IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

特許7427854活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20240130BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20240130BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08F2/44
C08F290/06
B32B27/30 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023088334
(22)【出願日】2023-05-30
【審査請求日】2023-07-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 大
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-083934(JP,A)
【文献】特開2017-082026(JP,A)
【文献】特開2000-273305(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/44
C08F 290/06
B32B 27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)(ただし、(D)を除く)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)(ただし、(D)を除く)およびラジカル重合開始剤(E)を含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物であって、
下記(1)~(4)のいずれかを満足する積層体形成用の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
(1)さらに有機酸の金属塩(C)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
(2)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)として、エチレン性不飽和二重結合基を含有する化合物(d2)を含有する。
(3)さらに有機酸の金属塩(C)および数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を含有する。
(4)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
【請求項2】
水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)、有機酸の金属塩(C)、数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)、ラジカル重合開始剤(E)およびホウ酸化合物(F)を含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項3】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、化合物(A)を10~60質量%、化合物(B)を30~89質量%、化合物(C)を0.01~5質量%、化合物(D)を0.1~20質量%、化合物(E)を0.1~10質量%、化合物(F)を0.1~7質量%含有する請求項2記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項4】
水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)が、
重量平均分子量が1,000~60,000かつウレタン構造と2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物(b1)と、エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有し、水酸基を有さない化合物(b2)(ただし、(b1)を除く)の少なくとも一方を含む請求項1~3いずれか記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項5】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、化合物(b1)を1~20質量%、化合物(b2)を9~69質量%含有する請求項4記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【請求項6】
第一の基材(G1)、請求項5記載の活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および第二の基材(G2)をこの順に備えた積層体。
【請求項7】
基材(G1)および基材(G2)は、それぞれ独立にポリアセチルセルロース系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリイミド系フィルム、およびガラスフィルムからなる群より選択されるいずれかである、請求項6記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤に好適な活性エネルギー線重合性樹脂組成物およびその積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、重合速度が速く、また一般に無溶剤で使用できるため、作業性に優れ、さらに重合時に必要となるエネルギーが極めて低い等の優れた特性を有している。活性エネルギー線重合性樹脂組成物としては、ラジカル系、カチオン系、またはラジカル系とカチオン系の併用系(ハイブリッド系)の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が挙げられ、接着剤やコート剤等の幅広い分野で使用されている。
【0003】
液晶表示関連分野などに用いられる偏光子は、通常ポリビニルアルコール(PVA)にヨウ素や染料を吸着させたものを一軸延伸して製造される。このポリビニルアルコール系偏光子は、熱や水分により収縮し、偏光性能の低下をきたす。そこで、PVA系偏光子の表面に保護フィルムを貼合せたものが偏光板として用いられている。
【0004】
PVA系偏光子と保護フィルムの貼り合わせには、水系接着剤や活性エネルギー線重合性樹脂組成物が使用されているが、保護フィルムに用いられる基材の汎用性や、生産面における効率化や省エネルギー化の観点から、接着剤として、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の利用が進んでいる。
活性エネルギー線重合性樹脂組成物には、PVA系偏光子と保護フィルムの貼り合わせに十分な接着性、PVA系偏光子の偏光性能低下を抑制するための耐熱性、耐湿性、耐水性などの性能が求められる。
【0005】
特許文献1には、ノルボルネン系樹脂フィルムなどのトリアセチルセルロースより透湿度の低いフィルムを保護フィルムに用いた偏光板の接着強度などの課題に対して、芳香環を含まないエポキシ樹脂を主成分とするカチオン系の活性エネルギー線重合性接着剤が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ノルボルネン系樹脂のみならず、アクリル系樹脂やトリアセチルセルロースのフィルムにも強固に接合する接着剤として、2-ヒドロキシブチルアクリレートと1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを併用したハイブリッド系の活性エネルギー線重合性接着剤が開示されている。
【0007】
特許文献3には、耐水性などの課題に対して、アクリロイルモルホリンと炭素数10~20のアルキルアクリレートを併用するラジカル系の活性エネルギー線重合性接着剤が開示されている。
【0008】
車載用途の液晶表示装置では屋内使用やモバイル用途の液晶表示装置と比べて厳しい耐熱性、耐湿熱性及び高温から低温までの幅広い温度領域で良好な接着力が要求される。しかしながら、従来の接着剤では、高温と低温における接着力が不十分であり、耐熱性と耐湿熱性も要求品質を満足することはできていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2004-245925号公報
【文献】特開2010-018722号公報
【文献】特開2017-194572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、高温および低温においても優れた接着力を有し、耐熱性、耐湿熱性の優れた積層体を形成できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線重合性組成物により前記目標達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)(ただし、(D)を除く)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)(ただし、(D)を除く)およびラジカル重合開始剤(E)を含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物であって、
下記(1)~(4)のいずれかを満足する活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
(1)さらに有機酸の金属塩(C)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
(2)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を含有する。
(3)さらに有機酸の金属塩(C)および数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を含有する。
(4)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
【0013】
また、本発明は、水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)、有機酸の金属塩(C)、数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)、ラジカル重合開始剤(E)およびホウ酸化合物(F)を含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物。
【0014】
また、本発明は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、化合物(A)を10~60質量%、化合物(B)を30~89質量%、化合物(C)を0.01~5質量%、化合物(D)を0.1~20質量%、化合物(E)を0.1~10質量%、化合物(F)を0.1~7質量%含有する前記活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)が、
重量平均分子量が1,000~60,000かつウレタン構造と2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物(b1)と、エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有し、水酸基を有さない化合物(b2)(ただし、(b1)を除く)の少なくとも一方を含む前記活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、化合物(b1)を1~20質量%、化合物(b2)を9~69質量%含有する前記活性エネルギー線重合性樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、第一の基材(G1)、前記活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および第二の基材(G2)をこの順に備えた積層体に関する。
【0018】
また、本発明は、基材(G1)、基材(G2)は、ポリアセチルセルロース系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリイミド系フィルム、およびガラスフィルムからなる群より選択されるいずれかである、前記積層体に関する。。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、高温および低温においても優れた接着力を有し、耐熱性、耐湿熱性の優れた積層体を形成できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体の提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。本明細書では、「(メタ)アクリル」、と表記した場合には、特に断りがない限り、それぞれ「アクリルまたはメタクリル」を表す。また、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を樹脂組成物、水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)を化合物(A)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)を化合物(B)、有機酸の金属塩(C)を化合物(C)、数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を化合物(D)、ほう酸化合物(F)を化合物(F)と略記する場合がある。
また、本明細書において重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量である。
【0021】
本明細書において、特に記載がない限り、「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
また、「部」および「%」は、特に断りのない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を表す。
なお、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0022】
<水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)>
化合物(A)は、水酸基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物である。樹脂組成物中に化合物(A)を含むことで、基材の親水性官能基等と水素結合を形成し、接着力が向上する。化合物(A)は、重量平均分子量1,000未満が好ましい。化合物(A)の重量平均分子量が1,000未満であると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工時の膜厚制御が容易になる。また、化合物(A)は、接着力の観点でエチレン性不飽和二重結合基を1つ有することが好ましい。
なお本願においては、アミノ基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物の数平均分子量が500~40000である場合は、水酸基を有していても後述のアミノ基含有化合物(D)として取り扱う。
【0023】
化合物(A)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、10~60質量%であることが好ましく、20~50質量%がより好ましい。10~60質量%であると低温接着力と高温接着力のバランスが良くなる。
【0024】
化合物(A)としては、水酸基とエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物であれば特に制限はなく、以下のような化合物を用いることができる。
【0025】
例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(メタ)アクリル酸エチル-α-(ヒドロキシメチル)あるいは、前記水酸基含有エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物に対してε-カプロラクトンラクトンの開環付加により末端に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルや、前記水酸基含有エチレン性不飽和二重結合基を有する化合物に対してエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを繰り返し付加したアルキレンオキサイド付加(メタ)アクリル酸エステル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アクリル酸エステル類;
【0026】
例えば、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシオクチルビニルエーテル、ヒドロキシデシルビニルエーテル、ヒドロキシドデシルビニルエーテル、ヒドロキシオクタデシルビニルエーテル、グリセリルビニルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系ビニルエーテル等の水酸基含有の脂肪族ビニルエーテル類;
【0027】
例えば、(メタ)アリルアルコール、イソプロペニルアルコール、ジメチル(メタ)アリルアルコール、ヒドロキシエチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシブチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシヘキシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクチル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシドデシル(メタ)アリルエーテル、ヒドロキシオクタデシル(メタ)アリルエーテル、グリセリル(メタ)アリルエーテル、あるいはエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの繰り返し付加した末端に水酸基を有するアルキレンオキサイド付加系(メタ)アリルエーテル等の水酸基含有の脂肪族(メタ)アリルアルコール類ないしは(メタ)アリルエーテル類;
【0028】
例えば、プロペンジオール、ブテンジオール、ヘプテンジオール、オクテンジオール、ジ(メタ)アクリル酸グルセロール等の複数の水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物類;
例えば、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド〔N-ヒドロキシエチルアクリルアミドとN-ヒドロキシエチルメタクリルアミドとを併せて「N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド」と表記する。以下同様。〕、N-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド等の水酸基含有の(メタ)アクリルアミド類;
【0029】
例えば、ビニルアルコール等の水酸基とエテニル基を有する単量体類等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらは、1種だけを用いてもよいし、あるいは、複数種を併用してもよい。
【0030】
化合物(A)としては、基材との密着性の面より、炭素数1~6のジオールのアクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが特に好ましい。
【0031】
<水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)>
化合物(B)は、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物である。樹脂組成物中に化合物(B)を含むことで、耐湿熱性が向上する。なお本願においては、アミノ基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物の数平均分子量が500~40000である場合は、後述のアミノ基含有化合物(D)として取り扱う。
【0032】
化合物(B)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、30~89質量%であることが好ましく、40~71質量%がより好ましい。30質量%以上であれば耐湿熱性がより向上し、89質量%以下であれば接着力がより向上する。
【0033】
化合物(B)は重量平均分子量が1,000~60,000かつウレタン構造と2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物(b1)と、エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有し、水酸基を有さない化合物(b2)(ただし、(b1)を除く)、エチレン性不飽和二重結合基を1つ有し、水酸基を有さない化合物(b3)に分類できる。化合物(B)は、化合物(b1)および化合物(b2)の少なくとも一方を含むことが好ましく、化合物(b1)および化合物(b2)を両方含むことがより好ましい。化合物(b1)を含むことで低温および高温における接着力が向上し、化合物(b2)を含むことで耐湿熱性が向上する。
【0034】
[化合物(b1)]
化合物(b1)は、一般にウレタンアクリレートといわれる化合物であって、水酸基を有さない化合物である。化合物(b1)は極性の大きいウレタン結合を有すること、重量平均分子量が1,000~60,000であることから塗膜の靭性に優れるため低温および高温での基材密着性に優れ接着力が向上する。化合物(b1)の重量平均分子量は、重合塗膜の相溶性、粘度、接着力の観点から、5,000~50,000の範囲が特に好ましい。
【0035】
化合物(b1)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、1~20質量%であることが好ましく、2~10質量%がより好ましい。1質量%以上であれば接着力がより向上し、20質量%以下であれば、粘度が高くなりすぎず、塗工時の膜厚の制御が容易になる。
【0036】
化合物(b1)は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、化合物(A)を反応させて得られる化合物、あるいは2個以上のイソシアネート基を有する化合物と多価アルコールとを反応させて得られる末端イソシアネート基のウレタンプレポリマーと、化合物(A)を反応させて得られる化合物などが例として挙げられる。
【0037】
化合物(b1)は、2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、多価アルコールと、化合物(A)とを2:1:2のモル比で反応させて得られる化合物であることが好ましい。前記比率で反応させることで、理論的に1分子の両末端にアクリレート基を有する構造となるため、柔軟さと架橋密度のバランスがよく、基材密着性と靭性が優れるため幅広い温度領域で接着力が良好になるためである。
【0038】
2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0039】
芳香族ポリイソシアネートとしては、より具体的に、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0040】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(別名:HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0041】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0042】
脂環族ポリイソシアネートとしては、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(別名:IPDI)、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
【0043】
また一部上記ポリイソシアネートの2-メチルペンタン-2,4-ジオールアダクト体、イソシアヌレート環を有する3量体等も併用することができる。ポリフェニルメタンポリイソシアネート(別名:PAPI)、ナフチレンジイソシアネート、及びこれらのポリイソシアネート変性物等を使用し得る。なおポリイソシアネート変性物としては、カルボジイミド基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、水と反応したビュレット基、イソシアヌレート基のいずれかの基、またはこれらの基の2種以上を有する変性物を使用できる。ポリオールとジイソシアネートの反応物も少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物として使用することができる。
【0044】
イソシアネート基を有する化合物は脂肪族ジイソシアネートまたは脂環族ジイソシアネート化合物が接着力の観点で好ましい。
また、多価アルコールとしては、数平均分子量(Mn)が約50~500の低分子量のポリオール類や、数平均分子量(Mn)が500~30,000の高分子量のポリオール類が挙げられ、それぞれ、特に制限が無く使用できる。
【0045】
低分子量のポリオール類としては、より具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ポリオキシエチレングリコール(付加モル数10以下)、ポリオキシプロピレングリコール(付加モル数10以下)、プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、オクタンジオール、ブチルエチルペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール,トリシクロデカンジメタノール、シクロペンタジエンジメタノール、ダイマージオール等の脂肪族又は脂環式ジオール類;
1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、4,4’-メチレンジフェノール、4,4’-(2-ノルボルニリデン)ジフェノール、4,4’-ジヒドロキシビフェノール、o-,m-及びp-ジヒドロキシベンゼン、4,4’-イソプロピリデンフェノール、ビスフェノールにアルキレンオキサイドを付加させた付加型ビスフェノール等の芳香族ジオール類等を挙げることができる。
【0046】
付加型ビスフェノールの原料ビスフェノールとしては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられ、原料アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
高分子量のポリオール類としては、より具体的には、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアミドポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリウレタンポリオールが挙げられる。ポリカーボネートポリオールは、上記の低分子量のジオールと炭酸エステル又はホスゲンとの反応によって得られる。
【0048】
上記ポリエステルポリオールの市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロンシリーズ、クラレ社製のクラレポリオールPシリーズ、協和発酵ケミカル社製のキョーワポールシリーズが挙げられる。
上記ポリアミドポリオールの市販品としては、富士化成工業社製のTPAE617等を使用できる。
上記ポリカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、パーストープ社製のオキシマーN112、旭化成ケミカルズ社製のPCDLシリーズ、クラレ社製のクラレポリオールPMHCシリーズ、クラレポリオールCシリーズ等が挙げられる。
【0049】
上記ポリウレタンポリオールの市販品としては、例えば、東洋紡績社製のバイロンURシリーズ、三井化学ポリウレタン社製のタケラックE158(水酸基価=20,酸価<3)、タケラックE551T(水酸基価=30,酸価<3)、及び、タケラックY2789(水酸基価=10,酸価<2)等が挙げられる。
その他に、ポリカプロラクトンジオール、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)ジオール、ポリバレロラクトンジオール等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等も、高分子量ポリオールに含まれる。
【0050】
多価アルコールは高分子量ポリエーテルジオールまたは高分子量ポリエステルジオールが密着性の観点で好ましい。
【0051】
[化合物(b2)]
化合物(b2)は、(b1)を除く2つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物である。樹脂組成物中に化合物(b2)を含むことで、硬化後の組成物塗膜の架橋密度が高くなり耐湿熱性が向上する。化合物(b2)は、重量平均分子量1,000未満が好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工時の膜厚制御が容易になる。また、(b2)が有するエチレン性不飽和二重結合基は一つ以上(メタ)アクリロイル基を含むことが好ましい。
【0052】
化合物(b2)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、9~69質量%であることが好ましく、20~60質量%がより好ましい。9~69質量%であると耐湿熱性と低温接着力、高温接着力のバランスが良くなる。
【0053】
化合物(b2)としては、2つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物であれば特に制限なく使用できる。2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物としては、例えば、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;
エチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコール変性アルキルジオールのジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の1種類のアルキレングリコールを有するジ(メタ)アクリレート;
エチレングリコール-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール-ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール-テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート等の2種類のアルキレングリコールを有するジ(メタ)アクリレート;
ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、4,4’-ビス(メタ)アクリルオキシメチルビフェニル等のベンゼン環を有するジ(メタ)アクリレート;
水添ビフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビフェノールA(メタ)ジアクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、1,3-アダマンチルジオールジ(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-1,5-アダマンチルジ(メタ)アクリレート等の脂環構造を有するジ(メタ)アクリレート;
(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等のビニルエーテル化合物が挙げられる。
【0054】
3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物としては、例えば、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸プロピレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートおよびイソシアヌル酸ブチルオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート;
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレオキサイド変性ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート;
グリセリントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性グリセリントリ(メタ)アクリレート;
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
上記化合物(b2)の中でも、耐湿熱性と密着性の両立の面より、2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物では、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましく、3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物としては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートおよびイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0056】
また、化合物(b2)は、2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物および3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物を含んでいることが好ましく、2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物と3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物との配合比(2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物/3つ以上のエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物)が4/1~1/2(質量比)であることがより好ましい。
【0057】
本願の樹脂組成物は、エチレン性不飽和二重結合基を1つ有し、水酸基を有さない化合物(b3)を含有することができる。化合物(b3)を含むことで、樹脂組成物を低粘度化が可能であり、低温接着力にも優れる。化合物(b3)は、重量平均分子量1,000未満が好ましい。化合物(b3)は重量平均分子量が1,000未満であると樹脂組成物の粘度が高くなりすぎず、塗工時の膜厚制御が容易になる。
【0058】
化合物(b3)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0~30質量%であることが好ましい。0~30質量%であると低温接着力が良くなる。
【0059】
エチレン性不飽和二重結合基を1つ有し、水酸基を有さない化合物(b3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルおよび(メタ)アクリル酸イソステアリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の末端アルキル(ポリ)エチレングリコールと1個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、ノニルフェノールプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環と1個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸1-メチル-1-シクロペンチル、および2-(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-プロピル-2-アダマンチル(メタ)アクリレート、等の脂環構造と1個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリルアルコールアクリル酸多量体エステル、3-エチル-3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート等のヘテロ環と1個のアクリロイル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
【0060】
化合物(b3)は、低温接着力が改善することから、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートおよびイソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0061】
<有機酸の金属塩(C)>
化合物(C)は、有機酸と金属イオンから形成される塩である。樹脂組成物中に化合物(C)を含むことで、耐熱性が向上する。樹脂組成物を用いた偏光板においては、加温条件下で樹脂組成物に含有する酸成分がPVA偏光子にブリードし色変化の原因になると考えられる。化合物(C)は、モノマー由来の酸成分やモノマーの不純物、分解物として含有する酸成分を中和することによって耐熱性が改善すると考えられる。
【0062】
化合物(C)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.01~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%がより好ましい。0.01~5質量%であると耐熱性に優れる。
【0063】
化合物(C)は、活性エネルギー線重合性官能基を有さない有機酸と金属イオンから形成される(c1)と、活性エネルギー線重合性官能基を有する有機酸と金属イオンから形成される(c2)に分類できる。硬化性に優れ、耐熱性と耐湿熱性を両立しやすいため(c2)が好ましい。
【0064】
有機酸としては、活性エネルギー線重合性官能基を有さない有機酸として、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ステアリン酸等の一塩基酸;シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、オキザロ酢酸、グルタル酸等の二塩基酸;乳酸、グリコール酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、グリセリン酸等のヒドロキシカルボン酸;2-オキソグルタミン酸、アスパラギン酸等の酸性アミノ酸;ピルビン酸、アセト酢酸、レブリン酸等のケト酸;安息香酸、サリチル酸等の芳香族カルボン酸;エチレンジアミンテトラ酢酸等のポリカルボン酸類;その他イソクエン酸、マロン酸、グルタル酸、グルクロン酸等を挙げることができる。
【0065】
活性エネルギー線重合性官能基を有する有機酸として、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2-カルボキシエチル、(メタ)アクリル酸2-カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-カルボキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-カルボキシブチル、(メタ)アクリル酸ダイマー、マレイン酸、フマル酸、モノメチルマレイン酸、モノメチルフマル酸、アコニット酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、グルタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、チグリン酸、アンゲリカ酸、セネシオ酸、クロトン酸、イソククロトン酸、ソルビン酸、ムコン酸、ペニシル酸、ゲラン酸、シトロネル酸、4-アクリルアミドブタン酸、6-アクリルアミドヘキサン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシプロピル、フタル酸モノ(メタ)アクリロイルオキシブチル等のラクトン環の開環付加によるカルボキシル基を末端に有するポリラクトン系(メタ)アクリル酸エステル、モノ(メタ)アクリル酸ω-カルボキシポリカプロラクトンエステル、2-ビニル安息香酸、3-ビニル安息香酸、4-ビニル安息香酸、4-イソプロペニルベンゼンカルボン酸等のカルボキシル基含有の不飽和二重結合基含有カルボン酸類やその酸無水物類等が挙げられる。
【0066】
金属イオンとしては、例えば、Li、Na、K、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zr、Cu、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Sn等のイオンを挙げることができる。
【0067】
特に耐熱性と耐湿熱性が優れることから(c2)は(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、ジ(メタ)アクリル酸マグネシウムおよびジ(メタ)アクリル酸亜鉛が好ましい。
【0068】
<数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)>
化合物(D)はアミノ基を含有する数平均分子量500~40000の化合物である。樹脂組成物中に化合物(D)を含むことで、耐熱性が向上する。樹脂組成物を用いた偏光板においては、加温条件下で樹脂組成物に含有する酸成分がPVA偏光子にブリードし色変化の原因になると考えられる。化合物(D)は、モノマー由来の酸成分やモノマーの不純物、分解物として含有する酸成分を中和することによって耐熱性が改善すると考えられる。
化合物(D)の数平均分子量は1000~5000が好ましい。1000~5000であると耐熱性と耐湿熱性に優れる。
【0069】
化合物(D)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~10質量%がより好ましい。0.1~20質量%であると耐熱性に優れる。
【0070】
化合物(D)は、エチレン性不飽和二重結合基を含有しない化合物(d1)とエチレン性不飽和二重結合基を含有する化合物(d2)に分類できる。
化合物(d1)としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエーテルアミン、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、アミノ基含有アクリル樹脂、アミノ基含有アクリルアミド樹脂、アミノ基含有ポリエステル、アミノ基含有ビニル樹脂等が挙げられる。
【0071】
化合物(d2)はアミン変性オリゴマーといわれる化合物である。また、アミン変性アクリレート、アクリル変性アミン、反応性アミン共開始剤、反応性アミン触媒、アクリレート変性アミン触媒等とも呼ばれる化合物である。
【0072】
化合物(d2)はアミノ基とエチレン性不飽和二重結合基を含有する数平均分子量500~40000の化合物であれば構造に限定無く使用できる。製造方法としては例えば、1級アミンとアクリル酸とのマイケル付加反応でアミノ基含有ジカルボン酸を得た後、アミノ基含有ジカルボン酸とジオールとで末端水酸基または末端カルボン酸のポリエステルを合成し、更に得られたポリエステルの末端をアクリル変性することによって製造することができる。このとき、ポリエステルの末端が水酸基の場合はイソシアネート基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応することで(メタ)アクリル変性することができる。ポリエステルの末端がカルボン酸の場合はグリシジル基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応することで(メタ)アクリル変性することができる。
【0073】
化合物(d2)は市販品が多数存在する。例えば、アルケマ社製のCN371NS、CN373、及びCN550;
MIWON社製のPHOTOCRYL A104、Miramer AS1000、Miramer AS2010、及びMiramer SC9610;
ダイセル・オルネクス社製のEbecryl80、Ebecryl81、Ebecryl83、及びEbecryl7100;
長興材料工業社製のEtercure6410、Etercure6412、Etercure6417、及びEtercure6410-TF;
国精化学製のGU8100W等が挙げられる。
【0074】
化合物(D)は、耐熱性と低温接着力、高温接着力の点で化合物(d2)が好ましい。
【0075】
<ラジカル重合開始剤(E)>
ラジカル重合開始剤(E)は活性エネルギー線でラジカルを発生させる化合物である。ラジカル重合開始剤(E)を使用することによって、ラジカル重合反応を促進することができる。
【0076】
ラジカル重合開始剤(E)としては、公知のものから任意に選択し使用できるが、その具体例としては、例えば、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントフルオレノン、ベンズアルデヒド、アントラキノン、3-メチルアセトフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、4-オキサントン、カンファーキノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、等が挙げられる。市販品としては、例えば、イルガキュア-184,907,651,1700,1800,819,369,261、ダロキュア-TPO(BASF社製 2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)、Omnirad819(IGM ResinsB.V社製 ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド)ダロキュア-1173(メルク社製)、エザキュア-KIP150、TZT(日本シイベルヘグナー社製)、カヤキュアBMS、カヤキュアDMBI(日本化薬社製)等が挙げられる。
フォトブリーチング性を有することから2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイドまたはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイドが好ましい。
【0077】
ラジカル重合開始剤(E)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中、0.1~10質量%が好ましい。
【0078】
<ホウ酸化合物(F)>
化合物(F)は、ホウ酸または1分子中にB-O-H結合を1つ以上有する化合物、水の存在下加水分解してB-O-H結合を1つ以上形成し得るホウ素含有化合物である。分類として以下記載のホウ酸誘導体はホウ酸化合物に包含されるものとする。化合物(F)は化合物(A)由来の水酸基および基材の表面官能基と相互作用することで接着性ないし密着性が向上する。
【0079】
ホウ酸誘導体は、ホウ素酸化物(例えば、B);
ホウ酸と、アルコールまたはフェノールとの反応により得られる誘導体、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリ-n-プロピル、ホウ酸トリ-n-ブチル、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリ-t-アミル、ホウ酸トリフェニル、トリメトキシボロキシン、ホウ酸トリ-2-シクロヘキシルシクロヘキシル、ホウ酸トリエタノールアミン、ホウ酸トリイソプロピルアミン、ホウ酸マンニトール、ホウ酸グリセロール、およびホウ酸トリイソプロパノールアミン等のホウ酸エステルが挙げられる。
ホウ酸誘導体は、ボロン酸の誘導体を含む、例えば、メチルボロン酸、エチルボロン酸、ブチルボロン酸、およびシクロヘキシルボロン酸等のアルキルまたはアルケニルボロン酸;
フェニルボロン酸、ナフタレンボロン酸、およびアントラセンボロン酸等のアリールボロン酸等、またはこれらのアリール基に任意の置換基を有する置換型アリールボロン酸が挙げられる。
【0080】
さらに、他のアミノ基含有ボレートおよびホウ酸の第三級アミン塩も好ましい。例えば2-(β-ジメチルアミノイソプロポキシ)-4,5-ジメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、2-(β-ジエチルアミノエトキシ)-4,4,6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(β-ジメチルアミノエトキシ)-4,4,6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(β-ジイソプロピルアミノエトキシ)-1,3,2-ジオキサボナリン、2-(β-ジイソプロピルアミノエトキシ)-4-メチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-(γ-ジメチルアミノプロポキシ)-1,3,6,9-テトラプキサ-2-ボラシクロウンデカン、および2-(β-ジメチルアミノエトキシ)-4,4-(4-ヒドロキシブチル)-1,3,2-ジオキサボリナン等挙げられる。
【0081】
またホウ酸誘導体は、ホウ素含有部位を含む有機オリゴマーおよび重合体化合物を用いることもできる。例えば重合体ホウ酸エステル(例えば、活性水素含有重合体(例えば、ヒドロキシル官能基含有アクリル重合体またはポリシロキサン重合体))と、ホウ酸またはホウ酸エステルとを反応させたホウ酸エステル基を有する重合体が挙げられる。
重合体ホウ酸エステルの原料となる重合体は、公知の活性水素含有重合体を使用できるところ、例えば、アクリル重合体、ポリエステル重合体、ポリウレタン重合体、およびポリエーテル重合体等が挙げられる。
【0082】
これまで説明したホウ酸化合物(F)は、ホウ酸、ホウ酸エステル、ホウ酸の第三級アミン塩が樹脂組成物中に溶解が優れるため好ましく、接着性が向上する面でホウ酸がより好ましい。
またホウ酸誘導体は、3個以上の水酸基を有することが好ましい。3個以上の水酸基を有するホウ酸誘導体は、例えば1、4-ベンゼンジボロン酸(水酸基数4)、テトラヒドロキシジボラン(水酸基数4)およびホウ酸トリエタノールアミン塩(水酸基数3)等が挙げられる。なお、ホウ酸およびホウ酸誘導体は、それぞれ単独または混合して使用できる。
【0083】
ホウ酸化合物(F)の含有率は、活性エネルギー線重合性樹脂組成物100質量%中0.1~7質量%が好ましく、0.3~3質量%がさらに好ましい。ホウ酸化合物(F)を0.1~7質量%使用すると接着性および活性エネルギー線重合性樹脂組成物の溶液安定性がより向上する。なお、本発明では、活性エネルギー線重合性樹脂組成物が溶剤を含有しない場合も溶液という。
【0084】
<その他成分>
(活性エネルギー線増感剤(G))
ラジカル重合開始剤(E)の反応性を向上させるために、活性エネルギー線増感剤(G)を併用しても良い。増感剤(G)は、例えばチオキサントン化合物、アントラセン化合物、ナフタレン化合物、アミノベンゾエート化合物、カルバゾール化合物、ペリレン、フェノチアジン、ローズベンガル等が挙げられる。
【0085】
増感剤(G)は、例えば、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-ヒドロキシチオキサントン、2-アセトキシチオキサントン、2-プロポキシチオキサントン等のチオキサントン系化合物;
9,10-ジメトキシアントラセン、9,10-エトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ジブトキシアントラセン等のアントラセン系化合物;
1,4-ジメトキシナフタレン、1,4-ジエトキシナフタレン、1,4-ジプロポキシナフタレン、1,4-ジブトキシナフタレン等のナフタレン系化合物が挙げられる。
【0086】
(カチオン重合性化合物(H))
本発明の樹脂組成物は、さらにカチオン重合性化合物(H)(以下、化合物(H)ともいう)を含むこともできる。
【0087】
化合物(H)は、カチオン重合性官能基として3員環エーテルであるエポキシ基を有する化合物、4員環エーテルであるオキセタニル基を有する化合物、および環状カーボネート基を有する化合物である。エチレン性不飽和二重結合基とカチオン重合性官能基を有する化合物は化合物(H)に含める。
【0088】
エポキシ基を有する化合物(エポキシ化合物)は、芳香族エポキシ化合物、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、エポキシ基含有シランカップリング剤等が挙げられる。
【0089】
芳香族エポキシ化合物は、例えば、ビスフェノ-ルAジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルFジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルSジグリシジルエーテル、ビスフェノ-ルAプロピレンオキサイド付加物のジグリシジルエーテル、フェノ-ルノボラックエポキシ、クレゾ-ルノボラックエポキシ、ビフェニル型エポキシ、レゾルシンジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノ-ルエチレンオキサイドグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0090】
脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族モノアルコール、および脂肪族ポリアルコール、ならびにそのアルキレンオキサイド付加物のグリシジルエーテルが好ましい。
脂肪族エポキシ化合物は、例えば、2-エチル-ヘキシルグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオ-ルのジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオ-ルのジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロ-ルプロパンのトリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびグリセリン等の脂肪族多価アルコールに対して1種または2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド)を付加することで得られるポリエーテルポリオ-ルのポリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0091】
エチレン性不飽和二重結合基とカチオン重合性官能基を有する化合物は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテル、グリシジルアリルエーテル等が挙げられる。
【0092】
脂環式エポキシ化合物は、例えば、1,2-エポキシ-4-ビニルシクロヘキサン、1,2:8,9ジエポキシリモネン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-メタ-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペ-ト、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペ-ト等が挙げられる。
【0093】
エポキシ基含有シランカップリング剤は、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0094】
オキセタニル基を有する化合物は、例えば、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、ジ(1-エチル-3-オキセタニル)メチルエーテル、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチル-ヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノ-ルノボラックオキセタン、3-エチル-{(3-トリエトキシシリルプロポキシ)メチル}オキセタン等が挙げられる。
【0095】
環状カーボネート化合物としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられる。
【0096】
<光酸発生剤(I)>
本発明の樹脂組成物がカチオン重合性化合物(H)を含む場合は、光酸発生剤(I)を含む。
酸発生剤(I)は、可視光線、紫外線、X線、または電子線のような活性エネルギー線の照射によって、酸を発生し、触媒的に作用してシラン化合物、カチオン重合性化合物の重合反応を開始するものである。酸発生剤としては、例えば、スルホニウム塩系酸発生剤、ヨードニウム塩系酸発生剤、ジアゾニウム塩系酸発生剤、アンモニウム塩系酸発生剤、ホスホニウム塩系酸発生剤などのオニウム塩系酸発生剤等を挙げることができる。
【0097】
これらのなかでも、光分解効率に優れ、より硬化性に優れた活性エネルギー線重合性樹脂組成物とできる観点から、スルホニウム塩系酸発生剤、ヨードニウム塩系酸発生剤であることが好ましい。
【0098】
[スルホニウム塩系酸発生剤]
スルホニウム塩系酸発生剤としては、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、トリアリールスルホニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0099】
スルホニウム塩系酸発生剤の市販品としては、例えば、トリアリールスルホニウム・ヘキサフルオロホスフェート(CPI-110P、サンアプロ製)、UVACURE1590(ダイセル・サイテック製)などが挙げられる。
【0100】
[ヨードニウム塩系酸発生剤]
ヨードニウム塩系酸発生剤としては、ビス(4-ターシャリーブチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート、(4-メチルフェニル)[4(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート、(4-メチルフェニル)(4-イソプロピルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート、ジフェニルヨードニウム・ヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウム・テトラキス(ペンタフルオロ)ボレート等が挙げられる。
【0101】
ヨードニウム塩系酸発生剤の市販品としては、例えば、ビス(4-ターシャリーブチルフェニル)ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(WPI―170、和光純薬社製)、WPI-113(和光純薬社製)、IK-1(サンアプロ社製)、(4-メチルフェニル)[4(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム・ヘキサフルオロホスファート(Omnicat250、IGM resins)などが挙げられる。
【0102】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で有れば、前記したような成分の他に添加剤を適宜配合することが可能である。例えば、重合硬化収縮率低減、熱膨張率低減、寸法安定性向上、弾性率向上、粘度調整、熱伝導率向上、強度向上、靭性向上、着色向上等の観点から有機又は無機の充填剤を配合できる。このような充填剤としては、ポリマー、セラミックス、金属、金属酸化物、金属塩、染顔料等を用いることができ、形状については粒子状、繊維状等特に限定されない。なお、上記ポリマーの配合に当っては、柔軟性付与剤、可塑剤、難燃化剤、保存安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、チクソトロピー付与剤、分散安定剤、流動性付与剤、消泡剤等、充填剤としてではなくポリマーブレンド、ポリマーアロイとして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物中に溶解、半溶解又はミクロ分散させることも可能である。
【0103】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、実質的に水や有機溶剤を含まないことが乾燥設備や乾燥エネルギーの点で好ましい。しかし、ラジカル重合開始剤(E)、活性エネルギー線増感剤(G)、酸発生剤(I)が化合物(A)、化合物(B)に難溶性になったり、高粘度となったりする場合は、ラジカル重合開始剤(E)を溶解するため少量の有機溶剤は含んでもよい。その場合の活性エネルギー線重合性樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は5質量%以内である。使用可能な有機溶剤として、特に限定はないが、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シクロヘキサン、トルエン、キシレンその他の炭化水素系溶媒等の有機溶媒や、水をさらに添加して、活性エネルギー線重合性樹脂組成物の粘度を調整することもできるし、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を加熱して粘度を低下させることもできる。
【0104】
≪活性エネルギー線重合性樹脂組成物≫
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、以下(1)~(4)のいずれかの組成物である。
(1)化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、ラジカル開始重合剤(E)および化合物(F)を含む
(2)化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)およびラジカル重合開始剤(E)を含む
(3)化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、化合物(D)およびラジカル重合開始剤(E)を含む
(4)化合物(A)、化合物(B)、化合物(D)、ラジカル重合開始剤(E)および化合物(F)を含む
このような組成の樹脂組成物を用いることで、高温から低温まで幅広い温度領域において優れた接着力を有し、耐熱性、耐湿熱性の優れた積層体を形成できる。
【0105】
本発明の樹脂組成物は、化合物(A)、化合物(B)、化合物(C)、化合物(D)、ラジカル重合開始剤(E)および化合物(F)を含有する組成物がより好ましい。
(A)~(F)の6成分を含むことで、高温から低温まで幅広い温度領域において特に優れた接着力を有し、耐熱性、耐湿熱性が特に優れた積層体を形成できる。
【0106】
≪積層体≫
本発明の積層体は、第一の基材(G1)、活性エネルギー線重合性樹脂組成物からなる樹脂組成物層、および第二の基材(G2)をこの順に備えた積層体である。基材(G1)/樹脂組成物層/基材(G2)/樹脂組成物層/基材(G3)のように複数の基材を積層した積層体でも良い。基材(G1)、(G2)、(G3)は各々同じ種類の基材を用いることもできるし、別の種類の基材を用いることもできる。
【0107】
積層体は、例えば以下のようにして得ることができる。
フィルム状基材である透明フィルムの片面に活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工して形成した被膜に、別の透明フィルムを貼り合せ、更にこの積層体の片面や両面に活性エネルギー線重合性樹脂組成物を塗工し、更に別の透明フィルム、ガラス、あるいは透明成形体に積層することによって、積層体を得ることができる。なお本発明の積層体が前記積層構成に限定されないことは言うまでもない。
【0108】
本発明における活性エネルギー線重合性樹脂組成物から形成されてなる樹脂組成物層の膜厚は特に制限されず、使用用途によって適宜調整できる。これらの実施形態に係る粘度の調整及び樹脂組成物の塗工は、必要に応じて、活性エネルギー線重合性樹脂組成物に溶剤を加えることによって、容易に実施することができる。
【0109】
樹脂組成物層の膜厚が、0.1~6μmの場合には、粘度は1~1500mPa・sであることが好ましく、10~1300mPa・sであることがより好ましく、20~1000mPa・sであることがさらに好ましい。粘度が1500mPa・s以下であれば、基材に塗工した場合、0.1~6μmの薄膜塗工が可能であり、透過率等の光学的特性にも優れる。一方、粘度が1mPa・s以上であれば樹脂組成物層の膜厚制御が容易になるために好ましい。
【0110】
また、樹脂組成物層の膜厚が、6~300μmの場合には、粘度は1,500~100,000mPa・sであることが好ましく、3,000~50,000mPa・sであることがより好ましい。
【0111】
<塗工方法>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物の塗工方法は、例えばマイヤーバー、アプリケーター、刷毛、スプレー、ローラー、グラビアコーター、ダイコーター、マイクログラビアコーター、リップコーター、コンマコーター、カーテンコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーター等公知の塗工方法を利用できる。
【0112】
<基材>
基材は、フィルム状基材、ガラス板、紙加工品等、特に制限はない。一方、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を二つ以上の基材を貼り合わせる接着剤として使用する場合には、活性エネルギー線を照射して重合させるために、活性エネルギー線を透過し易い基材を使用する必要がある。この場合、透明フィルムや透明ガラス板を使用することが好ましい。なお貼り合わせる基材の一方に活性エネルギー線が透過し難い基材、例えば、木材、金属板、プラスチック板、紙加工品等を使用し、他方を透明フィルムや透明ガラス板を使用し、透明フィルムや透明ガラス板側から照射し、重合硬化を行うこともできる。
【0113】
本発明の積層体においては、基材のうち、フィルム状基材を使用することが好ましい。フィルム状基材としては、セロハン、各種プラスチックフィルム、合成紙等のフィルム状基材が挙げられるが、透明な各種プラスチックフィルムの使用が好ましい。また、フィルム状基材としては、透明であれば、単層のものであってもよいし、複数の基材を積層してなる多層状態にあるものも用いることができる。
【0114】
積層体において、樹脂組成物と基材を接着させるためには活性エネルギー線照射による樹脂組成物の重合反応が必要である。活性エネルギー線重合反応は、樹脂組成物の塗工時、あるいは積層する際、さらには積層した後に活性エネルギー線を照射して進行するが、積層した後に活性エネルギー線を照射して重合反応を進めることが好ましい。
【0115】
<活性エネルギー線>
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物は、基材上に塗布し、形成した被膜に活性エネルギー線を照射することで、重合硬化する。活性エネルギー線の照射光源としては、150~550nm波長域の光を主体としたもので、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ガリウムランプ、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、LEDランプ、キセノンランプ等が挙げられる。その他、半導体レーザー、電子線等も活性エネルギー線として使用できる。
【0116】
紫外線の照射強度は、10~3000mW/cmが好ましい。照射強度が前記範囲を満たすと迅速な硬化が容易になり、基材の劣化を最小限に抑制できる。照射強度と照射時間の積として表される積算照射量は、50~20,000mJ/cmが好ましい。積算照射量が前記積算照射量を満たすと短時間硬化が容易になり、生産性もより向上する。
【0117】
<光学素子用積層体>
本発明の積層体は、光学用積層体として使用することが好ましく、光学素子用積層体がより好ましい。光学用積層体の積層構成は、例えば透明フィルム/接着剤層/透明フィルム、透明フィルム/接着剤層/透明フィルム/接着剤層/透明フィルム等の複数の層を積層したシート状積層体が好ましい。また、透明フィルムの一部をガラス、あるいは光学成形体のような光学部材に置き換えることも可能である。
【0118】
本発明の積層体を光学素子用積層体として用いる場合、基材として光学フィルムを用いる必要がある。
光学フィルムとして使用できる透明フィルムは、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、および等方性等に優れる熱可塑性樹脂が好ましい。透明フィルムは、プラスチックフィルムやプラスチックシートともいい、例えばポリビニルアルコールフィルム、ポリトリアセチルセルロースフィルム、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、およびエチレン-酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム;ポリカーボネート系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリアリレート系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリフェニレンサルファイド系フィルム、ポリスチレン系フィルム、ポリビニル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、ポリオキシラン系フィルム、およびガラスフィルム等が挙げられる。
特に透明性が優れるため、ポリアセチルセルロース系フィルム、ポリノルボルネン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリビニルアルコール系フィルム、ポリイミド系フィルム、およびガラスフィルムからなる群より選択されるいずれかであることが好ましい。
【0119】
透明フィルムは、積層体として使用する場合、各フィルムは単独でも2種類以上併用しても良い。例えば、片面にポリシクロオレフィン系フィルムを使用し、もう一方の片面にポリアクリル系フィルムを使用しても良い。
透明フィルムの厚さは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性等の作業性、薄層性などの観点から、1~500μm程度であり、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、5~150μmがさらに好ましい。
【0120】
なお、光学フィルムである偏光板フィルムの偏光子の両側に透明フィルムを設ける場合、その表裏で同じポリマー材料からなる透明フィルムを用いてもよく、異なるポリマー材料等からなる透明フィルムを用いても良い。
【0121】
本発明の積層体を光学素子用に用いる場合は、基材に光学フィルムを使用することが好ましい。光学フィルムは、上記透明フィルムに光学機能を有する塗工液を塗布したフィルムである。光学機能とは、光透過、光拡散、集光、屈折、散乱、HAZE等である。光学フィルムは、例えば、ハードコートフィルム、帯電防止コートフィルム、防眩コートフィルム、偏光フィルム、位相差フィルム、楕円偏光フィルム、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、プリズムフィルム(プリズムシートともいう)、および導光フィルム(導光板ともいう)等が挙げられる。これらは用途に応じて単独または2種類以上を併用できる。
【0122】
上記偏光フィルムは、偏光板とも呼ばれ、ポリビニルアルコール系偏光子の両面を2枚のポリアセチルセルロース系フィルムであるポリトリアセチルセルロース系保護フィルム(以下、「TACフィルム」という)や、ポリビニルアルコール系偏光子の片面や両面をポリノルボルネン系フィルムであるポリシクロオレフィ系フィルム、ポリアクリル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、ポリエステル系フィルム等を、接着剤を介して積層した、多層構造のシート状の光学フィルムである。当該接着剤としては、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物が好適に使用できる。
【0123】
本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物を使用して積層された光学フィルムは、液晶表示装置、タッチパネルモジュール、有機ELモジュール等のガラス板、上記の各種プラスチックフィルム等の透明フィルムに、本発明の活性エネルギー線重合性樹脂組成物をさらに積層して貼着し、光学素子用積層体として使用されることが好ましい。
【0124】
活性エネルギー線重合性樹脂組成物を接着剤として使用した偏光板(偏光フィルム)は、より具体的には、以下のようにして得ることができる。
【0125】
活性エネルギー線重合性接着剤を使用した偏光板(偏光フィルム)は、例えば、以下の(I)~(III)のいずれかの方法で作成することが好ましい。
【0126】
(I)第1の透明フィルムである保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線重合性接着剤を塗工し、第1の重合性接着剤層を形成し、
透明フィルムである第2の保護フィルムの一方の面に、活性エネルギー線重合性接着剤を塗工し、第2の活性エネルギー線重合性接着剤層を形成し、
次いで、ポリビニルアルコール系偏光子の各面に、第1の活性エネルギー線重合性接着剤層面および第2の活性エネルギー線重合性接着剤層面を、同時に/または順番に重ね合わせた後、活性エネルギー線を照射し、第1の活性エネルギー線重合性接着剤層および第2の活性エネルギー線重合性接着剤層を重合硬化することによって製造する方法、
【0127】
(II)ポリビニルアルコール系偏光子の一方の面に、活性エネルギー線重合性接着剤を塗工し、第1の活性エネルギー線重合性接着剤層を形成し、形成された第1の活性エネルギー線重合性接着剤層の表面を透明フィルムである第1の保護フィルムで覆い、次いでポリビニルアルコール系偏光子の他方の面に、活性エネルギー線重合性接着剤を塗工し、第2の活性エネルギー線重合性接着剤層を形成し、形成された第2の活性エネルギー線重合性接着剤層の表面を第2の保護フィルムで覆い、活性エネルギー線を照射し、第1の活性エネルギー線重合性接着剤層および第2の活性エネルギー線重合性接着剤層を重合硬化することによって製造する方法、および
【0128】
(III)第1の透明フィルムである保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子を重ねた端部および、ポリビニルアルコール系偏光子の第1の保護フィルムがない面に重ねた第2の保護フィルムの端部に活性エネルギー線重合性接着剤をたらした後、ロールの間を通過させ各層間に接着剤を広げる。次に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線重合性接着剤を重合硬化させることによって製造する方法等があるが、特に限定するものではない。
【実施例
【0129】
以下に、本発明の具体的な実施例を比較例と併せて説明するが、本発明は、下記実施例に限定されない。また、下記実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表し、「RH」は相対湿度を意味するものとする。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。尚、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0130】
<重量平均分子量、数平均分子量の測定方法>
「重量平均分子量」は、東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフィー「HLC-8220GPC」を使用した測定した数値であり、分離カラム:東ソー株式会社製「TSK-GELSUPER H5000」、「TSK-GELSUPER H4000」、「TSK-GEL SUPER H3000」、及び「TSK-GEL SUPER H2000」を4本直列に繋ぎ、移動相に温度40℃のテトラヒドロフランを用いて、0.6ml/分の流速で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量である。
【0131】
<水酸基価の測定方法>
水酸基価の測定は以下のとおりである。共栓三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解したのち、更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間攪拌を持続した。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定し、水酸基価を次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)=[{(b-a)×F×28.25}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0132】
実施例および比較例に用いた材料は以下の通りである。
<水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基を有する化合物(A)>
4HBA:アクリル酸4-ヒドロキシブチル
CHDMMA:シクロヘキサンジメタノールモノアクリル酸エステル
<水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)>
[重量平均分子量が1,000~60,000かつウレタン構造と2つのエチレン性不飽和二重結合基を有し、水酸基を有さない化合物(b1)]
b1-1:下記の方法にて製造したウレタンアクリレート1を用いた。
b1-2:下記の方法にて製造したウレタンアクリレート2を用いた。
【0133】
<ウレタンアクリレート1の製造>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ポリテトラメチレングリコール(保土ヶ谷化学株式会社製:PTG850、水酸基価127.1mgKOH/g)を81.6部、イソホロンジイソシアネートを41.4部仕込み乾燥空気を導入しながら60℃に昇温した。ここへジブチル錫ジラウレートを0.05部添加し、1時間反応させた。別途、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレートを27.0部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.15部仕込み、1時間かけてセパラブルフラスコへ滴下した。滴下終了後、3時間80℃で攪拌を続けた後、赤外線吸収スペクトルにてイソシアナト基の吸収ピークがないことを確認し反応を終了しウレタンアクリレート1を得た。その重量平均分子量は4,000であった。
【0134】
<ウレタンアクリレート2の製造>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、2-ヒドロキシエチルアクリレート1molにε-カプロラクトン2molを付加させた化合物(ダイセル化学製:プラクセルFA2D、水酸基価163.0mgKOH/g)を113.4部、イソホロンジイソシアネートを36.6部、ハイドロキノンモノメチルエーテルを0.15部仕込み、乾燥空気を導入しながら60℃に昇温した。ここへジブチル錫ジラウレートを0.04部添加し、温度を上げ約80℃で3時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてイソシアネート基の吸収ピークがないことを確認した時点で反応を終了し、ウレタンアクリレート2を得た。その重量平均分子量は1,300であった。
【0135】
[エチレン性不飽和二重結合基を2つ以上有し、水酸基を有さない化合物(b2)]
TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート
INATA:イソシアヌル酸エチレンオキサイド(EO)変性トリアクリレート
【0136】
[エチレン性不飽和二重結合基を1つ有し、水酸基を有さない化合物(b3)]
IBXA:イソボルロニルアクリレート
【0137】
<有機酸の金属塩(C)>
[活性エネルギー線重合性官能基を有さない有機酸と金属イオンから形成される有機酸の金属塩(c1)]
ステアリン酸カリウム
【0138】
[活性エネルギー線重合性官能基を有する有機酸と金属イオンから形成される有機酸の金属塩(c2)]
アクリル酸カリウム
ジアクリル酸亜鉛
【0139】
<数平均分子量500~40000のアミノ基を有する化合物(D)>
[エチレン性不飽和二重結合基を有しないアミノ基を有する化合物(d1)]
<エチレン性不飽和二重結合を有しないアミノ基を有するポリエステル(d1-1)~(d1-4)の製造>
(アミノ基を有するポリエステル(d1-1)の製造)
撹拌機、還流冷却管、蒸留装置、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ヘキシルアミン61.1部、アクリル酸144.1部仕込み、乾燥空気を導入しながら80℃で4時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてアクリル基の吸収ピークがないことを確認した。その後、窒素ガスを導入しながら1,6-ヘキサンジオールを236.3部、テトラ-n-ブトキシチタンを1,6-ヘキサンジオールに1w%濃度に希釈した溶液を0.34部添加し、攪拌しながら150℃に昇温した。脱水を開始した段階で1時間当たり20℃昇温させ220℃に達したところで温度を一定に維持し反応させた。酸価が3mgKOH/g以下であることを確認した時点で反応を終了し、アミノ基を有するポリエステル(d1-1)を得た。その数平均分子量は440であった。(ジカルボン酸/ジオール=1/2)
【0140】
(アミノ基を有するポリエステル(d1-2)の製造)
撹拌機、還流冷却管、蒸留装置、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ヘキシルアミン61.1部、アクリル酸144.1部仕込み、乾燥空気を導入しながら80℃で4時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてアクリル基の吸収ピークがないことを確認した。その後、窒素ガスを導入しながら1,6-ヘキサンジオールを177.3部、テトラ-n-ブトキシチタンを1,6-ヘキサンジオールに1w%濃度に希釈した溶液を0.34部添加し、攪拌しながら150℃に昇温した。脱水を開始した段階で1時間当たり20℃昇温させ220℃に達したところで温度を一定に維持し反応させた。酸価が3mgKOH/g以下であることを確認した時点で反応を終了し、アミノ基を有するポリエステル(d1-2)を得た。その数平均分子量は770であった。(ジカルボン酸/ジオール=2/3)
【0141】
(アミノ基を有するポリエステル(d1-3)の製造)
撹拌機、還流冷却管、蒸留装置、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ヘキシルアミン61.1部、アクリル酸144.1部仕込み、乾燥空気を導入しながら80℃で4時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてアクリル基の吸収ピークがないことを確認した。その後、窒素ガスを導入しながら1,6-ヘキサンジオールを147.7部、テトラ-n-ブトキシチタンを1,6-ヘキサンジオールに1w%濃度に希釈した溶液を0.34部添加し、攪拌しながら150℃に昇温した。脱水を開始した段階で1時間当たり20℃昇温させ220℃に達したところで温度を一定に維持し反応させた。酸価が3mgKOH/g以下であることを確認した時点で反応を終了し、アミノ基を有するポリエステル(d1-3)を得た。その数平均分子量は1400であった。(ジカルボン酸/ジオール=4/5)
【0142】
(アミノ基を有するポリエステル(d1-4)の製造)
撹拌機、還流冷却管、蒸留装置、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、ヘキシルアミン61.1部、アクリル酸144.1部仕込み、乾燥空気を導入しながら80℃で4時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてアクリル基の吸収ピークがないことを確認した。その後、窒素ガスを導入しながら1,6-ヘキサンジオールを132.9部、テトラ-n-ブトキシチタンを1,6-ヘキサンジオールに1w%濃度に希釈した溶液を0.34部添加し、攪拌しながら150℃に昇温した。脱水を開始した段階で1時間当たり20℃昇温させ220℃に達したところで温度を一定に維持し反応させた。酸価が3mgKOH/g以下であることを確認した時点で反応を終了し、アミノ基含有ポリエステル(d1-4)を得た。その数平均分子量は2700であった。(ジカルボン酸/ジオール=8/9)
【0143】
<アミノ基を有するアクリル樹脂(d1―5)~(d1-6)>
下記の東京化成社製ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]を使用した。
・d1-5: ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]、数平均分子量25000
・d1-6: ポリ[2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレート]、数平均分子量50000
【0144】
[エチレン性不飽和二重結合基およびアミノ基を有する化合物(d2)]
下記のダイセル・オルネクス社製アミン変性アクリレートを使用した。
・Ebecryl7100:アミン変性アクリレート、数平均分子量:1180、アクリル基数:2
・Ebecryl80:アミン変性アクリレート、数平均分子量:1300、アクリル基数:4
【0145】
<エチレン性不飽和二重結合基およびアミノ基を有する化合物(d2-1)の製造>
撹拌機、還流冷却管、ガス導入管、温度計、滴下ロ-トを備えた5口セパラブルフラスコに、三菱瓦斯化学社製TETRAD-X(N,N,N’,N’,-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン360.5部およびアクリル酸288.2部を仕込み、乾燥空気を導入しながら80℃で4時間反応させた。赤外線吸収スペクトルにてエポキシ基の吸収ピークがないことを確認し、アクリロイル基4つ、水酸基4つ、アミノ基2つを有する化合物(d2-1)を得た。数平均分子量は640であった。
【0146】
<エチレン性不飽和二重結合基およびアミノ基を有するアクリル樹脂(d2-2)の製造>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、酢酸エチル50.6部およびN,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート180質量部、及び2-ヒドロキシエチルメタクリレート20質量部を仕込み、窒素置換しながら50℃に昇温した後、1-チオグリセロール2.3部を添加し、70℃に昇温した。滴下槽に酢酸エチル16.8質量部および2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を0.6
質量部仕込み、均一になるまで攪拌した後、反応槽へ7時間かけて滴下し、その後同温度で1時間反応を継続し、固形分測定により95%以上反応したことを確認した。次いで、フラスコ内を空気置換し、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート(AOI)32.8質量部、ヒドロキノン0.1質量部を仕込み、70℃で4時間反応を行った。FTIRにてイソシアネート基に基づく2270cm-1のピークの消失を確認後、反応溶液を冷却して、エチレン性不飽和二重結合基およびアミノ基を有するアクリル樹脂(d2―2)の溶液を得た。その数平均分子量は22000であった。使用分を180℃、20分加熱乾燥してから使用した。
【0147】
<ラジカル開始剤(E)>
TPO:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイト゛ (IGM resins B.V.社製 Omnirad TPO)
【0148】
<ホウ酸化合物(F)>
ホウ酸
1,4-ベンゼンジボロン酸
【0149】
<活性エネルギー線増感剤(G)>
2-ITX:2-イソプロピルチオキサントン
【0150】
[実施例1]
化合物(A)として4HBAを40部、化合物(B)としてb1-1(ウレタンアクリレート1)を5部、TPGDAを36部、INATAを15部、化合物(C)としてステアリン酸カリウム1部、ラジカル重合開始剤(E)としてTPOを2部、化合物(F)としてホウ酸を1部、を遮光された300mlのガラス瓶に仕込み、ディスパーにて十分に攪拌後、十分に脱泡を行い、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0151】
[実施例2~64、比較例1~8]
表1~5に示すように、組成および配合量(質量部)を変更した以外は、実施例1と同様にして、活性エネルギー線重合性樹脂組成物を得た。
【0152】
<積層体の評価>
得られた活性エネルギー線重合性樹脂組成物を用いて下記積層体X1を作製し、積層体を下記の方法で評価した。結果を表1~5に示す。
【0153】
<積層体X1(偏光板)の製造>
透明フィルム(1)として、厚み40μmの紫外線吸収剤含有ポリトリアセチルセルロース系(以下TACと略す)フィルムを用い、透明フィルム(2)として、厚み20μmの紫外線吸収剤を含有しないTACフィルムを使用した。透明フィルム(1)、(2)の片側の表面に300W・min/mの放電量でコロナ処理を行い、その後1時間以内に、表1~3に示す活性エネルギー線重合性接着剤を、各フィルムのコロナ処理面上に、ワイヤーバーコーターを用いて厚みが2μmとなるように塗工し、被膜を形成した。前記透明フィルム(1)、(2)に形成した活性エネルギー線重合性接着剤層との間にポリビニルアルコール系(以下PVAと略す)偏光子を挟み、透明フィルム(1)/接着剤層/PVA偏光子/接着剤層/透明フィルム(2)からなる積層体を得た。透明フィルム(1)がブリキ板に接するように、この積層体の四方をセロハンテープで固定し、ブリキ板に固定した。
活性エネルギー線照射装置(東芝社製 高圧水銀灯)で最大照度300mW/cm、積算光量300mJ/cmの紫外線を透明フィルム(2)側から照射して、積層体X1(偏光板)を作成した。
【0154】
<低温接着力>
得られた積層体X1(偏光板)を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルの透明フィルム(2)の面に両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を貼り付け、ラミネータを用いて金属板上に貼り合わせて、偏光板と金属板との積層体を得た。得られた積層体を接着力測定用の積層体とした。偏光板には、透明フィルム(2)と偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を0℃条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力とした。この際、PVA偏光子と透明フィルム(2)の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。
[評価基準]
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊、非常に優れる
○:偏光板を破壊せずに剥離可能であり、剥離力が2.0(N/25mm)以上、優れる
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満、実用可
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満、実用不可
【0155】
<常温接着力>
得られた積層体X1(偏光板)を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルの透明フィルム(2)の面に両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を貼り付け、ラミネータを用いて金属板上に貼り合わせて、偏光板と金属板との積層体を得た。得られた積層体を接着力測定用の積層体とした。偏光板には、透明フィルム(2)と偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を25℃条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力とした。この際、PVA偏光子と透明フィルム(2)の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。
[評価基準]
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊、非常に優れる
○:偏光板を破壊せずに剥離可能であり、剥離力が2.0(N/25mm)以上、優れる
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満、実用可
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満、実用不可
【0156】
<高温接着力>
得られた積層体X1(偏光板)を、25mm×150mmのサイズにカッターを用いて裁断して測定用サンプルとした。サンプルの透明フィルム(2)の面に両面粘着テープ(トーヨーケム社製DF8712S)を貼り付け、ラミネータを用いて金属板上に貼り合わせて、偏光板と金属板との積層体を得た。得られた積層体を接着力測定用の積層体とした。偏光板には、透明フィルム(2)と偏光子の間に予め剥離のキッカケを設けておき、この測定用の積層体を80℃条件下で、300mm/分の速度で90°の角度で引き剥がし、剥離力とした。この際、PVA偏光子と透明フィルム(2)の剥離力を測定した。この剥離力を接着力として4段階で評価した。
[評価基準]
◎:剥離不可、あるいは偏光板破壊、非常に優れる
○:偏光板を破壊せずに剥離可能であり、剥離力が2.0(N/25mm)以上、優れる
△:剥離力が1.0(N/25mm)以上2.0(N/25mm)未満、実用可
×:剥離力が1.0(N/25mm)未満、実用不可
【0157】
<偏光板の耐熱性試験および耐湿熱性試験(光学特性評価)>
得られた積層体X1(偏光板)を40mm×40mmの大きさに裁断し耐熱性試験および耐湿熱性試験の試験サンプルとし、試験前後に光学特性評価を実施して、その差を評価結果とした。光学特性評価は、日本分光株式会社製の紫外可視分光光度計V-730に偏光板測定用のオプションアクセサリーをセットして測定した。光学特性評価には偏光度、単体色相のb値を用いた。
【0158】
<耐熱性試験>
試験サンプルを110℃条件で500時間試験し、試験前後のb値の差を評価した。
b値の差(Δb)=(試験後のb値)-(試験前のb値)
[評価基準]
◎:Δbが0.00以上2.00未満、非常に優れる
○:Δbが2.00以上4.00未満、優れる
△:Δbが4.00以上6.00以下、実用可
×:Δbが6.00より大きい、実用不可
【0159】
<耐湿熱性試験>
試験サンプルを65℃、95%RH条件で500時間試験し、試験前後の偏光度の差を評価した。
偏光度の差(ΔP)=(試験後の偏光度P)-(試験前の偏光度P)
[評価基準]
◎:ΔPが-0.50以上0.00以下、非常に優れる
○:ΔPが-1.00以上-0.50未満、優れる
△:ΔPが-2.00以上-1.00未満、実用可
×:ΔPが-2.00未満、実用不可
【0160】
【表1】
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
【表4】
【0164】
【表5】

【要約】
【課題】高温から低温まで幅広い温度領域において優れた接着力を有し、耐熱性、耐湿熱性の優れた積層体を形成できる活性エネルギー線重合性樹脂組成物および積層体の提供すること。
【解決手段】本願の課題は、水酸基を有するエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(A)、水酸基を有さないエチレン性不飽和二重結合基含有化合物(B)およびラジカル重合開始剤(E)を含む活性エネルギー線重合性樹脂組成物であって、下記(1)~(4)のいずれかを満足する活性エネルギー線重合性樹脂組成物によって解決される。
(1)さらに有機酸の金属塩(C)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
(2)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を含有する。
(3)さらに有機酸の金属塩(C)および数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)を含有する。
(4)さらに数平均分子量500~40000のアミノ基含有化合物(D)およびホウ酸化合物(F)を含有する。
【選択図】なし