剤組成物の全質量に対して2質量%以上含む。非反応性樹脂(A)を配合することで、種々の基材に対して密着性が良好となり、基材選択の幅が拡がる。エチレン性不飽和モノマー(B)として、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)が配合されることで接着性及び耐クラック性が良好となり、光開裂型光開始剤(C)が、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上であることで、低エネルギー量でも硬化し、接着性が得られる。
【0022】
非反応性樹脂(A)は、インキ・塗料・粘接着剤業界において通常使用されている樹脂であって、不飽和二重結合等の反応性官能基を含まないものを例示することができる。具体的には、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ふっ素樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、セルロース樹脂、テルペン樹脂、キシレン樹脂、アルキッド樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、ブチラール樹脂、ケチミン樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、エチレン性不飽和モノマー(B)への溶解性や接着性、価格等の観点からポリエステル樹脂が好ましく、これら樹脂は単独でも2種類以上を併用してもよい。また、非反応性樹脂(A)は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物総質量中に10~40質量%含むことが好ましく、15~35質量%含むことがより好ましい。
【0023】
ポリエステル樹脂としては、市販品でいうと、例えば、東洋紡社製:バイロン220(Mn=2000、Tg=53℃)、バイロンGK130(Mn:7000、Tg:15℃)、バイロンGK590(Mn:7000、Tg:15℃)、バイロンGK680(Mn:6000、Tg:10℃)、バイロンGK810(Mn:6000、Tg:46℃)、バイロンGK780(Mn=11000、Tg=36℃)、バイロンGK890(Mn=11000、Tg=17℃)。ユニチカ社製:エリーテルUE3210(Mn:20000、Tg:45℃)、エリーテルUE3220(Mn:25000、Tg:5℃)、エリーテルUE3300(Mn:8000、Tg:45℃)、エリーテルUE9200(Mn:15000、Tg:65℃)。SKケミカル社製:スカイボンES403(Mn:9000、Tg:40℃)、スカイボンES460M(Mn:7000、Tg:37℃)、スカイボンES601(Mn:6000、Tg:18℃)、スカイボンES710(Mn:10000、Tg:37℃)、スカイボンES750(Mn:8000、Tg:35℃)等が挙げられる。
【0024】
非反応性樹脂(A)の分子量は、重量平均分子量が1000~30000の範囲が好ましく、2000~20000がより好ましい。
【0025】
非反応性樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、0℃以上であると耐クラック性がより向上するため好ましく、30℃以上がより好ましい。
【0026】
エチレン性不飽和モノマー(B)は、エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーであれば特に限定されないが、単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミドモノマー、ビニルモノマー、アリルモノマー、等を挙げることができる。これらは単独でも2種類以上を併用してもよい。エチレン性不飽和モノマー(B)は、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物総質量中に50~95質量%含むことが好ましく、55~90質量%含むことがより好ましい。
【0027】
エチレン性不飽和モノマー(B)は、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)をエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して10質量%以上含み、20質量%以上含むことが好ましい。含有量の上限は特に限定されず、エチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して100質量%であってもよい。
【0028】
ガラス転移温度(Tg)は、ホモポリマーのTgを意味し、例えば、示差走査熱量計(DSC)により測定され、-60℃から200℃まで20℃/分で昇温し、その後-100℃/分で冷却し、再び-60℃から200℃まで20℃/分で昇温したときに検出したピークから求められる。
【0029】
ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)としては、
KJケミカルズ社製:ACMO(アクリロイルモルフォリン、Tg=145)、DEAA(ジエチルアクリルアミド、Tg=81℃)HEAA(ヒドロキシエチルアクリルアミド、Tg=98℃)。SARTOMER社製:SR257(ステアリルアクリレート、Tg=35℃)、SR506(イソボルニルアクリレート、Tg=97℃)、SR339A(2-フェノキシエチルアクリレート、Tg=35℃)、SR217NS(4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、Tg=35℃)。大阪有機化学工業社製:ビスコート155(シクロヘキシルアクリレート、Tg=15℃)、ビスコート160(ベンジルアクリレート、Tg=6℃)、ビスコート196(3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート、Tg=52℃)、ビスコート200(環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、Tg=27℃)。
共栄社化学社製:ライトエステルE(エチルメタクリレート、Tg=65℃)、ライトエステルNB(n-ブチルメタクリレート、Tg=20℃)、ライトエステルIB(イソブチルメタクリレート、Tg=48℃)、ライトエステルTB(ter-ブチルメタクリレート、Tg=107℃)、ライトエステルTHF(1000)(テトラヒドロフルフリルメタクリレート、Tg=60℃)、ライトエステルHO-250(N)(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、Tg=55、ライトエステルDM(ジメチルアミノエチルメタクリレート、Tg=18℃)ライトエステルDE(ジエチルアミノエチルメタクリレート、Tg=20℃)等が挙げられる。ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である単官能モノマーは、本発明の目的を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0030】
単官能エチレン性不飽和モノマーは、ガラス転移温度に関わらず、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の粘度を著しく低減させる効果があり、塗工・印刷皮膜の接着性及び平滑性を向上させるため好ましい。単官能エチレン性不飽和モノマーは、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物総質量中に10~75質量%含むことが好ましく、20~70質量%含むことがより好ましい。
【0031】
また、エチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対してガラス転移温度(Tg)が0℃以上であるモノマーを70質量%以上含むことで、耐クラック性がより向上するため好ましく、80質量%以上含むことがより好ましい。含有量の上限は特に限定されず、エチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して100質量%であってもよい。
【0032】
ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である2官能以上のモノマーとしては、代表的なものとして、HDDA(1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、Tg=105℃、2官能)、TPGDA(トリプロピレングリコールジアクリレート、Tg=110℃、2官能)、アロニックスM-350(EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、Tg=約90℃、3官能)、MIRAMERM370(トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌルレートトリアクリレート、Tg=272℃、3官能)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、Tg>250℃、6官能)等が挙げられる。また、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上であれば特に限定されず、下記の公知のモノマー等から適宜選択して使用することができる。また、ガラス転移温度(Tg)が0℃未満である2官能以上のモノマーは、本発明の目的を損なわない範囲で適宜用いることができる。
【0033】
2官能以上のエチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、その他のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール200ジ(メタ)アクリレート(数字は分子量を表す)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールのアルキレンオキシド(2モル)付加物のジ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド(3モル)付加物のジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンのプロピレンオキシド(3モル)付加物のジ(メタ)アクリレート等の2官能モノマー、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのエチレンオキシド(3モル)付加物のトリ(メタ)アクリレート、グリセリンのプロピレンオキシド(3モル)付加物のジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのエチレンオキシド(3モル)付加物のトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンのプロピレンオキシド(3モル)付加物のトリ(メタ)アクリレート等の3官能モノマー、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマーが挙げられる。
2官能以上のエチレン性不飽和モノマーは、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物総質量中65質量%以下であることが好ましく、45質量%以下であることがより好ましい。
【0034】
光開裂型光開始剤(C)は、電子線や紫外線、可視光線等の活性エネルギー線照射によってラジカルを発生し、エチレン性不飽和モノマー(B)の架橋反応および重合反応を開始させる。光開裂型光開始剤は活性エネルギー線硬化性接着剤組成物総質量中に2~10質量%含むことが好ましく、3~7質量%含むことがより好ましい。光開裂型光開始剤は単独でも2種以上を併用してもよい。
【0035】
光開裂型光開始剤(C)は、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上であることで、硬化性や接着性が優れる。なお、本発明でいうグラム吸光係数とは、単に吸光係数とも呼ばれるものであって、吸光度を(As)、試料厚み(セル内部の厚み)をb(cm)、試料の濃度をc(g/l)としたときに、グラム吸光係数(as)=(As)/(b・c)で定義されるものである(化学大辞典1、p.950、昭和46年2月5日発行、共立出版(株)参照)。例えば、セルとしては、セル内部の厚みが1cmの石英セルを用いるのが好ましく、その測定方法としては、例えば機器分析のてびき(1)(p.97~p.115、1989年、4月1日発行、(株)化学同人)に記載されているような方法で測定することができる。
【0036】
波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上である光開裂型光開始剤(C1)としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(1.3L・g-1・cm-1)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(2.2L・g-1・cm-1)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1(5.0L・g-1・cm-1)、等が挙げられる。本発明の目的を損なわない範囲で、前記光開裂型光開始剤(C1)以外の開始剤を適宜用いることができる。
【0037】
[添加剤]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物には、非反応性樹脂(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、及び光開裂型光開始剤(C)の他に、添加剤として、公知のものを適宜含有することができる。例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、増感剤、蛍光増白剤、硬化剤、カップリング剤、可塑剤、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤、基材湿潤剤、接着付与剤、帯電防止剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、有機溶剤、水等が挙げられる。
【0038】
[溶剤]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、有機溶剤や水を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の総質量に対して、3%以下、より好ましくは1%以下である。
【0039】
[粘度]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の25℃における粘度は、100~3000mPa・sが好ましく、より好ましくは200~2000mPa・sである。25℃における粘度が上記範囲内にあると、塗工・印刷適性と接着性とのバランスに優れる。なお、粘度は、コーンプレート型粘度計(コーン直径20mm、コーン角度1度)を用いて、25℃環境下、せん断速度100s-1で測定できる。
【0040】
本発明のコールドスタンピング法による金属箔押し(箔転写)に使用する活性エネルギー線硬化性接着剤の印刷は、一般的に公知である印刷方法は何れも使用可能であり、例えば、スプレー、シャワー、ディッピング、ロールコーター、ダイコーター、スピンコーター、ディスペンサー、インクジェット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等のウエットコーティング法が挙げられるが、特に、フレキソ印刷が良い。
【0041】
[硬化方法]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を硬化する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光線又は赤外線等を照射することで硬化することができる。中でも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線のピーク波長は、150~450nmであることが好ましい。
【0042】
[紫外線での硬化方法]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を紫外線で硬化する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができ、例えば高圧水銀ランプ、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、無電極放電ランプ、LED等を用いることができる。積算光量として10~3000mJ/cm、好ましくは30~1000mJ/cmを照射すればよい。紫外線照射後は、必要に応じて加熱を行って接着性向上を図ることもできる。
【0043】
[積層体]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を基材上に塗工・印刷により層形成し、金属箔を貼り合わせたのち、活性エネルギー線を照射して硬化・接着するコールドスタンピング法により積層体が得られる。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を塗工・印刷する際の膜厚としては、通常1~50μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましい。
【0044】
[基材]
本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を塗工・印刷する基材は、特に限定されるものではなく、公知の材料を使用することができる。例えば、紙、段ボール、アート紙、コート紙、合成紙等の紙類やPET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、OPP(二軸延伸ポリプロピレン)等のプラスチックフィルム類が挙げられる。基材の膜厚としては特に指定されるものではなく、塗工・印刷する表面がコロナ処理されていてもよい。また、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂やその他の樹脂等で表面コート処理を施されていてもよい。
【0045】
金属箔は、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、錫等の金属からなる箔、あるいはそれらの2種以上を組み合わせた合金からなる箔を使用できる。箔の価格の点から銅、アルミニウム、ニッケルの箔が適している。さらに、箔の上から活性エネルギー線を照射するために活性エネルギー線の透過率も考慮される。
【実施例
【0046】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、以下の実施例は本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。
【0047】
[活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の作製:実施例1]
非反応性樹脂(A)として、バイロンGK680(ポリエステル樹脂、固形分100質量%)20質量%、エチレン性不飽和モノマー(B)として、ACMO(4-アクリロイルモルフォリン)20質量%、アロニックスM-350(EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート)54質量%を80℃で加温しながら、ディスパー撹拌(1000rpm)により溶解・混合した。前記混合物に光開裂型光開始剤(C)として、Omnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)6質量%を混合し、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を作製した。
【0048】
[活性エネルギー線硬化性接着剤組成物の作製:実施例2~9、比較例1~5]
表1に記載した原料と量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~9、比較例1~5を得た。なお、表1中の数字は質量%を示す。
【0049】
[積層体の作製方法]
得られた活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を、基材である易接着PETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4360)にバーコーター#3を用いて塗工した(接着剤膜厚約5μm)。その後、ラミネート材である金属箔(村田金箔社製、GNC-F銀)をラミネート用ハンドローラーによって貼り合わせた。さらに、コンベア式UV照射装置(アイグラフィックス社製、高圧水銀灯、出力80W/cm、コンベア速度80m/分、ランプ高さ11cm)を用いて、金属箔側から紫外線を照射し、接着剤組成物を硬化させ、積層体を作製した。EIT社製UV POWER PUCKIIにて測定したUVA領域の積算光量は15mJ/cmと小さく、低エネルギー量である。
【0050】
[接着性]
基材上に箔押しされたアルミニウム部分の接着性(密着性)を、UV照射後に離型紙を剥がした際に箔が基材に接着するかどうかを目視確認し以下の基準で評価した。
〔評価〕
◎:変化なし(箔が全く剥がれない。)
○:僅かに(5%未満)に剥離が見られた。
△:一部に(5~50%未満)に剥離が見られた。
×:一部(50%以上)または全部に剥離が見られた。
【0051】
[耐クラック性]
基材上に箔押しされたアルミニウム部分の耐クラック性(密着性)を、箔押し後、φ8mmの棒に箔転写面を上にして巻きつけた後のクラックの発生状態を目視にて以下の基準で評価した。
〔評価〕
◎:目視でクラックが確認されなかった。
○:微細なクラックのみが確認された。
×:大きなクラックが確認された。
-:接着性が不足しているため、未評価。
【0052】
【表1】
【0053】
表1中の各原料の情報は、下記の通りである。
非反応性樹脂(A)
・バイロンGK680:東洋紡社製、ポリエステル樹脂、Tg10℃
・バイロン220:東洋紡社製、ポリエステル樹脂、Tg53℃
エチレン性不飽和モノマー(B)
・ACMO:KJケミカル社製、4-アクリロイルモルフォリン、ホモポリマーTg145℃
・SR217NS:SARTOMER社製、4-t-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ホモポリマーTg35℃
・ビスコート155:大阪有機化学工業社製、シクロヘキシルアクリレート、ホモポリマーTg15℃
・TPGDA:ダイセル・オルネクス社製、トリプロピレングリコールジアクリレート、ホモポリマーTg55℃
・アロニックスM-350:東亞合成社製、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、ホモポリマーTg約90℃
・アロニックスM-101A:東亞合成社製、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、ホモポリマーTg-8℃
光開始剤
・Omnirad TPO:IGM Resins B.V.社製、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド,365nmにおけるグラム吸光係数1.3L・g-1・cm-1
・SB-PI799:ソート社製、2,4-ジエチルチオキサントン、365nmにおけるグラム吸光係数16.4L・g-1・cm-1
・DAIDO UV-CURE174:大同化成工業社製、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、365nmにおけるグラム吸光係数0.0L・g-1・cm-1
【0054】
表1に示す通り、本発明の活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を用いた実施例1~9は、低エネルギー量の条件において、優れた接着性及び耐クラック性を発現した。
【要約】
【課題】低エネルギー量の条件で優れた接着性を有し、コールド箔の破壊を抑制できる活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いる積層体を提供することである。
【解決手段】非反応性樹脂(A)、エチレン性不飽和モノマー(B)、及び光開裂型光開始剤(C)を含む活性エネルギー線硬化性接着剤組成物であって、エチレン性不飽和モノマー(B)が、ガラス転移温度(Tg)が0℃以上である単官能モノマー(B1)をエチレン性不飽和モノマー(B)の全質量に対して10質量%以上含み、光開裂型光開始剤(C)が、波長365nmにおけるグラム吸光係数が1.0L・g-1・cm-1以上である光開裂型開始剤(C1)を前記接着剤組成物の全質量に対して2質量%以上含む活性エネルギー線硬化性接着剤組成物及びそれを用いる積層体。
【選択図】なし