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  • 特許-濃縮システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】濃縮システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20230101AFI20240130BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20240130BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/58
B01D65/02
C02F1/44 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019166480
(22)【出願日】2019-09-12
(65)【公開番号】P2021041359
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 佑己
(72)【発明者】
【氏名】合田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 崇人
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10308524(US,B1)
【文献】特表2019-504763(JP,A)
【文献】特開2014-161797(JP,A)
【文献】特開2018-065114(JP,A)
【文献】特開昭48-013278(JP,A)
【文献】特開2013-126635(JP,A)
【文献】特開2003-284929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00 - 71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透モジュールと、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記濃縮原液を第1対象液として所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、を備える濃縮システムであって、
前記濃縮システムは、互いに並列的に接続された複数の前記半透膜モジュールと、
前記半透膜を洗浄するための洗浄液が貯留された洗浄液タンクと、
前記半透膜モジュールの前記第1室に前記第1対象液を供給するための流路と、前記半透膜モジュールの前記第1室に前記洗浄液を供給するための流路と、を切り替えるための流路切り換え装置と、
複数の前記半透膜モジュールから選択される少なくとも1つの前記半透膜モジュールについて、所定のタイミングで、前記流路切り換え装置によって、一部の前記半透膜モジュールに対する前記第1対象液の供給を停止し、前記半透膜の洗浄を実施するように制御する、制御機構と、をさらに備える、濃縮システム。
【請求項2】
前記半透膜モジュールは、互いに並列的に接続された複数の前記半透膜モジュールからなる半透膜モジュール群である、請求項1に記載の濃縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、逆浸透(RO)法を用いた淡水化処理に必要なエネルギーを低下させること等を目的として、半透膜モジュールの第1室に高圧の対象液を流し、第2室に低圧の対象液を流して、第1室内の対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室内の対象液に移行させることで、第1室から濃縮された対象液を排出し、第2室から希釈された対象液を排出する膜分離方法(ブラインコンセントレーション)が検討されている(例えば、特許文献1:特開2018-1110号公報参照)。
【0003】
また、ROモジュールから排出される濃縮液をさらに高圧で運転可能な半透膜モジュールの第1室に流して、上記のブラインコンセントレーション(BC)により濃縮液をRO法よりも超高圧条件でさらに濃縮する濃縮システムも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-1110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブラインコンセントレーションに用いられる半透膜モジュールにおいて、半透膜は、対象液の膜分離処理量に応じて経時的に表面に濁質(例えば、微粒子、微生物、スケール成分)等の不純物が付着し、分離性能(濾過効率)が低下する。そのため、半透膜モジュールの半透膜は、不純物の付着の程度に応じて一定時間毎に洗浄されることが望ましい。
【0006】
しかし、実際のプラントにおいては、稼働率が重要視されるため、稼働率低下を避けるために洗浄頻度が少なくなり、その結果、不純物の付着度合に応じた適切なタイミングでの半透膜の洗浄が実行され難くなることが懸念される。洗浄のタイミングが遅れることで半透膜の状態を十分に回復させることができなくなり、その結果、半透膜モジュールの分離性能が低下したり、寿命が短くなったりする可能性がある。また、反対に、洗浄頻度が必要以上に多くなった場合は、処理効率が低下してしまうことが懸念される。
【0007】
したがって、本発明は、逆浸透(RO)モジュールから排出される濃縮液をブラインコンセントレーション(BC)によりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、稼働率をできる限り高くしつつ、BCに用いられる半透膜モジュールを適切なタイミングで洗浄することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透モジュールと、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記濃縮原液を第1対象液として所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールと、を備える濃縮システムであって、
前記濃縮システムは、複数の前記半透膜モジュールを備え、
複数の前記半透膜モジュールから選択される少なくとも1つの前記半透膜モジュールについて、所定のタイミングで、一部の前記半透膜モジュールに対する前記第1対象液の供給を停止し、前記半透膜の洗浄を実施するように制御する、制御機構をさらに備える、濃縮システム。
【0009】
(2) さらに、前記半透膜モジュールに接続された流路を切り替えるための流路切り換え装置を備える、(1)に記載の濃縮システム。
【0010】
(3) さらに、前記半透膜を洗浄するための洗浄液が貯留された洗浄液タンクを備える、(1)または(2)に記載の濃縮システム。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、逆浸透(RO)モジュールから排出される濃縮液をブラインコンセントレーション(BC)によりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、逆浸透(RO)モジュールから排出される濃縮液をブラインコンセントレーション(BC)によりさらに濃縮する濃縮システムにおいて、稼働率をできる限り高くしつつ、BCに用いられる半透膜モジュールを適切なタイミングで洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の濃縮システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0014】
<濃縮システム>
図1を参照して、本実施形態の濃縮システムは、逆浸透モジュール2と、複数の半透膜モジュール1a,1b,1cと、制御機構3と、を備える。
【0015】
逆浸透モジュール2では、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜20を介して水を分離および回収し、濃縮された原液である濃縮原液を排出する。
半透膜モジュール1a,1b,1cは、それぞれ、半透膜10と、半透膜で仕切られた第1室11および第2室12と、を有し、濃縮原液を第1対象液として所定の圧力で第1室11に流し、第2対象液を所定の圧力(第1液の圧力)よりも低い圧力で第2室12に流すことで、第1室11内の第1対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室12内の第2対象液に移行させ、第1室11から濃縮液を排出し、第2室12から希釈液を排出する。
制御機構3は、複数の半透膜モジュールから選択される少なくとも1つの半透膜モジュールについて、所定のタイミングで、一部の半透膜モジュールに対する第1対象液の供給を停止し、半透膜の洗浄を実施するように制御する。
【0016】
〔逆浸透モジュール〕
本実施形態の濃縮システムは、逆浸透(RO)モジュール2の上流側に、高圧ポンプ2aを備える。高圧ポンプ2aは、原液を所定の圧力に昇圧してROモジュール2の第1室21に供給する。ROモジュール2は、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透(RO)膜20を介して水(透過水)を第2室22側へ分離することで、濃縮された原液である濃縮原液を第1室21から排出し、水を第2室22から排出する。
【0017】
本明細書において、「原液」は、ROモジュール2に供給される水を含む液体であれば特に限定されず、溶液および懸濁液のいずれであってもよい。原液としては、例えば、海水、河川水、汽水、排水などが挙げられる。排水としては、例えば、工業排水、生活排水、油田またはガス田の排水などが挙げられる。
【0018】
なお、高圧ポンプ2aの上流側には、原液中に含まれる濁質(微粒子、微生物、スケール成分等)を除去するために、図示しない前処理装置を備えていてもよい。前処理装置としては、例えば、砂濾過装置やUF(Ultrafiltration:限外ろ過)膜、MF(Microfiltration:精密ろ過)膜等を用いた濾過装置や、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、凝集剤、スケール防止剤等の添加装置や、pHの調整装置などが挙げられる。なお、スケール防止剤とは、液中のスケール成分がスケールとして析出することを防止または抑制する作用を有する添加剤である。スケール防止剤としては、例えば、ポリリン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ポリカルボン酸系などの化合物が挙げられる。
【0019】
本実施形態において、ROモジュール2(第1室21)の下流側に、半透膜モジュール1a,1b,1cが接続される。半透膜モジュール(半透膜モジュール1a,1b,1cの各々)の第1室11に供給される第1対象液は、ROモジュール2の第1室21から排出される濃縮原液である。ROモジュール2から排出される濃縮原液は、高い圧力を有しているため、その圧力によって半透膜モジュール側へ送られる。
【0020】
〔半透膜モジュール〕
複数の半透膜モジュール1a,1b,1cの各々は、半透膜10と、半透膜10で仕切られた第1室11および第2室12と、を有する。
【0021】
第1対象液(ROモジュール2の第1室21から排出された濃縮原液)は、所定の圧力で第1室11に流入し、第2対象液は、所定の圧力よりも低い圧力で第2室12に流入する。これにより、第1室11内の第1対象液に含まれる水は半透膜10を介して第2室12内の第2対象液に移行し、第1室11から濃縮液(濃縮された第1対象液)が排出され、第2室12から希釈液(希釈された第2対象液)が排出される。
【0022】
なお、第1対象液と第2対象液とは同じ液であってもよい。例えば、図1に示されるように、所定の圧力を有する第1対象液の一部が、圧力低下装置4を通過することによって、上記所定の圧力よりも低い圧力で第2室に流されてもよい。
【0023】
圧力低下装置4としては、例えば、所定の圧力を有する第1対象液を、半透膜モジュールの第2室12への流路と他の流路に分けて流すことのできる分流弁、減圧器またはエネルギー回収装置などが挙げられる。ここで、圧力低下装置4(分流弁)は、第2室12に流される対象液を所定の圧力より低い圧力に減圧する機能を有している。なお、このような圧力低下装置を用いることで、例えば、半透膜モジュールの上流側の対象液の流路が1本で済むという利点がある。
【0024】
図1の場合、半透膜モジュール(半透膜モジュール1a,1b,1cの各々)の第1室11と第2室12とに流入する対象液は、同じ液であるため、基本的に等しい浸透圧を有する。このため、RO法のように、対象液(高浸透圧液)と淡水との間の高い浸透圧差に逆らって逆浸透を起こさせるための高い圧力が必要なく、比較的低圧の加圧によって、対象液の膜分離を実施することができる(一部の対象液を希釈し、他の一部の対象液を濃縮することができる)。
【0025】
ただし、本実施形態において、半透膜モジュールの第2室12に供給される第2対象液は、第1室11に供給される第1対象液とは独立の液であってもよい。
【0026】
第1室11に流される第1対象液と第2室12に流される第2対象液とが異なる液であり、両者の間で濃度が異なる場合でも、その浸透圧差(絶対値)が第1室11に供給される第1対象液の圧力よりも小さければ、理論上、BCによる膜分離は実施可能である。この場合、第1室11(高圧側)に流入する第1対象液の浸透圧と第2室12(低圧側)に供給される第2対象液の浸透圧との差は、第1室11に供給される第1対象液の所定の圧力の30%以下であることが好ましい。
【0027】
なお、半透膜モジュール1a,1b,1cの各々は、図1に示されるように1つの半透膜モジュールであってもよいが、並列的に接続された複数の半透膜モジュールからなる半透膜モジュール群(トレイン)であることが好ましい。後述する制御機構による制御は、例えば、このような半透膜モジュール群毎に実施される。
【0028】
また、半透膜モジュール1a,1b,1cの各々におけるBCの工程は、図1に示されるように1つの半透膜モジュールを用いた1段の工程であってもよいが、(直列的に接続された)複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程であってもよい。
【0029】
半透膜モジュールでの膜分離処理であるブラインコンセントレーション(BC)において、半透膜モジュールの半透膜10を介して第1室11から第2室12に水を移行させるためには、第1室11に供給される第1対象液の圧力を、半透膜10の両側を流れる第1対象液と第2対象液との浸透圧差より大きくする必要がある。このため、1段の工程(1つの半透膜モジュール)で第1対象液を高度に濃縮するためには、それに応じた高い圧力での供給が必要になり、ポンプの稼動のためのエネルギーコストが増加する等のデメリットがある。このため、濃縮工程を段階的にし、BCに必要な圧力を低下させること等を目的として、BCを複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程により実施してもよい。このような多段の工程によるBCについては、例えば、特開2018-069198号公報に開示されている。
【0030】
半透膜としては、例えば、逆浸透(RO)膜、正浸透(FO)膜、ナノろ過(NF)膜と呼ばれる半透膜が挙げられる。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第1室11に供給される第1対象液の圧力は好ましくは6~10MPaである。
【0031】
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下であり、UF膜の孔径は約2~100nmである。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1~2nmである。半透膜としてRO膜またはFO膜、NF膜を用いる場合、RO膜またはFO膜、NF膜の塩除去率は好ましくは90%以上である。
【0032】
半透膜を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。半透膜は、セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
【0033】
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
【0034】
ポリスルホン系樹脂は、好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂である。ポリエーテルスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホンである。
【0035】
半透膜10(および上述の逆浸透膜20)の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜または中空糸膜が挙げられる。なお、図1では、半透膜10として平膜を簡略化して描いているが、特にこのような形状に限定されるものではない。なお、中空糸膜(中空糸型半透膜)は、スパイラル型半透膜などに比べて、モジュール当たりの膜面積を大きくすることができ、浸透効率を高めることができる点で有利である。
【0036】
また、半透膜モジュール(および上述の逆浸透モジュール2)の形態としては、特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置したモジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜を用いる場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状として芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
【0037】
具体的な中空糸膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、特開2012-115835号公報に開示されるように、外周表面近傍に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となっていることが好ましい。
【0038】
具体的な中空糸膜の別の例としては、支持層(例えば、ポリフェニレンオキサイドからなる層)の外周表面にポリフェニレン系樹脂(例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン)からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。また、他の例として、支持層(例えば、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンからなる層)の外周表面にポリアミド系樹脂からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。
【0039】
なお、中空糸膜を用いた半透膜モジュールにおいて、通常は、中空糸膜の外側が第1室となる。中空糸膜の内側(中空部)を流れる流体を加圧しても、圧力損失が大きくなり加圧が十分に働き難いためである。
【0040】
〔制御機構〕
制御機構3は、複数の半透膜モジュール1a,1b,1cから選択される少なくとも1つの半透膜モジュールについて、所定のタイミングで、一部の半透膜モジュールに対する第1対象液の供給を停止し、半透膜の洗浄を実施するように、濃縮システムを制御する。
【0041】
洗浄は、少なくとも一部の半透膜モジュール(半透膜モジュール群)の使用を中止した状態で実施されるが、それ以外の半透膜モジュール(半透膜モジュール群)の使用は継続し、濃縮システム全体としての運転は継続することが好ましい。これにより、濃縮システムの処理効率の低下を抑制することができる。また、濃縮システムの処理を継続的に実施することができ、システム全体の運転を一旦停止して再度運転を開示する際の初期調整などの煩雑な作業を省略することができる。
【0042】
なお、洗浄は、例えば、複数の半透膜モジュール(半透膜モジュール群)1a,1b,1cについて、所定の順番およびタイミングで1つずつ実施すればよい。
【0043】
洗浄の順番およびタイミングや、各々の半透膜モジュールの洗浄時間および洗浄の程度は、半透膜の汚染度合(スケール等の付着の程度)を示す指標に基づいて、種々公知のシミュレーション等により決定することができる。
【0044】
各々の半透膜モジュール(半透膜モジュール群)毎の半透膜の汚染度合の指標としては、例えば、半透膜モジュールの流入側と排出側との間の圧力差、半透膜モジュールにおける透過水量(流入側と排出側の流量差)などが挙げられる。
【0045】
半透膜(半透膜モジュール)の洗浄法としては、特に限定されないが、例えば、洗浄液による洗浄、逆洗(逆圧洗浄)、フラッシングなどが挙げられる。
【0046】
(洗浄液による洗浄)
洗浄液による洗浄は、例えば、三方バルブ31,32,33のいずれか1つを、半透膜モジュールに対する第1対象液の供給を停止し、かつ、洗浄液タンク5に貯留された洗浄液が半透膜モジュール(半透膜モジュール1a,1b,1cの各々)の第1室11(または、第1室11および第2室12の両方)に供給されるように、切り替えた状態で、ポンプ5aを駆動することにより、実施することができる。
【0047】
薬液洗浄に用いられる洗浄液は、半透膜の汚れを洗浄可能なものであれば特に限定されない。洗浄液としては、水、薬液などが挙げられる。洗浄液としては、例えば、ROモジュール2の第2室22から排出される透過水、BCによって得られる希釈液(半透膜モジュールの第2室から排出される希釈された第2対象液)などを用いてもよい。
【0048】
薬液に用いられる薬剤としては、例えば、半透膜に付着するスケール(硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸塩など)の除去や、生物によって生成されバイオファウリングの原因となる有機物の除去が可能な薬剤が用いられる。このような薬剤としては、例えば、界面活性剤、酸剤(塩酸等の無機酸、カルボン酸等の有機酸など)、アルカリ剤などが挙げられる。具体的な薬剤としては、例えば、クエン酸、次亜塩素酸ソーダなどが好適に用いられる。クエン酸は、無機物に起因する汚れに対して好適に用いられる。次亜塩素酸ソーダは、有機物に起因する汚れに対して好適に用いられる。
【0049】
なお、例えば、水による洗浄と薬液による洗浄の両方を実施してもよい。例えば、水による洗浄後に薬液による洗浄を行い、さらに水による洗浄を行ってもよい。
【0050】
(逆洗)
BCに用いられる半透膜モジュールにおいて、逆洗とは、半透膜10を透過する水の移動方向を濃縮システムの運転時とは逆方向にすることで、物理的に半透膜10に付着した汚れを除去する洗浄方法である。
【0051】
なお、このような逆洗は、濃縮システムに必要な流路、三方バルブ、ポンプなどを設けて、制御機構3により三方バルブによる流路の切り換え、ポンプの駆動等を制御することにより、実施することが可能である。
【0052】
(フラッシング)
フラッシングとは、半透膜10の表面に付着した汚れを低圧で高流量の洗浄液で洗い流す洗浄方法である。洗浄液としては、上記と同様の水、薬液などを用いることができる。フラッシングは、比較的軽く付着した汚れの除去に有効な方法である。このため、例えば、半透膜の汚染が進行する前からフラッシングを定期的に実施することで、膜汚染を予防する効果が得られる。
【0053】
上述のような洗浄を実施するために、濃縮システムは、さらに、前記半透膜モジュールに接続された流路を切り替えるための流路切り換え装置を備えることが好ましい。また、濃縮システムは、さらに、前記半透膜を洗浄するための洗浄液が貯留された洗浄液タンクを備えることが好ましい。
【0054】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1a,1b,1c 半透膜モジュール、10 半透膜、11 第1室、12 第2室、2 逆浸透(RO)モジュール、2a 高圧ポンプ、20 逆浸透(RO)膜、21 第1室、22 第2室、3 制御機構、31,32,33 三方バルブ、4 圧力低下装置、5 洗浄液タンク、5a ポンプ。
図1