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  • 特許-化粧シート及び化粧部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】化粧シート及び化粧部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/12 20060101AFI20240130BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240130BHJP
   E04F 13/18 20060101ALI20240130BHJP
   E04F 13/10 20060101ALI20240130BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20240130BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B7/12
B32B27/40
E04F13/18 A
E04F13/10 A
E04F13/12 A
E04F15/16 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018238100
(22)【出願日】2018-12-20
(65)【公開番号】P2020100016
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】冨永 孝史
(72)【発明者】
【氏名】折原 隆史
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-058284(JP,A)
【文献】特開2006-021531(JP,A)
【文献】特開2016-163958(JP,A)
【文献】特開2012-131112(JP,A)
【文献】特開2011-207019(JP,A)
【文献】特開2016-101663(JP,A)
【文献】特開2017-048264(JP,A)
【文献】特開平05-261853(JP,A)
【文献】特開2020-037222(JP,A)
【文献】特開2014-040013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
E04F 13/10-13/12
E04F 13/18
E04F 15/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色オレフィン系樹脂層と、
前記着色オレフィン系樹脂層の表面側に設けられた絵柄インキ層と、
前記絵柄インキ層の表面側に設けられたドライラミネート接着剤層と、
前記ドライラミネート接着剤層の表面側に設けられたアンカーコート層と、
前記アンカーコート層の表面側に設けられた透明アクリル樹脂層と、を備え、
前記絵柄インキ層は、ポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含み、
前記アンカーコート層は、アクリルポリオールとイソシアネートからなるアクリル系ウレタン樹脂を含み、
前記アンカーコート層に含まれる前記アクリル系ウレタン樹脂のガラス転移温度は、95℃以上105℃以下の範囲内であり、
前記ドライラミネート接着剤層は、アクリル系ウレタン樹脂を含み、
前記アンカーコート層と前記ドライラミネート接着剤層と前記絵柄インキ層との三層同士は、隣接して積層されることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明アクリル樹脂層は、最表層側にフッ素樹脂が配置された透明フッ素アクリル共押出しフィルムであることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記着色オレフィン系樹脂層は、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、またはブロックポリプロピレン樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記着色オレフィン系樹脂層は、アタクチックポリプロピレン樹脂をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記着色オレフィン系樹脂層の裏面側に設けられたプライマー層をさらに備え、
前記プライマー層は、シリカ、硫酸バリウム、または炭酸カルシウムを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の化粧シート。
【請求項6】
木質系材料または金属系材料により形成された基板と、
前記基板の表面側に設けられた請求項1から5のいずれか1項に記載の化粧シートと、を備えることを特徴とする化粧部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シート及び化粧部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、玄関ドアやエクステリア等に用いられる建材用途の化粧シートとしては、耐候性向上のために、印刷を施した着色オレフィン系樹脂層上に、ドライラミネート接着剤を介して、透明アクリル樹脂層が最表層に配置されたものがある(例えば特許文献1参照)。
しかし、特許文献1に記載の化粧シートでは、ドライラミネート接着剤では、透明アクリル樹脂層と着色オレフィン系樹脂層との密着力が不十分であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-222819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、透明アクリル樹脂層と着色オレフィン系樹脂層との密着力に優れた化粧シート及び化粧部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)着色オレフィン系樹脂層と、(b)着色オレフィン系樹脂層の表面側に設けられた絵柄インキ層と、(c)絵柄インキ層の表面側に設けられたドライラミネート接着剤層と、(d)ドライラミネート接着剤層の表面側に設けられたアンカーコート層と、(e)アンカーコート層の表面側に設けられた透明アクリル樹脂層とを備え、(f)絵柄インキ層は、ポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含むことを特徴とする化粧シートであることを要旨とする。
また、本発明の他の態様は、(a)木質系材料又は金属系材料により形成された基板と、(b)基板の表面側に設けられた上記した化粧シートと、を備える化粧部材であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、透明アクリル樹脂層とドライラミネート接着剤層との間にアンカーコート層を設けるとともに、絵柄インキ層にポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含めたため、透明アクリル樹脂層と着色オレフィン系樹脂層との密着力に優れた化粧シート及び化粧部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧部材を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態に係る化粧シート及び化粧部材について、図面を参照しつつ説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識を基に設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた形態も、本発明の範囲に含まれる。また、各図面は、理解を容易にするため適宜誇張して表現している。
【0009】
(構成)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る化粧部材10は、基板11と、基板11の表面11a側に設けられた化粧シート13と、を備えている。
(基板)
基板11の材料としては、例えば、木質系材料、金属系材料を用いることができる。木質系材料としては、例えば、木材単板、木材合板、集成材、パーティクルボード、中密度繊維板、硬質繊維板を採用することができる。また、金属系材料としては、例えば、鋼板、真鍮板、アルミニウム板、ジュラルミン板、ステンレス板を採用することができる。基板11と化粧シート13との間には、必要に応じて、例えば、接着剤層を設けてもよい。
【0010】
(化粧シート)
図1に示すように、本発明の実施形態に係る化粧シート13は、着色オレフィン系樹脂層136と、着色オレフィン系樹脂層136の表面136a側に設けられた絵柄インキ層135と、絵柄インキ層135の表面135a側に設けられたドライラミネート接着剤層134と、ドライラミネート接着剤層134の表面134a側に設けられたアンカーコート層133と、アンカーコート層133の表面133a側に設けられた透明アクリル樹脂層132とを備える。化粧シート13の厚さは40μm以上300μm以下が好ましい。
また、透明アクリル樹脂層132の表面132aには、エンボス加工により形成された凹凸模様139が設けられている。凹凸模様139としては、例えば、絵柄インキ層135の絵柄と同調した模様や、絵柄と非同調の模様を用いることができる。凹凸模様139の凹凸の深さは、耐汚染性能や触感性能等の面から、10μm以下が好ましい。
【0011】
(着色オレフィン系樹脂層)
着色オレフィン系樹脂層136の材料としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで基材に使用されている熱可塑性樹脂と同様のものを使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂等、或いはこれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用できる。
【0012】
ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した多くの種類から、化粧シート13の使用目的等に応じて適宜選択して使用すればよい。特に、一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわち、プロピレンを主成分とする単独又は共重合体である。例えば、ホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独又は適宜配合したり、それらに更にアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1又はオクテン-1のコモノマーの1種又は2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体等を例示できる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体又はその水素添加物等の改質剤を適宜添加できる。
【0013】
なお、着色オレフィン系樹脂層136は、基板11の表面11aの色のばらつきや欠陥等を隠蔽する場合には、隠蔽性の不透明に着色されたものが好ましい。また、基板11の表面11aの質感を活かす場合には、着色オレフィン系樹脂層136の表面11aを透視可能な程度の透明性を有するものが好ましい。
【0014】
(絵柄インキ層)
絵柄インキ層135は、化粧シート13に絵柄による意匠性を付与するための層であって、ポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含んだ層である。絵柄インキ層135は、印刷インキやコーティング剤等を用いて形成される。印刷インキ等としては、例えば、ポリカプロラクトンポリオールにイソシアネート硬化剤を配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキを使用することができる。印刷方法としては、例えば、グラビア印刷法又はオフセット印刷法等を用いることができる。また、絵柄としては、任意の絵柄を用いることができ、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様等、或いはこれらの2種類以上の組み合わせ等を用いることできる。
なお、ポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートとの比率は、密着力を考慮した場合、ポリカプロラクトンポリオール:イソシアネートの比率が、100:10~100:1が好ましい。特に、ポリカプロラクトンポリオール:イソシアネートの比率が、100:6~100:4がより好ましい。
【0015】
(ドライラミネート接着剤層)
ドライラミネート接着剤層134は、着色オレフィン系樹脂層136(下台)と透明アクリル樹脂層132(上台)とを接着させるための層である。ドライラミネート接着剤層134は、ドライラミネート接着剤を用いて形成される。ドライラミネート接着剤としては、特に制限はなく、従来の化粧シートでドライラミネート接着剤層に使用されている接着剤と同様のものを使用できる。例えば、ポリカーボネートポリオールとイソシアネートからなるポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いることができる。ポリカーボネート系ウレタン樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤を使用できる。
なお、ポリカーボネートポリオールとイソシアネートとの比率は、密着力を考慮した場合、ポリカーボネートポリオール:イソシアネートの比率が、6:1~10:1が好ましい。特に、ポリカーボネートポリオール:イソシアネートの比率が、7:1~9:1がより好ましい。
【0016】
(アンカーコート層)
アンカーコート層133は、絵柄インキ層135とドライラミネート接着剤層134との密着性を向上させるための層である。例えば、ドライラミネート接着剤として、ポリカーボネート系ウレタン樹脂を用いた場合、アンカーコート層133は、ポリカーボネート系ウレタン樹脂に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、アクリルポリオールとイソシアネートからなるアクリル系ウレタン樹脂を用いることができる。ラミネート後に架橋効果させることにより、外装用途等における高温の使用条件下でも、接着強度を失わず、十分な耐剥離性を維持できる。アクリル系ウレタン樹脂としては、例えば、ガラス転移温度が100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするアンカー剤を使用できる。アクリル系樹脂(アクリルポリオール)は、密着性及び耐熱性の観点から、ガラス転移温度が95℃~105℃のものが好ましい。ガラス転移温度が低すぎる場合、耐熱性が劣り、温水に浸漬されることで、空隙が発生し、絵柄インキ層135とドライラミネート接着剤層134との密着力が低下する。
アクリルポリオールとイソシアネートとの比率は、密着力を考慮した場合、アクリルポリオール:イソシアネートの比率が、8~12:1が好ましい。特に、アクリルポリオール:イソシアネートの比率が、9~11:1がより好ましい。
【0017】
(透明アクリル樹脂層)
透明アクリル樹脂層132は、化粧シート13の耐候性を向上させるための層である。透明アクリル樹脂層132は、透明アクリル樹脂を用いて形成される。透明アクリル樹脂としては、特に制限はなく、従来の化粧シートで透明アクリル樹脂層に使用されている透明アクリル樹脂と同様のものを使用できる。例えば、透明アクリル樹脂フィルムを用いることができる。特に、熱による光沢変化(耐熱性)の観点から透明アクリル樹脂層132の最表層側にフッ素樹脂が配置された透明フッ素アクリル共押出しフィルムが好ましい。
【0018】
また、透明アクリル系樹脂フィルムを構成するアクリル系樹脂としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル等のアクリル酸誘導体を主成分として単独又は共重合して得られるものが使用可能である。特に、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステルを主成分とする樹脂であって、例えば、メタクリル酸ブチル等のメタクリル酸の長鎖アルキルエステルや、アクリル酸メチル等のアクリル酸エステル、メタクリル酸又はアクリル酸等から選ばれる単量体を共重合成分として添加したり、スチレン-ブタジエンゴム又はメタクリル酸メチル-ブタジエンゴム等のゴム成分をグラフト共重合、ブロック共重合若しくはブレンドして、柔軟性や熱成形性を改善してなる樹脂等を好適に使用することができる。
【0019】
フッ素樹脂と透明アクリル樹脂との厚さの比率は、物性(耐熱性等)やコストを考慮した場合、フッ素樹脂:透明アクリル樹脂=5:43~47が好ましい。特に、フッ素樹脂:透明アクリル樹脂=5:44~46がより好ましい。なお、透明アクリル樹脂層132は、透明アクリル樹脂層132の裏面132b側に配置されているシート等を透視可能な程度の透明性を有するものが好ましい。例えば、無色透明、有色透明、半透明とする。
【0020】
(プライマー層)
プライマー層137は、基板11との接着に用いられる接着剤138との密着性を向上させるための層である。例えば、基板11が木質系材料からなる場合には、接着剤として、酢酸ビニルエマルジョン系、2液硬化型ウレタン系等の接着剤138が使用されるため、プライマー層137は、これらの接着剤138に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。例えば、ウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を採用することができる。特に、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとの配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤等が好ましい。また、シリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加すると、巻取保存時のブロッキングの防止や、投錨効果による接着力の向上に有効である。
【0021】
(凹凸模様)
凹凸模様139は、化粧シート13の表面に立体的な意匠感を付与するためのものである。凹凸模様139としては、任意の凹凸形状を用いることができる。例えば、木目導管状、石目状、布目状、抽象柄状、和紙状、スウェード状、皮革状、梨地状、砂目状、ヘアーライン状、平行直線群、或いはこれらの組み合わせ等を用いることができる。また、凹凸模様139の形成方法としては、例えば、着色オレフィン系樹脂層136の表面136aに対する透明アクリル樹脂層132の積層前、積層後又は積層と同時に行われる、ダブリングエンボス法、押出ラミネート同時エンボス法等を採用することができる。
【0022】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る化粧シート13は、着色オレフィン系樹脂層136と、着色オレフィン系樹脂層136の表面136a側に設けられた絵柄インキ層135と、絵柄インキ層135の表面135a側に設けられたドライラミネート接着剤層134と、ドライラミネート接着剤層134の表面134a側に設けられたアンカーコート層133と、アンカーコート層133の表面133a側に設けられた透明アクリル樹脂層132とを備え、絵柄インキ層135が、ポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含むようにした。それゆえ、化粧シート全体において耐加水分解性が向上し、透明アクリル樹脂層132と着色オレフィン系樹脂層136との密着力に優れた化粧シート13を提供できる。
【0023】
また、本発明の実施形態に係る化粧シート13は、ドライラミネート接着剤層134は、ポリカーボネートポリオールとイソシアネートからなるポリカーボネート系ウレタン樹脂を含み、アンカーコート層133は、アクリルポリオールとイソシアネートからなるアクリル系ウレタン樹脂を含むようにした。それゆえ、ドライラミネート接着剤層134が加水分解し難く、加水分解への耐久性を向上できる。ポリカーボネートポリオールとイソシアネートとの比率は、加水分解の点から、ポリカーボネートポリオール:イソシアネート=14~18:1が好ましい。特に、ポリカーボネートポリオール:イソシアネート=15~17:1がより好ましい。
【0024】
さらに、本発明の実施形態に係る化粧シート13は、透明アクリル樹脂層132を、最表層側にフッ素樹脂が配置された透明フッ素アクリル共押出しフィルムとした。それゆえ、化粧シート13の耐熱性を向上でき、熱による光沢変化を抑制することができる。
また、本発明の実施形態に係る化粧部材10は、木質系材料または金属系材料により形成された基板11と、基板11の表面11a側に設けられた化粧シート13と、を備えるようにした。それゆえ、密着力に優れた化粧部材10を提供することができる。
【0025】
[実施例]
以下に、本発明の実施形態に係る化粧部材10の実施例及び比較例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
まず、着色オレフィン系樹脂層136として、着色ポリプロピレン樹脂フィルム(リケンテクノス株式会社製「リベストTPO」)を用意した。着色オレフィン系樹脂層136の厚さは、60μmとした。続いて、着色オレフィン系樹脂層136の一方の面(表面136a)に、グラビア印刷法で、印刷インキを塗布して絵柄インキ層135を形成した。印刷インキとしては、ポリカプロラクトンポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を、5重量%配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ株式会社製)を用いた。
続いて、透明アクリル樹脂層132として、透明アクリル樹脂フィルム(三菱レイヨン株式会社製「HBS-006」)を用意した。続いて、透明アクリル樹脂層132の一方の面(裏面132b)に、グラビアコート法で、ガラス転移温度が100℃のアクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤であるアンカー剤(DIC株式会社製「UCクリヤー」)を塗工してアンカーコート層133を形成した。アンカー剤の乾燥後の塗布量は、1g/m2になるようにした。
【0027】
続いて、絵柄インキ層135の表面135aに、ポリカーボネート系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤を塗布してドライラミネート接着剤層134を形成した。ウレタン系接着剤の乾燥後の塗布量は、6g/m2になるようにした。そして、ドライラミネート接着剤層134を介して、アンカーコート層133とドライラミネートした。これにより、実施例1の化粧シート13を作製した。
続いて、基板11として、アルミニウム板を用意した。基板11の厚さは、1mmとした。続いて、基板11の一方の面(表面11a)に、接着剤138を介して、着色オレフィン系樹脂層136を対向させて、化粧シート13を張り合わせた。接着剤138としては、2液硬化性ウレタン系接着剤を用いた。2液硬化性ウレタン系接着剤の乾燥状態での塗布量は、25g/m2となるようにした。これにより、実施例1の化粧部材10を製作した。
【0028】
(実施例2)
実施例2では、透明アクリル樹脂層132として、最表層側にフッ素樹脂が配置された透明フッ素アクリル共押出しフィルム(三菱レイヨン株式会社製「FBS-006」)を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧部材10を作製した。
(実施例3)
実施例3では、ドライラミネート接着剤層134として、アクリル系樹脂を主鎖とするウレタン系接着剤を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧部材10を作製した。
【0029】
(比較例1)
比較例1では、絵柄インキ層135の印刷インキとして、ポリエステルポリオール系ビヒクルにイソシアネート硬化剤を3重量%配合してなる2液硬化型ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ株式会社製)を用いた。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧部材10を作製した。
(比較例2)
比較例2では、アンカーコート層133を省略した。それ以外は、実施例1と同じ材料・手順で化粧部材10を作製した。
【0030】
(性能評価)
実施例1~3、比較例1、2の化粧部材10に対して、以下の性能評価を行った。
(ダンプヒート試験)
ダンプヒート試験では、IEC-61215/JIS C 8990 10.13に準拠して、温度85℃、湿度85%の環境下に化粧部材10を1000時間放置した後、化粧部材10の透明アクリル樹脂層132にクロスカットを行った。クロスカット後、透明アクリル樹脂層132の浮きや剥がれがなかった場合を合格「○」とし、透明アクリル樹脂層132の浮きや剥がれがあった場合を不合格「×」とした。また、透明アクリル樹脂層132の浮きや剥がれが僅かであった場合も合格「△」とした。
【0031】
(メタルウェザー試験)
耐候性試験では、化粧部材10に対して、ライトモード(照度65W/cm2、ブラックパネル温度53℃、湿度50%、20時間)→シャワー30秒→湿潤モード(ブラックパネル温度30℃、湿度98%、4時間)→シャワー30秒のサイクルを63回行った後、化粧部材10の透明アクリル樹脂層132にクロスカットを行った。クロスカット後、透明アクリル樹脂層132の浮きや剥がれがなかった場合を合格「○」とし、透明アクリル樹脂層132の浮きや剥がれがあった場合を不合格「×」とした。
(耐熱性試験)
耐熱性試験では、化粧部材10を、温度80℃の環境下に500時間放置した後、外観の判定を行った。化粧部材10の光沢に変化がなかった場合を合格「○」「◎」とし、化粧部材10の光沢に変化があった場合を不合格「×」とした。
【0032】
(評価結果)
これらの評価結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
表1に示すように、実施例1の化粧部材10では、ダンプヒート試験及び耐熱試験の評価結果が共に合格「○」となり、メタルウェザー試験の評価結果が合格「◎」となり、総合判定が合格「○」となった。また、実施例2の化粧部材10では、ダンプヒート試験が合格「○」となり、メタルウェザー試験及び耐熱試験の評価結果が共に合格「◎」となり、総合判定が合格「○」となった。
さらに、実施例3の化粧部材10では、ダンプヒート試験が合格「△」となり、メタルウェザー試験及び耐熱試験の評価結果が共に合格「○」となり、総合判定が合格「△」となった。
【0035】
一方、比較例1の化粧部材10では、メタルウェザー試験及び耐熱試験の評価結果は共に合格「○」となったが、ダンプヒート試験の評価結果が不合格「×」となり、総合判定が不合格「×」となった。なお、ダンプヒート試験の評価結果が不合格「×」となった理由については、ポリエステルポリオール系ビヒクルの加水分解による耐久劣化によるものと考えられる。
また、比較例2の化粧部材10では、アンカーコート層133を省略したため、加水分解に対する耐久性が低く、ダンプヒート試験及びメタルウェザー試験が不合格「×」となった。
【0036】
これに対し、実施例1~3の化粧部材10は、透明アクリル樹脂層132とドライラミネート接着剤層134との間にアンカーコート層133を設けるとともに、絵柄インキ層135にポリカプロラクトンポリオールとイソシアネートからなるポリカプロラクトン系ウレタン樹脂を含めたため、透明アクリル樹脂層132とドライラミネート接着剤層134との密着力が向上した。そのため、ダンプヒート試験、メタルウェザー試験及び耐熱試験の評価結果が合格、即ち「△」「○」「◎」となった。このように、化粧部材10では、(1)加水分解に対する耐久性の強い材料を使用しており、且つ(2)ドライラミネート接着剤層134とアンカーコート層133との間に架橋反応による結合を形成させることで層間の密着力を向上させている。
以上のように、実施例1~3の化粧部材10は、比較例1、2の化粧部材10よりも、密着性、加水分解に対する耐久性及び光沢変化に対する耐熱性が良好であることが確認された。
【符号の説明】
【0037】
10…化粧部材、11…基板、11a…表面、13…化粧シート、132…透明アクリル樹脂層、132a…表面、132b…裏面、133…アンカーコート層、133a…表面、134…ドライラミネート接着剤層、134a…表面、135…絵柄インキ層、135a…表面、136…着色オレフィン系樹脂層、136a…表面、137…プライマー層、138…接着剤、139…凹凸模様
図1