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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電気機器
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/14 20060101AFI20240130BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20240130BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20240130BHJP
【FI】
H05K7/14 C
H02K5/22
H01R12/71
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019211054
(22)【出願日】2019-11-22
(65)【公開番号】P2021082771
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松田 雅大
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-120849(JP,A)
【文献】実開平05-018071(JP,U)
【文献】特表2017-504198(JP,A)
【文献】国際公開第2009/037833(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0062091(US,A1)
【文献】特開2018-207640(JP,A)
【文献】特開平10-021988(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/14
H02K 5/22
H01R 12/71
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取り付け対象であるモータの端部に取り付けられる基板と、
前記基板の前記モータと反対側に位置する電気部品であるコネクタと、
前記基板に設けられる位置決め用の孔を貫通した状態かつ前記モータおよび前記コネクタに対するそれらの並び方向に交わる方向への移動が規制された状態で前記モータと前記コネクタとの間を連結する位置決め部材と、を有し
前記位置決め部材は前記コネクタと一体的に設けられていて、前記位置決め部材の前記コネクタと反対側の端部は、前記基板を貫通して前記モータの端部に設けられた位置決め用の凹部に嵌合する嵌合部を有し、
前記位置決め部材は、前記位置決め部材の前記コネクタから前記嵌合部に至る部分と前記嵌合部との間に設けられた段差面であって、前記モータの端面における前記凹部の周辺部分に当接する段差面を有し、
前記コネクタは、前記基板に固定される部分である基板固定部であって、前記コネクタと前記基板との並び方向において前記コネクタとは反対側の端部が前記基板の前記コネクタと対向する面に当接する基板固定部を有している電気機器。
【請求項2】
前記位置決め部材の少なくとも前記凹部に嵌合する部分は金属により設けられている請求項1に記載の電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとその制御装置とが一体的に設けられたモータ装置が存在する。たとえば特許文献1のモータ装置の制御装置は、コネクタ、制御基板およびヒートシンクを有している。コネクタの四隅には、制御基板へ向けて突出する複数の固定フックが設けられている。コネクタは、制御基板を貫通した固定フックの先端が制御基板の裏面に係合することにより制御基板に固定される。コネクタが取り付けられた制御基板は、ねじによりヒートシンクに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-207640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のモータ装置では、制御基板をヒートシンクに取り付ける際の制御基板とヒートシンクとの間の位置決めをする構成が存在しない。そこで、制御基板とヒートシンクとの取り付け作業をより簡単にするために、制御基板とヒートシンクとの間の位置決めするための構成として、つぎのような構成を採用することが考えられる。たとえば、制御基板に位置決め用の孔を設け、この孔にモータの凹部に嵌め込まれたピンを挿入する。
【0005】
しかし、この構成を採用する場合、制御基板には、コネクタの固定フックを挿入するための孔に加えて、制御基板に位置決め用のピンを挿入するための孔を設ける必要がある。制御基板において、位置決め用の孔の周辺には電子部品を設けることが困難である。このため、制御基板に設けられる孔の数が増える分だけ、制御基板において電子部品を設けることができない領域が増える。
【0006】
本発明の目的は、基板に設ける位置決め用の孔の数を減らすことができる電気機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成し得る電気機器は、取り付け対象に取り付けられる基板と、前記基板の前記取り付け対象と反対側に位置する電気部品と、前記基板に設けられる位置決め用の孔を貫通した状態かつ前記取り付け対象および前記電気部品に対するそれらの並び方向に交わる方向への移動が規制された状態で前記取り付け対象と前記電気部品との間を連結する位置決め部材と、を有している。
【0008】
この構成によれば、位置決め部材は、電気部品と基板との間の位置決め用の部材および基板と取り付け対象との間の位置決め用の部材として共用される。電気部品と基板との間の位置決め用の部材および基板と取り付け対象との間の位置決め用の部材を別々に設ける場合に比べて、基板に設ける位置決め用の孔の数を減らすことができる。この位置決め用の孔の数が減る分だけ、基板における電子部品を設けることが可能となる領域を拡大させることができる。逆に、位置決め用の孔の数が減る分だけ、基板を小型化することも可能である。
【0009】
上記の電気機器において、前記位置決め部材は前記電気部品と一体的に設けられていて、その前記電気部品と反対側の端部は前記基板を貫通して前記取り付け対象に設けられた位置決め用の凹部に嵌合していてもよい。
【0010】
このようにしても、位置決め部材は、電気部品と基板との間の位置決め用の部材および基板と取り付け対象との間の位置決め用の部材として共用される。
上記の電気機器において、前記位置決め部材は前記取り付け対象と一体的に設けられていて、その前記取り付け対象と反対側の端部は前記基板を貫通して前記電気部品に設けられた位置決め用の凹部に嵌合していてもよい。
【0011】
このようにしても、位置決め部材は、電気部品と基板との間の位置決め用の部材および基板と取り付け対象との間の位置決め用の部材として共用される。
上記の電気機器において、前記位置決め部材の少なくとも前記凹部に嵌合する部分は金属により設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、位置決め部材を取り付け対象の凹部あるいは電気部品の凹部に対して着脱する際、位置決め部材の摩耗に伴う粉塵の発生を抑制することができる。
上記の電気機器において、前記電気部品は、コネクタであってもよい。
【0013】
この構成を採用する場合、電気機器として、電気部品と一体的に設けられた位置決め部材の電気部品と反対側の端部が基板を貫通して取り付け対象の凹部に嵌合する構成、または取り付け対象と一体的に設けられた位置決め部材の取り付け対象と反対側の端部が基板を貫通して電気部品の凹部に嵌合する構成を採用するとよい。
【0014】
コネクタに対してたとえば相手方のコネクタが接続される際、コネクタには基板および取り付け対象へ向けた外力が作用するところ、この外力は位置決め部材を介して取り付け対象に受け止められる。このため、基板が取り付け対象へ向けて押圧されることが抑制される。基板に生じる応力が緩和されるため、基板の歪が抑えられる。
【0015】
上記の電気機器において、前記取り付け対象は、車両用のモータであってもよい。
車両に搭載される機器には小型化に対する要望がある。前述したように、上記の電気機器においては、位置決め部材が電気部品と基板との間の位置決め用の部材および基板と取り付け対象との間の位置決め用の部材として共用されることによって、位置決め用の孔の数を減らすことが可能である。そしてその位置決め用の孔の数が減る分だけ基板、ひいては基板を含む電気機器の体格を小型化することが可能である。したがって、上記の電気機器は車両用途に好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の電気機器によれば、基板に設ける位置決め用の孔の数を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電気機器の第1の実施の形態の要部を示す部分断面図。
図2】第1の実施の形態の電気機器を分解した部分断面図。
図3】比較例の電気機器の要部を示す部分断面図。
図4】比較例の電気機器における基板の平面図。
図5】電気機器の第2の実施の形態の要部を示す部分断面図。
図6】第2の実施の形態の電気機器を分解した部分断面図。
図7】他の実施の形態の位置決めピンの先端形状を示す断面図。
図8】他の実施の形態の位置決めピンの先端形状を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
以下、電気機器をモータ装置に具体化した第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、モータ装置10は、モータ11および制御装置12を有している。制御装置12は、取り付け対象としてのモータ11の端部に設けられている。
【0019】
制御装置12は、電気部品としてのコネクタ21、および基板22を有している。基板22は、コネクタ21とモータ11との間に位置している。コネクタ21および基板22は部分組立体として組み立てられる。部分組立体としての制御装置12がモータ11の端部に取り付けられる。
【0020】
コネクタ21は、基板22におけるモータ11と反対側の側面に取り付けられている。コネクタ21は、合成樹脂材料により一体的に設けられている。コネクタ21は、コネクタ嵌合部31、複数の位置決めピン32、および基板固定部33を有している。
【0021】
コネクタ嵌合部31は、四角筒状をなすとともに基板22と反対側(図1中の上側)へ向けて開口している。コネクタ嵌合部31には、相手方のコネクタとして、たとえばモータ装置10の外部に設けられる直流電源に配線を介して接続されるプラグコネクタが嵌合される。
【0022】
位置決めピン32は、コネクタ21における基板22側の側面(図1中の下面)に設けられている。位置決めピン32は、円柱状をなしている。位置決めピン32は、コネクタ21および基板22の並び方向(図1中の上下方向)に沿って延びている。位置決めピン32の先端には、円柱状の嵌合部32aが設けられている。嵌合部32aの外径は、位置決めピン32におけるコネクタ嵌合部31から嵌合部32aまでの部分の外径よりも小径である。
【0023】
基板固定部33は、基板22に固定される部分であって、たとえば円柱状をなしている。
基板22には、各種の電子部品41が設けられる。電子部品41は、たとえば基板22におけるモータ11と反対側の側面に対して半田付けによって固定されている。また、基板22は、複数のピン挿通孔42,42、第1のボルト挿通孔43および第2のボルト挿通孔44を有している。
【0024】
ピン挿通孔42は、コネクタ21の位置決めピン32と同じ数だけ設けられる。各ピン挿通孔42は、各位置決めピン32に対応して設けられている。ピン挿通孔42の内径は、位置決めピン32の外径よりも大径である。各ピン挿通孔42には、コネクタ21の各位置決めピン32,32がモータ11と反対側から挿入されている。
【0025】
第1のボルト挿通孔43は、基板固定部33に対応して設けられている。第1のボルト挿通孔43の内径は、コネクタ21の基板固定部33の外径よりも小径である。第1のボルト挿通孔43には、モータ11側からボルト45が挿入されている。このボルト45がコネクタ21の基板固定部33に締め付けられることにより、コネクタ21は基板22に固定されている。
【0026】
第2のボルト挿通孔44は、基板22におけるコネクタ21から外れた位置に設けられている。
モータ11の端部には、複数の嵌合凹部51および基板固定部52が設けられている。
【0027】
嵌合凹部51は、コネクタ21の位置決めピン32と同じ数だけ設けられる。嵌合凹部51の内径は、位置決めピン32の先端に設けられた嵌合部32aの外径と同程度あるいは若干大径に設定される。嵌合凹部51には、基板22を貫通する位置決めピン32の嵌合部32aが嵌合している。
【0028】
基板固定部52は、基板22が固定される部分であって、たとえば円柱状をなしている。基板固定部52は、基板22の第2のボルト挿通孔44に対応して設けられている。基板固定部52の外径は、基板22における第2のボルト挿通孔44の内径よりも大径である。基板固定部52には、基板22の第2のボルト挿通孔44を介してボルト53が締め付けられる。これにより、基板22はモータ11に固定されている。
【0029】
つぎに、モータ装置10の組み立て手順を説明する。
図2に示すように、モータ装置10を組み立てるに際して、まず部分組立体である制御装置12を組み立てる。すなわち、コネクタ21と基板22とを互いに近接させつつ、コネクタ21の位置決めピン32を基板22のピン挿通孔42にモータ11と反対側から挿入する。位置決めピン32がピン挿通孔42の内周面に係合することにより、コネクタ21は基板22の電子部品41が設けられる面である部品面に沿う方向において位置決めされる。また、基板22に対するコネクタ21の取り付け方向からみて、コネクタ21の基板固定部33と基板22の第1のボルト挿通孔43とは互いに一致する。位置決めピン32は、基板固定部33の先端が基板22の部品面における第1のボルト挿通孔43の周辺部分に当接する位置までピン挿通孔42に挿入する。この後、基板22の第1のボルト挿通孔43にボルト45をコネクタ21と反対側から挿入しつつボルト45を基板固定部33に締め付ける。これにより、コネクタ21が基板22に固定される。以上で、制御装置12の組み立て作業が完了となる。
【0030】
つぎに、部分組立体である制御装置12をモータ11の端部に取り付ける。すなわち、基板22とモータ11とを互いに近接させつつ、基板22を貫通した位置決めピン32の先端の嵌合部32aをモータ11の嵌合凹部51に嵌め込む。これにより、基板22はモータ11の端面に沿う方向において位置決めされる。また、モータ11に対する基板22の取り付け方向からみて、基板22の第2のボルト挿通孔44とモータ11の基板固定部52とは互いに一致する。
【0031】
制御装置12とモータ11との互いに近接する方向へ向けた移動は、位置決めピン32におけるコネクタ嵌合部31から嵌合部32aまでの部分と嵌合部32aとの間の段差面32bがモータ11の端面における嵌合凹部51の周辺部分に当接することにより規制される。このとき、モータ11の基板固定部52の先端は、基板22の第2のボルト挿通孔44の周辺部分に当接する。この状態において、基板22の第2のボルト挿通孔44にボルト53をモータ11と反対側から挿入しつつボルト53を基板固定部52に締め付ける。これにより、基板22、ひいては部分組立体である制御装置12がモータ11の端部に固定される。以上で、モータ装置10の組み立て作業が完了となる。
【0032】
つぎに、第1の実施の形態の作用を説明する。
図3に示す比較例のように、製品仕様などによっては、コネクタ21と基板22との間の位置決めをコネクタ21とは別の部材であるピン61,61を使用して行う一方、基板22とモータ11との間の位置決めをコネクタ21とは別の部材であるピン62を使用して行うことが考えられる。しかし、この構成を採用する場合、ピン61,61を挿通するためのピン挿通孔63,63およびピン62を挿通するためのピン挿通孔64を別々に設ける必要がある。このため、つぎのようなことが懸念される。
【0033】
図4に示すように、基板22において、位置決め用の孔であるピン挿通孔63,63,64が設けられる部分およびピン挿通孔63,63,64の周辺の領域A1,A2,A3には電子部品を設けることが困難である。また、基板22において、第1のボルト挿通孔43および第2のボルト挿通孔44が設けられる部分および第1のボルト挿通孔43および第2のボルト挿通孔44の周辺の領域A4,A5においても電子部品を設けることが困難である。このため、基板22に設けられる孔の数が増えるほど、基板22において電子部品を設けることができない領域が増える。
【0034】
この点、本実施の形態では、コネクタ21と基板22との間の位置決め、および基板22とモータ11との間の位置決めが、共通の位置決めピン32,32を使用して行われる。このため、基板22には、位置決めピン32,32を挿入するためのピン挿通孔42,42を設ければ足りる。したがって、コネクタ21と基板22との間の位置決めおよび基板22とモータ11との間の位置決めをそれぞれ別のピンを使用して行う場合に比べて、基板22に設ける位置決め用の孔の数を減らすことが可能である。
【0035】
たとえば先の図3に示す比較例においては、制御装置12として、基板22とモータ11との間の位置決めを行うためのピン62を割愛した構成を採用することが可能である。また、基板22として、ピン62が挿入されるピン挿通孔64を割愛した構成を採用することが可能である。このため、基板22における電子部品を設けることが困難である領域を減らすことができる。すなわち、図3に示される比較例において、ピン挿通孔64が設けられている部分およびピン挿通孔64の周辺の領域A3には、電子部品を設けることが可能となる。逆に、電子部品を設けることに代えて、基板22におけるピン挿通孔64が設けられている部分およびピン挿通孔64の周辺の領域A3を無くすことも可能である。ピン挿通孔64およびその周辺の領域A3を設けない分だけ、基板22の小型化が図られる。
【0036】
したがって、第1の実施の形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)位置決めピン32は、コネクタ21と基板22との間の位置決め用のピンおよび基板22とモータ11との間の位置決め用のピンとして共用される。コネクタ21と基板22との間の位置決め用のピンおよび基板22とモータ11との間の位置決め用のピンを別々に設ける場合に比べて、基板22に設ける位置決め用の孔の数を減らすことができる。この位置決め用の孔の数が減る分だけ、基板22における電子部品を設けることが可能となる領域を拡大させることができる。逆に、位置決め用の孔の数を減らす分だけ、基板22を小型化することも可能である。
【0037】
(2)モータ装置10が組み立てられた状態において、位置決めピン32におけるコネクタ嵌合部31から嵌合部32aまでの部分と嵌合部32aとの間の段差面32bは、モータ11の端面における嵌合凹部51の周辺部分に当接した状態に保たれる。コネクタ嵌合部31にプラグコネクタが嵌合される際、コネクタ21には基板22およびモータ11へ向けた外力が作用するところ、この外力は位置決めピン32の段差面32bを介してモータ11の端面に受け止められる。このため、コネクタ21の基板固定部33を介して基板22がモータ11へ向けて押圧されることが抑制される。ひいては、基板22に生じる応力が緩和されることにより、基板22が歪むことが抑制される。したがって、基板22を良好な設置状態に維持しつつコネクタ嵌合部31にプラグコネクタを装着することができる。
【0038】
(3)位置決めピン32はコネクタ21の一部分として合成樹脂材料により一体成型されている。このため、位置決めピン32をコネクタ21とは別の部材として設ける場合に比べて、部品点数を減らすことが可能である。
【0039】
(4)モータ装置10は車両用の駆動源に好適である。すなわち、車両に搭載される機器には小型化に対する要望がある。前述したように、モータ装置10においては、位置決めピン32がコネクタ21と基板22との間の位置決め用のピンおよび基板22とモータ11との間の位置決め用のピンとして共用されることによって、位置決め用の孔の数を減らすことが可能である。そしてその位置決め用の孔の数が減る分だけ基板22、ひいては基板22を含むモータ装置10の体格を小型化することが可能である。したがって、モータ装置10は車載用途に好適である。
【0040】
<第2の実施の形態>
つぎに、電気機器の第2の実施の形態を説明する。本実施の形態は、位置決めピンの構成の点で第1の実施の形態と異なる。したがって、第1の実施の形態と同一の部材および構成には同一の符号を付し、その詳細な説明を割愛する。
【0041】
図5に示すように、コネクタ21における基板22側の側面(図5中の下面)において、基板22の第1のボルト挿通孔43に対応する部位には、コネクタ支持部34aが設けられている。コネクタ21におけるコネクタ支持部34aに対応する部位には、ボルト挿通孔34が設けられている。また、コネクタ21における基板22側の側面(図5中の下面)には、複数の嵌合凹部35,35が設けられている。
【0042】
モータ11の端面には、基板固定部52に加え、複数の位置決めピン54およびコネクタ固定部55が設けられている。
位置決めピン54は、コネクタ21の嵌合凹部35と同じ数だけ設けられる。位置決めピン54は、コネクタ21および基板22の並び方向(図5中の上下方向)に沿って延びている。位置決めピン54の先端には、円柱状の嵌合部54aが設けられている。嵌合部54aの外径は、位置決めピン54におけるモータ11から嵌合部54aまでの部分の外径よりも小径である。位置決めピン54は、基板22のピン挿通孔42にモータ11側から挿入されている。位置決めピン54の嵌合部54aは、コネクタ21の嵌合凹部35にモータ11側から嵌合されている。コネクタ21は、位置決めピン54によってモータ11に支持されている。
【0043】
コネクタ固定部55は、コネクタ21が固定される部分であって、たとえば円柱状をなしている。コネクタ固定部55は、基板22の第1のボルト挿通孔43に対応して設けられている。コネクタ固定部55の外径は、基板22における第1のボルト挿通孔43の内径よりも大径である。コネクタ固定部55には、コネクタ21のボルト挿通孔34および基板22の第1のボルト挿通孔43を介してボルト56が締め付けられる。これにより、コネクタ21はモータ11に固定されている。
【0044】
ちなみに、モータ11の基板固定部52には、基板22の第2のボルト挿通孔44を介してボルト53が締め付けられる。これにより、基板22はモータ11に固定されている。
【0045】
つぎに、モータ装置10の組み立て手順を説明する。
図6に示すように、モータ装置10を組み立てるに際して、まず基板22をモータ11の端部に取り付ける。すなわち、基板22とモータ11とを互いに近接させつつ、基板22のピン挿通孔42,42にモータ11の位置決めピン54,54を挿入する。基板22とモータ11との互いに近接する方向へ向けた移動は、モータ11のコネクタ固定部55が基板22のモータ11側の側面における第1のボルト挿通孔43の周辺部分に当接すること、およびモータ11の基板固定部52が基板22のモータ11側の側面における第2のボルト挿通孔44の周辺部分に当接することにより規制される。また、位置決めピン54がピン挿通孔42の内周面に係合することにより、基板22はモータ11の端面に沿う方向において位置決めされる。
【0046】
基板22が位置決めピン54,54によってモータ11の端面に対して位置決めされた状態、かつ基板22がコネクタ固定部55および基板固定部52によって支持された状態で、基板22の第2のボルト挿通孔44にボルト53をモータ11と反対側から挿入しつつボルト53を基板固定部52に締め付ける。これにより、基板22がモータ11の端部に固定される。
【0047】
つぎに、基板22が取り付けられたモータ11とコネクタ21とを互いに近接させつつ、基板22を貫通した位置決めピン54,54の嵌合部54a,54aをコネクタ21の嵌合凹部35,35に嵌合させる。基板22が取り付けられたモータ11とコネクタ21との互いに近接する方向へ向けた移動は、位置決めピン54におけるモータ11の端面から嵌合部54aまでの部分と嵌合部54aとの間の段差面54bがコネクタ21のモータ11側の側面における嵌合凹部35の周辺部分に当接することにより規制される。
【0048】
コネクタ21の嵌合凹部35,35に位置決めピン54,54の嵌合部54a,54aが嵌合することにより、コネクタ21はモータ11の端面に沿う方向、ひいては基板22の部品面に沿う方向において位置決めされる。このとき、モータ11に対するコネクタ21の取り付け方向からみて、コネクタ21のボルト挿通孔34は、基板22の第1のボルト挿通孔43およびモータ11のコネクタ固定部55に対して一致している。この状態で、コネクタ21のボルト挿通孔34にボルト56をモータ11と反対側から挿入しつつボルト56をモータ11のコネクタ固定部55に締め付ける。これにより、コネクタ21は位置決めピン54,54に支持された状態でモータ11の端部に固定される。コネクタ支持部34aの先端面(図および図6における下端面)は基板22に接触した状態に維持される。以上で、モータ装置10の組み立て作業が完了となる。
【0049】
したがって、第2の実施の形態によれば、先の第1の実施の形態の(1)~(4)と同様の効果を得ることができる。
<他の実施の形態>
なお、第1および第2の実施の形態は、つぎのように変更して実施してもよい。
【0050】
・第1および第2の実施の形態において、電子部品41は基板22の両面に設けられていてもよい。
図7に示すように、第1の実施の形態において、位置決めピン32として嵌合部32aを割愛した構成を採用してもよい。この場合、位置決めピン32はその全長にわたって同一の外径を有する。モータ11の嵌合凹部51の内径は、位置決めピン32の外径に応じて適宜変更すればよい。ちなみに、第2の実施の形態において、位置決めピン54として嵌合部54aを割愛した構成を採用してもよい。
【0051】
図8に示すように、第1の実施の形態において、位置決めピン32の本体部分とその嵌合部32aとを互いに別部材として設けてもよい。たとえば、位置決めピン32は金属ピン36の一部分が合成樹脂材料によりモールドされてなる。金属ピン36における位置決めピン32の本体部分から突出する部分が嵌合部32aとして機能する。このようにすれば、たとえば部分組立体である制御装置12をモータに対して着脱する際、位置決めピン32の摩耗に伴う粉塵の発生を抑制することができる。また、位置決めピン32の全体を合成樹脂材料により形成する場合に比べて、製品間における位置決めピン32の形状のばらつきを抑えることができる。このため、位置決めピン32による位置決め精度が向上する。ちなみに、第2の実施の形態において、位置決めピン54として金属ピンの一部分が合成樹脂材料によりモールドされてなる構成を採用してもよい。
【0052】
・第1および第2の実施の形態において、位置決めピン32,54の全体を金属材料により設けてもよい。
・第1の実施の形態では、位置決めピン32をコネクタ21の一部分として設けたが、位置決めピン32をコネクタ21とは別の部材として設けてもよい。この場合、位置決めピン32のモータ11と反対側の端部は、コネクタ21のモータ11側の側面に設けられる位置決め用の凹部に嵌合させる。また、第2の実施の形態では、位置決めピン54をモータ11と一体的に設けたが、位置決めピン54をモータ11とは別の部材として設けてもよい。この場合、位置決めピン54のコネクタ21と反対側の端部は、モータ11の端面に設けられる位置決め用の凹部に嵌合させる。
【0053】
・第1および第2の実施の形態では、基板22をモータ11の端面に設けられた基板固定部52によって支持するようにしたが、モータ11として基板固定部52を割愛した構成を採用してもよい。この場合、基板22はモータ11の端面に対して接触した状態で取り付けられる。すなわち、基板22とモータ11の端面との間には隙間が形成されない。
【0054】
・第1および第2の実施の形態において、モータ11の端部には、その一部分としてヒートシンクあるいはカバーが設けられることがある。このような場合、制御装置12は取り付け対象としてのヒートシンクあるいはカバーに取り付けるようにしてもよい。
【0055】
・第1および第2の実施の形態のモータ装置10の用途は車載用途に限られない。モータ装置10は、車両以外の製品に使用してもよい。
・第1および第2の実施の形態では、電気機器をモータ装置10に具体化したが、モータ11を駆動源とする電動ポンプなどの装置に具体化してもよい。この場合、制御装置12は、たとえば取り付け対象である装置のハウジングに取り付けられる。
【0056】
・第1および第2の実施の形態では電気機器をモータ装置10に具体化したが、モータ以外の駆動源を有する機械装置に具体化してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10…モータ装置(電気機器)、11…モータ(取り付け対象)、21…コネクタ(電気部品)、22…基板、32,54…位置決めピン(位置決め部材)、35,51…嵌合凹部(凹部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8