IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋インキSCホールディングス株式会社の特許一覧 ▶ トーヨーケム株式会社の特許一覧

特許7427855加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/08 20060101AFI20240130BHJP
   B29C 51/12 20060101ALI20240130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240130BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240130BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C09J133/08
B29C51/12
B32B27/00 D
C09J7/38
C09J11/08
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023142361
(22)【出願日】2023-09-01
【審査請求日】2023-09-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】霜村 友基
(72)【発明者】
【氏名】星野 ちひろ
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特許第7306560(JP,B2)
【文献】特開2023-092116(JP,A)
【文献】特開2005-178637(JP,A)
【文献】国際公開第2016/203304(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/256118(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/239955(WO,A1)
【文献】特開2018-158990(JP,A)
【文献】特開2015-013925(JP,A)
【文献】特開2012-213894(JP,A)
【文献】国際公開第2018/190355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 1/00-43/00
B29C 51/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、硬化剤(B)および軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(C)を含み、
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、前記粘着付与樹脂(C)を2質量部以上60質量部以下含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、下記(a1)、下記(a2)および下記(a3)からなる群から選ばれるいずれか2種以上を含有し、且つ下記 (a1) を含有するモノマー混合物の共重合体であり、(a1)、(a2)および(a3)の合計含有率がモノマー混合物100質量%中75質量%以上であり、
(a1)、(a2)および(a3)の合計100質量%中、アクリル酸2-エチルへキシルの比率が40質量%以上であり、
前記硬化剤(B)は、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤および金属キレート系硬化剤からなる群から選択され、
前記粘着付与樹脂(C)は、合成炭化水素系樹脂である加飾シート用粘着剤組成物。
(a1):ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下かつアルキル基の炭素数が4~8である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2):アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a3):炭素数が1~3のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルモノマー
【請求項2】
真空成形法または真空圧空成形法による被着体への貼り付けに用いる、請求項1に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【請求項3】
基材と、請求項1または2に記載の加飾シート用粘着剤組成物からなる粘着層を備える、加飾シート。
【請求項4】
被着体と、請求項3に記載の加飾シートとを備えることを特徴とする加飾構造体。
【請求項5】
加飾シートが真空成形法または真空圧空成形法により被着体と一体化された請求項4に記載の加飾構造体を形成することを特徴とする、加飾構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装・外装部品、キーボード、家電製品、スマートフォン、住宅建材、家具、楽器、新幹線窓枠壁などの成形品の外観品位を向上させる手段として、成形品の外観表面を意匠性のあるフィルム(加飾シート)によって装飾することが行われている。三次元形状を有する成形品を、加飾シートを用いて装飾する方法としては、インサート成形法、インモールド成形法、真空成形法および真空圧空成形法などが知られている。
【0003】
インサート成形法は、予め加飾シートを所定形状に賦形して金型に挿入した後、加熱溶融樹脂を加圧して金型へ流し込み射出成形し、冷却固化させて、加飾シートと成形品を一体化させた加飾成形品を作製する方法である。
また、インモールド成形法は、離型層を介して意匠印刷のあるフィルムを金型内にセットし、加熱溶融樹脂を射出成形して冷却固化させた後、このフィルムを剥がすことによって意匠を転写させて、加飾成形品を作製する方法である。
このように、インサート成形法およびインモールド成形法は、成形品の成形と同時に成形品が加飾され、成形品の外観表面に意匠が形成される。
【0004】
一方、真空成形法は、加飾シートに熱をかけて軟化させ、加飾シートと成形品の間の空気を成形品側から引き抜くことで真空に近い状態を作り、成形品に加飾シートを密着させる方法である。
また、真空圧空成形法は、同様に真空に近い状態を作り、さらに、成形品の上部の加飾シート側から空気圧をかけて、成形品に加飾シートを密着させる方法である。
このように、真空成形法および真空圧空成形法は、成形品の完成後、常温で加飾シートを貼り合わせ、加熱することによって、成形品を加飾する方法である。すなわち、成形品の成形とは別途の作業で、成形品の外観表面へ加飾シートが貼り付けられるため、一台の装置で、様々な形状の成形品に対して加飾シートを貼り付けることができる。また、真空成形法および真空圧空成形法では、インモールド成形法などでは困難である、成形品端部において表面から裏面にかけての連続的な被覆、すなわち巻き込み被覆も可能であるため、多用されている。
【0005】
一般に被着体の材質として多く用いられるアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(以降、ABS樹脂とも記す)と比較し、ポリプロピレン樹脂(以降、PP樹脂とも記す)は、比重が低くかつ熱成形性にも優れる。このため近年、軽量化および加工性向上のためにPP樹脂を被着体として使用する場合が増えている。加飾シートと被着体との貼着には粘着剤が用いられ、PP樹脂のような低極性素材に対して加飾シートを貼り合わせることが可能な粘着剤のニーズが高まっている。
【0006】
特許文献1には、カルボキシ基を特定の割合で含有し、かつガラス転移温度が25℃以下である(メタ)アクリルポリマー、及び、アミノ基を特定の割合で含有し、かつガラス転移温度が75℃以上である(メタ)アクリルポリマーを含む接着層を有する接着フィルムを加熱圧着により接着した成形体が開示されている。
【0007】
特許文献2には、アクリル酸メチルと炭素数が4のアルコキシ基を含むアクリル酸アルキルエステルとの共重合体、及び、ガラス転移温度が115℃以下であり、かつ重量平均分子量が5千~10万である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを前記共重合体100重量部に対して1~40重量部含有することを特徴とする粘着層を含む加飾成形用フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-035588号公報
【文献】特開2017-132205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通常、真空成形法または真空圧空成形法で加飾シートを成形品に貼り付ける場合、加飾成形品は様々な環境下で使用されることが想定されるため、凹凸部を有する複雑な形状に追従するとともに、高温または高温高湿環境下でも粘着層との接着界面で浮きや剥がれといった外観不良を生じない耐久性も重要である。またPP樹脂は低極性素材ゆえ難接着であることが課題となっている。さらに、意匠性の観点から高い透明性の重要性も高まっており、このような各性能をバランス良く満足し得る加飾シート用粘着剤組成物が求められている。
【0010】
発明者らが検討したところ、特許文献1および特許文献2に記載の粘着剤組成物では、低極性被着体であるPP樹脂に対しては満足な性能を発揮しなかった。
【0011】
すなわち、成形品の加飾において、凹凸部を有する複雑な形状に追従し、かつ低極性被着体に対する粘着力、透明性、成形品に優れた外観を付与できる、加飾シート用粘着剤組成物はこれまで開発されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、本発明に至った。
すなわち、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(C)を含み、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、前記粘着付与樹脂(C)を2質量部以上60質量部以下含有する加飾シート用粘着剤組成物であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、成形品の加飾において、凹凸部を有する複雑な形状に追従し、かつ低極性被着体に対する粘着力、透明性、成形品に優れた外観を付与できる、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法の提供をすることが可能となる。
所定の(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)と硬化剤(B)と粘着付与樹脂(C)を含有する粘着剤組成物で粘着層を形成するとき、成形品の加飾において、凹凸部を有する複雑な形状に追従し、かつ低極性被着体に対する粘着力、透明性、成形品に優れた外観を付与できることを知得した。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体および加飾構造体の製造方法は、下記[1]~[7]の構成を有する。
【0015】
[1](メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、硬化剤(B)および軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(C)を含み、前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)はモノマー混合物の共重合体であり、前記粘着付与樹脂(C)は、メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100重量部に対し、2重量部以上60重量部以下であることを特徴とする加飾シート用粘着剤組成物。
【0016】
[2]前記モノマー混合物は下記(a1)、(a2)および(a3)からなる群から選ばれるいずれか2種以上を含有し、(a1)、(a2)および(a3)の合計含有率がモノマー混合物100質量%中75質量%以上であることを特徴とする[1]に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
(a1):ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下のアルキルの炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2):アルキルの炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a3):炭素数が1~3のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルモノマー
【0017】
[3]前記粘着付与樹脂(C)は、テルペン系樹脂、合成炭化水素系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[1]に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【0018】
[4]真空成形法または真空圧空成形法による被着体への貼り付けに用いる、[1]に記載の加飾シート用粘着剤組成物。
【0019】
[5]基材と、[1]~[4]いずれか一項に記載の加飾シート用粘着剤組成物からなる粘着層を備える、加飾シート。
【0020】
[6]被着体と、[5]に記載の加飾シートとを含むことを特徴とする加飾構造体。
【0021】
[7]加飾シートが真空成形法または真空圧空成形法により被着体と一体化された[6]に記載の加飾構造体を形成することを特徴とする、加飾構造体の製造方法。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。
【0023】
なお、本発明において、「シート」とは、可撓性を有する積層体を意味し、「フィルム」と呼ばれる薄い積層体も包含するものである。
【0024】
本発明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれか一方または両方を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」のいずれか一方または両方を意味する。
【0025】
本発明において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
【0026】
本明細書において、「Mw」はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。「Mn」はGPC測定によって求めたポリスチレン換算の数平均分子量である。
これら重量平均分子量、数平均分子量は、[実施例]の項に記載の方法にて測定することができる。
【0027】
また、以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
【0028】
<粘着剤組成物>
本粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、硬化剤(B)および軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(C)を含み、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、前記粘着付与樹脂(C)を2質量部以上60質量部以下含有することを特徴とする。
【0029】
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)>
本粘着剤組成物が含む(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)(以降、共重合体(A)とも記す)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマーの混合物の全部または一部を重合して得られる共重合体であり、必要に応じて官能基を有するモノマーやその他モノマーが用いられる。
【0030】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は下記(a1)、(a2)および(a3)からなる群から選ばれるいずれか2種以上を含有するモノマー混合物の共重合体であることが好ましい。(a1)、(a2)および(a3)の合計含有率はモノマー混合物100質量%中75質量%以上100質量%未満が好ましく、82質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。上記範囲にあることで低極性被着体への粘着性や凹凸追従性を確保することでできる。
(a1):ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下かつアルキル基の炭素数が4~8である、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a2):アルキル基の炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(a3):炭素数が1~3のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルモノマー
【0031】
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)を構成するモノマー混合物は、(a1)を含むことがより好ましい。(a1)を含むことによって、粘着力と耐久性を高いレベルで両立することができる。
【0032】
なお、本発明において共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、下記式(1)(Fox式)に基づいて計算された値である。
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn (式1)
[式(1)中、Tgはアクリル重合体(A)のTg(単位:K)、Tgi(i=1、2、・・・n)はラジカル重合性モノマーiがホモポリマーを形成した際のTg(単位:K)、Wi(i=1、2、・・・n)はラジカル重合性モノマーiの全モノマー成分中の質量分率を表す。なお、ホモポリマーのTgは文献値やカタログ値などの公表値を使用する。]
上記式(1)は、共重合体(A)が、モノマー1、モノマー2、・・・、モノマーnのn種類のモノマー成分から構成される場合の計算式である。
【0033】
前記ホモポリマーのガラス転移温度が0℃以下かつアルキル基の炭素数が4~8である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a1)としては特に限定されないが、具体的にはアクリル酸ブチル(Tg:-54℃)、アクリル酸イソブチル(Tg:-24℃)、アクリル酸2-エチルヘキシル(Tg:-70℃)、アクリル酸n-オクチル(Tg:-65℃)などが挙げられる。粘着付与樹脂との相溶性の観点からアクリル酸ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシルが好ましく、(a1)、(a2)および(a3)合計100質量%中、アクリル酸2-エチルヘキシルの比率が40質量%以上であることが特に好ましい。
【0034】
アルキルの炭素数が1~3である(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー(a2)としては(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピルが挙げられ、成形後の耐久性の観点から(メタ)アクリル酸メチルおよびアクリル酸エチルが好ましい。
【0035】
炭素数が1~3のアルキル基を有するカルボン酸のビニルエステルモノマー(a3)としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等が挙げられ、粘着力の観点から酢酸ビニルが好ましい。
【0036】
共重合体(A)を構成するモノマー混合物は、さらに、硬化剤(B)と架橋構造を形成する官能基を有するモノマーを含むことが好ましい。官能基としては、例えば、水酸基、酸性基、不飽和基二重結合基、エポキシ基等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
本粘着剤組成物では、基材密着性や成形後の耐久性の観点から、共重合体(A)を構成するモノマー混合物は、水酸基含有モノマーおよび/または酸性基含有モノマーを含むことが特に好ましく、酸性基含有モノマーを含むことがさらに好ましい。
【0037】
酸性基含有モノマーモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-カルボキシエチル、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-コハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-フタル酸、2-アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。中でも(メタ)アクリル酸、アクリル酸2-カルボキシエチルが重合性の観点から好ましい。
【0038】
共重合体(A)を構成するモノマー混合物100質量%中の酸性基含有モノマーの含有率は特に限定されないが、粘着付与樹脂との相溶性の観点から0.1質量%以上10質量%以下が好ましい。
【0039】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロシキブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、及びポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー並びに、ポリアルキレングリコールアリルエーテル等の水酸基を有するアリルエーテル系モノマー等が挙げられる。共重合性、硬化剤(B)との反応性の観点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロシキブチルが好ましい
【0040】
共重合体(A)を構成するモノマー混合物100質量%中の水酸基含有モノマーの含有率は、成形後の耐久性の観点から、0.01~10質量%含むことが好ましい。
【0041】
さらに、共重合体(A)を構成するモノマー混合物中に含むことができるその他モノマーとしては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0042】
アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシエル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソステアリル、(メタ)アクリル酸ベヘニル、(メタ)アクリル酸エイコサニル、(メタ)アクリル酸ヘキサコサニル等の炭素数9~26のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー
(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、及び(メタ)アクリル酸3,3,5-トリメチルシクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(o-フェニルフェノキシ)エチル、及び(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール等の芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
(メタ)アクリル酸2-メトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシメチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチ、(メタ)アクリル酸3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-エトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-メトキシブチル、及び(メタ)アクリル酸4-エトキシブチル等のアルコキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
(メタ)アクリル酸メトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸エトキシポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸フェノキシポリエチレングリコール、及び(メタ)アクリル酸フェノキシポリプロピレングリコール等のポリエーテル鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;
N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピペリドン、N-ビニル-3-モルホリノン、N-ビニル-2-カプロラクタム、N-ビニル-1,3-オキサジン-2-オン、及びN-ビニル-3,5-モルホリンジオン等のN-ビニル環状アミド系モノマー;
(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、及びN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ(n-ブチル)(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ(t-ブチル)(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2)-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(1-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキプロピル)(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(3-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、N-(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド、及びN-メチル-N-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のN-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド系モノマー;
N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、及びN-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド;
2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、及び2-メタクロイロキシエチルアシッドホスフェート等のカルボキシ基を除く酸性基を有するモノマー;
これらは必要に応じて、共重合体(A)を構成するモノマー混合物に含んでも含まなくても良い。
【0043】
共重合体(A)を構成するモノマー混合物100質量%中のその他モノマーの含有率は特に限定されないが、粘着力の観点から0質量%以上25質量%以下が好ましい。
【0044】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)は、その重合形態は特に限定されない。すなわち、共重合体(A)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む各モノマーの交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体およびグラフト共重合体などのいずれであってもよい。たとえば、ブロック共重合体は、ジブロックであってもよいし、トリブロックであってもよい。
【0045】
共重合体(A)の合成には、従来公知の手法を用いることができ、例えば、溶液重合法、塊状重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の重合方法で製造することができる。また、共重合体(A)の合成には、リビングラジカル重合法や活性エネルギー線重合法などの公知の重合法を適宜使用できる。その際、共重合体(A)合成用のモノマー混合物には、光重合開始剤や従来公知の添加剤を含むことができる。活性エネルギー線としては、紫外線、可視光線、X線、ガンマ線、又は電子線等を用いることができる。また、紫外線の照射には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、LED等の光源を使うことができる。
【0046】
共重合体(A)の各構成単位(モノマー成分)の配合率は、核磁気共鳴分析(NMR)、ガスクロマトグラフィー(GC)などの種々の機器を用いて特定できる。
【0047】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、300,000超であることが好ましく、500,000以上であることがより好ましく、600,000以上であることがさらに好ましい。また、共重合体(A)の重量平均分子量は、1,500,000以下であることが好ましく、1,300,000以下であることがより好ましく、1,200,000以下であることがさらに好ましい。
共重合体(A)のMwが上記下限値の条件を満たす場合、塗工に適した粘度を確保しやすく、また成形品の加飾後に、加飾シート部分がずれ、加飾成形品の外観劣化が生じることを容易に防ぐことができる。
【0048】
<硬化剤(B)>
本粘着剤組成物は、硬化剤(B)を含む。(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)に架橋基を導入し、硬化剤(B)により架橋させることで、粘着層の凝集力や粘着力、成形後の耐久性を高めることができる。
【0049】
硬化剤(B)としては、例えば、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、アジリジン系硬化剤、金属キレート系硬化剤、アミン系硬化剤、アクリレート系硬化剤が挙げられる。これらの中でも、イソシアネート系硬化剤、エポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤が好ましく、貼り直し性の観点からエポキシ系硬化剤、金属キレート系硬化剤がより好ましく、高温環境下における耐久性の観点からエポキシ系硬化剤が特に好ましい。硬化剤は1種単独で用いることが好ましい。
【0050】
イソシアネート系硬化剤としては、例えばトリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、ならびにそのビュレット体、ならびにそのイソシアヌレート体、ならびに前記ジイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、及びポリイソプレンポリオール等のうちのいずれかのポリオールとのアダクト体などの分子内に3個以上のイソシアネート基を有する化合物;トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、及びポリメチレンポリフェニルイソシアネート等のジイソシアネート、ならびにヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体等の分子内に2個のイソシアネート基を有する化合物;等が挙げられる。これらの中でも、トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体が、粘着物性を容易に調整できるため好ましい。なお、イソシアネート基の個数は平均個数である。
【0051】
エポキシ系硬化剤としては、例えばビスフェノールA-エピクロロヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、及びN,N,N’,N’-テトラグリシジルアミノフェニルメタン等が挙げられる。硬化性、耐久性の観点からN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、1,3-ビス(N、N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンが特に好ましい。
【0052】
アジリジン系硬化剤としては、例えば、β-アジリジニルプロピオナト)、トリメチロールプロパントリス(β-アジリジニルプロピオナト)等が挙げられる。また、市販品でいうと、例えば、「TAZO」、「TAZM」相互薬工社製、「ケミタイトPZ-33」日本触媒社製等が挙げられる。
【0053】
金属キレート系硬化剤としては、例えばアルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル、アンチモン、マグネシウム、バナジウム、クロムおよびジルコニウムなどの多価金属と、アセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルとの配位化合物等が挙げられる。
【0054】
アミン系硬化剤としては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、トリエチルテトラミン、イソホロンジアミン、アミノ樹脂およびメチレン樹脂などが挙げられる。
【0055】
アクリレート系硬化剤としては、例えば、1,6-ヘキサンジオールアクリレート等の多官能アクリレートなどが挙げられる。
【0056】
硬化剤(B)の含有量は、共重合体(A)の種類や架橋度など所望する物性などに応じて適宜変更すればよいが、粘着力や張り直し性、高温下での耐久性の観点から、共重合体(A)100質量部に対して、0.01~3質量部が好ましく、0.015~1質量部がより好ましく、0.018~0.5質量部以下がさらに好ましく、0.02~0.06質量部が特に好ましい。中でも硬化剤としてのエポキシ化合物の含有量を上記範囲内とすることで、高温環境下における密着性と耐熱性を高度に両立することができる。
【0057】
本粘着剤組成物の架橋度は、ゲル分率で示され、その測定方法は実施例に示す通りである。ゲル分率が高いほど貼り直し性、成形後の耐久性に優れるため、本発明における粘着剤組成物の架橋後のゲル分率は、50%以上であることが好ましい。ゲル分率は100%であっても良い。粘着剤組成物の架橋度は、硬化剤(B)の配合量等を変更することで適宜調整できる。
【0058】
<粘着付与樹脂(C)>
本発明の粘着剤組成物は軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(粘着付与剤)(C)を含む。粘着付与樹脂(C)の軟化点は110℃未満が好ましく、99℃以下がさらに好ましい。また軟化点は25℃以上が好ましく、75℃以上がより好ましい。軟化点を上記範囲に設定することで塗膜の外観と粘着性能を高度に両立することができる。
【0059】
粘着付与樹脂(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対して2質量部以上60質量部以下であり、7質量部以上40質量部以下が好ましく、10質量部を超えて30質量部未満がより好ましい。上記範囲に設定することで塗膜の外観と粘着性能を高度に両立することができる。
【0060】
粘着付与樹脂(C)の軟化点は環球法(JIS K 5902)または文献値やカタログ値などの公表値を使用する。公表値が温度範囲で設定されている場合は下限値と上限値の平均値とする。
【0061】
粘着付与樹脂(C)としては、特に限定されないが、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、合成炭化水素系樹脂等が挙げられる。
【0062】
ロジン系樹脂としては、例えば、ロジンエステル、重合ロジン、水添ロジン、不均化ロジン、マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、ロジンフェノール樹脂、天然ロジン等が挙げられる。
【0063】
テルペン系樹脂としては、例えば、α-ピネン樹脂、β-ピネン樹脂、ジペンテン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、酸変性テルペン樹脂、スチレン化テルペン樹脂、及びスチレン-脂肪族炭化水素系共重合体樹脂等が挙げられる。
【0064】
合成炭化水素系樹脂は、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、水素化石油系樹脂、クマロン-インデン樹脂、フェノール樹が挙げられる。
粘着力と相溶性の観点から脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族系石油樹脂、水素化石油系樹脂が好ましく、水素化石油樹脂が特に好ましい。
【0065】
被貼付物に対する良好な粘着力を得る観点から、粘着付与樹脂(C)としては、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、合成炭化水素樹脂を用いることが好ましく、透明性の観点から、テルペン系樹脂および合成炭化水素樹脂の少なくともいずれかを用いることがより好ましい。また、合成炭化水素系樹脂を用いることが特に好ましい。粘着付与樹脂は、1種単独で、または2種以上混合して用いてもよい。
【0066】
本粘着剤組成物は、共重合体(A)、硬化剤(B)および粘着付与樹脂(C)の他に、必要に応じて、溶剤、共重合体(A)以外の樹脂、可塑剤、シランカップリング剤、レベリング剤、無機及び又は有機微粒子、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の任意の添加剤を含んでもよい。これら添加剤の添加量は、本発明の効果が得られる範囲で適宜選択でき、例えば、上記共重合体(A)の含有量が上記範囲内を満たす範囲で適宜設定することが好ましい。
【0067】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)以外の樹脂としては、公知の熱可塑性樹脂が挙げられ、例えば、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、低結晶(アモルファス)ポリプロピレン、アイオノマー樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリ酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル-無水マレイン酸共重合体、エチレン-メタクリル酸グリシジル共重合体等のエチレン共重合体、並びに、ポリオレフィン変性ポリマー等のオレフィン系共重合体、並びに、ブタジエン系エラストマー、エステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、スチレン-ブタジエン系エラストマー、スチレン-イソプレン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、並びに、熱可塑性ポリエステル、並びに、ポリアミド系共重合体等のポリアミド系樹脂、ポリウレタン、ポリスチレン系樹脂、セロファン、ポリアクリロニトリル、並びに、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体等のポリ塩ビニル系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で、または2種以上を混合して用いてもよい。これらのその他の樹脂の含有率は、本粘着剤組成物の固形分100質量%中、10質量%未満であることが好ましい。これらの樹脂の含有率が10質量%未満であれば、良好な相溶性が得やすく、適度な粘着力を容易に得ることができる。
【0068】
本粘着剤組成物を被貼付物に塗工する際には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の重合時の溶剤をそのまま利用してもよく、また、更に溶剤を追加してもよく、任意の溶剤を適宜使用できる。
【0069】
溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n-プロパノール、及びイソプロパノール等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で用いても2種で以上を併用してもよい。これら有機溶剤を添加して、粘着剤組成物の粘度を調整することもできるし、粘着剤組成物を加温して粘度を低下させることもできる。
溶解性、乾燥性の観点では、SP値が9以上の溶剤を用いることが好ましい。SP値が9以上の有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、イソプロパノールなどが挙げられる。これらの中で、酢酸エチルを用いることが好ましい。
一方、粘着剤組成物の粘度を下げる観点では、SP値が9未満の溶剤を用いることが好ましい。SP値が9未満の有機溶剤としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタンなどが挙げられる。
【0070】
<加飾シート>
以上説明した本粘着剤組成物は、加飾シート用として好ましく用いることができる。本発明に係る加飾シート(以降、本加飾シートとも記す)は、基材と、本粘着剤組成物の硬化物からなる粘着層とを備える。必要に応じて、粘着層の露出面は、剥離シートで被覆することができる。なお、剥離シートは、粘着シートを被着体に貼着する際に剥離される。
基材としては、特に制限されず、樹脂シート、紙、および金属箔等が挙げられる。基材は、これら基材の少なくとも一方の面に任意の1つ以上の層が積層された積層シートであってもよい。基材の任意の粘着層を形成する側の面には、必要に応じて、コロナ放電処理およびアンカーコート剤塗布等の易接着処理が施されていてもよい。
剥離シートとしては、特に制限されず、樹脂シートまたは紙等の基材シートの表面に剥離剤塗布等の公知の剥離処理が施された公知の剥離シートを用いることができる。
【0071】
粘着剤層を有する本加飾シートの製造方法については、従来公知の方法を適宜使用でき、特に限定されない。例えば、表面層と加飾層とが形成されたシート上に、必要に応じて溶剤で希釈した本組成物を、ナイフコート、バーコート、ブレードコート、ドクターコート、ロールコート、キャストコートなどによってコーティングし、塗膜を形成する。次いで、必要に応じて加熱して乾燥又は硬化することにより、当該シート上に粘着剤層(固化物)を形成することができる。
なお、本組成物に含まれる共重合体(A)が活性エネルギー線による架橋が必要な場合には、シート上に本組成物を塗工した後、活性エネルギー線を照射することにより、当該シート上に粘着剤層(架橋物)を形成することができる。その際、例えば、ベルトコンベア式の紫外線照射装置を用いて、シート上に塗工した粘着剤組成物に、紫外線照射を行って粘着剤層を得ることができる。紫外線照射量は、例えば、500mJ/cm以上、5000mJ/cm以下とすることができる。
本加飾シートは、常温(例えば、25℃)において適度な粘着力を有するとともに、高温(例えば、100~130℃)での接着時には優れた接着性を有し、さらに高温において長期間(例えば100℃7日間)性質を維持できる。したがって、本加飾シートは、例えば、真空圧空成形の一種である3次元表面加飾(Three dimension Overlay Method:TOM成形)による、航空機、自動車、建材の内外装、介護および医療分野、電化製品、電子部品、スマートフォン、家具、楽器、新幹線窓枠壁などの加飾に適用できる。
【0072】
<加飾構造体およびその製造方法>
本発明に係る加飾構造体(以下、本構造体とも記す)は、被着体に本粘着剤組成物を用いて加飾シートを貼り付けることで形成できる。被着体としては、特に限定されず、様々な形状の被貼付物(例えば、三次元形状の成形品)を用いることができる。本粘着剤組成物を用いた加飾シートは真空成形法および真空圧空成形法による被着体への貼り付けに用いられる。真空成形法および真空圧空成形法は従来公知の手法を適宜適用できる。
【0073】
本加飾構造体は、より具体的には、例えば、表面層、加飾層および粘着剤層をこの順で備えることができる。
表面層は、加飾成形品の表面となる層であり、加飾シートの分野で従来公知のものを適宜使用できる。表面層としては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、フッ素樹脂およびポリ塩化ビニルなど、様々な樹脂から構成されることができる。また、表面層の露出面にエンボス加工を施してもよい。
加飾層は、加飾対象物を加飾するためのものであり、使用用途に応じて、様々な材料を用いることができる。加飾層は、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂および塩化ビニル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂を含むことができる。また、加飾層は、任意の要素として、意匠層、バルク層、接合層等の他の層を更に含んでいてもよい。加飾シートの層数、各層の種類、配置、厚み等は、適宜選択でき、特に限定されない。
粘着剤層は、被着体(例えば、三次元形状に成形された成形品)に加飾シートを貼り付けるための層であり、粘着剤組成物を(例えば、基材上に塗布した後に)乾燥したり、紫外線を照射等して架橋したりすること形成できる。
【実施例
【0074】
次に、実施例を示して更に詳細を説明するが、本発明は、これらの例によって限定されるものではない。例中、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を示し、「%」は「質量%」を示す。また、表中の配合量は、質量部である。
【0075】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)のMwは、以下の方法により測定した。テトラヒドロフラン(THF)に溶解した共重合体(A)をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィー(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)に供し、Mwを特定した。測定装置は島津製作所製GPCのLC-GPCシステム「Prominence」(商品名)を用いた。重量平均分子量の決定はポリスチレン換算で行った。カラムは、東ソー社製、商品名:GMHXL4本、東ソー社製、商品名:HXL-H1本を直列に連結し、流量は1.0ml/分とし、カラム温度は40℃で測定を行った。
【0076】
[(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)の製造例]
<合成例1>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸2-エチルヘキシル45部、アクリル酸エチル3.5部、アクリル酸1.5部、アセトン60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2-エチルヘキシル45部、アクリル酸エチル3.5部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は98万であった。
【0077】
<合成例2>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル36部、アクリル酸2-エチルヘキシル5部、アクリル酸エチル7.5部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル36部、アクリル酸2-エチルヘキシル5部、アクリル酸エチル7.5部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル30部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は98万であった。
【0078】
<合成例3>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル10部、アクリル酸2-エチルヘキシル36部、アクリル酸エチル2部、アクリル酸2部、アセトン40部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル10部、アクリル酸2-エチルヘキシル36部、アクリル酸エチル2部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は97万であった。
【0079】
<合成例4>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル5部、アクリル酸2-エチルヘキシル29部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル5部、アクリル酸2-エチルヘキシル29部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は96万であった。
【0080】
<合成例5>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸2-エチルヘキシル28部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2-エチルヘキシル28部、アクリル酸エチル20部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は97万であった。
【0081】
<合成例6>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸2-エチルヘキシル23部、アクリル酸エチル25部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2-エチルヘキシル23部、アクリル酸エチル25部、アクリル酸2部、酢酸エチル30部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は98万であった。
【0082】
<合成例7>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸2-エチルヘキシル44.5部、メタクリル酸メチル3.5部、アクリル酸2部、アセトン60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2-エチルヘキシル44.5部、メタクリル酸メチル3.5部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は96万であった。
【0083】
<合成例8>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル10部、アクリル酸2-エチルヘキシル36部、酢酸ビニル2部、アクリル酸2部、アセトン40部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル10部、アクリル酸2-エチルヘキシル36部、酢酸ビニル2部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は96万であった。
【0084】
<合成例9>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル26.5部、メタクリル酸ブチル7.5部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル26.5部、メタクリル酸ブチル7.5部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル40部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は83万であった。
【0085】
<合成例10>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル24部、メタクリル酸ブチル10部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル24部、メタクリル酸ブチル10部、アクリル酸エチル14部、アクリル酸2部、酢酸エチル30部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は74万であった。
【0086】
<合成例11>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸2-エチルヘキシル18.5部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸2-エチルヘキシル18.5部、アクリル酸エチル30部、アクリル酸1.5部、酢酸エチル40部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は96万であった。
【0087】
<合成例12>
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下漏斗、窒素導入管を備えた反応容器(以下、単に「反応容器」と称することがある)に、アクリル酸ブチル33部、メタクリル酸ブチル15部、アクリル酸2部、酢酸エチル60部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ後、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。更に、滴下漏斗に、アクリル酸ブチル33部、メタクリル酸ブチル15部、アクリル酸2部、酢酸エチル20部、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.01部を仕込んだ。次いで、反応容器内を窒素雰囲気下で撹拌しながら、80℃まで加熱し、反応を開始した後、滴下漏斗内容物を1.5時間かけて滴下しながら、窒素雰囲気下にて還流温度で5時間重合反応を行った。反応終了後、冷却し、酢酸エチルを加えて希釈し、不揮発分40%のアクリル重合体溶液を得た。また、アクリル重合体の重量平均分子量(Mw)は70万であった。
【0088】
【表1】
【0089】
表1の略号を以下に記載する。
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
BA:アクリル酸ブチル
MMA:メタクリル酸メチル
EA:アクリル酸エチル
VAc:酢酸ビニル
BMA: メタクリル酸ブチル
AA:アクリル酸
【0090】
(実施例1)
前記製造例で得られた共重合体(合成例1)100部に対し、硬化剤(B)としてTETRAD-X(三菱ガス化学株式会社製)0.05部(不揮発分換算)を配合し、更に粘着付与樹脂溶剤(C)としてトルエンで不揮発分50%に調整したアルコンP-90を8部(不揮発分換算)、同様に不揮発分50%に調整したペトコールLX4部(不揮発分換算)を配合し、酢酸エチルを加えて不揮発分25%に調整して、実施例1の粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を以下に示す測定方法および評価方法に従い、評価した。
【0091】
(実施例2~27、比較例1~3)
共重合体(A)、硬化剤(B)、粘着付与樹脂(C)を表2に記載の物に変更した以外は実施例1と同様の手法で粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を以下に示す測定方法および評価方法に従い、評価した。
ただし、実施例6~12、19~27は参考例である。
【0092】
<加飾シートの作製方法>
得られた粘着剤組成物を、片面に離型処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に乾燥後の厚さが25μmになるよう塗布した。続いて、105℃で2分間乾燥させた後、当該塗膜を市販の塩化ビニルフィルムに貼り合せ、23℃、相対湿度50%(以下50%RH)の雰囲気下で7日間養生し、加飾シートを作成した。
【0093】
(SUS粘着力)
23℃-50%RHの雰囲気下で5時間養生した後の加飾シートから幅25mm長さ150mmの試験片を切り出した。切り出した加飾シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ステンレス板(SUS304)の表面に貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、23℃-50%RHの雰囲気下に24時間放置した。次いで、JISZ0237に準拠し、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力(加熱前の粘着力)を測定した。評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
◎:13N/25mm以上、優良。
○:8N/25mm以上13N/25mm未満、良好。
△:1N/25mm以上8N/25mm未満、実用可。
×:1N/25mm未満、実用不可。
【0094】
(PP粘着力)
23℃-50%RHの雰囲気下で5時間養生した後の加飾シートから幅25mm長さ150mmの試験片を切り出した。切り出した加飾シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ポリプロピレン板の表面に貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、23℃-50%RHの雰囲気下に24時間放置した。次いで、JISZ0237に準拠し、引張試験機(テンシロン:オリエンテック社製)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で粘着力(加熱前の粘着力)を測定した。評価基準は以下の通りである。
[評価基準]
◎:10N/25mm以上、優良。
◎○8N/25mm以上10N/25mm未満、非常に良好。
○:7N/25mm以上8N/25mm未満、良好。
△:3N/25mm以上7N/25mm未満、実用可。
×:3N/25mm未満、実用不可。
【0095】
<凹凸追従性>
前記で得られた加飾シートを、TOM成形機(布施真空株式会社製、NGF成型機)の型枠に取り付けた後、枠内に幅7cm×長さ15cmのメラミン板をセットし、その上に上辺20mm×底辺40mm×高さ15mmの正四角錐台のPP樹脂をセットした。その後、メラミン板およびPP樹脂を加飾シートで覆うように成形し、加飾構造体を得た。この成型後の表面状態について以下の評価基準に基づき、評価した。
(評価基準)
◎:全ての面で浮き、剥がれが見られない。非常に良好。
○:凹凸面で浮きは見られないが、端部で一部剥がれ発生。良好。
△:一部凹凸面で浮きが見られ、端部も剥がれ発生。実用可。
×:全ての凹凸面で浮きが発生し、全面で剥がれが発生。実用不可。
【0096】
<成形後の耐久性>
凹凸追従性試験で得られた加飾構造体を23℃-50RH%雰囲気下で24時間放置後、成形物表面に5cm長さの切り込みを十字に入れ、高温または高温高湿環境下(60℃/100℃/80℃-95%RH)でそれぞれ168時間放置した後、浮きや剥がれ、ズレについて以下の評価基準に基づき、評価した。
(評価基準)
◎:浮きや剥がれはなかったものの、0.5mm未満のズレが発生。優良。
◎○:浮きや剥がれはなかったものの、0.5mm以上1mm未満のズレが発生。非常に良好
○:浮きや剥がれはなかったものの、1mm以上3mm未満のズレが発生。良好。
△:浮きや剥がれはなかったものの、3mm以上10mm未満のズレが発生。実用可。
×:浮きや剥がれが発生。または10mm以上のずれが発生。実用不可。
【0097】
<耐久性試験後の外観>
得られた粘着剤組成物を、片面に離型処理が施されているポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)の離型処理面上に乾燥後の厚さが25μmになるよう塗布した。続いて、105℃で2分間乾燥させた後、当該塗膜を市販のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ50μm)に貼り合せ、23℃-50%RHの雰囲気下で7日間養生し、粘着シートを作成した。粘着シートから幅15mm長さ30mmの試験片を切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、スライドガラスの表面に貼着し、2kgロールを1往復して圧着した。その後、80℃-95%RHの雰囲気下に168時間放置し、取り出した試験片を23℃-50%RHの雰囲気下でさらに24時間放置した後にヘーズメータ(日本電飾工業株式会社製)でHAZEを測定した。
◎:HAZE 7未満、優良。
◎○:HAZE 7以上8未満、非常に良好。
○:HAZE 8以上9未満、良好。
△:HAZE 9以上12未満、、実用可。
×:HAZE 12以上、実用不可。
【0098】
【表2】
【0099】
表2の略号を以下に記載する。
TETRAD-X:エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学株式会社製、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン)
[粘着付与樹脂]
アルコンP-90:荒川化学工業株式会社製 水素化石油樹脂(軟化点90℃)
ペトコールLX:東ソー株式会社製 芳香族系石油樹脂(軟化点98℃)
FTR6100:三井化学株式会社製 脂肪族/芳香族系石油樹脂(軟化点95℃)
FTR8120:三井化学株式会社製 芳香族系石油樹脂(軟化点120℃)
YSポリスターT115:ヤスハラケミカル株式会社製 テルペンフェノール系樹脂(軟化点115℃)
ペンセルD-125:荒川化学工業株式会社製 ロジン系樹脂(軟化点125℃)
スーパーエステルA-75:荒川化学工業株式会社製 ロジン系樹脂(軟化点75℃)
SYLVALITE2038:クレイトンポリマー社製 ロジン系樹脂(軟化点37℃)
ペンセルD-160:荒川化学工業株式会社製 ロジン系樹脂(軟化点157.5℃)
【0100】
【表3】
【0101】
本発明は上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、適宜設計変更が可能である。
【0102】
本発明の粘着剤組成物は、表3の実施例1~27に示すように、粘着力、凹凸追従性、成形後の耐久性、塗膜外観に優れていた。これに対して表3の比較例1~3は上述の物性すべてを満足することはできなかった。
以上のように優れた性質を有する本組成物は、例えば、航空機、自動車、鉄道、建材内外装、介護および医療分野、電化製品などの加飾にも好適に使用でき、その使用用途は特に限定されないが、自動車内装・外装部品、家電製品、スマートフォン、住宅建材への使用が好ましく、自動車内装・外装部品、住宅建材への使用がさらに好ましく、自動車内装・外装部品への使用が特に好ましい。また加飾シートを用いて装飾する方法としては、インサート成形法、インモールド成形法、真空成形法および真空圧空成形法などが知られており、特に限定はされないが、真空成形法および真空圧空成形法での方法が特に好ましい。
【要約】
【課題】
成形品の加飾において、凹凸部を有する複雑な形状に追従し、かつ低極性被着体に対する粘着力、透明性、成形品に優れた外観を付与できる、加飾シート用粘着剤組成物、加飾シート、加飾構造体およびその製造方法の提供。
【解決手段】
(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、硬化剤(B)および軟化点130℃未満の粘着付与樹脂(C)を含み、(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)100質量部に対し、前記粘着付与樹脂(C)を2質量部以上60質量部以下含有する加飾シート用粘着剤組成物により解決される。
【選択図】なし