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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ボイラ
(51)【国際特許分類】
   F23J 3/00 20060101AFI20240130BHJP
   F22B 37/48 20060101ALI20240130BHJP
   F22G 7/08 20060101ALI20240130BHJP
   F22G 7/12 20060101ALI20240130BHJP
   F28G 7/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F23J3/00 Z
F22B37/48 C
F22G7/08
F22G7/12
F28G7/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019201358
(22)【出願日】2019-11-06
(65)【公開番号】P2021076274
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2022-02-17
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112140
【弁理士】
【氏名又は名称】塩島 利之
(72)【発明者】
【氏名】川崎 翔太
(72)【発明者】
【氏名】北川 尚男
(72)【発明者】
【氏名】武山 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕介
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-304178(JP,A)
【文献】特開2019-027672(JP,A)
【文献】特開平09-243008(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170661(WO,A1)
【文献】特開平06-034103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J 3/00-3/06
F28G 7/00,15/00-15/10
F22G 1/00-7/14
F22B 37/00-37/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物焼却炉に連設されるボイラであって、
排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる放射伝熱室と、
排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器が配置される対流伝熱室と、を備え、
前記対流伝熱室における排ガスの流れが地面と実質的に垂直であり、
前記放射伝熱室における排ガスの流路の屈曲部に天井部から吊り下げられる吊下げ式の過熱器を配置し、
前記吊下げ式の過熱器の伝熱管は、複数の直管部と、直管部の両端に設けられる複数のベンド部と、送入端部と、送出端部と、を有すると共に、排ガスと直接接触し、
前記吊下げ式の過熱器に振動を与えて前記吊下げ式の過熱器の伝熱管に付着するダストを除去するハンマリング装置を設けるボイラ。
【請求項2】
前記吊下げ式の過熱器は、1~n(ただし、nは2以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器であり、
1~n-1次の過熱器が前記対流伝熱室に配置されることを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項3】
前記吊下げ式の過熱器は、1~n(ただし、nは3以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器と蒸気温度が2番目に高いn-1次の過熱器であり、
1~n-2次の過熱器が前記対流伝熱室に配置されることを特徴とする請求項1に記載のボイラ。
【請求項4】
前記放射伝熱室の前記屈曲部は、
排ガスの流れを上向きから下向きに変える第1屈曲部と、
排ガスの流れを下向きから上向きに変える第2屈曲部と、を備え、
前記第1屈曲部に前記吊下げ式の過熱器が配置されることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のボイラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却炉等の炉の廃熱を回収するボイラに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、家庭ごみ等をはじめとする廃棄物を燃焼させて焼却する焼却炉等の炉の後段には、廃熱を回収するボイラが連設される。ボイラには、例えば、テールエンド型のボイラ(特許文献1参照)と縦型のボイラ(特許文献2参照)が存在する。
【0003】
図4に示すように、テールエンド型のボイラ31は、放射伝熱室32と対流伝熱室33を備える。放射伝熱室32のケーシングは、水冷壁管から構成される。放射伝熱室32は、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる。対流伝熱室33には、排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器34が配置される。過熱器34は、対流伝熱室33の天井部から吊り下げられる吊下げ式の過熱器である。対流伝熱室33における排ガスの流れは、地面と実質的に平行である。過熱器34が過熱した蒸気は、蒸気タービン35に送られる。
【0004】
テールエンド型のボイラ31には、過熱器34に振動を与えて過熱器34に付着したダストを除去するハンマリング装置36が設けられ、吊下げ式の過熱器34にハンマリング装置36を適用することで効率的にダストを除去することができるというメリットがある。ただし、対流伝熱室33における排ガスの流れが地面と実質的に平行である。このため、ボイラ31の敷地面積が大きくなるというデメリットがある。
【0005】
また、図5に示すように、縦型のボイラ41も、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる放射伝熱室42と、排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器44a,44b,44cが配置される対流伝熱室43と、を備える。縦型のボイラ41では、対流伝熱室43における排ガスの流れが地面と実質的に垂直である。このため、ボイラ41の敷地面積を小さくできるというメリットがある。
【0006】
ところで、特許文献2に記載の縦型のボイラにおいて、過熱器44a,44b,44cは、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最も低い1次過熱器44aと、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が中間の2次過熱器44bと、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最も高い3次過熱器44cと、から構成される。ここで、管の腐食速度は管内を流れる蒸気温度と管表面の雰囲気温度に依存するため、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最も高い3次過熱器44cは最も腐食し易い。したがって、3次過熱器44cを1次過熱器44aの下流に配置することで、3次過熱器44cが高温になるのを防止し、3次過熱器44cの腐食のリスクを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-310594号公報
【文献】特開平7-139706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に記載の縦型のボイラにおいては、1次過熱器の下流に3次過熱器を配置するので、3次過熱器が過熱蒸気を発生させるための蒸気温度をあまり高くできないという課題がある。蒸気温度を高くできないと、発電機の発電効率が低下する。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ボイラの敷地面積を小さくすることができると共に、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度を高くして、発電機の発電効率を上げることができるボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、廃棄物焼却炉に連設されるボイラであって、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる放射伝熱室と、排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器が配置される対流伝熱室と、を備え、前記対流伝熱室における排ガスの流れが地面と実質的に垂直であり、前記放射伝熱室における排ガスの流路の屈曲部に天井部から吊り下げられる吊下げ式の過熱器を配置し、前記吊下げ式の過熱器の伝熱管は、複数の直管部と、直管部の両端に設けられる複数のベンド部と、送入端部と、送出端部と、を有すると共に、排ガスと直接接触し、前記吊下げ式の過熱器に振動を与えて前記吊下げ式の過熱器の伝熱管に付着するダストを除去するハンマリング装置を設けるボイラである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ボイラの敷地面積を小さくすることができると共に、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度を高くして、発電機の発電効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態のボイラの縦断面図である。
図2図1のII部拡大図である。
図3図1のIII部拡大図である。
図4】従来のテールエンド型のボイラの縦断面図である。
図5】従来の縦型のボイラの縦面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態のボイラを詳細に説明する。ただし、本発明のボイラは種々の形態で具体化することができ、明細書に記載される実施形態に限定されるものではない。本実施形態は、明細書の開示を十分にすることによって、当業者が発明を理解できるようにする意図をもって提供されるものである。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態のボイラ1の縦断面図である。ボイラ1は、炉2の後段に連接される。なお、図1には、炉2の一例として火格子式の廃棄物焼却炉を示す。
【0015】
ボイラ1は、排ガスからの放射熱を受けて蒸気を発生させる放射伝熱室3と、排ガスと熱交換して蒸気を過熱する過熱器5b,5cが配置される対流伝熱室4と、を備える。放射伝熱室3のケーシングは、水冷壁管から構成される。
【0016】
放射伝熱室3には、排ガス流路を屈曲させる第1屈曲部7と第2屈曲部9が設けられる。第1屈曲部7は、排ガスの流れを上向きから下向きに変える。第2屈曲部9は、排ガスの流れを下向きから上向きに変える。第1屈曲部7と第2屈曲部9とによって、放射伝熱室3には、排ガスが流れる上流側から第1流路6と第2流路8が形成される。炉2から排出される排ガスは、第1流路6を下方から上方へ流れ、第1屈曲部7によって向きを変えられ、第2流路8を上方から下方へ流れ、第2屈曲部9によって向きを変えられ、対流伝熱室4を下方から上方へ(地面と実質的に垂直方向に)流れる。
【0017】
放射伝熱室3の第1屈曲部(第2流路8又は第1流路6)には、放射伝熱室3の天井部3aから吊り下げられる吊下げ式の過熱器5aが配置される。
【0018】
吊下げ式の過熱器5aは、1~n(ただし、nは2以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器である。1~n-1次の過熱器5b,5cは、対流伝熱室4に配置される。例えばn=3の場合、吊下げ式の過熱器5aは3次の過熱器であり、1~2次の過熱器5b,5cは対流伝熱室4に配置される。
【0019】
なお、吊下げ式の過熱器5aは、1~n(ただし、nは3以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器と蒸気温度が2番目に高いn-1次の過熱器であってもよい。この場合、1~n-2次の過熱器が対流伝熱室4に配置される。例えばn=5の場合、吊下げ式の過熱器は5次の過熱器と4次の過熱器であり、1~3次の過熱器が対流伝熱室4に配置される。
【0020】
図2は、吊下げ式の過熱器5aの詳細図(図1のII部拡大図)を示す。吊下げ式の過熱器5aは、図2の紙面に直交する方向に配列される複数の伝熱管11(伝熱管群)から構成される。各伝熱管11は、ジグザグ状に曲げられていて、複数の直管部11aと、直管部11aの両端に設けられる複数のベンド部11b,11cと、送入端部11dと、送出端部11eと、を有する。直管部11aは、地面と実質的に垂直である。送入端部11dと送出端部11eは、放射伝熱室3の天井部3aを貫通し、ヘッダ12,13に接続される。送入端部11dと送出端部11eは、図示しない支持梁に支持される。天井部3aを開口することで、クレーンを用いて吊下げ式の過熱器5aを交換可能である。
【0021】
また、各伝熱管11の直管部11aは、直管部連結部材14で連結される。伝熱管11群は、紙面と直交方向に延びるパネル連結部材15,16によって連結される。パネル連結部材15,16は、ハンマリング装置17(図1参照)による打撃を受ける。ハンマリング装置17の打撃の方向は、図2の紙面と直交方向である。ハンマリング装置17は、例えばエアーノッカーである。エアーノッカーは、内部にピストンを有し、エアーの圧力によってピストンがパネル連結部材15,16を打撃する。若しくは、エアーノッカーの他にハンマーを打ち付けるハンマー式のハンマリング装置を用いてもよい。
【0022】
パネル連結部材15,16がハンマリング装置17の打撃を受けた場合、打撃はパネル連結部材15,16を介して各伝熱管11に伝達される。各伝熱管11では、直管部連結部材14を通して全ての直管部11aに力が伝達される。このため、伝熱管11が振動し、伝熱管11に付着する灰等のダストが除去される。
【0023】
図3は、対流伝熱室4に配置される1次過熱器5bの詳細図(図1のIII部拡大図)を示す。1次過熱器5bは、図3の紙面に直交する方向に配列される複数の伝熱管21(伝熱管群)から構成される。各伝熱管21は、ジグザグ状に曲げられていて、複数の直管部21aと、直管部21aの両端に設けられる複数のベンド部21b,21cと、送入端部21dと、送出端部21eと、を有する。直管部21aは、地面と実質的に平行である。送入端部21dと送出端部21eは、対流伝熱室4の壁4aを貫通し、ヘッダ22,23に接続される。
【0024】
1次過熱器5bに付着するダストは、例えば伝熱管21に蒸気を吹き付けるスートブロワ、又は対流伝熱室4内に圧力波を放出する圧力波発生装置によって除去される。なお、2次過熱器5cの構成は、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が1次過熱器5bよりも高い点を除いて1次過熱器5bと略同一であるので、その説明を省略する。
【0025】
また、図1に示す対流伝熱室4には、1次過熱器5bと2次過熱器5cの他に、図示しないエコノマイザが設けられる。エコノマイザは、排ガスとの熱交換により水を加熱する。エコノマイザにより加熱された温水は、放射伝熱室3の水冷壁管に供給される。排ガスからの放射熱を受けて水冷壁管で生成された蒸気は、1次過熱器5b、2次過熱器5c、吊下げ式の過熱器5a(3次過熱器)の順に供給される。1次過熱器5bは、放射伝熱室3から供給された蒸気を過熱する。2次過熱器5cは、1次過熱器5bが過熱した蒸気をさらに過熱する。吊下げ式の過熱器5aは、2次過熱器5cが過熱した蒸気をさらに過熱する。吊下げ式の過熱器5aが過熱した蒸気は、最高温度に到達し、蒸気タービンに供給される。
【0026】
以上に、本実施形態のボイラの構成を説明した。本実施形態のボイラによれば、テールエンド型のボイラに使用される吊下げ式の過熱器のメリットと縦型のボイラに使用される過熱器のメリットの両方を実現することができるという効果を奏する。
【0027】
すなわち、対流伝熱室4における排ガスの流れが地面と実質的に垂直であるので、ボイラ1の敷地面積を小さくすることができる。また、排ガス温度が高い放射伝熱室3に吊下げ式の過熱器5aを配置するので、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度を高くすることができると共に、吊下げ式の過熱器5aの伝熱面積を小さくすることができる。さらに、排ガス温度が高い放射伝熱室3に過熱器5aを配置すると、過熱器5aが腐食し易くなるが、吊下げ式の過熱器5aとハンマリング装置17という効率的なダスト除去手段を採用するので、過熱器5aの腐食も防止できる。さらに、放射伝熱室3の天井部3aを開口して、吊下げ式の過熱器5aを丸ごと交換できるので、交換の容易性に加えて、過熱器5aの材料コストの低減、メンテナンス費の低減が期待される。
【0028】
吊下げ式の過熱器5aが1~n(ただし、nは2以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器5aであり、1~n-1次の過熱器5b,5cが対流伝熱室4に配置されるので、1~n-1次の過熱器5b,5cの腐食を防止した上で、過熱蒸気の最高到達温度を高くすることができる。このため、発電機の発電効率を上げることができる。
【0029】
また、吊下げ式の過熱器を1~n(ただし、nは3以上の整数)次の過熱器のうち、過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が最大となるn次の過熱器と過熱蒸気を発生させるための蒸気温度が2番目に高いn-1次の過熱器とし、1~n-2次の過熱器を対流伝熱室4に配置した場合でも、1~n-2次の過熱器の腐食を防止した上で、過熱蒸気の最高到達温度を高くすることができる。このため、発電機の発電効率を上げることができる。
【0030】
放射伝熱室3が第1屈曲部7と第2屈曲部9を備えるので、対流伝熱室4に到達する排ガス温度を低くすることができ、対流伝熱室4に配置される1次過熱器5b、2次過熱器5cの腐食を防止することができる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で他の実施形態に変更可能である。
【0032】
上記実施形態では、放射伝熱室に排ガスの流路を屈曲させる第1屈曲部と第2屈曲部を設けているが、放射伝熱室に1つのみの屈曲部を設けてもよい。この場合、対流伝熱室における排ガスの流れは、上方から下方になる。
【0033】
上記実施形態では、放射伝熱室に配置される吊下げ式の過熱器をn次の加熱器、又はn次の過熱器とn-1次の過熱器としているが、吊下げ式の過熱器を1次の加熱器及び/又は2次の過熱器としてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…ボイラ
3…放射伝熱室
4…対流伝熱室
7…第1屈曲部(屈曲部)
3a…天井部
5a…3次過熱器(吊下げ式の過熱器)
5b…1次過熱器(過熱器)
5c…2次過熱器(過熱器)
17…ハンマリング装置
図1
図2
図3
図4
図5