(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】シランコーティングの適用方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240130BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20240130BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240130BHJP
【FI】
G02B5/30
C23C16/42
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2019560247
(86)(22)【出願日】2018-07-06
(86)【国際出願番号】 US2018041117
(87)【国際公開番号】W WO2019022943
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-05
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-24
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501218636
【氏名又は名称】モックステック・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディワン、アナブハフ
(72)【発明者】
【氏名】リンフォード、マット
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】本田 博幸
【審判官】清水 康司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0291209(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0289458(US,A1)
【文献】特表2007-505220(JP,A)
【文献】特表2014-526432(JP,A)
【文献】特表2006-507517(JP,A)
【文献】特開2012-185349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
G02B1/14
C23C16/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤグリッド偏光子上にシラン化合物を
化学気相成長させる方法であって、
前記ワイヤグリッド偏光子をチャンバ内に配置する段階と、
前記チャンバ内にシラン化合物と水とを導入する段階であって、前記シラン化合物と前記水とは、前記チャンバ内で気相である、段階と、
前記チャンバ内で前記シラン化合物と前記水とを同時に前記気相に維持し、かつ、前記チャンバ内で前記シラン化合物と前記水とを反応させて、(R
1)
2Si(OH)
2分子を形成する段階であって、式中、各R
1は、独立に任意の化学元素または基である、段階と、
前記(R
1)
2Si(OH)
2分子と前記ワイヤグリッド偏光子および他の(R
1)
2Si(OH)
2分子との化学反応により、前記ワイヤグリッド偏光子上にシランコーティングを形成する段階とを備える
方法。
【請求項2】
前記(R
1)
2Si(OH)
2分子は、R
1Si(OH)
3を含み、前記R
1Si(OH)
3は、ガス状分子であり、かつ
R
1Si(OH)
3において、R
1は、パーフルオロ化された基を含む炭素鎖を有する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記シラン化合物は、R
1Si(R
2)
3分子を含み、
各R
2は、独立に-Cl、-OR
3、-OCOR
3、または、-N(R
3)
2であり、
各R
3は、独立に-CH
3、-CH
2CH
3、または、-CH
2CH
2CH
3であり、
前記(R
1)
2Si(OH)
2分子はR
1Si(OH)
3分子を含み、前記R
1Si(OH)
3分子は、ガス状分子である、
請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
R
1は、-CH
3であり、かつ、(CH
3)
2Si(OH)
2分子の一対は反応して、前記気相内で
【化5】
を形成する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シランコーティングの厚さを2nm以上20nm以下の間とするように、前記チャンバ内の前記水の量を制御する段階をさらに備える、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記チャンバ内に前記シラン化合物と前記水とを導入する前に、前記ワイヤグリッド偏光子上に二酸化シリコンのコンフォーマルコーティングを適用する段階であって、前記二酸化シリコンのコンフォーマルコーティングは、0.5nm以上30nm以下の厚さを有する、段階をさらに備える、
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シランコーティングの形成は、シランと前記ワイヤグリッド偏光子との間に共有結合を形成する段階と、各層のシランと隣接する層のシランとの間で共有結合を形成する段階とを含む、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記シラン化合物と前記水とを前記チャンバ内で、同時に、少なくとも5分間、前記気相に維持する段階をさらに備える、
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記(R
1)
2Si(OH)
2分子の一対は反応し、化学式(1)、化学式(2)、化学式(3)、
【化6】
または、これらの組み合わせを形成する段階を備える、
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記チャンバ内の、前記気相である前記水の密度は、0.3g/m
3と30g/m
3との間である、
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ワイヤグリッド偏光子上の保護表面層として使用するシランの化学的性質に関する。
【背景技術】
【0002】
一部のデバイス(例えば、ワイヤグリッド偏光子)は、ナノメートルサイズの寸法を含むことがある小さく、繊細な特徴部を有している。そのような繊細な特徴部は、デバイス上の水または他の液体の張力により損傷される可能性がある。これらの繊細な特徴部は、そのような張力から保護される必要がある場合がある。
【0003】
多くの保護化合物と適用方法とが開発されているが、それらは欠点を有している場合がある。これらの保護化合物の一部における欠点の1つは、耐久性、特に高温耐久性が不十分であることである。これらの保護化合物を適用するいくつかの方法(例えば、浸漬堆積)の欠点は、保護化合物を適用している間にデバイスの外面材料が溶解することである。そのような方法の他の欠点には、保護化合物の厚さが不均一なこと、廃棄物の処理、健康被害、すすぎ残渣、および製造装置に対する損傷が含まれ得る。
【発明の概要】
【0004】
特に、高温耐久性を有する保護化合物により、デバイスを液体による腐食または他の損傷から保護し得る保護化合物を提供することは有益であろうと認識されている。また、適用中にデバイスが溶解するのを防ぎ、より均一な厚さの保護化合物を提供し、廃棄物処理問題および健康被害を最小限にし、すすぎ残渣を残すことを防ぎ、製造装置の損傷を回避または最小限にする保護化合物の適用方法を提供することは有益であろうということも認識されている。本発明は、これらの需要を満たすシラン化合物を堆積させる方法の様々な実施形態に関する。各実施形態は、これらの需要の1つ、いくつか、またはすべてを満たし得る。
【0005】
その方法は、ワイヤグリッド偏光子をチャンバ内に配置し、チャンバ内にシラン化合物と水とを導入し、チャンバ内でシラン化合物と水とが気相であることによりシラン化合物をワイヤグリッド偏光子上へ蒸着することを備え得る。
【0006】
一実施形態において、その方法は、さらに、(a)チャンバ内でシラン化合物と水とを同時に気相に維持する段階と、(b)チャンバ内でシラン化合物と水とを反応させ、(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、または両方を形成する段階であって、式中、各R1は独立に任意の化学元素または基である、段階と、(c)(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、または両方と、デバイスおよび他の(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、または両方との化学反応により、デバイス上にシランコーティングを形成する段階とを備え得る。
【0007】
別の実施形態において、その方法は、さらに(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、または両方と、デバイスおよび他の(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、または両方との化学反応により、デバイス上に、各層のシランが隣接する層のシランと化学的に結合している多層シランコーティングを形成することを備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
(図面は、縮尺どおりに描かれていない可能性がある)
【
図1】本発明の一実施形態に係る、その中にデバイス10を有するチャンバ13の側断面の概略図であり、チャンバ13は、デバイス10上へのシラン化合物の蒸着に使用され得る。
【0009】
【
図2】本発明の一実施形態に係る、シランコーティング24を有するデバイス10を備える、コーティングされたデバイス20の側断面の概略図である。
【0010】
【
図3】本発明の一実施形態に係る、二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングを有するデバイス10と、デバイス10上のシランコーティング24とを備える、コーティングされたデバイス30の側断面の概略図である。
【0011】
[定義]
本明細書で使用する、「アルキル」は、分岐、非分岐、環式、飽和、不飽和、置換された、非置換のアルキル、および、ヘテロアルキル炭化水素基を指す。本明細書で使用する、「置換されたアルキル」は、
1または複数の置換基で置換されたアルキルを指し、「ヘテロアルキル」という用語は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子で置き換えられているアルキルを指す。蒸着を容易にするために、アルキルは、例えば、炭素原子が2個以下、炭素原子が3個以下、炭素原子が5個以下、または、炭素原子が10個以下のように、比較的低級であってよい。
【0012】
本明細書で使用する、「アリール」は、単一の芳香族環、または、共に縮合または(異なる芳香族環が共通の基に結合するように)リンクされている複数の芳香族環を含む基を指す。「置換アリール」という用語は、1または複数の置換基を含むアリール基を指す。「ヘテロアリール」という用語は、少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子に置き換えられたアリール基を指す。特に指定がない場合、「アリール」という用語は、非置換アリール、置換アリールおよびヘテロアリールを含む。
【0013】
本明細書で使用する、「コンフォーマルコーティング」という用語は、特徴部のトポロジの輪郭に従う薄膜を意味する。
【0014】
本明細書で使用する、「nm」という用語は、ナノメータを意味する。
【0015】
本明細書で使用する、「Pa」という用語は、圧力のSI単位系であるパスカルを意味する。
【0016】
本明細書で使用する、「Xはデバイスとの結合を含む」という語句、および、他の類似の語句は、化学物質とデバイス10との間の直接結合、または、デバイス10に結合する中間化学物質または層(例えば、二酸化シリコン34の層)との結合を意味する。そのような追加層は他のコンフォーマルコーティングであってよい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
デバイス10上へのシラン化合物の蒸着方法は、以下のステップのいくつか、もしくは,すべてを備えてよく、以下の順序、または、指定されている場合は、他の順序で実行されてよい。特許請求の範囲に、明記されていない限りは、いくつかのステップが同時に実行されてよい。下に説明されていない、追加のステップもあり得る。これらの追加のステップは、説明されているステップの、前、合間、または後であり得る。その方法は、(1)デバイス10をチャンバ13内に配置する段階と、(2)デバイス10上に二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングを適用する段階と、(3)チャンバ13内にシラン化合物と水とを導入する段階と、(4)チャンバ13内でシラン化合物と水とを反応させて、R
1Si(OH)
3分子、(R
1)
2Si(OH)
2分子、または両方を形成する段階と、(5)R
1Si(OH)
3/(R
1)
2Si(OH)
2分子と、デバイス10および他のR
1Si(OH)
3/(R
1)
2Si(OH)
2分子との化学反応により、デバイス10上にシランコーティング24を形成して、コーティングされたデバイス20または30を作成する段階と、(6)チャンバ13内にR
2Si(CH
3)
3を導入する段階とを備え得る。
図1~3を参照されたし。
【0018】
二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングを、チャンバ13ではなく、異なるツール内で適用する場合は、ステップ1およびステップ2の順序は、逆にしてよい。
【0019】
ステップ2に関しては、二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングの厚さT34の例には、≧0.5nmまたは≧5nm、および≦15nm、≦30nm、≦45nm、または、≦60nmが含まれる。この二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングは、下に説明するシランコーティング24が付着することを補助し得る。
【0020】
ステップ3に関しては、シラン化合物、および/または、水は、気体として導入するか、または、チャンバ内で気体に相変化する液体として導入してよい。シラン化合物の例には、(R1)2Si(R2)2、R1Si(R2)3、およびSi(R2)4分子が含まれる。各R1は、例えば、疎水基のような任意の化学元素または基であり得、さらに下に説明される。各R2は、独立に、例えば、-Cl、-OR3、-OCOR3、-N(R3)2、または、-OHのような反応基であり得る。各R3は、独立に、-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、任意の他のアルキル基、アリール基、または、これらの組み合わせであってよい。
【0021】
反応基R2は、水と反応し得、したがって、それぞれ(R1)2Si(OH)2、R1Si(OH)3、および、Si(OH)4分子を形成する。(R1)2Si(OH)2、R1Si(OH)3、および、Si(OH)4分子は、気相で形成され得る。
【0022】
一実施形態において、シラン化合物は、水の導入前に、まず導入してよく、チャンバ13内で、例えば、≧5分、≧15分、≧25分、および、≦35分、≦60分、または、≦120分のような、一定時間気体として保持される。チャンバ13内でシラン化合物を保持する間のチャンバ13の圧力の例には、≧1Pa、≧5Pa、≧10Pa、≧50Pa、または、≧100Pa、および、≦500Pa、≦1000Pa、≦5000Pa、または、≦10,000Paが含まれる。続いて、チャンバ内に水を導入し、例えば、≧5分、≧25分、≧50分、または、≧75分、および、≦100分、≦150分、または、≦200分のような一定時間保持してよい。チャンバ13内で水を保持する間のチャンバ13の圧力の例には、≧100Pa、≧500Pa、または、≧1000Pa、および、≦5000Pa、≦10,000Pa、または、≦50,000Paが含まれる。低圧力を用いることで、シラン化合物と水とは、より低い温度で、気相であることが可能となる。
【0023】
ステップ4はまた、チャンバ内でシラン化合物と水とを、同時に一定時間、気相に維持することも含み得る。より長い時間であれば、デバイス10上のシランコーティング24のカバレッジは向上し、および/または、多層を備えるより厚いシランコーティング24をもたらし得る。例えば、この時間は、≧5分、≧25分、≧50分、または、≧75分および≦100分、≦150分、または、≦200分であり得る。この時間は、デバイス10上のシランコーティング24のカバレッジと厚さT24を制御する1つの要因である。
【0024】
ステップ5は、デバイス10上に多層のシランコーティング24を形成することを含み得る。(R1)2Si(OH)2、R1Si(OH)3、および、Si(OH)4分子として表されるシランは、デバイス10および他の(R1)2Si(OH)2、R1Si(OH)3、および、Si(OH)4分子と結合することが可能であり、したがって架橋し、かつ多層を形成する。シランの層間の結合は、Si-O-Si結合であり得る。ステップ5は、ステップ3、ステップ4、または、両方と同時に起こり得る。
【0025】
ステップ6は、R2Si(CH3)3を用いて、シランポリマ鎖の末端の-OHをCH3で置換して不活性なシランコーティング24を形成するのに有用であり得る。
【0026】
ステップ3~6の1または複数のステップにおける、チャンバ内の水性ガスの量は、シランコーティング24を最適に堆積させるのに重要であり得る。例えば、チャンバ内の水性ガス密度は、≧0.01g/m3、≧0.1g/m3、≧0.3g/m3、または、≧1g/m3、および、≦5g/m3、≦10g/m3、≦30g/m3、または、≦100 g/m3であり得る。
【0027】
多層シランコーティング24は、シラン化合物に、(R1)2Si(R2)2分子、R1Si(R2)3分子、Si(R2)4(R2は、上で定義されている)分子、または、これらの組み合わせが含まれていることの結果であり得る。したがって、各R2は、水と反応して、(R1)2Si(OH)2分子、R1Si(OH)3分子、Si(OH)4、または、これらの組み合わせを形成するであろう反応基であってよい。Siに結合しているそれぞれの-OH官能基は、デバイス10または成長中のシランコーティング24と反応し得、多層コーティングをもたらす。
【0028】
上記の方法は、シランコーティング24の所望の厚さT24を実現するために、チャンバ13内の水の量を制御することもまた含み得る。チャンバ13内の水性ガスの量を増加させること、シラン化合物のチャンバ13内での時間を増加させること、水のチャンバ13内での時間を増加させること、またはこれらの組み合わせで、より厚いシランコーティング24がもたらされ得る。
【0029】
上記の方法において、シラン化合物は、1または複数の(CH
3)
2Si(R
2)
2分子、(CH
3)Si(R
2)
3分子、および、Si(R
2)
4分子を含んでいてよく、上述のように、式中、各R
2は、独立に反応基であり得る。そのような分子は、それぞれ、(CH
3)
2Si(OH)
2分子、(CH
3)Si(OH)
3分子、およびSi(OH)
4分子を形成するように水と反応し得、共に反応して化学式(1)~(6)の1または複数を形成し得る。
【化1】
これらの反応は、気相で起こり得る。シラン化合物においてこれらの分子を用いると、耐久性、高温耐性があるシランコーティング24がもたらされ得る。(CH
3)Si(R
2)
3および/またはSi(R
2)
4分子を用いると、多層シランコーティング24を形成することが可能となる。
【0030】
蒸着の利点は、シランコーティング24の厚さT24の制御性の向上、プロセス廃棄物の処理問題の削減、無駄となるシラン化合物の削減、健康被害の削減、すすぎによる望ましくない残渣を減らす、または、なくす、および、標準的な半導体処理装置を使用することを含み得る。
【0031】
上記の方法において、チャンバ13内に導入されるシランの量を制御するのは困難であり得る。シランの量を制御する1つの方法は、まず、シラン化合物を有機溶媒に溶解し、次に、有機溶媒に溶解したシラン化合物をチャンバ13内に導入することである。あるいは、または、これに加えて、異なる容器内で水を有機溶媒に溶解してよく、次に、有機溶媒に溶解した水をチャンバ内に導入してよい。例えば、トルエン、クロロホルム、エタノール、およびシクロヘキサノンのような、デバイス12と反応しないであろう有機溶媒を使用し得る。
【0032】
以下は、上記の方法により作製され得るコーティングされたデバイス20または30の例である。デバイス10は、チューブを備えるガスクロマトグラフィの注入口ライナであり得る。シランコーティング24は、チューブの内表面をコートし、保護コーティングを有する注入口ライナを形成することが可能である。本明細書に記載される不活性なシランコーティング24は、そのような注入口ライナに使用するのに特に有用であり得る。
【0033】
デバイス10は、基板11上にナノメートルサイズの特徴部12を含み得る。そのようなデバイス10は、ワイヤグリッド偏光子であり得、ナノメートルサイズの特徴部12は、ナノメートルサイズの幅w、高さH、およびピッチPを有するワイヤのアレイであり得る。シランコーティング24は、ナノメートルサイズの特徴部12および基板11の表面をコンフォーマルコーティングとしてコートし得る。コンフォーマルコーティングを使用することで、シランコーティング24は、デバイス10の性能に対する悪影響を最小限にしてデバイス10を保護することが可能となる。本明細書に記載されるシランコーティング24の化学的性質は、高温耐久性、疎水性、および、ワイヤグリッド偏光子性能に対する悪影響が最小限である等のワイヤグリッド偏光子特有のニーズに対して特に有用である。
【0034】
図3に示されるように、コーティングされたデバイス30は、ナノメートルサイズの特徴部12とシランコーティング24との間に、さらに、上述のように厚さT
34の二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングを備えていてよい。
【0035】
シランコーティング24は、
【化2】
を含んでよい。
式中、rは、例えば、>5、>10、>100、または、>500のようなポリマの長さを示し得る。R
1は、例えば、疎水基または親水基のような、任意の化学元素または基であり得る。R
1は、例えば、CF
3(CF
2)
n(CH
2)
mのようなパーフルオロ化された基を含み得る炭素鎖を備えてよく、式中、nおよびmは、4≦n≦10および2≦m≦5の範囲内の整数である。疎水基の他の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2016/0291226号に説明されている。
【0036】
シラン化合物が(CH
3)
2Si(R
2)
2分子(R
2は上で定義されている)を含む場合は、得られるシランコーティング24は、以下のポリマであり得、高温に対して耐性であり得る。
【化3】
整数rは、例えば、>5、>10、>100、または、>1000のような様々な値であり得る。各R
1は、独立に任意の化学元素または基であり得る。R
1は、より反応性が高い官能基ではなく、-CH
3であり得、したがって、不活性な保護コーティングになる。
【0037】
R1Si(R2)3分子および/またはSi(R2)4分子(R2は、上述に定義)を含むことで、シランコーティング24内に多層を形成することが容易になり得る。各層内のシランは隣接する層内のシランと化学的に結合し得る。より厚い、もしくは、多層のシランコーティング24は、より薄い、もしくは、単層のシランコーティングと比べて、高温耐性が向上し得る。
【0038】
多層シランコーティング24は、少なくとも3層を有してよく、各層のシランは隣接する層のシランと化学的に結合している。例えば、シランコーティングは、
【化4】
を含んでよく、
式中、各R
4は、例えば、本明細書に記載されるように疎水基、または、親水基のような任意の化学元素または基を含んでよく、かつ、Xは、デバイス10への結合を含んでよい。各R
1は、独立に、-OSi(CH
3)
3であり得、R
2は、上で定義される通り、または、任意の他の化学元素または基である。
【0039】
多層シランコーティング24は、デバイス10を保護するために、十分な最小厚さTLを有することが重要であり得る。例えば、シランコーティング24の厚さT24が厚くなると、実質的に高温耐久性が高くなることが試験によって示されている。多層シランコーティング24の最小厚さTLの例には、≧0.7nm、≧1nm、≧2nm、≧2.5nm、≧2.7nm、≧2.9nm、および≧4nmが含まれる。
【0040】
シランコーティング24は、例えば、ワイヤグリッド偏光子のような、デバイス10の性能を劣化させる場合があり得る。したがって、シランコーティング24の厚さT24が、デバイス10を保護するのに必要な厚さを越えないようにすることは重要であり得る。例えば、多層シランコーティング24は、≦6nm、≦8nm、≦10nm、≦12nm、≦15nm、≦20nm、≦30nm、または、≦50nmの最大厚さTHを有し得る。
【0041】
デバイス10を最小限の性能劣化で保護するように、シランコーティング24の最小厚さTLと最大厚さTHとの間の変動を最小限にすることは重要であり得る。例えば、シランコーティングの最大厚さTHをシランコーティング24の最小厚さTLで割ると、≦2、≦3、≦5、≦10、または、≦20であり得る。
【0042】
本明細書に記載されるシランコーティング24は、上述のようなシラン化合物を蒸着する方法により蒸着され得る。シランコーティング24を、浸漬堆積ではなく蒸着することにより、最小厚さTLと最大厚さTHとの間の変動を減少させる結果となり得る。蒸着はまた、プロセス廃棄物の処理問題の削減、健康被害の削減、すすぎによる望ましくない残渣を減らす、または、なくすため、浸漬より好まれる場合があり、かつ、蒸着は、標準的な半導体処理装置により行い得る。
【0043】
蒸着を用いることで、保護化合物を適用する間に、デバイスの溶解性材料が溶解するのを防ぎ得る。これに対し、水のような液体に浸漬することは、そのような溶解性材料が溶解する可能性を増大し得る。この蒸着の利点のさらなる説明は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許公開第2016/0291227号を参照されたし。
【0044】
蒸着法の例には、化学気相成長(CVD)、低圧CVD(LPCVD)、プラスマCVD、物理気相成長(PVD)、原子層堆積(ALD)、熱反応拡散、電子ビーム蒸着、スパッタリング、および、加熱蒸着が含まれる。
【0045】
本明細書に記載される多くのシランコーティング24は、高温耐性であり得る。そのような高温耐性は、例えば、小型の高光強度コンピュータプロジェクタのワイヤグリッド偏光子、または、ガスクロマトグラフィの注入口ライナのような多くの用途で有用となり得る。疎水性シランコーティング24については、そのような高温耐性は、以下のように定量化できる。コーティングされたデバイス20または30を、350℃で、≧80時間、≧120時間、≧500時間、≧1000時間、または、≧1500時間昇温した後の、シランコーティング24表面上の水滴の水の接触角は、120度より大きくてよい。
【0046】
上記の方法、および、コーティングされたデバイス20および30において、シランコーティング24と、デバイス10および/または二酸化シリコン34のコンフォーマルコーティングとの間で共有結合を形成し得る。多層シランコーティング24では、各層のシランと隣接する層のシランとの間で共有結合を形成し得る。