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特許7427909積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/40 20060101AFI20240130BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240130BHJP
   C09J 7/32 20180101ALI20240130BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20240130BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20240130BHJP
   C09D 183/00 20060101ALI20240130BHJP
   C09D 133/00 20060101ALI20240130BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20240130BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B32B27/40
B65D65/40 D
C09J7/32
C09D11/00
C09D5/00 D
C09D183/00
C09D133/00
C09J175/04
B32B27/00 C
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019191057
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021066031
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】上村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】雨河 宏太朗
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-216504(JP,A)
【文献】特開平07-053661(JP,A)
【文献】特表2014-527548(JP,A)
【文献】特開2001-019782(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/051286(JP,A1)
【文献】特開2010-031105(JP,A)
【文献】特開平10-095830(JP,A)
【文献】特開2014-208443(JP,A)
【文献】特開2005-059376(JP,A)
【文献】特開2016-055560(JP,A)
【文献】特開2002-249745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B65D65/00-65/46
C09D1/00-10/00
101/00-201/10
C09J1/00-5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層と、
熱可塑性樹脂層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する中間基材層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層との間に位置する第1無溶剤型接着層と、
前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する第2無溶剤型接着層と、
前記ガスバリアフィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置する水性インキ層と、を備え、
前記水性インキ層は、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含み、
各接着層を形成する接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤であり、
前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である
積層フィルム。
【請求項2】
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、
前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオールであり、
前記脂肪族系ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
前記芳香族系ポリイソシアネートが、キシリレンジイソシアネートである
請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
前記水性インキ層に残存するアルコール系溶媒量は、20mg/m以下である
請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
前記水性インキ層に残存する水分量は、100mg/m以下である
請求項2または3に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、
前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
前記バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物、および、水酸基を有した水溶性高分子の塗工膜の乾燥物からなる群から選択されるいずれか1つを含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、
前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、
前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備え、
前記プライマー層は、トリアルコキシシランとトリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、ポリカルボン酸系重合体を含む前記バリア層と、を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項8】
前記ガスバリアフィルム層は、
前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含む前記バリア層と、を備える
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項9】
積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、
前記積層フィルムが、請求項1から8のいずれか一項に記載の積層フィルムである
包装袋。
【請求項10】
基材フィルム層を備えるガスバリアフィルム層、水性インキ層、第1無溶剤型接着層、中間基材層、第2無溶剤型接着層、および、熱可塑性樹脂層をこの順に配置する積層フィルムの製造方法であって、
インキを用いた印刷で前記ガスバリアフィルム層に水性インキ層を形成すること、
前記水性インキ層を備えた前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、および、
前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、を含み、
前記インキは、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキであり、
前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を含み、
前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である
積層フィルムの製造方法。
【請求項11】
前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、
前記ポリオール成分は、ポリエステルポリオールであり、
前記脂肪族系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、
前記芳香族系ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートである
請求項10に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項12】
前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工温度は、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上6000mPa・s以下となる温度である
請求項10または11に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項13】
積層フィルムを製造すること、および、
前記積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって包装袋を密封すること、を含む包装袋の製造方法であって、
前記積層フィルムを製造することが、請求項10から12のいずれか一項に記載の積層フィルムの製造方法である
包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルム層と熱可塑性樹脂層との間に二液硬化型ウレタン系接着剤から形成される接着層を備えた積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂層とガスバリアフィルム層とが接着層によって接合された積層フィルムは、熱可塑性層同士の熱溶着を通じて、食品、化粧品、医薬品などを収容する包装袋に製袋される(特許文献1)。レトルト加熱殺菌用包材などの耐性包装袋であっても、上記接着層を形成するための接着剤には、通常、二液硬化型ウレタン系接着剤が用いられる。二液硬化型ウレタン系接着剤に含まれた有機溶媒は、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)排出量の観点で、積層フィルムや包装袋の環境適合性を低めてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-46006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、有機溶剤を含まない二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤では、有機溶剤を用いずとも接着剤を塗工できる程度に、主剤などの低分子量化による低粘度化が図られている。低分子量化に起因した主剤などの初期凝集力の低下は、有機溶剤を用いない塗工を可能とする一方で、接着強度を得るための養生期間の長期化を招いてしまい、養生期間に生成される微細な気泡による梨肌状やゆず肌状などの斑点状の外観を積層フィルムに与えている。特に、微細な気泡が抜け難いガスバリアフィルム層を備えた積層フィルムでは、外観品質の劣化が顕著なものとなっている。
【0005】
本発明の目的は、外観品質の劣化を抑制可能にした積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための積層フィルムは、ガスバリアフィルム層と、熱可塑性樹脂層と、前記ガスバリアフィルム層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する中間基材層と、前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層との間に位置する第1無溶剤型接着層と、前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層との間に位置する第2無溶剤型接着層と、前記ガスバリアフィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置する水性インキ層と、を備える。そして、前記水性インキ層は、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含み、各接着層を形成する接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分とを含む二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤であり、前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である。
【0007】
上記課題を解決するための積層フィルムの製造方法は、ガスバリアフィルム層、水性インキ層、第1無溶剤型接着層、中間基材層、第2無溶剤型接着層、および、熱可塑性樹脂層をこの順に配置する積層フィルムの製造方法であって、インキを用いた印刷で前記ガスバリアフィルム層に水性インキ層を形成すること、前記水性インキ層を備えた前記ガスバリアフィルム層と前記中間基材層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、および、前記中間基材層と前記熱可塑性樹脂層とを、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工によって貼り合わせること、を含む。そして、前記インキは、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤とを含む水性インキであり、前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤は、部分的に末端酸変性されたポリオール成分と、ポリイソシアネート成分と、を含み、前記ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である。
【0008】
上記各構成によれば、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を用いて接着層が形成されるため、積層フィルムにおける環境適合性を高めることが可能となる。また、ガスバリアフィルム層と第1無溶剤型接着層との間に水性インキ層が存する構成では、水性インキ層に残存する水や水系溶媒と、第1無溶剤型接着層の接着剤との副反応によって、ガスバリアフィルム層と接着層との間での気泡を生じさせるおそれがある。この点、水性インキ層がポリウレタン樹脂と水性架橋剤とを含むため、水性インキ層に残存する水や溶剤成分と、第1無溶剤型接着層の接着剤との副反応、ひいては、ガスバリアフィルム層と接着層との間での気泡の発生自体を抑制できる。加えて、接着剤を構成するポリイソシアネート成分が、脂肪族系ポリイソシアネートと、芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であるため、積層フィルムが斑点状の外観を呈することを抑制できる。
【0009】
上記積層フィルムは、前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、前記ポリオール成分が、ポリエステルポリオールであり、前記脂肪族系ポリイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、前記芳香族系ポリイソシアネートが、キシリレンジイソシアネートであってもよい。
【0010】
上記積層フィルムの製造方法において、前記水性架橋剤は、カルボジイミド化合物であり、前記ポリオール成分は、ポリエステルポリオールであり、前記脂肪族系ポリイソシアネートは、ヘキサメチレンジイソシアネートであり、前記芳香族系ポリイソシアネートは、キシリレンジイソシアネートであってもよい。
【0011】
上記積層フィルムにおいて、前記水性インキ層に残存するアルコール系溶媒量は、20mg/m以下であってもよい。また、上記積層フィルムにおいて、前記水性インキ層に残存する水分量は、100mg/m以下であってもよい。これらの各構成によれば、ガスバリアフィルム層と第1無溶剤型接着層との間での気泡生成の抑制効果について、その実効性を高められる。
【0012】
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備えてもよい。そして、前記バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物、および、水酸基を有した水溶性高分子の塗工膜の乾燥物からなる群から選択されるいずれか1つを含んでもよい。
【0013】
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層と、前記基材フィルム層と前記バリア層との間に位置するプライマー層と、前記プライマー層と前記バリア層との間に位置する酸化金属層と、を備えてもよい。そして、前記プライマー層は、トリアルコキシシランとトリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含んでもよい。
【0014】
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、ポリカルボン酸系重合体を含む前記バリア層と、を備えてもよい。
【0015】
上記積層フィルムにおいて、前記ガスバリアフィルム層は、基材フィルム層と、前記基材フィルム層と前記第1無溶剤型接着層との間に位置するバリア層であって、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含む前記バリア層と、を備えてもよい。
【0016】
上記積層フィルムの製造方法において、前記二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の塗工温度は、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上6000mPa・s以下となる温度であってもよい。
【0017】
上記積層フィルムの製造方法によれば、積層フィルムの外観品質が劣化することを抑制できる程度に接着剤の平滑化が可能であり、加えて、可使時間であるポットライフが過度に短くなることを抑えることが可能ともなる。
【0018】
上記課題を解決するための包装袋は、積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって密封される包装袋であって、前記積層フィルムが、上述した積層フィルムである。
【0019】
上記課題を解決するための包装袋の製造方法は、積層フィルムを製造すること、および、前記積層フィルムが備える熱可塑性樹脂層同士が対向するように重ねられて前記熱可塑性樹脂層同士の熱溶着によって包装袋を密封すること、を含む包装袋の製造方法であって、前記積層フィルムを製造することが、上述した積層フィルムの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明における積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法によれば、外観品質の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】積層フィルムの一実施形態における層構造を示す断面図。
図2】包装袋の一実施形態における平面構造を示す平面図。
図3】積層フィルムの製造方法の一実施形態における工程図。
図4】コーン・プレート粘度と経過時間との関係を示すグラフ。
図5】積層フィルムを撮像した顕微鏡画像の二値化画像を示す画像図。
図6】積層フィルムを撮像した顕微鏡画像の二値化画像を示す画像図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図6を参照して、積層フィルム、包装袋、積層フィルムの製造方法、および、包装袋の製造方法の一実施形態を説明する。
[第1層構成]
図1が示すように、積層フィルムは、(A)ガスバリアフィルム層11/(B)水性インキ層12/(C)第1無溶剤型接着層13/(D)中間基材層14/(E)第2無溶剤型接着層15/(F)熱可塑性樹脂層16と表記される層構成を備える。すなわち、積層フィルムは、ガスバリアフィルム層11、水性インキ層12、第1無溶剤型接着層13、中間基材層14、第2無溶剤型接着層15、および、熱可塑性樹脂層16を備える。
【0023】
水性インキ層12は、ガスバリアフィルム層11と第1無溶剤型接着層13との間に位置する。中間基材層14は、第1無溶剤型接着層13と第2無溶剤型接着層15との間に位置する。水性インキ層12、第1無溶剤型接着層13、中間基材層14、第2無溶剤型接着層15は、ガスバリアフィルム層11と熱可塑性樹脂層16との間に位置する。水性インキ層12と中間基材層14とは、第1無溶剤型接着層13によって接合されている。中間基材層14と熱可塑性樹脂層16とは、第2無溶剤型接着層15によって接合されている。
【0024】
(A)ガスバリアフィルム層11
ガスバリアフィルム層11は、(A1)基材フィルム層/(A2)プライマー層/(A3)酸化金属層/(A4)バリア層と表記される層構成を備える。すなわち、ガスバリアフィルム層11は、基材フィルム層、プライマー層、酸化金属層、および、バリア層を備える。プライマー層は、基材フィルム層とバリア層との間に位置する。酸化金属層は、プライマー層とバリア層との間に位置する。バリア層は、基材フィルム層と第1無溶剤型接着層13との間に位置する。基材フィルム層と酸化金属層とは、プライマー層によって接合されている。
【0025】
(A1)基材フィルム層
基材フィルム層は、1枚の樹脂フィルムからなる単層構造、あるいは、2枚以上の樹脂フィルムからなる積層構造を備える。基材フィルム層の厚さは、積層フィルムに求められる各種の耐性や加工性に応じて適宜変更可能であり、例えば、3μm以上200μm以下である。包装袋の柔軟性が高められる観点から、基材フィルム層の厚さは、6μm以上30μm以下であることが好ましい。
【0026】
基材フィルム層を構成する樹脂フィルムの材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状オレフィン樹脂、および、水酸基含有重合体である。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、これらの共重合体、ポリエチレン、および、ポリプロピレンである。水酸基含有重合体は、例えば、ポリビニルアルコール、および、エチレン-ビニルアルコール共重合体である。樹脂フィルムを構成する材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、および、水酸基含有重合体からなる群から選択される1種、あるいは、2種以上の組み合わせである。
【0027】
基材フィルム層を構成する樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。機械的強度、および、寸法安定性に優れている観点において、樹脂フィルムが延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムである。
【0028】
(A2)プライマー層
プライマー層は、化学的な吸着機能やアンカー機能などの各種の密着機能を備えて、基材フィルム層と酸化金属層との間での密着性を高める。プライマー層を構成する材料は、例えば、トリアルコキシシランと、トリアルコキシシランの加水分解生成物とのいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物との反応生成物を含む。
【0029】
トリアルコキシシランは、一般式RSi(ORによって示される。Rは、アルキル基、ビニル基、イソシアネート基を含むアルキル基、グリシドキシ基を含むアルキル基、エポキシ基を有するアルキル基である。Rに含まれるアルキル基は、直鎖状のアルキル基でもあってもよいし、分岐鎖のアルキル基であってもよいし、環状のアルキル基であってもよい。Rは、基材フィルム層、および、酸化金属層を構成する材料に合わせて適宜変更可能である。ORは、メトキシ基、エトキシ基、および、エトキシメトキシ基などの加水分解性を有したアルコキシ基である。トリアルコキシシランの加水分解生成物は、例えば、トリアルコキシシランに酸またはアルカリなどを添加してトリアルコキシシランを加水分解することによって得られる。トリアルコキシシランは、例えば、上述した化合物から選択される1種、あるいは、2種以上を組み合わせである。
【0030】
トリアルコキシシランは、例えば、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、および、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランである。トリアルコキシシランは、これらのうちでも、イソシアネート基を含むイソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシランであることが好ましい。また、トリアルコキシシランは、グリシドキシ基を有するグリシドオキシトリメトキシシラン、あるいは、エポキシ基を含むエポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシランであることが好ましい。
【0031】
アクリルポリオールは、アクリル酸誘導体モノマーの単独重合体、または、アクリル酸誘導体モノマーとスチレンなどとの共重合体である。アクリル酸誘導体モノマーの共重合体は、末端に水酸基を有し、イソシアネート化合物のイソシアネート基と反応した化合物を含む。アクリル酸誘導体モノマーは、例えば、エチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、および、ヒドロキシブチルメタクリレートである。
【0032】
アクリルポリオールの水酸基価は、アクリルポリオールとイソシアネート化合物との反応性を高められる観点から、5KOHmg/g以上200KOHmg/g以下であることが好ましい。アクリルポリオールの質量(MA)と、トリアルコキシシランの質量(MO)との比(MA/MO)は、1/1以上100/1以下であることが好ましく、2/15以上50/1以下であることがより好ましい。
【0033】
イソシアネート化合物は、2つ以上のイソシアネート基を有し、アクリルポリオールと反応することによってウレタン結合を形成する。イソシアネート化合物は、基材フィルム層と酸化金属層との間の密着性を高めるための架橋剤として機能する。
【0034】
イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物、または、脂肪族系イソシアネート化合物である。また、イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物、または、脂肪族系イソシアネート化合物と、ポリオールとの重合体である。また、イソシアネート化合物は、芳香族系イソシアネート化合物、脂肪族系イソシアネート化合物、および、ポリオールとの重合体から生成される誘導体である。イソシアネート化合物は、例えば、上述したなかから選択された1種、あるいは、2種以上の組み合わせである。
【0035】
芳香族系イソシアネート化合物は、例えば、トリレンジイソシアネート、および、ジフェニルメタンジイソシアネートなどである。脂肪族イソシアネート化合物は、例えば、キシリレンジイソシアネート、あるいは、ヘキサレンジイソシアネートである。
【0036】
プライマー層は、トリアルコキシシラン、または、トリアルコキシシランの加水分解生成物のいずれか一方と、アクリルポリオールと、イソシアネート化合物とを、溶媒中で反応させることによって形成される。
【0037】
溶媒は、各成分を溶解、および、希釈可能であればよい。溶媒は、例えば、エステル系溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、および、芳香族炭化水素系溶媒である。エステル系溶媒は、例えば、酢酸エチルや酢酸ブチルである。アルコール系溶媒は、例えば、メタノ-ル、エタノ-ル、および、イソプロピルアルコールである。ケトン系溶媒は、例えば、メチルエチルケトンである。芳香族炭化水素系溶媒は、例えば、トルエン、あるいは、キシレンである。溶媒は、上述したなかから選択される1種、あるいは、2種以上の組み合わせである。
【0038】
なお、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとの反応を促すための触媒を用いてもよい。反応性が高まる観点、および、重合安定性が得られる観点から、触媒は、塩化錫、オキシ塩化錫、および、錫アルコキシドなどの錫化合物であることが好ましい。触媒は、各成分の配合時に反応液に直接添加されてもよいし、メタノ-ルなどの溶液として反応液に添加されてもよい。
【0039】
また、プライマー層での反応を安定させるための金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物を用いてもよい。金属アルコキシドを構成する金属原子は、Si、Al、Ti、または、Zrである。水系の溶媒中において安定に存在する観点から、金属アルコキシドは、テトラエトキシシラン、トリプロポキシアルミニウム、または、これらの混合物であることが好ましい。金属アルコキシドの加水分解生成物は、トリアルコキシシランの加水分解生成物を得る方法と同様である。金属アルコキシドの加水分解生成物の生成は、トリアルコキシシランの加水分解生成物の生成と同時であってもよいし、トリアルコキシシランの加水分解生成物の生成と別であってもよい。
【0040】
また、プライマー層は、各種の添加剤を含んでもよい。添加剤は、例えば、硬化促進剤、酸化防止剤、レベリング剤、流動調整剤、触媒、架橋反応促進剤、および、充填剤である。硬化促進剤は、例えば、3級アミン、イミダゾ-ル誘導体、カルボン酸の金属塩化合物、4級アンモニウム塩、および、4級ホスホニウム塩である。酸化防止剤は、例えば、フェノ-ル系、硫黄系、および、ホスファイト系である。
【0041】
プライマー層を形成する1つの方法例は、触媒の存在下において、トリアルコキシシランを加水分解した液、または、トリアルコキシシランを金属アルコキシドとともに加水分解した液に、アクリルポリオール、および、イソシアネート化合物を混合して、塗工液を生成する。次いで、塗工液を基材フィルム層に塗工し、塗工膜を乾燥させることによって、プライマー層を形成する。
【0042】
プライマー層を形成する他の方法例は、触媒と金属アルコキシドとが存在する溶媒中において、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとを混合した液に、イソシアネート化合物を加えて混合する。あるいは、触媒と金属アルコキシドとが存在する溶媒中において、トリアルコキシシランとアクリルポリオールとを混合した後に、さらに加水分解反応を行い、加水分解反応後の液にイソシアネート化合物を加えて、塗工液を生成する。次いで、塗工液を基材フィルム層に塗工し、塗工膜を乾燥させることによって、プライマー層を形成する。
【0043】
なお、塗工液を塗工する方法は、例えば、ディッピング法、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、コンマコート、ダイコート、スクリーン印刷法、スプレーコート、および、グラビアオフセット法である。
【0044】
また、塗工膜を乾燥する方法は、塗工液から溶媒を蒸発させる方法であればよい。塗工膜を乾燥する方法は、例えば、熱風乾燥、熱ロ-ル乾燥、高周波照射、赤外線照射、および、紫外線照射である。塗工液の乾燥には、上述した方法のうち2つ以上の方法を用いてもよい。
【0045】
(A3)酸化金属層
酸化金属層は、金属酸化物から構成される。金属酸化物は、例えば、酸化ケイ素、および、酸化アルミニウムである。金属酸化物は、酸化アルミニウムであることが好ましい。酸化金属層の形成方法は、例えば、真空蒸着法、または、スパッタ法である。
【0046】
酸化金属層の厚さは、10nm以上50nm以下であることが好ましく、15nm以上30nm以下であることがより好ましい。酸化金属層の厚さが10nm以上であることによって、酸化金属層によるバリア性が十分に確保される。酸化金属層の厚さが50nm以下であることによって、酸化金属層の透明性、ひいては、積層フィルム、および、包装袋の透明性が確保される。
【0047】
(A4)バリア層
バリア層を構成する材料は、金属アルコキシドの縮合物、金属アルコキシドの加水分解生成物の縮合物、および、アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートの縮合物からなる群から選択されるいずれか1つを含む。
【0048】
金属アルコキシドは、例えば、テトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシランなどのアルコキシシランである。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、エトキシメトキシ基である。アルコキシシリルアルキルイソシアヌレートは、例えば、1,3,5-トリス(3-トリアルコキシシリルアルキル)イソシアヌレートである。
【0049】
バリア層は、例えば、金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物のいずれか1種と、ビニルアルコールを含む重合体と、イソシアネート化合物と、シランカップリング剤と、を混合した塗工液を用いて形成される。ビニルアルコールを含む重合体は、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、および、エチレン-酢酸ビニル共重合体である。イソシアネート化合物は、例えば、芳香族系イソシアネート化合物であって、トリレンジイソシアネート、および、キシリレンジイソシアネートである。
【0050】
シランカップリング剤は、一般式RSi(ORによって示される。Rは、有機官能基であり、ORは、メトキシ基、エトキシ基、および、エトキシメトキシ基などの加水分解性を有したアルコキシ基である。シランカップリング剤は、例えば、エポキシシランカップリング剤、アミンシランカップリング剤、ビニルシランカップリング剤、および、アクリルシランカップリング剤である。なお、イソシアネート基を有するシランカップリング剤を、イソシアネート化合物とシランカップリング剤との両方を兼ねる化合物として用いてもよい。
【0051】
飛行時間型2次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)を用いてバリア層を分析した場合には、アルコキシシランに由来する成分、ビニルアルコールを含む重合体に由来する成分、イソシアネート化合物に由来する成分、および、シランカップリング剤に由来する成分が検出される。なお、TOF-SIMSは、分析対象の表面にイオンを照射した際に生じる2次イオンのマススペクトルを測定し、分析対象の表面における構成元素や化学構造に関する情報を得ることが可能な表面分析法である。
【0052】
バリア層には、バリア層に隣接する層との密着性、濡れ性、および、収縮によるクラックの抑制などを考慮して、粘土鉱物、安定化剤、着色剤、および、粘度調整剤などの添加剤が添加されてもよい。粘土鉱物は、例えば、コロイダルシリカ、および、スメクタイトなどであってよい。
【0053】
バリア層の厚さは、0.01μm以上50μm以下であることが好ましい。バリア層の厚さが0.01μm以上であることによって、バリア層のガスバリア性を高めることができる。バリア層が50μm以下であることによって、バリア層にクラックが生じることが抑えられる。
【0054】
バリア層を形成する1つの方法は、まず、金属アルコキシド、または、金属アルコキシドの加水分解生成物と、ビニルアルコールを含む重合体と、イソシアネート化合物と、シランカップリング剤と、を溶媒中で混合することによって塗工液を調製する。次いで、酸化金属層などの下地に塗工液を塗工し、塗工膜を乾燥することによって、バリア層を形成する。金属アルコキシドは、水系溶媒中では均一に分散しにくいため、加水分解された金属アルコキシドを用いることが好ましい。塗工膜を形成する方法、および、塗工膜を乾燥する方法には、プライマー層の形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
【0055】
(B)水性インキ層12
水性インキ層12は、顔料などの着色剤と、ポリウレタン系樹脂を主成分とするバインダー樹脂と、水系架橋剤とを含む。水性インキ層12に残存する水や水系溶媒と、第1無溶剤型接着層13の接着剤との副反応は、ガスバリアフィルム層11と第1無溶剤型接着層13との間での気泡を生じさせる一因となる。水性インキ層12がポリウレタン樹脂と水性架橋剤とを含む構成であれば、第1無溶剤型接着層13を形成するためのポリイソシアネート成分と、水性インキ層12に残存する成分との副反応、ひいては、ガスバリアフィルム層11と第1無溶剤型接着層13との間での気泡の発生を抑制できる。
【0056】
ポリウレタン系樹脂は、ウレタン結合を有する樹脂、および、ウレタン結合を有する樹脂の誘導体である。ポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン、および、ポリウレタンポリウレアを含む。ポリウレタンは、例えば、ポリエステルポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン、ポリエーテルポリエステルポリウレタン、ポリカーボネートポリウレタン、および、これの混合物である。ポリウレタン系樹脂を生成するためのポリイソシアネートは、例えば、脂肪族イソシアネート、および、芳香族イソシアネートである。脂肪族イソシアネートは、例えば、メチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネートである。芳香族イソシアネートは、例えば、フェニレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネートである。ポリウレタン系樹脂を生成するためのポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、および、アクリルポリオールである。
【0057】
水性インキ層12は、ガスバリアフィルム層11にインキを塗工することによって形成される。インキは、着色剤やバインダー樹脂などを溶媒中に溶解する、または、分散させることによって製造される。インキを構成する溶媒は、水を含む水系溶媒であることが好ましく、例えば、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒から選択される少なくとも1種である。アルコール系溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールである。エステル系溶媒は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチルである。ケトン系溶媒は、例えば、メチルエチルケトンである。
【0058】
VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機化合物)を低減できる観点から、インキを構成する溶媒は、水系溶媒であることが好ましく、水性インキ層12が水性インキからなる層であることが好ましい。加えて、水性インキ層12に残存するアルコール系溶媒量が、20mg/m以下であることが好ましい。また、水性インキ層12に残存する水分量が、100mg/m以下であることが好ましい。
【0059】
インキは、水性架橋剤としてカルボジイミド化合物を含む。カルボジイミド化合物は、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ドデシルイソプロピルカルボジイミド、ベンジルイソプロピルカルボジイミドである。カルボジイミド系化合物がインキに含まれる構成であれば、水性インキ層12の水性化が容易でもある。そして、水性インキ層12のなかに残存するアルコール系溶媒量や水分量を低減させることが可能ともなるため、残留溶剤に起因した気泡の発生、および、臭気の生成を抑えることが可能ともなる。
【0060】
水性インキ層12を形成するための印刷方法は、例えば、グラビア印刷、および、フレキソ印刷である。水性インキ層12を形成する際のインキの塗工量は、例えば、0.5g/m以上15g/m以下が好ましく、1g/m以上5g/m以下であることがより好ましい。水性インキ層12は、ガスバリアフィルム層11の全面に点在することが好ましい。すなわち、水性インキ層12は、積層フィルムのなかで熱溶着される部分にも位置することが好ましい。
【0061】
(C)第1無溶剤型接着層13
第1無溶剤型接着層13は、ウレタン系無溶剤型接着剤の硬化物であって、ウレタン系無用剤接着剤から形成される。ウレタン系無溶剤型接着剤は、有機溶剤を含まない二液硬化型の無溶剤型接着剤である。二液硬化型のウレタン系無用剤接着剤は、主剤であるポリオール成分と、硬化剤であるポリイソシアネート成分とを含む。以下、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を、無溶剤型接着剤とも言う。
【0062】
ポリオール成分は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオールからなる群から選択される1種、または、2種以上の混合物であって、ポリオールの末端を部分的に酸変性されている。ポリオール成分の末端水酸基は、例えば、価数が2以上20以下となるように、部分的に末端酸変性されている。価数が2以上であれば、接着強度を高めることが可能であって、価数が20以下であれば、接着剤の粘度が塗工に適切な範囲に留めることが可能である。
【0063】
ポリエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル、および、これらの混合物と、グリコール系溶媒とのエステル反応生成物である。多価カルボン酸は、例えば、コハク酸、グルタール酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバチン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸である。グリコール系溶媒は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6ーヘキサンジオールである。
【0064】
ポリエーテルポリオールは、例えば、オキシラン化合物と、低分子ポリオールとの重合体である。オキシラン化合物は、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフランである。低分子ポリオールは、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンである。
【0065】
ポリエーテルエステルポリオールは、例えば、多価カルボン酸、多価カルボン酸のジアルキルエステル、および、これらの混合物と、ポリエーテルポリオールとの反応によって得られる。ポリウレタンポリオールは、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオールと、ポリイソシアネート単量体との反応生成物である。
【0066】
ポリイソシアネート成分は、脂肪族系ポリイソシアネートと芳香族系ポリイソシアネートとの混合物である。
脂肪族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーである。ポリイソシアネート単量体は、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートである。ポリイソシアネート単量体は、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートである。
【0067】
芳香族系ポリイソシアネートは、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体、ポリイソシアネート末端プレポリマーである。ポリイソシアネート単量体は、例えば、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートである。ポリイソシアネート単量体は、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネートである。
【0068】
ポリイソシアネート誘導体は、例えば、ポリイソシアネート単量体から誘導されたイソシアヌレート体である。ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、ポリプロピレングリコールなどの2官能ポリオール化合物との反応で得られる末端イソシアネート基含有の2官能ポリイシシアネートである。また、ポリイソシアネート末端プレポリマーは、ポリイソシアネート単量体と、トリメチロールプロパンなどの3官能以上のポリオール化合物との反応により得られる末端イソシアネート基含有の多官能ポリイソシアネートである。
【0069】
第1無溶剤型接着層13の塗工量は、0.5g/m以上3.0g/m以下が好ましく、1.0g/m以上2.0g/m以下がより好ましい。第1無溶剤型接着層13の塗工量が0.5g/m以上であれば、ガスバリアフィルム層11と中間基材層14との間でのデラミネーション、および、中間基材層14と熱可塑性樹脂層16との間でのデラミネーションの抑制効果を高められる。第1無溶剤型接着層13の塗工量が3.0g/m以下であれば、積層フィルムの加工時において巻きズレが生じることを抑制できると共に、積層フィルムの外観品質を良好なものとすることが可能であり、加えて、適正なラミネート強度が得られる。
【0070】
(D)中間基材層14
中間基材層14は、1枚の樹脂フィルムからなる単層構造、あるいは、2枚以上の樹脂フィルムからなる積層構造を備える。中間基材層14の厚さは、積層フィルムに求められる各種の耐性や加工性に応じて適宜変更可能であり、例えば、12μm以上200μm以下である。
【0071】
中間基材層14を構成する樹脂フィルムの材料は、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状オレフィン樹脂、および、水酸基含有重合体である。ポリオレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、および、これらの共重合体、ポリエチレン、および、ポリプロピレンである。水酸基含有重合体は、例えば、ポリビニルアルコール、および、エチレン-ビニルアルコール共重合体である。樹脂フィルムを構成する材料は、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、環状オレフィン樹脂、および、水酸基含有重合体のうちの1種、あるいは、2種以上の組み合わせである。
【0072】
中間基材層14を構成する樹脂フィルムは、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。機械的強度、および、寸法安定性に優れている観点において、樹脂フィルムが延伸フィルムであることが好ましい。延伸フィルムは、一軸延伸フィルム、または、二軸延伸フィルムである。
【0073】
(E)第2無溶剤型接着層15
第2無溶剤型接着層15は、ウレタン系無溶剤型接着剤の硬化物であって、ウレタン系無用剤接着剤から形成される。ウレタン系無溶剤型接着剤は、ポリイソシアネート成分、および、ポリオール成分を含む。ポリイソシアネート成分、および、ポリオール成分は、第2無溶剤型接着層15を形成するためのウレタン系無溶剤型接着剤として例示した材料から選択される。第2無溶剤型接着層15を形成するための無溶剤型接着剤と、第1無溶剤型接着層13を形成するための無溶剤型接着剤とは、同一であってもよいし、相互に異なってもよい。
【0074】
(F)熱可塑性樹脂層16
熱可塑性樹脂層16は、熱融着性を有した樹脂層である。熱可塑性樹脂は、例えば、エチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、プロピレン系樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体、エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物である。エチレン系樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン-αオレフィン共重合体である。ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンである。プロピレン系樹脂は、例えば、プロピレン-αオレフィン共重合体である。エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体は、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体である。エチレン-α,β不飽和カルボン酸共重合体のエステル化物は、例えば、エチレン-アクリル酸メチル、エチレン-アクリル酸エチル、エチレン-メタクリル酸メチル、エチレン-メタクリル酸エチルである。酸無水物変性ポリオレフィンは、例えば、エチレン-無水マレイン酸グラフト共重合体、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸のような三元共重合体である。
熱可塑性樹脂層16の厚さは、例えば、15μm以上200μm以下であって、積層フィルムに求められる特性に応じて適宜設定できる。
【0075】
(包装袋)
包装袋は、熱可塑性樹脂層16同士を熱溶着する積層フィルムの製袋によって形成される。包装袋を製造する1つの方法は、例えば、図2が示すように、矩形状を有した1枚の積層フィルム50Aを用いる。1枚の積層フィルム50Aにおける熱可塑性樹脂層16同士が接するように、1枚の積層フィルム50Aが二つ折りされる。次いで、折り曲げられた積層フィルム50Aにおける左右二方の熱可塑性樹脂層16同士が熱溶着されて、開口部を備えた包装袋が製造される。そして、内容物が包装袋の開口部から包装袋の内部に充填されて、開口部に位置する熱可塑性樹脂層16同士が熱溶着され、これによって、三方に熱溶着部50Ahを備えた1つの包装袋が、三方パウチとして製造される。
【0076】
包装袋を製造する他の方法は、例えば、矩形状を有した1枚の積層フィルムにおける熱可塑性樹脂層16が内側となるように、積層フィルムが筒状に曲げられる。そして、筒面の接続部位に位置する熱可塑性樹脂層16同士が熱溶着されて背貼り部が形成されると共に、筒面の上下開口部に位置する熱可塑性樹脂層16同士が熱溶着されて、これによって、熱溶着部を備えたピロー形状を有する包装袋が製造される。
【0077】
また、包装袋を製造する他の方法は、例えば、矩形状を有した2枚の積層フィルムを用いる。2枚の積層フィルムの四方に位置する熱可塑性樹脂層16同士が互いに接するように、2枚の積層フィルムは重ねられる。そして、四辺に位置する熱可塑性樹脂層16同士が熱溶着されて、四方に熱溶着部を備えた1つの包装袋が製造される。
【0078】
(製造方法)
積層フィルムの製造方法は、まず、ガスバリアフィルム層11のバリア層に水性インキ層12を形成する。水性インキ層12が形成される面は、ガスバリアフィルム層11の第1面の一例である。次いで、第1無溶剤型接着層13を形成するための二液硬化型無溶媒接着剤をロールコート法などを用いて、ガスバリアフィルム層11に塗工し、第1無溶剤型接着層13を介して、ガスバリアフィルム層11と、中間基材層14の第1面とを接合する。
【0079】
次に、第2無溶剤型接着層15を形成するための二液硬化型無溶媒接着剤をロールコート法などを用いて中間基材層14の第2面に塗工し、中間基材層14の第2面に第2無溶剤型接着層15を形成する。そして、第2無溶剤型接着層15を介して、中間基材層14の第2面と、熱可塑性樹脂層16とを接合する。
【0080】
図3が示すように、ロールコート法を用いて第1無溶剤型接着層13を形成する際に、ドクターロールY1とアプリケーションロールY2との間に、無溶剤型接着剤13Bが溜められる。ロール間に溜められた無溶剤型接着剤は、加温混合されており、ドクターロールY1からメタリングロールY3を通じて、コーティングロールY4に転写される。コーティングロールY4に転写された無溶剤型接着剤13Bは、コーティングロールY4とパッキングロールY5との間に送られるガスバリアフィルム層11に塗工される。
【0081】
この際、ガスバリアフィルム層11に塗工された無溶剤型接着剤13Bは、コーティングロールY4の後段で、コーティングロールY4から引き剥がされる。コーティングロールY4から引き剥がされる無溶剤型接着剤の残分13B1は、ガスバリアフィルム層11とコーティングロールY4との間で糸を引き延ばすような、糸引き現象を生じさせる。残分13B1による糸引き現象は、ガスバリアフィルム層11の表面に、無溶剤型接着剤13Bによる微細な凹凸を生じさせる。そして、有機溶剤を含まない無溶剤型接着剤13Bによる凹凸は、コーティングロールY4の後段で平滑化されることもなく、ガスバリアフィルム層11と中間基材層14との間に気泡を生じさせる一因となる。
【0082】
そこで、ロールコート法を用いて第1無溶剤型接着層13を形成する際に、無溶剤型接着剤13Bの塗工温度、すなわち、コーティングロールY4の温度を、以下のように設定することが好ましい。すなわち、混合から45分経過したときのJIS K 5600-2-2:2014に準じたコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上6000mPa・s以下となるように、コーティングロールY4の温度を設定することが好ましい。
【0083】
また、無溶剤型接着剤の平滑性をさらに高められる観点から、ドクターロールY1の転写温度を、以下のように設定することが好ましい。すなわち、混合から45分経過したときのJIS K 5600-2-2:2014に準じたコーン・プレート粘度が2500mPa・s以上3500mPa・s以下となるように、ドクターロールY1の温度を設定することが好ましい。
【0084】
図4は、無溶剤型接着剤13Bのコーン・プレート粘度と、混合からの経過時間との関係の一例を示す。なお、図4は、ポリイソシアネート成分として、キシリレンジイソシアネート(XDI)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)(商品名「TSN-4864B-3」:東洋モートン株式会社製)を用い、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(商品名「TSN-4864A」:東洋モートン株式会社製)を用いた例である。XDIとHDIとの配合比は、100:100である。
【0085】
図4が示すように、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤のコーン・プレート粘度は、無溶剤型接着剤の温度が高いほど、混合直後で低い値を示す。例えば、無溶剤型接着剤の温度が80℃である水準のコーン・プレート粘度は、70℃である水準よりも低く、また、無溶剤型接着剤の温度が90℃である水準のコーン・プレート粘度は、80℃である水準よりも低く、いずれの水準においても、コーン・プレート粘度は1000mPa以下である。
【0086】
一方、単位経過時間に対するコーン・プレート粘度の上昇度合いは、無溶剤型接着剤の温度が高いほど、混合直後から高い傾向を示す。例えば、無溶剤型接着剤の温度が80℃である水準の上昇度合いは、70℃である水準よりも高く、また、無溶剤型接着剤の温度が90℃である水準の上昇度合いは、80℃である水準よりも高い。加えて、無溶剤型接着剤の温度が90℃である水準の上昇度合いは、70℃である水準や80℃である水準と比べて大幅に高い。そして、無溶剤型接着剤の温度が70℃以上80℃以下である水準のコーン・プレート粘度は、混合から45分経過したときに、2500mPa・s以上3500mPa・sである。一方で、無溶剤型接着剤の温度が90℃である水準のコーン・プレート粘度は、混合から45分経過したときに、3500mPa・s以上6000mPa・s以下となる。
【0087】
上述したように、残分13B1による糸引き現象は、ガスバリアフィルム層11と中間基材層14との間に気泡を生じさせる一因となる。コーティングロールY4の温度を高めて無溶剤型接着剤13Bの塗工温度を高めることは、残分13B1による糸引き現象を抑えるため、無溶剤型接着剤13Bの塗工温度は、高いことが好ましい。一方で、無溶剤型接着剤13Bの高い温度は、単位経過時間におけるコーン・プレート粘度の上昇度合いを高めて、可使時間であるポットライフを短くする。この点、上述したように、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上であれば、残分13B1による糸引き現象の抑制が可能であって、6000mPa・s以下であれば、無溶剤型接着剤13Bのポットライフが短くなることの抑制が可能ともなる。
【0088】
これらの好ましい設定は、ロールコート法を用いて第2無溶剤型接着層15を形成する際も同様である。
[第2層構成]
積層フィルムが備える層構成は、第2層構成に変更可能である。第2層構成は、第1層構成からプライマー層を割愛した構成であり、ガスバリアフィルム層11の層構成が主に相違する。ガスバリアフィルム層11は、(A1)基材フィルム層/(A3)酸化金属層/(A4)バリア層と表記される層構成を備える。すなわち、ガスバリアフィルム層11は、基材フィルム層、酸化金属層、および、バリア層を備える。酸化金属層は、基材フィルム層とバリア層との間に位置する。バリア層は、基材フィルム層と第1無溶剤型接着層13との間に位置する。
【0089】
基材フィルム層は、プラズマ処理された表面を備える。酸化金属層は、基材フィルム層の表面と接触している。バリア層は、酸化金属層において基材フィルム層に接する面とは反対側の面に接触している。
【0090】
基材フィルム層は、プラズマ処理された表面を含むこと以外は、第1層構成に記載の基材フィルム層と同様である。プラズマ処理は、例えば、反応性イオンエッチングであり、表面と対向するアノードを備えたホローアノードプラズマ処理装置を用いて行われる。プラズマ処理された表面は、化学的な吸着機能やアンカー機能などの各種の密着機能が高められて、表面と酸化金属層との密着性を高める。
【0091】
[第3層構成]
積層フィルムが備える層構成は、第3層構成に変更可能である。第2層構成は、第1層構成から、プライマー層と酸化金属層とを割愛した構成であり、ガスバリアフィルム層11の層構成が主に相違する。ガスバリアフィルム層11は、(A1)基材フィルム層/(A4)バリア層と表記される層構成を備える。すなわち、ガスバリアフィルム層11は、基材フィルム層、および、バリア層を備える。バリア層は、基材フィルム層と第1無溶剤型接着層13とに接触している。
【0092】
バリア層を構成する材料は、水酸基を有した水溶性高分子を含む塗工膜の乾燥物である。水溶性高分子は、常温で水に完全に溶解、または、微分散可能な高分子である。バリア層を構成する材料は、例えば、ポリカルボン酸系重合体を含む。ポリカルボン酸系重合体は、1分子中に2個以上のカルボキシ基を有する重合体である。ポリカルボン酸系重合体は、例えば、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の単独重合体、2種類以上のα,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸の共重合体、α,β-モノエチレン性不飽カルボン酸と、他のエチレン性不飽和モノマーとの共重合体である。また、ポリカルボン酸系重合体は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロ-ス、および、ペクチンなどのように、分子内にカルボキシル基を有する酸性多糖類である。バリア層を構成するポリカルボン酸系重合体は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
【0093】
α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および、クロトン酸である。α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸と共重合が可能な他のエチレン性不飽和モノマーは、例えば、飽和カルボン酸ビニルエステル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アルキルイタコネ-ト、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、および、スチレンである。飽和カルボン酸ビニルエステルは、例えば、エチレン、プロピレン、および、酢酸ビニルである。
【0094】
ポリカルボン酸系重合体が、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のみから形成される重合体である場合には、重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、および、クロトン酸から構成される群から選択される少なくとも1種の重合性単量体の重合によって、カルボン酸系重合体を得ることができる。重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、および、マレイン酸から構成される群から選択される少なくとも1種の重合性単量体の重合によって得られた重合体であることが好ましい。また、重合体は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、および、ポリマレイン酸、または、これらの混合物であることがより好ましい。
【0095】
バリア層は、ガスバリア性を損なわない範囲で、ポリカルボン酸系重合体の他に、他の重合体を含んでもよい。バリア層は、例えば、ポリカルボン酸系重合体と、ポリアルコールの混合物から形成されてもよい。
【0096】
ポリアルコールは、分子内に2個以上の水酸基を含む化合物であって、低分子化合物であってもよいし、アルコール系重合体であってもよい。ポリアルコールは、例えば、ポリビニルアルコール、糖類、および、澱粉などであってよい。上述した低分子化合物は、例えば、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ペンタエリスリトール、ポリエチレングリコール、および、ポリプロピレングリコールである。バリア層に含まれるポリアルコールは、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
【0097】
ポリビニルアルコールのケン化度は、95%以上であることが好ましく、99%以上であることがより好ましい。ポリビニルアルコールの平均重合度は、300以上1500以下であることが好ましい。ポリアルコールは、ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコールポリ(メタ)アクリル酸共重合体であることが好ましい。ビニルアルコールを主成分とするビニルアルコールポリ(メタ)アクリル酸共重合体は、ポリカルボン酸系重合体に対して相溶性を有する点で好ましい。
【0098】
糖類は、単糖類、オリゴ糖類、および、多糖類であってよい。糖類は、糖アルコール、糖アルコールの置換体、および、糖アルコールの誘導体を含む。糖アルコールは、例えば、ソルビト-ル、マンニト-ル、ズルシト-ル、キシリト-ル、および、エリスリトールなどである。糖類は、水、アルコール、または、水とアルコールとの混合溶液に溶解する糖であることが好ましい。バリア層に含まれる糖類は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
【0099】
澱粉類は、多糖類に含まれる。澱粉類は、例えば、生澱粉、すなわち未変性澱粉、または、各種の加工澱粉である。生澱粉は、例えば、小麦澱粉、トウモロコシ澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉、および、サゴ澱粉である。加工澱粉は、例えば、物理的変性澱粉、酵素変性澱粉、化学変性澱粉、および、澱粉類にモノマーをグラフト重合したグラフト澱粉である。澱粉類のなかで、馬鈴薯澱粉を酸で加水分解した水可溶性加工澱粉、または、澱粉の末端基であるアルデヒド基が水酸基に置換された糖アルコールが好ましい。澱粉類は、含水物であってもよい。バリア層に含まれる澱粉類は、上述したなかから選択される1種を単独で、あるいは、2種以上の組み合わせで使用可能である。
【0100】
バリア層を形成する1つの方法は、まず、ポリカルボン酸系重合体と溶媒とを含む第1塗工液、または、ポリカルボン酸系重合体、ポリアルコール、および、溶媒を含む第2塗工液を基材フィルム層上に塗工する。次いで、第1塗工液、または、第2塗工液の乾燥によって溶媒を蒸発させて、バリア層を形成する。
【0101】
第1塗工液は、ポリカルボン酸系重合体を溶媒に溶解、または、分散することによって調製される。溶媒は、ポリカルボン酸系重合体を均一に溶解、または、分散できる液体であればよい。溶媒は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、および、ジメチルアセトアミドなどであってよい。
【0102】
第2塗工液は、例えば、第2塗工液を構成する溶媒以外の各成分を溶媒に溶解する方法、各成分を含む溶液を混合する方法、および、ポリアルコールの溶液中においてカルボキシル基を含むモノマーを重合して必要に応じて重合後にアルカリを用いて溶液を中和する方法によって調製される。
【0103】
第1塗工液、および、第2塗工液は、これらを用いて形成されたバリア層における酸素ガスのバリア性が損なわれない範囲で、他の重合体、柔軟剤、可塑剤、安定剤、アンチブロッキング剤、粘着剤、および、無機の層状化合物などを含んでもよい。なお、可塑剤は、分子内に2個以上の水酸基を有する低分子化合物を除く。無機の層上化合物は、例えば、モンモリロナイトである。
【0104】
第1塗工液は、1価の金属、および、2価の金属の少なくとも一方を含む化合物を含んでもよい。これにより、バリア層における酸素ガスのバリア性を高めることができる。1価の金属、および、2価の金属は、例えば、ナトリウム、カリウム、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、および、銅である。1価の金属、および、2価の金属の少なくとも一方を含む化合物は、例えば、水酸化ナトリウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、および、酸化カルシウムである。
【0105】
酸素ガスバリア性の向上を目的として、基材フィルム層に第2塗工液を塗工し、塗工膜の乾燥後に熱処理を施してもよい。この際、熱処理条件を緩和することを目的として、第2塗工液の調製時に、水に可溶な、アルカリ金属化合物、あるいは、無機酸や有機酸のアルカリ金属塩を第2塗工液に添加してもよい。アルカリ金属化合物は、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムである。無機酸や有機酸のアルカリ金属塩は、例えば、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム(次亜リン酸ナトリウム)、亜リン酸水素二ナトリウム、リン酸二ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、次亜硫酸ナトリウムである。これらのアルカリ金属塩のなかでも、ホスフィン酸ナトリウム、ホスフィン酸カルシウムなどのホスフィン酸金属塩が好ましい。
【0106】
第1塗工液、および、第2塗工液を用いた塗工膜を形成する方法、および、塗工膜を乾燥する方法には、プライマー層の形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
バリア層を形成する他の方法は、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを含む塗工液を基材フィルム層上に塗工する。次いで、紫外線または電子線を塗工液に照射することによってモノマーを重合させて、バリア層を形成する。
【0107】
バリア層を形成する他の方法は、ポリカルボン酸系重合体を形成するモノマーを基材フィルム層に蒸着し、かつ、蒸着したモノマーに電子線を照射することによってモノマーを重合させて、バリア層を形成する。
【0108】
バリア層の厚さは、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。バリア層は、第1無溶剤型接着層13と接触する表面に、亜鉛化合物を含むコーティング層を備えてもよい。
【0109】
亜鉛化合物は、例えば、亜鉛の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、無機酸塩である。亜鉛化合物は、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛、リン酸亜鉛が好ましい。亜鉛の毒性は低く、レトルト臭の原因となる硫化水素と亜鉛とが反応して生成する白色の硫化亜鉛は、包装袋の外観にほとんど影響を与えない。
【0110】
亜鉛化合物は、コーティング適性、および、溶媒への分散性の観点から、平均粒子径が5μm以下の粒子状であることが好ましく、平均粒子径は、1μm以下がより好ましく、0.1μm以下がさらに好ましい。なお、亜鉛化合物の含有量が増大するほど、内容物の風味が損なわれるおそれもある。例えば、ニンニク調味製品などのように、含硫化合物に由来する風味が重要な食品が内容物である場合には、食品の風味が損なわれやすい。そのため、亜鉛化合物の含有量は、包装袋の内容物によって適宜変更することが好ましい。
【0111】
コーティング層の厚さは、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.1μm以上2μm以下がより好ましく、0.1μm以上1μm以下がさらに好ましい。コーティング層の厚さが0.1μm以上であれば、コーティング層の厚さが安定しやすい。コーティング層の厚さが10μm以下であれば、コーティング層が凝集破壊しにくくなる。
【0112】
コーティング層を形成する方法は、例えば、溶媒、または、分散媒と亜鉛化合物とを含むコーティング剤を塗工する。溶媒、または、分散媒は、例えば、水、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ジメチルスルフォキシド、ジメチルホルムアミド、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエ-テル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸ブチルである。
【0113】
なお、コーティング剤は、樹脂、界面活性剤、柔軟剤、安定剤、膜形成剤、アンチブロッキング剤、粘着剤などの添加物を適宜含んでもよい。樹脂は、例えば、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノ-ル樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの塗料用樹脂である。亜鉛化合物の分散性の観点から、コーティング剤は、分散剤を含むことが好ましい。
コーティング剤を用いたコーティング層を形成する方法は、プライマー層の形成に用いることが可能な方法を用いることができる。
【0114】
[第4層構成]
積層フィルムが備える層構成は、第4層構成に変更可能である。第4層構成は、第1層構成からプライマー層と酸化金属層とを割愛した構成であり、ガスバリアフィルム層11の層構成が主に相違する。ガスバリアフィルム層11は、(A1)基材フィルム層/(A4)バリア層と表記される層構成を備える。すなわち、ガスバリアフィルム層11は、基材フィルム層、および、バリア層を備える。バリア層は、基材フィルム層と第1無溶剤型接着層13とに接触している。
【0115】
バリア層は、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含有する。金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、基材フィルム層とバリア層との密着性を高めて、基材フィルム層とバリア層との間でデラミネーションが発生することを抑える。
【0116】
バリア層は、金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物を含有する単層、あるいは、加水分解生成物を含有する多層である。
金属酸化物を構成する金属原子は、例えば、Mg、Ca、Zn、Al、Si、Ti、Zrであり、2価以上の原子価を有する。金属酸化物は、加水分解可能な官能基を有した金属化合物を加水分解縮合させることによって生成される。金属化合物を加水分解縮合させる方法は、ゾルゲル法などの液相合成法である。金属酸化物は、微小な粒子であり、例えば、球状、扁平状、多面体状、繊維状、針状を有する。バリア性と耐熱水性とを高める観点から、金属酸化物の粒子は、繊維状、または、針状であることが好ましい。金属酸化物の粒子の平均粒子径は、例えば、1nm以上0.5μm以下である。バリア層のバリア性と透明性とが優れる観点から、金属酸化物の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0117】
リン化合物は、例えば、リン酸、ポリリン酸、亜リン酸、ホスホン酸、および、これらの誘導体である。リン化合物は、金属酸化物と反応する反応点を1以上有する。反応点は、リン原子と酸素原子との結合、あるいは、リン原子とハロゲン原子との結合である。
【0118】
金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、リン化合物に由来するリン原子を介して金属酸化物の粒子同士が結合された構造を有する。金属酸化物とリン化合物との加水分解生成物は、例えば、金属酸化物とリン化合物とを含む塗工膜を熱処理することによって得られる。
【0119】
なお、バリア層は、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分けん化物、ポリエチレングリコール、ポリヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、でんぷんなどの多糖類、多糖類から誘導される多糖類誘導体を含んでもよい。また、バリア層は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、(ポリ)アクリル酸/メタクリル酸、および、これらの塩を含んでもよい。また、バリア層は、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸交互共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体のけん化物を含んでもよい。
【0120】
高いバリア性と高い耐熱水性とが得られる観点から、バリア層において800cm-1以上1400cm-1以下の範囲内における赤外線吸収スペクトルでの最大吸収波数は、1080cm-1以上1130cm-1以下の範囲内であることが好ましい。最大吸収波数が1080cm-1以上1130cm-1以下の範囲内であることから、金属原子はAlであることが好ましい。
【0121】
ガスバリアフィルム層の寸法変化が印刷時やラミネ-ト時に変わることを抑えられる観点から、バリア層の厚さの上限値は、4.0μmが好ましく、2.0μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましく、0.9μmが特に好ましい。また、バリア層の厚さが薄いほど、ガスバリアフィルム層の柔軟性が高まり、ガスバリアフィルム層の力学的特性を、基材フィルム層自体の力学的特性に近づけることができる。なお、バリア層の厚さの下限値は、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましい。
【0122】
[実施例1]
ガスバリアフィルム層11の層構成として、第1層構成を用い、また、中間基材層14として、厚さが15μmの二軸延伸ナイロンフィルム(商品名「ONMB-RT」:ユニチカ株式会社製)を用いた。また、熱可塑性樹脂層16として、レトルト殺菌用の厚さが70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(商品名「ZK500」:東レフィルム加工株式会社製)を用いた。また、インキとして、ポリウレタン系樹脂と水性架橋剤であるカルボジイミド化合物を含む水性インキ(東洋インキ株式会社製)を用いた。
【0123】
第1無溶剤型接着層13を形成するための無溶剤型接着剤として、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を用いた。この際、芳香族系ポリイソシアネートとして、XDIを含み、脂肪族系ポリイソシアネートとして、HDIを含む、ポリイソシアネート成分(商品名「TSN-4864B-3」:東洋モートン株式会社製)を用いた。また、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(商品名「TSN-4864A」:東洋モートン株式会社製)を用いた。ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合比は、100:100である。
【0124】
第2無溶剤型接着層15を形成するための無溶剤型接着剤として、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を用いた。この際、芳香族系ポリイソシアネートとして、XDIを含み、脂肪族系ポリイソシアネートとして、HDIを含む、ポリイソシアネート成分(商品名「TSN-4864B-3」:東洋モートン株式会社製)を用いた。また、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(商品名「TSN-4864A」:東洋モートン株式会社製)を用いた。ポリイソシアネート成分とポリオール成分との配合比は、100:100である。
【0125】
まず、ガスバリアフィルム層のバリア層に、フレキソ印刷法を用いて、塗工量が1.4g/mとなるように、水性インキ層12を形成した。なお、水性インキ層12に残存する水分量は、13mg/mであった。また、水性インキ層12に残存するアルコール系溶媒量は、1.5mg/mであった。
【0126】
次いで、無溶剤型接着剤によるノンソルベントラミネート法を用いて、塗工量が1.8g/mとなるように、水性インキ層12、および、水性インキ層12以外のバリア層を覆うように、第1無溶剤型接着層13を形成した。そして、第1無溶剤型接着層13を介して、ガスバリアフィルム層11と、二軸延伸ナイロンフィルムの第1面と、を貼り合わせた。
【0127】
次に、二軸延伸ナイロンフィルムの第2面に、無溶剤型接着剤によるノンソルベントラミネート法を用いて、塗工量が1.8g/mとなるように、第2無溶剤型接着層15を形成した。続いて、無延伸ポリプロピレンフィルムの一方の表面にコロナ放電処理を施して、無延伸ポリプロピレンフィルムの処理面と第2無溶剤型接着層15とを貼り合わせた。
【0128】
この際、第1無溶剤型接着層13の形成では、ガスバリアフィルム層11の搬送速度である加工速度を150m/minに設定した。また、ドクターロールY1(第1ロール)の温度を70℃に設定すると共に、ドクターロールY1とアプリケーションロールY2との間での無溶剤型接着剤の温度を70℃に設定した。そして、コーティングロールY4(第2ロール)の温度を80℃に設定した。なお、第2無溶剤型接着層15の形成でも同様に、無溶剤型接着剤の温度を70℃、第1ロールの温度を70℃、第2ロールの温度を80℃に設定した。
【0129】
すなわち、第1ロールの転写温度、および、無溶剤型接着剤の温度を、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が2500mPa・s以上3500mPa・s以下となるように設定した。また、第2ロールの塗工温度を、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が2500mPa・s以上3500mPa・s以下となるように設定した。これにより、実施例1の積層フィルムを得た。
【0130】
[実施例2]
第1無溶剤型接着層13の形成、および、第2無溶剤型接着層15の形成において、ガスバリアフィルム層11の搬送速度である加工速度を200m/minに設定し、それ以外の条件を実施例1と同じくして、実施例2の積層フィルムを得た。
【0131】
[実施例3]
第1無溶剤型接着層13の形成において、ガスバリアフィルム層11の搬送速度である加工速度を200m/minに設定した。また、ドクターロールY1(第1ロール)の温度を80℃に設定すると共に、ドクターロールY1とアプリケーションロールY2との間での無溶剤型接着剤の温度を80℃に設定した。そして、コーティングロールY4(第2ロール)の温度を90℃に設定した。また、第2無溶剤型接着層15の形成でも同様に、無溶剤型接着剤の温度を80℃、第1ロールの温度を80℃、第2ロールの温度を90℃に設定した。
【0132】
すなわち、第1ロールの転写温度、および、無溶剤型接着剤の温度を、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が2500mPa・s以上3500mPa・s以下となるように設定した。また、第2ロールの塗工温度を、混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上6000mPa・s以下となるように設定した。これにより、実施例3の積層フィルムを得た。
【0133】
[比較例1]
インキとして、ポリウレタン系樹脂を含み、水性架橋剤を含まない水性インキを用いた。また、第1無溶剤型接着層13を形成するための無溶剤型接着剤として、二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を用いた。この際、芳香族系ポリイソシアネートとして、XDIのみを含む、ポリイソシアネート成分(商品名「2K-SF-900A」:DIC株式会社製)を用いた。また、ポリオール成分として、ポリエステルポリオール(商品名「2-HA-700B」:DIC株式会社製)を用いた。
なお、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との配合比は、100:200である。
【0134】
[定性評価]
実施例1~3の積層フィルムを用いて50℃の養生温度で72時間の養生を行い、養生後の積層フィルムの巻き体のなかの外側から3mを切り捨てて、巻き体の残分となる積層フィルムの定性外観として、残分における外観の目視観察を行った。実施例1~3の各積層フィルムにおける定性外観の結果を表1に示す。
表1の定性外観において、「◎」印は、目視観察によって気泡が認められなかった水準であることを示す。「〇」印は、熱可塑性樹脂層16から見た目視観察によって気泡が認められたが、ガスバリアフィルム層11から見た目視観察では気泡が認められなかった水準であることを示す。「△」印は、熱可塑性樹脂層16から見た目視観察と、ガスバリアフィルム層11から見た目視観察との両方において気泡が認められた水準であることを示す。
【0135】
【表1】
【0136】
表1が示すように、第1ロールの温度を80℃、かつ、第2ロールの温度を90℃に設定された実施例3に、最も良好な外観が認められた。また、第1ロールの温度を70℃、かつ、第2ロールの温度を80℃に設定された実施例1においても、加工速度を150m/minに低下させる方法であれば、ガスバリアフィルム層11から見た目視観察に、良好な外観が認められた。また、第1ロールの温度を70℃、かつ、第2ロールの温度を80℃に設定され、かつ、加工速度を200m/minに高めた実施例2であっても、比較例1の積層フィルムと比べて、良好な外観が認められた。なお、比較例1の積層フィルムでは、熱可塑性樹脂層16から見た目視観察と、ガスバリアフィルム層11から見た目視観察との両方において、実施例2と比べて非常に多い多数の気泡からなる斑点状の外観が認められた。
【0137】
[定量評価]
実施例1~3の積層フィルムを用いて50℃の養生温度で72時間の養生を行い、養生後の積層フィルムのなかでインク層12以外の透明部について、顕微鏡(商品名「VHX-6000」:キーエンス株式会社製)を用いた顕微鏡観察を行った。この際、観察倍率を50倍に設定し、ガスバリアフィルム層11から見た撮像を行い、観察によって得られた画像に二値化処理を施して、観察画像の全体面積に占める気泡部分の面積の比率を、定量観察の結果として測定した。
【0138】
実施例1~3の各積層フィルムにおける定量外観の結果を表1に示す。また、実施例3の積層フィルムから得られた二値化画像を図5に示し、実施例1の積層フィルムから得られた二値化画像を図6に示す。
【0139】
実施例3の定量観察では、気泡部分の面積比率が0.3%であって、実施例2の面積比率である1.4%、さらには、実施例1の面積比率である0.9%よりも非常に低いことが認められた。また、図5図6との比較から、実施例1の積層フィルムは、直径が100μmから500μmまでの比較的に大きな気泡を含む一方で、実施例3の積層フィルムは、直径が100μmから200μmまでの小さい気泡のみを含むことが認められた。
【0140】
[味覚評価]
実施例1~3の積層フィルムを用いて三方パウチを作成し、作成された三方パウチに150mlの水を充填した。そして、水を密封した三方パウチを用い、130℃の処理温度で110分間の加熱処理を行い、24時間後の味覚官能評価を行った。
【0141】
実施例3の味覚官能評価では、比較例1よりも優れた味が認められた一方で、実施例1,2の味覚評価では、比較例1と同程度であることが認められた。
【0142】
以上、上記実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤を用いて第1無溶剤型接着層13、および、第2無溶剤型接着層15が形成されるため、レトルト加熱殺菌用包材などに用いられる積層フィルムであっても、環境適合性を高めることが可能となる。
【0143】
(2)水性インキ層12がポリウレタン樹脂と水性架橋剤とを含むため、水性インキ層12に残存する水や溶剤成分と、第1無溶剤型接着層13を形成するための接着剤との副反応、ひいては、ガスバリアフィルム層11と第1無溶剤型接着層13との間での気泡の発生自体を抑制できる。
【0144】
(3)第1無溶剤型接着層13、および、第2無溶剤型接着層15を構成するポリイソシアネート成分が、脂肪族系ポリイソシアネートと、芳香族系ポリイソシアネートとの混合物であるため、積層フィルムが斑点状の外観を呈することを抑制できる。
【0145】
(4)水性インキ層12に残存するアルコール系溶媒量が20mg/m以下、また、水性インキ層12に残存する水分量が100mg/m以下である場合には、ガスバリアフィルム層11と第1無溶剤型接着層13との間での気泡生成の抑制効果の実効性を高められる。
【0146】
(5)二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が3500mPa・s以上となるように、コーティングロールY4の温度が設定される方法であれば、積層フィルムの外観品質が劣化することを十分に抑制できる程度に接着剤の平滑化が可能である。
【0147】
(6)二液硬化型のウレタン系無溶剤型接着剤の混合から45分経過したときのコーン・プレート粘度が6000mPa・s以下となるように、コーティングロールY4の温度が設定される方法であれば、可使時間であるポットライフが過度に短くなることを抑えることが可能ともなる。
【符号の説明】
【0148】
11…ガスバリアフィルム層、12…水性インキ層、13…第1無溶剤型接着層、14…中間基材層、15…第2無溶剤型接着層、16…熱可塑性樹脂層、50A…積層フィルム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6