(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器具
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2019179138
(22)【出願日】2019-09-30
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】紙谷 友章
(72)【発明者】
【氏名】夏目 明嘉
(72)【発明者】
【氏名】菱田 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】片山 真梧
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-189925(JP,A)
【文献】特開2016-002428(JP,A)
【文献】特表2015-533616(JP,A)
【文献】特表2002-514466(JP,A)
【文献】特開2019-042127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤形状の光学部と該光学部の外周縁部から径方向外方に向かって延出する複数の支持部とを有する眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、
前記眼内レンズが通過する通路が先端に向かって先細りする内腔形状を有するノズルと、
前記ノズル内における前記眼内レンズの外周縁部を押して前記眼内レンズを折り畳みながら、前記眼内レンズを前記ノズルの先端から前記ノズルの外部へ押し出す軸状の押出部材と、
前記ノズル内に進入した前記眼内レンズとの位置関係において、
前記ノズル内における前記光学部に対面するノズル内面において押出軸に沿って連なる溝が形成されており、前記溝によって前記ノズル内における前記押出部材を前記押出軸に沿って案内する案内部と、
前記内腔形状を前記押出部材の前記押出軸に直交する直交断面で見て、
前記案内部における前記溝形状の両脇において前記押出軸に沿って連なって設けられる両壁面が形成されており、前記両壁面のうち、前記押出部材により押し出される前記眼内レンズが前記押出部材の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する壁面に前記外周縁部を当接させて前記一方向回転を抑制する回転抑制部と、
を有し、
前記回転抑制部は、
前記押出部材の前記押出軸を通り、且つ前記案内部に対向する前記ノズル内面に対して直交する線を仮想線とし、前記仮想線が前記ノズル内面と交わる点を基準点とするとき、
前記ノズルの内腔形状において、前記ノズル内面の周方向に沿った内面長さであって、前記基準点から前記案内部の溝形状の両脇における両壁面までの両周長のうち、前記一方向回転側の周長が短く設定される眼内レンズ挿入器具。
【請求項2】
請求項1に記載の眼内レンズ挿入器具であって、
前記ノズルの内腔形状における両周長の差は、前記ノズルの先端に向かって徐々に小さくなるように変化する眼内レンズ挿入器具。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれかに記載の眼内レンズ挿入器具であって、
前記回転抑制部は、
前記ノズル内に進入した前記眼内レンズにおける前記支持部のうち前記ノズルの先端側に位置する前方支持部の根元部分が前記仮想線と重ならない位置関係において、
前記仮想線を境として前記前方支持部の根元部分が配設されていない側に設けられている眼内レンズ挿入器具。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の眼内レンズ挿入器具であって、
前記回転抑制部を前記案内部に設けることで、前記ノズルの内腔形状における両周長を異ならせる構成である眼内レンズ挿入器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、白内障の手術方法の一つとして、水晶体の代わりに折り曲げ可能な軟性の眼内レンズを眼内に挿入する手法が一般的に用いられている。また、眼の屈折力を矯正するために、水晶体よりも前側に眼内レンズが挿入される場合もある。眼内レンズの眼内への挿入には、インジェクターと呼ばれる眼内レンズ挿入器具が用いられる場合がある。
【0003】
このようなインジェクターとして、先端に向かうに従って眼内レンズが通過する通路面積が徐々に小さくなる中空の通路を有するノズル内を押出部材で眼内レンズを押し出すことにより、眼内レンズが小さく折り畳まれて先端から外部に射出する態様が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のようなインジェクターにおいて、ノズル内の眼内レンズが押出部材によって押し出される際、押出軸の軸周りの一方向に回転が促されるといった事象が生じる場合があった。係る事象は、ノズル内で折り畳まれた眼内レンズがノズルから排出された直後の眼内レンズの開放姿勢(復元姿勢)に影響を及ぼし得る。そのため、眼内レンズ挿入器具から射出される眼内レンズの姿勢を安定させる更なる改善が望まれている。
【0006】
そこで、本開示は上記した問題点を解決するためになされたものであり、眼内レンズが押出部材によって押し出される際、押出軸の軸周りにおける回転を抑制して、ノズル内の眼内レンズの姿勢を安定させる眼内レンズ挿入器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の典型的な実施形態が提供する眼内レンズ挿入器具は、円盤形状の光学部と該光学部の外周縁部から径方向外方に向かって延出する複数の支持部とを有する眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具であって、前記眼内レンズが通過する通路が先端に向かって先細りする内腔形状を有するノズルと、前記ノズル内における前記眼内レンズの外周縁部を押して前記眼内レンズを折り畳みながら、前記眼内レンズを前記ノズルの先端から前記ノズルの外部へ押し出す軸状の押出部材と、前記ノズル内に進入した前記眼内レンズとの位置関係において、前記ノズル内における前記光学部に対面するノズル内面において押出軸に沿って連なる溝が形成されており、前記溝によって前記ノズル内における前記押出部材を前記押出軸に沿って案内する案内部と、前記内腔形状を前記押出部材の前記押出軸に直交する直交断面で見て、前記案内部における前記溝形状の両脇において前記押出軸に沿って連なって設けられる両壁面が形成されており、前記両壁面のうち、前記押出部材により押し出される前記眼内レンズが前記押出部材の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する壁面に前記外周縁部を当接させて前記一方向回転を抑制する回転抑制部と、を有し、前記回転抑制部は、前記押出部材の前記押出軸を通り、且つ前記案内部に対向する前記ノズル内面に対して直交する線を仮想線とし、前記仮想線が前記ノズル内面と交わる点を基準点とするとき、前記ノズルの内腔形状において、前記ノズル内面の周方向に沿った内面長さであって、前記基準点から前記案内部の溝形状の両脇における両壁面までの両周長のうち、前記一方向回転側の周長が短く設定される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の眼内レンズ挿入器具によれば、眼内レンズが押出部材によって押し出される際、押出軸の軸周りにおける回転を抑制して、ノズル内の眼内レンズの姿勢を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】眼内レンズ挿入器具を示した全体斜視図である。
【
図5】眼内レンズが設置部に設置された状態を示す概略説明図である。
【
図6】押出部材による眼内レンズの押出が開始した状態を示す概略説明図である。
【
図7】眼内レンズがノズルに向かって移動した状態を示す概略説明図である。
【
図8】眼内レンズがノズル内に進入を始めた状態を示す概略説明図である。
【
図9】眼内レンズがノズル内で変形している状態を示す概略説明図である。
【
図10】眼内レンズがノズル内で更に変形している状態を示す概略説明図である。
【
図11】眼内レンズがノズル内で折り畳まれた状態を示す概略説明図である。
【
図13】
図8のXIII-XIII線断面図である。
【
図18】
図8のXVIII-XVIII線断面図である。
【
図22】ノズル内に案内部が構成されていない場合の眼内レンズの変形状態を示す概略説明図である。
【
図23】ノズル内に回転抑制部が構成されていない案内部の場合の眼内レンズの変形状態を示す概略説明図である。
【
図24】回転抑制部が構成されない案内部と眼内レンズの関係と、回転抑制部が構成される案内部と眼内レンズとの関係を模式的に示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示で例示する眼内レンズ挿入器具は、円盤形状の光学部と該光学部の外周縁部から径方向外方に向かって延出する複数の支持部とを有する眼内レンズを眼内に挿入する眼内レンズ挿入器具である。眼内レンズ挿入器具は、ノズルと、押出部材と、案内部と、回転抑制部と、を有する。ノズルは、眼内レンズが通過する通路が先端に向かって先細りする内腔形状を有する。押出部材は、ノズル内における眼内レンズの外周縁部を押して眼内レンズを折り畳みながら、眼内レンズをノズルの先端からノズルの外部へ押し出す軸状の部材である。案内部は、ノズル内における押出部材を押出軸に沿って案内する。回転抑制部は、内腔形状を押出部材の押出軸に直交する直交断面で見て、押出部材により押し出される眼内レンズが押出部材の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部を当接させて一方向回転を抑制する。
【0011】
本開示の眼内レンズ挿入器具は、内腔形状を押出部材の押出軸に直交する直交断面で見て、押出部材により押し出される眼内レンズが押出部材の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部を当接させて一方向回転を抑制する回転抑制部を有する。そのため、眼内レンズが押出軸によって押し出される際、押出軸の軸周りにおける回転を抑制して、ノズル内の眼内レンズの姿勢を安定させることができる。
【0012】
また、上記眼内レンズ挿入器具における回転抑制部は、押出部材の押出軸から案内部に対向するノズル内面に対して直交する仮想線が交わる点を基準点とし、基準点からノズルの内腔形状における両側終端までの両周長のうち、一方向回転側の周長が短く設定されてもよい。これにより、回転抑制部の構成よって、一方向回転側の周長が短く設定される。これにより、眼内レンズが押出軸によって押し出される際、一方向回転側に位置する外周縁部が先に回転抑制部と当接するため、ノズル内の眼内レンズの姿勢を安定させることができる。
【0013】
また、上記眼内レンズ挿入器具のノズルの内腔形状における両周長の差は、ノズルの先端に向かって徐々に小さくなるように変化するものであってもよい。これにより、眼内レンズの押出軸周りの回転姿勢を徐々に修正し、ノズル先端から外部に送出することができる。
【0014】
また、上記眼内レンズ挿入器具のノズル内における眼内レンズは、支持部のうちノズルの先端側に位置する前方支持部の根元部分が仮想線と重ならない位置関係とされており、回転抑制部は、仮想線を境として前方支持部の根元部分が配設されていない側に設けられていてもよい。ノズル内における眼内レンズは、仮想線を境として前方支持部の根元部分が配設される側と、配設されない側となり非対称の姿勢となる。そのため、押出軸周りにロール状に変形した眼内レンズは、開放姿勢(復元姿勢)となる方向の力が左右で異なる。ここで、前方支持部の根元部分が配設される側の方が、前方支持部の根元部分が配設されない側に比べて剛性が高くなり得る。そのため、ノズル内の眼内レンズは、押出軸周りにおいて前方支持部の根元部分が配設されない側に向かって回転しやすい(一方向回転)。そのため、一方向回転に向かう部位に回転抑制部があることで、眼内レンズの押出軸周りの回転姿勢を安定させることができる。
【0015】
また、上記眼内レンズ挿入器具は、回転抑制部を案内部に設けることで、ノズルの内腔形状における両周長を異ならせる構成であってもよい。回転抑制部を案内部に設けることで、簡素に回転抑制部を構成し得る。
<第1実施形態>
以下、本開示における典型的な実施形態の1つである第1実施形態について、
図1から
図16を参照して説明する。なお、以下の説明における各図に示す方向は、眼内レンズ挿入器具10における本体部100のノズル180側の先端に向かう方向(
図1の紙面左下側)を眼内レンズ挿入器具10の前方、プランジャー300の押圧部370の方向(
図1の紙面右上側)を眼内レンズ挿入器具10の後方とする。また、
図1の紙面上側を眼内レンズ挿入器具10の上方、
図1の紙面下側を眼内レンズ挿入器具10の下方、
図1の紙面右下側(手前側)を眼内レンズ挿入器具10の左方、
図1の紙面左上側(奥側)を眼内レンズ挿入器具10の右方とする。
【0016】
<眼内レンズ挿入器具10の全体構成>
図1を参照して、第1実施形態の眼内レンズ挿入器具10の全体構成について説明する。眼内レンズ挿入器具10は、変形可能な眼内レンズ1(
図3、4参照、詳細は後述する)を眼内に挿入するために使用される。眼内レンズ挿入器具10は、本体部100とプランジャー300を備える。本体部100は略筒状であり、本体部100の内部の通路を通じて眼内レンズ1が眼内に挿入される。プランジャー300は棒状の部材であり、本体部100の内部の通路を前後方向(押出軸Aに沿う方向)に移動することができる。プランジャー300は、押出軸(通路の軸)Aに沿って前方に移動することで、本体部100の内部に充填された眼内レンズ1を押し出す。
【0017】
第1実施形態の本体部100およびプランジャー300は、樹脂材料で形成されている。眼内レンズ挿入器具10は、射出成形、樹脂の削り出しによる切削加工等によって形成されてもよい。眼内レンズ挿入器具10が樹脂材料で形成されることで、使用者は、使用済みの眼内レンズ挿入器具10を容易に廃棄することができる。
【0018】
第1実施形態では、粘着性を有する軟性の眼内レンズ1を円滑に眼内に挿入するために、本体部100の内壁に潤滑コーティング処理が行われている。また、第1実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、無色透明または無色半透明で形成されている。従って、使用者は、眼内レンズ挿入器具10の内部に充填されている眼内レンズ1の変形状態等を、眼内レンズ挿入器具10の外側から容易に視認することができる。
【0019】
<本体部100>
図1を参照して、本体部100について説明する。本体部100は、後方から前方に向かって、本体筒部110と、設置部130と、ノズル180を備える。
【0020】
本体筒部110は、前後方向に延びる筒状に形成されている。本体筒部110は、本体部100の後端側に位置する。本体筒部110の長手方向のうち後端側の位置には、外周面から外方に向かって張り出した鍔部111が設けられている。使用者は、使用時において係る鍔部111に指を掛けて把持する。
【0021】
設置部130は、本体筒部110の前端側に接続されている。設置部130は、設置部本体134と天板部132などを備えている。設置部本体134は、箱状の部材であり上部が開口している。プランジャー300により押し出される前の眼内レンズ1は、設置部130における設置部本体134の内部に設置(充填)される(
図5~11参照)。
【0022】
天板部132は、ノズル180及び設置部本体134に跨って配置され、これらの上部開口を覆う蓋部材である。天板部132は、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)を用いた射出成形、樹脂の削り出しによる切削加工等によって形成されてもよい。第1実施形態の天板部132は、板状部136と、案内部140(
図12参照)を備えている。板状部136は、平板状でありノズル180及び設置部本体134の開口を覆うように形成されている。
【0023】
案内部140は、
図12~16に示すように、プランジャー300の押出部材310を押し出し方向(押出軸A)に沿って案内する溝形状が設けられている。案内部140における溝形状は、後述するプランジャー300の棒状の押出部材310の外周面と略同径の円弧状の溝が押出軸Aに沿って連なって設けられている。係る案内部140の溝形状は、第1突起141と、第2突起142により構成される。
【0024】
第1突起141と第2突起142は、プランジャー300の押出部材310の押し出し方向(押出軸A)に沿って形成されている。すなわち、第1突起141と第2突起142は、案内部140の溝形状の両脇(押出軸Aに交差する左右両端)において押出軸Aに沿って連なって設けられている。第1突起141は、案内部140の一方の壁面141aを構成しており、板状部136から眼内レンズ1が配置される側(
図5の紙面奥側)に突出している。第2突起142は、案内部140の他方の壁面142aを構成しており、板状部136から眼内レンズ1が配置される側(
図5の紙面奥側)に突出している。
【0025】
ノズル180は、
図5~11に示すように設置部130の前端側に接続されている。ノズル180内の通路面積は、眼内レンズ1を前方に押し進める過程で眼内レンズ1を小さく変形させるために、前方に向かう程小さくなる。つまり、ノズル180は、眼内レンズ1が通過する通路が先端に向かって先細りする内腔形状を有する。ノズル180の前端には、円筒状の挿入部182が設けられている。挿入部182は眼内に差し込まれる。挿入部182の前端には、眼内レンズ1を内部の通路から前方に排出するための開口である挿入口183が形成されている。挿入口183は、先端が斜めに切断された切欠き(ベベル)が設けられている。本体部100(
図1参照)の内部の通路は、本体筒部110(
図1参照)の後端からノズル180の前端の挿入口183まで貫通している。なおノズル180の内腔形状の詳細については後述する。
【0026】
<プランジャー300>
図2を参照して、プランジャー300の概略構成について説明する。第1実施形態のプランジャー300は、押出部材310と、軸基部350と、押圧部370を備える。
【0027】
押圧部370は、プランジャー300の後端に形成されている。押圧部370は、押出軸A(
図1参照)と直交する方向に延びる板状の部材である。押圧部370には、使用者がプランジャー300を前方へ押し出す際に、使用者の指が接触する部位である。
【0028】
軸基部350は、押圧部370の前端側から前方に延びる棒状の部材である。第1実施形態では、軸基部350は、押出軸Aに直交する断面の形状が略H状となるように形成されている。軸基部350は、押出軸Aに直交する断面の形状が略矩形である本体筒部110に挿入されることで、本体部100に対するプランジャー300の押出軸Aの周方向の回転が抑制される。プランジャー300が前方へ移動し、眼内レンズ1の眼内への挿入が完了する位置に到達すると、軸基部350の前端下部の傾斜面が、本体部100の所定箇所に形成された傾斜面に接触して止まる。その結果、プランジャー300の前端が挿入口183(
図1参照)から過度に突き出ることが防止される。
【0029】
押出部材310は、棒状の部材であり、押出軸Aの軸方向に沿って軸基部350の前端から前方に延びる。押出部材310は、押出軸Aに直交する断面の形状が略円形となるように形成されている。また、押出部材310の太さは、本体部100の挿入口183を通過できる太さとなっている。押出部材310は、本体部100の通路内を押出軸Aに沿って前方に移動することで、眼内レンズ1のタッキングを行うと共に、眼内レンズ1を挿入口183から眼内に排出する。
【0030】
<眼内レンズ1>
図3、4を参照して、眼内レンズ挿入器具10によって眼内に挿入される眼内レンズ1の一例について説明する。眼内レンズ1は、光学部2と支持部3を備える。第1実施形態の眼内レンズ1は、光学部2と支持部3が一体成形された所謂ワンピースタイプの眼内レンズである。第1実施形態で使用される眼内レンズ1は、光学部2と、一対の支持部3である前方支持部3Aおよび後方支持部3Bと、が一体成形されている。眼内レンズ1は、柔軟な素材の材料として、例えば、BA(ブチルアクリレート)、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の単体、アクリル酸エステルとメタクリル酸エステルの複合材料等の種々の軟性の樹脂材料を採用できる。なお、第1実施形態では所謂ワンピースタイプの眼内レンズ1を例示したが、本開示で例示する技術の少なくとも一部は、光学部2と支持部3が別部材で形成された、所謂3ピース型の眼内レンズにも適用できる。
【0031】
光学部2は、患者眼に所定の屈折力を与える。光学部2の形状は円盤形状である。光学部2の光軸Lは、光学部2の中心を通り、且つ上下方向に延びる。支持部3は、光学部2を眼内で支持する。一例として、第1実施形態の眼内レンズ1には、一対の支持部3として、前方支持部3A及び後方支持部3Bが設けられている。また、前方支持部3Aと後方支持部3Bは、光学部2の外周縁部2Cから径方向外方に湾曲して延び出して、光学部2の中心である光軸Lを基準として点対称の位置に形成されている。前方支持部3Aは、根元部分6Aが接続部分4Aを介して光学部2の外周縁部2Cに接続されており、周方向に湾曲したループ形状であり、先端部分8Aが開放されている。(つまり、先端部分8Aは自由端とされている)。後方支持部3Bは、根元部分6Bが接続部分4Bを介して光学部2の外周縁部2Cに接続されており、周方向に湾曲したループ形状であり、先端部分8Bが開放されている(つまり、先端部分8Bは自由端とされている)。光学部2は、光軸L方向の端面として、後述するように設置部130の板状部136と対面する第1面2Aと、第1面2Aの反対側であり、設置部130における底面と接触する第2面2Bとを備えている。
【0032】
<ノズル180の内腔形状>
図12~16を参照して、第1実施形態のノズル180の内腔形状について説明する。内腔形状は、回転抑制部150を有している。回転抑制部150は、ノズル180を押出部材310の押出軸Aに直交する直交断面で見て、押出部材310により押し出される眼内レンズ1が押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部2Cを当接させて一方向回転を抑制するように機能する。
【0033】
回転抑制部150は、次のように構成される。まず、押出部材310の押出軸Aから案内部140に対向するノズル180の内面に対して直交する線を仮想線Vとする。ここで、ノズル180内における眼内レンズ1は、支持部3のうちノズル180の挿入口183側に位置する前方支持部3Aの根元部分6Aが仮想線Vと重ならない位置関係とされている(
図5の紙面では押出軸Aより上側)。具体的には、前方支持部3Aの根元部分6Aは、ノズル180を押出部材310の押出軸Aに直交する直交断面で見て仮想線Vを境として右側に位置する。そして、回転抑制部150は、仮想線Vを境として前方支持部3Aの根元部分6Aが配設されていない左側に設けられている。
【0034】
この仮想線Vと第1突起141を形成する壁面141a(第1突起141を形成する壁面であって、仮想線Vから遠ざかる方向を向く側面)との間を幅WA1とし、仮想線Vと第2突起142を形成する壁面142a(第2突起142を形成する壁面であって、仮想線Vから遠ざかる方向を向く側面)との間を幅WB1とする。このとき、両幅の関係は、幅WA1よりも幅WB1の方が大きい(幅WA1<幅WB1)。この幅WB1を構成する第2突起142の壁面142aが回転抑制部150である。ここで、仮想線Vと第1突起141を形成する壁面141aとの幅は、ノズル180の挿入口183側に向かって幅WA1から幅WA4において、略同幅を維持している。これに対し、回転抑制部150が構成される仮想線Vと第2突起142を形成する壁面142aとの幅は、ノズル180の挿入口183側(
図5~
図11参照)に向かって幅WB1から幅WB4において徐々に幅狭となる。
【0035】
また、押出部材310の押出軸Aから案内部140に対向するノズル180の内面に対して直交する仮想線Vが交わる点を基準点Sとする。この基準点Sからノズル180の内腔形状における両側終端(壁面141a又は壁面142a)までの周長を周長XA1と周長XB1とする。周長XA1は、ノズル180の内面のうち基準点Sから右側の内面長さをいう。周長XB1は、ノズル180の内面のうち基準点Sから左側の内面長さをいう。ここで、周長XA1と周長XB1を比較すると、周長XA1よりも周長XB1の方が短く設定される(周長XA1>周長XB1)。このように、回転抑制部150は、案内部140における第1突起141の壁面141aと第2突起142の壁面142aの幅の差によってノズル180の内腔形状における周長XA1、XB1を異ならせることで構成される。
【0036】
また、ノズル180の内腔形状は、仮想線Vを境として右側に位置する周長XA1がノズル180の挿入口183側に向かって周長XA2、XA3、XA4の順に徐々に短くなる。同様に、仮想線Vを境として左側に位置する周長XB1がノズル180の挿入口183側に向かって周長XB2、XB3、XB4の順に徐々に短くなる。そして、ノズル180の挿入口183側に位置する周長XA5と周長XB5は、略同一の長さとなる。すなわち、ノズル180の内腔形状は、仮想線Vを境とした両周長の差が、ノズル180の挿入口183に向かって徐々に小さくなるように変化している。
【0037】
図5~
図11、
図12~16を参照して、第1実施形態で例示した技術を採用することによる作用効果について説明する。まず、作業者は、設置部130に保持されている眼内レンズ1を、プランジャー300によって押し出されることが可能な待機位置に移動させる。
【0038】
図5に示すように、設置部130に設置された眼内レンズ1は、前方支持部3Aの根元部分6Aが押出軸Aに対して右側(
図5における上側)に位置し、後方支持部3Bの根元部分6Bが押出軸Aに対して左側(
図5における下側)に位置する。なお、第1実施形態の眼内レンズ挿入器具10は、眼内レンズ1が予め内部に充填された、所謂プリセット型の器具である。しかし、本開示で例示する技術は、患者眼に眼内レンズ1を挿入する直前に眼内レンズ1が内部に充填される眼内レンズ挿入器具等にも適用できる。
【0039】
作業者は、注入器等を用いて充填物(例えば、粘弾性物質、水等)を設置部130内に注入し、プランジャー300の前方への移動を開始させる。その結果、
図5に示すように、プランジャー300の押出部材310が、眼内レンズ1の後方支持部3Bの一部に接触する。
【0040】
図6に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、後方支持部3Bは、押出部材310によって光学部2に近づく方向(つまり前方)に移動していく。その後、後方支持部3Bは、光学部2の第1面2A上(
図6の図示で手前側)へ変形移動して折り畳まれ、後方支持部3Bの先端部分8Bが前方を向く。その結果、後方支持部3Bのタッキングが行われる。
【0041】
図7、12に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1がノズル180に到達し、先細りとなっているノズル180の内壁に接触し始める。このとき、眼内レンズ1は、ノズル180の内壁が曲面を呈していることからこの内壁に沿ってロール状に変形し始める。ここで、第1実施形態の眼内レンズ1は、押出軸Aの軸周りにおいて左側に向かって回転しやすい(一方向回転)。そのため、眼内レンズ1は、一方向回転側に位置する外周縁部2Cが回転抑制部150(壁面142a)に当接して一方向回転が抑制される。
【0042】
図8、13に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1がノズル180の内壁に沿ってさらにロール状に変形する。このとき、眼内レンズ1は、一方向回転側に位置する外周縁部2Cが回転抑制部150に当接した状態を維持して一方向回転が抑制される。また、先細りとなっているノズル180の内壁に前方支持部3Aが接触する。詳細には、前方支持部3Aの根元部分6Aが、ノズル180の右側の内壁に接触して応力を受けることで、前方支持部3Aが光学部2に近づく方向(つまり後方)に変形する。さらに、前方支持部3Aの先端部分8Aの近傍は、ノズル180の左側の内壁に接触して応力を受けることで、後方に向かって変形し始める。
【0043】
図9、14に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1がノズル180の内壁に沿ってさらにロール状に変形する。このとき、眼内レンズ1は、一方向回転側に位置する外周縁部2Cが回転抑制部150に当接した状態を維持して一方向回転が抑制される。また、前方支持部3Aは、光学部2にさらに近づく方向(つまり後方)に変形し、先端部分8Aが後方に向かってさらに変形する。
【0044】
図13、14に示すように、第1突起141の壁面141aと、これに対向する外周縁部2Cの間には、隙間Dを有する。これにより、プランジャー300が前方に押し進められる際、眼内レンズ1は、押出軸A周りに変形する余裕代があるため、押し出し荷重が重くなり難い。これにより、例えば、プランジャー300が眼内レンズ1に食い込むことによる眼内レンズ1のクラックの発生が抑制され易く、またプランジャー300を前進させるために必要な力(押圧力)が上昇し難い。
【0045】
図10、15に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1がノズル180の内壁に沿ってさらにロール状に変形する。このとき、眼内レンズ1は、一方向回転側に位置する外周縁部2Cが回転抑制部150に当接した状態を維持して一方向回転が抑制される。また、前方支持部3Aが光学部2の第1面2A上(
図10の図示で手前側)へ変形移動して折り畳まれ、前方支持部3Aの先端部分8Aが後方を向く。つまり、前方支持部3Aのタッキングが行われる。
【0046】
図11、16に示すように、プランジャー300がさらに前方に押し進められると、眼内レンズ1は、前方支持部3Aおよび後方支持部3Bのタッキングが行われた状態で小さく折り畳まれていく。その後、眼内レンズ1は、挿入口183から眼内に挿入される。
【0047】
ここで、眼内レンズ挿入器具10は、挿入部182を水晶体嚢の中に挿入する際、挿入口183の開口を水晶体の後嚢に対向する姿勢で挿入する。回転抑制部150によって一方向回転が抑制された眼内レンズ1は、挿入口183から送出される際、次のような挙動で送出される。眼内レンズ1は、挿入口183から送出される直前において、タッキングされた後方支持部3Bが押出部材310とノズル180の内壁に挟まれた状態となるとともに、光学部2が押出軸Aの軸周りに回転しながら開放姿勢(復元姿勢)へと展開し始める。そして、眼内レンズ1は、最後に後方支持部3Bが挿入口183から送出されると、第1面2Aが前嚢に対面し、第2面2B(
図4参照)が後嚢に対面する姿勢となって水晶体嚢内に載置される。
【0048】
次に、本実施形態の眼内レンズ挿入器具10の構成と、これと異なる構成について比較した内容を説明する。
【0049】
図22には、ノズル180内に案内部140が構成されていない場合の眼内レンズ1の変形状態を示す概略説明図が示されている。眼内レンズ1は、ノズル180内に案内部140が無い場合、押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に向かって回転し過ぎてしまい左右対称の折り畳みとならない可能性(例えば、折り畳まれた光学部2の光軸Lが左右方向を向く状態)がある。すなわち、眼内レンズ1が押出部材310によって押し出される際、押出軸Aの軸周りにおける回転を抑制して、ノズル180内の眼内レンズ1の姿勢を安定させることができないことが想定される。
【0050】
図23には、ノズル180内に回転抑制部150が構成されていない案内部240の場合の眼内レンズ1の変形状態を示す概略説明図が示されている。第1突起241と第2突起242が対称形状の案内部240である場合における眼内レンズ1の変形について検討する。眼内レンズ1は、案内部240に回転抑制部150が構成されないことから、押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に向かって回転し易く、左右対称の折り畳みとならない可能性(例えば、押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部2Cがめくれあがってしまい左右対称な折り畳みの変形とならない状態)がある。すなわち、眼内レンズ1が押出部材310によって押し出される際、押出軸Aの軸周りにおける回転を抑制して、ノズル180内の眼内レンズ1の姿勢を安定させることができないことが想定される。
【0051】
上述した
図22、23の態様に対し、本実施形態における案内部140(
図12~16参照)には、回転抑制部150が構成されていることから、押出軸Aの軸周りにおける回転を抑制して、ノズル180内の眼内レンズ1の姿勢を安定させることができる。つまり、第1実施形態の眼内レンズ挿入器具10は回転抑制部150を備えるため、光学部2の光軸Lが上下方向を向く状態が維持されたまま光学部2がロール状に折り畳まれる(
図12~16参照)。
【0052】
図24には、回転抑制部150が構成されない案内部240と眼内レンズ1の関係(前述した
図23の眼内レンズ挿入器具に対応する)と、回転抑制部150が構成される案内部140と眼内レンズ1の関係(第1実施形態の眼内レンズ挿入器具10に対応する)を模式的に示す概略説明図が示されている。なお同図は、眼内レンズ1の支持部3の図示を省略して図示している。また、案内部140、240の形状を模式的に図示している。眼内レンズ1は、ノズル180が先細り形状となっていることから、前方方向(進行方向側)が先行して折り畳み状に変形する。ここで、案内部240に回転抑制部150が構成されない場合(つまり
図23の状態)には、眼内レンズ1が一方向回転側である第2突起242側に回転する。そうすると、眼内レンズ1の外周縁部2Cの部位Pは、第2突起242の前方端部242Fと点接触状態となって接触圧が高くなり、この部位Pの箇所で応力集中に伴うクラックが発生し得る。また、外周縁部2Cが前方端部242Fと接触する位置(部位P)と、押出部材310(
図5~11参照)が眼内レンズ1を押し出す位置である部位Rが遠くなるため押出部材310が眼内レンズ1に食い込みやすくなってしまう恐れがある。一方、回転抑制部150が構成される案内部140と眼内レンズ1との関係において検討する。眼内レンズ1の外周縁部2Cは、回転抑制部150の前後方向に延在する接触面150Fで接触するため、接触圧が分散されて応力集中が生じにくくなる。これにより、前述した応力集中に伴うクラックが発生し難い。また回転抑制部150が構成される案内部140では、接触面150Fの基端(部位Q)と押出部材310が眼内レンズ1を押し出す位置(部位R)との距離が、前述した部位Pと部位Rとの距離よりも短いため、押出部材310が眼内レンズ1に食い込み難い。なお押出部材310が眼内レンズ1に食い込むほど、例えば、押出部材310と接触する眼内レンズ1の部位Rにクラックが発生し易くなる。また例えば、押出部材310が眼内レンズ1に食い込み、押出部材310の先端側面に光学部2が回り込むほど、プランジャー300の側面とノズル180の内壁との間に光学部2の一部が配置され、プランジャー300を前進させるために必要な力(押圧力)が必要になり易い(つまり操作性が悪くなる)。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本開示における典型的な実施形態の1つである第2実施形態について、
図17から
図21を参照して説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態におけるノズル180の内腔形状と異なるノズル280の内腔形状を有するものである。なお、ノズル280の内腔形状以外の構成については、第1実施形態と同様の構成であることから詳細な説明は省略する。例えば、設置部230、天板部232、設置部本体234、板状部236は、第1実施形態における設置部130、天板部132、設置部本体134、板状部136とそれぞれ実質的に同様の構成であるため、各図には符号を付すのみで詳細な説明を省略する。
【0054】
<ノズル280の内腔形状>
図17~21を参照して、第2実施形態のノズル280の内腔形状について説明する。内腔形状は、回転抑制部250を有している。回転抑制部250は、ノズル280を押出部材310の押出軸Aに直交する直交断面で見て、押出部材310により押し出される眼内レンズ1が押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部2Cを当接させて一方向回転を抑制するように機能する。
【0055】
回転抑制部250は、次のように構成される。まず、押出部材310の押出軸Aから案内部240に対向するノズル280の内面に対して直交する線を仮想線Vとする。ここで、ノズル280内における眼内レンズ1は、支持部3(
図3、4参照)のうちノズル280の先端側に位置する前方支持部3Aの根元部分6Aが仮想線Vと重ならない位置関係とされている(
図5の紙面では押出軸Aより上側)。具体的には、前方支持部3Aの根元部分6Aは、ノズル280を押出部材310の押出軸Aに直交する直交断面で見て仮想線Vを境として右側に位置する。そして、回転抑制部250は、仮想線Vを境として前方支持部3Aの根元部分6Aが配設されていない左側に設けられている。
【0056】
第2実施形態における回転抑制部250は、ノズル280の内壁が内側に向かって突出する突部249を形成する壁面であって、仮想線Vから遠ざかる方向を向く側面に構成されている。ここで、仮想線Vと第1突起241を形成する壁面241aとの間を幅WA1とする。なお、第2実施形態では、仮想線Vと第2突起242を形成する壁面242aとの間である幅WC1は幅WA1と略同じ幅である。また、仮想線Vと突部249における回転抑制部250の側面との間を幅WB1とする。このとき、両幅の関係は、幅WA1よりも幅WB1の方が大きい(幅WA1<幅WB1)。ここで、仮想線Vと第1突起241を形成する壁面241aとの幅は、ノズル280の挿入口183側(
図5~11参照)に向かって幅WA1から幅WA3において、略同幅を維持している。また、仮想線Vと第2突起242を形成する壁面242aとの幅は、ノズル280の挿入口183側に向かって幅WC1から幅WC3において、略同幅を維持している。これに対し、仮想線Vと突部249における回転抑制部250の側面との幅は、ノズル280の挿入口183側に向かって幅WB1から幅WB4において徐々に幅狭となる。
【0057】
また、押出部材310の押出軸Aから案内部240に対向するノズル280の内面に対して直交する仮想線Vが交わる点を基準点Sとする。この基準点Sからノズル280の内腔形状における両側終端までの周長を周長XA1と周長XB1とする。周長XA1は、ノズル280の内面のうち基準点Sから右側の内面長さをいう。周長XB1は、ノズル280の内面のうち基準点Sから左側の内面長さをいう。ここで、周長XA1と周長XB1を比較すると、周長XA1よりも周長XB1の方が短く設定される(周長XA1>周長XB1)。このように、回転抑制部250は、案内部240における第1突起241と回転抑制部250によってノズル280の内腔形状における周長XA1、XB1を異ならせることで構成される。
【0058】
また、ノズル280の内腔形状は、仮想線Vを境として右側に位置する周長XA1がノズル280の挿入口183側に向かって周長XA2、XA3、XA4の順に徐々に短くなる。同様に、仮想線Vを境として左側に位置する周長XB1がノズル280の挿入口183側に向かって周長XB2、XB3、XB4の順に徐々に短くなる。そして、ノズル280の挿入口183側に位置する周長XA5と周長XB5は、略同一の長さとなる。すなわち、ノズル280の内腔形状は、仮想線Vを境とした両周長の差が、ノズル280の挿入口183に向かって徐々に小さくなるように変化している。なお、第2実施形態における眼内レンズ挿入器具の作用効果は実質的に第1実施形態と同様のため詳細な説明は省略する。
【0059】
このように、本開示の第1実施形態、第2実施形態に係る眼内レンズ挿入器具によれば、内腔形状を押出部材310の押出軸Aに直交する直交断面で見て、押出部材310により押し出される眼内レンズ1が押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側に位置する外周縁部2Cを当接させて一方向回転を抑制する回転抑制部150、250を有する。そのため、眼内レンズ1が押出軸Aによって押し出される際、押出軸Aの軸周りにおける回転を抑制して、ノズル180、280内の眼内レンズ1の姿勢を安定させることができる。
【0060】
また、回転抑制部150、250の構成によって、一方向回転側の周長XB1~XB4が、周長XA1~XA4より短く設定される。これにより、眼内レンズ1が押出軸Aによって押し出される際、一方向回転側に位置する外周縁部2Cが先に回転抑制部150、250と当接するため、ノズル180、280内の眼内レンズ1の姿勢を安定させることができる。
【0061】
眼内レンズ挿入器具のノズル180、280の内腔形状における両周長の差は、ノズルの先端である挿入口183に向かって徐々に小さくなるように変化する。これにより、眼内レンズ1の押出軸A周りの回転姿勢を徐々に修正し、ノズル180、280の先端である挿入口183から外部に送出することができる。
【0062】
また、ノズル180、280内における眼内レンズ1は、仮想線Vを境として前方支持部3Aの根元部分6Aが配設される側と、配設されない側となり非対称の姿勢となる。そのため、押出軸A周りにロール状に変形した眼内レンズ1は、開放姿勢(復元姿勢)となる方向の力が異なる。ここで、前方支持部3Aの根元部分6Aが配設される側の方が、前方支持部3Aの根元部分6Aが配設されない側に比べて剛性が高い。そのため、そのため、ノズル180、280内の眼内レンズ1は、押出軸A周りにおいて前方支持部3Aの根元部分6Aが配設されない側に向かって回転しやすい(一方向回転)。そのため、一方向回転に向かう部位に回転抑制部150、250があることで、眼内レンズ1の押出軸A周りの回転姿勢を安定させることができる。
【0063】
また、回転抑制部150を案内部140に設けることで簡素に回転抑制部150を構成しつつ、ノズル180の内腔形状における両周長を異ならせる構成とすることができる。
【0064】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の眼内レンズ挿入器具は、上記実施形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。例えば、眼内レンズ1が第1実施形態とは反対方向(
図12だと時計回り方向)に回転しやすい場合、回転抑制部150を第1突起141側に設けてもよい。つまり、幅WA1を幅WB1よりも長くして、押出部材310により押し出される眼内レンズ1が押出部材310の軸周りにおいて回転しやすい一方向回転側(第1突起141側)に回転抑制部150を配置する態様にしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 眼内レンズ
2 光学部
2A 第1面
2B 第2面
2C 外周縁部
3 支持部
3A 前方支持部
4A 接続部分
6A 根元部分
8A 先端部分
3B 後方支持部
4B 接続部分
6B 根元部分
8B 先端部分
10 眼内レンズ挿入器具
100 本体部
110 本体筒部
111 鍔部
130 設置部
132 天板部
134 設置部本体
136 板状部
140 案内部
141 第1突起
141a 壁面
142 第2突起
142a 壁面
150 回転抑制部
180 ノズル
182 挿入部
183 挿入口
230 設置部
232 天板部
234 設置部本体
236 板状部
240 案内部
241 第1突起
241a 壁面
242 第2突起
242a 壁面
249 突部
250 回転抑制部
280 ノズル
300 プランジャー
310 押出部材
350 軸基部
370 押圧部
A 押出軸
L 光軸
V 仮想線
S 基準点
WA1~WA4 幅
WB1~WB4 幅
XA1~XA5 周長
XB1~XB5 周長
D 隙間
240 案内部
241 第1突起
242 第2突起
242F 前方端部
150F 接触面