(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】空気袋及び車両用シート装置
(51)【国際特許分類】
A47C 27/08 20060101AFI20240130BHJP
B60N 2/66 20060101ALI20240130BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240130BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20240130BHJP
A61H 15/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A47C27/08 A
B60N2/66
A47C7/62 Z
A61H7/00 323U
A61H7/00 322E
A61H15/00 350F
(21)【出願番号】P 2019168639
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-07-19
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榑松 靖人
(72)【発明者】
【氏名】水野 量介
(72)【発明者】
【氏名】増田 賢志
(72)【発明者】
【氏名】定免 貴大
(72)【発明者】
【氏名】末吉 真
【審査官】松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-280766(JP,A)
【文献】特開2018-047862(JP,A)
【文献】特開2019-093751(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0164747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0230921(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 7/14,7/40,7/62,27/08-27/10
A61H 7/00,15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する樹脂素材が用いられた二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を備えるとともに、
前記各シート材
の周縁部が互いに
溶着された前記袋部の周縁部
を形成する溶着部の形状は、前記各シート材の厚み方向から見て正多角形状をなし、該周縁部
を形成する溶着部のうち前記正多角形状の各辺を形成する部分がそれぞれ、該袋部内に空気が充填されることにより
該袋部を拡張させる力に基づいて「くの字状」に折曲する折曲辺部となっており、それら複数の前記折曲辺部の折曲により、前記空気の充填により拡張した前記袋部の表面
であって且つ折曲した前記各折曲辺部の前記正多角形状の内方には
該各折曲辺部に交差する方向に延びる溝状のくびれが形成されている
空気袋であって、
複数の前記袋部と、
前記各袋部間を連通する接続部と、を備えるとともに、
前記接続部は、前記正多角形状の頂点部において前記各袋部間を前記連通する空気袋。
【請求項2】
請求項1に記載の空気袋において、
前記袋部の前記正多角形状の頂点部にエアチューブを有していること、
を特徴とする空気袋。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の空気袋において、
前記各折曲辺部が互いに平行ではないこと、を特徴とする空気袋。
【請求項4】
請求項1~請求項
3の何れか一項に記載の空気袋をシート表皮の内側に配置する
車両用シート装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の車両用シート装置において、
前記各袋部を拡縮させることにより前記シート表皮を内側から押圧するリフレッシュ機能を備えること、を特徴とする車両用シート装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気袋及び車両用シート装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示すように、シート表皮の内側に設けられた空気袋を拡縮させることにより、そのシートに着座する乗員が所望のリフレッシュ効果を得られるように構成された車両用のシート装置がある。また、このような車両のシートに用いられる空気袋には、例えば、特許文献2に示すように、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を備えたものがある。そして、このような空気袋を用いることで、その構成の簡素化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4305663号公報
【文献】特開2015-96403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような空気袋は、その袋部内に空気を充填して当該袋部を拡張させた場合に、この袋部を構成する各シート材が互いに接合された周縁部に応力が集中しやすい構造となっている。更に、各シート間の接合は、必ずしも、その袋部の全周に亘って均一であるとは限らない。そして、これにより、袋部の周縁部に特定の応力集中部が形成されることで、その耐久性能が低下する可能性があることから、この点において、なお改善の余地を残すものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、耐久性能に優れた空気袋及び車両用シート装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する空気袋は、二枚のシート材を貼り合わせてなる袋部を備えるとともに、前記各シート材が互いに接合された前記袋部の周縁部には、該袋部内に空気が充填されることにより折曲して、該空気の充填により拡張した前記袋部の表面に溝状のくびれを形成する複数の折曲辺部が設けられる。
【0007】
上記構成によれば、空気の充填により袋部の周縁部に形成される応力集中部を、その袋部に設けられた複数の折曲辺部に分散させることができる。そして、これにより、耐久性能の向上を図ることができる。
【0008】
上記課題を解決する空気袋は、前記各シート材の厚み方向から見た前記袋部の周縁部形状が多角形状をなすことが好ましい。
上記構成によれば、袋部の周縁部に設定された多角形状の各辺に対応する部分に、それぞれ折曲辺部を設けることができる。そして、これにより、より効果的に、その応力集中部を分散させることができる。
【0009】
上記課題を解決する空気袋は、複数の前記袋部と、前記各袋部間を連通する接続部と、を備えるとともに、前記接続部は、前記多角形状の頂点部において前記各袋部間を前記連通することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、その接続部が各袋部に設けられた折曲辺部の折曲を阻害しないようにすることができる。そして、これにより、効果的に、その応力集中部を分散させることができる。
【0011】
上記課題を解決する空気袋は、前記各折曲辺部が互いに平行ではないことが好ましい。
上記構成によれば、これらの各折曲辺部の形成するくびれが直線的に繋がらないようにすることができる。そして、これにより、効果的に、その応力集中部を分散させることができる。加えて、その拡張した各袋部の形状が、空気を充填する前の周縁部形状から大きく乖離しないようにすることができる。
【0012】
上記課題を解決する車両用シート装置は、上記何れかの空気袋をシート表皮の内側に配置する。
上記構成によれば、耐久性能の向上を図ることができる。
【0013】
上記課題を解決する車両用シート装置は、前記各袋部を拡縮させることにより前記シート表皮を内側から押圧するリフレッシュ機能を備えることが好ましい。
即ち、その袋部を頻繁に拡縮させるリフレッシュ用の空気袋は、拡張時の応力集中により劣化が進みやすい。従って、このようなシート装置に適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、耐久性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】シート表皮の内側に空気袋が設けられた車両シートの斜視図。
【
図8】(a)(b)は、折曲辺部が袋部の表面に形成するくびれの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、車両用のシート1は、シートクッション2と、このシートクッション2の後端部に設けられたシートバック3と、を備えている。そして、そのシートバック3の上端には、ヘッドレスト4が設けられている。
【0017】
また、本実施形態のシート1には、シートクッション2及びシートバック3の内側で拡縮することにより、その着座面2s及び背もたれ面3sを構成するシート表皮1xを内側から押圧する複数の空気袋10が設けられている。具体的には、シートクッション2には、そのシート1に着座する乗員の臀部及び大腿部に対応する位置に、それぞれ、独立したシートサポート用の空気袋10が設けられている。更に、シートバック3についてもまた、その背もたれ面3sにもたれ掛かった乗員の肩部及び腰部に対応する位置に、それぞれ、独立した空気袋10が設けられている。そして、本実施形態では、これにより、そのシート1に着座する乗員に対してリフレッシュ効果を付与することが可能なシート装置20が形成されている。
【0018】
詳述すると、
図2に示すように、本実施形態のシート装置20は、これらの各空気袋10に空気を圧送する空気ポンプ21を備えている。更に、この空気ポンプ21と各空気袋10との間には、給排気バルブ装置22が介在されている。そして、本実施形態のシート装置20において、これらの空気ポンプ21及び給排気バルブ装置22は、制御装置23によって、その作動が制御されている。
【0019】
具体的には、本実施形態の空気ポンプ21には、モータ24を駆動源とする電動ポンプが用いられている。更に、給排気バルブ装置22は、可撓性を有する樹脂製のエアチューブ25を介して各空気袋10及び空気ポンプ21に接続されている。即ち、本実施形態のシート装置20は、これらのエアチューブ25及び給排気バルブ装置22の内部通路によって、その各空気袋10と空気ポンプ21との間を連通する空気の流路(給排気流路Lo)が形成されている。そして、本実施形態の給排気バルブ装置22は、これにより、その給気バルブ26及び排気バルブ27を給排気流路Loの途中に配置する構成になっている。
【0020】
また、本実施形態の制御装置23には、シート1に設けられた操作入力部28に対する操作入力信号Scrが入力されるようになっている。そして、本実施形態の制御装置23は、この操作入力信号Scrに示される作動要求に基づいて、各空気袋10を拡縮させるべく、その空気ポンプ21及び給排気バルブ装置22の作動を制御する構成になっている。
【0021】
具体的には、本実施形態の制御装置23は、操作入力部28から入力される操作入力信号Scrに対応した所定の動作パターンに基づいて、その拡張状態となる各空気袋10を順次切り替える態様で、これらの各空気袋10を断続的に拡縮させる。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、そのシート1に着座する乗員が所望のリフレッシュ効果を得られるようになっている。
【0022】
(空気袋)
次に、本実施形態のシート装置20に用いられた空気袋10の構成を説明する。
図3(a)(b)に示すように、本実施形態のシート装置20において、各空気袋10は、二枚のシート材30,30を貼り合わせることにより形成された袋部31を有している。即ち、本実施形態の各空気袋10は、周縁部が互いに貼り合わされた二枚のシート材30,30間に空気を充填することにより、その袋部31が拡張する。そして、この拡張した袋部31が、そのシート表皮1xを内側から押圧する構成になっている。
【0023】
詳述すると、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の空気袋10は、それぞれ、シート幅方向に離間して配置される左右一対の袋部31,31と、これらの各袋部31,31間を連通する接続部32と、を備えている。
【0024】
具体的には、本実施形態の各空気袋10は、それぞれ、これらの各袋部31,31及び接続部32の形状に合せて型抜きされた二枚のシート材30,30を厚み方向に重ねるとともに、これら各シート材30,30の周縁部を互いに溶着することにより形成されている。尚、本実施形態では、これらの各シート材30,30には、可撓性を有した樹脂素材が用いられている。更に、これら各シート材30,30の溶着には、例えば、高周波溶着が用いられる。そして、
図4及び
図5中には、ハッチングによって、その各シート材30,30を接合することにより各袋部31,31の周縁部33を形成する溶着部35が示されている。
【0025】
また、本実施形態のシート装置20において、シートクッション2側の空気袋10c(
図5参照)は、そのシート幅方向に延びる接続部32の長さが、シートバック3側の空気袋10b(
図4参照)よりも長くなっている。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、その各空気袋10cの袋部31,31が、適切に、このシート1に着座した乗員の両足について、その臀部及び大腿部を押圧する構成になっている。
【0026】
さらに詳述すると、
図6及び
図7に示すように、本実施形態のシート装置20は、シート表皮1xを構成する表皮ASSY41と、上記各空気袋10を保持する状態で、この表皮ASSY41に装着されるベース部材42と、を備えている。
【0027】
具体的には、本実施形態の表皮ASSY41は、シートバック3側の表皮部41bとシートクッション2側の表皮部41cとが一体化された構成を有している。一方、本実施形態のベース部材42は、シートバック3側のベース部材42bと、シートクッション2側のベース部材42cとに分割された構成を有している。本実施形態のシート装置20において、これらの各ベース部材42b,42cは、ともに略平板状の外形を有している。そして、本実施形態のシート装置20は、シートバック3側の空気袋10b、及びシートクッション2側の空気袋10cが、それぞれ、その第1面S1側に貼り付けられる態様で、これらの各ベース部材42b,42cに保持される構成になっている。
【0028】
尚、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の各空気袋10は、それぞれ、その各袋部31,31の周縁部33よりも外側において、これらの各空気袋10を形成する二枚のシート材30,30を貫通するかたちで設けられた複数の孔部43を有している。そして、本実施形態のシート装置20は、これらの各孔部43を利用することにより、各空気袋10b,10cを、その対応する各ベース部材42b,42cの第1面S1に固定する構成になっている。
【0029】
また、
図6及び
図7に示すように、本実施形態の表皮ASSY41は、そのシートバック3側の表皮部41b及びシートクッション2側の表皮部41cに設けられたポケット部44b,44cを備えている。更に、本実施形態の各ベース部材42b,42cは、その各空気袋10b,10cを保持する第1面S1が、それぞれ、その対応する各表皮部41b,41cの表面Saと同じ方向を向いた状態で、そのポケット部44b,44c内に挿入される。そして、本実施形態のシート装置20は、これにより、これらの各ベース部材42b,42cに支持された状態で、そのシート表皮1xの内側に配置された各空気袋10b,10cが拡縮する構成になっている。
【0030】
尚、本実施形態の表皮ASSY41は、シート1のヘッドレスト4が挿通される挿通孔45と、この挿通孔45が形成された位置からシートバック3の背面側に折り返される背面側の表皮部41xと、を有している。更に、表皮ASSY41は、この背面側の表皮部41xにもポケット部44xを有している。そして、本実施形態のシート装置20は、このポケット部44x内に、その空気ポンプ21及び給排気バルブ装置22(
図2参照)がユニット化されたアクチュエータASSY46を保持する構成になっている。
【0031】
また、本実施形態のシート装置20は、そのアクチュエータASSY46とは別体に設けられた操作入力部28としてのコントローラー48を有している。そして、シート1の乗員は、このコントローラー48を操作することで、所望のリフレッシュ効果が得られるように、そのシート表皮1xの内側に配置された各空気袋10b,10cを拡縮させることが可能になっている。
【0032】
さらに詳述すると、
図4及び
図5に示すように、本実施形態の各空気袋10は、それぞれ、これらの各空気袋10を構成する各シート材30,30の厚み方向からみて、その各袋部31,31が、左右対称の周縁部形状αを有している。具体的には、これらの各袋部31,31は、その周縁部形状αが五角形状pntをなしている。そして、本実施形態の各空気袋10は、互いに対向する頂点部Pにおいて、その五角形状pntを有して左右に離間した各袋部31,31を接続部32が連通する構成になっている。
【0033】
また、本実施形態の各空気袋10は、その各シート材30,30の溶着部35が形成する各袋部31,31の周縁部33のうち、五角形状pntの各辺50を形成する部分が、それぞれ、これらの各袋部31,31内に空気が充填されることにより折曲する折曲辺部51となっている。
【0034】
具体的には、
図8(a)(b)に示すように、これらの各折曲辺部51は、それぞれ、各袋部31,31内に充填された空気が、これらの各袋部31,31を拡張させる力に基づいて略「くの字状」に折れ曲がる。また、これにより、その拡張した各袋部31,31の表面31sには、その五角形状pntの各辺50に交差する方向に延びる溝状のくびれ55が形成される。尚、説明の便宜上、
図8(a)には、シートクッション2側の空気袋10cにおいて、その袋部31に設定された五角形状pntの辺50aに対応する折曲辺部51aが形成するくびれ55aを例示し、
図8(b)には、同じく、その五角形状pntの辺50bに対応する折曲辺部51bが形成するくびれ55bを例示するのみとする(
図5参照)。そして、本実施形態の各空気袋10においては、これにより、その空気の充填により各袋部31,31の周縁部33に形成される応力集中部を分散させることで、耐久性能の向上が図られている。
【0035】
更に、各袋部31,31において、各折曲辺部51は、それぞれ、互いに平行となる位置には配置されていない。そして、本実施形態の各空気袋10は、これにより、これらの各折曲辺部51の形成するくびれ55が直線的に繋がらないようにすることで、その拡張した各袋部31,31の形状が、空気を充填する前の五角形状pntから大きく乖離しないように構成されている。
【0036】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)空気袋10は、二枚のシート材30,30を貼り合わせてなる袋部31を備える。そして、各シート材30,30が互いに接合された袋部31の周縁部33には、この袋部31内に空気が充填されることにより折曲して、その空気の充填により拡張した袋部31の表面31sに溝状のくびれ55を形成する複数の折曲辺部51が設けられる。
【0037】
上記構成によれば、空気の充填により袋部31の周縁部33に形成される応力集中部を、その袋部31に設けられた複数の折曲辺部51に分散させることができる。そして、これにより、耐久性能の向上を図ることができる。
【0038】
(2)空気袋10は、その各シート材30,30の厚み方向から見た袋部31の周縁部形状αが五角形状pntをなす。
上記構成によれば、袋部31の周縁部33に設定された五角形状pntの各辺50に対応する部分に、それぞれ折曲辺部51を設けることができる。そして、これにより、より効果的に、その応力集中部を分散させることができる。
【0039】
(3)空気袋10は、一対の袋部31,31と、これらの各袋部31,31間を連通する接続部32と、を備える。そして、接続部32は、各袋部31,31に設定された五角形状pntの頂点部Pにおいて、これらの各袋部31,31間を接続する。
【0040】
上記構成によれば、その接続部32が各袋部31,31に設けられた各折曲辺部51の折曲を阻害しないようにすることができる。そして、これにより、効果的に、その応力集中部を分散させることができる。
【0041】
(4)袋部31の各折曲辺部51は、互いに平行となる位置には配置されていない。
上記構成によれば、これらの各折曲辺部51の形成するくびれ55が直線的に繋がらないようにすることができる。そして、これにより、その応力集中部を分散させることができる。加えて、その拡張した各袋部31,31の形状が、空気を充填する前の周縁部形状α、つまりは五角形状pntから大きく乖離しないようにすることができる。
【0042】
(5)シート装置20は、空気袋10の袋部31を拡縮させることによりシート表皮1xを内側から押圧するリフレッシュ機能を備える。
即ち、その袋部31を頻繁に拡縮させるリフレッシュ用の空気袋10は、拡張時の応力集中により劣化が進みやすい。従って、上記(1)~(4)の構成を、このようなリフレッシュ用の空気袋10に適用することで、より顕著な効果を得ることができる。
【0043】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態では、各シート材30,30の厚み方向から見た袋部31の周縁部形状αが五角形状pntであることとした。しかし、これに限らず、袋部31の周縁部形状αは、五角以外の多角形状であってもよい。即ち、三角形状でも四角形状であってもよく、六角以上の多角形状であってもよい。そして、複数の折曲辺部51を有する構成であれば、その周縁部形状αは、必ずしも多角形状でなくともよく、弧状の周縁部33を含むものであってもよい。
【0045】
但し、拡張時における応力集中部の分散を考慮した場合、その周縁部33の全周に亘って、各折曲辺部51が分散配置されていることが好ましい。更に、その多角形状の各辺50aに対応して折曲辺部51を設けるとした場合、その角数は、5角~9角とすることが好ましい。即ち、応力集中部の分散を考慮した場合、その折曲辺部51が5以上あることが好ましい。そして、その折曲辺部51の設定によるくびれ55の形成を制御する観点、及び製造コストの増加を考慮した場合、その角数は、9以下であることが好ましい。
【0046】
・上記実施形態では、空気袋10は、一対の袋部31,31と、これらの各袋部31,31間を連通する接続部32と、を備えることとしたが、袋部31の数は、任意に変更してもよい。そして、これらの各袋部31間を連通する接続部32の形状についてもまた、任意に変更してもよい。
【0047】
・また、
図9に示す空気袋10Bのように、その袋部31Bの周縁部形状αが、正多角形状である構成を採用してもよい。具体的には、この空気袋10Bの袋部31Bは、その周縁部形状αが正五角形状PNTをなしている。そして、空気袋10Bは、この袋部31Bに設定された正五角形状PNTの頂点部Pに、その給排気流路Loとなるエアチューブ25を有している。
【0048】
上記構成によれば、より効果的に、空気の充填により袋部31Bの周縁部33に形成される応力集中部を各折曲辺部51に分散させることができる。特に、正多角形状の角数が奇数であることにより、これらの各折曲辺部51が、互いに平行となる位置に配置されないという利点がある。そして、これにより、その拡張した袋部31Bの形状が、空気を充填する前の周縁部形状αから大きく乖離しないようにすることができるとともに、効果的に、その応力集中部を分散させることができる。
【0049】
・空気袋10を構成する各シート材30の材質や形状、或いは、その貼り合わせ方法については任意に変更してもよい。
・上記実施形態では、リフレッシュ用の空気袋10に具体化したが、シート表皮1xの内側で拡縮することにより、シート1のサポート形状を変更するシートサポート用の空気袋に適用してもよい。そして、車両シート以外の用途に用いられる空気袋に適用してもよい。
【0050】
次に、上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ)前記多角形状の角数が5角~9角であること、を特徴とする空気袋。
(ロ)前記多角形状が、正多角形状であること、を特徴とする空気袋。
【0051】
(ハ)前記多角形状の角数が奇数であること、を特徴とする空気袋。
上記各構成によれば、効果的に応力集中部を分散させて耐久性能の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…シート、1x…シート表皮、2…シートクッション、2s…着座面、3…シートバック、3s…背もたれ面、4…ヘッドレスト、10,10b,10c,10B…空気袋、20…シート装置、21…空気ポンプ、22…給排気バルブ装置、23…制御装置、24…モータ、25…エアチューブ、26…給気バルブ、27…排気バルブ、28…操作入力部、30…シート材、31,31B…袋部、31s…表面、32…接続部、33…周縁部、35…溶着部、41,41b,41c,41x…表皮部、41…表皮ASSY、42,42b,42c…ベース部材、43…孔部、44b,44c,44x…ポケット部、45…挿通孔、46…アクチュエータASSY、48…コントローラー、50,50a,50b…辺、51,51a,51b…折曲辺部、55,55a,55b…くびれ、α…周縁部形状、pnt…五角形状、PNT…正五角形状、P…頂点部、S1…第1面、Sa…表面、Lo…給排気流路、Scr…操作入力信号。