(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】送りねじクラッチ機構
(51)【国際特許分類】
F16H 25/20 20060101AFI20240130BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20240130BHJP
F16H 25/14 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16H25/20 H
F16H25/24 B
F16H25/24 G
F16H25/14
(21)【出願番号】P 2021504092
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008754
(87)【国際公開番号】W WO2020179751
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】P 2019041608
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390029676
【氏名又は名称】株式会社トップ
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】杉江 隼人
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-508045(JP,A)
【文献】特開2011-140082(JP,A)
【文献】特開平04-069113(JP,A)
【文献】特表2007-528260(JP,A)
【文献】特表平10-504374(JP,A)
【文献】米国特許第5106375(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/20
F16H 25/24
F16H 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りねじにより送り方向に送られる送り対象物と該送りねじとの間の動力の伝達を断続する送りねじクラッチ機構であって、
少なくとも一方がハーフナットを構成する第1、第2ハーフ部材と、
前記第1、第2ハーフ部材をそれぞれ支持し、該第1、第2ハーフ部材が相互に近接して前記送りねじと螺合する送り部を形成する第1位置と、該第1、第2ハーフ部材が相互に離間して該送りねじとの螺合が解除される第2位置との間で併進移動し得るように互いに案内し合う第1、第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を、前記第1、第2位置の間で併進移動し得るように収容するとともに前記送り対象物に固定されたケース部と、
前記第1、第2支持部材を前記第1、第2位置の間で併進移動させる切替手段とを備え、
前記切替手段は、
前記第1、第2支持部材を、前記第1位置又は前記第2位置に向かう方向に付勢する付勢部材と、
前記第1支持部材又は第1ハーフ部材に設けられた第1面と前記第2支持部材又は第2ハーフ部材に設けられて該第1面と対向する第2面との双方に接して回転することにより該第1、第2面間の間隔を増減させるカム面を有し、該間隔の増減により前記第1、第2支持部材を前記第1、第2位置の間で移動させるカム部材とを備えることを特徴とする送りねじクラッチ機構。
【請求項2】
前記第1、第2支持部材は、それぞれ、
表面及び裏面並びにこれらの周縁を接続する周縁面を有する板状部と、
該板状部の裏面の周縁部から該裏面に直交する方向に延び、その延びた先端部において、前記第1又は第2ハーフ部材を保持する複数本の棒状部とを備え、
前記第2支持部材の板状部は、前記第1支持部材の前記棒状部が嵌合する嵌合凹部を前記周縁面に備え、
前記第1、第2支持部材は、相互に前記併進移動の方向に相対移動し得るように案内し合う案内面を有し、
前記案内面は、前記第1、第2支持部材の前記第1、第2位置間での移動に際して相互に摺動し合う前記嵌合凹部、前記第1、第2支持部材の前記棒状部の側面、前記第1ハーフ部材の側面により構成され、
前記第1面は、前記第1支持部材の前記板状部の裏面により構成され、
前記第2面は、前記第2支持部材の前記板状部の表面により構成され、
前記付勢部材は、前記第2支持部材の前記板状部の裏面と前記第1ハーフ部材との間に介在して前記第1、第2支持部材を、前記第1位置に向かう方向に付勢することを特徴とする請求項1に記載の送りねじクラッチ機構。
【請求項3】
前記第2支持部材の前記板状部の板面は、矩形状の形状を有し、
前記第2支持部材は、前記棒状部として、
断面が矩形状で、前記板状部側の端面の一辺が前記板面の一辺の中央部を構成する1本の第1棒状部と、
断面が矩形状で、前記板状部側の端面の一辺が前記板面の前記一辺と反対側の辺の両端部を構成している2本の第2棒状部とを備え、
前記第2支持部材の前記板状部は、前記嵌合凹部として、
前記併進移動の方向に垂直な断面が直角三角形状で、該板状部における前記第1棒状部の両側の角部にそれぞれ設けられた2つの三角状凹部であって、各三角状凹部の一方の内壁が該第1棒状部の該板状部側端部の側面の一部を構成する該三角状凹部と、
前記併進移動の方向に垂直な断面が矩形状で、前記2本の第2棒状部における該板状部側の端部の対向する各側面により側壁が形成された1つの矩形状凹部とを備え、
前記第1、第2棒状部は、それぞれ、
前記第2支持部材の前記板状部と反対側の端部に設けられ、前記第2ハーフ部材に対向する内側面と、
前記内側面から突出した凸部とを備え、
前記第2ハーフ部材は、
前記第1棒状部の前記内側面及び前記2本の第2棒状部の前記内側面にそれぞれ対向する第1、第2側面と、
前記第1、第2側面にそれぞれ設けられ、前記第1、第2棒状部の前記凸部がそれぞれ嵌合可能な2つの凹条を備え、
各凹条及び対応する前記凸部は、該凹条に対して該凹条に沿った方向に該凸部をスライドさせることにより相互に嵌合して固定されるように構成され、
前記第1支持部材は、前記第2支持部材と同じ構成を有することを特徴とする請求項2に記載の送りねじクラッチ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送りねじからの送り対象物に対する動力の伝達を断続する送りねじクラッチ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送りねじからの送り対象物に対する動力の伝達を断続する機構として、ハーフ部材を用いたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1の機構では、第1、第2ハーフ部材を、これらが送りねじと螺合する送りナットを形成する第1位置と、これらが相互に離間して該送りねじとの螺合が解除される第2位置との間で両者の位置が切り替えられるようになっている。
【0003】
第1、第2ハーフ部材は、それぞれ略クランク状に形成されており、その先端部には、送りねじの半周部分に対応する部分を構成するねじ面が形成され、後端部には、カムの動作を第1、第2ハーフ部材に伝達させるためのカム従動面が形成される。また、第1、第2ハーフ部材の中央部は、相互に開閉し得るように、支軸によって支持される。第1、第2ハーフ部材の支軸とねじ面との中間位置には、第1、第2ハーフ部材を閉鎖方向に付勢する引っ張りばねが設けられる。
【0004】
したがって、この機構においては、引っ張りばねの付勢力に抗して、第1、第2ハーフ部材が開く方向にカムを動作させることによって、送りねじから送り対象物に対する動力の伝達が切断された切断状態とすることができる。逆に、カムを第1、第2ハーフ部材が付勢力によって閉じる方向に動作させることにより、送りねじから送り対象物に対する動力の伝達が可能な接続状態とすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の機構によれば、第1、第2ハーフ部材が、第1位置と第2位置との間でクリップ状に開閉動作することによって送りねじからの送り対象物に対する動力の伝達を断続する機構となっている。このため、この動力伝達を断続するためには第1、第2ハーフ部材がクリップ状に開閉動作するためのスペースを確保する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、かかる従来技術の課題に鑑み、よりコンパクトなスペース内で動作可能な送りねじクラッチ機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送りねじクラッチ機構は、
送りねじにより送り方向に送られる送り対象物と該送りねじとの間の動力の伝達を断続する送りねじクラッチ機構であって、
少なくとも一方がハーフナットを構成する第1、第2ハーフ部材と、
前記第1、第2ハーフ部材をそれぞれ支持し、該第1、第2ハーフ部材が相互に近接して前記送りねじと螺合する送り部を形成する第1位置と、該第1、第2ハーフ部材が相互に離間して該送りねじとの螺合が解除される第2位置との間で併進移動し得るように互いに案内し合う第1、第2支持部材と、
前記第1、第2支持部材を、前記第1、第2位置の間で併進移動し得るように収容するとともに前記送り対象物に固定されたケース部と、
前記第1、第2支持部材を前記第1、第2位置の間で併進移動させる切替手段とを備え、
前記切替手段は、
前記第1、第2支持部材を、前記第1位置又は前記第2位置に向かう方向に付勢する付勢部材と、
前記第1支持部材又は第1ハーフ部材に設けられた第1面と前記第2支持部材又は第2ハーフ部材に設けられて該第1面と対向する第2面との双方に接して回転することにより該第1、第2面間の間隔を増減させるカム面を有し、該間隔の増減により前記第1、第2支持部材を前記第1、第2位置の間で移動させるカム部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
この構成において、送りねじにより送り対象物を送るためには、カム部材を第1、第2面間の間隔が増大し又は減少する方向に回転させることにより、第1、第2支持部材を第1位置に併進移動させる。これにより、第1、第2ハーフ部材は、送り部を形成して送りねじと螺合した状態となる。すなわち、送りねじクラッチ機構は、送り対象物と送りねじとの間の動力の伝達が可能な接続状態となる。
【0010】
また、この状態において、カム部材を、上述の第1、第2支持部材を第1位置に併進移動させる場合とは逆方向に回転させて、第1、第2支持部材を第2位置に併進移動させることにより、第1、第2ハーフ部材は、送りねじとの螺合が解除された状態となる。すなわち、送りねじクラッチ機構は、送りねじからの送り対象物に対する動力の伝達が不能な切断状態となる。
【0011】
このように、本発明によれば、第1、第2支持部材を、第1、第2ハーフ部材の螺合面が対峙する姿勢で併進移動させることにより、第1、第2支持部材の位置が第1、第2位置間で切り替えられ、送りねじからの送り対象物に対する動力の伝達が断続される。このため、第1、第2支持部材は、動力伝達の断続に際してクリップ状に開閉動作することはない。
【0012】
したがって、本発明によれば、第1、第2支持部材をクリップ状に開閉方向に動作させるためのスペースが不要であり、第1、第2支持部材を、第1、第2位置との間で相互に併進移動させるだけのスペースを確保するだけで足りる。したがって、送りねじクラッチ機構を採用する機器における省スペース化を促進することができる。
【0013】
本発明において、
前記第1、第2支持部材は、それぞれ、
表面及び裏面並びにこれらの周縁を接続する周縁面を有する板状部と、
該板状部の裏面の周縁部から該裏面に直交する方向に延び、その延びた先端部において、前記第1又は第2ハーフ部材を保持する複数本の棒状部とを備え、
前記第2支持部材の板状部は、前記第1支持部材の前記棒状部が嵌合する嵌合凹部を前記周縁面に備え、
前記第1、第2支持部材は、相互に前記併進移動の方向に相対移動し得るように案内し合う案内面を有し、
前記案内面は、前記第1、第2支持部材の前記第1、第2位置間での移動に際して相互に摺動し合う前記嵌合凹部、前記第1、第2支持部材の前記棒状部の側面、前記第1ハーフ部材の側面により構成され、
前記第1面は、前記第1支持部材の前記板状部の裏面により構成され、
前記第2面は、前記第2支持部材の前記板状部の表面により構成され、
前記付勢部材は、前記第2支持部材の前記板状部の裏面と前記第1ハーフ部材との間に介在して前記第1、第2支持部材を、前記第1位置に向かう方向に付勢するものであることが好ましい。
【0014】
これによれば、第1、第2支持部材の第1、第2位置間での併進移動を適切に実現しつつ、送りねじクラッチ機構をコンパクトに構成することができる。
【0015】
本発明において、
前記第2支持部材の前記板状部の板面は、矩形状の形状を有し、
前記第2支持部材は、前記棒状部として、
断面が矩形状で、前記板状部側の端面の一辺が前記板面の一辺の中央部を構成する1本の第1棒状部と、
断面が矩形状で、前記板状部側の端面の一辺が前記板面の前記一辺と反対側の辺の両端部を構成している2本の第2棒状部とを備え、
前記第2支持部材の前記板状部は、前記嵌合凹部として、
前記併進移動の方向に垂直な断面が直角三角形状で、該板状部における前記第1棒状部の両側の角部にそれぞれ設けられた2つの三角状凹部であって、各三角状凹部の一方の内壁が該第1棒状部の該板状部側端部の側面の一部を構成する該三角状凹部と、
前記併進移動の方向に垂直な断面が矩形状で、前記2本の第2棒状部における該板状部側の端部の対向する各側面により側壁が形成された1つの矩形状凹部とを備え、
前記第1、第2棒状部は、それぞれ、
前記第2支持部材の前記板状部と反対側の端部に設けられ、前記第2ハーフ部材に対向する内側面と、
前記内側面から突出した凸部とを備え、
前記第2ハーフ部材は、
前記第1棒状部の前記内側面及び前記2本の第2棒状部の前記内側面にそれぞれ対向する第1、第2側面と、
前記第1、第2側面にそれぞれ設けられ、前記第1、第2棒状部の前記凸部がそれぞれ嵌合可能な2つの凹条を備え、
各凹条及び対応する前記凸部は、該凹条に対して該凹条に沿った方向に該凸部をスライドさせることにより相互に嵌合して固定されるように構成され、
前記第1支持部材は、前記第2支持部材と同じ構成を有するのが好ましい。
【0016】
これによれば、第1支持部材の第1、第2棒状部を、それぞれ第2支持部材の矩形状凹部及び三角状凹部にスライドさせて嵌合し、第1、第2棒状部の凸部に第1、第2ハーフ部材の凹条をスライドさせて嵌合させるだけで、第1、第2支持部材と、第1、第2ハーフ部材とを結合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る送りねじクラッチ機構を示す斜視図である。
【
図2】
図1の送りねじクラッチ機構の内部を示す透明図である。
【
図3】
図1の送りねじクラッチ機構の第1、第2支持部材の斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、
図1の送りねじクラッチ機構の第1、第2ハーフ部材の斜視図である。
【
図4B】
図4Bは、該1、第2ハーフ部材を別の方向から見た斜視図である。
【
図5】
図1の送りねじクラッチ機構における第1、第2支持部材及び第1、第2ハーフ部材を組み合わせた様子を示す斜視図である。
【
図6】送りねじクラッチ機構の第1、第2支持部材が第1位置に位置しているときの様子を示す図である。
【
図7】送りねじクラッチ機構の第1、第2支持部材が第2位置に位置しているときの様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を用いて本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る送りねじクラッチ機構を示す。
図1に示すように、この送りねじクラッチ機構1は、送りねじ2からの送り対象物に対する動力の伝達を断続するものである。送り対象物としては、本実施形態では、点滴静脈注射を行う際に使用されるシリンジポンプのプランジャを押すドライブシャフト3が該当する。
【0019】
送りねじクラッチ機構1は、その主要部を収容するケース部としてのクラッチケース4を備える。クラッチケース4は、2本のスライドシャフト5によって送り方向に案内されている。
【0020】
図2は、送りねじクラッチ機構1の内部を示す。
図2に示すように、送りねじクラッチ機構1は、それぞれハーフナットを構成する第1、第2ハーフ部材6、7と、第1、第2ハーフ部材6、7をそれぞれの螺合面が対峙する姿勢で支持するとともに、後述する第1位置P1(
図6参照)と、第2位置P2(
図7参照)との間で併進移動し得るように互いに案内し合う第1、第2支持部材8、9とを備える。
【0021】
クラッチケース4は、第1、第2支持部材8、9を、第1、第2位置P1、P2の間で併進移動し得るように収容する。クラッチケース4は、ドライブシャフト3に固定される。また、送りねじクラッチ機構1は、第1、第2支持部材8、9を第1、第2位置P1、P2の間で併進移動させることにより第1、第2支持部材8、9の位置を第1、第2位置P1、P2の間で切り替える断続切替手段を備える。
【0022】
第1位置P1は、第1、第2ハーフ部材6、7が相互に近接又は当接して送りねじ2と螺合する送り部を形成する位置である。第2位置P2は、第1、第2ハーフ部材6、7が相互に離間して送りねじ2との螺合が解除される位置である。
図2では、第1、第2支持部材8、9が第1位置P1に位置しているときの状態が示されている。
【0023】
断続切替手段は、第1、第2支持部材8、9を、第1位置P1に向かう方向に付勢する付勢部材10と、第1、第2支持部材8、9にそれぞれ設けられて対向する第1、第2面11、12と、第1、第2面11、12の間に位置するカム部材13とを備える。付勢部材10として、本実施形態では、圧縮コイルばねが用いられる(
図6参照)。
カム部材13は、第1、第2面11、12の双方に接して回転することにより第1、第2面11、12間の間隔を増減させるカム面を有する。そして、該間隔の増減により、カム部材13は、第1、第2支持部材8、9を第1、第2位置P1、P2の間で移動させる。カム部材13の回転は、先端部がカム部材13に挿入して固定され、ドライブシャフト3内を通るクラッチシャフト14を回転させることにより行われる。
【0024】
図3は、第1、第2支持部材8、9を示す。
図3に示すように、第1、第2支持部材8、9は、表面8a及び裏面8b並びにこれらの周縁を接続する周縁面15を有する板状部16と、板状部16の裏面8bの周縁部から該裏面8bに直交する方向に延びた複数本(本実施形態では3本)の棒状部17とを備える。これらの棒状部17は、先端部において第1ハーフ部材6又は第2ハーフ部材7を保持する。板状部16は、板面が矩形状の形状を有する。本実施形態では、第1、第2支持部材8、9は、同じ構成及び形状を有する。
【0025】
第2支持部材9の板状部16は、第1支持部材8の棒状部17が嵌合する嵌合凹部25を周縁面に備える(
図5参照)。第1、第2支持部材8、9は、相互に前記併進移動の方向に相対移動し得るように案内し合う案内面24を有する。
【0026】
案内面24は、第1、第2支持部材8、9の第1、第2位置P1、P2間での移動に際して相互に摺動し合う嵌合凹部25、第1、第2支持部材8、9の棒状部17の側面、及び第1ハーフ部材6の側面により構成される。
【0027】
カム部材13のカム面と接触する第1面11は、第1支持部材8の板状部16の裏面8bにより構成され、第2面12は、第2支持部材9の板状部16の表面8aにより構成される。付勢部材10は、第2支持部材9の板状部16の裏面と第1ハーフ部材6との間に介在して第1、第2支持部材8、9を、第1位置P1に向かう方向に付勢する。
【0028】
第1、第2支持部材8、9は、棒状部17として、断面が矩形状で、板状部16側の端面の一辺が該板面の一辺の中央部を構成する1本の第1棒状部17aと、断面が矩形状で、板状部16側の端面の一辺が該板面の前記一辺と反対側の辺の両端部を構成している2本の第2棒状部17bとを備える。
【0029】
板状部16は、嵌合凹部25として、前記併進移動の方向に垂直な断面が直角三角形状で、板状部16における第1棒状部17aの両側の角部にそれぞれ設けられた2つの三角状凹部25aを備える。三角状凹部25aは、各三角状凹部25aの一方の内壁が第1棒状部17aの板状部16側端部の側面の一部を構成する。
【0030】
また、板状部16は、嵌合凹部25として、前記併進移動の方向に垂直な断面が矩形状で、2本の第2棒状部17bにおける板状部16側の端部の対向する各側面により側壁が形成された1つの矩形状凹部25bを備える。
【0031】
第1、第2支持部材8の第1、第2棒状部17a、17bは、それぞれ、第1、第2支持部材8の板状部16と反対側の端部に設けられ、第1、第2ハーフ部材7に対向する内側面と、内側面から突出した凸部18とを備える。
【0032】
図4A及び
図4Bは、第1、第2ハーフ部材6、7を異なる方向から見た様子を示す。
図4A及び
図4Bに示すように、第1、第2ハーフ部材6、7は、第1棒状部17aの内側面及び2本の第2棒状部17bの内側面にそれぞれ対向する第1、第2側面26、27と、第1、第2側面26、27にそれぞれ設けられ、第1、第2棒状部17a、17bの凸部18がそれぞれ嵌合可能な2つの凹条21を備える。
【0033】
各凹条21及び対応する凸部18は、該凹条21に対して該凹条21に沿った方向に該凸部18をスライドさせることにより相互に嵌合して固定されるように構成される。
【0034】
第1、第2ハーフ部材6、7は、矩形状の螺合面としての表面及びその反対側の裏面と、これらの4辺をそれぞれ接続する4つの側面とを有する直方体状の形状を有する。第1、第2ハーフ部材6、7の表面側には、送りねじ2と螺合する送りナットのねじの半周分を構成する半ねじ19が形成されており、その周方向両端部は、面取りされた面取り部20となっている。上記4つの側面のうちの送りねじ2の長さ方向に沿った2つの面が、上述の第1、第2側面26、27である。
【0035】
図4Bは、第1、第2ハーフ部材6、7を
図4Aとは別の方向から見た様子を示す。
図4Bに示すように、第1、第2ハーフ部材6、7の裏面には、円状凹部22が設けられる。第1ハーフ部材6の円状凹部22は、付勢部材10を受ける機能を有する。
【0036】
図5は、第1、第2支持部材8、9及び第1、第2ハーフ部材6、7を組み立てたときの様子を示す。この組立ては、例えば、次のようにして行われる。すなわち、まず、
図5のように、第2支持部材9の嵌合凹部25に第1支持部材8の棒状部17をスライドさせながら第2支持部材9に第1支持部材8を嵌合させる。
【0037】
次に、第1、第2支持部材9の棒状部17の凸部18に、第1、第2ハーフ部材6、7の凹条21を嵌合させる。これにより、第1、第2ハーフ部材6、7が、それぞれの螺合面が対峙する姿勢で第1、第2支持部材8、9により支持されて組み立てられた状態となる。
【0038】
組み立てられた第1、第2支持部材8、9及び第1、第2ハーフ部材6、7をドライブシャフト3と送りねじ2に組み付ける操作は、例えば次のようにして行われる。すなわち、まず、第1、第2支持部材8、9の板状部16の間にカム部材13を配置し、第2支持部材9の板状部16と第1ハーフ部材6との間に付勢部材10を配置する。これにより、付勢部材10が第1、第2支持部材8、9を、第1位置P1に向かう方向に付勢するので、第1、第2ハーフ部材6、7が相互に接して送りねじ2と螺合する送りナットを形成している状態となり、送りねじクラッチ機構1の主要部が構成される。
【0039】
次に、この主要部を、クラッチケース4に収納する。そして、クラッチケース4をスライドシャフト5により案内させながら、送りねじ2を、上記の形成された送りナットに螺合させ、回転させる。これにより、クラッチケース4がドライブシャフト3の端部に位置付けられ、ドライブシャフト3の内部に通されたクラッチシャフト14がカム部材13に連結される。これにより、送りねじクラッチ機構1の組付けが完了する。
【0040】
図6及び
図7は、送りねじクラッチ機構1の動作を示す。
図6に示すように、カム部材13が、クラッチシャフト14の回転角度に応じて、第1支持部材8の第1面11と、第2支持部材9の第2面12との間の距離が最小となる回転位置に位置付けられているとき、第1、第2支持部材8、9は、付勢部材10の付勢力により、第1位置P1に位置する。
【0041】
これにより、送りねじクラッチ機構1は、第1、第2ハーフ部材6、7が相互に接し、送りねじ2と螺合する送りナットを形成した接続状態となる。この状態で、送りねじ2を回転させて、回転量を制御することにより、ドライブシャフト3を任意の位置まで駆動することができる。
【0042】
一方、
図7に示すように、クラッチシャフト14を回転させて、第1支持部材8の第1面11と、第2支持部材9の第2面12との間の距離が最大となる回転位置に位置付けると、第1、第2支持部材8、9は、第2位置P2に位置する。これにより、送りねじクラッチ機構1は、第1、第2ハーフ部材6、7が相互に離間し、送りねじ2との螺合が解除された切断状態となる。
【0043】
これにより、シリンジポンプのプランジャを押すドライブシャフト3が自由にスライドシャフト5に沿った送り方向に移動可能となる。これにより、例えば、ドライブシャフト3をプランジャに対して容易に密接させて接続することが可能となる。
【0044】
以上のように、本実施形態によれば、第1、第2支持部材8、9を、第1、第2ハーフ部材6、7の螺合面が対峙する姿勢で併進移動させることにより、第1、第2支持部材8、9の位置が第1、第2位置P1、P2間で切り替えられる。この切替えにより、送りねじ2からのドライブシャフト3に対する動力の伝達が断続される。このため、第1、第2支持部材8、9は、動力伝達の断続に際してクリップ状に開閉動作することはない。
【0045】
これにより、第1、第2支持部材8、9をクリップ状に開閉方向に動作させるためのスペースが不要となり、第1、第2支持部材8、9を、第1、第2位置P1、P2との間で相互に併進移動させるだけのスペースを確保するだけで足りる。したがって、送りねじクラッチ機構1を採用する機器における省スペース化を促進することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の送りねじクラッチ機構は、ボールねじにより送り対象物を送る際に、送りねじと、ハーフ部材で構成される送りナットとの間の断続を切り替えることが必要とされる種々の場合に適用することができる。
【0047】
また、切替手段の付勢部材は、第1、第2支持部材を第2位置に向かう方向に付勢するものであってもよい。この場合、カム部材としては、第1、第2支持部材を、第1支持部材又は第1ハーフ部材に設けられた第1面と、第2支持部材又は第2ハーフ部材に設けられた第2面との間の間隔を増大させることにより第1位置P1に移動させ、減少させることにより第2位置P2に移動させるものが採用される。
【0048】
また、第1、第2ハーフ部材6、7のうちの一方のみがハーフナットを構成するものであってもよい。この場合、他方は、送りねじ2を該一方のハーフナットに螺合するように押し付けるものであれば足りる。また、第1面、第2面は、第1ハーフ部材や第2ハーフ部材に設けてもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…送りねじクラッチ機構、2…送りねじ、3…ドライブシャフト、4…クラッチケース、5…スライドシャフト、6…第1ハーフ部材、7…第2ハーフ部材、8…第1支持部材、8a…表面、8b…裏面、9…第2支持部材、10…付勢部材、11…第1面、12…第2面、13…カム部材、14…クラッチシャフト、15…周縁面、16…板状部、17…棒状部、17a…第1棒状部、17b…第2棒状部、18…凸部、19…半ねじ、20…面取り部、21…凹条、22…円状凹部、24…案内面、25…嵌合凹部、25a…三角状凹部、25b…矩形状凹部、26…第1側面、27…第2側面、P1…第1位置、P2…第2位置。