(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】補助シール、および、検査用シールセット
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0507 20210101AFI20240130BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61B5/0507 100
A61B10/00 Y
(21)【出願番号】P 2019221550
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】野村 彩英子
(72)【発明者】
【氏名】田辺 淳也
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 司
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5662110(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2015-0082793(KR,A)
【文献】特開2006-130865(JP,A)
【文献】特表2019-510593(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057524(WO,A1)
【文献】特開2004-347660(JP,A)
【文献】特表2012-508906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0507
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波を用いた画像診断の検査対象に貼り付けられる検査用シールとともに用いられ、前記検査用シールと前記検査対象の間に位置して、前記検査用シールによって前記検査対象に向けて押圧される補助シールであって、
20μm以下の厚さを有したベースフィルムと、
前記ベースフィルムに積層されることによって前記ベースフィルムとともに積層体を形成し、前記検査対象に貼り付けられる粘着層と、を備え、
前記ベースフィルムの引張弾性率が1.0GPa以上である
補助シール。
【請求項2】
前記粘着層は、25μm以下の厚さを有し、
前記積層体において、ステンレス製の試験板に対して前記粘着層を貼り付けた場合の剥離強度が1.5N/25mm以上であり、前記剥離強度は、JIS Z 0237:2009に規定される値である
請求項1に記載の補助シール。
【請求項3】
前記積層体が広がる平面と対向する視点から見て、前記積層体は、楕円状またはカプセル状を有し、
前記積層体において、長軸および短軸が45mm以上の長さを有し、
前記短軸に対する前記長軸の比が、1よりも大きい
請求項1または2に記載の補助シール。
【請求項4】
前記粘着層における前記ベースフィルムとは反対側の面に対して剥離可能に積層された保護フィルムをさらに備える
請求項1から3のいずれか一項に記載の補助シール。
【請求項5】
前記積層体において、周波数が2GHzであるマイクロ波に対する透過率が70%以上である
請求項1から4のいずれか一項に記載の補助シール。
【請求項6】
前記積層体は、全光線透過率が30%以上であり、前記積層体を介した前記検査対象の視認を可能にする部分を含み、前記全光線透過率は、JIS K 7351‐1:1997に規定される値である
請求項1から5のいずれか一項に記載の補助シール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の補助シールと、
検査対象に貼り付けられた補助シールを覆うように前記検査対象に貼り付けられる検査用シールと、を備える
検査用シールセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助シール、および、補助シールと検査用シールとを含む検査用シールセットに関する。
【背景技術】
【0002】
乳がんの検査方法として、マイクロ波を用いたマンモグラフィーが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、検査対象である乳房を圧迫する必要がないため、被検者は検査時に痛みを感じることがない。また、マイクロ波を用いたマンモグラフィーではX線を用いないため、被検者が被爆しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、プローブを用いて乳房をスキャンすることによって三次元画像を生成する。そして、生成された三次元画像に基づいて、乳がんに対する罹患の有無を診断する。スキャンの対象である乳房は、乳房体と乳頭部との間に高低差を有するため、プローブによる乳房のスキャンが高低差によって妨げられることがある。
【0005】
なお、こうした課題は、検査対象が乳房である場合に限らず、検査対象が人体における他の部位であって、かつ、当該検査対象が、検査対象の表面に位置する凸部による高低差を有する場合にも共通する。
【0006】
本発明は、プローブを用いたスキャンの円滑性を高めることを可能とした補助シール、および、検査用シールセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための補助シールは、マイクロ波を用いた画像診断の検査対象に貼り付けられる検査用シールとともに用いられ、前記検査用シールと前記検査対象の間に位置して、前記検査用シールによって前記検査対象に向けて押圧される補助シールであって、20μm以下の厚さを有したベースフィルムと、前記ベースフィルムに積層されることによって前記ベースフィルムとともに積層体を形成し、前記検査対象に貼り付けられる粘着層と、を備える。前記ベースフィルムの引張弾性率が1.0GPa以上である。
【0008】
上記課題を解決するための検査用シールセットは、上記補助シールと、検査対象に貼り付けられた補助シールを覆うように前記検査対象に貼り付けられる検査用シールと、を備える。
【0009】
上記各構成によれば、検査対象が有する凸部を覆うように積層体が検査対象に貼り付けられた場合に、ベースフィルムが有する引張弾性率によって、積層体は、凸部の高さが低くなる方向に凸部を押さえつけながら、検査対象に貼り付くことが可能である。こうした補助シールによれば、補助シールを検査対象に適用することによって、検査対象における高低差が補助シールによって緩和されるため、プローブを用いたスキャンの円滑性が高められる。
【0010】
上記検査用シールにおいて、前記粘着層は、25μm以下の厚さを有し、前記積層体において、ステンレス製の試験板に対して前記粘着層を貼り付けた場合の剥離強度が1.5N/25mm以上であり、前記剥離強度は、JIS Z 0237:2009に規定される値であってよい。
【0011】
上記構成によれば、検査対象と粘着層との間に隙間が生じることが、粘着層が有する粘着性によって抑えられる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0012】
上記検査用シールにおいて、前記積層体が広がる平面と対向する視点から見て、前記積層体は、楕円状またはカプセル状を有し、前記積層体において、長軸および短軸が45mm以上の長さを有し、前記短軸に対する前記長軸の比が、1よりも大きくてもよい。
【0013】
上記構成によれば、検査対象が乳房であり、積層体が乳頭部に貼り付けられた場合に、積層体にしわが生じにくくなる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0014】
上記検査用シールにおいて、前記粘着層における前記ベースフィルムとは反対側の面に対して剥離可能に積層された保護フィルムをさらに備えてもよい。この構成によれば、粘着層がベースフィルムと保護フィルムとに挟まれるため、補助シールが使用される直前まで、粘着層が清浄に保たれる。
【0015】
上記検査用シールにおいて、前記積層体において、周波数が2GHzであるマイクロ波に対する透過率が70%以上であってよい。この構成によれば、検査対象のうちで積層体が貼り付けられた部分に対応する三次元画像が生成される確実性を高めることが可能である。
【0016】
上記検査用シールにおいて、前記積層体は、全光線透過率が30%以上であり、前記積層体を介した前記検査対象の視認を可能にする部分を含み、前記全光線透過率は、JIS K 7351‐1:1997に規定される値であってよい。この構成によれば、積層体を介して、検査対象において積層体が貼り付けられた部分の少なくとも一部の状態を把握することが可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プローブを用いたスキャンの円滑性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】一実施形態における補助シールの構造を示す断面図。
【
図3】
図1が示す補助シールとともに用いられる検査用シールユニットの構造を示す断面図。
【
図4】
図3が示す検査用シールユニットの構造を示す平面図。
【
図5】
図1が示す補助シールと
図3が示す検査用シールユニットとから構成される検査用シールセットの使用方法を説明するための模式図。
【
図6】
図1が示す補助シールと
図3が示す検査用シールユニットとから構成される検査用シールセットの使用方法を説明するための模式図。
【
図7】
図1が示す補助シールと
図3が示す検査用シールユニットとから構成される検査用シールセットの使用方法を説明するための模式図。
【
図8】補助シールの実施例および比較例の評価結果を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1から
図8を参照して、補助シールの一実施形態を説明する。以下では、補助シール、補助シールとともに用いられる検査用シールユニット、補助シールおよび検査用シールユニットの使用方法、および、実施例を順に説明する。
【0020】
[補助シール]
図1および
図2を参照して、補助シールを説明する。
図1は、補助シールが広がる平面に対して直交する断面に沿う補助シールの断面構造を示している。
図2は、補助シールが広がる平面と対向する視点から見た補助シールの平面構造を示している。
【0021】
補助シールは、マイクロ波を用いた画像診断の検査対象に貼り付けられる検査用シールとともに用いられる。補助シールは、検査用シールとともに検査用シールセットを構成する。補助シールは、補助シールの使用時において、検査用シールと検査対象の間に位置して、検査用シールによって検査対象に向けて押圧される。本実施形態では、乳房が検査対象であり、検査用シールおよび補助シールは、マイクロ波を用いたマンモグラフィーに用いられるシールである。本実施形態では、特に1GHz以上10GHz以下の波長帯域のマイクロ波を用いることが好ましい。
【0022】
図1が示すように、補助シール10は、ベースフィルム11と粘着層12とを備えている。粘着層12は、ベースフィルム11に積層され、乳房に貼り付けられる。ベースフィルム11と粘着層12との積層体が、補助シール本体10Aを構成している。補助シール本体10Aは、以下の条件1‐1および条件1‐2を満たす。
(条件1‐1)ベースフィルム11が、20μm以下の厚さを有する。
(条件1‐2)ベースフィルム11の引張弾性率が1GPa以上である。
【0023】
乳房が有する乳頭部を覆うように補助シール本体10Aが乳房に貼り付けられた場合に、ベースフィルム11が有する引張弾性率によって、補助シール本体10Aは、乳頭部の高さが低くなる方向に乳頭部を押さえつけながら、乳房に貼り付くことが可能である。こうした補助シール10によれば、補助シール10を乳房に適用することによって、乳房における高低差が補助シール10によって緩和されるため、プローブを用いたスキャンの円滑性が高められる。
【0024】
引張弾性率は、JIS K 7127:1999(ISO 527‐3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法‐第3部:フィルム及びシートの試験条件」、および、JIS K7161‐1:2014(ISO 527‐1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に準拠して算出される。引張弾性率は、JIS K 7161-1:2014の3.9に定義される。なお、引張弾性率は、当該規格の10「計算及び試験結果の表現」の10.3.2「2点から求める傾き」に記載された以下の式(1‐1)によって算出される。また、式(1‐1)中のひずみεは、当該規格の3.7に定義され、かつ、10.2.1「伸び計で求めるひずみ」に記載された以下の式(1‐2)によって算出される。
【0025】
Et=(σ2-σ1)/(ε2-ε1) … 式(1‐1)
ε=ΔL0/L0 … 式(1‐2)
なお、式(1-1)において、Etは弾性率(MPa)であり、σ1はひずみε1=0.0005(0.05%)における応力(MPa)であり、σ2はひずみε2=0.0025(0.25%)における応力(MPa)である。また、式(1-2)において、εはひずみ(%)であり、L0は試験片の標線間距離(mm)であり、ΔL0は試験片の標線間距離の増加量(mm)である。
【0026】
補助シール10は、以下の条件1‐3および条件1‐4を満たすことがさらに好ましい。
(条件1‐3)粘着層12は、25μm以下の厚さを有する。
(条件1‐4)補助シール本体10Aにおいて、ステンレス製の試験板に対して粘着層12を貼り付けた場合の剥離強度が1.5N/25mm以上である。
【0027】
剥離強度は、JIS Z 0237:2009に規定される値である。剥離強度は、JIS Z0237:2009の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した方法によって測定される。剥離強度は、当該規格の10.4.1における「方法1:試験板に対する180°引きはがし粘着力」として測定される。補助シール本体10Aが条件1‐3および条件1‐4を満たすことによって、乳房と粘着層12との間に隙間が生じることが、粘着層12が有する粘着性によって抑えられる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0028】
補助シール10は、粘着層12におけるベースフィルム11とは反対側の面に対して剥離可能に積層された保護フィルム13をさらに備える。これにより、補助シール10において、粘着層12がベースフィルム11と保護フィルム13とに挟まれるため、補助シール10が使用される直前まで、粘着層12が清浄に保たれる。また、補助シール10が製造されてから使用されるまでの間において、粘着層12が、意図しない物品などに付着することが抑えられる。
【0029】
補助シール10は、以下の条件1‐5を満たすことがさらに好ましい。
(条件1‐5)補助シール本体10Aにおいて、周波数が2GHzであるマイクロ波に対する透過率が70%以上である。
【0030】
マイクロ波を用いたマンモグラフィーでは、周波数が2GHzであるマイクロ波がプローブから発振される。補助シール本体10Aが条件1‐5を満たすことによって、乳房のうちで補助シール本体10Aが貼り付けられた部分に対応する三次元画像が生成される確実性を高めることが可能である。補助シール本体10Aは、マンモグラフィーによる乳房の検査時に、乳頭部に貼り付けられる。補助シール本体10Aが条件1‐5を満たすことによって、乳頭部、および、乳房体において乳頭部に接続する部分に対応する三次元画像が生成される確実性を高めることが可能である。
【0031】
なお、補助シール本体10Aのマイクロ波に対する透過率は、マイクロ波の発振器と受信機との間に補助シール本体10Aが配置されていない状態でのマイクロ波の受信強度と、発振器と受信機との間に補助シール本体10Aが配置されている状態での受信強度との比によって算出することが可能である。
【0032】
補助シール10は、以下の条件1‐6を満たすことがさらに好ましい。
(条件1‐6)補助シール本体10Aは、全光線透過率が30%以上であり、補助シール本体10Aを介した乳房の視認を可能にする部分を含む。
【0033】
全光線透過率は、JIS K 7351‐1:1997に規定される値である。本実施形態では、補助シール本体10Aの全体において、全光線透過率が30%以上である。なお、補助シール本体10Aの一部のみが、全光線透過率が30%以上であり、かつ、補助シール本体10Aを介した乳房の視認が可能な部分であってもよい。これにより、補助シール本体10Aを介して、乳房において補助シール本体10Aが貼り付けられた部分の少なくとも一部の状態を把握することが可能である。なお、本実施形態のように、補助シール本体10Aの全体において全光線透過率が30%以上であれば、乳房のうちで、補助シール本体10Aが貼り付けられた部分の全体について、補助シール本体10Aを介して状態を把握することが可能である。
【0034】
ベースフィルム11は、各種の合成樹脂によって形成される。合成樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂(PU)、エチレン‐酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、および、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)などであってよい。これらの合成樹脂のなかでも、PETを用いてベースフィルム11を形成することが好ましい。これにより、ベースフィルム11の厚さを20μm以下に保ちつつ、補助シール本体10Aの引張弾性率を高めることが可能である。
ベースフィルム11は、透明または半透明であってよい。ベースフィルム11の全光線透過率は、ベースフィルム11の全体において30%以上であることが好ましい。
【0035】
粘着層12は、各種の粘着剤によって形成される。粘着層12は、例えばウレタン系粘着剤によって形成される。ウレタン系粘着剤によって粘着層12が形成されることによって、粘着層12の厚さを25μm以下に保ちつつ、補助シール本体10Aの剥離強度を1.5N/25mm以上とすることが可能である。粘着層12は、透明または半透明であってよい。粘着層12の全光線透過率は、粘着層12の全体において30%以上であることが好ましい。
【0036】
保護フィルム13は、各種の樹脂によって形成される。合成樹脂は、例えば、PU、EVA、PE、PP、および、PETなどであってよい。保護フィルム13は、ベースフィルム11の剛性よりも高い剛性を有することが好ましい。保護フィルムは、透明または半透明であってよい。保護フィルム13の全光線透過率は、保護フィルム13の全体において30%以上であることが好ましい。
【0037】
図2が示すように、補助シール本体10Aが広がる平面と対向する視点から見て、補助シール本体10Aは、楕円状またはカプセル状を有することが可能である。本実施形態において、補助シール本体10Aは、カプセル状を有している。また、本実施形態では、補助シール本体10Aが広がる平面と対向する視点から見て、保護フィルム13が補助シール本体10Aと同一の形状を有しているため、補助シール10がカプセル状を有している。保護フィルム13は、補助シール本体10Aとは異なる形状を有してもよい。ただし、保護フィルム13は、粘着層12の全体を清浄に保つために、粘着層12の全体を覆う形状および大きさを有することが好ましい。
【0038】
カプセル状とは、直方体と2つの半円とが組み合わせられた形状、または、直方体と2つの半楕円とが組み合わせられた形状である。より詳しくは、カプセル状とは、直方体の各短辺に対し、半円または半楕円が接続された形状である。
【0039】
本実施形態では、補助シール10は、直方体と2つの半円とが組み合わせられた形状を有している。そのため、補助シール10の縁10Eは、2つの直線部10E1と、2つの弧状部10E2とによって形成される。補助シール10の縁において、2つの直線部10E1が互いに平行に配置されている。各直線部10E1の一方の端部が1つの弧状部10E2によって接続され、かつ、各直線部10E1の他方の端部が他の弧状部10E2によって接続されている。
【0040】
補助シール本体10Aにおいて、長軸ALおよび短軸ASが45mm以上の長さを有している。補助シール本体10Aがカプセル状を有する場合には、長軸ALは、各直線部10E1に平行であって、かつ、弧状部10E2に接する線分のうちで、最も長い線分である。短軸ASは、各直線部10E1に直交し、かつ、2つの直線部10E1に接する線分である。なお、補助シール本体10Aが楕円状を有する場合には、長軸は、楕円の周上に両端が位置する線分のうち、最大の線分である。短軸は、楕円の周上に両端が位置し、長軸と直交する線分のうち、最大の線分である。
【0041】
短軸ASに対する長軸ALの比(AL/AS)が、アスペクト比である。補助シール本体10Aにおいて、アスペクト比は1よりも大きいことが好ましい。検査対象が乳房であり、補助シール本体10Aが乳頭部に貼り付けられた場合に、補助シール本体10Aにしわが生じにくくなる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0042】
[検査用シールユニット]
図3および
図4を参照して、検査用シールユニットを説明する。検査用シールユニットは、マイクロ波を用いたマンモグラフィーに用いられる検査用シールと、検査用シールを支持する支持体とを含む。検査用シールは、補助シールが貼り付けられた乳房に対して、補助シールを覆うように乳房に貼り付けられる。これにより、検査用シールは、検査用シールと乳房との間に位置する補助シールを、乳房に向けて押圧する。
【0043】
図3が示すように、検査用シールユニット20は、ベースフィルム21、粘着層22、および、支持体23を備えている。ベースフィルム21と粘着層22とが、検査用シール20Aを構成する。ベースフィルム21は、表面21Fと裏面21Rとを含んでいる。粘着層22は、ベースフィルム21の裏面21Rに積層されている。支持体23は、ベースフィルム21の表面21Fに取り付けられている。
【0044】
支持体23は、ベースフィルム21の表面21Fに直接的に取り付けられてもよいし、間接的に取り付けられてもよい。本実施形態では、検査用シールユニット20は、支持体23をベースフィルム21の表面21Fに取り付けるための接着層24をさらに備えている。支持体23は、接着層24を介してベースフィルム21の表面21Fに間接的に取り付けられている。
【0045】
ベースフィルム21は、合成樹脂製である。ベースフィルム21は、例えばPU製である。検査用シール20Aが、以下の2つの条件を満たしていれば、ベースフィルム21は、PU以外の合成樹脂から形成されてもよい。ベースフィルム21の厚さは、例えば、5μm以上15μm以下であってよい。
(条件2‐1)引張破断伸度が130%以上である。
(条件2‐2)100%伸び引張り応力が10MPa以下である。
【0046】
検査用シール20Aによれば、検査用シール20Aにおける引張破断伸度が130%以上であり、かつ、100%伸び引張応力が10MPa以下であるため、検査用シール20Aを小さい力によって大きく引き伸ばすことが可能である。
【0047】
引張破断伸度は、JIS K7127:1999(ISO 527‐3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」、および、JIS K7161‐1:2014(ISO 527‐1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に準拠して算出される。測定対象物である試験片が降伏点を有しない場合には、JIS K7161‐1:2014の3.7.2に定義された「引張破壊ひずみ」を引張破断伸度として算出する。一方で、試験片が降伏点を有する場合には、当該規格の3.8.1に定義される「引張破壊呼びひずみ」を引張破断伸度として算出する。なお、引張破壊ひずみは、当該規格の10「計算及び試験結果の表現」に記載された以下の式(2‐1)によって算出される。また、引張破壊呼びひずみは、当該規格の10「計算及び試験結果の表現」に記載された以下の式(2‐2)によって算出される。
【0048】
ε=ΔL0/L0 … 式(2‐1)
εt=εy+ΔLt/L … 式(2‐2)
なお、式(2‐1)において、εはひずみ(%)であり、L0は試験片の標線間距離(mm)であり、ΔL0は試験片の標線間距離の増加量(mm)である。また、式(2‐2)において、εtは呼びひずみ(%)であり、εyは降伏ひずみ(%)であり、Lは初めのつかみ具間距離(mm)であり、ΔLtは降伏点からのつかみ具間距離の増加量(mm)である。
【0049】
100%伸び引張応力は、JIS K7127:1999(ISO 527‐3:1995)の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠する方法によって算出される。また、100%伸び引張応力は、JIS K7161‐1:2014(ISO 527‐1:2012)の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」の3.6.3に定義された「x%ひずみ引張応力」において、ひずみが規定の値(100%)に達したときの応力として算出される。なお、100%ひずみ引張応力は、当該規格の10「計算及び試験結果の表現」に記載された以下の式(2‐3)によって算出される。
【0050】
σ=F/A … 式(2‐3)
なお、式(2‐3)において、σは応力(MPa)であり、Fは測定した力(N)であり、Aは試験片の初めの断面積(mm2)である。
【0051】
ベースフィルム21がPUから形成される場合には、PUは、エーテル系PU、エステル系PU、および、カーボネート系PUから構成される群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。これにより、高い柔軟性を有し、検査対象に対する貼り付けが容易なベースフィルム21を得ることが可能である。エーテル系PU樹脂は、エーテル結合(‐O‐)を含むエーテル系ポリオールを用いて生成されたPUである。エステル系PUは、エステル結合(‐COO‐)を含むエステル系ポリオールを用いて生成されたPUである。カーボネート系PUは、カーボネート結合(‐OC(=O)O‐)を含むポリオールを用いて生成されたPUである。
【0052】
粘着層22は、ベースフィルム21と同様、合成樹脂製である。粘着層22は、例えばPU製である。粘着層22は、検査用シール20Aにおいて、上述した条件2‐1および条件2‐2に加えて、以下の条件2‐3を満たしていれば、PU以外の合成樹脂から形成されてもよい。粘着層22の厚さは、例えば、5μm以上25μm以下であってよい。
(条件2‐3)JIS Z 0208‐1976に規定される透湿度が、40℃かつ相対湿度90%の条件において、750g/m2・day以上である。
【0053】
また、検査用シール20Aは、以下の条件2‐4を満たすことがさらに好ましい。
(条件2‐4)周波数が2GHzであるマイクロ波に対する透過率が70%以上である。
これにより、検査用シール20Aが貼り付けられた部分に対応する三次元画像が生成される確実性が高まる。なお、検査用シール20Aのマイクロ波に対する透過率は、マイクロ波の発振器と受信機との間に検査用シール20Aが配置されていない状態でのマイクロ波の受信強度と、発振器と受信機との間に検査用シール20Aが配置されている状態での受信強度との比によって算出することが可能である。
【0054】
支持体23は、紙製でもよいし、合成樹脂製でもよい。支持体23は、検査用シール20Aよりも高い剛性を有することが好ましい。一方で、支持体23は、検査用シールユニット20が乳房などの曲面に適用された場合に、曲面に沿った湾曲を可能とする可撓性を有することが好ましい。支持体23が紙製である場合には、紙の坪量によって、支持体23の剛性と可撓性とを調整することが可能である。支持体23が合成樹脂製である場合には、合成樹脂の種類、および、支持体23の厚さによって、支持体23の剛性と可撓性とを調整することが可能である。
【0055】
検査用シールユニット20は、保護フィルム25をさらに備えている。保護フィルム25は、粘着層22に対して剥離可能に積層されている。保護フィルム25と対向する視点から見て、保護フィルム25は、粘着層22の全体を覆っている。保護フィルム25は、透明または半透明な合成樹脂製であることが好ましい。保護フィルム25は、例えば、基材フィルムと、離型層とから構成されている。離型層は、基材フィルム上に積層されている。保護フィルム25において、離型層が粘着層22に接している。基材フィルムは、例えば、PETフィルムなどであってよい。離型層は、例えば、シリコーン樹脂製の層であってよい。なお、保護フィルム25は、基材フィルムのみから形成され、かつ、基材フィルムのなかで粘着層22と接する面に、剥離性を高める加工が施されていてもよい。
【0056】
図4が示すように、検査用シール20Aの表面21Fと対向する視点から見て、支持体23は、ベースフィルム21の縁21Eに沿う形状を有している。検査用シール20Aが支持体23に支持されることによって、検査用シール20Aの縁のなかで、支持体23によって支持された部分は、支持体23が有する形状にしたがって延ばされた状態に維持される。そのため、検査用シール20Aを乳房に貼り付ける検査実施者は、検査用シール20Aの縁のなかで、支持体23によって支持されていない部分のみを外側に向けて引っ張るのみで検査用シール20Aの全体をしわのない状態に維持することが可能である。これにより、しわが寄っていない検査用シール20Aを乳房に貼り付けることが可能であるため、乳房に貼り付けられた検査用シール20Aにしわが生じることが抑えられる。
【0057】
ベースフィルム21は、乳房におけるスキャンの位置を案内するための座標グリッド26を有している。座標グリッド26は、ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、支持体23によって囲まれる領域内に位置している。座標グリッド26は、複数の第1グリッド線26aを含んでいる。各第1グリッド線26aは、スキャン方向に沿って延び、かつ、複数の第1グリッド線26aは、スキャン方向と交差する配列方向に沿って並んでいる。本実施形態において、紙面の上下方向がスキャン方向であり、紙面の左右方向が配列方向である。スキャン方向は、マンモグラフィーにおいて、検査実施者が、プローブを用いて検査対象をスキャンする方向である。
【0058】
座標グリッド26は、配列方向に沿って延び、かつ、スキャン方向に沿って並ぶ複数の第2グリッド線26bをさらに含んでいる。ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、複数の第2グリッド線26bは、複数の第1グリッド線26aとともに正方格子を形成している。
【0059】
座標グリッド26は、インキを用いてベースフィルム21の裏面21Rに印字されている。座標グリッド26を印字するためのインキには、ベースフィルム21に対する印字が可能な任意のインキを用いることが可能である。
【0060】
検査用シールユニット20において、検査用シール20Aのうちで、座標グリッド26を除く部分において、上述した全光線透過率が30%以上であることが好ましい。これにより、検査用シールユニット20を乳房に貼り付ける場合に、乳房に対する座標グリッド26の位置を目視によって確認しながら、乳房に対する検査用シールユニット20の位置を調整することが可能である。また、検査用シールユニット20の全光線透過率が30%以上であれば、ベースフィルム21と粘着層22とを乳房に貼り付けた後に、これらを介して乳房に位置するほくろやしみの位置を、目視やカメラによって特定することが可能である。乳房におけるほくろやしみの位置は変わらないため、乳房における病巣の位置を特定する上で、乳房におけるほくろやしみの位置は重要である。
【0061】
これに対して、支持体23において、全光線透過率は、検査用シール20Aにおいて座標グリッド26を除く部分における全光線透過率よりも低いことが好ましい。支持体23は、半透明または不透明であることが好ましい。これにより、支持体23が検査用シール20Aと同程度の透過性を有する場合に比べて、検査用シール20Aと支持体23との境界が明確である。そのため、検査用シールユニット20から支持体23を取り除く場合に、支持体23に沿って検査用シール20Aが切断されているか否かの判断が容易である。これにより、検査用シールユニット20から支持体23を取り除く場合に、検査用シール20Aと支持体23との境界よりも内側を不用意に切断することが抑えられる。
【0062】
支持体23は、脆弱部23aを備えている。脆弱部23aは、支持体23における脆弱部23a以外の部分よりも破断されやすい部分である。脆弱部23aは、支持体23における脆弱部23a以外の部分よりも機械的な強度が低い部分である。支持体23が脆弱部23aを有することによって、脆弱部23aをきっかけにして支持体23を破断することが可能である。そのため、ベースフィルム21の表面21Fから支持体23を取り外すことが容易である。
【0063】
支持体23における脆弱部23a以外の部分での破断強度は、ベースフィルム21の破断強度よりも高く、支持体23とベースフィルム21の表面21Fとの密着強度は、検査対象との密着強度よりも高い。これにより、脆弱部23aをきっかけとして支持体23を破断した場合に、ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、支持体23とベースフィルム21との境界に沿って、検査用シール20Aを破断することが可能である。さらに、検査用シール20Aの厚さ方向から見て、検査用シール20Aのなかで支持体23と重なる部分を、支持体23とともに乳房から取り除くことが可能である。
【0064】
脆弱部23aは、ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、支持体23のなかでベースフィルム21の重心からの距離が最も大きい部位に位置することが好ましい。これにより、脆弱部23aとベースフィルム21の重心との距離がより小さい場合に比べて、ベースフィルム21から支持体23を取り外す際にベースフィルム21にしわが生じたり、乳房に対するベースフィルム21の位置が変わったりすることが抑えられる。
【0065】
本実施形態では、ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、検査用シール20Aは矩形状を有し、支持体23は矩形枠状を有している。そのため、支持体23において、ベースフィルム21の重心からの距離が最も大きい部位は、支持体23における各角部である。支持体23は、第1角部23c1と、第1角部23c1と隣り合う第2角部23c2とを有している。支持体23は、第1角部23c1と第2角部23c2との少なくとも一方に、脆弱部23aを備えることが好ましい。この場合には、支持体23における角部以外の部分に脆弱部23aが位置する場合に比べて、脆弱部23aの周囲を把持しやすいため、脆弱部23aを破断するための力を脆弱部23aに作用させやすい。
【0066】
また、本実施形態では、脆弱部23aは、第1角部23c1と第2角部23c2との両方に位置している。そのため、支持体23が脆弱部23aを1つのみ備える場合に比べて、検査対象に対する検査用シールユニット20の貼り付け方の自由度が高まる。特に、乳房のように左右対称な2つの部位が検査対象である場合には、第1角部23c1と第2角部23c2との両方に脆弱部23aを備えることによって、左側の乳房と右側の乳房との両方において、脆弱部23aによる効果を得ることが可能である。
【0067】
[使用方法]
図5から
図7を参照して、補助シールおよび検査用シールユニットの使用方法を説明する。
図5が示すように、補助シール10および検査用シールユニット20を使用する際には、まず、補助シール本体10Aを被検者Sに貼り付ける。このとき、補助シール10の保護フィルム13を粘着層12から剥離する。次いで、被検者Sの乳房Bが有する乳頭部を補助シール本体10Aが覆うように、補助シール本体10Aを乳房Bに貼り付ける。なお、
図5が示す例では、補助シール本体10Aの長軸が延びる方向が、被検者Sの左右方向とほぼ平行になるように、補助シール本体10Aを乳房Bに貼り付けている。しかしながら、補助シール本体10Aの長軸が延びる方向が、被検者Sの左右方向と交差するように、補助シール本体10Aを乳房Bに貼り付けてもよい。
【0068】
図6が示すように、補助シール本体10Aが貼り付けられた乳房Bに対して、補助シール本体10Aを覆うように、検査用シール20Aを貼り付ける。この際に、検査用シールユニット20が備える保護フィルム25を粘着層22から剥離する。次いで、検査用シール20Aにしわが生じないように支持体23を把持しながら、検査用シール20Aの粘着層22を乳房Bに貼り付ける。これにより、検査用シール20Aの粘着層22が、補助シール本体10A、および、乳房体に貼り付けられるため、粘着層22が有する粘着力によって、補助シール本体10Aが乳房Bに向けて押圧される。
【0069】
検査用シール20Aは、乳頭部と乳房体との高低差が補助シール本体10Aによって緩和された乳房Bに貼り付けられる。そのため、検査用シール20Aに沿ってプローブがスキャンされた場合に、プローブのスキャンが乳頭部によって妨げられにくくなる。これにより、プローブを用いたスキャンの円滑性が高められる。
【0070】
図7が示すように、乳房Bに貼り付けられた検査用シール20Aの一部と、支持体23とが、乳房Bから剥がされる。この際に、検査実施者は、まず、脆弱部23aに沿って支持体23を破断すると同時に、検査用シール20Aのうちで、脆弱部23aが位置する部分を脆弱部23aとともに破断する。次いで、検査用シール20Aが広がる平面と対向する視点から見て、検査用シール20Aと支持体23との境界に沿って、検査用シール20Aを破断する。これにより、検査用シール20Aの一部とともに支持体23を乳房Bから剥がすことが可能である。
【0071】
[実施例]
図8を参照して、補助シールの実施例および比較例を説明する。
[比較例1]
15μmの厚さを有し、エーテル系PUから形成されたPUフィルム(大倉工業(株)製、シルクロンHVL85)(シルクロンは登録商標)をベースフィルムとして準備した。なお、ベースフィルムには、予めセパレートフィルムが積層されていた。主剤であるウレタン系粘着剤(トーヨーケム(株)製、SP‐205)に硬化剤(トーヨーケム(株)製、T‐501B)を添加し、これらを攪拌して塗液を調整した。この際に、主剤が含む水酸基のモル数に対する硬化剤が含むイソシアネート基のモル数の比が0.13になるように、主剤に硬化剤を添加した。次いで、保護フィルム(東レフィルム加工(株)製、セラピールWZ)に対してグラビア塗工によって塗液を塗工し、その後、塗液を乾燥させた。これにより、15μmの厚さを有した粘着層を得た。そして、ベースフィルムと粘着層とを貼り合わせることによって、積層体を得た。ベースフィルムからセパレートフィルムを剥離した後に、ベースフィルム、粘着層、および、保護フィルムを含む積層体を、45mmの直径を有した円状に断裁することによって、比較例1の補助シールを得た。
【0072】
[比較例2]
比較例1において、セパレートフィルム(東レフィルム加工(株)製、セラピールBX‐9)を支持体として、EVA(日本ポリエチレン(株)、ノバテックLV400)(ノバテックは登録商標)の押出ラミネート成形を行うことによって、15μmの厚さを有したEVAフィルムをベースフィルムとして形成した以外は、比較例1と同様の方法によって、比較例2の補助シールを得た。
【0073】
[比較例3]
比較例2において、セパレートフィルムを支持体として、PEペレット(日本ポリエチレン(株)、LC600A)の押出ラミネート成形を行うことによって、15μmの厚さを有したPEフィルムをベースフィルムとして形成した以外は、比較例2と同様の方法によって、比較例3の補助シールを得た。
【0074】
[実施例1]
比較例1において、20μmの厚さを有したOPPフィルム(フタムラ化学(株)製、FOR‐M)をベースフィルムとして準備した以外は、比較例1と同様の方法によって、実施例1の補助シールを得た。
【0075】
[比較例4]
比較例1において、25μmの厚さを有したPETフィルム(フタムラ化学(株)製、FE2000)をベースフィルムとして準備した以外は、比較例1と同様の方法によって、比較例4の補助シールを得た。
【0076】
[実施例2]
比較例1において、12μmの厚さを有したPETフィルム(フタムラ化学(株)製、FE3001)をベースフィルムとして準備した以外は、比較例1と同様の方法によって、実施例2の補助シールを得た。
【0077】
[実施例3]
実施例2において、ベースフィルム、粘着層、および、保護フィルムを含む積層体を、60mmの直径を有した円状に断裁した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例3の補助シールを得た。
【0078】
[実施例4]
実施例2において、ベースフィルム、粘着層、および、保護フィルムを含む積層体を、長軸の長さが80mmであり、かつ、短軸の長さが45mmであるカプセル状に断裁した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の補助シールを得た。
【0079】
[実施例5]
実施例2において、粘着層の厚さを10μmに変更し、かつ、ベースフィルム、粘着層、および、保護フィルムを含む積層体を、長軸の長さが80mmであり、かつ、短軸の長さが45mmであるカプセル状に断裁した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例5の補助シールを得た。
【0080】
[実施例6]
実施例5において、主剤が含む水酸基のモル数に対する硬化剤が含むイソシアネート基のモル数の比を0.25に変更し、かつ、粘着層の厚さを15μmに変更した以外は、実施例5と同様の方法によって、実施例6の補助シールを得た。
【0081】
[実施例7]
実施例6において、主剤が含む水酸基のモル数に対する硬化剤が含むイソシアネート基のモル数の比を0.13に変更した以外は、実施例6と同様の方法によって、実施例7の補助シールを得た。
【0082】
[実施例8]
実施例7において、粘着層の厚さを20μmに変更した以外は、実施例7と同様の方法によって、実施例8の補助シールを得た。
【0083】
[評価方法]
[引張弾性率]
JIS K 7127:1999の「プラスチック-引張特性の試験方法-第3部:フィルム及びシートの試験条件」に準拠し、各補助シールのベースフィルムをダンベル形状(試験片タイプ5)に型抜きした。そして、JIS K 7161‐1:2014の「プラスチック-引張特性の求め方-第1部:通則」に準拠する方法によって、ベースフィルムの引張弾性率を測定した。この際に、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAGS‐X ロードセル1kN)を用いて、試験速度を300mm/minに設定した。なお、引張弾性率の測定に際して、各補助シールが備えるベースフィルムを測定対象として準備した。
【0084】
[剥離強度]
JIS Z 0237:2009の「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠する方法によって、補助シール本体の剥離強度を測定した。この際に、各保護シールを用いて25mmの幅を有した試験片を形成した。次いで、粘着層から保護フィルムを剥離した後に、粘着層をステンレス板に貼り付けた。そして、2kgのローラーに試験片上を2往復させることによって、試験片に荷重を加えた後に、試験片を30分以上静置した。その後、引張試験機((株)島津製作所製、オートグラフAGS‐X ロードセル1kN)を用いて、剥離速度が300mm/minであり、かつ、試験片をステンレス試験板に対して180°引き剥がした際の剥離強度を測定した。
【0085】
[貼合適性]
乳癌触診訓練用モデル((株)タナック製)を用いて、貼合適性について以下の4項目を評価した。
【0086】
(項目1)乳房に貼り付けた際に、乳頭部を押さえつけることが可能である。
(項目2)乳房に貼り付けた際に、補助シール本体が乳房から浮くことが抑えられる。
(項目3)乳房に貼り付けた際に、補助シール本体のしわが抑えられる。
(項目4)乳房に貼り付けた際に、検査用シールの表面における段差が抑えられる。
【0087】
項目1では、各補助シールが備える補助シール本体を乳頭部に貼り付けた場合に、乳頭部と乳房体との高低差が緩和されているか否かを以下の3段階で評価した。
○ 乳頭部と乳房体との間に高低差が生じない、または、高低差が生じても、プローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に高低差が小さい。
△ 補助シール本体のみを貼り付けた状態では乳頭部と乳房体との間に高低差が生じるが、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた場合には、高低差が生じない、または、高低差が生じても、プローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に高低差が小さい。
× 補助シール本体のみを貼り付けた状態、および、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた状態の両方において、乳頭部と乳房体との間の高低差が、プローブを用いたスキャンに支障が生じる程度に大きい。
【0088】
項目2では、各補助シールが備える補助シール本体を乳頭部に貼り付けた場合に、補助シール本体が乳房から浮くことが抑えられるか否かを以下の3段階で評価した。
○ 補助シール本体の縁が乳房に付着し、かつ、縁よりも内側において補助シール本体と乳房との間に空間が生じない、または、空間が生じてもプローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に小さい。
△ 補助シール本体のみを乳房に貼り付けた状態では、補助シール本体の縁よりも内側において補助シール本体と乳房との間に空間が生じるが、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた場合には、縁よりも内側において補助シール本体と乳房との間に空間が生じない、または、空間が生じてもプローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に小さい。
× 補助シール本体のみを貼り付けた状態、および、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた状態の両方において、補助シール本体の縁よりも内側において補助シール本体と乳房との間に、プローブを用いたスキャンに支障が生じる程度に大きい空間が生じる。
【0089】
項目3では、各補助シールが備える補助シール本体を乳頭部に貼り付けた場合に、補助シールに生じるしわが抑えられているか否かを以下の3段階で評価した。
○ 補助シール本体にしわが生じない、または、プローブを用いたスキャンに支障が生じない態度に小さいしわしか生じない。
△ 補助シール本体のみを貼り付けた状態ではしわが生じるが、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた場合には、補助シール本体のしわが検査用シールのしわを生じさせない、または、プローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に小さいしわしか検査用シールに生じない。
× 補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた状態において、補助シール本体のしわが検査用シールに、プローブを用いたスキャンに支障が生じる程度に大きいしわを生じさせる。
【0090】
項目4では、各補助シールが備える補助シール本体を乳頭部に貼り付けた、かつ、補助シール本体の上から検査用シールを貼り付けた場合に、検査用シールの表面における段差が抑えられているか否かを以下の2段階で評価した。
○ 検査用シールの表面に段差が生じない、または、プローブを用いたスキャンに支障が生じない程度に小さい段差しか生じない。
× プローブを用いたスキャンに支障が生じる程度に大きい段差が検査用シールの表面に生じる。
【0091】
[評価結果]
図8を参照して、各評価の結果を説明する。
図8が示すように、比較例1から比較例3の補助シールでは、項目1の評価結果が「×」である一方で、比較例4、および、実施例1から実施例8の補助シールでは、項目1の評価結果が「○」であることが認められた。これに対して、比較例1から比較例3の補助シール、および、実施例1から実施例8の補助シールでは、項目4の評価結果が「○」である一方で、比較例4では、項目4の評価結果が「×」であることが認められた。
【0092】
このように、補助シール本体における引張弾性率が1.0GPa以上であり、かつ、ベースフィルムの厚さが20μm以下であることによって、補助シール本体が、乳頭部の高低差を緩和するように乳房に貼り付くことが可能であり、結果として、プローブを用いたスキャンの円滑性が高められる。
【0093】
また、比較例1から比較例4の補助シール、および、実施例1から実施例5、実施例6、および、実施例7の補助シールでは、項目2の評価結果が「○」である一方で、実施例6の補助シールでは、項目2の評価結果が「△」であることが認められた。このように、補助シール本体における剥離強度が1.5N/25mm以上であることによって、補助シール本体がさらに乳房に貼り付きやすくなり、結果として、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0094】
さらに、比較例1から比較例4の補助シール、および、実施例1から実施例3の補助シールでは、項目3の評価結果が「△」である一方で、実施例4から実施例8の補助シールでは、項目3の評価結果が「○」であることが認められた。このように、補助シール本体は、楕円状またはカプセル状を有すること、および、短軸の長さが45mm以上であることによって、補助シールにしわが生じることが抑えられ、結果として、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0095】
以上説明したように、補助シールの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)乳房Bが有する乳頭部を覆うように補助シール本体10Aが乳房Bに貼り付けられた場合に、補助シール本体10Aが有する引張弾性率によって、補助シール本体10Aは、乳頭部の高さが低くなる方向に乳頭部を押さえつけながら、乳房Bに貼り付くことが可能である。これにより、乳房Bにおける高低差が補助シール10によって緩和されるため、プローブを用いたスキャンの円滑性が高められる。
【0096】
(2)乳房Bと粘着層12との間に隙間が生じることが、粘着層12が有する粘着性によって抑えられる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0097】
(3)検査対象が乳房であり、補助シール本体10Aが乳頭部に貼り付けられた場合に、補助シール本体10Aにしわが生じにくくなる。そのため、プローブを用いたスキャンの円滑性がさらに高められる。
【0098】
(4)粘着層12がベースフィルム11と保護フィルム13とに挟まれるため、補助シール10が使用される直前まで、粘着層12が清浄に保たれる。
【0099】
(5)乳房Bのうちで補助シール本体10Aが貼り付けられた部分に対応する三次元画像が生成される確実性を高めることが可能である。
【0100】
(6)補助シール本体10Aを介して、乳房Bにおいて補助シール本体10Aが貼り付けられた部分の少なくとも一部の状態を把握することが可能である。
【0101】
なお、上述した実施形態は以下のように変更して実施することができる。
[全光線透過率]
・補助シール本体10Aが有する全光線透過率は、補助シール本体の全体において30%未満であってもよい。この場合であっても、ベースフィルム11の厚さが20μm以下であり、かつ、補助シール本体10Aの引張弾性率が1.0GPa以上であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0102】
[マイクロ波透過率]
・補助シール本体10Aが有する周波数が2GHzであるマイクロ波に対する透過率は、70%未満であってもよい。この場合であっても、ベースフィルム11の厚さが20μm以下であり、かつ、補助シール本体10Aの引張弾性率が1.0GPa以上であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0103】
[保護フィルム]
・補助シール10は、保護フィルム13を備えなくてもよい。この場合であっても、ベースフィルム11の厚さが20μm以下であり、かつ、補助シール本体10Aの引張弾性率が1.0GPa以上であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0104】
[補助シール本体の形状]
・補助シール本体10Aは、補助シール本体10Aが広がる平面と対向する視点から見て、楕円状およびカプセル以外の形状を有してもよい。補助シール本体10Aは、例えば、実施例において説明したように、円状を有してもよい。また、補助シール本体10Aは、例えば直方体状などの多角形状を有してもよい。ただし、補助シール本体10Aの上から乳房に貼り付けられた検査用シール20Aに沿ってプローブをスキャンに際して、プローブが角部に衝突することが抑えられるため、補助シール本体10Aは、楕円状、カプセル状、および、円状のいずれかを有することが好ましい。
【0105】
[粘着層]
・粘着層12の厚さは、25μmよりも厚くてもよい。この場合であっても、ベースフィルム11の厚さが20μm以下であり、かつ、補助シール本体10Aの引張弾性率が1.0GPa以上であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0106】
[剥離強度]
・補助シール本体10Aの剥離強度は、1.5N/25mm未満であってもよい。この場合であっても、ベースフィルム11の厚さが20μm以下であり、かつ、補助シール本体10Aの引張弾性率が1.0GPa以上であることによって、上述した(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0107】
[検査用シールユニット]
・支持体23は、ベースフィルム21の縁21Eの全体にわたる形状を有しなくてもよく、支持体23は、縁の一部のみに位置する形状を有してもよい。支持体23は、例えば、ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、U字状またはL字状を有してもよい。
【0108】
・ベースフィルム21の表面21Fと対向する視点から見て、検査用シール20Aは、矩形状以外の形状を有してもよい。検査用シール20Aは、例えば、矩形状以外の多角形状、円状、および、楕円状などの形状を有してもよい。
【0109】
[適用対象]
・補助シール10の適用対象、すなわち、マイクロ波による画像診断の検査対象は、上述した乳房に限らず、人体のうちで、当該検査対象の表面に位置する凸部による高低差を有する他の部位であってよい。この場合であっても、補助シール10によれば、検査対象が乳房である場合に準じた効果を得ることはできる。
【符号の説明】
【0110】
10…補助シール
10A…補助シール本体
10E,21E…縁
10E1…直線部
10E2…弧状部
11,21…ベースフィルム
12,22,24…粘着層
13,25…保護フィルム
20…検査用シールユニット
20A…検査用シール
21F…表面
21R…裏面
23…支持体
23a…脆弱部
23c1…第1角部
23c2…第2角部
26…座標グリッド
26a…第1グリッド線
26b…第2グリッド線