(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】車両用気流制御装置
(51)【国際特許分類】
B62D 35/00 20060101AFI20240130BHJP
B62D 25/16 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B62D35/00 Z
B62D25/16 A
(21)【出願番号】P 2019231987
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】鵜ノ口 孝雄
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178163(JP,A)
【文献】実開昭57-022478(JP,U)
【文献】特開2007-283869(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 35/00
B62D 25/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前部に設けられた走行風取り込み口から導入した走行気流を、ホイールハウスを構成する壁部のうち車輪の車両前方に位置する前壁部の車幅方向外側寄りの箇所に設けられた走行風吹き出し口から吹き出すダクトを備える車両用気流制御装置であって、
前記走行風吹き出し口近傍に位置するダクト内壁面に突出して設けられ前記走行気流に対する迎角を設定することで前記走行気流の流れ方向に延在する軸を持つ縦渦を発生させるフィンを備え
、
前記フィンは、前記ダクト内壁面から前記走行気流の流れ方向に向かうにつれて幅が大きくなる三角形状の半デルタ翼である、
ことを特徴とする車両用気流制御装置。
【請求項2】
前記フィンの前記迎角を前記走行気流に対して0度から所定角度まで制御する迎角制御部を備える
ことを特徴とする請求項1記載の車両用気流制御装置。
【請求項3】
前記フィンは、前記ダクト内壁面のうち車幅方向内側の壁面あるいは車幅方向外側の壁面に設けられている、
ことを特徴とする請求項2記載の車両用気流制御装置。
【請求項4】
前記フィンは、車両上下方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記フィン同士の間隔は、前記迎角が最大の場合に前記フィン同士が干渉しない寸法で形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の車両用気流制御装置。
【請求項5】
前記フィンは、車両上下方向に間隔をおいて複数設けられ、
前記迎角制御部は、前記迎角を制御した場合に前記フィン同士が干渉しないように前記迎角の前記所定角度の最大値を設定する、
ことを特徴とする請求項3記載の車両用気流制御装置。
【請求項6】
前記迎角制御部による前記フィンの迎角の制御は、前記フィンによって発生される縦渦が車両上方に向かうようになされる、
ことを特徴とする請求項2から5の何れか1項記載の車両用気流制御装置。
【請求項7】
前記車輪の操舵方向および操舵角を検出する操舵状態検出部を備え、
前記迎角制御部は、前記操舵方向および前記操舵角に応じて前記フィンの迎角を制御する、
ことを特徴とする請求項2から6の何れか1項記載の車両用気流制御装置。
【請求項8】
前記車両の車速を検出する車速検出部を備え、
前記迎角制御部は、前記車速が予め定められたしきい値を上回る場合に前記フィンの迎角の制御を行う、
ことを特徴とする請求項2から7の何れか1項記載の車両用気流制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用気流制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車輪は、ホイールとホイールに装着されたタイヤとを含んで構成され、一般的にホイールには開口部が形成されている。
車両の走行時、走行気流の一部は、車両の車幅方向の内側からホイールの開口部、および、タイヤの外周面(接地面)とホイールハウスの壁部との間の空間を通って車幅方向外側に向かって第1の気流として流出する。
この第1の気流が車両の車幅方向両側を流れる走行気流である第2の気流と干渉することで走行抵抗が増加し、車両の空力特性の向上を図る上で不利となる。
そこで、車両前部から導入した走行気流を、車輪の前方に位置するホイールハウスの壁部の車幅方向外側寄りの箇所に設けられた走行風吹き出し口から吹き出すことで第3の気流によって第1の気流を車両後方に強制的に押し流して、第1の気流と第2の気流との干渉を抑制するようにした技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、例えば、タイヤサイズの違いによって、あるいは、車輪が操舵輪の場合は操舵角の変化によって、走行風吹き出し口と車輪との位置関係が変化すると、第3の気流が第1の気流を車両後方に押し流す効果が低下することが懸念される。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、走行気流の干渉によって生じる走行抵抗を確実に抑制し、車両の空力特性の向上を図る上で有利な車両用気流制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、車両前部に設けられた走行風取り込み口から導入した走行気流を、ホイールハウスを構成する壁部のうち車輪の車両前方に位置する前壁部の車幅方向外側寄りの箇所に設けられた走行風吹き出し口から吹き出すダクトを備える車両用気流制御装置であって、前記走行風吹き出し口近傍に位置するダクト内壁面に突出して設けられ前記走行気流に対する迎角を設定することで前記走行気流の流れ方向に延在する軸を持つ縦渦を発生させるフィンを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記フィンの前記迎角を前記走行気流に対して0度から所定角度まで制御する迎角制御部を備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記フィンは、前記ダクト内壁面のうち車幅方向内側の壁面あるいは車幅方向外側の壁面に設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記フィンは、車両上下方向に間隔をおいて複数設けられ、前記フィン同士の間隔は、前記迎角が最大の場合に前記フィン同士が干渉しない寸法で形成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記フィンは、車両上下方向に間隔をおいて複数設けられ、前記迎角制御部は、前記迎角を制御した場合に前記フィン同士が干渉しないように前記迎角の前記所定角度の最大値を設定することを特徴とする。
また、本発明は、前記迎角制御部による前記フィンの迎角の制御は、前記フィンによって発生される縦渦が車両上方に向かうようになされることを特徴とする。
また、本発明は、前記車輪の操舵方向および操舵角を検出する操舵状態検出部を備え、前記迎角制御部は、前記操舵方向および前記操舵角に応じて前記フィンの迎角を制御することを特徴とする。
また、本発明は、前記車両の車速を検出する車速検出部を備え、前記迎角制御部は、前記車速が予め定められたしきい値を上回る場合に前記フィンの迎角の制御を行うことを特徴とする。
また、本発明は、前記フィンは、前記ダクト内壁面から前記走行気流の流れ方向に向かうにつれて幅が大きくなる三角形状の半デルタ翼であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、走行風吹き出し口近傍に位置するダクト内壁面に突出して設けられ走行気流に対する迎角を設定することで走行気流の流れ方向に延在する軸を持つ縦渦を発生させるフィンを備えている。
したがって、車両の走行に伴って発生する、車幅方向の内側からホイールの開口部、および、タイヤの外周面(接地面)とホイールハウスの壁部との間の空間を通って車幅方向外側に流出する第1の気流を、走行風吹き出し口から車輪の車幅方向外側を向いた側面に沿って吹き出される第3の気流によって車両後方に強制的に押し流して、第1の気流と車両の車幅方向両側を流れる走行気流である第2の気流との干渉による走行抵抗の増加を抑制し、車両の空力特性の向上を図る上で有利となる。
また、本発明によれば、迎角制御部によりフィンの迎角を走行気流に対して0度から所定角度まで制御することによって、フィンから発生する縦渦の有無、縦渦による第3の気流の直進性の強弱、第3の気流の偏向方向を制御するようにしたので、第3の気流によって走行抵抗を確実に抑制することができ、車両の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
また、本発明によれば、フィンは、ダクト内壁面のうち車幅方向内側の壁面あるいは車幅方向外側の壁面に設けることができ、特にフィンをダクト内壁面のうち車幅方向内側の壁面に設けた場合は、フィンの迎角を調整する機構を設置するスペースを確保する上で有利となる。
また、本発明によれば、複数のフィンにより複数の縦渦を発生させるので、第3の気流の直進性を高める上でより有利となると共に、フィン同士の間隔を迎角が最大の場合に前記フィン同士が干渉しない寸法で形成したので、複数のフィンによる迎角の調整を円滑に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、複数のフィンにより複数の縦渦を発生させるので、第3の気流の直進性を高める上でより有利となると共に、迎角制御部は、迎角を制御した場合にフィン同士が干渉しないように迎角の所定角度の最大値を設定したので、複数のフィンによる迎角の調整を円滑に行なう上で有利となる。
また、本発明によれば、第3の気流が路面に干渉して空気抵抗が増加することを抑制でき、車両の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
また、本発明によれば、車両の操舵方向および操舵角に対応して、フィンから発生する縦渦の有無、縦渦による第3の気流の直進性の強弱、第3の気流の偏向方向を制御することができ、車両の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
また、本発明によれば、車両の空力特性が無視できる車速においてフィンの迎角の制御を行わないので、フィンの迎角の制御に要する無駄なエネルギーの消費を抑制する上で有利となる。
また、本発明によれば、フィンを、ダクト内壁面から走行気流の流れ方向に向かうにつれて幅が大きくなる三角形状の半デルタ翼としたので、走行気流の流れ方向に延在する軸を持つ縦渦を効率よく発生させる上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施の形態に係る車両用気流制御装置が適用された車両のバンパーカバーの車幅方向外側寄りの部分を車両左側前方から見た斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る車両用気流制御装置が適用された車両のホイールハウスを車両左側後方から見た斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る車両用気流制御装置のフィンおよびフィンによって生成される縦渦の説明図である。
【
図4】実施の形態に係る車両用気流制御装置のフィンの迎角調整部を走行気流の下流側から上流側に向かって見た説明図である。
【
図5】走行気流、縦渦、車輪の関係を説明する水平断面図であり、(A)は操舵角が+4度、(B)は操舵角が0度、(C)は操舵角が-4度である場合を示す。
【
図6】実施の形態に係る車両用気流制御装置の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態に係る車両用気流制御装置の動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の車両用気流制御装置の実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、以下の図面において符号UPは車両上方を示し、符号FRは車両前方を示し、符号INは車幅方向内側を示し、符号OUTは車幅方向外側を示す。
また、車両の左右方向は、車両の進行方向を向いた状態でいうものとする。
図1、
図2に示すように、車両10の前部には車幅方向に延在するフロントバンパー12が設けられ、フロントバンパー12は、不図示のバンパービームを覆うバンパーカバー14を備えている。
バンパーカバー14は、車両10の前部の下部で車幅方向に延在するカバー前部1402と、カバー前部1402の両側から車両方向に延在するカバー側部1404とを備えている。
なお、図中符号1406はフォグランプが取り付けられる開口部を示す。
図2に示すように、カバー側部1404の車両後部にはフェンダーパネル16が接続され、カバー側部1404とフェンダーパネル16とにわたってホイールハウス18が設けられ、ホイールハウス18に車輪20(
図5参照)が配置されている。
車輪20は、開口部が形成されたホイールと、ホイールに装着されたタイヤとを含んで構成されている。なお、ホイールに開口部が形成されていない場合でも本発明は適用可能である。
また、本実施の形態では、車輪20は前輪であり操舵輪である場合について説明するが、車輪が後輪であっても、あるいは、車輪が操舵輪でない場合であっても本発明は適用可能である。
ホイールハウス18を構成する壁部22は、カバー側部1404、フェンダーパネル16、フェンダーシールド、スプラッシュシールドなどの車体を構成する車体パネルの部分によって構成されている。
ホイールハウス18を構成する壁部のうちホイールハウス18に配置される車輪20の車両前方に位置する壁部22は前壁部22Aとされている。
【0009】
図1、
図2、
図6に示すように、実施の形態の車両用気流制御装置24は、走行風取り込みダクト26と、フィン28と、迎角調整部30と、操舵状態検出部32と、車速検出部34と、気流制御用ECU36とを含んで構成されている。
【0010】
図1、
図2、
図5に示すように、走行風取り込みダクト26は車両10の車幅方向の両側にそれぞれ設けられている。
走行風取り込みダクト26は、走行風を走行気流として、車幅方向外側を向いた車輪20の側面2004に沿って吹き出させるものであり、走行風取り込み口2602と、走行風吹き出し口2604と、それら走行風取り込み口2602と走行風吹き出し口2604とを接続するダクト部2606とを含んで構成されている。
図1に示すように、走行風取り込み口2602は、ホイールハウス18よりも車両前方に位置するカバー前部1402の車幅方向両側の箇所にそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、走行風取り込み口2602は、車両上下方向に細長に形成されている。
【0011】
図2に示すように、走行風吹き出し口2604は、ホイールハウス18の前壁部22Aの車幅方向外側寄りの箇所にそれぞれ設けられている。
詳細には、走行風吹き出し口2604は、ホイールハウス18に配置される車輪20の中心の前方に位置する高さの前壁部22Aの箇所で車幅方向外側寄りの箇所にそれぞれ設けられ、あるいは、車輪20の上部の前方に位置する高さの前壁部22Aの箇所で車幅方向外側寄りの箇所にそれぞれ設けられている。
本実施の形態では、走行風吹き出し口2604は、車両上下方向に細長に形成され、本実施の形態では、走行風吹き出し口2604の延在方向の長さは走行風取り込み口2602の延在方向の長さよりも大きな寸法で形成されている。
ダクト部2606は走行風取り込み口2602と走行風吹き出し口2604とを接続しており、その断面形状は、走行風取り込み口2602から走行風吹き出し口2604に至るにつれて走行風取り込み口2602の断面形状から走行風吹き出し口2604の断面形状に次第に変化するように形成されている。
【0012】
図4に示すように、フィン28は、ダクト部2606のうち走行風吹き出し口2604近傍に位置するダクト内壁面2608(ダクト部2606を構成する壁部の内面)に突出して設けられており、本実施の形態では、フィン28は、ダクト内壁面2608のうち車幅方向内側寄りの箇所に、後述する迎角αを調整する方向に支軸2802を介して傾動可能に設けられている。
なお、フィン28は、ダクト内壁面2608のうち車幅方向外側寄りの箇所に設けても良いが、ダクト内壁面2608の車幅方向外側にはバンパーカバー14のカバー側部1404あるいはフェンダーパネル16が近接していることから、後述する迎角調整部30の設置スペースをダクト内壁面2608の車幅方向外側の箇所に確保し難いことが想定される。
これに対して、ダクト内壁面2608の車幅方向内側はスペースの制約が少ないため、本実施の形態のように、フィン28をダクト内壁面2608のうち車幅方向内側寄りの箇所に設ければ、ダクト内壁面2608の車幅方向内側に迎角調整部30の設置スペースを確保しやすいので有利である。
【0013】
図3に示すように、フィン28は、走行気流Fから走行気流Fの流れ方向に延在する軸Aを持つ縦渦38を発生させるものである。
本実施の形態では、
図4に示すように、複数のフィン28が車両上下方向に間隔をおいて設けられ、フィン28同士の間隔は後述する迎角αが最大の場合にフィン28同士が干渉しない寸法で形成されている。
【0014】
本実施の形態では、フィン28は、デルタ翼(三角翼)をその中心線で2分割した半デルタ翼の形状を呈している。言い換えると、フィン28は、ダクト内壁面2608から走行気流Fの流れ方向に向かうにつれて幅が大きくなる三角形状の半デルタ翼である。
本実施の形態では、フィン28は、均一の厚さtで形成された直角三角形の板状を呈している。
フィン28の直角を挟む2辺のうち、一方の辺28Aがダクト内壁面2608に当接して配置され、他方の辺28Bが走行気流Fの下流側に位置し、フィン28の傾動中心となる支軸2802は一方の辺28Aから突設されている。
フィン28の斜辺28Cは、フィン28の前縁2802を構成するものである。
図中、符号hはフィン28の他方の辺28Bの高さ、言い換えるとフィン28の幅を示す。
符号θはフィン28の前縁2802とフィン28の幅方向(高さh方向)に延在する仮想線とがなす角度である後退角を示す。
【0015】
図3に示すように、走行気流Fに対してフィン28が支軸2802を支点として傾いた場合、すなわち、フィン28の迎角αの絶対値が0度を超えた場合に、フィン28の厚さ方向の両面のうち走行気流Fが当たる面を前面2810、反対側の面を背面2812としたとき、縦渦38は、走行気流Fが前面2810から前縁2802を超えて背面2812に回り込むようにして流れることで発生する。
一方、フィン28の迎角αが0度であれば、縦渦38は発生しない。
図3の例では、走行気流Fの上流側から下流側を見たとき、縦渦38は時計方向に回転している。
この縦渦38は、走行気流Fの下流に向かうにつれて軸Aを中心とする直径方向の寸法が次第に大きくなるように発生する。
また、縦渦38の速度、縦渦38の直径方向の寸法は、走行風吹き出し口2604とフィン28との位置関係、後退角θ、高さh、厚さt、迎角αなどによって決定される。
一般的に迎角αの絶対値が大きくなるほど、縦渦38の渦が強まることから、走行風吹き出し口2604から吹き出される縦渦38を含む走行気流Fは、縦渦38の軸Aに沿った直進性が強くなり、また、迎角αの絶対値が大きくなるほど、縦渦38の直径方向の寸法も大きくなる傾向にある。
しかしながら、迎角αの絶対値がある上限値を超えると縦渦38が乱れて円滑に縦渦38が生じにくくなる。この上限値も、走行風吹き出し口2604とフィン28との位置関係、後退角θ、高さh、厚さt、迎角αなどによって決定される。
【0016】
なお、厳密にいうと、縦渦38の軸Aは、フィン28の上流側における走行気流Fの流れ方向に延在するものの、縦渦38の軸Aの向きとフィン28の上流側における走行気流Fの向きとが完全な平行になるわけではなく、フィン28の迎角αの絶対値が大きくなるほど、縦渦38の軸Aが、フィン28の上流側における走行気流Fの流れ方向となす角度も大きくなる。
また、フィン28の下流側では、走行気流Fは縦渦38を含むものとなることから、フィン28の下流側では、縦渦38を含む走行気流Fは、縦渦38の影響を受けて縦渦38の軸Aに近づく方向に偏向することになる。
したがって、フィン28を傾動しフィン28の迎角αを制御することで走行風吹き出し口2604から吹き出される縦渦38を含む走行気流Fの偏向を制御させることができる。
また、迎角αの絶対値が上限値を超えることで縦渦38がほとんど生成されない場合には、走行風吹き出し口2604から吹き出される走行気流Fは、フィン28による影響を受けて偏向することになる。
【0017】
したがって、フィン28を傾動しフィン28の迎角αを制御することで以下の3つの作用効果が奏される。
1)フィン28の迎角αを制御することで、走行気流Fから縦渦38を生成させ、あるいは、縦渦38の生成を停止することができる。すなわち、走行風吹き出し口2604から縦渦38を含む走行気流Fを吹き出させるか、あるいは、走行風吹き出し口2604から縦渦38を含まない走行気流Fを吹き出させるかを制御することができる。
2)フィン28の迎角αを制御することで、縦渦38の速度および軸A回りの縦渦38の直径方向の寸法を変化させ、走行風吹き出し口2604から吹き出される縦渦28を含む走行気流Fの直進性の強弱を制御することができる。
3)フィン28の迎角αを制御することで、縦渦38が発生する条件下では、縦渦38の軸Aの方向を変化させ、これにより縦渦38を含む走行気流Fの偏向を制御することができる。また、縦渦38が発生しない条件下では、フィン28によって走行気流Fの偏向を制御することができる。したがって、縦渦38の有無に拘らず、フィン28は走行風吹き出し口2604から吹き出される走行気流Fの偏向板として機能するといえる。
【0018】
図4に示すように、迎角調整部30は、フィン28よりも上流側の走行気流Fに対するフィン28の迎角αを調整するものである。
迎角調整部30は、モータ40、変速機構42、駆動軸44、ウォームギア46を含んで構成されている。
モータ40は、走行風取り込みダクト26の上部に設けられている。
変速機構42は、モータ40の回転駆動力を減速して駆動軸44に伝達するものである。
駆動軸44は、走行風取り込みダクト26の車幅方向内側の箇所で車両上下方向に延在し、上端が変速機構42に連結され、下端が軸受48を介して支持されている。
【0019】
ウォームギア46は、駆動軸44にその延在方向に間隔をおいて複数のフィン28に対応して設けられた複数のウォーム4602と、これらウォーム4602に噛合する複数のウォームホイール4604(はす歯歯車)とで構成されている。
ウォームホイール4604の回転中心には支軸2802の先端が連結されている。
【0020】
したがって、迎角調整部30は、後述する気流制御用ECU36によってモータ40が正逆回転されることで複数のフィン28が同期して傾動され、複数のフィン28の迎角αを調整する。
なお、本実施の形態では、迎角調整部30をウォームギア46を含んで構成した場合について説明したが、迎角調整部30をリンク機構やカム機構など従来公知の様々な機構を用いて構成してもよく、迎角調整部30の構成は実施の形態の構造に限定されない。
【0021】
図6に示すように、操舵状態検出部32は、車輪20の操舵方向および操舵角を検出して気流制御用ECU36に供給するものであり、本実施の形態では、操舵状態検出部32は、ステアリングホイールの操舵角を検出することで、車輪20の操舵角を検出する操舵角センサで構成されている。
車速検出部34は、車両10の走行速度を検出して気流制御用ECU36に供給するものである。
【0022】
気流制御用ECU36は、迎角制御部を構成するものであり、操舵状態検出部32から供給された操舵方向および操舵角と、車速検出部34から供給された車速とに基づいて迎角調整部30を介してフィン28の迎角αの制御を行なうものであり、言い換えると、フィン28の迎角αを走行気流Fに対して0度から所定角度まで制御するものである。
本実施の形態では、気流制御用ECU36によるフィン28の迎角αの制御は、フィン28によって発生される縦渦38が車両上方に向かうようになされる。
また、気流制御用ECU36は、車速が予め定められたしきい値を下回る場合にフィン28の迎角αの制御を停止する。
【0023】
ここで迎角αの制御について具体的に説明する。
図5は、右側の車輪(操舵輪)20の中心軸を含む水平断面で破断した車輪20、走行気流F、縦渦38の関係を説明する水平断面図であり、(A)は操舵角φが+4度、(B)は操舵角φが0度、(C)は操舵角φが-4度である場合を示す。
なお、本実施の形態では、車両10が左旋回する(操舵方向が左側である)場合の操舵角φを正値とし、車両10が右旋回する(操舵方向が右側である)場合の操舵角φを負値とする。したがって、操舵角φの正負により操舵方向が規定される。
また、以下では、左右の車輪(操舵輪)20のうち右側の車輪20に着目して説明する。また、以下では、車両10の空力特性が影響する走行状態、例えば、高速道路などにおいて、車両10が高速で直進走行している場合、高速走行しつつ左右方向にレーンチェンジを行なう場合を想定して説明する。
【0024】
図5(B)に示す場合、車輪20は操舵角φが0度であり、したがって、車両10は直進走行している。
車両10の走行に伴い、車幅方向の内側から車輪20のホイールの開口部、および、車輪20の外周面2002とホイールハウス18の壁部22との間の空間を通って車幅方向外側に流出する第1の気流F1が発生する。
この第1の気流F1が車両10の車幅方向両側を流れる走行気流F(以下第2の気流F2という)と干渉することによって走行抵抗が増加し車両10の空力特性が低下する。
この場合、走行風取り込み口2602からダクト部2606を介して走行風吹き出し口2604から車輪20の車幅方向外側を向いた車輪20の側面2004に沿って走行気流F(以下第3の気流F3という)が吹き出されると、この第3の気流F3によって第1の気流F1が車両後方に強制的に押し流され、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉による走行抵抗の増加が抑制され、車両10の空力特性が向上することになる。
【0025】
したがって、車両10の直進走行時には、走行風吹き出し口2604から車輪20の車幅方向外側を向いた側面2004に沿って第3の気流F3が吹き出されるように迎角αを制御すればよい。言い換えると、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3が形成されるように迎角αを制御すれば良い。
第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3を形成する迎角αは車輪20のサイズ(例えば、タイヤ幅、タイヤ外径、タイヤ内径)によって異なる。これは、走行風吹き出し口2604と車輪20の位置関係が、車輪20のサイズによって異なるためである。
したがって、車両10に車輪20を装着し車両10が直進走行した状態での、第1、第2、第3の気流F1、F2、F3の挙動を解析し、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3を形成する最適な迎角αを求めておき、このような最適な迎角αを気流制御用ECU36が決定できるようにすればよい。
【0026】
例えば、迎角α=0度のときに、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3が形成されるのであれば、迎角αを0度に制御する。このとき、迎角αは0度であることから縦渦38は発生せず、したがって、第3の気流F3は縦渦38を含まないものとなる。
また、迎角αの絶対値が0度より大きな第1の角度のときに、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3が形成されるのであれば、迎角αを第1の角度に制御する。このとき迎角αの絶対値が0度よりも大きいことから縦渦38が発生し、したがって、第3の気流F3は縦渦38によって直進性が高められたものとなる。
【0027】
図5(A)に示す場合、車輪20は操舵角φが+4度であり、したがって、車両10は左側の車線にレーンチェンジするような走行状態であり、言い換えると、左向きに旋回走行する状態であり、右側の車輪20は旋回外側に位置することになる。
車両10の走行に伴い、第1の気流F1が発生する点は
図5(B)の場合と同様である。
このとき、
図5(B)と同様に、フィン28の迎角αが車両10の直進走行時に最適な迎角αとなっていると仮定すると、走行風吹き出し口2604から吹き出された第3の気流F3は、左側に傾斜した車輪20の車幅方向外側を向いた側面2004に沿って流れる。
すると、車輪20の車両後方側では、第3の気流F3が車幅方向外側に偏向してしまうことから、第3の気流F3によって第1の気流F1を押し流す効果が低下し、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉が生じることで走行抵抗が増加し、車両10の空力特性が低下することになる。
【0028】
そこで、
図5(A)のように車両10が左旋回している場合は、縦渦38を発生させ、第3の気流F3に縦渦38を含ませることで第3の気流F3の直進性を強化させればよい。
この場合も
図5(B)の場合と同様に、走行風吹き出し口2604と車輪20の位置関係が、車輪20のサイズによって異なるため、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3を形成する迎角αは車輪20のサイズによって異なる。
したがって、前記と同様に、車両10に車輪20を装着した状態で、車両10の左旋回時における、第1、第2、第3の気流F1、F2、F3の挙動を解析し、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉を抑制するに足る第3の気流F3を形成する最適な迎角αを求めておき、このような最適な迎角αを気流制御用ECU36が決定できるようにすればよい。
【0029】
図5(C)に示す場合、車輪20は操舵角φが-4度であり、したがって、車両10は右側の車線にレーンチェンジするような走行状態であり、言い換えると、右向きに旋回走行する状態であり、右側の車輪20は旋回外側に位置することになる。
車両10の走行に伴い、第1の気流F1が発生する点は
図5(A)、(B)の場合と同様である。
このとき、
図5(B)と同様に、フィン28の迎角αが車両直進時に最適な迎角αとなっていると仮定すると、走行風吹き出し口2604から吹き出された第3の気流F3の一部は、右側に傾斜した車輪20の外周面(接地面)2002に当たったのち車輪20の車幅方向外側を向いた側面2004に沿って流れる。
【0030】
したがって、第3の気流F3が車輪20の外周面2002にぶつかることで空気抵抗が増加し、車両10の空力特性が低下することになる。また、車輪20の車両後方側では右側に傾斜した車輪20の車幅方向外側を向いた側面2004に沿って流れる第3の気流F3が車幅方向内側に偏向されることで、第3の気流F3がホイールハウス18の壁部22のうち車輪20の後方に位置する部分にぶつかることで空気抵抗が増加し、車両10の空力特性が低下することになる。
【0031】
そこで、
図5(C)のように車両10が右旋回している場合は、走行風吹き出し口2604から吹き出される第3の気流F3を車両後方に至るにつれて上方あるいは下方に偏向させることで第3の気流F3を車輪20の外周面2002に当たりにくくさせればよい。
また、縦渦38を発生させ、第3の気流F3に縦渦38を含ませることで第3の気流F3の直進性を強化させることで、第3の気流F3の車幅方向内側への偏向を抑制し、第3の気流F3がホイールハウス18の壁部22のうち車輪20の後方に位置する部分にぶつかりにくくすればよい。
この場合も
図5(A)、(B)の場合と同様に、走行風吹き出し口2604と車輪20の位置関係が、車輪20のサイズによって異なるため、車輪20の外周面2002に当たりにくく、また、第3の気流F3が車幅方向内側に偏向することを抑制するに足る第3の気流F3を形成する迎角αは車輪20のサイズによって異なる。
したがって、前記と同様に、車両10に車輪20を装着した状態で、車両10の右旋回時における、第1、第2、第3の気流F1、F2、F3の挙動を解析し、第3の気流F3が車輪20の外周面2002に当たりにくく、また、第3の気流F3が車幅方向内側に偏向することを抑制するに足る第3の気流F3を形成するための最適な迎角αを求めておき、このような最適な迎角αを気流制御用ECU36が決定できるようにすればよい。
なお、
図5(C)の場合、迎角αを、第3の気流F3が車両後方に至るにつれて上方に向かうような値としても、第3の気流F3が車両後方に至るにつれて下方に向かうような値としてもよい。
しかしながら、第3の気流F3が車両後方に至るにつれて下方に向かうような値とした場合は、第3の気流F3が路面にぶつかって空気抵抗となることが懸念される。
そのため、迎角αは、第3の気流F3の向きが車両後方に至るにつれて上方に向かうようにして、第3の気流F3が路面にぶつかって空気抵抗とならないようにする方が、車両10の空力性能を向上する上でより有利となる。
【0032】
以上の説明では、操舵角φが+4度、0度、-4度の3段階である場合について説明したが、実際には操舵角φをもっと細かい角度単位で変えて第1、第2、第3の気流F1、F2、F3の挙動を解析し、車両10の空力特性が最適となるようなフィン28の迎角αを上記の角度単位毎に求めることが好ましい。
そして、細かい角度単位で得た解析結果に基づいて、操舵角φと迎角αとの関係を示す精度の高いマップを作成し、あるいは、操舵角φと迎角αとの関係を示す精度の高い相関式を作成し、それらマップあるいは相関式を気流制御用ECU36に設定する。
これにより、気流制御用ECU36は、操舵状態検出部32から得られた操舵方向、操舵角φに対応した迎角αをマップあるいは相関式に基づいて決定し、決定した迎角αとなるように迎角調整部30を制御すればよい。
【0033】
また、以上の説明では、
図5(B)に示すように、操舵角φが0度のときに、迎角αを0度、あるいは、0度以外の値に設定し、
図5(A)、(C)に示すように、操舵角φが0度以外の場合に迎角αを0度以外の値に設定する場合について説明した。
しかしながら、操舵角φに対する迎角αの値は、限定されるものではなく、第1、第2、第3の気流F1、F2、F3の挙動の解析結果に基づいて様々な値に設定されるものである。
また、以上の説明では、右側の車輪20について説明したが、左側の車輪20についても上記と同様のマップあるいは相関式を作成して気流制御用ECU36に設定すればよいことは無論である。
【0034】
次に、車両用気流制御装置24の動作について
図7のフローチャートを参照して説明する。
なお、操舵角φと迎角αとの関係を示すマップあるいは相関式は予め気流制御用ECU36に設定されているものとする。
車両10が走行を開始すると、気流制御用ECU36は、車速検出部34から供給される車速Vが予め定められたしきい値を上回っているか否かを判定する(ステップS10)。このしきい値は、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉が車両10の空力性能に影響を与える車速に設定されている。
ステップS10の判定結果が否定であれば、以下のステップをスキップし、ステップS10に戻る。すなわち、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉が車両10の空力性能が影響を与えない低速領域では、言い換えると、車両10の空力特性が無視できる車速では、迎角調整部30の不要な動作を省略して無駄なエネルギー(電力)消費の抑制が図られている。
【0035】
一方、第1の気流F1と第2の気流F2との干渉が車両10の空力性能に影響を与える高速領域では、以下の制御動作を行なうことで、迎角調整部30を用いてフィン28の迎角αの制御を行ない空力特性の向上を図る。
すなわち、ステップS10の判定結果が肯定であれば、気流制御用ECU36は、操舵状態検出部32から供給される操舵方向、操舵角φを受け付け(ステップS12)、気流制御用ECU36は、前述した操舵角φと迎角αとの関係を示すマップあるいは相関式を用いてフィン28の迎角αを決定する(ステップS14)。
そして、気流制御用ECU36は、決定した迎角αとなるように迎角調整部30を調整し、迎角αの制御を行なう(ステップS16)。この際、迎角αの制御は、左右の車輪20のそれぞれについて行われる。
迎角αの制御がなされたならば、ステップS10に戻る。
気流制御用ECU36は、このような動作を車両10の走行中繰り返して実行する。
【0036】
以上説明したように、本実施の形態では、走行風吹き出し口2604近傍に位置するダクト内壁面2608に突出して設けられ走行気流Fに対する迎角αを設定することで走行気流Fの流れ方向に延在する軸Aを持つ縦渦38を発生させるフィン28を設けた。
したがって、車両10の走行に伴って発生する車幅方向の内側から車輪20のホイールの開口部、および、車輪20の外周面2002とホイールハウス18の壁部22との間の空間を通って車幅方向外側に流出する第1の気流F1を、走行風吹き出し口2604から車輪20の車幅方向外側を向いた側面2004に沿って吹き出される第3の気流F3によって車両後方に強制的に押し流して、第1の気流F1と車両10の車幅方向両側を流れる第2の気流F2との干渉による走行抵抗の増加を抑制し、車両10の空力特性の向上を図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、フィン28の迎角αを走行気流Fに対して0度から所定角度まで制御する迎角制御部を備えたので、フィン28の迎角αを制御することによって、フィン28から発生する縦渦38の有無、縦渦38による第3の気流F3の直進性の強弱、第3の気流F3の偏向を制御するようにしたので、第3の気流F3によって走行抵抗を確実に抑制することができ、車両10の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
【0037】
また、本実施の形態では、複数のフィン28が車両上下方向に間隔をおいて設けられ、フィン28同士の間隔は迎角αが最大の場合にフィン28同士が干渉しない寸法で形成されているので、複数のフィン28の迎角αの調整を円滑に行なう上で有利となっている。
なお、フィン28は1つでもよいが、実施の形態のように、複数のフィン28を設けることで複数の縦渦38を発生させると、第3の気流F3の直進性を高める上でより有利となる。
また、迎角制御部は、迎角αを制御した場合に複数のフィン28同士が干渉しないように迎角αの所定角度の最大値を設定するようにしてもよく、その場合も上記と同様に、迎角αが最大の場合にフィン28同士が干渉しない寸法で形成されているので、複数のフィン28の迎角αの調整を円滑に行なう上で有利となる。
【0038】
また、本実施の形態では、迎角制御部によるフィン28の迎角αの制御は、フィン28によって発生される縦渦38が車両上方に向かうようにしたので、第3の気流F3が路面に干渉して空気抵抗が増加することを抑制でき、車両10の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
【0039】
また、本実施の形態では、迎角制御部によるフィン28の迎角αの制御を操舵方向および操舵角φに応じて行なうようにしたので、車両10の操舵方向および操舵角φに対応して、フィン28から発生する縦渦38の有無、縦渦38による第3の気流F3の直進性の強弱、第3の気流F3の偏向を制御することができ、車両10の空力特性の向上を図る上でより有利となる。
【0040】
なお、本実施の形態では、フィン28が半デルタ翼である場合について説明したが、フィン28は走行気流Fの流れ方向に延在する軸Aを持つ縦渦38を発生させることができればよく、従来公知の様々な形状のフィンが使用可能である。
しかしながら、本実施の形態のようにフィン28がダクト内壁面2608から走行気流Fの流れ方向に向かうにつれて幅が大きくなる三角形状の半デルタ翼とすると、走行気流Fの流れ方向に延在する軸Aを持つ縦渦38を効率よく発生させる上で有利となる。
また、本実施の形態では、フィン28の迎角αを走行気流Fに対して0度から所定角度まで制御する迎角制御部を備えた場合について説明したが、フィン28から発生する縦渦38によって第1の気流F1と車両10の車幅方向両側を流れる第2の気流F2との干渉による走行抵抗の増加を抑制し、車両10の空力特性の向上を図れるように、フィン28の仰角αを固定して設定するようにしてもよいことは無論である。
【符号の説明】
【0041】
10 車両
18 ホイールハウス
20 タイヤ
2002 外周面
2004 側面
22 壁部
22A 前壁部
24 車両用気流制御装置
26 走行風取り込みダクト
2602 走行風取り込み口
2604 走行風吹き出し口
2606 ダクト部
2608 ダクト内壁面
28 フィン
28A 一方の辺
28B 他方の辺
28C 斜辺
2802 前縁
2810 前面
2812 背面
30 迎角調整部
32 操舵状態検出部
34 車速検出部
36 気流制御用ECU(迎角制御部)
38 縦渦
A 縦渦の軸
F 走行気流
F1 第1の気流
F2 第2の気流
F3 第3の気流
α 迎角
φ 操舵角