(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】酸素吸収性フィルム用外装袋
(51)【国際特許分類】
B65D 85/672 20060101AFI20240130BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240130BHJP
B65D 77/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B65D85/672
B65D65/40 D
B65D77/00 F
(21)【出願番号】P 2018203891
(22)【出願日】2018-10-30
【審査請求日】2021-09-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 祐史
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-079916(JP,A)
【文献】特開2013-103343(JP,A)
【文献】特開2014-221666(JP,A)
【文献】特開2004-175398(JP,A)
【文献】特開2002-308343(JP,A)
【文献】実公昭61-017015(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/672
B65D 65/40
B65D 77/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯に巻き取られた酸素吸収性フィルムのロールを、減圧状態で収納するための外装袋において、
前記外装袋は、内層側から順にヒートシール層/強度保持層/酸素バリア層/強度保持層を備えた積層フィルムから成り、
前記ヒートシール層がポリエチレンから成り、前記強度保持層がナイロンの二軸延伸フィルムから成り、前記酸素バリア層がアルミニウム箔から成り、
前記強度保持層の厚みが9~38μmの範囲にあり、且つ引張弾性率が980~4000MPaの範囲にあり、
前記ヒートシール層の厚みが30~150μmの範囲にあり、前記酸素バリア層の厚みが6~20μmの範囲にあり、前記外装袋のトータル厚みが50~200
μmの範囲にあり、
前記積層フィルムの引張強度が、80~120N/15mmであり、前記減圧状態における外装袋内の真空度は、ゲージ圧で-5~-100kPaの範囲であり、
前記外装袋は、前記酸素吸収性フィルムのロールの体積に対して1.2~8.0倍の容積を有することを特徴とする外装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収性フィルムのロールを、減圧状態に包装するための外装袋に関するものであり、より詳細には、酸素吸収性フィルムのロールの包装後に行う真空脱気に際してクラック等の発生が有効に防止された外装袋に関する。
【背景技術】
【0002】
包装容器の分野において、内容物の酸化や変質、或いはカビの発生を防止するために、外部からの酸素の透過を抑制するための酸素バリア性の他、容器内の残存酸素を吸収可能な酸素吸収性を具備する包装材料が広く使用されている。
このような酸素吸収性を有する包装材料は、マトリックス樹脂中に、鉄粉等の脱酸素剤や酸化性有機成分及び遷移金属触媒を含有する樹脂組成物から成り、脱酸素剤や酸化性有機成分が酸素と反応することによって酸素を吸収する。かかる酸素吸収反応は不可逆反応であり、いったん酸素と反応してしまった包装材料は、酸素吸収能力を喪失してしまうことから、酸素吸収性包装材料においては、製造直後から酸素との接触を抑制することが要求される。
【0003】
このような観点から、例えば下記特許文献1には、巻き芯に巻き取られたロール状の酸素吸収性フィルムを、酸素バリア性を有する外装袋に収納し、包装体内を減圧脱気することにより、酸素吸収性フィルムの酸素吸収能力の低下を抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外装袋内の酸素を取り除くために減圧脱気すると、外装袋が酸素吸収性フィルムのロール外周面に圧着することから、ロールのエッジ部分や巻芯等、凹凸が形成された箇所で外装袋に応力集中しやすい。特に中空の巻き芯を使用した場合には、外装袋は巻き芯の内部に入り込むようにして引き伸ばされる。かかる状態で一定期間経過すると、エッジ部分や巻き芯の中空部分に対応する箇所にクラックが発生し、ついには穴が発生する場合があった。
【0006】
従って本発明の目的は、ロール状の酸素吸収性フィルムを収納するための外装袋において、酸素吸収性フィルムの酸素吸収性能の低下を有効に抑制し得ると共に、外装袋内が減圧状態で一定期間経過した場合でも、クラックや穴あきの発生が有効に防止された酸素吸収性フィルム用外装袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、巻芯に巻き取られた酸素吸収性フィルムのロールを、減圧状態で収納するための外装袋において、
前記外装袋は、内層側から順にヒートシール層/強度保持層/酸素バリア層/強度保持層を備えた積層フィルムから成り、
前記ヒートシール層がポリエチレンから成り、前記強度保持層がナイロンの二軸延伸フィルムから成り、前記酸素バリア層がアルミニウム箔から成り、
前記強度保持層の厚みが9~38μmの範囲にあり、且つ引張弾性率が980~4000MPaの範囲にあり、
前記ヒートシール層の厚みが30~150μmの範囲にあり、前記酸素バリア層の厚みが6~20μmの範囲にあり、前記外装袋のトータル厚みが50~200mの範囲にあり、
前記積層フィルムの引張強度が、80~120N/15mmであり、前記減圧状態における外装袋内の真空度は、ゲージ圧で-5~-100kPaの範囲であり、
前記外装袋は、前記酸素吸収性フィルムロールの体積に対して1.2~8.0倍の容積を有することを特徴とする外装袋が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の酸素吸収性フィルム用外装袋においては、減圧状態で一定期間保管された場合でも、クラックや穴あきの発生が有効に防止される。特に中空の巻き芯を使用し、巻き芯の内部に外装袋が入り込んだ状態になってもクラックや穴あきが発生せず、外装袋内の減圧状態が維持され、酸素吸収性フィルムの酸素吸収性能を長期にわたって維持することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】比較例の外装袋において、保管後にクラックが発生している状態を示す写真である。
【
図2】比較例の外装袋において、保管後に穴が発生している状態を示す写真である。
【
図3】実施例の外装袋の、保管後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(外装袋)
本発明の酸素吸収性フィルム用外装袋は、巻き芯に巻き取られたロール状の酸素吸収性フィルムの酸素吸収性能を維持するために、減圧状態で酸素吸収性フィルムのロールを収納するため包装袋であり、酸素バリア層及び強度保持層を備え、且つ強度保持層が酸素バリア層よりも内側に位置することにより、減圧状態での外装袋のクラックや穴あき等の発生を防止することができ、外装袋内の減圧状態を長期にわたって維持し、酸素吸収性フィルムの酸素吸収性能を維持することが可能になる。
【0011】
[酸素バリア層]
酸素バリア層は、外装袋内への外気の侵入を阻止し得るものであり、包装容器の分野で使用されている従来公知の酸素バリア層を使用することができ、これに限定されないが、アルミニウムやスチール等の金属箔、酸化ケイ素,酸化アルミニウム,酸化ジルコニウム、シリカとアルミナの混合体,ダイヤモンドライクカーボン、アルミニウム等の蒸着層を形成した蒸着フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体、MXD6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリカルボン酸系ガスバリア性組成物等から成る有機系バリアフィルム、アルミナ,シリカ等の無機物とエチレンビニルアルコール共重合体、MXD6等のポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリカルボン酸等の有機物系材料を組み合わせた有機-無機ハイブリットバリアフィルム等を例示することができる。
尚、酸素バリア層として蒸着フィルムを用いる場合、蒸着フィルムの基材フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ナイロン等のポリアミド樹脂から成る延伸又は未延伸フィルムを使用することができ、後述する強度保持層を構成する延伸フィルムに蒸着膜を形成することもできる。
【0012】
本発明の外装袋においては、強度保持層を備えることから、特に減圧状態でクラックが生じやすい金属を用いた場合でも、クラックの発生が抑制できる。したがって、アルミニウム箔等の金属箔を、酸素バリア層として好適に使用することができ、優れた酸素バリア性を発現できる。
本発明において酸素バリア層の厚みは、アルミニウム箔を使用する場合には6~20μmの範囲、特に6~9μmの範囲にあることが望ましい。
【0013】
[強度保持層]
本発明の外装袋においては、強度保持層は外装袋の強度を向上し、減圧状態で、応力集中が生じた場合でも、クラックや穴あきの発生を有効に抑制するものである。
このような作用効果を発現可能な強度保持層としては、厚みが9~38μm、特に12~15μmの範囲にあり、フィルムのMD方向及びTD方向の両方向の引張弾性率(JIS K7127準拠)が900~5000MPa、特に980~4000MPaの範囲にある延伸フィルムを好適に使用できる。強度保持層の厚みや引張弾性率が、上記範囲よりも小さい場合には、外装袋に十分な強度を付与することができない。また強度保持層の厚みや引張弾性率が上記範囲よりも大きい場合には、経済性に劣るだけでなく、減圧する際に、効率よく圧縮されず、減圧状態に圧縮された際に生じるシワが大きくなり、酸素吸収性フィルムのロールにシワを転写するおそれがある。
好適な強度保持層としては、ナイロン、PETやPBT等のポリエステル、ポリプロピレン等から成るフィルムを二軸延伸した二軸延伸フィルムを例示できる。
【0014】
[積層構造]
本発明の外装袋においては、上述した酸素バリア層及び強度保持層を少なくとも備えて成り、特に強度保持層が酸素バリア層よりも内層側に位置することが重要である。これにより、減圧による外装袋の引き込みの影響を直接酸素バリア層に与えることが低減され、アルミニウム箔等の金属箔を酸素バリア層として用いた場合でもクラックの発生を有効に抑制できる。
また強度保持層は、酸素バリア層よりも内層側に設けるだけでなく、外層側にも設けることもでき、これにより、外部から衝撃を受けた場合にも酸素バリア層にクラックが発生することを有効に防止することができる。外層に強度保持層を形成しない場合には、酸素バリア層の種類にもよるが、酸素バリア層上に、ポリオレフィン等から成る耐湿性樹脂層を形成してもよい。
外装袋は、最内層にヒートシール層を有することが外装袋の成形性の点から望ましく、ヒートシール層は、従来公知のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンから成ることができる。ヒートシール層の厚みは、30~150μmの範囲にあることが好ましく、30~100μmの範囲にあることがより好ましい。上記範囲よりもヒートシール層の厚みが薄い場合には、十分なヒートシール性を得ることができず、その一方上記範囲よりもヒートシール層の厚みが厚い場合には、経済性に劣るだけでなく、外装袋が減圧により圧縮された際に生じるシワが大きくなるおそれがある。
【0015】
減圧により圧縮されてもクラック等の破損がなく、酸素バリア性や水分バリア性等を維持可能な外装袋としては、これに限定されないが、内層側から順にヒートシール層/強度保持層/酸素バリア層/強度保持層、ヒートシール層/強度保持層/酸素バリア層/耐湿性樹脂層、ヒートシール層/強度保持層/蒸着層/基材フィルム等の層構成を有する積層フィルムから成る外装袋を例示できる。
上記積層フィルムは、60N/15mm以上、特に80~120N/15mmの引張強度を有することが好ましい。上記範囲よりも引張強度が小さい場合には、上記範囲にある場合に比して、クラックや穴あきの発生のおそれがあり、一方上記範囲よりも引張強度が大きいと、上記範囲にある場合に比して、減圧状態でのシワが大きくなり、酸素吸収性フィルムのロール表面にシワを転写するおそれがある。
外装袋のトータル厚みは、上述した酸素バリア層及び強度保持層を構成する樹脂等の種類によっても異なり、これに限定されないが、50~200μmの範囲にあることが好ましい。
【0016】
外装袋は、予めフィルムの周囲をヒートシール等で接合し、袋状にした成形されたものに限定されず、酸素吸収性フィルムのロールを外装袋を構成するフィルムで包んだ後に、該フィルムの周囲を接合して袋状とし、酸素吸収性フィルムのロールの外装袋への収納と外装袋の成形を同時に行ってもよい。
また外装袋は、減圧状態でのシワの発生を低減するという観点からは、酸素吸収性フィルムのロールの体積に対して1.2~8.0倍程度の容積を有することが好ましい。
【0017】
(酸素吸収性フィルム)
本発明における酸素吸収性フィルムは、酸素と反応することによって酸素を捕捉し得る機能を有する限り、制限なく対象となる。例えば、酸化性有機成分及び遷移金属触媒を含有する酸素吸収性樹脂組成物から成るフィルムや、鉄粉等の脱酸素剤を含有する樹脂フィルム等の従来公知の酸素吸収性フィルムを挙げることができる。また酸素吸収性フィルムの単層フィルムの他、酸素吸収性フィルムから成る層を含有する積層フィルムであってもよい。
また酸素吸収性フィルムをロール状に巻き取る巻芯は、従来公知の紙製、プラスチック製、金属製等の巻き芯を制限なく使用することができる。尚、中空の巻き芯を用いた場合、減圧状態で保存されると、巻き芯の中空部分にクラックや穴が発生しやすいが、本発明の外装袋は強度保持層の存在により、クラックや穴の発生が抑制されているため、中空の巻芯を用いることができる。
【0018】
(酸素吸収性フィルム包装体)
本発明の外装袋は、巻芯に巻きつけられた酸素吸収性フィルムのロールを収納し、これを真空ポンプ等により外装袋内をできる限り脱気し、減圧された状態で密封された酸素吸収性フィルム包装体に使用される。
減圧状態における外装袋内の真空度は、外装袋の強度が向上していることから、ゲージ圧で-5~-100kPaの範囲にすることができる。本発明の外装袋は、後述する実施例の結果からも明らかなように、高い真空度においてもクラックや穴あきを発生することが有効に防止されている。
また、酸素吸収性フィルムのロールを外装袋で包装して成る酸素吸収性フィルム包装体においては、外装袋内を減圧することに伴い、外装袋が圧縮されてシワが発生された状態で酸素吸収性フィルムのロールに密着することから、緩衝材を介して酸素吸収性フィルムのロールを外装袋に収納することにより、酸素吸収性フィルムのロールに緩衝材のシワが転写されることを防止することもできる。
【実施例】
【0019】
(実験方法)
中空の巻き芯に酸素吸収性フィルムが巻取られたロール体を、下記表1に示す積層体から成る外装袋に収納し、表2に示す真空度となるように、真空ポンプを用いて減圧し、密封した。なお、表中の真空度はゲージ圧表記で記載した。
得られた酸素吸収性フィルム包装体を、常温常圧の条件下で1120km輸送後の外観(約18日経過後)の外観を確認した。結果を表2及び
図1~3に示す。
尚、強度保持層を構成するナイロンの引張弾性率はMD方向1470MPa、TD方向980MPaであった。
【0020】
【0021】